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COP29開幕「1.5度」目標へ議論ーー途上国向け資金増額焦点に 

■COP29がアゼルバイジャンで開幕

11月11日(月)からカスピ海西岸にあるアゼルバイジャンの首都バクーで「国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)」が開幕されました。22日(金)まで開かれます。議長国はアゼルバイジャンです。

COP(コップ)とは、「Conference of the Parties」の略で、国際条約の加盟国が物事を決定するための「締約国会議」のこと。生物多様性条約や砂漠化対処条約などがありますが、代表的なのがこの「気候変動枠組条約」のCOP。COP29はその29回目「国連気候変動枠組条約第29回締約国会議」のことです。世界各国の政府関係者、企業、研究機関などが集まり、気候変動に関する国際的な取り組み、具体的な方針などについて議論します。


■これまでのCOPの経緯ーー「1.5度目標」へ温室効果ガス削減目標設定

COP29で何が議論されるかの前に、これまでCOPの経緯を振り返ってみましょう。

1992年に国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)が採択されてから、世界各国は気候変動対策を強化してきましたが、この条約にもとづき、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)が毎年開催されるようになりました。

特に、1997年のCOP3(京都会議)で採択された「京都議定書」では、2020年までの世界の地球温暖化対策目標が示されました。その後、2015年のCOP21(パリ協定)では京都議定書の後を継ぐものとして2020年以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めが定められ、「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」という世界共通の長期目標が掲げられました。さらに2021年に英国で開かれたCOP26で、パリ協定で努力目標とされた「1.5度」が事実上の目標に格上げされたのです。


■途上国への気候資金も支援してきたが

また、COPは産業革命以前と比べた世界の平均気温上昇を1.5度以内とするための取り組みを議論するだけでなく、気候変動の原因をつくっているのが先進国であるのに対し、開発途上国が洪水、干ばつ、森林火災などの影響を受けていることから、途上国への支援についても議論が行われてきました。

2009年のCOP15は、2020年までに途上国に年間1000億ドル(約15兆円)を拠出する目標を決定。しかし、期限に間に合わず、経済協力開発機構(OECD)によると、2022年に年間1159億ドル(約18兆円)となり、目標に達したといいます。また、COP27では「損失と損害」の基金が設立されました。そしてCOP28の大きな成果となったのが、「グローバル・ストックテイク」。グローバル・ストックテイクとは、パリ協定の目標達成に向けて、各国が行う取り組みや進捗を評価する仕組みのことです。COP28では、これが初めて行われました。


■COP29で議論される3つのポイント

それでは、今回のCOP29では何が話されるのでしょうか?3つの内容がポイントとなるようです。


(1)気候資金についての新たな目標設定

1つは、ここ何年かのCOPで議論されてきている気候資金についてーー「どのくらいの資金が必要」で、「その資金をだれが提供するべきか?」、そして「だれが受け取れるのか?」といった、具体的な内容が争点になるとみられます。

先述したように、COP15のパリ協定9条(※1)で約束された、先進国から途上国への資金目標は年間1000億ドル(約15兆円)。2022年には1159億ドル(約18兆円)と資金目標を達成していますが、途上国としてはさらなる資金を確保したいと支援額を年間1兆ドル(約150兆円)規模に増やすよう求めています。しかし、先進国は財政上の負担が増えることを懸念しており、各国がどの程度歩み寄れるかが焦点です。


(2)温室効果ガス排出削減目標

2つ目は、COP21のパリ協定で定められたこれら各国の目標である世界全体の平均気温上昇を産業革命前の1.5度に抑えることに関して、温室効果ガス削減強化に向けた機運醸成の課題です。パリ協定に基づき、各国は2035年までの削減目標を2025年2月までに提出する必要がありますが、日本は2030年度に2013年度比で46%削減するという低い目標を掲げていて、その姿勢が問題視されています。

さらに、たとえ各国が設定した温室効果ガス排出削減目標を達成できたとしても、この1.5度目標は到達できないことが既に指摘されています。そのため、COP28のグローバル・ストックテイクの成果をふまえて、2025年までに各国が国連に提出する次期NDC(排出削減目標)が注目されているのです。


(3)パリ協定6条の議論と決定

3つ目は、パリ協定6条について。パリ協定6条とは、削減した温室効果ガス排出量を国際的に移転する市場メカニズムについて規定したもので、削減した排出量について国際的なルールを定めていますが、この6条ルールが合意され施行されれば、各国での温室効果ガス排出量削減が促進されると期待されています。

専門家の試算では、6条の実施によって2030年までに世界全体で、年間最大90億トンのCO2の追加的削減量が実現される可能性があるといいます。COP29では、この6条の運用ルールについても議論されるものとみられています。


■トランプ米大統領「パリ協定」から再離脱か

ただ、ここにきて、新たな懸念も生まれています。先の米大統領選で、この「パリ協定」から再離脱する方針を示しているトランプ前大統領が勝利したことです。トランプ氏の大統領就任は来年1月20日からですが、大統領選直後のタイミングとなった今回の会合に既にバイデン大統領は出席しない旨を表明しています。

世界各国で平均気温の記録が更新され、2023年は史上もっとも暑い1年となりました。さらに世界各地で気候変動に関連するとみられる自然災害が多発するなど、2024年はこの記録を塗り替える可能性が確実視されています。気候変動の影響はまさに私たちに差し迫っている問題であり、COP29の議論の方向に注視したいと思います。


(※1)パリ協定第9条とは、「先進締約国は、条約に基づく既存の義務を継続するものとして、緩和及び適応に関し、開発途上締約国を支援するため、資金を供与する」と定められた条文。


【出典参考】2024年11月7日配信「ELEMINIST」、10日付け「しんぶん赤旗」



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