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20日、シャンゼリゼ通りで犯人に打ち殺された警官、グザヴィエ・ジュジュレの追悼式典が25日に行われた。
オランド大統領の言葉の後「コンパニオンが追悼文」とニュースで聞いて、彼が、男性と暮らしていたとわかった。
同性の結婚を認める法案を通したのは、批判の多いオランド政策の中で評価される功績だ。

シャンゼリゼ通りで銃殺された警官を称える式典

シャンゼリゼ通りで銃殺された警官を称える式典

エチエンヌ・カルディルという伴侶が、何度も声を詰まらせながら読んだ追悼文には涙が出た。娘も「最後まで聞けなかった」
全文ではないけど:
「グザヴィエ、君はあの日、シャンゼリゼ通りの公衆の安全を守る任務を与えられた。102番地、トルコ文化会館の前。この種の任務が君は好きだった。シャンゼリゼはフランスのイメージ、あなた達警官は文化も護っているのだ。
その時、最悪のことが起こった。誰もが憂いているけど、絶対起こらないと思っている事態。君は銃撃に倒れた。・・・・・
その晩、私はひとりでうちに帰った。激しく深い苦痛とともに。これがいつか癒されるのかわからない。この痛みは、これまでになく君の同僚たちに近づけた。君と同じように黙って苦しんでいる同僚たちに。
私の苦痛に憎しみない。何か月か前に読み返したアントワーヌ・レリス(バタクランで妻を殺されたジャーナリスト)の言葉。僕を成長させ、そして今日は護ってくれる言葉:犯人を私は憎まない。
なぜなら憎しみは君に似合わない。君を任務へと駆り立てた情熱に似合わない・・・」

3日後、なかなか発言の機会がない父、ジャン=マリー・ルペン父が突然口を開いた。
アララ、首がなくなっちゃったじゃない・・・

ジャン=マリー・ルペン

「あれは殉職した警官へのオマージュじゃなくて、ホモセクシュアルへのオマージュかね?」
!!!!
「警官の彼氏の出席と、あの長々とした演説は、同性の結婚を制度化してしまうじゃないか」

娘マリーヌがせっせと脱悪役を図り、父を追い出し、自分は「国民戦線の立候補者ではない」とか言って、イメージアップしているとこへ・・・まるで、娘が壁を白く塗り替えたのに、ひびが入って地の色が見えちゃうみたいじゃない。結局マリーヌもジャン=マリーも地は一緒なんだ。
でも今度だけは父大歓迎。あと1週間、せいぜい暴言を吐いて、娘の脚を引っ張ってくれ!


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Photoshopし過ぎ VS 証明写真

決選投票まで後10日。マクロンとルペンが新しい選挙ポスターを公開。

エマニュエル・マクロンVSマリーヌ・ルペン

マクロン「共にフランス」、ルペン「フランスを選ぶ」
エマニュエルが(やっと)微笑んだ、マリーヌは座った、のはいいけど後者のポスターにツイートの嵐。
「笑っちゃうのはPhotoshopの使い過ぎと、イケアのショールームのような本棚」
「マライア・キャリーとPhotoshop競ってない?」
「顔をいじりすぎてボディと全然釣り合ってない」

「Photoshop前」

マリーヌ・ルペン

「これ、Photoshopの宣伝?」

マリーヌ・ルペン

と“修正しすぎ”に集中している。

マクロンの方は「証明写真みたい」
「マネしてない?」
1988年のジャック・シラクの選挙ポスター

1988-presidentielle-la-france-ensemble.jpg

さて、これは第一次投票で各市町村トップの立候補者。フランスの6角形が東(ルペン)と西(マクロン)に真っ二つ。パリは“ルペニスト”(ルペン支持者)に囲まれているんだわ・・・

仏大統領選一次投票結果、地域別


決選投票でマクロン圧勝みたいに言われているけど、この予想は危険だ:
〇5月7日に向けてすぐアグレッシヴな選挙運動を開始したのに、マクロンは悠々としていて出遅れた。
〇フィヨンと並んで19%を獲得したメランションは「マクロンに投票せよ」の支持を出さなかった。支持者の21%がルペンに入れるという予想。
〇ルペン牽制のためマクロンに投票すべき人たちが「私が入れなくても勝つ」と、棄権か白紙投票をする。

だから油断はできない。周囲に多いメランション支持者に「ルペンになったら日本に強制送還されるかも。政策に賛成できなくてもマクロンに入れて!」と叫んでいるワタシ。

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第一次投票開票の夜、エマニュエル・マクロンは支持者で沸き返るミーティング会場のステージに、妻ブリジットと現れた。
家庭も仕事も捨ててマクロンと一緒になった、24歳年上の彼の高校教師。

エマニュエル&ブリジット・マクロン

「彼女なしに今日の僕は考えられない」

エマニュエル&ブリジット・マクロン
photo:Closer

「まだ大統領になってないのに・・・」と思ったけど、果たしてこのシーンは、翌日色々言われることに。

これまで一次投票でトップになったからと、マダムと手に手を取って支持者たちの前に現れた候補者はいなかったそうだ。
「2007年、ニコラ・サルコジは一次投票も決選投票もひとりで現れた。セシリア(当時の妻)が出てきたのは、勝利の後、コンコルド広場でもお祝いの時」
でも当時、彼らは事実上別れていて、サルコジが拝み倒してセシリアに来てもらったんだから、ちょっと比較にならない。

さらに遡って2002年、ジャック・シラクもマダムが現れたのは当選後、大統領として初めての演説のときだ。
フランソワ・オランドの当時の彼女、ヴァレリー・トリエルヴェレールは決選投票の日、一日中一緒でバスティーユ広場での深夜のお祝い(私も行った!)も寄り添っていた。でもあくまで当選したときだ。

だからこのシーンは「かなりびっくり」とメディア評論家。「この段階で、カップルで現れるべきではない」

さらに、この後、側近たちとモンパルナスのレストランへ。警察に護衛されて夜のパリを走るマクロン夫妻の車をカメラが追っかける。これを見て、2012年、勝利の後、サルコジがシャンゼリゼのフーケツで開いた晩餐会を思い出した人は多い。富豪の大企業社長がずらり(長者番付から選んだ?)と招待された晩餐会は、サルコジの“お金持ち好き”を露わにして、延々と非難されることに。

だから、フーケツほど高級レストランじゃなくても、長者番付から招待していなくても、「レストランに繰り出すべきではなかった」とFrance Infoの政治評論家。

エマニュエル・マクロンが政治運動グループEn Marche !を立ち上げたのは僅か1年前。“政治経験のない若造”が大統領候補になり、決選投票に残るなんて、誰が予想しただろう?
国民の長年の不満と不安の表れとも言える。
23日夜の行動は、政治経験のなさか、あるいは因習にとらわれないのをアピールしているのかも。


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今夜は眠れそう

アンケート結果がどうであれ、予期せぬ出来事の多い今日このごろ。私は一日中ドキドキで何も手につかない。
ので、朝市で買ってきた野菜を切り、大鍋でラタトゥイユを作った(こんなに作って、誰が食べるの?)
日曜日は映画に行くのが習慣だけどその気にもなれない。

投票所のひとつ、ヴォージュ広場の小学校。右の門はヴィクトール・ユーゴー記念館

仏大統領選、一次投票

仏大統領選、一次投票

11人の立候補者全員の名前の紙が前もって郵送され、その中から一枚投票箱へ。間違えたら大変!
2枚入れたら無効になる。

仏大統領選、一次投票

夜7時、夫がベルギーのニュースを見て「マクロンがトップ!」
フランスのメディアは8時まで何も言ってはいけないので投票率を繰り返している:76.2%
「ベルギーのメディア、どうやって知ったの?」
「どっかの投票所の外で待ち構えてて、出てくる人に誰に入れたか聞いたんじゃない」
「それで比率を出したってこと?ムムム・・・」安心できない。

7時半頃から娘の友達が、2人、3人・・・ビールを持ってやってきて、うちは再びユースホステルに。
投票所は夜7時、大都市は8時に閉まり、閉まる15分前から開票を始め、1時間で終える。フランス人も急ごうと思えば急げるということ。
大晦日のようなカウントダウンの後、8時きっかりに算定数字が出た。
エマニュエル・マクロン 23.7%
マリーヌ・ルペン 21.7%
ジャン=リュック・メランションとフランソワ・フィヨン、ともに19.5%
ブノア・アモン 6.2%
と、アンケートにかなり近い数字で、私は深く安堵した。
11時半にはマクロン23.9%、フィヨンがメランションを抜いて20%。自称“清く正しい”、実は私腹を肥やしていたフィヨンがなぜここまで ?! という苛立ちは残るけど、2次投票で「自分の支持者はマクロンに入れるよう」呼びかけたので、ま、いいか。
惨敗のブノア・アモンもマクロン支持。
今夜は眠れそう・・・


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21日金曜日の午前零時から、すべての選挙運動、立候補者のメディア出演、アンケート調査が禁止になる。その後投票開始の23日(日)午前8時まで、嵐の前の静けさ。

禁止になる前、シャンゼリゼのテロ後に行われた最後のアンケート調査(2500人対象)では:
エマニュエル・マクロン 24.5%
マリーヌ・ルペン 23%
フランソワ・フィヨンとジャン=リュック・メランション 19%
ブノア・アモン 7.5%

仏大統領選 立候補者

焦点はEU離脱かEU団結か?そしてテロ・安全対策。
シャンゼリゼのテロが、マリーヌ・ルペンとフランソワ・フィヨンを有利にするだろうか?
その前に未然に防げたテロ計画(容疑者はマルセイユで逮捕)は、フィヨン、ルペン、マクロンを狙っていた疑い。特にフィヨンの日程を詳しく調べていたのが家宅捜査でわかった。これを聞いたメランションとアモン支持者は「(未遂に終わって)惜しかった!」
私に選挙権があれば・・・マクロンですね。だってどう考えても、アメリカや中国を相手に、ヨーロッパの国がバラバラになって太刀打ちできるわけがない。自国閉鎖志向は自殺行為と思うからだ。

さぁどう出るか?アンケートが当たってほしい。
「早く明日の夜になってほしい」と夫はさっさと寝てしまった。


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「フランスで極右が政権を握ることはありえない」「二次投票でルペンは勝てない」という予想。一方、ブレキシットもトランプも予想が外れ「まさか」の結果になった。
「ルペンは勝てない」に「選挙までこれ以上テロがなければ」という条件をつける意見もある。確かに言えている。

そこへ20日夜、シャンゼリゼ通り102番地当たりに車で乗り付けた犯人が、警察のミニバスに向けて発砲。警官ひとりを殺し、走りながら他の警官に発砲しようとしたところ銃殺された。警官2人が負傷、うちひとりは重症。旅行者(女性)が軽傷。
「警察官を狙ったテロ行為」と発表があり、間もなくISの犯行声明があった。

パリ、シャンゼリゼのテロ

ようやく旅行者が戻ってきて、このまま何もなければいいと思っていたところへ、日夜警戒に当たっている警察官が狙われるとは・・・

さてマリーヌ・ルペンが掲げるテロ対策は:

マリーヌ・ルペン

〇イスラム原理主義と関係のあるすべての外国人を追放。
〇内務相が目を付けた過激派モスケを閉鎖。過激派の集会場所、人物への外国融資を禁止する。
〇イスラム原理主義と関係のある組織を解散、禁止。

・・・と、なるほど適切な対策に聞こえるけど、懸念されるのは「滞在許可証、ヴィザが取りにくくなる」「フランス国籍が取得できない」と、その対象と範囲がだんだん拡大してくことだ(ぜったい拡大する・・・)

もう一人、フランソワ・フィヨン。

フランソワ・フィヨン

〇テロ組織に近い外国人の入国、滞在禁止。
〇シリア、イラクに行ったフランス人から国籍はく奪。
〇宗教的集会所の閉鎖に関し、知事の権限を広げる。
と、けっこうルペンに近い。

支持率(投票意思)でトップに並ぶのがマリーヌ・ルペンとエマニュエル・マクロン。
心配は、ルペンに投票するという人は「彼女の人物・政策に共鳴」が60%を超えるのに対し、マクロンは「人物・政策より、ルペンを押さえられるのは彼だけ」という理由で投票する人が半数近い。つまり浮動票。
もし万が一、二次投票にルペンとフィヨンが残ったら「白紙投票」「棄権する」人が増え、その場合“極”のつく党派が強いことになっている。ますますヤバい。

シャンゼリゼのテロ犯人はフランス人39歳。警察官殺害を企てている疑いで2月に逮捕され、証拠不十分で釈放されている。

翌日の今日、偶然のようにこの2人が現政府バッシング。マリーヌ・ルペンは「司法当局の無能さ」を訴え、すぐに国境を封鎖し(!)fiche S(捜査対象者のリスト)の人物をすぐに国外追放すべき、と叫んだ。
すかさずベルナール・カズヌーヴ総理は、「惨事がある度にそれを利用して、国民を操り、分割しようとする」と、名指しでルペンを批判。よく言った!


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80歳、まだ現役!

ピエールは、2年前に妻に先立たれてから引きこもりがち。ゴタゴタと散らかったアパルトマンで、いつも同じセーターを着て、在りし日の妻のヴィデオを観て過ごしている。
心配した娘シルヴィは、「これで少し外と繋がってよ」とパソコンを与え、若いアレックスを“教師”として送り込む。このアレックス、実はシルヴィの娘(つまりピエールの孫娘)の彼なのだ。

1 profil pour2

アレックスはピエールに、ネットのナビゲーションを教え、スカイプで家族と話ができるようにする。
はたしてピエールがハマったのは出会いサイト。若い女の写真を次々に見て、フローラという女性が特に気に入って、メールのやりとりが始まる。久々の胸騒ぎ。忘れていた感情を思い出すピエール。顔は輝き、セーターも着替える。

1profil pour 2_3

一方フローラも、同世代の男は書かない文学的でロマンチックなメールに魅了され、会おうと提案してくる。
ピエール窮地!なぜなら彼は「プロフィル」の年齢を大幅にサバ読み、アレックスの写真を貼っていたのだ・・・

Un profil pour deux/二人でひとつのプロフィル

映画 『un profil pour deux』

軽いコメディ、ではあるけど、死ぬまで男(女も!)のフランス人の実態が窺え、何より82歳になるピエール・リシャールの圧倒的存在感。顔は年齢相応にシワシワでも、声や歩き方、いたずらっぽい青い眼は前と変わらず、ユーモラスでわがままで魅力的。十分“もう一花咲かせそう”だ。

そういえば義父も80歳近くで義母が亡くなったあと、しばらく落ち込んでいたけど、初恋の女性と再会して元気になった。それを見て息子たち(夫と義弟)は「おお、老後に希望の光!」と喜んだ(どういうこと?)その女性は既に未亡人で、義父がひとりになったのを知って彼女から連絡してきたというから、私も「おお、見習わなくちゃ」と思うべきか。

さてピエール・リシャール。日本では『みんなで一緒に暮らしたら』(2011)『幸せはシャンソニエ劇場から』(2008)などが最近の出演作だけど、フランスでは70年代に3枚目俳優として大人気だった。そして今は魅力的なオジイサン・・・

Un profil pour deux
ステファン・ロブラン監督作品
出演:ピエール・リシャール、ヤニス・レスペール、ファニー・ヴァレット
1時間40分
フランスで上映中


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世の中、復活祭で街中にチョコレートが溢れている。カトリック信者にとってはクリスマスより大切なお祝い(誕生より復活のほうが大事、というのは理解できる)、3連休に実家に帰る人、田舎に行く人で、土曜日は渋滞がひどかった。

私も1日だけ田舎に行く。従弟のジャン=ピエールが急に亡くなって、一人残されたマリー・フランスに会うためだ。看病疲れと哀しさでぶっ倒れているかと思いきや、意外と元気。というのも、ひとりになった彼女を心配して、毎日のように友達や近所の人が夕食に呼んでくれて、まだ別れを実感する暇がないらしい。田舎の人間関係は都会と違う。
私が着いた日はブドウ畑の手伝いをしていた。手伝いを頼む、というのも心遣いだと思った。
だって「何かしていないといられないの。うちの中を片づけ始めた」とマリー・フランス。

大きな家は、寝室が2階なので、ジャン=ピエールが階段を上らなくても済むように、階下に寝室を移し、医療ベッドも入れた。でも彼がその部屋を見ることはなかった。
去年からジャン=ピエールは入退院を繰り返していたので、
「考えてみたら、ひとりで暮らすのに慣れていたわ」
「お葬式の後、庭にみんな来てシャンパン飲んだでしょ。あの時、『ここシャンパン足りないぞ!』ってジャン=ピエールの声が聞こえそうだった」というと、マリー・フランスは真面目な顔になり、「あの時、彼は一緒にいたわよ。ずっと感じてた」

うちの庭には2月に枝を切ったリンゴの木が花をつけていた。
リンゴの花ってこんなに可憐だったの!?

リンゴの花

リンゴの花

こちらは2月の図。

リンゴの木

夫が植えたチューリップも開いた。

tulips.jpg

「親父が庭仕事をしていた頃は手伝うのもイヤだったのに、おかしなモンだ」
子供はいくつになっても反抗期?


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エミリーは有能な人事課長。“殺し屋”と呼ばれるほど、感情を挟まない人事は上司から評価され、彼女も自分の能力に自信を持っていた。だから、部署を変えてほしいとつきまとう中年社員も、彼女は取り合わず一日伸ばしにしていた。

その社員が会社の窓から飛び降り自殺してしまう。社員は大きなショックを受け、労働監察局が事情聴取に来る。
「奥さんと別れ、鬱状態だった」会社は責任を回避したいが、
「職場で自殺している。メッセージは明らかです」と監察局。

社長(ランベール・ウィルソン)がエミリー(セリーヌ・サレット)を採用したのは、あまり有能でない中年過ぎの管理職の一部を“排除する”ためだ:解雇すれば会社にお金がかかるので、自ら辞めるように追いつめる。

映画『Corporate/コーポレート』

能力、採算性だけが問われる非人間的な世界で、その“掟”に従っていたエミリー。
いつも真っ白なシャツ-車の中でシャツを着替え、デオドラントをつける-男社会の中で完璧であろうとしたエミリー。

監察局の追及の矢面に立たされ、社内では孤立し、自分が追いつめられる番。会社を救うか、自分を救うか・・・
ニコラ・シロル監督の『Corporate/コーポレート』

映画『Corporate/コーポレート』
photos:allociné

セリーヌ・サレットがすごく上手い。この女優さん、若いころのシモーニュ・シニョレに似ている・・・と思ったのは私だけではなく、すでにELLEが比べていた。

Celine-Sallette-sera-Simone-Signoret-au-cinema.jpg

フランスでも(フランスでさえ)職場のストレスやバーンアウトが問題になり、大統領選立候補者たちが労働時間や環境の改善を公約に掲げている。でも日本の残業時間とは程遠い。
第一、残業上限100時間という線引きは「過労死ライン」から来ているから、裏返せば「死ぬまで働け」に等しい。

フランスの勤務時間は週44~48時間、つまり残業週9~13時間まで認められていた。
不況の折、今年1月から「例外的な状況のみ」週60時間が認められることに。でもDIECCTEと呼ばれる地域企業・消費・労働・雇用局と労働監査局が、本当に“例外的状況”かを審査して、許可を出した場合のみ。
フランスのことだから、許可が出るころには例外的状況が終わってそうだ・・・

Corporate
ニコラ・シロル/Nicolas Silhol監督作品
主演:セリーヌ・サレット、ランベール・ウィルソン
1時間35分
フランスで上映中

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一年に一度、JALでパリに来る友人が「マイレージ使ってビジネスで来れちゃった」というのを聞くと、エールフランスのマイレージに原因があるのでは? と思えてくる。
パリ-東京を比べると、JALやANAより高い。組合が強くてしょっちゅうストをやっているし、料金だけじゃなくて、なんか“お高い”。

何年か前、娘と2人、夜11時の便で発つとき、早めに空港に行って夫と息子とみんなでご飯を食べようということになった。8時すぎに着いたら、チェックインカウンターがまだ開いていなくて、レストランに直行。ワインとってゆっくりご飯を食べて、ハタと気が付いたら10時すぎ。カウンターに駆けつけたら、エコノミーのチェックインは終わっていた。ビジネスとファーストクラスのまだ開けているので「そこからチェックインできませんか」と聞いたら「ノン」
「入り口が違うだけで同じ場所に保管されるんだから」と夫も言ってみたけど頑なにノンだった。荷物もファーストとビジネスは扱いが違うっていうの ?!

結局その便には乗れず、ひとり100ユーロ払って翌朝8時の便に乗ることに。
悠々とご飯を食べていた自分たちを恨み、エールフランスの“階級主義”を恨み、翌朝の5時起きを恨み・・・
翌朝、飛行機に乗って、ファーストクラスとビジネスクラスを横目で見ながら、自分たちの席に向かうとき、
「いつこっちに乗れるの?」と娘。
さぁいつでしょうねぇ・・・


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腹の立つマイレージ

「サンクトペテルブルクに行きたい」と前から夫がうわごとのように言っていて、ようやく実行に移すことに。
私は高校生の頃、家族と行ったことがある。ロシアが共産国でレニングラードと呼ばれていた時代。2月だったのでやたら寒かった。震えながらアイスクリームの屋台の前に行列している人たち、商品が圧倒的に少ないーコートなら1種類だけ-デパート。そしてホテル!各階にコンシェルジュのオジサンが座っていて、部屋にいると時々電話がかかってきて取ると切れる。
「おとなしく部屋にいるかどうか確かめるため。コンシェルジュはスパイが多い」と通訳の人に聞いた。後から通訳・ガイドも大部分スパイと聞いた。寒い国のスパイたち・・・

だからあんまりいい印象は残っていないけど、私が選ぶと南の国ばかりになるので、たまには北もいいか。ロシア通の友人に「ヘルシンキまで飛んでそこから鉄道でサンクトペテルブルクに行くといい」と言われ、7月は混みだすので6月に休みを取ろうかと、飛行機を調べる。
パリ→ヘルシンキ、帰りはサンクトペテルブルク→パリをGo Voyageという価格比較サイトで見たらひとり往復591ユーロ。エールフランスのサイトで見るとほぼ同じ料金。じゃマイレージ持ってるから(2万1480マイル)エールフランスにしよう。

ところがメニューにSaint Pétersbourg がどうしても出てこない。電話するとわりとすぐに生身の人間が現れて「LEDと打てば出ます」
そんな業界略語、知ってるわけないじゃない。
ついでに日程を言って一緒にやってもらったら、
「往復2名、837ユーロです」
「 !!私の画面では1293ユーロと出ているのになぜ?」
「私の画面では837ユーロです・・・アララすみません、1か月間違えていました」
「・・・・」
つまり7月のほうが安いってこと。バカンスに入って料金が上がると思ったら、エライ間違い。第一1293ユーロなら東京往復できる。
電話を切って日程をずらしたら、希望の日取りで往復2人877ユーロがあった。今度はFlying Bleu(マイレージカード)に電話したら、延々と音楽を聞かされ誰も出てこない。受話器を置いて他のことしなかったら、とっくに切っていた。15分は待ってようやく出てきた男性に、
「877ユーロの一部をマイレージでカバーできます?」
「少々お待ちを・・・できません」
「!?」
「パリ→ヘルシンキ1人分ならカバーできますが、そうすると帰りが高くなって合計同じくらいになります」
全然わからん理屈。でも訳を聞くのも疲れた。前にパリ⇔ニースをマイレージで買おうとしたら、空港税は別、チェックインのバゲージもカバーできない、と結局同じくらいの料金になってキレたことがあったし。
「マイルを溜めることに何の意味があるんでしょう?」とワタシ。
「もっと近い、ヨーロッパの国に行くとか」
「ヘルシンキはヨーロッパですけど」
今度は向こうが黙る番だった。


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同じ建物に住んでいる男の子、「動物愛護協会に送るから寄付して」と見え透いたウソでお金をせびりに来たロベールがベルを鳴らす。
「あのね、お母さんが買い物に行ってるんだけど」
「?」
「2ユーロくれないかって」
「お母さんが私に2ユーロ借りてきてって頼んだの!?」
彼のお母さんは、私がボンジュールと言っても返事をしない。だから「もうちょっとマシなウソつけないの?」と言いそうになって、そのセリフはまずい、と引っ込め、
「そんなの私が信じると思う?お母さんが聞いたら怒り狂うわよ」
ロベールは一瞬考える顔をしてから脱兎のように走り去った。
ちょっとまだ話は終わってないのに・・・

その後、ロベールの姿を探したけど、会いたくないときはしょっちゅう会うくせに、会いたいときに限ってすれ違わない。やっと捕まえたのは10日も後。見え透いたウソも忘れているかも。
「この前、2ユーロ貸してって来たでしょ」
と切り出しただけで「さよなら」と行きかけるロベールを、まぁ待て、と押しとどめ、
「もし君が単純に2ユーロちょうだいって言ったなら、私あげたわよ」
「?」
「だってお母さんに頼みたくないときだってあるでしょ。それからもうひとつ:お母さんにはぜったい何も言わないから」
ロベールは初めて私の顔を見て、OKと駆け出していった。毎日、2ユーロと言い出したら困るけど。

ロベールは養子で、たしかに難しい子供だけど、母親が半端ではないヒステリー。自分のうちで水漏れしていると言って、ネグリジェでうちに怒鳴り込んできたり(うちの水道管、ぜんぜん関係ないんだけど)。連日、ロベールを怒鳴る声がすごくて建物全体に鳴り響く。
例えば、夕方中庭で遊んでいるロベールを、
「もう帰ってきなさい!」と母親が窓から叫ぶ。ロベールは完全無視。
3分後。「ロベール !! 帰りなさい!」やっぱり無視。
「帰らないと・・・警察呼ぶわよ!」
このセリフに住人全員が唖然とした。
「ほんとに警察呼ぶわよ、ほら、電話かけるから」
見えるとこで遊んでいる11歳の息子が帰らないから警察を呼ぶ親がどこにいる?
自分の無力を認めているということで、息子さえその脅しに乗らない。

「養子をとるには色々な審査があるのに、あの性格でよく許可されたもんだ」と夫。
他の親にもらわれていたら、ロベールの人生、違っていたかも。


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「ひとりで親父を探しに行くなんて無茶だよ!ほっとけよ!」
という息子の反対にもレキアの決心は揺るがない。
48年来パリの工事現場で働いている夫が、最後にアルジェリアの故郷に帰ってきたのは4年前。毎月送られていたお金も数カ月前から途絶えている。
自分の町カビールから一歩も出たことがなかった70歳のレキアは夫を探しに行こうと決心する。見つけ出して故郷の町に連れ帰ろう、子供の成長も見なかった夫とやっと一緒に暮らすのだ。

カビールからバスでアルジェ、アルジェから船でマルセイユ、TGVでパリにたどり着く。

映画『Paris la blanche』

でも長年住んでいたアパルトマンに夫はいなかった。
小さいスーツケースを下げ、ピガールで途方に暮れるレキアを、カフェで働くタラは放っておけなかった。
「あなたの旦那さんは定年退職してるのね?心配しないで、年金生活者はみんな登録されているから絶対見つかるわ」
果たして翌日、一緒に訪れた社会福祉課で夫の居所がわかる:移民労働者専用の老人ホーム。
そこでレキアは夫ヌールと再会する。そして一緒に帰ろう、と説得する。

・・・というシンプルで地味なストーリーだけど、その行間には、貧しくてフランスに出稼ぎに来なければ家族を養えなかった背景、48年という驚くべき歳月、行ったことのない大都会にひとりで乗り込んでくると決意の重み・・・が垣間見える。そして作品全体を包む、この夫婦の抱擁のような穏やかさ。

Paris la blanche/パリ、白い街。

映画『Paris la blanche』

アルジェがville blanche/白い街と呼ばれることから、パリのアルジェ、のようなニュアンス。

カメラは始終レキアの表情を追う。優しい顔立ちに見える決意、夫への懐かしさ、愛情、そして諦め・・・
再会の日、夫行きつけのレストランで食事をし、肩を並べてパリを歩き、エッフェル塔に感激する。「生涯で最高の日だったわ」とレキア。「結婚した日の次にね」と付け加える。

「この孫、あなたは会ってないでしょ?」

映画『Paris la blanche』

レキアが再会したのは、知っているようで実はよく知らなかった男、48年の歳月が隔てた夫だった。

この作品、小津安二郎の作品と比較している批評家もいた:小津のテーマではないけど小津の世界。
レキア役は『アスファルト』で、テラスに不時着した宇宙飛行士を泊め、言葉は通じないのに意気投合するあのおばあちゃん!後をひく作品。お奨めです。

Paris la blanche
リディア・テルキ監督作品
主演:Tassadit Mandi/タッサディ・モンディ、Zahir Bouzerar/ザヒール・ブズラール
1時間26分
フランスで上映中

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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