「外注される戦争」
イラクで元自衛官の民間軍事会社(PMC)員が殺害された事件が起きてから、日本でもPMCが知られるようになった。本書は、それらPMCを解説する本。
大所高所から産軍共同がケシカランとか論じる本ではなくて、PMCのビジネス内容や現場の様子、動向などを、ひとつのビジネスとして、綿密な取材を元に描いている。中でも、ジャーナリスト向けセキュリティ訓練は、死と背中合わせの戦場を疑似体験したレポートで、出色の読みものだ。もっとも、取材や分析が綿密すぎて、著者はPMCのコンサルタントとしてスカウトされてしまったそうだ。巻末には、代表的なPMCの紹介を掲載。
外注される戦争―民間軍事会社の正体
posted with amazlet on 07.09.23
菅原 出
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- PMCの業務
- 一口にPMCといっても、会社ごとに分野が違う
- 後方支援を請け負う会社がほとんど
- 要人や施設などの警備
- 軍事訓練
- 人質解放交渉
- ロジスティックス
- 兵器のメンテナンス
- インテリジェンス活動(戦争広告代理店を含む)
- 収容所での尋問
- 地雷処理
- 現地の文民警察
- 一部には、前線での戦闘に参加する会社も
- 米軍の民間委託の流れができてきたのはベトナム戦争から
- 冷戦集結により、軍の人員削減と紛争増加が起き、民間委託が進んだ
- 軍からリストラされた軍人がPMCに
- イラク戦争でPMCバブルに
- イラクに送った人員は、アメリカ以外の1国よりPMCのほうが多い
- 米軍はもはや、PMCなしに活動することは不可能とまでいわれている
- 直接の戦闘だけではなく、テロの脅威への対策が必要
- イラクの武装勢力にとって、誘拐は有力な「ビジネス」
- 経験なしに参入する、ぽっと出の会社も多い
- レベルやモラルの低い会社も
- 捕虜虐待や、銃の乱射など
- 利益に走りすぎて派遣人員の安全性が軽視されることも
- PMCどうしで相互に危険などの情報を交換する業界団体ROCが発足
- 元警察官
- 元トラック野郎
- フィジーやフィリピン、ネパールなどからの出稼ぎ
- エリート限定採用で差別化する会社も
- 特殊部隊出身者は引っ張りだこ
- 元自衛官の所属していた会社はROC非加入
- もともとは、特殊部隊出身者によるインナーサークル的性格(顔見知り)
- 民間のほうがより実践的な戦闘技術が学べる、と特殊部隊からの人材流出が続く
- CIAをPMCが警護するケースや、正規軍をPMCが訓練するケースも
- 政治的に米軍を派遣しにくい国に、米政府の依頼でPMCを送るケース
- ロイズのリスク管理のため、警備や人質解放交渉を請け負うPMCを紹介するケース
読んでいて、民間の軍事インストラクターを主人公にした「パイナップルARMY」や、特殊部隊出身のロイズ調査員を主人公にした「MASTERキートン」といったマンガを連想した。
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