(-1)×(-1)=1って証明できるんですか?うへ~
ってよくこういう類の疑問がありますが、数学的には次の四則演算の10個の命題から証明するのがお決まりです。
四則演算って足す、引く、かける、割るやで。
実数の任意の二つの元a,bに対して、和a+b,積abの実数が定義がされていて次の条件を満たす。
(1)a+b=b+a(和の交換律)
(2)(a+b)+c=a+(b+c)(和の結合律)
(3)すべての実数aに対してa+0=aをみたす実数0が存在(0の存在)
(4)実数aに対してa+(-a)=0をみたす実数-aが存在(-aの存在)
(5)ab=ba(積の交換律)
(6)(ab)c=a(bc)(積の結合律)
(7)a(b+c)=ab+ac,(a+b)c=ac+bc(分配律)
(8)すべての実数aに対してa1=aを満たす実数1が存在(1の存在)
(9)0でない任意の実数aに対して、aa^-1=1となるa^-1が存在(逆元の存在)
(10)1≠0(0以外の元の存在)
この10個の命題だけ使って証明するわけやねん。
[証明]
任意の実数aに対して-aは唯一であることを示す。
a+a'=0とすると
a'=a'+0
=a'+(a+(-a))
=(a'+a)+(-a)=
=0+(-a)
=-a
任意の実数aに対して
-(-a)=a
を示す。
(-a)+a=0
より-(-a)=a
任意の実数aに対して
0a=0
を示す。
0a=(0+0)a
=0a+0a
より
0a=0a+0
=0a+(0a+(-0a))
=(0a+0a)+(-0a)
=0a+(-0a)
=0
したがって
0=0(-1)
=(1+(-1))(-1)
=(-1)+(-1)(-1)
より(-1)(-1)=-(-1)=1
一体何のためにこんなことをやってるのかわからへんのが特徴です。
大学の専門書にもたいがい載ってるねんけど。
まあこれが意味なく感じるのは実数やからねん。
実数やからこんなことは当たり前なわけやねん。
ただ、複素数が四則演算してよいのはこの10個の条件を満たすからって考えるとだんだん意味があるのがわかってくるわけやねんな。
これを全部満たすものは『体』とも言います。
カラダとかそういう夢が希望がある読み方じゃなくて、タイって読むねん。
そしたら、こういう10個の条件を満たすのは実数とか複素数以外で具体的にどんなものが他にあるか言うたら例えば整数を素数pで割った余りを同じものと考える、素数pを法とした剰余系があります。
素数pを法とした合同式の演算やな。
だからなんでこんな10個の条件にまとめてるのか言うと、実数以外でも色々な数や演算を考えたときに、例えば素数pを法とした剰余系みたいにこの10個の条件を満たしていれば四則演算出来ることがわかるわけやねん。
合同式については→合同式≡と剰余類の説明と応用問題
例えば素数pを法とした合同式ならpで割った余りが同じものを全部≡で結んで同じものとする演算を考えると
a=pq_a+r_a
b=pq_b+r_b
なら
a≡r_a(mod p)
b≡r_b(mod p)
で
a+b=p(q_a+q_b)+r_a+r_b
より
a+b≡r_a+r_b(mod p)
ab=p^2q_aq_b+pq_ar_b+pq_br_a+r_ar_b
より
ab≡r_ar_b(mod p)
が成り立っていて
(1)~(10)までの条件を全部満たすから四則演算できます。
だから合同式は普通に実数のように計算してもええわけやねんな。
だいたい(1)~(10)の条件はほぼ当たり前やけど、
ただ(9)の0でないaに対してaa^-1=1となるa^-1が存在するってのだけはちょっと難しいな。
この(9)が成り立たないと割り算が出来んわけやねん。
四則演算の割り算だけpが素数の時じゃないと出来へんねん。
しゃあないな。
そしたらそれを証明してみよか。
そしたらpの倍数でない整数aがあったとするとaをpで割った商をq,余りをrとすると
a=pq+r(1≦r≦p-1)
とあらわされて、aとpは互いに素だから
am+pn=1
となる整数m,nが存在します。
これはユークリッドの互除法を使うと、aとpは互いに素(最大公約数は1)だから存在するわけなんですがちゃんと証明するとmとnが整数の時に
f(m,n)=am+pn
の最小の正の整数を1でないと仮定します。
つまりf(m,n)=am+pnの最小の正の整数をd(≧2)とします。
f(m_1,n_1)=d
として
任意のm,nに対してf(m,n)をdで割った商をQ、余りをR(0≦R≦d-1)として
f(m,n)=dQ+R
とあらわされて
R=f(m,n)-dQ
=am+pn-Qam_1-Qpn_1
=a(m-Qm_1)+p(n-Qn_1)
=f(m-Qm_1,n-Qn_1)
だが0≦R≦d-1でf(m,n)がとる最小の正の整数はdよりR=0
(dの最小性とか言う)
よって
f(m,n)=dQ
だからf(m,n)はdの倍数になる。
ところが
f(1,0)=aもdの倍数でなければならなくて、
f(0,1)=pもdの倍数でなければならないが、
aとpは互いに素であることに矛盾。
したがってf(m,n)=am+pnの最小の正の整数は1。
だから
am+pn=1となるm,nが存在する。
よってpの倍数でない任意の実数aに対して
am+pn=1
となるm,nが存在して
am≡1-pn(mod p)
≡1(mod p)
よってa^-1≡mでa^-1が存在することが証明できました。
これは、本来は大学の代数の範囲で高校生でもわかる言葉や数式に置き換えて証明書いてんけどな。
ちなみに5を法としたときは
1×1≡1
より1^-1≡1
2×3=6≡1
より2^(-1)≡3,3^(-1)≡3
4×4=16≡1
より4^(-1)≡4
だからまあこの合同式の演算においては1で割ることは1をかけること、2で割ることは3でかけること、3で割ることは2をかけること、4で割ることは4をかけることなわけやねん。
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