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旅行記その1 「イォコとの出会い」

今回のヴァカンスは定例のオーモン・オーブラック経由で始めることにしました。健康に自信の無かった主人と話し合った結果、オーモン・オーブラックならモンペリエから車で2時間ちょっとなので、万が一何かあっても、緊急事態に対応しやすいのは確かです。海抜1050メートル。日中は少々暑くなることはあっても、風通しの良い松林にいると暑さが苦になりません。夜は掛け布団が欲しくなるほど涼しく、時には寒いほどなので、最悪の事態で足止めになっても辛くないと計算しました。

それだけではありません。何故か第二、第三の故郷みたいに思えるキャンプ場のある町なのです。聖なる風が吹いているからと思いたくなります。用心深い主人が気を許し、度を過ごして油断する場所と言うと、実感が湧くかも知れません。

その期待に応えるかのように、小さなロバが待っていました。キャンプ場に停車して周囲を見回すと、イォコが草を食んでいたのです。犬とか猫、時には我が家の亡きうさちゃんのように、ペットを連れて旅行する人は多数いますが、ロバを連れている人を見るのは初めてだったので惹かれました。好奇心に抵抗できず、すぐさま挨拶しに行きました。

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芝刈り機同様の正確さで草を食べている姿に感心しつつ写真を撮っていたら、イォコの持ち主が現われ、お喋りすることになりました。10年以上前からロバをお供にして徒歩で旅行するようになり、既に4冊も旅行記を出版していると知りました。今回は新しい本を準備するための下見に来ているようでした。移動牧畜をする人々とコンタクトをとるために来たので、イォコ君もロバ用の特別車で運ばれていました。

サンチアゴ・ドゥ・コンポステラにも3ヶ月かけて行ったそうです。難しい思春期を生きた16歳の息子とロバを相棒にしての珍道中でしたが、息子が立ち直るきっかけになった貴重な試練でもあったようです。ブルターニュのフィニステール(地の果て)からスペインのフィニステラ(スペイン語でも同義)までふたつの地の果てを繋ぐ旅がどんなものであったか知りたくなりましたが、生憎にも絶版になっているということなので、彼女が持参していた3冊目と4冊目を購入することになりました。

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ブリジット・ブロさんとしては、私たちが翌日も滞在すると聞いて本を貸してくれたのですが、勿論読み始めると病み付きになってしまい、最後まで読みたくなりました。思い出を持ち帰りたいと言う思いも働いていたと言えます。イォコと出会った人は彼の魅力に抵抗できません。ブリジットさんは「飼う」というような大それた気持ちも無いようでした。パートナーとして大事にし合っているという感じでした。

60キロの荷物を運べるような体格にも拘らず、ブリジットの姿が見えなくなると、大きな赤子のようにとてつもない鳴き声を発して呼びます。不安な時も大声でがなり立てるのが静かなキャンプ場の余興になりました。文句を言う人もなく、皆嬉しそうな顔をしてロバのご機嫌伺いしていました。こんなに優しい目で見つめられたら、屈服します。誰も抵抗できませんね。

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