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「もっともっと欲しい」の貪欲の経済から、「足るを知る」知足の経済へ。さらにいのちを尊重する「持続の経済」へ。日本は幸せをとりもどすことができるでしょうか、考え、提言し、みなさんと語り合いたいと思います。(京都・龍安寺の石庭)
兵器の価格・原価を公開しよう
防衛利権の巨悪一掃のために

安原和雄
東京地検特捜部は07年11月28日、前防衛事務次官の守屋武昌容疑者(63)と妻の幸子容疑者を収賄容疑で逮捕した。これを機に防衛利権をめぐる巨悪にどこまで検察のメスが入るかが注目されるが、巨悪を一掃するためには、この際兵器など装備品の調達価格とその原価を公開するシステムをつくることを求めたい。これによって防衛利権が肥大化していくのを防ぐ有力な歯止めができるのではないかと考える。(07年11月29日掲載、同日インターネット新聞「日刊ベリタ」に転載)

▽守屋前防衛次官の逮捕、今後は潜む「巨悪」の追及を

守屋前防衛次官の逮捕をめぐって大手メディアの社説(11月29日付)はどう論じたか。まず見出しを紹介しよう。
読売新聞=守屋前次官逮捕 頻繁なゴルフ接待は「賄賂」だった
朝日新聞=前次官逮捕 防衛汚職の底知れぬ闇
毎日新聞=前次官逮捕 防衛腐敗のウミを洗い出せ
日本経済新聞=収賄容疑者はなぜ次官になれたのか
東京新聞=前次官逮捕 巨悪は潜んでいないか

 東京新聞社説は防衛利権の巨悪に視野を広げているので、その要旨を紹介しよう。

前事務次官の汚職事件は、防衛官僚のトップの堕落と腐敗ばかりか、でたらめな武器調達の実態をも露呈した。防衛利権には巨額マネーが動く。そこに巣くう巨悪を視野に入れた徹底捜査を望む。

防衛省の装備品調達のずさんさも看過できない。防衛商社「山田洋行」社長は「過去にかなりの水増し請求があった」と認めている。見積書などを改ざんする業者の手口は悪質極まりないが、言い値のまま購入する同省も批判されるべきである。これが業界の慣行なら、もはや“病根”と呼んでいい。

 要するに調達はメーカーとの間に介在する商社に任せきりになっているのが実態で、役所のチェックが効かない仕組みなのだ。元は税金だけに、国民も無関心ではいけない。政府は同省改革に取り組むが、調達システムに民間人を登用するなど、透明化への抜本的見直しに本腰を入れる必要があろう。
 何しろ装備品調達額は、年間約二兆円に達する規模である。日本は世界に冠たる“兵器輸入大国”でもある。「軍需」というカネを吸い上げる巨悪こそ、あぶり出したい。

 以上、東京新聞は「装備品調達システムの透明化への抜本的見直し」を求めているが、その具体策はない。
 朝日新聞も「機密の壁もあって、その実態は外から見えにくい。日本の安全保障に直結する装備品の調達が、業者との癒着によって、どのようにゆがめられていたのか。検察は長年の利権構造に切り込んでほしい」と書いているだけで、その具体策への言及はない。当面は検察当局への追及にお任せ、という姿勢である。

もちろん検察の利権構造へのメスの入れ方は大いに注目に値するが、「調達システムの透明化」のためには何が必要だろうか。ここでは「兵器など装備品の価格とその原価の公開」を求めたい。巨悪を封じ込めるための一つの決め手になると考える。
 これは以下に紹介する高校生の提案がヒントになっている。各紙社説の主張が高校生のアイデアに後れをとるようではジャーナリズムのあり方としていささか心許ないとはいえないか。

▽高校生の「戦争をなくすため」の提案がヒント

 第14回全国高校デザイン選手権大会(東北芸術工科大=山形市=主催)で、神戸市立科学技術高校チームが文部科学大臣賞(優勝)に選ばれた。「兵器に製造国や企業名、価格などを示すラベルをはり、兵器が本当に必要かどうかを考え直そう」という提案が評価された。その理由は「戦争に真正面から向き合った姿勢とアイデアのユニークさ」である。

 朝日新聞の記事(07年11月25日付、根岸拓朗記者)によると、大会には31都道府県から396チームが参加、一次審査をパスした12チームが東北芸工大で開かれた決勝戦に出場し、1チーム7分の持ち時間を使って公開の場で作品を説明した。
 優勝した科学技術高チームの顔ぶれは、2年生のジェップ・テウン・アンくん(ベトナム出身)と梶原千種(ちぐさ)さん、1年生の田中天(てん)さんの3人で、担当の新山浩教諭(43)と話し合い、「戦争をなくすには」というテーマを選んだ。高校生が考えたことは以下のようである。

 最近、産地や消費期限など食の安全が問題になっているが、考えてみると、兵器の情報は何も知らされていないことに気づいた。これが出発点となって、食品では当たり前の表示ラベルを兵器にもつけたら、というアイデアに脹らんでいった。

 つぎのようなアイデアも光っている。朝日の記事はこう続いている。

 ラベルには、兵器を買う金額で水や食料、薬品などをどれだけ買えるかも表示した。例えば戦闘機の誘導爆弾1発は3400万円で、HIVの治療薬なら2800人分、原子力潜水艦1隻は3000億円でビスケット15億箱が買える。
 「兵器がいかに無駄かをイメージしてもらうため」とジェップくんは語っている。また田中さんは「なぜこんなに高いお金を使って、殺し合いをしてしまうのかと思うけど、兵器をつくってご飯を食べている人もいる。いろいろ考えて、すごくいい経験になった」、梶原さんは「世界のことを知っておかなきゃと改めておもった」と笑顔で話した。

 決勝では、発泡スチロールでつくった兵器のオブジェを背景に映像を交えて訴えた。
 「戦争や紛争とは悲しみについての話です。自分のつくり出すものにいっさい責任をとらない人、何についてもイメージすることを放棄してしまった人についての話です」と。

▽防衛利権のための血税浪費に、国民による監視の目を

 防衛省による「兵器その他の装備品」調達価格と原価の実態はどうなっているのか。防衛省作成の「平成19年版(2007年版)防衛白書」をのぞいてみよう。具体例は以下の通り。

*弾道ミサイル攻撃への対応
 07年度予算として1825億9900万円(新たな警戒監視レーダーの整備、BMD=弾道ミサイル防衛=用能力向上型迎撃ミサイルの日米共同開発等)を計上しているが、その詳細は不明
*90式戦車
 9両で総額71億4900万円。1両が約8億円
*戦闘機(F-2)
 8機で総額1055億5100万円。1機が約132億円
*潜水艦(SS)
 1隻が533億3200万円

 以上のように主要装備の契約価格はそれなりに読みとれる。しかしその原価がいくらなのかは一切不明である。だから企業側による水増し請求の実態も不明である。東京新聞が指摘しているように「元は税金だけに、国民も無関心ではいけない」のである。血税の浪費をほしいままにする日本版政軍産官複合体(国防族議員、防衛省、自衛隊、兵器メーカーなどの複合体)をどう監視するか、つまり税金の無駄な使われ方に批判と監視の目を光らせることが大きな課題となってきた。それを怠ると、その先に待っているのは大増税への道である。

 兵器などの価格、特に原価の全面公開には複合体の面々は「安全保障上の機密」、「そういう慣例はない」などと口実を設けて拒むだろう。しかし拒めば、それだけ防衛利権を擁護するための「安全保障」という実態が浮かび上がってくる。
 米国版軍産複合体の存在に重大な警告を発したアイゼンハウアー大統領のつぎの言葉を噛みしめたい。
 「われわれはこの複合体の勢力が米国の自由や民主主義的な政治過程を破綻させるような事態をもたらしてはならない。われわれは何事もやむを得ないこととして放置してはならない。敏感で、分別のある市民のみが(中略)安全と自由を守ることができるのである」と。


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日本一おもしろい『豪快な号外』
30秒で世界を変えちゃう新聞

安原和雄
 最近、友人から一風変わった新聞が届きました。題して《『豪快な号外』―30秒で世界を変えちゃう新聞》とあります。
 ざっと読んでみると、「なるほど」と肯(うなず)かずにはいられない記事が満載です。私が今まで読んだ「号外新聞」記事の中では日本一おもしろいと言っても、誇張ではないように思います。このままゴミ箱に捨ててしまうのは、それこそ「もったいない」ことだし、罰が当たりそうなので、いくつかをご披露しましょう。
 発行人は中村隆市氏(株式会社ウインド・ファーム代表)/TEAM GOGO!2007事務局 http://www.teamgogo.net/ (2007年11月18日掲載、19日インターネット新聞「日刊ベリタ」に転載)

▽「やってみま笑(しょう)」っていう気持ちになって

 1ページ目に載っている読者への呼びかけ文が以下のようにちょっぴり変わっています。

 まずは、半径3mを変えてみよう。
 そこから、世界が変わっていくって。

 今、世界が直面している最大の問題は、「地球温暖化」です。
 絶望的な予測をする科学者もいます。ある人がこんなことを言いました。
「しょうがない」を漢字で書くと、「笑(しょう)がない」。
「笑(しょう)がない・・・」ってあきらめていたら、笑(わら)いのない世の中になってしまう。
 でもね、「やってみま笑(しょう)」って笑(わら)い楽しみながら動いたら、必ず笑いがあふれる世の中になる。
 ひとりでも多くの人が「やってみま笑(しょう)」っていう気持ちになって、みんなで半径3mを変えたら、それが波紋のように広がって、地球温暖化は止められるんです。 さあ、みんなで「やってみま笑(しょう)」!

▽世界が変わったステキなGOOD NEWS

 では具体的にどこから行動を起こしたらいいのでしょうのか?
 「半径3mを変えたら世界が変わったステキなGOOD NEWS」として紹介されている事例の中からいくつかを以下に転載しましょう。

*「このままでいいですか大作戦」成功!
 あるコンビニ店舗で、会計の際、店員がお客さんに「このままでよろしいですか?」と聞くことを徹底したところ、なんとレジ袋を30%削減することに成功した。日本全国でこの作戦を実行すれば、年間約50億枚削減できる計算だ。

*過疎の町が自然エネルギーで大成功!
 岩手県葛巻町は、地域の環境保全と地域資源を活かした町の魅力づくりを目的に、1999年から「エネルギー自給100%」に取り組んでいる。畜産ふん尿や間伐材を使ったバイオマス、風力発電など新エネルギーを導入した結果、現在なんとエネルギー自給率78%!(電力は185%!)
 かつての過疎の町は日本一の新エネルギー基地へと変貌し、今では観光客や視察団が多数訪れるようになった。

*割り箸やめて、洗い箸にしたら1400万膳も削減!
 林野庁によると、日本の割り箸の消費量は年間250億膳。一軒家を建てるための木材量に換算すると、なんと2万軒分。全国に店舗を展開している居酒屋チェーンのマルシェ株式会社が全国800店舗で割り箸を洗い箸に変えたところ、なんと1年間で1400万膳もの割り箸の削減に成功した。

*新聞配達のお兄さん、鳥が来る干潟を取り戻す
 千葉県習志野市の谷津干潟は不法投棄などで汚れ、臭いに苦情が殺到、一時は埋め立てることに。しかし1974年、市川市に住む新聞配達員森田三郎さん(当時29歳)がたった一人でごみを拾い始めたところ、その活動が子どもたちの課外授業や市民活動へと広がり、ついには84年、習志野市が埋め立て計画を撤回した。現在は渡り鳥が飛来する美しい干潟として市民に愛されている。

*アメリカで食べ物といえば、オーガニックは当たり前!
 環境をテーマにした雑誌「Ode」(米国で発行)の調査によると、米国のオーガニック(有機)食品市場規模は約1兆7000億円に達した。米国中にスーパーを展開するウオルマートでも普通の食品より少々高い価格でオーガニック食品を買えるとあって、もはやオーガニックは完全に市民権を得たようだ。ヨーロッパのイギリスなどでもオーガニック市場が年率30%の急成長だという。

▽最大の環境破壊は戦争&軍隊 ― 平和省をつくろう

 「平和省をつくろう」という呼びかけが始まっています。そのためには日本でいえば、現在の防衛省を解体しなければなりません。それはさておき、まずはこの『豪快な号外』のつぎの記事、「最大の環境破壊は戦争&軍隊。平和省をつくろう」に耳を傾けましょう。これは「世界を変える30の方法」の1つとして紹介してあります。

 私たちがどんなに省エネや環境に配慮したライフスタイルを心がけたとしても、ひとたび戦争が起こってしまえば、莫大なCO2(二酸化炭素)が出て、地球温暖化が進行します。また軍隊を持ち、日常的な訓練をするだけでも同様です。戦車の燃費は約0.25km/リットル(ホンダのフィット100台分)、戦闘機の燃費は最高速度時0.005km/リットル(ドラム缶1本で10km)。
 暴力に頼らず、軍隊と戦争をなくし、世界を平和にすれば、人の命もエネルギーもムダになりません。「何があっても戦争はしない、他国は攻めない」という、世界中がうらやましがる平和憲法9条を世界にひろげれば、戦争のない世界が実現します。そのための、平和省を創りましょう。

▽銀行を変えれば、戦争が終わる

 「世界を変える30の方法」の1つ、「銀行を変えれば、戦争が終わる」という記事もユニークです。その考え方はつぎのようです。

 銀行や郵貯に預けているお金が、戦争に使われているって知ってました? 金融機関は預かったお金で短期国債などを購入し、国債を発行する政府はアメリカ国債を買う→アメリカ政府は戦争のための費用に使ったりする。そんなのは嫌だという人は、口座を解約して、環境や社会問題に取り組むステキな会社の株を買って企業を応援したり、ろうきんや非営利バンク(NPOバンク)などのエコな金融機関を選びましょう。
 「NO WAR」と叫ぶよりも、銀行からお金を下ろすことが、戦争を止める方法になります。銀行員のみなさんは、自分の会社のお金の使い方をよく議論して下さい。銀行が変われば、世界も変わる。

〈安原のコメント〉消費税引き上げを阻止しよう!
 銀行から預金を引き出すのも一つの方法ではありますが、戦争を仕掛ける国家、つまり政府は戦費調達のために増税、例えば消費税引き上げを画策します。社会保障費の財源に回すなどと大衆が呑みやすい口実で言いくるめようとしますから、要注意です。
 消費税の引き上げを阻止することが当面の大仕事です。それに現在の年間防衛費約5兆円という無駄遣いに目を光らせ、それを大幅に減らすることも必要です。

▽一人ひとりの背中を押してくれる「金言」集

 「やってみま笑(しょう)」という気分になるように、一人ひとりの背中を押してくれそうな「金言」ともいえるステキな言葉をいくつか、この『豪快な号外』から拾ってみましょう。せっかくの金言も、何かひとつでもいいから実行しなければ、くだらない駄弁にすぎません。かっこ内は私(安原)の感想の一言。

*どんな人にでも未来をつくりだすちからがある。(そう信じることから新しい未来は始まります)
*この世に存在する一切のものには、すべて不要なものは一つもない。(すべてに「もったいない」、「お陰様で」と感謝しながら生きる以外にないのですから)
*力は知識を隠しておくことからではなく、分かち合うことから生まれる。(だからこそ弱肉強食は破綻し、共生・連帯が輝いてくるほかないのでしょう)

*自分自身が平和でいることで、あなたはすでに平和な世界の一部になっているのです。(自分自身がまず貪欲を捨てることができれば、たしかに平和への一歩ではあります)
*わたしたちのすることは大海のたった一滴の水にすぎないかもしれません。でもその一滴の水があつまって大海となるのです。(一人ひとりがこの現世の社会を担う一員、という自覚が必要です)
*一緒に種をまきましょう。(そうですね。参加者が一人でも多い方が成果は大きくなります)

*僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる。(大志を抱いて、さあ前人未踏の地へ! という心意気でしょうか)
*今日という日は残りの人生の第一日目である。(「なるほど」という想いです。一期一会の精神で生きるべし、という呼びかけにもなっています)
*明日とは、明るい日と書きます。(未来に生きることは、未来に希望をもつことです)

*君が行けば、世界も行く。正確に、君と歩調をそろえて。(大海の中の「たった一滴の水」にすぎなくても、それが大海をつくっているのです。演技はうまくなくても、一人ひとりが主役です)
*自分一人で石を持ち上げる気がなかったら、二人でも持ち上がらない。(この地球の生命共同体は、持ちつ持たれつの関係にある、といっても、他人依存症にかからないように気をつけましょう。お互いに自分の足腰を鍛えることです)


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防衛利権の構造的巨悪にメスを
軍需専門商社元専務らの逮捕で

安原和雄
 東京地検特捜部は07年11月8日、軍需専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者(69)=日本ミライズ前社長=らを業務上横領などの疑いで逮捕した。防衛利権をめぐる疑惑にどこまで捜査の手が及ぶかが注目されるが、防衛省と特定の軍事関連企業との疑惑に視野を限定すべきではないだろう。
 今こそその底に潜む「政軍産官複合体」という構造的巨悪の存在に「市民の視点」で目を光らせ、メスを入れるときである。日米安保=軍事同盟を支える政軍産官複合体を聖域視する時代は終わりつつある。(07年11月10日掲載、同日インターネット新聞「日刊ベリタ」に転載)

▽大手6紙の社説はどう論じたか

 大手6紙の社説(11月9日付)はどう論じたか。見出しと主張(要点)を紹介する。
*朝日新聞=元専務逮捕 防衛利権の疑惑に迫れ
 兵器や装備品の調達にからむ不正や疑惑は後を絶たない。金額がふくらむうえに、機密の壁に囲まれ、外部から見えにくいのも一因だろう。
 戦前では、軍艦などの輸入をめぐり、旧日本海軍の高官らがワイロを受け取ったシーメンス事件が有名だ。戦後も70年代にP3C哨戒機やE2C早期警戒機の売り込みで政府関係者へ金が渡った疑惑が浮かんだが、解明に至らなかった。
 国会は(中略)特捜部まかせにせず、防衛利権の疑惑に迫ってほしい。

*毎日新聞=元専務逮捕 防衛利権の闇に切り込め
 前次官は(証人)喚問で、元専務との宴席に防衛庁長官経験者ら複数の政治家が同席したことも証言した。山田洋行が政界とどのようなつながりがあり、もたれ合う関係がなかったのかどうかについても、捜査を尽くして解明してもらいたい。
 防衛装備品の調達総額は年間2兆円にも達する。その巨額の利権の背後でうごめいているとみられる政官財界の癒着の構図をこの際、徹底してあぶり出すことを、特捜部の捜査に望みたい。

*読売新聞=元山田洋行専務 事件は防衛省まで広がるのか
 守屋前次官は2003年、航空自衛隊の次期輸送機(CX)のエンジン選定で、当時の防衛庁の装備審査会議の議長として米ゼネラル・エレクトリック社(GE)製の採用にかかわった。GEは、山田洋行と販売代理店契約を結んでいた。
 年2兆円に上る防衛装備品の市場は、製品の特殊性などからメーカーが限られ、随意契約の比率が高い。防衛省側と業者の癒着を生みやすいとされる。
 守屋前次官の職務権限に絡む便宜供与はなかったのか。実態の徹底解明を望みたい。

*東京新聞=元専務逮捕 防衛利権の闇を突け
 ゴルフなどの過剰接待の背後に、誰もが利権の存在を疑った。防衛省首脳と親密だった防衛商社元専務が東京地検に逮捕された。“軍”と「業」との癒着の実態や、利権の闇の徹底解明が望まれる。
 「政」への疑惑もある。旧防衛庁長官だった額賀福志郎財務相側と久間章生元防衛相側に、山田洋行から「結婚式の車代」が払われたとされる。ほかの防衛族議員にも、山田洋行から政治資金パーティーに多額の献金がなされている。昨年度までの五年間だけでも同社は百七十四億円もの巨額契約を受注し、しかもその九割が随意契約だった。
 そこに政・官が絡んでいたとしたら、防衛利権をめぐる大事件である。「闇」が「薮(やぶ)」となってはならない。「闇」の深奥まで捜査は迫ってほしい。

*日経新聞=防衛利権めぐる疑惑の徹底糾明を
主張(要旨)は略
*産経新聞=元専務逮捕 守屋前次官との癒着暴け
同上

 今回の軍需専門商社「山田洋行」(東京都港区)の元専務逮捕事件は一軍事関連企業と防衛省との疑惑にすぎないとみるのか、それともそれは「氷山の一角」であり、その底に潜む構造的巨悪に視点を注ぐのか、そこが問題である。上記の社説の中では東京新聞が「軍・業・政の相互癒着」の闇の実態に迫れ、という趣旨の主張を展開している点を評価したい。

▽兵器生産と「軍産複合体」の成長を懸念する社説

 東京新聞社説が言及している「軍・業・政の相互癒着」こそが構造的巨悪というべき存在である。ここで今から20年以上も前のこと、軍拡路線を走りつつあった中曽根政権時代の一つの社説(要旨)を紹介しよう。「兵器生産が成長するとき」と題してつぎのように書いている。

 1982年度(昭和57年度)の防衛調達(契約)総額が、ついに一兆円の大台を突破した。一兆円の大台乗せはもちろん戦後初めてである。(中略)今後の年間防衛調達額は一兆円をはるかに超える規模にふくらんでいくことは避けられない。
 軍拡の危険性を繰り返し指摘してきたが、防衛費突出とともに兵器生産もひとり歩きを始めたのだろうか。防衛調達額一兆円突破の意味を考えないわけにはいかない。

 まず指摘したいことは、兵器生産の増加とともに防衛費そのものが自己肥大していく危険である。戦闘機や護衛艦など高価な兵器はほとんど後年度負担方式と呼ばれるツケ払い方式によって調達される。たとえば最新鋭戦闘機F15は1機115億円で、83年度(昭和58年度)予算では13機、総額約1500億円分を認めたが、実際に予算に計上したのは、そのうちのわずか0.2%分の3億円強にすぎない。残りは全額後年度負担として次年度以降のツケに持ち越された。83年度防衛予算の後年度負担額は全部で2兆円にものぼっている。
 このツケは次年度以降の予算に計上される。このツケの支払い分が年々ふえており、いまでは防衛予算のなかで30%近くにまで達している。
 財政赤字下で財政再建が叫ばれながら、その裏では、実はこのような防衛費突出を促す事態が進行しているのである。

 わが国の兵器生産は三菱重工、川崎重工、三菱電機、石川島播磨重工、東芝、日本電気など少数の巨大企業に集中している。半面、兵器のエレクトロニクス化に象徴されるように高度の技術集約化が進むにつれて、技術力の高い中堅企業の防衛分野への進出もみられ、軍事関連企業数は年々ふえている。こうして防衛産業のすそ野は着実に広がりつつある。
 このことは、とりわけ景気低迷期には産業界に軍需への期待を抱かせ、それがまた防衛費を突出させていくという、双方のもちつもたれつの関係が成熟する危険なコースへと踏み込んでいく。

 長期的視野に立ったとき、経済の軍事化が日本経済の将来にとってプラスでないことは明らかである。
 なによりも、かつてアイゼンハワー元米大統領が警告した「軍」と「産」との相互依存体である軍産複合体が根を張っていくことを恐れる。政治、経済の両面にわたって「軍」の顔が大きくなると、それを押し戻すことはなかなかむずかしいからである。

 以上は毎日新聞社説(1983年4月11日付)で、筆者は実は私(安原)である。ここで取り上げられている83年度防衛予算規模(次年度以降に持ち越される後年度負担分を除く実際の支出額)は約3兆円で、その後脹らんで現在の07年度防衛予算規模は約5兆円となっている。
後年度負担方式というカラクリと並んでもう一つ、注目すべきことは、当時すでに「軍産複合体」が肥大化していく懸念を指摘している点である。この「軍産複合体」は今日、どこまで肥大化し、どういう存在になっているのか。

▽守屋事件は氷山の一角! 軍産癒着の温床を解体しよう!

 「みどりのテーブル」(環境・脱成長・平和の政党をめざす組織で、去る7月末の参院選東京選挙区で川田龍平氏の当選に尽力した)の情報メール(11月6日付)で流された「日米安保戦略会議にNO!を」と題した記事(要旨)を以下に紹介する。
 発信元は 杉原浩司氏(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)で、「守屋事件は氷山の一角!軍産癒着の温床を解体しよう」という主張には同感である。ここに登場している「日米安保戦略会議」はすでに終わったが、昨今の軍産複合体がどういう動きをみせているのかを知る手がかりになる。記事は次のような見出しから始まっている。

戦争屋の談合=「日米安保戦略会議」をぶっ飛ばせ!

軍事利権に関与する国防族・官僚の「ドタキャン」続出!
守屋事件は氷山の一角!軍産癒着の温床を解体しよう!

 2007年11月7日から9日まで「第10回 日米安保戦略会議」が東京・港区のニューピアホールで開催される。主催は超党派(自公民)の新旧国防族議員で作る「安全保障議員協議会」とブッシュ政権に極めて近い米「ネオコン」系シンクタンクの「ヘリテージ財団」、さらに日米安保の“フィクサー”を自任する秋山直紀が仕切る外務省所管の社団法人「日米平和・文化交流協会」と「中央政策研究所」である。

 今年のメインテーマは「新しいアジアと日米同盟」。パネルディスカッションは「日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結後における日本の責務」「新ミサイル防衛構想」「ミサイル防衛と日米防衛技術交流」「米国におけるNBCテロ対策」「中国の拡大する軍事的脅威」「サイバーテロ対策」の各テーマで行われる。また、恒例となっている米巨大軍需産業による兵器プレゼンテーションや兵器見本市(防衛装備展)も開催される。
 
 今回の戦略会議は向かい風にさらされている。守屋前防衛事務次官による軍産癒着事件の発覚を受けて、その最中で開催されることに批判が高まっている。発売中の『週刊ポスト』(11月16日号)は「日米防衛族『4兆8000億円利権』人脈図」という特集を組んだ。その中で「11月7日から都内で開かれる『日米安全保障戦略会議』― つまりは『兵器見本市』に注目せよ」と見出しを打ち、戦略会議への厳しい批判を展開している。

 それによると、守屋事件発覚と同時に、“VIPゲスト”たちが雪崩を打って“ドタキャン”を始めたようである。久間章生(入院)、石破茂、長島昭久(民主党「次の内閣」元防衛庁長官)、麻生太郎らの政治家に加えて、防衛省幹部で“守屋派の2K”と呼ばれる金澤博範(防衛政策局長)、河村延樹(防衛政策課長)も欠席に。『ポスト』は「『政官業』の癒着の温床となる条件がこれほどそろった舞台はないからこそ、守屋疑惑のさなか、出席予定の政治家や官僚が二の足を踏んでいるのではないのか」と書いている。
 
 また、『週刊文春』(11月8日号)も「自民・民主『防衛族議員』10泊11日『秘』米国ツアーリスト」という記事で、「過去の戦略会議では、基調講演した西岡喬・三菱重工会長が、武器輸出三原則の緩和や、その前提となる日米間の軍事機密情報保護協定の締結を求めており、日米政府は今年五月、締結に合意した。三菱に代表される日本の軍需産業が代理店契約で得る利益はいうに及ばず、アメリカ製兵器のライセンス生産や米国艦船の国内での修理を請け負うなど、半永久的に莫大な利益を得ることができるようになる」とのジャーナリストのコメントを紹介している。
 
 “戦争の親玉”である日米「軍産学複合体」の増殖にストップをかけるまたとないチャンスである。

▽「ミサイル防衛」という名の構造的利権と「政軍産官複合体」

 朝日新聞(11月10日付)によると、船橋洋一・朝日新聞社主筆は9日、東京都内の米国大使公邸で来日中のロバート・ゲーツ米国防長官と会見した。その際、長官は、北朝鮮の核兵器の脅威に対抗する形で、米国が「核の傘」と呼ばれる拡大阻止を今後も日本に提供し続けていく方針を、前日の石破防衛相や高村外相との会談で表明したことを明らかにした。ミサイル防衛(MD)での日米協力はそのためにも有用だと強調。北朝鮮の非核化が実現してもMD網は維持する考えを示した。
 
 特に注目すべき点は、MDに関するつぎの問答である。
― 仮に北朝鮮が非核化したらミサイル防衛は無用にならないか。
長官「そうは思わない。世界は非常に不確定で、15年後は予想できない。重要なのは、先を見通した軍事情報力と同盟関係の維持だ」

つまり北朝鮮が非核化(=10月3日の日中米韓露と北朝鮮の6者協議で合意した核の無能力化)を実現しても、日米協力によるミサイル防衛(日本政府はミサイルの導入・配置を03年12月の閣議ですでに決定している)は必要だと米国防長官が明言していることである。このミサイル防衛構想は当初は北朝鮮の核の脅威への対抗策として浮上したが、今では「世界は非常に不確定」という正体不明の脅威を理由にあくまでもミサイル防衛プランを続行していく姿勢を明確にした。
 飛来するミサイルをミサイルで撃ち落とすというミサイル防衛は、技術的な有効性が疑問視されているだけではない。総額1兆円を超える巨額の兵器ビジネスでもあり、財政赤字が巨額になる中で巨額の血税の浪費が半ば合法的に続いていく仕掛けである。笑いが止まらないのは日米の「政軍産官複合体」という闇に潜む構造的巨悪であろう。

 防衛省と兵器メーカー上位10社との契約額(2006年度・億円)はつぎの通り。
①三菱重工業2776 ②川崎重工業1306 ③三菱電機1177 ④日本電気831⑤I.H.I.マリンユナイテッド(石川島播磨重工と住友重機械工業の共同出資会社)446 ⑥富士通441 ⑦東芝423 ⑧石川島播磨重工業365 ⑨小松製作所363 ⑩富士重工業199
 これらの企業は年間1000万円から3000万円程度の自民党への献金を行っており、しかも防衛官僚のこれら兵器企業への天下りは、多い企業では100名近くに上っている。こうして「構造的利権の中の政軍産官複合体」と呼ぶにふさわしく、日本の政軍産官を腐食させる構造的要因ともいえる。

 1961年アイゼンハワー米大統領がその任期を全うして、ホワイトハウスを去るにあたって全国向けテレビ放送を通じて、警告を発した米国の「軍産複合体」は、今日では古典的な呼称となっており、これではその実態を十分に捉えきれない。
 今日の日本版政軍産官複合体はアメリカほど巨大ではないが、その構成メンバーは、首相官邸、国防族議員、防衛省と自衛隊、外務省、エレクトロニクスを含む多様な兵器メーカー、保守的な科学者・研究者、メディア―などである。だからもっと範囲を広げて「政軍産官学情報複合体」と呼ぶのが正確かもしれない。

 一口にいえば、日米安保体制=軍事同盟推進派のグループである。しかも日米安保体制=軍事同盟を軸に日米の政軍産官複合体は連合体となっているところに特色がある。この政軍産官複合体は聖域視されてもいるだけにその構造にメスを加えるには地検特捜部の手に余るところがある。市民の批判の目が求められる。
 

なお「軍産複合体」については06年7月13日付でブログ「安原和雄の仏教経済塾」に掲載した「MDでほくそ笑む軍産複合体―北朝鮮ミサイル〈脅威〉の陰で」も参照して下さい。

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晩秋・足利知足塾からのお誘い
演奏会、みんなで作る収穫祭へ

安原和雄
 「足利知足塾」主宰の柿澤さな江さんから最新の《野の花通信》(同塾会報第20号)が届きました。「横笛と琴の演奏会」、「みんなで作る収穫祭」など紅葉の秋にふさわしい催し物へのお誘いが載っています。柿澤さんは自宅の山林脇で農園も経営しています。その自然に囲まれた自宅での催しです。晩秋の足利の自然を堪能してみてはいかがですか。
 以下に《野の花通信》の内容(要旨)を紹介します。(07年11月3日掲載)


《野の花通信》
2007年10月30日
足利知足塾会報第20号
足利市大岩町428 柿澤さな江
090-1610-2134


□横笛と琴の演奏会へのお誘い!― 紅葉と夕日の美しい秋!

11月17日(土)午後3時開演 
参加費=500円(抹茶と和菓子)
なお駐車上の関係がありますので、できるだけ相乗りでお願いいたします。

 あっという間に、寒くなってきましたね。そのせいか夕日が少しずついい色になってきています。犬といっしょに見ていますが、だんだんと色を増していくようです。赤く染まり始める時刻も、少しずつ早くなっていきます。真冬に比べると、濃さはいまひとつですが、美しさは言葉では言い表せないほどです。
今回はお茶を習っている知足塾会員の皆さんや演奏者の皆さんが、着物でもてなしてくださることになりました。着物姿を見せていただくのも楽しみの一つになりました。参加してくださる方も、せっかくの機会です。眠っている着物さんを起こして、袖を通されるのもよろしいのではないでしょうか?
皆様のお越しを楽しみにしています。


◇みんなで作る収穫祭

11月23日(祝)
午前9時半から準備開始
会費=1500円 飲み物は、ビール・酒・コーヒーほか飲み放題

 今年はいつもと趣を変えて行います。参加者の皆さんに、いっしょに準備から参加してもらいます。
1.手打ちそば と 天ぷら  
2.トン汁作り  
3.五平餅作り
4.燻製作り、とりをつぶして中に詰め物をする。などなど。

 燻製作りの達人さんがアドバイスをしてくださり、当日は鳥の詰め物の料理をするなべを貸してくださることになりました。そして作り方も指南していただきます。鶏は、家で愛情をかけて育てた鶏を使います。
 日ごろはお忙しい皆さんと、ゆっくりと飲み・語り合いたいと思います。
 参加を希望される方は、材料の準備がありますので、事前に申し込みいただきますようお願いいたします。


●そばは今年も残念

 せっかく種をまいたのに、今年は完全に成長不足でした。昨年と同じ時期に蒔いたのに、ちっとも大きくならず小さいままで花を付けました。10月になっても背は伸びずじまいでした。雑草をとってみても効果はなく、今年も残念ながらあきらめることにしました。 ですので、家の畑でとれたそばというわけには行かなくなりましたが、新そば粉を手に入れて、そば打ちを11月23日には行いたいと思います。


◎柿がとれました! 50個くらいです!!

 久しぶりに柿が実をつけました。剪定をしっかりやって2年目のことです。早速さらし柿を作りました。収穫時期が少し遅かったせいか、焼酎に漬けて2週間で半分くらいはやわらかくなってしまいました。
お店に来た新聞の集金のおじさんは、元柿栽培の専門家でした。2年もかかってやっとそのことがわかりました。
柿畑には、石灰をまくこと。肥料は骨粉や油粕をやること。柿の実1個に葉は25枚まで。虫退治の方法など。
今度は、実地に畑でいろいろアドバイスをしていただけることになりました。
うれし~い!!
来年はもっとたくさん実がつくような気がしてきました。


▽予告=来年新年会

 ちょっと早すぎますが、来年も新年会を開催します。2月中旬を予定しています。手作りのお弁当、お雑煮、おとそ、そして、語り合い。
 今回は、ゲストをお迎えします。
 山川町にある長林寺住職の矢島道彦さんです。ご専門は、インド哲学です。
 五木宏之さんが書いた「林住期」(古代のインド哲学にある考え方からタイトルがついています。)を取り上げます。人間の人生で言えば、50歳から75歳くらいまでの時期を「林住期」というそうです。この時期をどう生きていけばよいか、本の読後感想なども交えて交流していきたいと思います。
 11月24日には、打ち合わせに長林寺を訪問します。秋の紅葉が楽しめるかもしれません。

▽「柿の実ブログ」開設しました。
http://kakinomiblogzine.jp/blog/


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