砲丸メーターに丸目一灯、やっぱりこれが一番カッコよし。
OLYMPUS OM-D EM-1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mmF2.8 PRO
夏季休暇を利用して、山口まで行ってきました。軽バンに自転車を積んで、4泊5日のひとり気ままな旅でした。目的地に着くと自転車を組み立て、スマホにダウンロードしたツーリングルートを見ながらひたすらに自転車を漕ぐ、贅沢な時間でした。天候にも恵まれて、山口の景色は最高に綺麗でしたね。
僕が初めて山口を訪れたのは2011年の7月。その後、2018年の8月に家族旅行でもう一度。今回で3回目になります。
初めての時もひとりで。125ccのスクーターで京都から国道9号線経由で鳥取に入り、そこから島根、山口と順番に回っていきました。深夜に出発し、真夏の炎天下、2000kmの行程を延々と走りました。僕もまだ30代だったのでまだまだ体力があったのでしょう、今なら絶対無理ですから(笑)
今回はその時のツーリングの思い出に浸りながらの旅でもありました。まずは2011年の写真を掲載していこうと思います。
RICOH GR DIGITALⅢ
2011.7 角島大橋
細かくメモを取っていたわけではないので、うろ覚えですが、これらの写真はすべて鳥取から島根の太田市に向かう途中の9号線沿いで撮ったものだと記憶しています。夏の日本海は蒼くて明るくて、でも太平洋程賑やかではなく、さびれた家屋や人気のない集落なんかも目につくからなのか、どこか哀愁があって。ちょうど今の言葉でいうなら「エモい。」ってやつでしょうか。とにかく見るものすべてがフォトジェニックで、首からぶら下げていたNikonのシャッターを何枚おとしたことか。
山陰線の田儀駅。目の前には日本海が広がる素晴らしい眺めでした。車窓から眺める日本海もきっと映画を見ているように綺麗なんだろうなと思いました。
その当時、僕が大好きだったアマチュア写真家さんが、東京から夜行バスと電車を乗りついで、この辺りを旅していらっしゃいました。ライカのM5を携えて、見知らぬ街を彷徨い歩く。なんてカッコいいんだとすごく影響されたことを覚えています。それで僕も何となく立ち寄ってみたのです。
Nikon F2 PhotomicA×Ai Nikkor50mmF1.2S Kodak Tri-X
延々と9号線を走り続け、この日は仁摩のユースに宿泊しました。
素泊まりで予約したのですが、ここのおかみさんの懇意で夕食をご馳走してくれました。お礼を言って戴いた後、ロビーでタバコを吸っていると、60代くらいかなぁ、ここのいかつい顔をしたオーナーさん(ご主人)が入ってきて「今日からここは禁煙にする。」と言われたのを覚えています。突然の事だったので面食らっていると、おかみさんが「ごめんなさいね~。アンタ、何言ってるの!」と済まなさそうな顔でオーナーさんをたしなめていました。おかみさんの対応を見ていると、普段からオーナーさんはこんな感じなんだろうなという事が容易に察せられました。が、こんな横暴、納得できる事ではありません。「なんだ、こいつ。タバコはここで吸えってかいてあるやんけ!」と気分を害した僕は、そのまま自室に戻り、窓を開け放って「禁煙だろうが何だろうが、かまうもんか。」ともう一度タバコを吸いました。その後もずっともやもやしてましたね。
夜中からずっと走っていたので、早めに寝ようと20時ごろには布団に入りました。すると、布団を抱えたオーナーがいきなり入ってきて僕の横に布団を引き始めるじゃないですか。「え、え、え?」と僕がまたもや面食らっていると「僕は普段からこの部屋で寝ているんだ。」とおっしゃる。さすがに「頭おかしいんじゃねぇか?」と言いかけた途端に、オーナーさんは無邪気な顔で「君はどこからきたの?」と世間話を始める。あまりにも悪気がないものだから、僕もあっけにとられていると、もうここからはオーナーさんのペースに。
でも、このオーナーさんの話がめちゃくちゃ面白すぎて怒りを忘れていつの間にか引き込まれている自分がいました。オーナーさんは歴史に対する知識が豊富で、事象に対する考察も面白い。戦国武将のエピソードなんかを面白おかしくきかせてくれるし、他にも仁摩の近くには世界遺産の石見銀山がありますが、世界的に見た石見銀山の歴史的価値ってどんなところか、とか。オーナーさんの話を聞いて、次の日に訪れる予定だった石見銀山がより楽しみになりました。こんな面白い話を聞かせてくれる日本史の教師がいたら僕ももっと、歴史が好きになっていただろうなと本当に思いました。
話は多岐にわたりました。旅の話からユースホステルの抱える闇、その他政治経済・・・。オーナーさんは事象に対して貪欲に情報を収集するだけでなく、それらを自分の中でかみ砕いて深く追求し、誰かが言ってたというのではなく、自身の言葉でアウトプットする。だから、こんなにもこの人の話は面白いんだと、感心させられました。
結局、オーナーさんの話は途切れることなく夜明け頃まで話していたのを覚えています。翌朝、おかみさんと二人で「事故には気を付けて、良い旅を。」と笑顔で見送ってくださいました。
見知らぬおっさん同士が布団を並べて夜中まで語り合うって、異様な景色ですよね(笑)今思えば、この旅での一番の思い出はオーナーさんとの出来事でした。
つい懐かしくなって、このユースを久しぶりにググってみると、コロナが流行って以降、休館されている様です。
Nikon F2 PhotomicA×Ai Nikkor50mmF1.2S Kodak Tri-X
ユースを後にして大森町へ向かいました。朝も早かった為、地元の子供たちがラジオ体操へ向かうのを見かけました。ユースのオーナーが大森町は「少し前まで江戸時代のような街並みだったけど、石見銀山が世界遺産に登録されてからは、観光客受けを狙った街並みになってしまって雰囲気が変わってしまった。」と残念そうに言っていたのを思い出しました。それでも僕にとっては初めて訪れる場所だったので目に映るものすべてが、とても良く見えました。
草木は朝露をまとう、まだ涼しい時間帯。カメラを持って撮り歩くには最適でした。勿論、観光客も皆無で静か。
ホント、早起きは三文の徳ですね。
Nikon F2 PhotomicA×Ai Nikkor50mmF1.2S Kodak Tri-X