『戦力の逐次投入とは典型的な負け戦の構図』
兵は詭道なりで有名な紀元前の孫子の兵法でも『戦力の逐次投入』が厳に戒められているが、プロイセンの戦略家クラウゼヴィッツも『戦争論』で、『戦力の優越は勝利のためのもっとも基本的な原則である』としていて、やはり戦力の逐次投入を最も避けなければならない作戦であると戒めている。
時間と空間における戦力集中こそが勝敗を決定する最大の要素(最良の戦略)であるとすれば、その逆の最悪なのは、必要数に満たない戦力を次々に投入して、そのつど撃破される『戦力の逐次投入』である。
ところが歴史上何度も戦力の逐次投入(少しずつ小出しにして大失敗する)が少しも懲りずに繰り返されてきたのですから不思議である。
代表的な失敗例としては日本軍はガダルカナル島奪還戦で戦力を逐次投入して大敗北して、これが太平洋戦争での戦局の転換点となっている。
戦略においてもっとも戒めるべき『戦力の逐次投入』を、福島第一原発事故で今の福島県や日本政府が繰り返しているのですから何とも不思議である。
負け戦を覚悟(自覚)しているのだろうか。
『一見似ているが正反対の波状攻撃』
『断固行う』との決断が出来ないで少しずつ何回にも分けて大失敗するのが戦力の逐次投入。
波状攻撃とは相手に立ち直る隙を与えずに次々と連続攻撃して、より大きなダメージを与える戦法で、大相撲の元関脇寺尾のツッパリとか北斗の拳のケンシロウの百烈拳のようなもの。
通常なら100万人で0~1人の割合(厚生労働省)なのに福島県では4万人弱の調査で3人目の小児甲状腺癌が発症。
福島県当局は去年9月に一人目を発表、11月に二人目を発表、2月に3人目を発表と2~3ヶ月間隔で小出しに逐次発表して、小児甲状腺癌のニュースの影響を最小限に抑えようとしているつもり(戦力の逐次投入?)なのです。
ところが、悪い情報を聞く相手の福島県民にとっては立場が違い、よりダメージを大きくする波状攻撃ですね。
何度も聞かされる分だけ痛みが倍加する。
『摩訶不思議な毎日新聞記事』
『2011年度に甲状腺検査を震災当時18歳以下3万8千人に実施。 2次検査で細胞検査が必要とした76人中10人にがんの疑い。うち3人が甲状腺がんと判明』との、驚愕的なニュースは2月13日の北朝鮮核実験の大騒動のどさくさに紛れて、小さく報道されるが読売やNHKは報じなかった。
毎日新聞だけは、他とは違い細胞診検査を受けたが小児甲状腺癌の手術を受けていない残りの7人に対しても『小児甲状腺癌の確率が8割ある』と報じているのです。
それなら最終的には3万8千人の検査で8~9人の発症数であると毎日新聞は言っていることになりますね。
3人発症でも驚いているのに、何と実際の発症数は3倍の8~9人だったのでもっと驚いた。
しかも『福島県、3万8千人中で小児甲状腺癌3人発症の異常事態』のブログ記事に対して『落ち着きなさい』との不思議な名前で『数値をよみ間違っている』との典型的な東大話法を駆使した傲岸不遜なコメントが送られてくるので驚きの三乗である。
『毎日新聞の記者も理解できていませんでした。』と言うが、驚愕的な『9人発症』は腰を抜かす程の恐ろしすぎる数字なのです。
私としても『8割の割合で癌』は毎日新聞記者の勘違いであって欲しい。
調べてみると矢張り『8割』は毎日記者の下手くそな嘘(デマ)か、聞き間違い(誤報)であった。
福島県の健康管理調査検討委員会の福島県立医大の鈴木真一教授は『細胞診検査の精度(確率)は9割』と明確に答えていた。
目の前の真実は、もっと恐ろしかったのである。
『確率論の不思議な落とし穴』
ダウン症は染色体異常が原因なのですが妊娠初期に99%の確率で解る検査が開発されたために命の選択という問題が生まれているが、この99%という数字自体、問題が大きい。
普通にうっかり聞けば、99%の確率なら絶対的な数値でほぼ『決まりである』と錯覚するのですが、実は99%は微妙な数値なのです。
小さい部分なら正しいが全体では別の結論になる『合成の誤謬』が起きる。
何故なら一番危険な高齢出産グループでもダウン症の発症率は1%と低く、1万人では100人程度が陽性である。
ところが検査の99%の確率なら100人の陽性判定のうち正しいのは99人で間違いが1人。
必ず1%の100人に1人が実際には陰性なのに間違って陽性と判定される。
1万人分の検査なら99%の精度(確率)なので9900人は正しいが、残りの1%の100人が間違って判定される。
低い発症確率(1%)での『99%の精度』とは、正解と間違いが100対99という5割程度の確率しかない。
発症率が0・1%の若いグループなら正解率が1割にまで落ちてしまうので、99%の絶対的に見える確率とは、実は白黒5割近く当たる『占い』や丁半博打よりも余程非科学的で当たらないものなのです。
福島県の細胞診検査での9割の小児甲状腺癌の精度(確率)ですが、陽性判定の10人だけが危ないのでは無い。
実は陰性と判定された残り66人の中でも1割の6~7人が偽陰性(陽性)であり、合計すると十数人の小児甲状腺がんが含まれている可能性がある。
小児甲状腺がんの可能性としては曖昧な危うい確率なのである。
2月13日の3万8千人中3人発症のマスコミ報道とは9割の確率(検査精度)なので最終的な小児甲状腺がん患者数は発表されている確定数字(3人)の4倍以上に膨らむ可能性が高いのである。
『二項分布とポアソン分布』
私たちが一番よく目にする二項分布(縦軸に人数、横軸に年度など)とは、例えば全住民の5%が発症する疾病にたいして全住民10万人の中から500人とか、無作為に人数と場所を選んで罹患者の分布を調べるものです。
この二項分布の場合は発症確率がある程度高いことが前提とされている。
一般的に使用される二項分布に対して、ポアソン分布とは確率が極端に低い場合の離散確率分布のこと。
ポアソン分布の歴史的な例としては、『軍で馬に蹴られて死亡した兵士数』が知られている。
軍人数は極端に多いので馬に蹴られて死ぬ珍しい兵士も、総数から比べれば極少数ではあるが、『滅多に起きない不幸な事例』として必ず生まれる。
サッカーのように得点が少ないスポーツの場合には、今から1分後の競技中にゴールする二項分布をいくら精細に行ってもほとんどゼロとなり表としての意味をなさない。
それなら発症数が極めて低い小児甲状腺がんの発症は二項分布ではなくてポアソン分布で考えるべきなのでしょう。
例えば小児甲状腺がんの発症率が100万人に一人なら、確率は0・0001%なのですから到底二項分布が対象とする範囲にはないが、何故か政府や福島県では二項分布の問題だと考えているようなのです。
確かに3万8千人中3人なら発症率は0・01%弱だし、県立医大の鈴木真一教授の『細胞診検査の確率は9割』なら0・04%(2500人で一人)よりも高くなるので、慣れ親しんだ二項分布が最適なのです。
この原発事故も同じくいまだ誰も責任を取っておらず、実態をしらせることなく隠しまわって被害を大きくしている。
そのくせ大丈夫と無理やりそこへ住まわそうとするのですから殺人行為といっておかしくないと思うのです。
過去から何も学ばない政治家、役人なんでしょうか?
私は国会を一時原発近くに臨時テント建ててそこで会議を行えばよいと思いますよ。
勝つためには自分が持っている力を一点に集中して一時に使うから、乾坤一擲の勝利が掴めるんですが、歴史上も成功例として織田信長の桶狭間の戦いなど色々な例がある。
ところが。この反対の少しずつ出していって大失敗するのが戦力の逐次投入。
この違いですが、織田信長は政治家であり、日本軍参謀本部とは軍事官僚なのですね。
官僚と政治家とは役目が違い、いくら優秀でも前例踏襲、慣例重視が命の官僚に、乾坤一擲いちかばちかの博打的な大勝負は、亀に腹筋を強要するのと同じで最初から無理なのです。
今の日本の現状ですが、政治家などと呼べる人材は小選挙区性の弊害で完全に枯渇していてゼロですよ。
これは日本全体で自民党から共産党まで共通した問題点なのです。
最後の共産党政治家、宮本顕治
2010年07月18日 | 共産
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/c2c7e62bd83f4e848e65b4685baafb9f
政治家が誰一人もいないので、仕方なく官僚が政治を全て取り仕切っている。
それなら失敗を極端に恐れる官僚の習性が災いして、問題の先送りと、対策の小出し(戦力の逐次投入)は必然で、なんの不思議もないのです。これでは勝てません。
本文中でわからない部分があるので質問させてください。
>何故なら一番危険な高齢出産グループでもダウン症の発症率は1%と低く、1万人では100人程度が陽性である。
>ところが検査の99%の確率なら100人の陽性判定のうち正しいのは99人で間違いが1人。
>必ず1%の100人に1人が実際には陰性なのに間違って陽性と判定される。
ここまではわかるのですが、この次の文、
>1万人の検査なら100人(1%)が間違って陽性と判定されるので99%の確率とは、正解と間違いが100対99という5割程度の確率しかない。
この部分がわかりません。
全体で1万人に対して検査をするのなら、陽性判定が1万人の1%で100人、そのうち間違って(実際は陰性なのに陽性と)判断されるのは、100人の1%で1人、のはずです。
逆に、100人が間違って陽性と判断されるには、正しく陽性と判断された人が9900人必要で、合計1万人が陽性と判断されるには、陰性と判断された人が99万人必要になる、はずです。
1万人の検査で1%=100人の間違い、の内訳は、実際は陽性なのに陰性と判断された人が99人と、実際は陰性なのに陽性と判断された人1人、だと思ったのですが違うのでしょうか?
「正解と間違いが100対99」とは、どのような「100」と「99」を比較しているのでしょうか?
ブログ記事の、『『確率論の不思議な落とし穴』の、
『1万人の検査なら100人(1%)が間違って陽性と判定されるので99%の確率とは、正解と間違いが100対99という5割程度の確率しかない。』
とある部分を、
『1万人分の検査なら99%の精度(確率)なので9900人は正しいが、残りの1%の100人が間違って判定される。
低い発症確率(1%)での『99%の精度』とは、正解と間違いが100対99という5割程度の確率しかない。』
と『、』を『。』に変え、段落を別にして文章を分けてみました。
たぶんこれならfunaboristaさんの疑問が簡単に解消すると思います。
それは常識論の落とし穴みたいなもので、ようは100分の1(1%)のような非常に小さい格率の場合には普通の常識とは逆の現象が起きてしまうのです。
ましてや小児甲状腺癌の発症は0・0001%なので、今回のようなもっと常識外れな色々な不思議な話が起きてしまうのでしょう。