信楽(8)
RICOH GXR/28ミリ
2014.8 滋賀
信楽(9)
色々な表情を見せる窯元散策路を歩いていると、とにかく目につくのがたぬきの焼き物です。
たぬきは「他を抜く。」と言う意味で商売繁盛の縁起物とされており、「信楽=たぬき」というイメージが定着しています。それだけに、タヌキだけで埋め尽くされている陶器店が非常に多いのですが、初めて訪れた人は、少々ビックリされるかもしれません。
水丸さんは陶器に造詣が深く、この信楽では勿論の事、常滑や笠間など有名な窯元でも、色々な陶器店を巡る事を楽しみにされていました。僕には陶器の知識は無いのですが、他の街では見られない景色に出会えて、十分楽しかったです。
安西水丸さんの「スケッチブックの一人旅」は、水丸さんが電車で方々に出かけ、スケッチされた景色を掲載されています。そのスケッチは、正直うまいんだか下手なんだかわからないのですが、芸術がどうこうとか気難しいものではなく、柔らかい感じでその場の雰囲気はとても伝わってきます。
それに誘われて、僕もこうして信楽に行こうなんて思ったのですから。
また陶器だけでなく、歴史文学にも詳しい水丸さんのガイドブックのような文章を読んでいると、 無知な自分を恥じるとともに、それらを知りながら旅をすると、もっと色々な事を感じる事が出来て楽しいのだろうなと思いました。
信楽(10)
雨が降ってきました。
寂れた商店街の個人商店で缶コーヒーを買って、軒下に備え付けられたベンチで一服。
向かいの食堂もまた、周りと同じように寂れた表情の店構えで、その色あせた写真のようにくもった窓から、暇そうにTVを見ながらあくびをしているおばぁちゃんの姿が見えました。
なかなか雨はやまないので、もう一本煙草に火をつけると、商店街の薄暗い路地の向こうに掲げられた提灯の束が見え、その下を子供たちが小走りに走っていくのが見えました。
僕は折りたたみ傘をさして、その路地に誘われるように入っていきました。
路地を抜けると、三叉路の真ん中に立派な櫓に安置されたお地蔵さんがありました。その前には公園があって、その公園を取り囲むように提灯がぶら下げられていました。公園内に張られたテントの下で大人や子供たちが、たくさんの食べ物や飲み物をつまみながら賑わっていました。
「ああ、地蔵盆か。」
僕も郷里でも同じように大人子供が集まって、賑やかだった地蔵盆を思い出して、ノスタルジックな気持ちになりました。
相変わらず雨は止みません。
駐車場に停めたカブに乗って帰路につきます。レインウェアのおかげで、衣服は濡れませんが、カブの上を流れる風はひんやりとして肌寒く感じます。信楽の街を抜けると田園風景が広がります。雨粒のついたシールドから飛び込んできたのは小麦色の風景。
7月末に東北の穀倉地帯を走った時の田んぼの稲は、青々として空に向かって真っ直ぐ伸びていたのに、いつの間にか身を付けて重そうに首を垂れ、黄金色へと変わっていました。
季節はもう夏から秋へと移り変わっているのを直に感じました。
暦の上では夏と秋の境目ははっきりしていますが、実際にそんな境界線はありませんし、日々の生活の中でそれを感じる機会も、なかなかありません。ですが非日常的なオートバイでの旅は、それを強く感じる事ができるのです。
「車窓を眺めながらのんびり行く電車の旅もいいですが、暑い、寒いのオートバイの旅も悪くありませんよ、水丸さん。」
そんなことを思いながら信楽を後にしました。
信楽(了)
Don't know much about history,
don't know much biology.
Don't know much about science book,
don't know much about the french I took.
But I do know that I love you,
and I know that if you love me,too,
what a wonderful would this would be.
高知県の中土佐久礼。
鄙びた漁村の中に、そこだけ周囲と少し雰囲気の違う(要はそこだけ派手な感じで、周囲とのギャップが激しい、と言うのが正直な僕の感想です。)商店街があります。
そこが大正市場。新鮮で美味しい魚介類が安く食べられることで有名です。
そして土佐と言えば、やはり鰹のたたきを連想してしまいますね。
鰹のたたきって、後味がちょっと苦いので、僕はそれほど好きではなかったのですが、お世話になっているバイク屋さんの勧めもあって、四国に行った際に立ち寄ってみました。
田中鮮魚店で鰹を買うと、向かいの食堂で食べられる状態にしてくれます。
その日の朝採れたばかりの鰹を2人前分購入し(好きではないのに2人前購入する時点でおかしいだろ)、食堂で、いただくことにしました。
白飯と味噌汁だけ先にテーブルに運ばれてきて、その後に、先ほどの鰹のたたきが大きな平皿に盛られてやってきます。
これが肉厚で、色もつやつや。僕の大好きなネギもたっぷりのっています。鰹のたたきが好きではない僕でもこれは生唾ものでした。
普通にタレをかけても美味しいのですが、おすすめはニンニクのスライスと塩をかけて食べる事。
鰹のたたき自体は意外なほどに、あっさりしていたんだけど、決して淡白ではない、ちょうど良いあっさり加減。ニンニクと塩が主役の邪魔をしない程度にフォローしているような、むしろ引き出しているというような、そんな感じです。
苦みなんて全くなくて、「今まで食べてきた鰹のたたきってなんだったんだ!?」と思ってしまうほど別物でした。
そして何よりこれが白飯にあうあう・・・。
「これは新鮮な鰹でしかできない食べ方だよ。」
愛想のよいお店のおばちゃんに「旨い、旨い、こりゃたまらん美味いっす!」と連呼しながらがっついてきました。(笑)
大正市場、田中鮮魚店の鰹のたたき、ごちそうさまでした。
過去の記憶に、どんなに偽わり、また強がってみても
悲しいほどに写真は正直だ。
「お、BMWやんけ。にいちゃん、これ高いやろ?」
「そんなすんのか、独りしかのれへんのに。車かえるやんけ。」
「バイクは雨の日とか、風が強い日は怖いね。重いし、こけたら大変ね。危なくないの?」
せっかく黙殺してたのに、あんたが俺のバイクに勝手に触るから無視できなくなってしまったじゃないか。
タンクに乗せられたおっさんの手を、さりげなく払いのけながら、嘘の値段を教えてやった。
これくらいの値段を期待してたんだろ?残念ながら実際はその1/3くらいだ。みりゃわかるだろ、こんなぼろぼろの錆び錆びなのに、どうしてチャチなプロペラマークがついてるだけで「高い。」って思いこむのさ。発想が貧困すぎやしないか?
どうせ、乗る気もないだろうし、もし買ったとしてもお前なんか、バイクにゃ乗れねーよ。
危ない?
ますます発想が貧困であきれ返ってしまう。
じゃあ聞くけど、雨の中スマホいじりながら運転してるドライバーと、雨だから「こけたくねー。」と思って必死こいて慎重に走ってるバイク海苔、どっちが危ない?
それに・・・
この世に「事故にあっても絶対けがをしない、死なない乗り物。」って聞いたことあるかい?
俺はないね。
危ないんじゃない。すべては確率の問題だ。
讃岐うどんを語る上で避けて通れないのが、「なかむら」。
いまや伝説となっている「客が裏の畑からネギを採ってきて、自分で切る。」と言う究極のセルフ。
昔はほったて小屋みたいな感じだったらしいけど、現在はお店も綺麗になって、勿論ネギは最初から用意されている。
続いて、「上原製麺所」。
写真の通り、狭い軒下を通って店内に入る。
食べるところは、製麺所の作業場。訪れる人たちが皆、当たり前のようにその辺に座って食べだしたのを見たときは、カルチャーショックだった。
残念ながら2013年5月31日をもって閉店。
そして今年の春に訪れた、「がもう」。
密集した住宅街の中を「本当にこんなところにあるのか?」と不安になりながら車を走らせた記憶がある。ここも他の二店舗と同じように、長蛇の列。
店内にテーブルは用意されていたけれど、もちろん座れるはずもなく、駐車場で五夜嶽を眺めながらいただいた。
三店舗のうどんは写真上、皆、一緒に見えるでしょ?
でも全然違うんだなぁ。
なかむら、上原製麺所、がもうのうどん。
ごちそうさまでした。
以前の職場で仲良くしていた後輩が、めでたく結婚することになって、ポストに招待状が届いていた。
彼に会わなければ、きっとカメラに興味なんてもっていなかっただろうから、そう意味では僕にとって、彼は特別な存在だったかもしれない。
今から彼の晴れ舞台が楽しみだ。
それにしても出会った時、21だった彼も、もう30を間近に控えているなんて、時の流れはホント早いねぇ・・・。