オモテのコメントで質問をいただきました。
オモテのコメントですので一部省略しそのまま再掲します。
TS-1の3クール目の必要性
2年半前に胃ガンで胃を全摘した74歳の母のことでご相談です。
開腹する前はステージ2の診断でしたが、開腹後、思ったより奥まで浸潤していたとのこと。ステージ3に変更。進行ガンではなく腹膜播種もなし。脾臓と胆嚢、リンパ2群まで摘出。
それから2年が過ぎた去年の年末に、初めて腫瘍マーカーが2倍に上がりました。それから時間をかけた検査の日々。
あまりのスローペースに少しいらいらしながらも、母の腸は日に日に狭窄していき、便は細くなり、腹痛を伴う様になってしまいました。結果、腹膜播種でした。
緩和ケアーと抗ガン剤治療を始めたのは5月の下旬からです。25mgのTS-1を朝晩1錠づつ。4週間飲んで2週間休み。この投与の量は、先生のブログを読ませていただいていたので、少量でお願いしたい旨を先生に強く主張しました。
そして、治療前から起きていた腸の狭窄による腹痛はたまにあるものの、それ以外の副作用はほとんどなく、治療1ヶ月後の血液検査は、白血球5060、赤血球300、血清鉄43、ヘモグロビン9.3、ヘマトクリット28.7。と問題なし。ただ、マーカーは前回の130から365に上がっていました。
そして、2クール目をスタートして2週間目の先週の血液検査の結果は、白血球4560 、赤血球301 、血清鉄74 、ヘモグロビン9.6 、ヘマトリット29.4 、血小板32.1 でした。
そして、8月2日に3クール目を続けるかを決めなければいけません。
ここまで長々と申し訳ありません。
そこで、ご質問です。
母は元気です。食欲もあります。
腸閉塞の心配は全くない程の便の量(何回にも分けて)です。
(1)このまま3クール目を続けても良いものなのでしょうか?
(2)マーカーとCTの結果を聞いてから決めた方が良いのでしょうか?
その場合、数値が良くなっていれば止めても良いのでしょうか?
(3)数値などに関係なく、調子が良ければ、一度治療は止めて、
また、不具合が出た時に再会するという方法もあるのでしょうか?
抗ガン剤は、始めるのは簡単だけど止める時期が難しいと聞いています。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
ご助言いただければ幸いです。
何回も「匿名の質問には答えませんよ」
と書いていますが、
シッカリと匿名です。
相手が匿名氏ですので、
遠慮なく書きます。
ステージⅢは再発確率の高い進行ガンです。
早期ガンではありません。
そのように勘違いをされている方が、もしいましたら、
認識をすぐに改めてください。
その勘違いは致命的にもなり得ます。
はじめから相当の進行ガンであることを認識して
可能な限りの再発予防策に勤めるべきです。
あまりお得なエビデンスの出ている
再発予防治療はありませんが・・・・
エビデンスはありませんが、
クレスチンとTS-1 やUFTなどを飲み続けることも一方だと思います。
ご相談の患者さんの場合、
幸いTS-1 を1日50mgの内服で骨髄抑制はあまり出ていないようですが、
腫瘍マーカーが上昇したことがきっかけで、
ガンの再発が確認されたのです。
その腫瘍マーカーが増大している治療を何故そのまま続けるのでしょうか。
腫瘍マーカーの増加はガンの悪化を意味します。
腹膜播種による自覚症状が緩和されているのであれば、
腹腔内のガン細胞は減少しているのかも知れません。
これは、画像診断ではなかなか分かりません。
しかし、腫瘍マーカーが増大しているのであれば、
身体の中に存在しているガン細胞の総数は、
ほぼ間違いなく増大しているのです。
その治療をそのまま続けるのはあまりにも愚かなことだと考えます。
1クールの一ヶ月TS-1を飲んで
130から365にまで悪化した腫瘍マーカーが、
2クール目を終わったところで低下しているとは思いません。
何故2クール目をそのまま行ったのか疑問です。
何回も書いているとおり、
ダメだと分かったならば、
一刻も早くその治療は変更するべきです。
骨髄抑制の無い範囲でのTS-1 の増量もありでしょうし、
シスプラチン、イリノテカン、タキソールなどの追加
あるいはそれらへの変更も必要かもしれません。
可能な限り頻回にガンの進行状況を観て、
それにしたがって抗癌剤治療も軌道修正しなければなりません。
ガンの状態を観察しないで、
抗癌剤治療を行うことは、
真っ暗な闇の中をライトを点けずに車を走らせるようなものです。
この患者さんの場合一つのライトは、
腫瘍マーカーです。
一番簡単に点灯することができるライトです。
「抗ガン剤は、始めるのは簡単だけど止める時期が難しいと聞いています。」
誰が言っているのか知りませんが、
少なくとも再発胃ガンに対する抗癌剤治療に
終わりはありません。
標準的抗癌剤治療を進めていき、
それができなくなった時に
「もはや治療方法はありません」
と勝手に医者が治療を終わりにしてくれますが・・・・
その時期の判断が難しいのかもしれません。
私はその判断はしたことがありませんので分かりません。
終生続けなければならない治療だからこそ、
副作用があってはならないのです。
副作用があってはその治療は続けられませんし、
その副作用が、患者さんが辛いと自覚するものであれば、
生涯その辛い思いを続けなければなりません。
10年間治療を続けることができたならば、
患者さんは10年間元気でいてくれたことになります。
副作用を伴う治療では続きません。
現在の胃ガンに対する標準的抗癌剤治療での生存期間中央値は
1年そこそこです。
それも酷い副作用を伴ってです。
否、あまりにも辛い副作用だから
1年程度で終わりにするべきなのかもしれません・・・・
私の文章力の無さのためなのでしょう、
訴えていることが、あまりにも伝わっていないことに、
少々失望してしまいました。
以上 文責 梅澤 充
追記:オモテのコメントでは、匿名にしたいのは分かります。
どうぞ「秘密にする」の□をクリックして裏のコメントにしてください。
7月22日の「お詫び」で書いたメールアドレスに直接メールをください。