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「もっともっと欲しい」の貪欲の経済から、「足るを知る」知足の経済へ。さらにいのちを尊重する「持続の経済」へ。日本は幸せをとりもどすことができるでしょうか、考え、提言し、みなさんと語り合いたいと思います。(京都・龍安寺の石庭)
昔ベテラン、いま初心者
〈折々のつぶやき〉36

安原和雄
 想うこと、感じたこと、ささやかに実践していること―などを気の向くままに〈折々のつぶやき〉として記していきます。今回の〈つぶやき〉36回目は元旦(1月1日)以来で、ちょっと間があきすぎました。題して「昔ベテラン、いま初心者」です。(08年4月16日掲載)

 毎日新聞(08年4月3日付)に企画特集〈800人の読者から寄せられた「珠玉の言葉」― 次世代へのメッセージ〉が載っています。私(安原)としてはすべての言葉に「なるほど」と感じ入るほかありませんが、全文をここに収録するわけにもゆきませんので、以下にいくつかを紹介します。それぞれの下段の文は安原のコメントです。

▽「珠玉の言葉」(1)― 大切なものは、目に見えない

*いのちは、つなぐもの
 簡単に人の命を奪う世の中になってしまった。命はつないでいくものであって、消すものではない。(会社管理職、54歳)
 その通りですね。人を生かすことによってこそ自分も生きることができるはずですから。
命は一人だけでは存在しません。俗に言えば「持ちつ持たれつ」ですが、「多様な相互依存関係」つまり共生の中でのみつづいてゆきます。

*降り止まない雨なんてない
 どんなにつらいことがあっても、それがずっと続くわけじゃない。つらいときはそのことしか考えられなくなってしまうけれど、必ず時間が解決してくれるんですよね!(学生、22歳)
 若くしてつらい体験を味わったのでしょうか。失望のつぎには希望を見出すことができる ― これを信念とする生き方ほど充実感のある人生はないようにも感じます。

*がんばらない
 人に対して「頑張れ」という言葉をかけることは励ましとともに時に追い込んでしまうこともある。(公務員、27歳)
 われわれ日本人は「頑張れ」が口癖になっています。激しい競争のせいでしょうか、それとも思いやりのゆえでしょうか。「のんびり、気楽に行こうよ」と声をかけた方がかえって励ましになることもあります。

*ほんとうに大切なものは、目に見えない
 心の豊かさも、愛も、友情も目に見えません。「感じるこころ」が大切なんだと、あらためて気づかされた「ことば」です。(専門職、35歳)
 大切なものはマーケットでお金を出しても求めることができない、と言い直すこともできるのではないでしょうか。愛も友情も近くのコンビニで買うことはできませんから。

▽「珠玉の言葉」(2)― 人を恨むな羨むな

*他人を咎(とが)めんとする心を咎めよ
 いつものように「早く勉強しなさい!」と子供をしかりながらめくった日めくりカレンダーにあった言葉。あまりの直球にグサッときました。(主婦、52歳)
 叱り方はなかなかむずかしいものです。やはり自己反省から出発しなければ、相手も耳を傾けてはくれないということでしょうか。

*人間万事塞翁(さいおう)が馬
 ストレスは強引に抑え込んできましたが、45歳あたりからストレスは受け流すものと悟り、座右の銘としました。(自営業、55歳)
 これは中国の故事で、人生の禍福は転々として予測できないことのたとえです。日本では福ばかりではなく禍がつきものだ、という悲観主義寄りの理解が多いと思いますが、中国ではむしろ禍のつぎには福が来るという楽観主義による理解が多いとされています。

*頭の中にたくさんの引き出しを作りなさい
 何でもてきぱきこなす有能な上司に「すごいですね」と言ったら、返ってきた言葉。(無職、73歳)
 発想(選択肢)の多様性を重視する姿勢と理解できます。「これに失敗したら、どうしよう」なんて固い発想では、手足が硬直して、うまく行くはずのものまで失敗してしまいます。これが分かっている上司殿はたしかに「すごいですね」。

*(相手の)顔を見て話そうよ
 職場の若い同僚が「メールでけんかして、メールで仲直りした」という話を聞き、驚くばかり。(看護師、52歳)
 たしかに顔を見つめ合って話をする若者が少なくなっています。論理にせよ、感覚にせよ、向き合って理解し合うことが少なくなってきたのでしょうか。まさか赤ん坊もメールで手に入れることができると思っているわけではないでしょうね。

*人を恨(うら)むな羨(うらや)むな
 常に自分に言い聞かせています。自分は凡人で、ともすれば他人と比較して悩んだり苦しんだりしがちです。またその原因を他者に求めてしまいがちです。(会社員、45歳)
 比較する、という感覚を捨てたら楽になれるように思います。比較感から出てくるものは、勝敗、多少、大小、上下、賢愚、優劣、美醜、禍福、運不運などです。それへのこだわり―これこそ煩悩です―を捨てることができれば、― むずかしいといえば、むずかしいのですが ―「我が道を行く」わけですから、人生はおもしろくなってきます。
どうしても比較感を棄てられないなら、もう一人の自分との比較です。中国の古典『老子』に「己(おのれ)に勝つ者、つまり己の欲望に打ち克つ者は真の強者」とあります。

▽「いま初心者」のすすめ ― その心は?

*昔ベテラン、いま初心者
 「昔ベテラン、いま初心者」の心は、ベテラン意識を捨てよう!です。実は私(安原)が最近痛感していることです。毎日新聞の「珠玉の言葉」から離れますが、「いま初心者」のすすめを強調したい理由は以下のようです。

 ここ数年来いわゆるベテランが事故に遭うケースが目立ちます。最近の事例ではホタテ漁解禁の4月5日未明、青森市沖の陸奥湾内でホタテ漁船「日光丸」(8人乗り)が遭難し、全員が死亡あるいは行方不明となりました。船長は市漁協の組合長を務めるベテランでした。

 にもかかわらずなぜ遭難という悲運を避けられなかったのでしょうか。朝日新聞(4月6日付)によると、ある漁師は「50年近く漁師をやってきて経験したことのない突風が吹いた」と語っています。注目したいのは、「経験したことのない突風」という発言です。
 雪崩などによる真冬の雪山遭難も増えてきました。必ずといっていいほど「あのベテランがなぜ?」という声があがります。これまでの経験でいえば、起こるはずのない場所で雪崩が発生するケースもありました。

 ベテランとは経験豊かで、その経験に基づいて判断、対処法を誤ることがない人のことでしょう。ところが最近、経験がものを言わなくなってきました。なぜなのか?
 一つの背景として地球温暖化など気候の変化を挙げることができます。経験したことのない変化に直面する場合、その予測も含めてうまく対応できないのはベテランも初心者も大差ないといえます。

 気候激変などの自然現象に限りません。変化、改革の時代だからこそ政治、経済、社会の諸事象についてもいえることです。まずベテラン意識を捨てることから出直す以外に手はなさそうです。「昔ベテラン、いま初心者」の心構えです。

 そういえば、世阿弥著『風姿花伝』(岩波文庫)に「初心を忘るべからず」があります。これは芸の分野での戒めですが、あらゆる分野に通用することです。
 福田首相の評価が最近急降下しています。政界ではベテランのはずの福田首相も、国民の声に謙虚に耳を傾けるという初心をどこかに置き忘れているためでしょう。


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コメント
この記事へのコメント
▽「珠玉の言葉」(1)― 大切なものは、目に見えない

という言葉を私は一番大事にしています。だから心の感受性をいつも大きく開いていられる私でありたいと願ってしまうのかもしれません。また覗かせてください。
2008/04/16(水) 13:52:38 | URL | きりん #s.Y3apRk[ 編集]
大切なモノ
きりんさん、早速のコメントに感謝します。毎日新聞の企画特集「珠玉のことば」には30以上の素敵な言葉が紹介されています。その4分の1程度しか紹介していません。正直言って絞るのに汗を流しました。

たしかに「大切なものは、目に見えない」という認識は大切です。見えないものを心の目で観(み)てとる感覚が薄れているところに、昨今の日本列島上の殺風景な姿が広がっているように感じます。
いつでも気軽に覗いてみて下さい。歓迎します。
2008/04/17(木) 11:30:04 | URL | 安原和雄 #-[ 編集]
元来格言好きな者でしが、ここしばらくは接する機会が無かったように思います。久しくこのブログで素晴しい格言に触れ、自省のこころを喚起させられました。ありがとうございます。
2008/04/18(金) 07:07:46 | URL | abtomi #-[ 編集]
こころに響く格言
abtomi さん、格言はたしかにこころに深く響くものがあります。よろしかったら、またお出で下さい。
至らぬ者ですが、感謝の心だけはせめて失わないように、と思っています。
2008/04/18(金) 21:46:26 | URL | 安原和雄 #-[ 編集]
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