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ブルターニュの島へ

belleile

ブルターニュの海に浮かぶベル・イル(Belle Ile=美しい島) という島。キブロンから一日何便も船が出ている。船に乗ったときは靄の中にぼんやりと輪郭が見える島が、30分もするとはっきり見えてくる。赤と緑の灯台に囲まれた湾(写真)に船が入ると、近所の子供たちや迎えにきた人が手を振る。
14km、45分の行程なのに、長い船旅で目的地に着いたような情緒がある。

しかし実際、長い旅ではあった。電車に乗り遅れる!とタクシーを飛ばし、プラットフォームを走って、息を切らして乗ったTGVが、予定通りの正午に出発しない。15分経ち、30分が経ち、車内がざわざわしてきたところでやっと「午前中事故があったため、私たちの運転手がまだ到着していません・・・」というアナウンス。事故と運転手の遅刻に何の関係があるのだろう?いっそのこと降りて出直そうかと思ったが、せっかくサンドイッチのおべんとうも持ってきたので、待つことにする。

結局1時間遅れで出発。この遅れのおかげで、綿密に組み合わされた電車や船への乗り継ぎがおじゃんになり、Nante(ナント)で1時間待つ。のどかな田園風景のローカル線に乗ってAurayへ。Auray(オーレ)から定期バスに乗って船の発着するQuiberon(キブロン)まで。
定期バスは地元の大学生や老夫婦を乗せたり降ろしたりしながらノンビリと進むので、20時10分の船に乗れるかハラハラしたが、5分前に港に到着。年に数回この船に乗るというムッシューが「私についてきなさい」と一緒に走ってくれて切符を買い、危機一髪で乗れたのである。ほっ。
ベル・イルの港に迎えにきてくれる友達夫婦に「乗った!」とSMSを送ると「正しい船に乗ったのか?」という返事。私の方向音痴は有名らしい。

ちゃんと探せばAurayまで直行の電車があるし、7月8月はキブロンまでも電車があるので、ずっと簡単に行ける。と言ってもパリから6時間。しかしその甲斐がある絵のように美しい島だ。
完全に修復された要塞が港の上に聳え、立ち並ぶ家は可愛く、壁、扉や窓枠がピンクやブルーのペンキで塗られている。なんでも家の高さ、横幅が厳しい規制で決められているそう。きれいな色は船の船体を塗った残りのペンキを使うから。
sauzon

私たちはこの島で2日間過ごした。
ベル・イルにほれ込んだ有名人はサラ・ベルナール。周りに何もない断崖の上に大きな家を建て、船で乗り付けていたという。『天上桟敷の人々』『北ホテル』の主演女優アルレッティも晩年をこの島で過ごした。
島の人口は4800人、夏にはその10倍になるが、コルシカのようにスノッブ化していないところがいい。

ここにセカンドハウスを持ち始めたのは教職関係(最も休暇が多い人種。20年前は島の地価が安かった)。つぎに精神分析家がやってきて地価を上げたのが1990年代。最近、広告・マーケティング業界の人たちがやってきて、地価をまた上げた。しかし彼等にとって島は派手さに欠けていた。「人に見られる場所がない」といって2~3年で売り払ってしまうそうだ。友達夫婦は20年前に、ゴミ捨て場所だった広大な土地を買って素敵な家を建て、休暇の度に来ている。

花を買う

daisys

春になると(そう、フランスはやっと春!)必ず一度は買ってしまうのが雛菊。丸く小さい花が、丸く小さいブーケになって、短い間花屋さんの店先に登場する。衣食住が優先して、滅多に花を買わないけど、買ったときは「花のある生活は素敵!」と喜ぶ。

雛菊のブーケを買った夜、ゴミを捨てに行ったら、赤い薔薇の花束が捨ててあった。ちょっと元気がないけど、まだまだきれい。なぜ捨てたんだろう?・・・と花束を持って家に入ると「わー誰にもらったの?」と娘。
そんなんじゃないって、と水切りをして薔薇を花瓶にさした。深紅で美しい。

roses

「好きでもない男性から贈られたので捨てたのかな」と私。
「好きな人からもらったけど、その後喧嘩別れになって、悔しくて捨てたんだ」と娘。
2人で薔薇をめぐる物語を作る。

素敵なシーンに出くわしたことがあった。花屋の前で近所の知人にばったり会い、立ち話をしていたら彼の奥さんが通りかかった。「何をしているの?」と奥さんが尋ねると「君に薔薇を贈ろうかと思って・・・」

翌朝、水を吸った薔薇はピンと元気を取り戻していた。突然、ブーケが2つも。花があると文字通り、生活に彩が加わる。豊かな気分。
それだけに、日本で起こっているチューリップ荒らしはショックだ。

異端なYAKUZA

yakuza

「通訳をやっている友人が、私に会いたいといっている日本人がいる、というので承諾した。その男をひと目見たとき、私は彼が何者なのかわかった。彼も、私がわかったのがわかった。彼は率直に自分の正体(ヤクザの組長)を明らかにした。彼は滞在の最後の日に、組の内部を映画に撮らないか、と提案してきた」
ジャン・ピエール・リムーザンのドキュメンタリー映画『Young Yokuza』がARTEで放映され、映画館でも封切りになった。「よく撮らせた」「ヤラセじゃないのか?」というのが日本人の率直な感想だけど、きっかけは上の通り。

組長の提案に、リムーザンは、ヤクザを撮ろうとしたドキュメンタリー作家2人の1人は殺され、もう1人は斬りつけられたことを思い出し、背筋が寒くなった。
結局、非合法なことをしている場面は一切撮らない、その代わり、リムーザンの撮ったものを検閲しない、という了解で撮影は開始された。

yakuza3


“仕事にもつかずブラブラしていて悪いことしかしない”息子を持て余した母親が、熊谷組に息子・ナオキ(20歳)を託することからドキュメンタリーは始まる。挨拶、お茶の入れ方、掃除、買出しなどヤクザの日常を覚えていくナオキの姿が描かれる。親分亡き後を継いだ若い組長(写真)は、目つきは独特の冷酷さがあるものの、指を詰めたりしないし物分りがよく、私の抱くヤクザ組長像とすごく違う。

リムーザンによるとこの組長は、この映画が公開されることで低迷しているヤクザ界の活性化を図ろうとしたらしい。つまり「こんなとこなら俺も入ってみるか」と志願者が増えるようなヤクザ興し映画。そんなプロモーションを思いつく組長だけに、正当派ヤクザとは違う異端児なのでは?なかなか絵になっているので、実は俳優になりたかったとか?
何度か日本のラッパーの歌が入るが、日本語とラップ音楽がちゃんと一体になっていて予想外に良かった。

聖火リレー

flamme

ローラーブレード100人、バイク65台、計3000人の警官、という桁外れの警戒にも関わらず、エッフェル塔下を出発した聖火リレーはチベット擁護派の激しい妨害に遭った。聖火は3度も消され、ついにバスに乗って目的地のシャルレティ競技場までたどり着く。夕方に予定されていたパリ市庁舎前でのセレモニーは中国側の要請でキャンセル。ロンドンよりも激しい妨害を受け、ほうほうの体で、聖火は次の中継地、サンフランシスコに飛び立った。

今回、聖火は、19カ国、13万7000kmという前代未聞の長い距離を運ばれて、北京にたどり着く。私の頭には、飛行機の中で見る地図が浮かび、このまま陸伝いにツーッとロシア大陸を横断すれば着くじゃない、と思うのだが、アメリカのあとはアルゼンチン、アフリカ、インド、タイ・・・突然オーストラリアに飛び、日本へ。
26日に聖火が届く長野市の実行委員会はもうピリピリしていて「日本人の国民性を考えればパリのようなことは起こらないと信じる」といっているそうだが、褒めているんだか、けなしているんだか、微妙なセリフである。

私の周囲をインタビューした限り、ボイコット派が圧倒的に多い。またロンドン・パリの妨害騒ぎが中国でほとんど報道されていないことから、オリンピックの中継も独断でカットされるんではないか、という心配もある。どうなることだろう・・・?
pizza

タルトは難しい、という先入観があってメニューから外していたが、作ってみたら意外と簡単だった。それ以来、サーモンとほうれん草のタルト、ラタトゥイユの残りとツナのタルトなどよく登場する。

ピザは外で食べるもの、という先入観もあって、作ったことがなかったが、ある日娘が「アメリーのうちで自家製ピザを食べた。すごく美味しかったよ」アメリーって、いつもテイクアウトの中華やお寿司を買っているあのウチ?じゃ私にもできるかも・・・そこへ、食べ物の話は聞き逃さない息子が躍り出てきて「すぐやろう、明日はピザだ!」ということになった。

実際やってみると、料理とも呼べない簡単さ。だってピザの皮、ソースは既成のもの。好きなものをのせてオーブンに入れるだけ。1枚目はクラシックに、ピザソース+ハム+軽く炒めたマッシュルーム+グリュイエールチーズ、そして半分焼けた頃、中央に卵を割り落とす。市販のピザよりずっと美味。

pizza saumon

2枚目はスモークサーモンとモツァレラ。サーモンはChute de saumon fume、つまり切り落としで十分。ソースはピザソースとフレッシュクリームを半々にしてみたら正解で、とても美味しい。
これにバタヴィア(サラダ菜の一種)のサラダをたっぷり。具をのせるのは子供たちが争ってやってくれるのでラクチンなメニュー。またやろうぜ。

プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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