昨日一枚の葉書が届きました。
名前を知らないかたからでしたので、
何だろう、誰だろうと思いながら、
内容を見て唖然としました。
すでに10年以上前だったと思いますが、
手術など不可能なほど巨大で皮膚にも飛び出す状態にまで、
成長させてしまった乳ガンを宿した、
当時60歳を超えた患者さんを診ました。
当然腋窩リンパ節にも巨大な転移病巣がありました。
昨日の「パージェタ・残念」でも書いた、
ハーセプチンが出て間もないころです。
当時まだ悪魔の遺伝子と考えられていましたが、
今思えばラッキーなことに、
ハーツー蛋白の過剰発現を認めるタイプの乳ガンでした。
ご本人も病気のことは、
初診のかなり前から当然自分でも分かっていて、
「いつ死んでもいい」
などとかなり自暴自棄になっていました。
まあ、手術はできないし、
「辛い治療は絶対にイヤ」とのことで、
ハーセプチンは効きそうだし、
ハーセプチンの標準量と、
4分の1の量にしたパクリタキセル(当時はタキソールだけでした)だけで、
治療を開始しました。
すると見る見るうちに巨大なガンは縮小していき、
1年数か月後に手術が可能になりました。
町田胃腸病院で現在の院長先生に手術をしてもらいました。
病理検査結果を見てビックリしました。
顕微鏡上も、
「がん細胞の存在は確認されず」
という状態に至っていました。
当然、治療開始の時には、
浸潤癌であることが顕微鏡で証明されています。
1年以上パクリタキセル(タキソール)を使っても、
カツラの必要はありませんでした。
その後ホルモン剤内服だけで、
お元気に生活されており、
ここ数年は3~4ヶ月に1回程度の通院になっていました。
「あの時、ずいぶん捨て鉢になられていたけど」
「生きているのも悪くはないんじゃないですか」
などと言うと、
「こんなに生きていられるとは思わなかった」
治ったのか否かは分かりません。
がん細胞のタネが身体の何処かに残っていた可能性もあります。
しかし、手術不能の状態から、
10年以上ガンの存在が確認されないまま生活されていました。
しかし、ガンとは関係の無い病気で突然急死された。
という知らせの葉書でした。
苦しむことはほとんどない、
ラクな逝きかただったようです。
人間はやはり死ぬ、
という当たり前の現実をあらためて、
思い知らされました。
治らないガンを宿していても、
「治らない = すぐに死ぬ」
ではありませんから、
諦める必要なんかありません。
辛い拷問に耐える必要なんてサラサラありません。
辛くない治療で十分です。
パクリタキセルを使っている女性患者さんの、
ほとんどがカツラが必要になっていると思いますが、
脱毛が無いレベルでも、
十分に効いてくれます。
暑さがぶり返した東京で、
その暑さも吹っ飛ぶビックリさせられる葉書でした。
患者さんのご冥福をお祈りいたします。
合掌
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
名前を知らないかたからでしたので、
何だろう、誰だろうと思いながら、
内容を見て唖然としました。
すでに10年以上前だったと思いますが、
手術など不可能なほど巨大で皮膚にも飛び出す状態にまで、
成長させてしまった乳ガンを宿した、
当時60歳を超えた患者さんを診ました。
当然腋窩リンパ節にも巨大な転移病巣がありました。
昨日の「パージェタ・残念」でも書いた、
ハーセプチンが出て間もないころです。
当時まだ悪魔の遺伝子と考えられていましたが、
今思えばラッキーなことに、
ハーツー蛋白の過剰発現を認めるタイプの乳ガンでした。
ご本人も病気のことは、
初診のかなり前から当然自分でも分かっていて、
「いつ死んでもいい」
などとかなり自暴自棄になっていました。
まあ、手術はできないし、
「辛い治療は絶対にイヤ」とのことで、
ハーセプチンは効きそうだし、
ハーセプチンの標準量と、
4分の1の量にしたパクリタキセル(当時はタキソールだけでした)だけで、
治療を開始しました。
すると見る見るうちに巨大なガンは縮小していき、
1年数か月後に手術が可能になりました。
町田胃腸病院で現在の院長先生に手術をしてもらいました。
病理検査結果を見てビックリしました。
顕微鏡上も、
「がん細胞の存在は確認されず」
という状態に至っていました。
当然、治療開始の時には、
浸潤癌であることが顕微鏡で証明されています。
1年以上パクリタキセル(タキソール)を使っても、
カツラの必要はありませんでした。
その後ホルモン剤内服だけで、
お元気に生活されており、
ここ数年は3~4ヶ月に1回程度の通院になっていました。
「あの時、ずいぶん捨て鉢になられていたけど」
「生きているのも悪くはないんじゃないですか」
などと言うと、
「こんなに生きていられるとは思わなかった」
治ったのか否かは分かりません。
がん細胞のタネが身体の何処かに残っていた可能性もあります。
しかし、手術不能の状態から、
10年以上ガンの存在が確認されないまま生活されていました。
しかし、ガンとは関係の無い病気で突然急死された。
という知らせの葉書でした。
苦しむことはほとんどない、
ラクな逝きかただったようです。
人間はやはり死ぬ、
という当たり前の現実をあらためて、
思い知らされました。
治らないガンを宿していても、
「治らない = すぐに死ぬ」
ではありませんから、
諦める必要なんかありません。
辛い拷問に耐える必要なんてサラサラありません。
辛くない治療で十分です。
パクリタキセルを使っている女性患者さんの、
ほとんどがカツラが必要になっていると思いますが、
脱毛が無いレベルでも、
十分に効いてくれます。
暑さがぶり返した東京で、
その暑さも吹っ飛ぶビックリさせられる葉書でした。
患者さんのご冥福をお祈りいたします。
合掌
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。