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役不足なの?力不足なの?:【観劇】似非紳士

金曜日の夜に赤坂に行くのは久しぶり。
Unit Blueju第三回公演「似非紳士」を見てきました。
$Unit  Blueju(ユニット ブルージュ)

場所は赤坂レッドシアター
私は初めてですが、新しい劇場でした。
ホテルの地下にあるので、ややわかりにくいですが、入ってみると十分な広さです。

公演は、7月4日(月)の昼夜まであるので、ぜひ行ってあげて欲しいです。
金曜日の夜だというのに、150席強の客席が埋まりきっていません。
主演の力でチケット完売かと思いきや、どうも客席に呼び込む力が弱いようです。

夕刊フジでも取り上げられたと聞いていたので、
こりゃメジャー路線に乗ったのねと思っていたんですがねえ。
かえって、大変な状況にあるようです。

なので、お時間ある方はぜひ足を運んであげてください。
と言いながら、観劇の感想はマジで書きます。
これから見る人は、後で読んでね。
ブルージュの特徴は、高度なテクニックに支えられた和製ミュージカル。
若いけど実力のある女優さんたちが歌い、踊り、汗をかくところが魅力的なのだと思う。

これまでの2回公演とも見ているし、作・演出の広光美絵さんの嗜好もわかっている。

楽しいとは思うけど:【観劇】監獄彼女

ごった煮の楽しさ:【観劇】behind the stage

決して、その嗜好が私の趣味じゃないとしても、
やろうとしていることができていればいいんだと思う方です。

今回のストーリはタイトルがネタバレみたいなもので、
自分を偽って、嘘で幸せをつかもうとした男の話。
女性を騙す男のニヒルな魅力とか、その男を改心させるまっすぐな女の正義とか
そんな話に、便利屋という特殊な職場が絡んでくるわけです。

>とんねるず、石橋貴明の娘・穂のか×実力派俳優・川久保拓司 主演
新感覚ミュージカルが赤坂に上陸!

■ストーリー■
母親に愛されたい一心で、令嬢を騙して結婚式に挑む主人公、雅輝。果たしてうまく結婚に辿り着けるのか?
便利屋の一味を連れて、今つぎはぎだらけの式が幕を開ける!
映像と日本舞踊と洋舞と歌と芝居と生演奏を盛り込んだ他には類を見ない新感覚ミュージカルをお届けします



のっけからきついことを言わないといけません。
今回はキャスティングに問題があって、思うようなことができなかったように見えた。
やはり、主役二人の力不足はあまりにも大きい。

坂元役の川久保拓司さんは、このところのスタールートであるモデル出身ウルトラマン経由、
美輪先生の黒蜥蜴にも出たというから、お墨付きを頂いたような二枚目ということ。
たしかに細かい感情表現とか上手ではないけど、目に力がある。
この人が真ん中でいいんじゃないという説得力は、ただしイケメンに限る。

その二枚目に惚れちゃうお嬢様がいたりするのは仕方が無いなと思わせる。
ここは、これまでのブルージュのキャスティングとは違うところ。

でも、歌はいただけませんでしたね。
高音が割れちゃうし、声量も伸びもない声。
フツーのカラオケとかでもそんなに上手じゃないな、というレベル。
歌わせなきゃよかったと思うけど、まあ、ブルージュですから歌いますよね。

もう一人の主役穂のかさんは、ずっと誰かに似ているなあと思ってみていたのですが、
さっき思い出しました、松たか子さんに似ているんです。
頬が前に出ている感じとか、髪型とか顔の輪郭とか。
でも、オーラのない松たか子。
石橋貴明の娘と松本幸四郎の娘では、これほど違ってしまうのか。
舞台女優としての格というか技量では段違いのものがあります。

声は悪くないので、使い方としてはあまり動かない役で儚い系がいいんじゃないでしょうか。
今回のように意思の強さとかまっすぐな思い込みとか頑張る女の子的な、
松たか子がやると良さそうな役はやめたほうがいいと思います。

演技は稚拙だし、歌は高音が出ないし、踊りも基本は出来ているんですが、なんか雰囲気がない。
ブルージュに出るには力不足だと思いましたね。

なぜなら、相変わらず周りの女優陣の歌と踊りは高レベルだからです。
音大ミュージカル科だとか四季にいましたとか、現役の歌手ですとか
皆さんその道のプロばかりですから、当然で、それにしては、今回は役不足な方も多かった。

役者といえば、ブルージュの顔とも言える小俣彩貴の踊りは格段とキレがありました。
芝居は、相変わらずバリエーションが少ないぶっきらぼうな人でしたが、
踊りというか身体能力の高さがいや増しているように思います。
場が締まる踊りができるというのは才能ですね。

今回特に素晴らしかったのはピアノの小島亜紀子さんでしょうか。
生演奏で、ずっと弾きっぱなしですからねえ。
歌の伴奏も、BGMも効果音もすべてピアノ一台でこなしてましたが、
小島さんの演奏力の高さに頼り過ぎの演出にも思えます。

ソロパートの歌に、全て伴奏がピアノだけなのは聞いていて辛い。
もう少し編曲で歌をカバーしてあげようという発想はなかったのでしょうか?
あと、作曲は誰なんでしょう?小島さん?
キーが高すぎて、せっかくうまいのに綺麗に聞こえない人が多かったように思いました。
曲が歌い手を助けていないのは、オリジナルにする意味が無いように感じます。
歌える歌を作ってあげればいいのに。

さらに言えば総じて、作家と演出家(同じ人ですが)が
力量の高い役者やスタッフに頼り過ぎではなかったでしょうか。

作家に対する不満は、サイドストーリーでふくらませるのはいいんだけど、
きちんと話を畳んでほしい。

坂元の広告代理店の同僚である小澤が結婚式を台無しにすると言って仕掛けるのだけど
・小澤の動機が坂元に仕事で負けたから、と言うけど、坂元は仕事が出来るのか?
・小澤は、どこで坂元が便利屋に頼んでいることを知ったのか?
 猫の件は入り込む理由に過ぎないので、偶然ではないよね。
・映像を差し替えて嫌がらせで流したのが馬の映像というのは話ができすぎ
などなど、ご都合主義が見えすぎて、よくわからない。

メインストーリーに関連しては、結局、なぜ坂元が母親の愛情を得たいと思ったのかが
最後までわからなかった。
父親の死とどのように絡んでいるのかも、過労死した原因も出てこないし、
妹の断片的なセリフだけで、その対立が決定的になったストーリーが見えない。
母親の病気が脳腫瘍だというのも、最後に突然出てきた感じ。
まあ、入院していて、貧血で倒れるから脳関連かなとは思ったけど、
入院している病棟にもヒントはなかった。
脳腫瘍の摘出で記憶の混濁はあるけど、まったく忘れるというのはどうかな?

けなしてばかりなのも何なので名シーンをあげると
落ち込む坂元を励まそうと奈美が構うシーンで、髪の毛をクシャッとされたり、
馬鹿な婚約者を発見して(あのシーンも意味がわからんが)落ち込む奈美を
坂元が突然ハグして慰めるシーンで、恋に堕ちるところとか、
(あれは、ホレテマウヤローと叫ばないといけないね)
作家・広光さんが恋に飢えているのはよくわかりましたね。

マイコさんと斉藤の絡みも面白いし、ああいうのが好きなのは分かるけど
もう少しシンプルにならないかなあ。
でも、今回の斉藤役の堀井さんは今までより良かった。
最後にマイコのところに来るシーンでは、ちょっと緊張を現す為に泣きすぎだったけど。

実は、最後まで朝比奈家も金持ちのふりをしているという落ちになるのかと思って、
勝手にハラハラしてみていました。
まあ、そんなことはなかったわけですが、美麗さんは金持ちのお嬢様がぴったりでしたね。
お母さんが出てきたときは、これまでニ作の役を思い出して笑っちゃいました。

演出家・広光さんは、作家の世界観をもっと濃縮してあげられるといいと思うんです。
やっぱり、このストーリーで120分は長い。
作中で「2時間切らないといけないのよ」というセリフがありましたが、
100分以下でお願いしたい。

シーンチェンジが多いので、出はいりに時間を食うし、暗転が多いから気持ちが途切れる。
演出で暗転せずにシーンチェンジする工夫がほしい場面が多々ありました。
照明でかみしもを区切るとか、スピード感のある演出を心がけて欲しかった。

全体に舞台の台本というよりは、韓流ドラマの台本みたいなんですね。
セリフのフツーな言葉の連続感とか、ご都合主義な場面設定とか、
でもそれは、スピード感のある演出や過剰感を加えた演技で補えるものです。
それこそが舞台ならではのリアリティで、日常のリアルを超えたところにあるもの。

舞台ならではのエッセンスを加えるために歌や踊りや生演奏を使っている演出ですが
実は、芝居そのもので舞台ならではの時間を作るにはどうするかを見つめてほしい。
作家と演出家を兼ねる場合には、演出家がかなり作家の心を逆なでするように
刈りこんでつくっていかないと長くなり過ぎてしまうものです。

今回の舞台がやや広すぎるのもこれまで二回の凝縮感がなくなった感じがする理由かもしれません。
空間処理がうまくいってない感じがしました。
上手(かみて)下手(しもて)を別けて使っても良かったんじゃないかな。

文句ばかり書いてしまいました。
今回は、企画的に、場所とか配役とか、ブルージュとしても
いろいろと時期尚早だったんじゃないでしょうか。
役不足の人もいたし、力不足の人もいた。

広光さんも仕事が忙しすぎて、内容が詰め切れなかったようにも見えます。

第4回公演は12月に阿佐ヶ谷だとか。
今度はまた元のブルージュでぴったりした芝居を見せてくれることを願っています。



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プロフィール

fujita244

Author:fujita244
2000年から新宿在住。
21世紀とともに新宿を闊歩。
高度成長期の一億総中流育ち
頭も身体もサイズM。
フツーのオッサンから見て
フツーじゃなさそうな話を
書いています。

2011年12月に
「若だんなの新宿通信」から
「フジタツヨシの新宿通信」
に変更しました。

2012年12月20日にはてなブログも始めました。
「fujita244's field」です。
2013年2月1日からゴルフ専用のブログもはじめてます。
「fujita244のゴルフBK」です。
2つのサブブログもよろしくお願いします。

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