【妄想】公益通報者保護法と「半沢直樹」
テレビネタを組み合わせた妄想です。
「半沢直樹」というのは、TBSの人気ドラマで、先週日曜日に最終階だったようです。
「ようです」というのは、私ほとんど見てないんですね。
大阪編に壇蜜がでていたので、解決編になった回を見ました。
あと、最終回の最後をテレビをつけたらばやっていたので、
中車こと香川照之が土下座したところからあとだけ偶然見ました。
土下座に歌舞伎のためが出てきたなあ、などと思っていたらば、主人公の堺雅人が出向を命じられて終わってました。
原作通りだそうですので、まあそれでいいんじゃないでしょうか。
そして、公益通報者保護法というのは、同じTBSの報道特集で、28日に放送した後半の特集でとりあげていたもので、恐ろしい実態が描かれていました。
内部告発者を守れない!公益通報者保護法とは? (2013/9/28 放送)
7年前に施行された公益通報者保護法。公益のために通報を行った労働者に、解雇などの不利益処分をしてはならないという法律だ。しかし実際は法律に騙されたという通報者が少なくない。
もともと5年をめどに見直しが求められていたが、7年たった今も進んでいない。
番組では3人の内部告発者に焦点を当てて、公益通報者保護法を考える。
なんでこんな堅い話を見たかというと、担当ディレクターが知り合いだからなのですが、彼の取材によれば3人の内部告発者が、皆ろくな目に合っていない。
企業だけではなくて、自衛隊の人もいて、国が守る気がない、ことがわかりますね。
消費者庁に公益通報者保護法ウェブサイト、というのがありまして、ここでいろいろな情報が手にはいります。
近年、事業者内部からの通報(いわゆる内部告発)を契機として、国民生活の安心や安全を損なうような企業不祥事が相次いで明らかになりました。このため、 そうした法令違反行為を労働者が通報した場合、解雇等の不利益な取扱いから保護し、事業者のコンプライアンス(法令遵守)経営を強化するために、公益通報 者保護法が平成18年4月に施行されました。
公益通報者保護制度について知って頂くため、法の概要、各種通報処理ガイドライン等の制度に関する基礎的な資料について紹介しています。
内部告発をした人を企業から受ける不利益から守るための法律なのですが、これが実に有名無実で、取材された内部告発者が言うように「内部告発者迫害法」とでも呼ぶべき、内部告発者を企業が把握しやすくするための制度であり、内部告発してもこの法律に適さないという判決が出ていたりしています。
何故そうなるかも、このドキュメンタリーでは明らかにしています。
公益通報者保護法では、その内部告発によって告発したい事象が、どういう法律に反するかを指定しなければいけないのです。
この法律の指定がなかったから、内部告発ではあるけど、公益通報者に当たらないという判決が出たというのです。
そんなことできますか?
たしかに、このウェブサイトでも「公益通報者保護法において通報の対象となる法律」をあげています。
そして、随時アップデートされて、この法律は増えています。
その数438本。
しかも法律の内容を把握して、どれに違反するかを法令違反として提示しないと公益通報者になれないとなると、専門家のサポートが必要です。
法務部に対して一般社員が物申した時に、法務部がサポートしてくれるならば(それだと、この法律に違反するね、とか教えてくれるとか)書類も書けるかもしれませんが、内部告発者に好意的な専門部署があるのでしょうか?
取材事例では、どうもそうしたことはなさそうです。
このドキュメントで不満だったのは、実は、成功例と言うか、ちゃんと公益通報者になった人も取り上げて欲しかったなという点でしょうか。
そういうサポートをしている好意的な部署があるとか。
内部告発をしやすい企業があるとか。
消費者庁は、公益通報者保護法説明会というのを毎年行っていて、平成24年度も3箇所で開催してます。
そこで、企業が自社の例を報告していて、北海道で開催された会では、いま何かと話題のJR北海道が発表しています。
その資料PDF がアップされています。(こちら)
これを読みとくだけでブログがかけちゃいそうですが、ここでは本論ではないので紹介に留めます。
この中でも、「できるだけ職場内で解決」という言葉が出てきます。
つまり、一度本人を職場に戻すわけですね。
実名で意を決して「お恐れながら」と申し出た人に「職場で解決できないの?」とか言うのでしょうか?
この一言でも内部告発者の側に立って検討されてないことがわかります。
何故、企業は内部告発を「嫌がるのか」もしくは「もみ消そうとするのか」。
さて、何故冒頭にドラマ・半沢直樹の話を出したかというと、この内部告発の話が、最終話での堺雅人と香川照之の対決につながるからです。
この内部告発者がどういう目にあうか、どういう展開になるかを考える一つの例が、半沢直樹の最終回だったということが出来ます。
内部告発をして常務の不正を暴いた半沢が出向して、常務は平取への格下げだけ。
当然、あれは「お話」であって、実際にコンプライアンスにうるさい現代で、あんなことはないのでしょうが
(その点は、こんなブログでの解説がありました。
参考:「半沢直樹」最終回の元銀行管理職からみた解釈@BLOGOS)
「半沢直樹」の不在@池田信夫
池田先生のいうとおり「半沢直樹」は私にも面白い話ではありませんでした)
それにしても、日本企業が「内部告発」をどう扱いそうか、という事例にはなりそう。
これで、半沢が公益通報者保護法を利用して、内部告発を公にすると脅かしても無理なのでしょうね。
法律が底抜けで、国が守る気などないわけですから。
なんで底抜けか。
これは、ドキュメントでも出てきたように罰則がないからです。
Q1 法に違反し、公益通報者に対して解雇等の不利益な取扱いを行った場合、事業者に対して刑罰や行政処分が課せられることはありますか。
法は民事ルールを定めたものであり、公益通報者保護法違反を理由に事業者に対して刑罰や行政処分が課せられることはありません。
しかし、それとは別に、通報対象となる法令違反行為については、関係法令に基づき刑罰や行政処分が課せられることがあります。
企業つまり事業者は罰せられません。
でも内部告発者は、実名で明らかになってますから、企業からは叩き放題。
実際、取材された自衛官は、4年も遡って罰則を受けたり、配置転換を受けて事実上仕事が無い状況だったりしています。
企業ではなく、自衛隊ですからね。
国が率先して法律に対応する気がないということでしょう。
Q5 労働者が法令や内部規則に違反して、法令違反行為を証明する資料を取得した場合、保護の対象となりますか。
公益通報を理由とした解雇等の不利益取扱いは禁止されます。しかし、それとは別に、法令違反や内部規則違反を理由とした不利益取扱いについては、事例ごとに判断されることとなります。
これを適用しているわけですね。
しかも消費者庁は改正する気がない。
公益通報者保護制度に関する実態調査 というのを924万円欠(TBS調べ)かけて行ったそうです。
でもその結果は、改正ではなく、検討だけ。
3..調査結果(課題)を踏まえた今後の方策の方向性
(1)労働者において法制度の認知が進んでいないという課題について
⇒ 労働者に対し、法の趣旨・内容を、効果的に周知徹底する。
(2)中小事業者において法制度の認知及び内部通報制度の導入が進んでいないという課題について
⇒ 中小事業者に対し、法の趣旨・内容及び内部通報制度のメリット・導入方法等を、効果的に周知するための方策について更なる検討を行う。
(3)内部通報制度導入事業者においても取組状況は様々であるという課題について
⇒ 制度導入事業者における取組の充実・改善を促進するための方策について更なる検討を行う。
やる気が見えませんね。
私は、この法律があることは知ってましたし、それが効果を出してないことも聞いていましたが、ここまでひどいとは思いませんでした。
少なくても、消費者庁はもう少し頑張る気があるのかと思ってました。
法務局とか厚労省じゃなくて、消費者庁が担当というのも、労働者の保護に関わる法律と思ってない、片手間感が感じられますね。
改めて、色々考える契機になりました。
知っておいたほうが良い法律だと思いますよ。