昨日の「ガン細胞の性質」は、
いただいたコメントに対して、
私の考えを書きましたが、
再度コメントがありました。
Ki-67という比較的新し乳ガン細胞の性質を知る上での
一つの指標と、
ハーツー蛋白の過剰発現すなわち、
ハーセプチンの可否、
について書かれていました。
過去の病理検査と、
再発時の病巣の病理検査の比較だと勘違いしました。
ハーセプチンの可否、
すなわちハーツー蛋白の状態については、同じ標本で、
スコア「0」と「3+」の結果を、
同時に二人の病理医からいただいたこともあります。病理医に教えられながら顕微鏡を覗いたことは何回もありますが、
私自身顕微鏡で病理検査は行ったことはありません。
しかし昔、自分自身の研究テーマのために、
免疫染色という方法で、
顕微鏡検査は相当数のプレパラートで行った経験はあります。
免疫染色の原理は、
ホルモンに対する感受性や、
ハーツー蛋白の存在などを知るための検査と同じです。
現在の病理学者は、
私のようなズボラな検査は行ってはいないと思いますが、
免疫染色は微妙なバランスで、
結果が変わってくる可能性があります。
昨日は、
「抗癌剤治療を続けていくとハーツー蛋白の状態は変化する」と書きしました。
しかし同一標本でも、
検査を行う人間により結果が違ってくることも、
時々見ます。また、健康保険上は、
前述の免疫染色を使う手法、
IHC法(Immuno-histo-chemistory・免疫組織学法)
とい方法で検査を行い、
0、1+、2+、3+ と4段階に仕分けをして、
2+ 以上すなわち、
0 か 1+でなければ、
ハーセプチンは使うことが許されており、
すなわち、効く可能性はあると認められていますが、
実際には2+と3+では大きく効果は違うことも多く、3+の場合だけしかハーセプチンは使わない、
あるいはFISH法というより正確な検査の結果だけを参考にして、
それがマイナスだと使わない、
という病院も少なくありません。実際に2+と判定されて、
「ハーセプチンの適応は無し」
と宣告された患者さんでも、
十分にハーセプチンは効いてくれることは珍しくありません。その時点では昨日書いたように、
3+に変化していたのかも知れませんが。さらに現在、
他にも幾つもの検査方法が可能になりつつありますが、
手術標本でより精密な検査を行っても、
その結果だけを診て、
再発後もハーセプチンの可否を決めてしまうとしたら大きな問題です。ハーセプチンの薬価は発売当時よりも随分と下がりましたが、
それでも高額な薬剤です。
しかし、患者さんの身体には、
極めて優しいクスリです。
細胞毒ではありません。予算を考えなければ、
他の抗癌剤を点滴で使っている患者さんでは、
点滴の針を刺す手間がありませんから、
検査などしないで使っても悪くは無い、
害が無ければ、
「効けばめっけもの」
でも良いように感じます。
コメントにあった、
もう一つのKi-67ですが、
細胞増殖因子とされて、
2009年かその前のザンクトガレンの会議で出てきて、
数年前から日本の乳ガン学会などで、
見かけるようになりました。
まだ、日本語の論文しか読んではいないので、
日本で報告されている内容しか知りません。
10年以上前からMIB-1 indexとよばれて、
乳ガンだけではなく胃ガンや大腸ガン
などでも使われている指標とほぼ同義であるはずですが、
乳ガンではザンクトガレン以降、
研究が盛んになったようです。予後との相関や、
再発時に効く可能性のある抗癌剤の種類の、
大雑把な判別には有効なようで、
学者先生には面白い研究材料だとは思いますが、個々の患者さんにとって、
すぐに大きな意味を持つ存在になるとは、
私は考えていません。むしろ、その数字に医者が囚われてしまって、現在の統計医療が益々助長され、統計確率だけで患者さんを診るようになってしまう方が心配です。何回も書いているとおり、
ガン治療の統計確率では、
患者集団から導き出される数字であり、
一人しかいない患者さんには、
100%か0%という数字以外は、
あまり意味の無いことです。
「99%の患者さんが助かる」と言っても
「1%の人は死ぬ」ことになります。
私の目の前にいる患者さんが、
その1%ではないという保証はありません。
しかし、一つだけ「0%」という統計データが出ていたように記憶しています。それは
「Ki-67が50%以上の患者さんで手術後10年を超えて再発したかたは0%」という報告でした。
3000例くらいの調査だったと思います。
Ki-67の割合が高いと、
一般的に予後が良くないと言われるようですが、
手術時にその予後が良くない細胞で、
10年間再発が無ければ、
とりあえず、
「治った」と言えそうです。コメントの内容で気になったのが、
「苦しかったECが無駄になった・・・」とのことですが、
私の記憶が正しければ、
100例程度の再発症例に関してですが、
Ki-67が高値の場合、
アンスロサイクリンが奏功する確率は高かったように思います。
ハーツー蛋白の過剰発現については、
それを如何に考えるかはとても重要ですが、ご自身の細胞の性質を知ることは重要ですが、
それは、あくまで統計確率の世界のお話しです。
あまり目くじら立てて、
調べても仕方がないとも思います。それを単なる参考値にして、
主治医に舵取りを任せた方が良いように思います。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
PS.明日からネット環境のないところに避難します。
ブログは2,3日休診にします。
昨日の「助かる確率?」に対して、
二つのコメントがありました。
抜粋再掲します。
平成22年6月に当時の主治医から術後病理結果の説明を受けた時
「あなたには、ハーセプチンの適応はない」と言われていました。
何度も言われましたので記憶に強く残っています。
なぜなら、私のほうからはハーセプチンの適応について、
一度も質問をしたことがないからです。
当時の主治医の推奨はEC+T療法でした。
そしてこのたび、セカンドオピニオンで転院した新しい病院で
無染色検体でのKi-67抗体検査ほか受けました。
平成24年4月に新しい主治医より「ハーセプチンの適応あり」
という検査結果の説明を聞きました。
ECについては「ほぼ効かなかったと思って間違いない」と云うものでした。
このコメントに対して、
今後梅澤先生もお書きになることもあるかも知れませんが、
HER2の陽性、陰性に関しては、
検査の時期によって変わることがあるというのは聞いたことがあります。
たとえば、病気が発覚した時に調べるとHER2が陰性だったけど、
再発した時に調べると陽性になっていたという例もあるそうです。
ですから、一度陰性でも、時間がたってからもう一度調べてみるというのは
大事なことかも知れません。
今後書くことではなく、細胞の性質は治療の経過をともに、
大きく変化していく。
手術時の切除所標本ではハーツー蛋白の過剰発現が認められなくても、
すなわちハーセプチンの効果は無いであろうと考えられても、
治療を続けていくと、
細胞の性質は大きく変化して行くことは珍しいことではない、
すなわち、ハーセプチンが効くようになる可能性はある。ということは以前にもこのブログで何回も書いています。
チョッとメカニズムは違いますが、
これはハーツー蛋白だけでなく、
ホルモン剤の感受性に関してでも言えることです。先ず、ハーセプチンが効くとされる、
「ハーツー蛋白の過剰発現」という定義ですが、
10億個のガン細胞が集まると、
ガンのカタマリは1立方センチメートルの大きさになると、
考えられます。
その10億の細胞すべてが、
ハーツー蛋白を持っているわけではありません。
簡単に言えば、
10億個のうち3億個がそれを持っていれば、
「ハーセプチンは効きますよ」
という判定になります。
9000万個だけなら「効きません」の判定になります。
ホルモンレセプターも同様の「仕分け」が行われます。
○○%の細胞がレセプターを持っていたら「陽性」
それ以下ならば「陰性」と判定されます。しかし、根治手術後に使われるホルモン剤の目的は、
機械の目では勿論、
肉眼でも確認することができない、
小さな転移病巣の増大を抑えること、
可能であれば消滅させることです。
転移病巣は手術で切除した原発病巣から飛び火をしていった細胞です。
原発病巣が「陰性」と判定されていても、
レセプターを持っている細胞が飛び火していたら、
その転移病巣では「陽性」に変わっていることになり、
ホルモン剤が効いてくれる可能性が十分にあります。
当然、その逆もあります。
何回か書きましたが、
ザンクトガレンの乳ガン会議という、
乳ガン治療の基本方針を決める会議が、
2年に1回行われていますが、
2007年の会議では、
手術後のホルモン剤の使用は、
「30%以上で推奨される」が、
2年後の2009年の同じ会議では、
突然「1%以上で推奨される」に変わり、
その2年後には、
「1%未満には推奨されない」
と急激に変化しています。特にヨーロッパの国の財政事情が大きく関わっていると思われますが、ガン治療の基準など、
そんなものです。ハーセプチンにも同じことが言えますが、さらにハーツー蛋白の場合、
抗癌剤治療を続けると、
ガンのカタマリを作っている様々な性質を持った細胞の、
割合が変化をしてきて、
治療前には「陰性」すなわち「ハーセプチンは効きません」だったガンが、
治療後にはハーツー蛋白の過剰発現を認め、
「陽性」すなわち「ハーセプチンが効きます」に変化することは、
珍しくありません。昨年、再発病巣に対して、
私が数年間の抗癌剤治療を続けた後に手術を行った二人の患者さんで、
はじめの手術時には、
「陰性」だったのが、
再度の手術標本を観ると「強陽性」に変わっていました。
大塚北口診療所でハーセプチンを使っている患者さんはたくさんいますが、
その半数程度の患者さんでは、
はじめの手術の時には、
「ハーツー蛋白陰性」だった方々です。平成22年6月に当時の主治医から
術後病理結果の説明を受けた時「あなたには、ハーセプチンの適応はない」
と言われていました。・・・・
平成24年4月に新しい主治医より「ハーセプチンの適応あり」
という検査結果の説明を聞きました。
ECについては「ほぼ効かなかったと思って間違いない」
と云うものでした。
とのことですが、
平成22年6月の切除標本でハーツー蛋白の過剰発現は認めなかったのが、
ECなどの抗癌剤治療を行った結果
「ハーセプチンの適応あり」に変化したのであれば、
抗癌剤は細胞集団の割合を変化させたという点では効果があった。
と考えることもできると思われます。平成22年6月の標本を再度見直したのであれば、
「抗癌剤治療に効果が無かった」とは絶対に言えない言葉であり、
新しい再発病巣の生検などから得られた組織を調べた結果だと思われます。
ガン細胞は、抗癌剤の攻撃など受けると、
日々変化していきます。
以前の結果と大きく違うことは珍しくありません。
以前の細胞と種類が変わったということは、
抗癌剤治療にそれなりの効果があったということにもなります。病理の先生の「抗癌剤の効果は無い」という判定は、
臨床的には、あまり当てになるものではありません。実際に3年半抗癌剤治療を続けて、
まったく増大を認めなかった組織を、
切除して病理検査を行ったところ、
「抗癌剤の効果は無し」という判定をいただきました。
同様の事例は幾つも経験しています。
ガンが大きく縮小してから切除しても、
病理検査結果では「抗癌剤治療の効果は認めません」
というのもありました。「ガンが3年間も増大して来なかった」
「ガンが大きく縮小した」
しかし「抗癌剤の効果は無し」であれば、
何が、ガンの増大を抑え、
縮小させたのでしょうか??以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
東京には日本を代表するガン専門病院が、
幾つかあります。
そのうちの一つの超有名病院から、
極めて大きな犠牲を伴う手術を、
直ちに行うことを勧められた患者さんが、
セカンドオピニオンに来られました。
すでに病院が勝手に手術予定とされた日を過ぎていました。
その手術では、
顔面の整容は大きく崩れ、
声は終生完全に失い、
鼻には空気は通過せず、
臭覚も失い、
呼吸も喉に開けた穴から空気の出し入れをするだけになります。
食事は何とかできるでしょうけれども、
味覚は失われると思います。
その犠牲の代償として、
手術を行うことのメリットを知りたくなり、「その手術で助かる確率はどのくらいですか」とその患者さんが、
主治医に聞いたところ、即座に
「だいたい50%です」
と答えたそうです。私はその手術での概ね5年生存率も
20%程度と理解していましたので、
「助かる確率」が、
そんなに高いはずはないと考え、
セカンドオピニオンを求める患者さんの見ている前で、
その病院のホームページを調べてみると、
手術後に抗癌剤治療を併用しても、「5年生存率は3割弱」と、
シッカリ書かれていました。その手術+抗癌剤治療で、
5年間生きている確率が3割弱。その数字は、
100人の患者さんが手術をして、
さらにその後の抗癌剤治療を受けても、
「5年以内」に70人以上の患者さんは亡くなる。
ということを意味しています。「5年生存者」には、
手術後5年経過時にはすでに再発をきたして、
間も無く旅立たれることが確実な患者さんも含まれています。
したがって10年生存率になると、
さらに数字は大きく下がります。しかし主治医(恐らく手術担当医)は、
「助かる確率は50%です」の他に、
畳み掛けるように、
「だから今すぐに手術をしましょう」
「今が手術ができるか否かの分水嶺です」
「このチャンスを逃すと助からなくなります」
「その場合、最期の看取りはここではできませんよ」
とも言っていたそうです。
これはドウいうことでしょうか。自らの病院のホームページで公開しているデータを、
その主治医だけが知らなかったのでしょうか。
「手術で助かる確率が50%」ということは、
その病院のデータから考えると、
100人のうち20人は抗癌剤治療で命を落とす、
寿命を縮める、
抗癌剤治療は受けないほうが良い。
ということを意味するのでしょうか???その主治医曰く、
「今手術をしないで放置したら半年程度しか生きることはできない」そうです。
半年間生きていることができることは、
「助かる」ことにはならず、
5年以内に70%以上の人間が死ぬことは、
「助かる」ことになるのでしょうか。
50%の確率で。
下衆の勘ぐりをすれば、
手術症例数を増やしたいがために、
架空の数字を提示して、
手術に誘おうとしただけだと思いますが、患者さんの考え・希望と、
医者の頭の中は大きく違っていることは珍しくありません。
現在の日本には、
ガン治療に関しては、インフォームドコンセントなど存在していません。何回も書いているとおり、
統計確率など、
数百、数千という数の患者さんを集めて統計を取った数字であり、
たった一人しかいない患者さんにとっては、
ドウでもイイことです。その患者さんは、
「助かる確率」「成功率」の多寡に関係なく、
手術による犠牲の大きさを考え、
生存確率云々に関係なく、
手術を受ける意思は無かったようですが、
一般的に、
何も知らない患者さんに医者が提示する数字は、
患者さんの判断に大きな影響を及ぼします。「この病院では今まで1000例の手術を行ってきて、
5年以内に70%以上の患者さんが亡くなりました」
というのと、
「助かる確率は50%です」では、
患者さんが自分の治療の決定に大きな変化がでることは、
間違いないと思います。千人の患者さんに成功率30%ですと言ったら、
300人の患者さんが「その手術を受けます」と言い、
千人の患者さんに成功率70%ですと言ったら、
700人の患者さんが「その手術を受けます」と言うかも知れません。
その架空の数字を提示して、
患者さんを手術に誘い込もうとした病院は、
日本を代表するガン治療専門の病院です、
勿論、インフォームドコンセントも盛んに、
推奨しています。そのような病院が日本にはたくさんあります。
「地元で一番大きな病院だから」は、
病院を選択する基準にはなりません。もしも、今回来られた患者さんが、
同じ東京にある別のガン専門病院にセカンドオピニオンに行っても、
恐らく、
真実の数字を教えてもらえたと思います。数字を捏造するのは、
手術を行いたい、
自分の症例数を増やしたい、
と考える医者だけですから、
その手術に関係の無い医者であれば、
真実の数字をハッキリと教えてくれます。その数字の捏造は、
手術成績だけではありません。抗癌剤治療でも、
大きくサバを読んだ数字が提示されていることは珍しくありません。現在の日本の政治家の言葉と同様に、
大病院の医者の言うことも信用できない世の中です。ガンを宿したときには、
可能な限り、
お近くの大きな病院でセカンドオピニオンを受けてください。信用することが命取りになる可能性もあります。
絶対安全と宣言されていた原発と同様に。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
本日は大塚北口診療所での私の診療は休診ですが、
休診日には、
いつもながら雑用の山が押し寄せてきます。
時間がありません。
本日のブログは休診にします。
以上 文責 梅澤 充
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治らないガンの場合、
全身状態が良く、
普通の生活をご自宅で楽しめる段階で、
「エビデンスのある治療が無くなった」
というだけの理由で、
「治療法はありません」なる宣告など、
もってのほかですが、考えようによっては、
普通の生活を奪ってしまう治療を敢行するよりも、
マシかも知れません。しかし患者さんが、
多少辛くても、
「まだ治療を続けて欲しい」
と望まれているときに、「治療法はない」ということは、
「死を待ちなさい」と同義です。「治療を続けて欲しい」=「まだ生きていたい」であるはずです。
間違いなく死に至るという、
バカげたエビデンスのある治療などなくても、
ガンに対する治療法が、
まったく無くなるなどということはほとんどありません。
全身状態が良好な時にはなおさらです。ガンの進行により全身状態が多少悪化してきても、
緩和ケアと並行して、
抗癌剤を使うことは可能です。ガンという病気では、
本当の最期まで、
患者さんの希望がある限り、
治療は続けるべきだと考えています。
何らかの方法は、
たいていの場合残されています。
しかし、本当に諦めなければならない時も来ます。
先日旅立たれた患者さんがおられます。
5年間以上治療を続けた患者さんです。
最期は緩和ケアの病院に入院されましたが、
ご家族の話では、
「もう死にたい、ラクにして欲しい」
という言葉と同時に、
「まだ大塚で治療を続けたい」
とも言われていたそうです。
両方とも本心だと思います。大塚北口診療所に最後に来られた時にも、
全身状態は明らかに悪く、
治療を続けることが、
患者さんのためになるとは思えませんでした。
患者さんも治療を希望するとは思いませんでした。
しかし、
「今週はホルモン剤の注射の日ですからお願いします」と、言われてしまいました。
かなり驚きました、
そして、高額なホルモン剤ということもあり迷いましたが、
「そうですね、注射の日でしたね」と、
普段とおりに注射をしました。
あの全身状態では、
焼け石に水であろうことは明白でした。
「今日は止めておきましょうよ、次回にしましょう」
という言葉も出かけましたが、
ご本人も、ご自身の状態を理解していたので、
その言葉の意味することを悟ってしまうと考え、
注文通りにしてしまいました。
それが正しい医療行為だとは考えていません。
しかし患者さんの気持ちを考えれば、
正しい行為だとも思います。
勿論、それが寿命を縮めるような薬剤では、
絶対にそれは行うべきではありません。
「あんなに全身状態の悪い患者に、
ガン治療をするのは金儲けのためだ」
と批判する人間もいます。
しかし、現在の日本の医療では、
高額な薬剤をいくらたくさん使っても、
病院の利益にはなりません。
まして私の懐には何も入りません。
話は逸れましたが、
残念ながら治らないガンでは、
諦めなければならない時は、
いずれの日にか来てしまいます。しかし、
3月21日の「腫瘍内科医の心理」でも書いたように、
医者の都合によって、
治療が中止されることも、
珍しくありません。あの記事のきっかけになった、
3月15日の「本日休診」から、
すでに一月以上経ちますが、
あの状態のままであれば、
その患者さんは、
4月まで生きていることはあり得ませんでした。
3月中に餓死してしまうカロリー補給しかしてもらえませんでした。
今年の桜も見ることはできなかったはずです。
「すでに治療の適応は無い」
「緩和ケアが相当である」と、すなわち、
「食べることができなくなった患者は餓死させるべき」と、
市立病院の医者から文書で警告されましたが、
患者さんは治療の継続を望まれ、
その後、2回抗癌剤治療を行っています。その抗癌剤治療が奏功したのか否かは不明ですが、
寿命を縮めてはいません。
少なくとも栄養補給は延命に貢献していることは、
間違いありません。抗癌剤を使うことだけがガン治療ではありません。
生命をシッカリと支えることができるだけの、
栄養を補給することも、
立派なガン治療です。それすら行わずに、
「まだ生きていたい」と望む患者さんを、
黙って餓死させていく。それが現在の日本のガン治療の主流のようです。諦めないことは当たり前ですが、
本当に諦めなければならない時も来ます。しかし、白衣の閻魔様が、
勝手に決める諦めの時期に、
納得することなく、
諦めずに閻魔様を説得してください。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
時間治療が
ガン患者を救う??昨日の「テーラーメードガン治療」に対するコメントにもありましたが、
NHKが、
「時間治療がガン患者を救う!」と題して、
「夢のガン治療」を紹介していました。十数年前に発見されたという、
「時間遺伝子」という存在は不勉強で私は知りませんが、
「ガン細胞の増殖は夜間に盛んになる」
ということは随分と前から知られており、夜間の抗癌剤治療は、
20年以上前にも、
日本中、随分とたくさんの患者さんで行われていました。私自身もたくさん経験があります。
平成のはじめの頃です。
当時、抗癌剤治療は入院で行うことが多かったため、
患者さんが寝ている間に、
スタッフが抗癌剤を点滴ルートにつなぐという、
患者さんに気付かれないうちに治療が行われていました。また、厚労省の医療費削減のために、
外来通院での抗癌剤治療が主流になってからも、
患者さんの生活時間を確保するために、
夕方来院してもらい、
夜中に抗癌剤の点滴を行い、
朝、病院から出勤する。
というパターンもありました。可能な限り長い時間をかけて、
動注したい患者さんなどでは、
やはり夜間来院で、
1泊入院にて、
一晩中、動注を続けるという方法も何人もの患者さんに行いました。それほど大きな効果があったとは思えません。当時はまだ抗癌剤の種類も少なく、
現在のような強力な武器はありませんでしたから、
クスリの力不足も原因だったのかも知れません。しかし、同じ薬剤でも、
少し方法を変えると、
大きな効果が出るということは、
ガン治療では、
普通に見られることです。また、何回も書いているとおり、
個人差が極めて大きいのがガンであり、
ガン治療です。NHKお得意の、
稀有な症例だけを提示して、
それが全てあるかのような印象を与える番組作りをしていましたが、嘘は使わなくても、
あの程度の似非番組は、
簡単に作れます。そして多くのガン患者さんをはじめとした視聴率を稼いだ後、
失望させるのは簡単です。以下の写真は、
手術不能の肺ガンの抗癌剤治療開始前と、
開始後1ヶ月の写真です。
毎週の点滴ですが、
1回の点滴での抗癌剤の量は10分の1以下です。
x4でも標準量の半分以下で、
患者さんはまったく副作用は感じないと言います。
普通は日本中どこでも、
副作用が大きいため入院で行う治療ですが、
大塚北口診療所では、
勿論外来での、
昼間の治療です。
全例でこれほど速やかに大きな効果が得られれば、
「標準治療は止めましょう」
と叫びます。
「使い方次第で」
抗癌剤は治らないガンを宿した患者さんにとって、
極めて大きな武器になります。しかし、ここまで短期間で劇的に効果を診る患者さんは、
多くはありません。相手がNHKですから、
9割引きくらいで考えたほうが無難だと思います。後で失望するだけです。治療開始前、向かって右下の肺の壁と中央の大血管部分に大きなガンの病巣があります。

毎週の点滴、4回終了後、そのガンが見えなくなっています。

以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
4月20日の「婦人科ガンの休眠療法」に対して
テーラーメード化学療法とは
テーラード・ドーズ・ケモセラピーとは別の療法ですか?
テーラーメードって
主治医に聞いて笑われませんか^m^
というコメントがありました。
ご存じのとおり「テーラーメード」とは、
「一人一人に合わせて作る・・・」と直訳される形容詞です。(そう思って使っています)
「テーラード」でも意味は同じはずです。
Tailored(テイラード) = Tailor-made(テーラーメード)ということだと考えます。
九州大学の婦人科学教室のホームページでは、
「テーラード化学療法」という言葉が使われていましたが、
自分自身使い慣れた、
そして普通の日本人にも分かりやすいように、
「テーラーメード」としてしまいましたが、
大きな問題ではないと思います。
今後もテーラーメード治療という言葉を使いたいと思います。
私はガン治療では、
「化学療法」などという言葉は抜きにして、すべて「テーラーメード治療」ではなくてはならない
と考えています。ホームページでは「テーラード化学療法」と書かれていましたので、
ご指摘のとおり、
使われる抗癌剤のドーズ(量)が、
個々の患者さんで工夫された
テーラーメード・ドーズなのか、
ドースだけがテーラーメードではなく、
抗癌剤の種類も、
その組み合わせも、
治療のインターバルもすべて、
一人一人に合わせた
テーラーメードであるのかは分かりません。
私が考えるテーラーメード化学療法は、
すべてを個々の患者さんに合わせる治療だと解釈しています。「主治医に聞いて笑われませんか」とのことですが、
「テイラード化学療法」と言えば笑われない、
ということでしょうか。
「テーラード」でも「テーラーメード」でもどちらでも
多くの病院では、
鼻で笑われるでしょね。多くの腫瘍内科医の先生の頭の中では、
標準治療が最善の治療なのですから。笑われるのが嫌なら、
笑われない別の病院を探すか、
そんなことは聞かずに、
黙ってStandardized Chemotherapy・標準治療を受けてください。「化学療法」という言葉を抜きにして、
「テーラーメードガン治療」と言ったのは、治らないガンに対する治療では、
化学療法すなわち抗癌剤だけが武器ではないからです。抗癌剤は治らないガンに対して、
極めて大きな武器であることは間違いありません。しかし、必要に応じて、
タイミングを見計らって、
臨機応変に、
放射線、手術という大きな武器も組み合わせて使っていく、
それが、本当のテーラーメードガン治療だと考えます。大塚北口診療所ではテーラーメードの治療を作るように心掛けていますが、本当の意味でのテーラーメード治療にするためには、
患者さんからの要求を最大限度に生かした、
「オーダーメード」の治療にする必要もあります。しかし主治医に、
「オーダーメード治療をしてくれ」と言えば、
笑われる前に、
間違いなく、
「治療は医者がつくるものだ」と、
断られると思います。「オーダー → テーラーメード」
が理想的なガン治療だと考えます。現在、大塚北口診療所では、
数名の患者さんでは、
オーダーメードに近い、
テーラーメード治療を行っていますが、それには患者さんが知識と同時に、
シッカリした価値観を持つことも必要です。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
以下のような裏のコメントがありました、
一部、再掲します。
再発肺がんで代替療法に親をつれていかせてしまい
命を縮めて?しまった息子です。
抗がん剤の無知からです。
私が、もう少し早く冷静に考えていれば、父親に抗がん剤の治療を
させてあげられたと思います。
胸膜癒着をしてもらった後に転院させてしまいました。
大学病院の先生が長生きできますよ、と言ってくれたのに、
標準治療を後にしてしまいました。
代替療法で、漢方薬、気功、ビタミンC療法では、
ガンは小さくなりませんね。
・・・・・・・・
後悔が残ります。・・・・
「抗がん剤は効かない」の近藤氏のフレーズも信じてしまった大ばか者です。
・・・私は治療をさせなかったことになりますか。
最後の一文は、
「私は親の治療を奪ったことになるのか?」という質問になっていますので、
それにお答えすると、
私の考えでは、
治らない肺ガンに対しては、
立派な選択肢だったと思います。現在の代替療法は、
ある意味、「必要悪」だとも思います。大学病院では多くの場合、
「標準治療」か「無治療」かの二つに一つの選択肢しか与えられません、そうであれば、
迷わず「無治療」を選択します。その上で、
オマジナイと分かっていても、
代替療法へ走るかも知れません。
勿論、自分の身内ならば、
エビデンスは参考値としてだけ考え、
使い方を工夫して抗癌剤を使います。少なくとも大学病院の医者が言ったという、
「長生きできますよ」という標準治療を拒んだことは、
何も知らない当事者・ご家族が、
最悪の結論を見てから考えれば、
大きな後悔を残したことになると思いますが、現在の肺ガンに対する標準治療の現状を考えれば、
真っ当な選択だと思います。
その医者の言葉には、
「無治療よりは僅かに」
「副作用には苦しみますが」
という二つの枕詞が抜けています。結果は、
副作用で苦しんで逝ったか、代替療法に騙されたまま、
平穏な日々を送って旅立ったか、の違いだけです。
騙されたことに気が付くのは、
残されたご家族だけですから、
ご本人は気楽で呑気な闘病だったと思います。私は現在の肺ガンに対する標準的な抗癌剤治療に対して、
自分も含めて自分の身内の人間には、
絶対に行わない治療。と書いている反面、
4月16日の「肺ガン・大塚北口診療所」などで、
大学病院やがんセンターなどで、
標準治療を受けたうえで亡くなれば、
「最善を尽くした結果」
という文字通り致命的な誤解のもとに、
ご家族に後悔は残らない。ということも書いています。
現在の肺ガンに対する標準治療のお粗末な結果、
さらに患者さんの、
ガンという病気に対する無知、
も同時に見て知っているからです。
したがって、
このブログでは、
しつこく何回も、
ガン・ガン治療に対して知識を持ちましょう。
知識量と寿命とは、
確実に正比例しますよ。ということを訴えています。
近藤氏の「抗がん剤は効かない」も、
「標準的な使い方では」
という枕詞を付ければ、
間違いではありません。治らない肺ガンに対して、
標準治療を蹴って、
代替療法に騙されて亡くなられた、
その事実は、
チョッと残念ですが、「標準治療が最善の治療」
と騙されて旅立つより、
患者さんにとっては幸せなことだとも思います。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
何回も書いているとおり、
製薬会社主導で行われる治験から、
たくさんのエビデンスが出されてきます。
そして、医者はそのエビデンスを錦の御旗にして、
標準とされる治療を執行していきます。
治らないガンの場合、
その治療では100%の確率で死ぬことを意味しています。治るなどということは全く念頭にはなく、
無治療あるいは他の治療よりは、
若干長く生きていることができる、
というエビデンスがすべての根拠になっています。エビデンスは同じ種類の、同じ程度の患者さんを、
何千、何万人と集めて、
それらの患者さんを幾つかの比較対象グループに分けて、
それぞれのグループに、
まったく同一の治療を行います。
その結果、
どの治療が最善であるかが判断されます。
そのグループの中にが、
いまだに無治療グループが存在する治験もあります。
それはそれで医学のという科学の一つの考え方・手法であり、
無治療よりも1ヶ月でも長生きできる可能性があるという
結果が得られた治療であれば、
いくら苦しくてもその治療を受けようと考える患者さんがいても、
それは個々の価値観で決めることであり、
他人が決めることではありません。
いくらお粗末でもエビデンスが有る治療のほうが良い、
と考える患者さんがいても不思議ではありません。
だからがんセンターに行く、
というのも間違った考え方ではないと思います。
私の身内の人間であれば、
それはさせないというだけで、
それは私の価値観から考えてのことです。
しかし「エビデンスに基づいた治療EBMだけしか行わない」
と謳っている病院でも、
まったくエビデンスの無い治療も、
さもエビデンスが有るかのように患者さんを騙して、
行われています。それは「普通と違うガン」、
一般的なガンではない場合などです。エビデンスは、
一般的に多く見られる「普通のガン」に対してだけ出されています。
また、胃ガン、肺ガン、大腸ガン、卵巣ガン、子宮ガンなど、
一見普通と思われるガンでも、
普通ではないガン細胞によって構成されたガンが存在しています。エビデンスが出されているのが、
一般的には扁平上皮癌であるも、
それが腺癌だったり、
両者のミックスタイプであったり、
腺癌のはずが扁平上皮癌であったりと、
普通ではないガンも、
たくさん存在しています。共通していることは、
同じ臓器にできてきたというだけで、そのようなガンに対しては、
エビデンスはまったく存在しません。しかし最大耐用量の抗癌剤てんこ盛りの、
他の種類のガンに対する標準治療が、
エビデンスの存在しないガンにも、
何故かエビデンス・EBMを重視する病院では、
「標準治療」として執行されます。エビデンス・EBMを声高に謳い、
標準治療をはじめるも、
効果なく、
セカンドラインにエビデンスのある治療が、
存在しないとなると、
直ぐに「治療法はありません」宣告をする病院であれば、
はじめからエビデンスの無いガンに対しては、「このガンはエビデンスが有りませんか当院では治療はできません」というのが、
正しい誠実な対応だと思います。エビデンスの存在しない標準治療にも、
確実に多大な副作用だけはもれなく付いてきます。
その上、治療効果の有無については、
まったく不明です。ヒポクラテスという紀元前に活躍した医者の、
医師に対する格言に、
“First, do not harm!(まず第一に害を与えないこと)”という言葉があります。
これは今でも医療の大原則です。
医学部の学生の時に習います。
エビデンスのある標準治療では、
極めてHarmfulであることは分かっています。しかし、僅かでも延命効果がありそうだから、
命の重さは無限大と考えれば、
何とか成立する治療です。しかしエビデンスの無い、
Harmfulな治療は、
行ってはならないはずです。ところがドウいうわけか、
「EBM・エビデンス」と、
大騒ぎをしている病院ほど、
そのようなありうべからざる治療がまかり通っています。日本では「看板」があれば、
何をやっても良いようです。
政治家みたいなものですね。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
先日遠方からセカンドオピニオンに来られた患者さんのご家族から、
はじめて教えてもらったことですが、
九州大学の婦人科では、
婦人科ガンに対して、
所謂、休眠療法を行っているそうです。ホームページを見ると、
「テーラード化学療法によるがん休眠療法の開発」という一つの研究テーマが乗っていました。
具体的に、
どの程度のことをしているのかは知りません。
何回か書いていますが、
婦人科ガンの中で、
卵巣ガンだけは、
標準治療もけっして悪くはないと考えています。
それは、平均1年以上の無治療期間が得られる可能性があるからです。
残念ながら、
再発はほぼ必至であり、
再発した卵巣ガンは統計的には、
治ることはありません。しかし他の種類のガンとは大きく違い、
無治療・経過観察だけの平穏な時間が持てることは、
治らないガンを宿した患者さんにとって、
大きな宝物だと思います。しかし、すべての患者さんに、
まったく同一メニューの抗癌剤が、
機械的に注入されていくことには、
やはり大きな疑問があります。クスリに対する反応は、
すべての患者さんで違います。
それを無視して、
全員一緒。
如何なものでしょうか。
少なくとも、
治らないことが確定した、
再発卵巣ガンの場合にはなおさらです。昨年の日本の癌治療学会で、
慶応大学の産婦人科から、
卵巣ガン手術後の抗癌剤治療で、
骨髄抑制が大きかった患者さんのほうが、
無治療・観察期間が長く得られる傾向がある、
という報告が発表されていました。
その理由として、
ガンを発生させた母体が、
抗癌剤に対する感受性が強く、
大きな骨髄抑制を起こすならば、
その母体と似た性質を持っている可能性のあるガン細胞も、
抗癌剤に対して感受性が強いのではないか、
と考察されていました。
しかし、もしそうならば、
より大きな骨髄抑制を起こすように増量して抗癌剤を使えば、
無治療期間が延長する可能性がある、
ということにもつながると思います。必ずしも抗癌剤を減量するばかりが
テーラーメード化学療法ではないはずです。
患者さんにとって利益が大きいと判断されるならば、
勿論その判断は患者さんが下さなければなりませんが、
標準よりも増量することも、
一つの考え方ではあると思います。
しかし現実には、
現在の標準治療はほぼ限界量であり、
増量は副作用を増すだけのように感じます。九州大学の婦人科のホームページでは、
「休眠療法」さらに
難治性の癌に対して生活の質を落とすことなく
延命を図るテーラード化学療法も行っています。
と、謳ってありましたので、
抗癌剤の副作用で苦しめられることなく、
QOLを維持した、
標準ではない治療を目指しているものと思われます。その考え方で治療を行えば、
患者さんは間違いなくQOLの向上と同時に、
大きな延命も得られると思います。今まで私の勝手なイメージでは、
婦人科医は、腫瘍内科医と同様に、
細胞毒てんこ盛りの標準治療に凝り固まっているように感じていましたが、
婦人科の化学療法医も、
患者さんが望む治療を目指してくれはじめたことは、
日本の抗癌剤治療において、
非常に大きな進歩だと思います。九州地方の、
婦人科ガンの患者さんは、
九州大学の存在は忘れないほうが良いと思います。抗癌剤に対する効果も副作用も、
すべての患者さんで違います。すべての患者さんに共通することは、
抗癌剤ではガンは治らない、
という事実だけです。日本中で個々の患者さんとそのガンに合わせた、
テーラーメード化学療法が普及することを祈ります。
それが当たり前の抗癌剤治療だと考えます。以上 文責 梅澤 充
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私が医者になった当時は、
患者さんにガンという病名を出すことは絶対タブーでした。
しかし、現在の日本では、
ガンという病名の告知は常識になっています。さらにご丁寧に、
エビデンスどおりの予後まで解説してくれる、
親切な医者もいます。他人の寿命が分かる人間など存在しないと思うのですが、
何故かハッキリと数字を提示する医者も、
少なくありません。同じ種類のガンでも、
無治療でも、
数ヶ月しか生きていられない患者さんもいれば、
何年間もの長い時間、
普通に生活を送ることができる末期ガンの患者さんもいます。その事実をみると、
標準治療という大量の細胞毒が、
多少はガンに対して効果があっても、
人間の生きる能力まで奪い、
寿命を決めてしまうような気がします。ところで、
4月16日の「肺ガン・大塚北口診療所」で、
突然、「背中が痛い」という症状で来られた、
末期肺ガンの患者さんのことを書きましたが、
昨日もステージⅣの肺ガンが強く疑われる患者さんが、
ガンとは関係のない症状で、
突然一般外来に来ました。
私は自分の診察室のパソコンで、
その画像を見ただけですが、
肺ガン、縦隔リンパ節転移・肝転移が強く疑われます。
先日の背中の痛みで見つかった、
ステージⅣの肺ガンの患者さん、
昨日の同じような病状の患者さんに対しては、
4月16日の「肺ガン・大塚北口診療所」で書いたように、
大塚北口診療所では、
「進んでいるガンの可能性が高いから専門病院を紹介します」という言い方で、
都立駒込病院か関連の大学病院、
あるいはご希望の病院があれば、
そちらに紹介することになります。
その時、
その患者さんは、
どの様な告知を受けるのか、
とても心配になります。
私はお二人とも検査の写真だけで、
顔も見ていませんので、
年齢と性別しか情報はありません。
どの様な性格の患者さんなのか、
まったく知り得ません。いきなり、
「末期の肺ガンです」
「無治療で半年、抗癌剤治療をすれば9~10か月の命です」です。
などという宣告がなされるのでしょうか。
まさかそんな重篤な病気だとは、
夢にも思わず、
何となく町医者を訪ねただけで、
いきなり、
余命宣告までされた患者さん、ご家族は、
ドウ感じるでしょうか。あるいは、
「進行ガンですが、抗癌剤治療ができますから治療しましょう」などという、
嘘ではないけれども、
治ることなど念頭にない宣告で、
辛い治療が始まるのでしょうか。先日、3人の男性を殺したとされる女が、
死刑の判決を受けましたが、
「死にたくない」と即日控訴をしました。
その判決の正当性は分かりません。
しかし、人を殺した人間でも、
死刑にはなりたくない、
生きていたいと悪足掻きをします。
それが動物としての人間の本当の気持ちだと思います。
ガンというまったく自分には責任の無い、
神様の悪戯だけで、
死刑宣告された患者さんはドウ感じるでしょうか。死刑囚は絞首刑で数秒で死に至ります。
しかしガン患者さんは、
その前に毒薬による拷問のような責苦を受けることになります。「手術不能のガン・再発ガン ≒ 治ることはない」しかし、
「治ることはない = すぐに死ぬことではない」ということだけは、
患者さんは知るべきだと思います。治ると信じて、
あまりにも辛い治療に苦しむ患者さんは、
少なくありませんから、
そのような犠牲者を減らすためにも、
患者さんは、
その2点はシッカリと、
理解する必要があると思います。人の寿命など、
神様にしか分からないことは間違いありません。医者は神様ではありませんので、
無責任な宣告で悩まないでください。ただし、提示された数字が、
エビデンス・平均値であることは間違いありません。
さらに、そのエビデンスの数字にサバを読む医者もいるから、
話は厄介です。
納得のいかない説明を受けたら、
可能な限り、
多くのお近くの大病院でセカンドオピニオンを受けてください。
「標準治療 → エビデンスどおりの死」であることは間違いありませんから、
標準治療を受けるのであれば、
本当のエビデンスを先ず初めに理解しておく必要はあるとも思います。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
4月9日の「ガン患者さんの人権」では、
患者さんの国民、人間としての権利が守られていない、というようなことを書きましたが、
極めて頻繁に遭遇する、
当たり前の権利無視は、
情報提供です。セカンドオピニオンに行きたいから、
あるいは転院したいから、
「診療情報提供書(紹介状)を書いて欲しい」と一言言えば、医者はそれを拒むことはできません。しかし「今すぐに書いてくれ」
と言われても、他の患者さんを診るなどの仕事があれば、
そちらが優先され、
直ちに書類を出すという行為は、
物理的にも無理なことは少なくありません。
時間を持て余している医者は多くはありません。しかし、画像診断や血液検査の数字などは、
その所有権者は患者さんご自身です。
医療機関はそれを預かっているにすぎません。
したがって、
「写真だけをくれ」と言えば、
直ちにその所有者の患者さんに差し出さなければなりません。現在では多くの医療機関で、
画像診断結果は、
電子データになっています。
コンピューターを渡すことはできませんので、
DVDディスクなどにデータを落として渡されます。
そのための数百円の手数料は必要かも知れませんが、
患者さんが要求すれば、
本来はすぐに何でも出してもらえます。
しかし実際には、
多くの病院で、
なんだかんだと理由を付けて、
その提出義務を果たしていません。手術の時に切除した標本・検体も、
すべて所有権者は患者さんですから、
それを利用する治療を望む患者さんに対して、
その提出を拒むことはできません。しかし「そのような治療との併用は当院ではできません」は、
医者の正当な言い分です。その医者のまったく知らない治療を受けている患者さんであれば、
これからその医者が行おうとしている治療に対して、
如何なる影響が出るのか分からない、
という理由で、
治療を拒むことはできるはずです。
しかし、検体の提出は拒否できません。ただし大学病院などでは、
やたらとたくさんサインを要求されますが、
その中に、
「手術の提出検体は、研究用に使うため、
患者さんには提供しない」
などの文言が入っていると、
貰えない可能性はあります。
今では多くの医療機関で画像は電子データで保存されていますから、
物理的に広い場所は必要ありませんが、
むかしは、
何処の病院でもレントゲンフィルムの置き場所に困っていました。
レントゲンフィルムは、
意外と重いし、かさばります。
保守年限は法律で決まっているので、
勝手に廃棄はできません。
シッカリと保管しなければなりませんでした。
むかし、アルバイトに行っていたことがある、
整形外科の大先輩は、
脊椎の手術では、
日本では第一任者・名人で、
世界でも数本の指に入る名人でしたが、
膨大に発生するレントゲンフィルムの保管も名人でした。学会発表も盛んに行っていた先輩でしたので、
そのために重要なフィルムは、
シッカリと病院で保管して、
骨折後の治癒経過を診たフィルムなどは、
診察の時に一目だけ見て、
患者さんに、
「ほら、こんなに良くなってきている」
「ここがもう少し骨ができてくれば良くなる」
などと解説した後、
「記念に自分で持っていなさい」と言って、
半分以上のフィルムは患者さんに渡していました。
最高の省スペースでした。
患者さんとしては、
「そんなものもらっても仕方がない」
というかたも多かったと思います。
しかし「自分のもの」ですから
「いりません」とも言い難かったように思います。そして万一、失くしてしまった場合でも、
強引に患者さんにその保存を強制したわけではありませんから、
それは病院の責任にはならないはずです。
勿論、病院の監査などを行うお役所にも、
「患者さんの希望で患者さんが保管している」
の一言でOKでした。
話は逸れましたが、
検査フィルムやその他のデータなどは、
すべて所有権者は患者さんであることを、
お忘れなく。主治医との関係悪化は避けられないかも知れませんが、
病院長宛てに、
手紙一通出せば、
何でも確実に出てきます。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
4月6日の「人権の無いガン患者」でも書きましたが、
エビデンスのある治療が無くなった、
あるいは、患者さんの体力が標準治療に耐えられなくなった、
という場合、その状態の患者さんに合わせた治療を考える、
あるいは、エビデンスなど関係なく、
何とか治療を続ける、
という考え方は、
少なくとも日本にはほとんど存在していません。ガン治療の代わりに待っているのは、
BSCとよばれる「死を待つ時間」だけです。BSCとはBest Supportive Careのことで、
直訳すると「最善のサポート・介護」ということになりますが、
真実は「放置」「無視」と解釈されているようです。実際には本当に末期状態に至った患者さんに対して、
生きていくためのベストなサポートなど、
まったく行われることなく、患者さんが「餓死」していくのを待つだけの、
Best Support For Death(BSD)
「死へのサポート」だけであるように感じることも少なくありません。痛みが発生していたら、
その痛みを軽減させてあげる、
それだけで終わっている、
似非BSCもたくさん横行しているように感じます。何回も書いていますが、
治らないガンが存在しているだけでは、
一般的には簡単には人は死にません。
肺・肝臓・脳に致命的な病巣があれば別ですが、
ガン死の多くは餓死です。本当のBSCで餓死を防いでいけば、
ご家族で過ごす時間は、
少しでも長くすることも可能です。遠方から大塚北口診療所に何年間も通院されていた患者さんも、
地元の病院でBSCを受けているかたもいますが(したが)、
内容を聞くと、
BSCではなくBSDのように感じることもあります。
本当に末期の状態で、
苦痛に溢れた状態の時には、
「延命行為」は
「苦しい時間を延ばすだけ」という考え方もありますので、そのような場合には、
医者が判断するのではなく。
ご本人とご家族の意志を、
シッカリと主治医に伝えて、
希望どうりに、
BSCかBSDを選択してください。現在、そのどちらにするか、
はじめのガン専門病院の宣告からは1年以上は過ぎていますが、
ご本人も迷っている患者さんから、
昨日、電話がありました。
もはや大塚北口診療所まで、
通院する体力は残されていませんが、
可能であればご本人は治療を希望されているようで、
「治療をしないとガンはさらに悪くなるのですよね」
と訊かれました。
通院ができない原因は、
ガンの存在だけではなさそうです。
栄養不足が大きな原因のように感じました。
しかし、その患者さんを診ているのは、
シッカリとした本当のBSCを行っている病院です。「先ず、体力を付けてもらうように主治医の先生に頼んでください」
としか、言えませんでした。
答えようのない質問は、
本当にこころに重く残ります。
ご家族もその病院の主治医も、
苦渋の選択をしていると思います。ご家族、ご本人が、
考え抜いた末の選択であれば、
良いのですが、医者が安易に考えた、
似非BSCには絶対に騙されないようにご注意ください。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
大塚北口診療所は、
有床の診療所ですが、
大学病院やがんセンターなどのとは違い、
ただの風邪から腹痛、胸痛、高血圧、糖尿病、
肩や腰の痛み、擦り傷、切り傷でも、
何でも病む人を診ています。
常勤ではありませんが、
呼吸器、消化器、循環器、糖尿、内分泌、
さらに整形外科、脳神経外科の専門医も来ています。
土日の夜間は外来診療はありませんが、
平日は21時までの診療で、
しかも年中無休ですので、
救急から慢性疾患の患者さんまで、
何でもアリです。
そのように多様な病態の患者さんの中に、
時々ガン患者さんも混ざっています。治る可能性の高いガン、
すなわち手術が可能なガンの場合、
同一法人の東京北部病院で、
手術をする患者さんもたくさんいます。手術後は、
再発予防について如何に考えるかによって、
様々な方針に分かれます。
私が診ている患者さんもいます。昨日は、日曜日でしたが、
「最近、背中が痛い」
という患者さんが来られたようで、
その時に対応した医者では、
診断が難しかったようで、
また緊急性はなく、
CT検査だけを撮って、
「明日、外来に来るように」と指示して、
痛み止めだけを処方して、
お帰りいただいたようです。
そのCTを本日の朝、
一目見て、
「アーア」の一言でした。
肺ガンステージⅣで、
間違いはないと思われます。肺内転移、縦隔リンパ節転移アリ、
でした。
勿論、多臓器からの転移も有り得ますので、
先ず、その否定をしなければなりませんが、
いずれにしても、
治らないガンであることは間違いないと思われます。
予想通りステージⅣの肺ガンであったならば、
大塚という場所柄、
都立駒込病院あたりに、
あるいは関連の大学病院に、
紹介することになります。その患者さんは、
運が良ければ、
来年のお正月を迎えることができると思われます。
残念な予後しか予想されませんが、
患者さんのほうから、
「梅澤に治療をして欲しい」
というリクエストがないと、
私から進んで
「大塚北口診療所で治療しましょう」
とは言いません。
大塚北口診療所の呼吸器科の専門医が、
「診療情報提供書」という罪状を記した紙を患者さんに手渡して、
それを持って、
最期を迎えることになる病院に行くことになります。この流れは、
日本中、何処の開業医でも同じです。
多くは大学病院やがんセンターなどへの紹介になります。
眼科や整形外科、精神科など、
あまりガンとは縁のない医者以外、
それが何を意味しているのか、
十分に知っています。
その患者さんには、
「確実な死が待っている」
しかも「そこに至る過程では大きな苦痛に遭遇する」
ことなど十分に分かっています。しかしそうせざるを得ないのは、
一町医者にとっては、
一番無難だからです。大学病院やがんセンターで治ることなく、
最期を迎えれば、
ガンという病気を知らない素人のご家族は、
満足はされずとも、
悔いは残しません。
その点ご家族は幸せかもしれません私も一町医者です。
肺ガンステージⅣに対する、
標準的抗癌剤治療の実態、
その予後を知っていても、
患者さん、ご家族がそれを知らなければ、
治らないガンを診て、
当然訪れる結果を見たときに、
ご家族には大きな後悔が残ります。
「やっぱり大学病院に紹介してもらえばよかった」と。ガンという病は、
けっして珍しい病気ではありません。
今や普通の国民病です。ガンが簡単に治るように錯覚させる無責任な内容を放送している、
視聴率稼ぎに躍起な悪質な放送局も存在しているようですが、
手術や放射線治療以外で、
クスリで治るガンは、
急性の白血病など以外には、
ほとんど存在しません。
その事実をシッカリと認識していないと、
獄門島送りになってしまいます。ガンという言葉を聞いたら、
情報収集を直ちに開始してください。しかし「ガン」の中には、
一昨日の「ラッキーなガン」で書いたような、
大人しいヤツもいますので、
必ずしも慌てる必要はありません。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
一般名称:デノスマブ
商標名:ランマーク聞いたことがあるかたは多くはないと思います。
骨に転移したガンに対する、
新しい治療薬です。
明後日火曜日に発売になるようです。
大塚北口診療所では、
水曜日から使います。
現在では骨の転移に対して、
多くの場合、
ゾメタという一種類の薬剤しか認可されていませんでしたが、
新しい武器が加わることになります。
ガン治療には、
武器は多ければ多いほど、
戦いは優位になります。
本日は私の完全休養日です。
ネットで、
「デノスマブ」か「ランマーク」と検索すれば、
直ぐに見つかると思います。
興味のある患者さんは、
そちらをお読みください。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
先日、私の尊敬する先輩にガンが見つかりました。
医者ではありません。
大学の教授をしている人ですが、
偶然に開業医で採血したPSAという、
前立腺ガンの腫瘍マーカーがやや高かった、
ということからはじまりましたが、
必ずしもガンを強く疑うという数字ではなかったので、
先ずPSAの動向を経過観察、
低下、増加を繰り返し、
結局前立腺生検を行った結果、
16個の検体のうち1個だけから、
性格の大人しいタイプのガン細胞が見つかり、
目出度く、
ガンの確定診断が付きました。生検を行うことを決めたときに、
その後の治療の計画を立てましたが、
その時に相談した、
免疫細胞療法を行っている医者に、
「これこれこのタイプのガン細胞が出た」
旨を報告すると、「それは良かったですね!」親しい人間にガンという確定診断が付いて、
「ガンでした」
「良かったですね」
という会話のは、ガンを知らない素人さんには、
奇怪に感じられると思いますが、
ガンという病気は、
ピンきりです。年齢的に、
もう少し悪いタイプのガンを予想していたのですが、
予想に反して、
無治療での経過観察も、
一つの選択肢として存在するほど、
大人しいタイプのガン細胞でした。
70歳を過ぎていたら、
無治療・経過観察が最善かも知れませんが、
年齢的に考えると、
手術か放射線治療を受けるべきだと考えます。
治療効果は、
両者まったく同等とされていますが、
治療に伴う障害は、
まったく違います。
迷わず、放射線治療をすでに開始しています。
診断が付く前に信頼できる放射線科の先生にお願いしていました。
ガンという病名を聞いただけで、
恐れおののく患者さんは少なくありません。本当に恐ろしいガンも、
たくさんありますが、
大人しいガンも少なくありません。ガンという病名を聞いても、
その状況を冷静に判断してください。しかし、困ったことに、
その先輩の患者さんは、
そんな大人しいタイプのガンであり、
しかも、普通の患者さんは考えない再発予防の治療も、
何重にも用意しているにもかかわらず、
ガンという病名だけに怯えています。
彼の人生が幸福に満ち溢れていたのか否かは知りませんが、
せっかくガンという病名に怯えるのであれば、「死と向き合って生きる」という、
今までにはなかった、
新しい人生が得られるとチャンスだと思います。67年間も戦争が無いという、
世界中で極めて稀有な日本という国の国民は、
昨年の3月11日と同じことが、
再び日本の何処で起きるか分からず、
また、いつ何処からミサイルなどが飛んでくるかも知れない世界情勢の中、
戦後の素晴らしい平和教育の賜物として、「生きているのが当たり前」という平和ボケしてしまい、「人間は死ぬことが当たり前」という現実を忘れているように感じます。多くの患者さんを見送っていると、
私自身も生き続けていることのほうが不思議になります。
何時逝くのかまったく分かりません。
ガンジーの言葉に、
「明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい」という教えがあります。
凡人には理解し難い言葉であり、
様々な解釈があるようですが、
死を考えて生きると、
日々の生活が充実するように感じます。
ご自身の死を悟った患者さんからいただいた、
「宝物のような時間」という言葉、
その意味は、
「生きているのが当たり前」では、
絶対に得ることができない、
貴重な時間です。ガンジーさんは、
ガン患者さんに対して言ったのではないでしょうから、
日々平穏に生活している人間でも、
死を意識すると、
こころの安静と、
生きていることのありがたさを感じることができる、
というようなことを、
諭したように感じます。
何回も書いていますが、
ガンという病気、
ただの「悪い奴」だけではありません。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
本日はあまり忙しい一日ではありませんでしたが、
大塚北口診療所内のネット環境がダウンしてしまいました。
CTその他の画像データの送受信は、
問題なく、
診療には支障はありませんでしたが、
私のパソコンが、
ネットにつながらなくなりました。
ブログを書く時間はあったのですが、
何となくネットがつながらないと落ち着かないもので、
文章を書く気にならず、
本日の記事はできませんでした。
当たり前の機能が、
急に使えなくなると、
人間は本当にもろいでものですね。
20年前には考えられなかった携帯電話が、
突然無くなったら、
世の中ドウなるでしょうか。
現在の乳ガン治療では欠かすことができない、
パクリタキセルやハーセプチンなども、
その当時は存在していませんでした。
また、当時の日本では、
ガン患者さんに、
「ガン」を宿しているという、
今では当たり前の告知さえ存在しませんでした。もし現在、
ガンの告知が無かったら、
医療はドウ変わっていたでしょうか。
また、分子標的薬や新しい抗癌剤が無かったら、
ドウなっていたでしょうか。
今私が処方している薬剤では、
恐らく90%以上は、
ここ20年以内に開発されてきたものです。
それらの薬剤が存在しないと考えると、
恐ろしい気もしますが、冷静に考えると、
「治らないガン」に対しては、
「画期的」といわれるほどの変化があったとは思えないような気もします。勿論、確実な進歩を否定するつもりはありませんが、
実際にガンを患っている患者さんにとっては、
あまりにも、もどかしい進歩であるように思います。本日も今月初めに旅立たれた患者さんのご家族が、
わざわざ大塚北口診療所まで、
お礼を言いに来てくれましたが、
ハーセプチン、タイケルブと使える武器はすべて使いましたが、
肺転移再発が発見されてから、
はじめて町田胃腸病院に来られ、
その後は大塚北口診療所に通院されましたが、
5年と6か月しか生きていてもらうことができませんでした。
あと20年遅く病気になっていたら、
治療も変っていたと思います。
早く画期的なガン治療法が確立されることを祈ります。患者さんの、
ご冥福をお祈りいたします。
合掌
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
昨日NHKでTNF-αという、
「サイトカイン」という物質の一つを取り上げた番組を流していました。
すべての成人病の諸悪の根源、
であるかのように説明されていました。
一杯飲みながら見ていましたので、
正確には覚えておりませんが、
「またNHKの出鱈目番組か・・・」という印象だけはシッカリと残っています。
TNFとは「Tumor Necrosis Factor」の略で、
腫瘍壊死因子ともよばれ、
腫瘍細胞すなわちガン細胞からの防御にも
大きな役割があるとも考えられています。極めて複雑に絡み合った人間の防御機構・免疫系統の中の、
一つの歯車であることは間違いありません。恐らくガンに対する免疫機構の中でも、
大きな働きをしているものと思われます。「レミケード」という薬剤は、
リュウマチやクローン病などの、
免疫機構の異常が原因と考えられる病気に対して使われていますが、
その薬剤はTNF-αに対する抗体です。
すなわちTNF-αの働きを抑える薬剤です。
その作用により、
リウマチなどの自己免疫疾患といわれる病気の治療に使われています。
ガン患者さんでも、
本当に末期の辛く苦しい状態を、
緩和してくれるクスリとして、
健康保険では認められていませんが、
使っている医者もいるようです。
私は別のパソコンの中に、
1万例以上のガン患者さんの免疫力のデータが入っていますが、
全身状態が悪化して、
本当に「末期」といわれる状態になられた患者さんでは、
何故かTNF-αが異常に高くなります。全身状態が悪化したからTNF-αが増大したのか、
TNF-αが増大したから、
全身状態の悪化を招いているのかは不明です。しかしレミケードを注射すると、
一時的に患者さんが元気になる、
という現象を考えると、
後者の方が正しいのかも知れません。
しかしレミケードに延命効果は証明されていません。ガンに対する免疫力が向上する過程で、
先ず、TNF-αが増大して、
次にインターフェロンγが増え、
最終的にインタロイキン12(IL-12)が増加して、
抗腫瘍効果が発揮されるという仮説を立てていた医者も居ましたが、
その理論は成立していません。
しかしTNF-αは、
生体の防御機構の非常に重要な因子であることは、
間違いないと思われます。TNF-αはNHKが言うような諸悪の根源ではありません。危険な放射能でも平気で「安全です」というNHKですから、
視聴率を上げるためには、
どんな出鱈目でも、
「どうせ素人は分からないだろう」
と思って流しているのでしょけれども、
日本を代表するNHKという、
税金のように、
国民から自動的に巻き上げているお金で運営している放送局が、
あのザマですから悲しくなります。NHKがまったく信用できないのですから、
現在、ネット上に、
星の数ほど流されている、
ガンの情報など、
絶対に鵜呑みにはしないほうが無難です。
このブログも同様です。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
最近「休診札」が多くなってしまいました。
本日は、満員御礼のための休診です。
桜が満開の月曜日はガラガラだったのですが、
桜吹雪から葉桜になりはじめた途端に満員になりました。
どうせなら、
桜を愛でながらの点滴のほうが、
効果も大きくなりそうですが・・・本日は時間がありません。
ブログは休診にします。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
何回もしつこくお断りしていますが、
再び、
「こういう患者さんもいた」
「免疫力でガンと戦う」
という類のコメントがありました。
直ぐに削除したので、
目に留まってしまったかたは多くはないと思います。
ガンという個性あふれる病気について、
個々の他人のケースなど何の役にも立ちません。日本中で年間、
全国各地で何十回、何百回と行われている、
「医学会」と称される集会がありますが、
そこでも、
珍しいケースの「症例報告」というセクションがあり、
普通ではない経過を辿った(っている)患者さんが、
紹介されています。
日本中で年間数千例の症例報告があると思います。勿論、すべてがガン患者さんの症例ばかりではありませんが、
ガン関連も相当数に上ります。
ガンとはそれほど、
個性的なのです。恐らく健康食品業者あたりの、
数人のガン患者さんしか見たことがない人が、
勝手なコメントを投稿することはご遠慮ください。
藁を欲しがっている患者さんが、
万一それを信じて、
溺れてしまっても、
知らん振りを決め込むのでしょうけれど、
溺れてしまった患者さんは、
取り返しがつきません。
一方、
昨日の「ガン患者さんの人権」に対して、
以下のコメントがありましたが、
・・・・・
併せて、3ヵ月後に点滴も中止されてしまい
水分の投与すら中止してしまいました。
この行為は誰も承諾しておりません。
食事は多少食べることが出来ましたが、
歩けたものが、日に日にやつれて行き、最後は寝たきりになってしまい、
意識も朦朧となって行きました。
主治医に質問しましたが「これが一番苦しまないので本人の為です」
と言われ
最後は餓死に近い形で亡くなったものと思います。
本人の最後の一言は「水をくれ」でした。
・・・・・
食べなければ餓死する。
飲まなければ脱水死する。これには、
まったく例外も個性はありません。
すべての人間に共通することです。
それを医者が決めて良いものでしょうか?
コメントでは、
「この行為は誰も承諾しておりません。 」とありますが、
もしそのとおりだとすると、
医者は刑事責任を負うような気がするのですが・・・本日は休診日ですが、
休診日は雑用日であり、
時間がありません。
終わりにします。
このブログへの、
「症例報告」
の投稿はご遠慮ください。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
4月6日の「人権の無いガン患者」でも書きましたが、
治らないガン、
そしてすでに標準治療を終えてしまい、
次なる標準治療が確立されていない病態を宿した患者さんは、
「生きる」という、
人間の最低限度の権利さえ保障させず、
簡単に切り捨てられているように感じます。「人権団体」と称する集団は、
何をしているのでしょうか。
現在の日本では、
高齢化の問題が大きく取り上げられています。
そして、それを介護する職員の不足も大きな問題になっています。
しかし、その介護受けているお年寄りを見ると、
完全な痴呆症を合併して、
ご家族は勿論ご自身の存在すら認識できない、
自分では食事を摂る意識すら消失しているようなかたも珍しくありません。
自分から何かを食べようとする意志すら感じられないお年寄りも、
普通に存在しているように感じます。
それでも生きるための介護を受けています。
口からは食事が摂れなくなったお年寄りでは、
胃に穴を開けて、
胃廔といわれるチューブを挿入して、
そこから胃に直接栄養剤を流し込みます。
その治療?を受けているお歳よりは、
生きていることを望んでいるのか否かも分からない、
うつろな目をしています。
日本では自分で食事を摂る意識も、
生きていることの意義も分からなくなってしまったような痴呆老人でも、
胃廔を作ってでも生かそうとする。
それは栄養を与えなければ、
確実に餓死するからです。一方、
4月6日の「人権の無いガン患者」でも書いたとおり、
治らないガンを宿した患者さんも、
様々な原因で、
食事が摂れなくなります。勿論、食事が摂れなくなった場合、
何らかの方法で栄養を供給してあげなければ、
確実に餓死します。
ガンが進行しなくても、
エネルギーの補給を絶つことは、
すなわち命を絶つことです。しかし多くの場合、
標準治療ができなくなると、白衣の閻魔様に、
「ガンに栄養を与えるだけ」
「副作用が増加して苦しむだけ」
などというお決まりの口上で、
患者さんを死に導く説法を下さり、
患者さんは思い通りに諭されてしまい、
栄養補給の道は絶たれます。標準治療などできなくても、
エビデンスなど存在していなくても、
ガンが危機的な致死的な状態に至っていなければ、
患者さんはすぐに死に至ることはありません。ガンが患者さんの命を直ぐに奪ってしまう状態ではないけど、
そのガンに対する、
標準治療が終了してしまっていて、
更なるエビデンスのある治療は存在していない、
そのようなケースは幾らでもあります。
いわゆる標準治療しか行っていない病院で治療を受けた患者さんの、
半分程度はそのような状態で病院から放り出されます。
世に言う「ガン難民」です。ガンでは死なないし、
まだ体力も残されている、
しかし大量に使われた抗癌剤の影響などで、
食事が摂れない、
という患者さんは相当数に上ると思います。ガン難民になっても、
何処かの収容所が見つかればいいのですが、
それを見つけることができない場合、
徐々に患者さんの体力は低下していき、
短い時間の間に、
寝たきりの状態になります。その場合、
ほとんどのご家族、
同時に患者さんご自身までも
ガンが進行してきて、
全身の状態が悪くなり、
とうとう寝たきりになってしまった。
と考えてしまいますが、
大きな勘違いです。食べていない、
食べることができないから、
寝ている状態が一番楽ですから、
一日中寝たきり状態になるだけです。そして、ガンで死ぬのではなく、
餓死に至ります。エビデンスが無くても人は死にません。
また標準治療ができないなら、
標準ではない治療を行えばよいだけです。一番はっきりしているエビデンスは、
動物は食事が摂れなくなると死ぬ。
という現実です。150歳の人間などでは、
一切のエビデンスは存在しません。
だからといって、
栄養補給を絶てば、
それは立派な殺人(保護責任遺棄)です。しかし、それが、
ガン患者さんには正当化されているのが現状です。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
本日は大塚北口診療所に入院中の患者さんを診に行っただけで、
他の仕事は、
一切お休みにしました。
昨夜はたくさんお酒を飲んで、
朝は自然に目が覚めるまで寝て、
心身共に、
のんびりの一日です。
ブログもお休みにします。
外は、まだ明るいけど、
早く風呂に入って、
一杯楽しみます。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
3月25日の「ガン・患者・医者・製薬会社」で、
チョッとだけ書いた、
「冥途の土産にアラスカまでオーロラを見に行く」と言われて、
治療の延期を申し出た患者さんが、
先日、元気に戻って来られました。
絵葉書のような、
美しいオーロラの写真をお持ちになられました。
本当に「キレイ」「ウツクシイ」としか言えないような、
神秘的な写真でした。
まだまだ冥途行は、
阻止させてもらいますが、
生涯に一度でも、
あの実物を見た日本人は何人いるでしょうか。その患者さんも、
ガンを患うことがなければ、
一生涯あの神秘に出会うことはなかったと思います。以前、同じ病院で働く職員が、
一人で北極圏まで観に行ったそうですが、
生憎、気紛れなオーロラは出現しなかったようです。
今はアラスカまでは、
6~7時間で行けるそうです。
今年は特にオーロラの当たり年だそうですが、
あの写真を見せられたうえ、
彼の説明だと、
「これ(オーロラ)が空を流れてくるんですよ」
だそうです。私も行きたくなりました。
しかし冬場に1週間の休暇は難しそうですが、
年末年始で計画しようかしら。
これはガンという病気がくれた、
一つの幸福だと思います。しかし、このように、
神様が残してくれた人生を
精一杯楽しもうと考える患者さんだけではありません。
放射線治療の可能性は残され、
根治は無くても、
ある程度の延命は可能と思われる、
予後の良くないガンを宿した患者さんは、
毎回、涙ながらに
「死にたくない」
「まだ生きていたい」と、
それだけを念仏のように唱え、
ただただ病気の存在そのものを、
恐れ怯えています。
治らないガンを宿したすべての患者さんは、
少なからず、
様々な不安に駆られています。しかし頭の中がその不安だけで占領されてしまう患者さんも、
希ですが居られます。そのような患者さんを診ていると、
本当にお気の毒になります。
いくら大きな不安に襲われて、
怖がっても泣いても、
結果は同じです。否、同じどころか、
恐らく精神的なストレスから、
予後は悪くなる可能性すらあります。そもそも不安に占拠された思考回路の中で生きていても、
楽しい人生を送ることができるはずはありません。
ご家族には、
精神科の専門医に相談するようにお話ししましたが、
そのような精神状態の患者さんは、
本当にお気の毒になります。
神様がどれくらいの時間をくれるのかなど、
誰にも分かりません。
白衣の閻魔様などには、
絶対に分からないことです。その貴重な時間を、
如何に楽しく過ごすかを考えるほうが、
どれだけ幸せなことか分かりません。下の2枚の写真は、
真冬の寒空の桜と、
満開の桜です。
同じ樹です。


以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
昨日まで元気だった普通の人間が、
検診や人間ドックなどで、
治らない状態のガンを背負っていると診断されると、
日本の社会からは様々な差別を受けることになります。一つには就労問題があり、
これも大きな問題ですが、
それ以上に、
ご自身のその病気に対する対処法に対して、
選択肢を自由に決められないことです。ほとんどの場合、
ご自分の命と残された大切な時間に大きくかかわる、
その治療法が、
白衣の閻魔様によって一方的に決められてしまいます。唯一与えられる選択肢は、
「無治療」か「標準治療」かだけです。ガンという病気、
それに対する抗癌剤治療をはじめて経験する普通の患者さんは、
標準治療を受けると、
如何なる経過を辿るかも知りませんから、
多くの患者さんが、
迷わず「標準治療をお願いします」といことになります。その結果は、
多くの種類のガンで、
患者さんはまったく望んでいない方向に向かうことになります。その乗り心地の極めてよろしくない、
標準列車の行先が間違っていると気が付いたときには、
ほぼ手遅れの状態になっています。
突っ走っている列車からの離脱は、
なかなか困難です。社会保障の充実を形容する、
「揺り籠から墓場まで」という言葉がありますが、
某国立のがんセンターでは、
敷地の中に火葬場を造るくらいの配慮をしてもよいと思うくらいです。治すことができないガンに対して、
エビデンス・EBMを叫ぶだけはなく、
「治らないガン → EBM → 火葬場」も標榜する方が親切です。
元気で無症状の人間に対して、
ガンという、
誰の責任でもない罪を背負ってしまうと、
ハッキリと「あと○○ヶ月です」
とご丁寧な宣告をしてくれるのですから、
その○○ヶ月後の行先を迷うことなく決められるくらいの、
配慮をしてもバチは当たらないと思います。
治療の方法を選べないことも大きな問題、
人権侵害だと感じますが、
さらに重大な人権侵害が、
患者さんもご家族も気が付かないところで、
粛々と執行されています。何回も書いていますが、
ガンが進行してくると、
様々な原因で十分な量の食事が摂れなくなります。
ガンによる痛み、
その痛み止めの副作用、
消化器そのものの機能障害、
抗癌剤の副作用、
などなど原因は様々ですが、
いずれにしても、
十分なカロリーの食事が摂れなくなると、
人間は生きていけなくなります。しかし、その食事が十分に摂れなくなった患者さんを診ても、
多くの場合、
十分な栄養補給がなされることはありません。
栄養が与えられないと、
その人間は確実に「餓死」します。
それでも「ガン死」として書類上は処理されます。まだ、エビデンスのある治療が終了していない患者さんでは、
健康保険でも処方できる経口栄養補助食品などで、
多少の栄養補給も考えてもらえますが、エビデンスのある治療が終了した患者さんでは、
患者さんご家族が、
主治医にいくら「食べることができない」と訴えても、
栄養補給はされることなく、
そのまま衰弱して、
「ガン死」ではなく「餓死」していきます。
それが日本の「緩和ケア」では少なくないように感じます。勿論、本当に患者さんが望む、
「緩和」ケアを行っている善良な医者がほとんどだと信じますが。
「腫瘍内科医の心理」はじめ、
何回も書きましたが、
原因不明で食べることができなくなった患者さんに対して、
市立病院がそこの市民に対してさえも、
「抗癌剤治療の適応はない、BSCの適応です」と決めつけて、
入院していても1日400カロリー程度の栄養しか与えず、
餓死させようと企てていました。
入院中のその病院から、
救急車で1時間以上かけて大塚北口診療所に避難して、
難を逃れましたが、
そのままになる患者さんも相当数に上ると思います。
BSCとはBest Supportive Careのことで、
直訳すると「最善のサポート・介護」ということになりますが、
真実は「放置」「無視」と解釈されているようです。市立病院のバカ主治医に「放置」された患者さんは、
大塚北口診療所に入院後、
間も無く退院して、
1週間後には2時間もかけて、
自分の足と電車で通院されてきています。
ガン患者さんに対して、
漠然と「痩せ衰えている」という、
イメージを持っている人は少なくないと思いますが、
それは、ガンを背負っているために痩せているのではありません。
食べることができないから痩せてしまうのです。ただの動物である人間は、
十分なカロリーが入らなければ、
生活に活力も元気も出ません。
それはガンの存在のためではありません。
食べることができない、
ただそれだけのためです。
あるいは抗癌剤の副作用で苦しんでいるのかも知れません。ガンの存在だけでは、
そう簡単に人間は死にません。ガン患者さんは、
「標準治療ができない」
ただそれだけの理由で、
BSCという名のもとに、
餓死へと誘導されます。
生きていく権利さえ奪われてしまいます。たしか日本国の憲法では、
すべての国民は最低限度の生活を保障されているはずですが、
治らないガンを宿すと、
その権利さえ放棄させられます。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
本日もレセプトと、
他の雑用のために時間が取れません。
ブログは休診にします。
しかし厚労省も、
医療費削減に必死のようで、
今までは、
その月のレセプトだけが、
病名、使用薬剤、処置などの整合性が合えば、
それだけでよかったのですが、
先月から、
半年に遡って、
整合性を監視する、
というお達しがありました。
自由な医療はますます遠のくように感じます。
また、先日も書きましたが、
値段が安いことだけは確実な、
後発薬品を使うことを異常なほどに奨励して、
後発薬品使用の割合で、
その医療機関を評価する、
という厳しい手法も出してきました。
日本は何処に向けて舵を切っているのでしょうか。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
本日は月初恒例のレセプトの山が押し寄せてきました。
時間がありません。
ブログは休診にします。
下は、大塚北口診療所の点滴室の窓からの桜です。

以上 文責 梅澤 充
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抗癌剤治療のみならず、
ガンの治療では、
手術でも放射線治療でも、
製薬会社は大きな貢献をしてくれています。
フト、その製薬会社のことを考えました。
日本では「ガスター10」という名前の制酸剤が、
テレビコマーシャルで有名ですが、
ガスターが開発される数年前の1982年にはじめて日本に、
ガスターと同じH2ブロッカーという
新しい種類の制酸剤タガメットという薬剤が入ってきました。
数年後に発売された日本製のガスターのほうが、
遥かに制酸効果が大きく、
副作用もタガメットよりは小さかったのですが、
当時、タガメットを作っていた会社は、
「そこまで大きな制酸効果は必要ない」
というような宣伝をして、
日本製のガスターを牽制していました。
ところが、
その数年後、
ガスターの制酸効果を遥かに凌ぐ、
まったく新しい概念のPPIという制酸剤を、
タガメットの会社が開発しました。
その時には、
「より強い制酸効果で胃粘膜障害、十二指腸潰瘍を素早く治癒させる」
というような、
まったく逆の宣伝を恥ずかしげもなく、
大々的に打ってきました。
実際のそのとおりになり、
それまで盛んに行われていた、
十二指腸潰瘍や胃潰瘍に対する手術は、
ほとんど必要なくなり、
クスリだけで治る病気になりました。
ちなみに夏目漱石の死因は胃潰瘍だそうですが、
100年後に生まれていれば、
若くして死ぬことはなかったと思われます。
それは、ともかく、
製薬会社は自社のクスリの宣伝のためには、「本当に患者さんのためを思っているのか?」と疑問を持ちたくなることがしばしばあります。最大耐用量の抗癌剤を注入して、
大きな副作用の代償として、
ほんの僅かな延命を得る。
これが、ガン患者さんが望む治療でしょうか。さらに卵巣ガンや乳ガンに対するアバスチンのような薬剤も、
延命効果は無いことが証明されているも、
市場に乗り出そうとしています。
実際にアメリカでは発売中止になりましたが、
日本での乳ガンに対するアバスチンは、
まだ、認可の取り消しにはなっていません。
勿論、使い方次第では、
十分に延命に寄与する薬剤だと思いますが、エビデンスでは、
「延命効果無し」が証明されており、
日本ではエビデンスどおりに使うことが前提になっています。製薬会社がガン治療に大きな貢献をしているのは事実です。
しかし現在のガン治療は、
医者が完全に製薬会社の作り出すエビデンスに引きずり込まれ、
それにガンジガラメに縛られて、
何もできない状態のように感じます。その治療には、
多額の治療費もかかりますが、
患者さんは、
何の文句も言わずに、
受付で大金を支払っていきます。
この姿は、
現在の日本政治とソックリであるような気がします。
いろいろな方面からの話を聞きかじると、
現在の日本ではお金が無く、
消費税を大幅に上げなければならないのだそう(野田総)ですが、
それに対して十分と思われる説明などまったく無く、
増税はしないというマニフェストという公約で、
票を釣っておいて、
一度釣り上げてしまったら、
公約など何処吹く風で、
ただただ「お金を払え」の姿勢を見ると、
今のすべての日本人は、
ガン患者さんと同じような境遇に置かれているような気がします。大学病院でも、
個々の患者さんを診て、
柔軟に対応してくれる病院がある、
というコメントがありましたが、
医療も政治も、
国民、患者さんに分かりやすく、
誰もが納得する方向で、
進んで行ってもらいたいと思います。しかしそれは国民の意識次第だと思いますが。以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
昨日、久しぶりに、
こころから喜べる知らせがありました。
2月10日「人生イロイロ」でお知らせしたとおり、
このブログの管理をお願いしていたITのプロが、
2月9日に突然の交通事故に遭いました。
その時の電話で聞いた、
外傷の内容から、
社会復帰はおろか、
余命も幾ばくも無い、
それでよく生きている、
と考えざるを得ない状態でした。
そして一月を過ぎても意識も出ない、
ということを聞いて、
所謂、植物人間、
間も無く脳死の状態に至ってしまうだろう、
などと勝手に予想していました。
昨日も彼の携帯に連絡しても、
相変わらずの留守電状態。
完全に諦めていました。
それが昨夜、
彼の奥様から(彼の携帯で)連絡があり、
奇跡的に意識が戻り、
四肢の麻痺は無し。
意識はまだ、
ボンヤリしているものの、
記憶も戻りつつある。
「ウメザワセンセイ」の名前も完全に覚えている。
とのことでした。
受傷直後、当然、主治医は、
「回復は有り得ない」
という当たり前の宣告をしていたようですが、今は、
「奇跡以外にない」
という言葉に変わったようです。突然の交通事故も、
神様の悪戯でしょうけれども、
「生きるはずがない」重度の外傷を負った人間が、
奇跡的に回復する。
これも神様の気紛れでしょう。
気紛れでも何でも、
助かって良かった。
本当に良かった。
昨夜、電話を貰って、
涙が止まりませんでした。
死ぬと思っていた人間が、
生き返った。神様の悪戯も過ぎるように感じますが、
ともかく良かった。
社会復帰をされたら、
当然このブログの更新も、
再びお願いする予定です。
生きていると、
何でも起こる可能性があります。
彼の場合、
希望ゼロからの復活です。諦めたら、
その時にすべてが終了します。本日は、
3月16日の「連日休診」をはじめ、
何回か書いた、
都内某市立病院のバカな呼吸器内科医が、
「治療の意義無し」
の勝手な判断のもと、
強制的に餓死させられようとしていた患者さんが、
電車で2時間もかけて、
ご自身の足で歩いてきました。
10日間ほとんど栄養補給が無い状態で入院していた、
市立病院からの脱出に成功して、
11日前に大塚北口診療所に入院した時には、
歩くこともできませんでした。
餓死寸前の状態でした。
ガンは悪化していませんでした。
ガンはご自身が諦めても終わりですし、
閻魔様気取りのバカな医者に見捨てられてもお終いです。十分にご注意ください。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
タイトルは、勿論、4月1日のウソです。
しかし実現して欲しいです。
ところで、
昨日の「生きているということ」に対して、
コメントがありました。
3月初めに旅立たれた先生の患者さんの友人です。
ホスピスで最期に会った時、
先生からいただいたメールを嬉しそうに見せてくれました。
結局、食べることをあきらめて逝ってしまいました。
でも先生やスタッフの方に出会えたことを本当に喜んでいました。
・・・・・・
あの時の、
病の床から頂いたメールも、
私が返信したメールも、
今でもハッキリ覚えています。
ご自身から完全に諦めてしまった患者さんでしたが、
「何とか生きていて欲しい」
と願ってメールを書きました。
しかし、結果は、
思い出が残っただけになってしまいました。
最期のセレモニーの日程もご案内いただきましたが、
二日とも所用でお別れができませんでした。
申し訳ありません。
あらためて、
ご冥福をお祈りいたします。
合掌
時々引き分け状態に持ち込めることもありますが、
正直、ガンというあまりにも強い敵に、
何回も叩きのめされていると、
今の仕事を続けることが、
辛くなってきます。
昨日も、
通院中の患者さんが、
大塚北口診療所に着くなり、
エレベータの前でバッタリ倒れるという、
餓死寸前の状態で来られました。
直ぐに入院して、
点滴での栄養補給を開始しましたので、
事なきを得ましたが、
「食欲が落ちるようなら、
飲む抗癌剤は減量でも中止でもかまいかません、
ご自身で判断してください、
先ず、食事を十分に摂ることが一番重要ですよ」としつこく何回も説明しましたが、
食事は摂れなくても、
「ガンを良くするために飲む」
という焦る気持ちで、
律儀に飲まれてしまったようです。日本人は治らないガンに対して、
真面目過ぎるように感じます。本日、その入院中のご本人を診に行くと、
点滴で栄養補給をしただけで、
昨日とはまったくの別人になっていました。少々、遠方の患者さんでしたので、
3週間に1回という通院頻度にしたことで、
飢餓状態が長くなってしまったようです。
まだまだ、ガンが命を奪う状況ではないので、
餓死しては何のための治療か、
まったく分からなくなります。
「餓死」という、
今の飽食の日本では有り得ないような事態が、
ガン患者さんの隣には、
ヒッソリと隠れています。十分にご注意ください。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。