楽しいとは思うけど:【観劇】監獄彼女
先週金曜日に谷中・戸野廣浩司劇場まで行って観てきたのですが、
公演中にネタバレエントリを書くわけにも行かず、
サイエンスアゴラで忙しかったので放置していました。
さて、公演期間中超満員の動員で無事終了したらしいので、
感想を書いておきます(アンケートにもそう書いたし)
広光美絵さんが率いるUnit Bluejuの第二回公演「監獄彼女」は、女子刑務所の話。
ちなみに第1回公演も見に行ってます。
ごった煮の楽しさ:【観劇】behind the stage
第1回公演の感想でも「ごった煮」と書いたように、
bluejuの特徴は、歌とダンスと芝居、しかも和モノ洋モノ何でもありの、
まさに混沌とした面白さにあります。
それは、出演俳優たちが実に芸達者で、Blueju以外に多くの活動をしていて、
振付も本業でダンス出身だったり、四季出身だったたり、ミュージカルに出ていたり、
アクション出身だったり、歌も歌っていたり、日舞の名取だったりするという、
その役者の得意とする分野を存分に発揮する舞台を作っているからでしょう。
作・演出の広光さんがそうした役者たちの出自を生かし、
得意技を披露する「ソロパート」を芝居の中に配して、
約100分の舞台を構成していくことに心を砕いているんだろうなと思います。
前回のbehind the stageは、芝居の内幕ものという設定を含めて、
その「ソロパート」がうまく舞台で融和し、世界観となっていました。
しかし、今回の「監獄彼女」では、その「ソロパート」が私には「くどい」というか
冗長な感じに見えてしまいました。
その辺は、舞台に何を求めるかの違いで、何をおもしろいと思うかなのでしょう。
私は、たとえミュージカルでも、そこにあるストーリーの流れと世界観、
作者や演出家がその「本」で何を観客に伝えたいか、
そこにある「哲学」や「主張」をおもしろいと思うタイプなので、
単純に「2時間が楽しい」という舞台は、あまり好みではないのですね。
歌と踊りと時々芝居、役者が存分に力を発揮した芝居ではありましたが、
女子刑務所の中で繰り広げられる「物語」には、あまり共感できませんでした。
登場人物が刑務所に入った経緯の裏にある人間模様や、
独裁的な刑務官のキャラクター、やる気のない獄医といったサブキャラ、
その辺の設定が二時間ドラマのようで、どうもすっきりと落ちてこないんだなあ。
一人の純粋な(というか単純な)主人公が刑務所の因習に逆らい
独裁的な刑務官にどんなに虐げられても変わらぬ姿勢に
やがて事なかれ主義の5人の同室女囚たちも心を開き、
独房にいる主人公にマイクを通してエールを贈るというクライマックスも
ごめんなさい、笑っちゃいました。
なるほど、そういうオチかと。
まあ、あの締め方しか無いかも知れませんけどね。
そして、図書室で共通の趣味であるマニアックなSFを通じて心を通わせる男性が
別れ際に残した謎の言葉を解読して、最後二人が出会うシーンで終わる。
そう来たか、と思いました。
花道から彼が来るので、私の席からだと二人の顔が見えなかったのが残念です。
そこの二人の表情のアップで終わりたかった。
一人ぼっちで人を信じられないまま死んでいった女囚が、
実は地縛霊なのだけど、主人公には見えているやりとりがあるために
観客からも途中までもう一人の同室女囚の様に見えるという設定は
なるほどおもしろいと思いましたね。
結局彼女も主人公の「ヒトを信じる力」に改心して成仏するんですが。
そういう意味では盛りだくさんの台本なんです。
「私が普段感じている言葉や思いをぎゅうぎゅうに詰まっています」
という広光さんがパンフに書いてある言葉通り。
そして、それらが何とか絡まり合って一つのストーリーになっている。
そこはよくまとめたなと思います。
もっと破綻してしまった例をこれまでにたくさん見てきましたので、
そこは作・演出の技量だと思います。
でも、なんだか役者と作・演出に面白さを取られて、
観客である私は置いてけぼりを食らったようなカンジがするんですね。
楽しいけどさ、おもしろいけどさ、なんだか釈然としないなあという思い。
それはきっと、芝居に対する嗜好の違いなのだろうと思います。
かなり見当はずれのクレームを付けている気もしますが、
ベースとなる技術とか歌唱力とか踊りのレベルが高いから、
そういう点で気になるところがない上で、なんとなく釈然としないんです。
ただ、次はどういう本になるのか、次回作が気になる団体であることは確かです。
第3回公演は2011年2月17日~20日
場所はシアター風姿花伝
ということなので、期待して待ちましょう。
公演中にネタバレエントリを書くわけにも行かず、
サイエンスアゴラで忙しかったので放置していました。
さて、公演期間中超満員の動員で無事終了したらしいので、
感想を書いておきます(アンケートにもそう書いたし)
広光美絵さんが率いるUnit Bluejuの第二回公演「監獄彼女」は、女子刑務所の話。
ちなみに第1回公演も見に行ってます。
ごった煮の楽しさ:【観劇】behind the stage
第1回公演の感想でも「ごった煮」と書いたように、
bluejuの特徴は、歌とダンスと芝居、しかも和モノ洋モノ何でもありの、
まさに混沌とした面白さにあります。
それは、出演俳優たちが実に芸達者で、Blueju以外に多くの活動をしていて、
振付も本業でダンス出身だったり、四季出身だったたり、ミュージカルに出ていたり、
アクション出身だったり、歌も歌っていたり、日舞の名取だったりするという、
その役者の得意とする分野を存分に発揮する舞台を作っているからでしょう。
作・演出の広光さんがそうした役者たちの出自を生かし、
得意技を披露する「ソロパート」を芝居の中に配して、
約100分の舞台を構成していくことに心を砕いているんだろうなと思います。
前回のbehind the stageは、芝居の内幕ものという設定を含めて、
その「ソロパート」がうまく舞台で融和し、世界観となっていました。
しかし、今回の「監獄彼女」では、その「ソロパート」が私には「くどい」というか
冗長な感じに見えてしまいました。
その辺は、舞台に何を求めるかの違いで、何をおもしろいと思うかなのでしょう。
私は、たとえミュージカルでも、そこにあるストーリーの流れと世界観、
作者や演出家がその「本」で何を観客に伝えたいか、
そこにある「哲学」や「主張」をおもしろいと思うタイプなので、
単純に「2時間が楽しい」という舞台は、あまり好みではないのですね。
歌と踊りと時々芝居、役者が存分に力を発揮した芝居ではありましたが、
女子刑務所の中で繰り広げられる「物語」には、あまり共感できませんでした。
登場人物が刑務所に入った経緯の裏にある人間模様や、
独裁的な刑務官のキャラクター、やる気のない獄医といったサブキャラ、
その辺の設定が二時間ドラマのようで、どうもすっきりと落ちてこないんだなあ。
一人の純粋な(というか単純な)主人公が刑務所の因習に逆らい
独裁的な刑務官にどんなに虐げられても変わらぬ姿勢に
やがて事なかれ主義の5人の同室女囚たちも心を開き、
独房にいる主人公にマイクを通してエールを贈るというクライマックスも
ごめんなさい、笑っちゃいました。
なるほど、そういうオチかと。
まあ、あの締め方しか無いかも知れませんけどね。
そして、図書室で共通の趣味であるマニアックなSFを通じて心を通わせる男性が
別れ際に残した謎の言葉を解読して、最後二人が出会うシーンで終わる。
そう来たか、と思いました。
花道から彼が来るので、私の席からだと二人の顔が見えなかったのが残念です。
そこの二人の表情のアップで終わりたかった。
一人ぼっちで人を信じられないまま死んでいった女囚が、
実は地縛霊なのだけど、主人公には見えているやりとりがあるために
観客からも途中までもう一人の同室女囚の様に見えるという設定は
なるほどおもしろいと思いましたね。
結局彼女も主人公の「ヒトを信じる力」に改心して成仏するんですが。
そういう意味では盛りだくさんの台本なんです。
「私が普段感じている言葉や思いをぎゅうぎゅうに詰まっています」
という広光さんがパンフに書いてある言葉通り。
そして、それらが何とか絡まり合って一つのストーリーになっている。
そこはよくまとめたなと思います。
もっと破綻してしまった例をこれまでにたくさん見てきましたので、
そこは作・演出の技量だと思います。
でも、なんだか役者と作・演出に面白さを取られて、
観客である私は置いてけぼりを食らったようなカンジがするんですね。
楽しいけどさ、おもしろいけどさ、なんだか釈然としないなあという思い。
それはきっと、芝居に対する嗜好の違いなのだろうと思います。
かなり見当はずれのクレームを付けている気もしますが、
ベースとなる技術とか歌唱力とか踊りのレベルが高いから、
そういう点で気になるところがない上で、なんとなく釈然としないんです。
ただ、次はどういう本になるのか、次回作が気になる団体であることは確かです。
第3回公演は2011年2月17日~20日
場所はシアター風姿花伝
ということなので、期待して待ちましょう。
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