久しぶりに同じ芝居を2回見ました。
正確には、結末が二通りあるというので、その両方を見たわけです。
旗揚げから全公演を見ている
ユニットブルージュの第6回公演「OFFICE WARS ~金に綺麗も汚いもあるのか~」。
第3回公演以来の現代物。
第1回公演 ごった煮の楽しさ:【観劇】behind the stage2010-06-29(12:03)
いわゆる「バックステージ物」というジャンルになる芝居で、
ある上演される芝居のシーンと、
それを演じている役者や演出家などの私生活や関係を描いたストーリーが
交互に出てきたり、現実から芝居にいきなり変わったりするので
演出の整理がうまくないと、わけわからなくなるタイプです。
第2回公演 楽しいとは思うけど:【観劇】監獄彼女2010-11-22(15:32)
歌と踊りと時々芝居、役者が存分に力を発揮した芝居ではありましたが、
女子刑務所の中で繰り広げられる「物語」には、あまり共感できませんでした。
登場人物が刑務所に入った経緯の裏にある人間模様や、
独裁的な刑務官のキャラクター、やる気のない獄医といったサブキャラ、
その辺の設定が二時間ドラマのようで、どうもすっきりと落ちてこないんだなあ。
第3回公演 役不足なの?力不足なの?:【観劇】似非紳士2011-07-02(09:32)
のっけからきついことを言わないといけません。
今回はキャスティングに問題があって、思うようなことができなかったように見えた。
やはり、主役二人の力不足はあまりにも大きい。
第4回公演【観劇】龍馬っておいしい:龍馬を殺した女たち:2012年1月13日(転載)全般に演出力の向上を感じました。
役者の独白シーンで無駄な暗転を無くし、見る側の気持ちを途切れさせないようになっていました。
第5回公演 【観劇】わからないことだらけ:UnitBlueju「甲斐のくのいち」:2012年12月3日でも、全力で理解できるかと言われれば、わからなかったとしか言えない。
たぶんアンケートに「元気をもらいました」という感想を書く人が多そうな気がする。
でも、生きる力になったかと言われれば、どうだろう。
ということで、毎回、褒めてないので、今回も開演前に演出の広光さんに会った時に、
「母が倒れるので…」と冗談を言われました。
褒めたいんですけどねえ。
読み返すと、毎回、同じ事を書いているように思います。
このユニットのいつものことですが、
フェイスブックページで色々と前宣伝をしていますので、そちらもご覧ください。
さらに、夕刊フジ系のZAKZAKで取材されてます
(90)Unit Blueju。
私たちの魅力は大きく3つあります……1つは、かわいい&キレイな女の子たちが歌って、踊って、殺陣をするということです! セクシーなシーンもしっかり盛り込んで、男性のお客様にちゃんと満足して帰ってもらえるような作品にしています(笑)。こむずかしいことを考えず楽しめる作品ですので、芝居初心者の方も大歓迎です。そして2つ目は、3,500円の料金で高いクオリティーの作品をお届けしていることです! 日本でミュージカル作品というと1万円以上したりもします。海外では3,000円で楽しめる、高いクオリティーの作品もいっぱいあるのに。なので、私たちは3500円で“本物をみせたい”と思っています。追求していきたいと思ってます。最後に、オリジナルであることにこだわっています。ブルージュは、シナリオと楽曲が毎回オリジナルなんですね。シナリオは、今の社会で起きている問題をテーマに取り入れたいので、私は原作ものを脚色したり、海外戯曲を取り入れたりはしません。あと再演もしないように決めています。書きますよ!元気で若いうちはどんどんとね。そしておまけに衣装や照明の色彩が、女性らしいカラフルなものであることです!
広光さんのインタビューですが、なかなかこれまで大変だったようです。
第3回公演は広い小屋でやったのに、内容はひどかったですからね。
第4回公演は一転して阿佐ヶ谷で、これは内容も良かったと思います。
そして、今回は勝負なんだそうです。
今回の最大の挑戦は、《お客さんとの垣根をなくす》ことですので! 色々な意味で“勝負”な作品だと思っています! サラリーマンの方が観て、笑いなのか、スケベ心なのか、恋心なのか、曲なのか、とにかく何か持ち帰ってもらえる作品をお届けすることをお約束します! 男性のハートをくすぐります(笑)
今回の芝居のあらすじは、
★働くとは?お金とは?というテーマを元にした、コメディミュージカルです。
皆さんは「お金には綺麗なお金と汚いお金」があると思いますか?
その答えは劇場にて!
歌を聞きに、妖艶なダンスを観に、切れっきれの殺陣を観に、そして笑いに来てください!
(ブログより)
ということで、「仕事と金」「汗水たらして働く」「汚いお金」というセリフが飛び交います。
【あらすじ】ここはとある会社の地下にある事務室。その名は「接待課・特命係」。そこには、各部署から失格の烙印を押された「ダメOL」達が潜んでいた。彼女たちに課されたのは、「接待課にて、3か月で売上を5000万円あげる」というミッション。それが出来なければ、接待課は即解散となる。会社から支給されるのは、大量のウコンと取引先の会社のデータ。営業部署をもてなし、契約こぎつければ、どんな手を使ってもいいのだ。働く意義を見失った数々の女達が今、立ち上がる。働くとは?という問題に立ち向かう、女ばかりのパワフルミュージカル!
美しい女優達が殺陣をし、華麗に舞い、声高らかに歌うのが特徴のユニットブルージュ。今回は、なんと、ラストシーンが二種類!? 「自分の意にそぐわないお金を受け取っていいのか?悪いのか?」その主人公の判断で結末は大きく変わる。どちらの結末が好きか?お客様自身が選んでください。
(ZAKZAKより)
公演が終わったので、2つの終わり方について書けます。
大筋は、5000万円の予算達成が営業係長・道長の妨害工作もあり、達成できないことが判明した7月1日に、百合が「私の一一人芝居を発注したい。1600万円で」と言い出す。百合は、その金額は愛人をしている会社の社長に出してもらうから「この社長あての書付を持っていけば」とリーダーの三宅悠季に差し出す。その紙を破り捨てる三宅。「この金は働いて得たものじゃないから汚い」というのがその理由だ。しかし、この金額があれば、予算は達成できる。
ここからが2つのエンディング。
Aは、破り捨てた紙を拾おうとする経理の渡邊えり(41歳)。彼女には息子が詐欺で騙されてできた借金がある。「あんたたちはいいけど、私はもう年なんだ。この機会を逃すと給与が上がる見込みもない」と三宅に翻意を促す。しかし、頑として聞き止めない三宅。
予算が達成できないまま、この接待課は解散されるのか。
その時社長の安田が「7月1日をもって、特命係を正式の組織として発足させ、そこに特命係を吸収する」と宣言する。予算が達成されなくても、その働きぶりと意義を悟り、失敗の理由が道永にあることを知ったからの判断だった。
ハッピーエンド。
Bは、破り捨てた紙を拾おうとする経理の渡邊えり(41歳)。彼女には就職したばかりなのに交通事故を起こした息子が作った借金がある。「えりさん、その借金はいくらなの」と百合が尋ねる。「2000万円」「そのお金貸してあげてもいいわよ、でも条件があるわ。この1600万円のイベントを引き受けること」百合の出した条件にひきつる三宅。接待課の存続とえりの借金の両方がかかった百合の手紙を、ゆっくりと跪き拾う三宅。
勝ち誇ったように笑う百合。「お金に綺麗も汚いもないのよ」。
そこで暗転し、その後の全員の消息を述べる社長のバカ息子・幸啓。
百合は失脚し、えりは体を壊し、三宅は接待課で成果を出し続けているが「彼女には仲間だけがいない」
「汚い金を受け取ると人生は結果的にバランスを崩して暗転する」という教訓に満ちたエンディング。
という2つの結末。
どっちも、あまり面白いとはいえないが、Aのご都合主義よりは、Bの方がひねってあるという評価にはなるだろう。
でも、作劇的には、あまり画期的な大どんでん返しでもなかったかなあ。
確かに、3500円にしては、踊りも歌も殺陣もあって、それがどれも及第点で芝居もみなさん達者です。
その意味では、十分に「持ってかえっていただける」ものになっているんでしょう。
ミュージカルのワンシーンみたいなセクシーな振り付けあり、
気持ちの変化を印象づけるソロパートあり、
ユニークで笑える群舞あり。
ただ、毎回書いてますがセリフにぐっとくるものがないんですよねえ。
それ以上に、キャラクター設定が不明点だらけだったのも今回は気になった。
キャラクター設定として、なぜ主人公の三宅悠希が「汗水流して働く」ことに執着するのか、しかも愛人で稼ぐ百合に対して「汚い金」と罵り続けるのか。これも特に語られていない。
社長との会話では、その一途さは入社の面接の時かららしい。
安田社長が好きな「ルーズヴェルト・ゲーム」が後半の鍵で出てくるのだけど、これも謎。
リストラと企業スポーツを絡めた企業小説だそうです。(
講談社サイト)
書評ではこんな言葉も。
ルーズヴェルト・ゲーム 池井戸潤著 会社が舞台の手に汗握る展開 最後に、青島が経営者の心得として語る言葉が心に残った。
「いまこの会社の社員として働くことに、夢があるだろうか。彼らに夢や幸せを与えてやるのもまた経営者の仕事だと思うんだが」
これ、安田社長に言わせたら面白かったんじゃないでしょうか。
野球の大逆転の話と言うよりも、経営者として、安田社長はもう少し読み込んだほうがいいかもね。
だって、29歳で働いたことがない息子がポルシェ乗ってて、麻布に済んでて、小遣いいくら使っているかわからないほどの金持ちなんだよ。どんな広告代理店の社長なんだろう。ワンマン社長なんでしょうね。
思いつきで接待課とか作っちゃうくらいだから。
第一、汗水たらして働く内容が「接待」というのは、パロディにしか見えない。
広告代理店が真剣に接待をしているのは本当だけど、それは午後1時から飲んだりすることではないしね、今や。
今時「飲んで飲まれての接待」を喜んだり、発注の動機にしている企業があるとも思えない。
一緒に企画を考えるときに「飲んで楽しい人」を選ぶ人はいるかもしれないけど、それは「接待」と言い切れるのかどうか。
サラリーマンの接待をバカにしているのか、よくわかってないのか。
さらに思いを馳せると、「できの悪いOLが地下の会議室に集められる」という設定は、もうすぐ10数年ぶりに復活する
「ショムニ」という名作を思い出せる。
セクシー系がいたり、経理のプロがいたり、パソコンオタクがいたりという配役にもイメージが重なる。
でもリアリティがないはずのショムニがリアルに思えるくらい、この接待課のメンバーにはリアリティがない。
いくら音楽家を目指していても一日中ギターを離さないロックの格好のままの社員がいる広告代理店って、どんな会社なんだろう。漫画家を目指しているコピーライターの緑色の半ズボンもよくわからない。
キャラクターを強調した衣装なんでしょうけどね。
そういう誇張って、表現で手を抜いているようにも見えるから気をつけたほうがいいと思う。
広告代理店で特命係という言葉は、サラリーマン金太郎や
特命係長・只野仁を思い出させる。
どっちも高橋克典でセクシーがつきものだし。
ああいうサラリーマン生活のパロディがすでにある中で、この芝居は、いま何を浮き彫りにしたのだろうか。
たしかに楽しい2時間弱ではあった。
時間があっという間にすぎるというのは舞台として素晴らしいことだと思う。
その意味で、構成、展開、演出、すべてにおいてテクニックが上がっていると感じる。
でも、これまでの6回の公演の中では、途中の踊りや歌に拍手が少なかったと感じた。
お客様の反応は良かっただろうけど、何かが欠けているように思う。
細かいボケも、くすぐりも、エンターテインメントとしては必要だと思うけど、圧倒的な感動がなかったといってしまうと、期待し過ぎなのだろうか。
今回、ピアノ演奏者の怪我でのリタイアで音楽が生でなかったのが残念でしたし、そのために広光さんの出演もカットになったらしい。そこに、鍵となるセリフがあったようにも思うけど、まあなかったのだから仕方がない。
後、素晴らしいことだと思うけど、よくわからなかったのが、字幕だった。
舞台最上部に字幕が出ているわけです。
でも見づらそうなのが気になった。
こういう試みは広く行われるといいと思うけど、それは事前の宣伝でも明らかになっているといいのではないだろうか?
耳が聞こえなくても見に行ってみようと思えるように、そういう人達に情報が届いていると喜ばしい。
多くの要素について書きましたが、それだけ気になっているわけです。
多くの部分では「イイね」を押したいのだけど、気になることが多すぎる。
そういう芝居でした。