2ヶ月ほど前に、
ハーセプチンと同時に3週間に1回の点滴をおこなう、
ペルツブマブ(商品名:パージェタ)という、
新しい分子標的薬が、
製造承認が下りて、
今月中には薬価が決まり、
即、発売になる予定でしたが、
薬価は収載されましたが、
発売が遅れることになってしまいました。
当該製薬会社によると、
予想以上に使われるであろうことが判明して、
供給が追い付かないために、
9月中旬になるとのことでした。
それだけ何処の医療機関でも、
期待が大きい薬剤であるという証ではありますが、
遅くても8月27日には薬価収載、
翌日28日から使用開始という手はずで考えていた患者さんには、
たいへんな迷惑をおかけしてしまいました。
申し訳ありません。
薬価が決まったのに使えないとは、
残念の一言です。
しかし考えてみると、
10年とチョッと前にハーセプチンが登場してから、
乳ガン治療は大きく変化しました。
それまで極めて予後不良の因子であった、
「ハーツー蛋白の過剰発現」を来す遺伝子は、
悪魔の遺伝子でした、
それが一変、ハーツー蛋白の過剰発現を認めれば、
ハーセプチンが使えて、
予後も大幅に改善されて、
再発予防にも役立つ、
しかも副作用は極めて軽微。
ハーセプチンの日本での発売当初、
アメリカでは心不全による死亡者も出ており、
心臓機能障害が懸念されましたが、
アドリアマイシンやファルモルビシンなどの、
アンスロサイクリン系の細胞毒で、
すでに心機能がボロボロにされた患者さんが、
ハーセプチンの、
ごく僅かな心毒性に耐えられなかっただけのことのようで、
発売当初義務付けられていた、
毎月の心臓超音波検査も、
初回開始前の1回だけ大丈夫と分かり、
(血液での心機能は月に1回観ていますが)
安全・安心に使える薬剤で、
患者さんの延命、再発予防に大きく貢献しています。
平成2~3年頃に、
手術症例でその遺伝子を調べたことがありますが、
当時のハーツー蛋白の過剰発現は、
本当に悲惨でした。
悪魔の遺伝子でした。
それを逆手に取ってハーセプチンを作った製薬会社には、
感謝しなければなりません。
しかしパージェタも同じ会社のクスリですが、
残念な結果です。
想えばイレッサの時もそうでしたが、
がん治療は命のリレーみたいなところも多分にあります。
クスリというバトンを上手く繋いでいくと、
楽しく長い人生が貰えます。
チャンスを見逃さないでください。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
ハーセプチンと同時に3週間に1回の点滴をおこなう、
ペルツブマブ(商品名:パージェタ)という、
新しい分子標的薬が、
製造承認が下りて、
今月中には薬価が決まり、
即、発売になる予定でしたが、
薬価は収載されましたが、
発売が遅れることになってしまいました。
当該製薬会社によると、
予想以上に使われるであろうことが判明して、
供給が追い付かないために、
9月中旬になるとのことでした。
それだけ何処の医療機関でも、
期待が大きい薬剤であるという証ではありますが、
遅くても8月27日には薬価収載、
翌日28日から使用開始という手はずで考えていた患者さんには、
たいへんな迷惑をおかけしてしまいました。
申し訳ありません。
薬価が決まったのに使えないとは、
残念の一言です。
しかし考えてみると、
10年とチョッと前にハーセプチンが登場してから、
乳ガン治療は大きく変化しました。
それまで極めて予後不良の因子であった、
「ハーツー蛋白の過剰発現」を来す遺伝子は、
悪魔の遺伝子でした、
それが一変、ハーツー蛋白の過剰発現を認めれば、
ハーセプチンが使えて、
予後も大幅に改善されて、
再発予防にも役立つ、
しかも副作用は極めて軽微。
ハーセプチンの日本での発売当初、
アメリカでは心不全による死亡者も出ており、
心臓機能障害が懸念されましたが、
アドリアマイシンやファルモルビシンなどの、
アンスロサイクリン系の細胞毒で、
すでに心機能がボロボロにされた患者さんが、
ハーセプチンの、
ごく僅かな心毒性に耐えられなかっただけのことのようで、
発売当初義務付けられていた、
毎月の心臓超音波検査も、
初回開始前の1回だけ大丈夫と分かり、
(血液での心機能は月に1回観ていますが)
安全・安心に使える薬剤で、
患者さんの延命、再発予防に大きく貢献しています。
平成2~3年頃に、
手術症例でその遺伝子を調べたことがありますが、
当時のハーツー蛋白の過剰発現は、
本当に悲惨でした。
悪魔の遺伝子でした。
それを逆手に取ってハーセプチンを作った製薬会社には、
感謝しなければなりません。
しかしパージェタも同じ会社のクスリですが、
残念な結果です。
想えばイレッサの時もそうでしたが、
がん治療は命のリレーみたいなところも多分にあります。
クスリというバトンを上手く繋いでいくと、
楽しく長い人生が貰えます。
チャンスを見逃さないでください。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。