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同じ建物に住んでいる男の子、「動物愛護協会に送るから寄付して」と見え透いたウソでお金をせびりに来たロベールがベルを鳴らす。
「あのね、お母さんが買い物に行ってるんだけど」
「?」
「2ユーロくれないかって」
「お母さんが私に2ユーロ借りてきてって頼んだの!?」
彼のお母さんは、私がボンジュールと言っても返事をしない。だから「もうちょっとマシなウソつけないの?」と言いそうになって、そのセリフはまずい、と引っ込め、
「そんなの私が信じると思う?お母さんが聞いたら怒り狂うわよ」
ロベールは一瞬考える顔をしてから脱兎のように走り去った。
ちょっとまだ話は終わってないのに・・・

その後、ロベールの姿を探したけど、会いたくないときはしょっちゅう会うくせに、会いたいときに限ってすれ違わない。やっと捕まえたのは10日も後。見え透いたウソも忘れているかも。
「この前、2ユーロ貸してって来たでしょ」
と切り出しただけで「さよなら」と行きかけるロベールを、まぁ待て、と押しとどめ、
「もし君が単純に2ユーロちょうだいって言ったなら、私あげたわよ」
「?」
「だってお母さんに頼みたくないときだってあるでしょ。それからもうひとつ:お母さんにはぜったい何も言わないから」
ロベールは初めて私の顔を見て、OKと駆け出していった。毎日、2ユーロと言い出したら困るけど。

ロベールは養子で、たしかに難しい子供だけど、母親が半端ではないヒステリー。自分のうちで水漏れしていると言って、ネグリジェでうちに怒鳴り込んできたり(うちの水道管、ぜんぜん関係ないんだけど)。連日、ロベールを怒鳴る声がすごくて建物全体に鳴り響く。
例えば、夕方中庭で遊んでいるロベールを、
「もう帰ってきなさい!」と母親が窓から叫ぶ。ロベールは完全無視。
3分後。「ロベール !! 帰りなさい!」やっぱり無視。
「帰らないと・・・警察呼ぶわよ!」
このセリフに住人全員が唖然とした。
「ほんとに警察呼ぶわよ、ほら、電話かけるから」
見えるとこで遊んでいる11歳の息子が帰らないから警察を呼ぶ親がどこにいる?
自分の無力を認めているということで、息子さえその脅しに乗らない。

「養子をとるには色々な審査があるのに、あの性格でよく許可されたもんだ」と夫。
他の親にもらわれていたら、ロベールの人生、違っていたかも。


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コメント
専門家の介入が必要では?
長谷川さん、はじめまして。
長谷川さんが取り上げられるテーマ(自身のそばにあるお話、映画、政治、料理、、、)が興味深いこと、長谷川さんの視点、感じ方、文章が好きで、いつも楽しく読んでいます。
今回の記事、それからリンクを貼られている「動物愛護協会に送るから寄付して」、両方を読みました。
やっぱり長谷川さんの素敵な文章で、「読ませてもらえる」のだけれど、現在起こっている「現実」として、ロベールくんの近くに暮らす大人に出来ること、するべきことがあるように感じました。

匿名でかまいません、相談所に連絡を入れられては?
(わたしはフランス在住ではありませんが、ヨーロッパの某都市に暮らしています。戦争を経験した子どもたちのケアにあたっていた時期があり、児童心理は少し学びました、現在も継続し学んでいます。フランスの情報、それから、養子の問題に対する専門知識は持っていませんが、、、それでも)
専門家から大きな介入はなくとも、パリのような大都市かつ養子が多くいる土地であれば、養子の子たちが時間を共にし、経験を共有するなど、前向きで開かれた場所が必ずあります。
親御さんが養子との良好な関係を築くための学びの場もあるはずです。

気になったので、メッセージを送ります。





Re: 専門家の介入が必要では?
花さま、ご意見ありがとうございます。全く同感です。
母親と珍しく話をしたとき、ロベールがカウンセリングの先生に通っていると言っていました。でもロベールの批難ばかりで、彼女が「自分の対応は100%正しい」と信じているのが問題と感じます。いくらロベールがカウンセリングを受けても、親も否を認めないと変わらないのでは。この母親、人の意見を全く聞かず「親と養子との良好な関係を築くための学びの場」があっても絶対赴かないタイプです。
少し補足します。

わたしの書いた「近くの大人」は、ロベールくんと彼の母親の状況を少しでも直接見聞きしている人たちのことです。彼らの友人知人、近所の方たちのことです。

「相談所への連絡」は、ロベールくんのことだけではなく母親がどのような行動をとっているのか。(相談所は「問題のある誰か」の情報が入った時、親、兄弟、親族、先生、友人など、「問題のある誰か」と接点がある方たちすべてを把握します。)

先に書きました、「前向きで開かれた環境」、このような場所にいらっしゃる責任者、スタッフは、ロベールくんや彼の母親のような例を確実に経験しています。彼の母親のような人が学びの場に赴かないだろうこともたやすく想像します。そのような方に上手に参加してもらえるよう伝えられる方たちがいらっしゃいますし、楽しみながら問題を改善していける環境がある、とお伝えしたかったのです。

適切なサポートを行える専門家は確実にいます。
母親にも現在問題点があるのであれば、適切なサポートへ彼らをつなげることができるのは、彼らの今を見聞きしている、彼らの周りの大人になります。

なんとなくテレビを観てしまっている時間、なんとなく美容のこと、なんとなく、、、こういう時間多くの方にあると思います。
こういうことをしようとしていた時間のうちわずかでもよいので、信頼の出来そうな相談所探しに使い、匿名で、現在の彼らの状況を伝える、すぐに大きな介入ではなく、母親のヒステリックな行動に対し何かしら専門的なアプローチをしてみて欲しい等、、、。
そばにいらっしゃる健全、健康な方たち、良識を考えられる人たちのアクションが求められているのでは。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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