逝きし世の面影

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続、 「北朝鮮の人工衛星」批判社説に疑問

2009年03月13日 | 東アジア共同体
2002年9月17日に行われた小泉純一郎首相のピョンヤン訪問(日朝首脳会談)以降、我が国のマスコミ報道は一変する。
全てのマスコミ(特にテレビのような放送時間に制約がある映像メディア)による集中豪雨的な北朝鮮報道が連日連夜、数年間にわたって繰り返される。
それ以前の、殆んどゼロだった北朝鮮に対するマスコミ事情(関心度)からは、180度以上のコペルニクス的な転換を遂げた日本のメディア。

小泉訪朝以来、わが国は北朝鮮不信、蔑視、制裁強硬論一色に覆われた状態が続いていた。
それ以降、そのような風潮を増幅するような報道はされても、水を差すような論調を新聞紙上に見いだすことはできなかった。
これは、『拉致被害者家族の心情をさかなでするもの『』という批判を恐れてのことと思われる。
それをおして勇気ある論陣を張ったのは、元外交官で広島市立大学広島平和研究所長の浅井基文である。
問題としているのは、『同国が準備を進めているミサイル発射計画は、同国が主張する通信衛星打ち上げロケットであったにしても認められない』という、強い非難を込めた朝日、毎日両紙の社説についてである。

『毎日社説批判を掲載した毎日新聞』

毎日新聞の社説を批判した意見を、其のまま自分の毎日新聞に掲載した編集方針には敬意を表したい。
なかなか普通の新聞では『出来そうで出来ない』ことです。
既成の新聞等では珍しい、この様な主催者の見解に反する『反対意見』も載せる柔軟な方針は、エントリーされた記事の趣旨とは正反対の意見を歓迎するインターネットによるブログ世界では、以前からこれが当たり前となっている。
インターネットの情報の双方向性と、マスコミ情報の単一の方向性の問題とも考えられるが、多様な価値観の共存の観点から大いに歓迎したい。
02年の日朝首脳会談以後の極端な日本の右傾化と左翼護憲派の衰退はマスコミによる北朝鮮報道(北朝鮮バッシング)の影響が大きい。
冷戦崩壊で軍備の大幅縮小に向かった欧州やアメリカとは反対に、日本に軍縮の話は全く聴かれなくなったばかりか、欧米とは正反対に軍備増強論までが議論されている。
今回の様な是々非々の浅井基文論文の『新聞時評』への掲載は、ニュースの殆んどが真実なのかどうかの検証がなされていない脱北者による北報道(北朝鮮バッシング)が、マスコミの北朝鮮問題報道だった数年前なら考えられない事です。

『時代はようやく動き出した。』

北朝鮮が戦時体制を半世紀も維持しているのは異常で、その事で周辺国にも色々と迷惑をかけている。
しかし戦争は一国では出来ないので、北朝鮮一国だけの100%の責任にするわけにもいかないし、特に半世紀前の朝鮮戦争の後始末をしていない原因は、今までは東アジアに冷戦構造を維持したいアメリカの思惑が大きかった。
アメリカを抜きにして、現在の北朝鮮の問題を語ることは出来ないだろう。
今までにない画期的な『敵との対話』路線を打ち出したオバマ大統領の今後に期待したい。

『しかしミサイル(人工衛星)問題は悩ましい』

例えるなら、喧嘩が大好きな人物が『スポーツだ』と言ってボクシングを習っているようなものです。
(喧嘩は違法で駄目だが、ボクシングは立派なスポーツ)
過去に殺人とか傷害とかの前科のある喧嘩早い人物が、真面目に一生懸命ボクシングを練習している。
周りが駄目だと簡単に言えるのか。いえないのか。悩ましい。
タイの女子刑務所の服役囚が、ボクシングの世界タイトルマッチに出場する為に、刑務所内のリングで練習しているのをテレビニュースで見ましたが、あれは微笑ましい良い話でした。

この話とは一緒には出来ないでしょうが、北朝鮮問題の基本は朝鮮戦争の完全終結で有ると思っています。
今でも38度線をはさんで双方100万の軍隊が睨み合っている。
戦争が終結していないから、北朝鮮では今のような金正日の様な戦時下特有の軍事政権が続いているのではないでしょうか。?
ほんの十数年ほど前には、南の韓国でも、北と同じような人権無視の軍事政権が長年続いて、北と同じような拉致事件も行っていた。

『北風が助けた軍事政権』

韓国では、『大統領選挙等の大事な時には北風が吹く』とよく言われている。
光州事件を引き起こした軍事政権の後継候補である盧泰愚が苦戦している時、大韓航空機爆破事件の犯人金賢姫が、大統領選挙投票日前日にソウル入りして一発大逆転で勝利する。
あの大韓航空機爆破事件は北の軍事政権の犯行と断定されているが、報道されているソウルオリンピック妨害のテロ行為ではなく、韓国大統領選挙妨害の謀略行為である事だけは間違いない。

盧泰愚は大韓航空機爆破事件のような大技で辛うじて当選したが、それ以降は民主化が進行し軍人が大統領に選ばれる事は二度と無くなった。
実は南の軍事政権の存在が、北の軍事政権の存在の『正当性』を担保していた。
今の南の韓国の民主化の結果軍事政権に戻る気配は無くなり、戦時体制を長年続けている北の軍事政権の正当性は失われている。
そして、朝鮮戦争が完全終結すれば、軍事政権が存在する最期の正当性も失われます。


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2 コメント

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Unknown (ちゃう)
2009-03-13 16:08:10
4月X日に例えば米軍(もしくは自衛隊)がミサイルを日本海側一都市に落としたとしたなら日本人は一気に戦闘ムードになりますね。私がもし日本を核武装させたいと思う武器商人ならするでしょうね。今一番恐れているシナリオです。地下鉄サリン事件とおんなじじゃないですか。
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コメント有り難うございます (ブログ主)
2009-03-23 10:50:27
『イスラエルがイランの核施設を攻撃しそうだ』との情報が大分前からマスコミ報道やインターネットで盛んに噂されていますが、今有事が起こるとしたら矢張り日本周辺ではなく中東でしょう。
特に危ないのがブッシュから新政権に移行する3ヶ月以内が危ないらしい。
中東でなら宗教がらみの収拾の付かない大戦争に発展する可能性があるが、日本周辺では『冷戦の再構築』ぐらいで大戦争には発展しない。(ここが大きく違う)
冷戦とは、一触即発の戦争状態を長く続けることで、永久に軍産複合体を儲けさす(日本の公共事業と類似の)仕組みで、大戦争をやって仕舞っては其の体制が崩壊して仕舞う。
金の卵を産むガチョウを殺してしまう愚かな行い。
だから冷戦下ではベトナムなどの局地戦は起こっても、大戦争は起こらなかった。
一番危ないのは中東でしょう。
日本で起こるのは第二の不審船程度のインチキ臭い話ではないでしょうか。
アメリカは日本を含む東アジアからは地上軍を撤退させる意向の様で、小沢一郎の米軍のプレゼンスは第七艦隊だけでよいとの意見は、此れをふまえた真っ当な発言です。
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