小学生の頃、親に連れられて訪れた浅間温泉。その当時は温泉客が一杯いて、浴衣を着て家族で賑やかな夜の温泉街を歩いた事がなんだか嬉しくて、今も鮮明に覚えている。
大人になった僕は、当時の記憶を頼りにその時宿泊した旅館を探したけど、もう特に廃業していて、やむなくほかの旅館に宿泊した。夕食を済ませ、ひとっ風呂浴びた後、下駄を借りて温泉街に出かける。あれほど賑やかだった通りは廃業してしまった旅館が廃墟として散在しており、ほとんどのお店がシャッターを下ろしてしまっている。僕の歩く歩調に合わせて下駄と地面がこすれる音のみが辺りに響き、何だかいたたまれなくなった僕は、10分ほどうろついたのみで、すぐに宿に戻ってしまった。
CONTAX Aria×DistagonT*28/2.8 Kodak Tri-X
2010.12 浅間温泉
バタフライエフェクトという映画を見た。
主人公の男が過去に戻ることが出来る能力を身に着けたという設定で、自身の過去の過ちから、幼馴染であり最愛の女性が巻き添えとなり不幸な人生を送っている現状を、その能力で修正しようと試みるストーリーだ。男は過去に戻り、過ちを正そうと違う選択を試みるが、自分や他の誰かが不幸になり、何度も過去をやり直す羽目になる。最終的に主人公は、だれも傷つかない選択をする。と同時に、それは最愛の女性とともに生きる人生を失う選択でもあった。
人生の、どの節目に戻ってやり直して、何かが改善されれば、それが作用してまたどこかで不都合が生じる。全てがうまくいくようには出来ていない。
きっとそうなんだと思う。過去に戻る能力なんか持てないし、その必要なんかない。良くも悪くも今現状がすべて。その先はわからない。悩み足掻きながら自身で選択した人生を納得しながら生きていくのか、選択する辛さを放棄して折り合いをつけた人生を受け入れて諦めながら生きていくのか、その違いなんだろうな。
この年になると色々考えるよ。
CANON Power shot S45
尾道・広島 2005.7