【科学】ImPACTのPMについて、もう少し詳しく見てみた:2014年7月1日
先日エントリを書いたように、IMPACTのPMが決定し、研究開発構想が発表されました。
【科学】革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のPMが決定しました:2014年6月26日
12人の顔ぶれはわかりましたが、どんな人なのでしょうか。
研究構想を見ると色々見えてきます。
各PMの研究開発構想
1(PDF形式:415KB) 2(PDF形式:429KB) 3(PDF形式:589KB) 4(PDF形式:410KB)
矢印以下は、私の解説です。
伊藤耕三氏(東京大学)超薄膜化・強靭化「しなやかなタフポリマー」の実現
→大学教授ですが、自分の発明した技術を元に会社を作っています。その新材料の商品化を狙う。
合田圭介氏(東京大学)セレンディピティの計画的創出による新価値創造
→大学教授ですが、ダボス会議でヤング・グローバル・リーダーに選ばれた。専門は高速撮影。ミドリムシを使うのが今風。
佐野雄二氏(東芝)ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現
→文科省のプログラムオフィサーを経験してます。自社技術の応用を狙う。
佐橋政司氏(東北大学)無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現
→大学教授ですが、03年まで東芝。国家プロジェクトを大学で牽引してきた経験豊富。プロマネのプロ。
山海嘉之氏(筑波大学)重介護ゼロ社会を実現する革新的サイバニックシステム
→サイバーダインで上場したことも高評価。FIRSTプログラム研究者。
鈴木隆領氏(小島プレス工業)超高機能構造タンパク質による素材産業革命
→生産技術のプロ。蜘蛛の糸タンパク質の商品化を狙う。
田所諭氏(東北大学)タフ・ロボティクス・チャレンジ
→阪神淡路以来のレスキューロボの専門家。国プロのPM、PI経験あり、福島原発内に入る国産ロボに貢献。
藤田玲子氏(東芝)核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化
→日本原子力学会会長。高レベル放射性廃棄物の処理技術という具体的な震災案件。
宮田令子氏(名古屋大学)進化を超える超微量物質の超迅速多項目センシングシステム
→東レから出向だったのが2010年特任教授に。産学官連携マネジメントの専門家という位置づけ。100兆円産業創出というのがよくわからない。
八木隆行氏(キヤノン)イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出
→文科省のプログラム参画経験あり。レーザーと超音波で非侵襲・非破壊データ。でも何に使えるかわかってない。
山川義徳氏(NTTデータ経営研究所)脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現
→東大ベンチャーでブレインイメージング会社と組んでいる。その技術がベースになるのか。NTTデータのCAN(応用脳科学コンソーシアム)事務局で、脳科学者のネットワークで研究を進めるだろう。最年少?
山本喜久氏(国立情報学研究所)量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現
→国家プロジェクト経験豊富。FIRSTプログラム研究者。量子コンピュータの利用を目指す。
自社技術の応用に国の資金を使う人が目立つ気がする。
良い技術でも企業が自前で商品化に持ち込むだけの余裕がなくなっている証左だろう。
FIRST後継と言われながら、そのまま続ける人は二人。内容は微妙に異なるが関係ないわけでもない。
文科省等の研究プロジェクト経験者も多いのは、元々そういう与件があったから。
ただ、そうしても前の研究内容との重なりは気になるところ。
それでも、経験のない若手も採用されているし、その分ての計画が、一読しただけではどうなるのかわからない研究だというのは、若い人枠としてなのだろうか。
震災案件と思われるのが2件。これは着実な進展を願うとともに、こういうのこそ震災復興資金じゃないのかな、とも思う。
何にしても、この人たちが直接研究するということではなく、研究開発機関だの、研究計画だのが練られていき、参加する研究者はその後決まることになる。
まだまだ端緒についたというところ。
巨大な研究費がどうなるのか、これからも、動向を見守っていきたい。