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「今年一番の作品!」(個人的に)ともう言ってしまえるのが、スパイク・ジョーンズの『Her/世界でひとりの彼女』。

her/世界でひとりの彼女

妻と1年前から別居しているが、諦めがつかず離婚届にサインできないでいるセオドア。代書WEBサイトに勤め、人に代わって家族や恋人に手紙を書く仕事をしている。
感情のこもった彼の手紙は評価されるけど、実生活では心を閉ざした孤独な人間だ。
ある日、セオドアは新しいオペレーティングシステムを見つけ、女性の声を選ぶ。相手に順応し、変化するように作られた人口知能は、名前を「サマンサ」と言った。セオドアは次第に「サマンサ」にのめりこんでいく・・・

her/世界でひとりの彼女

セオドア役のホアキン・フェニックス。内向的でちょっと変人というキャラが似合い、すごく上手い。
サマンサの声役のスカーレット・ヨハンソン。最初、サマンサ・モートンが「彼女」だったが、ポストプロダクションで差し替えられた。スカーレット・ヨハンソンは、相手なしで演じるハメになったのに、この情感!かすれた絡みつくような声がすごくいい。

暖色を多く使った映像が綺麗。視覚的にも、近未来映画というより、時代を越えた愛の物語だ。
アカデミー最優秀シナリオ、スカーレット・ヨハンソンはローマ映画祭で最優秀女優賞を獲得している。
この作品、フランス語タイトルも『Her』だけど、私がちゃんと(?)発音しても通じず、仕方なく綴りを言うと「あ、ヘールね」「!!」その上、日本人の英語の発音はわかりにくい、なんてまったく!
日本公開6月28日

ジョン・タトゥーロの『Apprenti Gigolo/見習いジゴロ』。

apprenti gigolo

本屋と花屋を営む2人のオジサン(ウッディ・アレン&ジョン・タトゥーロ)、商売はぱっとせずお金がない。
そこで本屋(ウッディ・アレン)は、自分が客斡旋、花屋が売春夫のコンビで一儲けしようと考えつく。

面白く作れば面白くなる設定なのに、カリカチュア(特にシャロン・ストーン)な描き方が多くて失敗している。といっても、久しぶりのウッディ・アレン節には笑ったし、飄々としたタトゥーロ(この俳優、今まで気がつかなかった)がいい・・・と言うことは、観て後悔はしない作品。


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復活祭の美味しい週末

復活祭の週末にシャンパーニュ地方の田舎に行った。人口200人の田舎町にある夫の実家、義父が生きている間は、寒くて不便で居心地悪い家だった。
暖房をつけっぱなしにすると怒られ、お風呂に入れば途中から水になり、子供たちが庭で遊ぶと「芝生が傷む」と注意され、料理を作ると「野菜が生煮えだ」と文句を言われた(昔式にグタグタに茹でないと食べない人だった)。
気難しくて、自分の流儀を曲げない“おじいちゃん”にみんな苦労したけど、今になっては懐かしい。

あまり田舎に行かない私が行くと、親戚やお隣さんが食事によんでくれて、翌日、お返しによび返す。ので、ご飯を食べているか、作っているかという生活になる。美味しい生活。
その上、この地方の方たちはシャンパンを水のように飲む。酒とバラの日々。

お隣さんでは、復活祭定番の子羊の脚をごちそうになった。
ところで、なぜ復活祭に子羊なの?復活祭とは、磔にされたイエズスが蘇ったことのお祝いだ。イエズスは人類の罪をあがなうために犠牲になった。旧約聖書では子羊が贖罪として神に捧げられたので、イエズスと子羊が同化され、復活祭には子羊を食べる習慣になったそうだ。なるほど。
宗教的な象徴には無関心な人も、羊の脚を一本丸焼きにすれば大勢で食べられるし、見た目もご馳走っぽいので、クリスマスや復活祭によく登場する。

ニンニクを埋め込んでオーヴンで焼く。子羊は匂いも気にならないし、柔らかくて美味しい。

子羊の脚丸焼き

フラジョレ/flageoletという小粒のインゲン豆の煮込みが定番の付け合せ。

子羊の脚丸焼き

このお隣さんカップルは、私の知る中で最高の年齢差:夫72歳、妻36歳。シャンブル・ドット(民宿)を経営している。
文字通りのお隣さんなので、この右側がうちの実家だ。

シャンブル・ドット

人口200人の田舎に誰が来るか?と思うでしょう?ところが、シャンパン・カーヴ巡りや、ディジョンに行く途中の人に利用されていて、「今日は3部屋埋まっていて、明日は満室(全部で5部屋)!」という繁盛ぶり。

のどかな週末からうちに帰ったら、床には衣服が散乱し、酒瓶が転がり、台所には汚れた鍋・・・シャンパンの酔いが一気に醒めた。親のいぬ間に、“大きな子供”のどっちかが酒宴を開き、片づけが間に合わなかったらしい。
息子は留守で、親知らずを抜いたばかりの娘は、頭からお布団をかぶって寝ている・・・という状況から、息子が犯人かと思ったら、事実はその逆であった。


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バック・ブラン(バカロレア模試)が終わって、学校は2週間復活祭の休暇になった。
娘は、友達のノルマンディの家によばれている。
“友達”は男の子で、よばれた6人のうち2人は男子、というのを聞いて、夫と私の顔はこわばった。
「ただの、いい友達よ」と、親の心配を笑う娘。
そういうのが危ないのよ。気がついたら隣に寝てた、というのは大抵“いい友達”だ。

後で娘に「ホントに大丈夫なの?」
こういう質問が意味のないものだとはわかっているけど。
「大丈夫よ、いい友達だから、そんなバカなことしないわよ」
「でも酔っ払ったら、何するかわかんないわよ」
「アタシ、強いお酒、飲むのはやめたの」
17歳になったばかりのセリフか!
「それに柔術やってるし、ちゃんと保身できるわよ」
「その・・・何か必要だったら言いなさいよ」
「もちろん、必要な時は言うわよ。私、そういうことにタブーはないの」
はあ、そうですか。

出かける前日、「持って行くビールを買うんで一緒に来て」と兄貴に頼んでいる。未成年にはアルコールを売ってくれないからだ。私が買い物を頼んでもなかなか動かない息子が、妹に引きずられて出かけていった。
持って帰ってきたスーパーの袋を見て、
「テキーラって名前のビールがあるの!」
「うん、ウォッカよりいいと思って」と娘はケロリとしている。
翌朝、6時過ぎに出かけていった。休みの日には12時前に起きないくせに・・・
「一緒に行く男子がみんなゲイだと良かったのに」
冗談かと思って、夫の顔を見ると、マジな表情であった。
「Petits enfants, petits soucis, grands enfants, grands soucis/小さい子供、小さい心配、大きい子供、大きい心配」とはよく言ったものだ。

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この前、高校に入って一安心と思っていたら、娘はもうバカロレア。
4月はじめの10日間は、バック・ブラン/Bac blancと呼ばれる模擬試験に口頭試問、志望校の願書提出が重なって嵐のようだった。
バカロレアは50%取れれば受かるので、日本の大学入試よりかなり広き門。「バカロレア合格率98%」なんて名門高校もあるくらい。
と高をくくっていると、美術高校に通っている娘のは一般バカロレアではなくテクノロジーバックで、その中のSTD2A(科学・テクノロジー・デザイン・応用アート)というジャンル。科目は哲学、フランス語、第一外国語、美術史、数学と物理。に加えて“75時間製作”、75時間かけて、与えられたテーマでプロジェクトを作る。さらに-フランスだから-どうしてこういうプロジェクトに至ったかを説明する口頭試問がある、しかもフランス語と第一外国語(ドイツ語)で・・・と聞いただけでため息が出る。

それぞれの科目には“採点係数”があって、この75時間アートの係数は16、つまり16倍。ということは、いくら他の科目でいい点をとっても、これでしくじればバカロレアに落ちる、ということだ。そこで、苦手な数学・物理は“勉強しない”ことにして、美術製作に集中。といっても、うちでやるのは禁止で、中途の作品は鍵のかかるロッカーにしまわれる。
娘は疲れ果てて帰ってきて、ストレスからお菓子を食べまくり、顔には吹き出物ができた。

私は口頭試問の試験官役を頼まれ、はじめて“75時間”の内容を知った。
テーマはdessein/意図、構想。娘は日本とフランスの生活様式・習慣の違いを取り上げて、フランス人にも使いやすい“ア・ラ・ジャポネーズ”の椅子、テーブル、ベッド、お風呂場・・・のデッサンを作った:
畳に座るとき、背もたれがある椅子。
「それ、昔から日本にあるじゃない!」
「試験官は知りっこないからいいのよ」
ベッドを取り囲む家具、ベッドに寝ていながら床に寝ている気分に。
「気分だけのために、この家具作るわけ?」
「先生がいいアイディアっていったから」
床のタイルに、まず身体を洗ってから浴槽に入るよう順路が記されているお風呂場。
面白いかも。
「浴槽の栓をいちいち抜かない、も書いたら?」(夫は旅館の家族風呂に栓を抜いた)。

持ち時間は10分だけど、元来おしゃべりな娘は盛り込みすぎで15分になった。イントロが長すぎる、とかこのパラグラフ取ったら?と切り貼りをして12分。ま、いいか。
ドイツ語はわからんので「思ったより綺麗な言葉ね・・・」と聞いているだけだったけど。
模試は学校の先生が口頭試問をするけど、本番では会ったことのない教官が相手だ。
Bonne chance !


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花の誘惑

「桜が満開です」というメールをもらうと、2年前に観た桜の光景がちらつく。
瞼に焼きつく、とはこういうことなのね、とうっとりしていると、

桜

桜

「ご予約のパリ-東京便についてですが」という電話があった。
「は?」記憶が戻るまで数秒かかる。

そうだった。1月初め、東京-パリ便に乗り遅れ(正確には乗り忘れ)新たにチケットを買うはめになった。
3時間後の成田発があるといわれ、正規の料金にのけぞったけど、乗らないわけにはいかない。試しに往復料金を聞くと片道より少し安かった。
「じゃ往復にします」
「3ヶ月間有効ですので、お帰りの日はいつになさいますか?」
3ヶ月以内にまた帰れるとは思えない。安いから往復にするだけだ。
「いつでもいいんだけど・・・じゃ一番先の日にしてください」
「パリ・シャルルドゴール発○時と×時がございますが、どちらに・・・」
「どっちでもいいです!」
この人、私達が3時間後の飛行機に乗るってわかってるんだろうか?
「もしご変更の場合はお1人2万円の変更料がかかりますが」
「 もし乗らなかった場合は“変更”にはなりませんよね」
「はい、もしご変更の場合はお1人2万円の・・・」
私の突飛な質問はマニュアルにないらしい。航空会社の女性は同じセリフを繰り返し、ただでさえ苛立っている私は絶望的にイライラした。
・・・という光景が蘇った。
電話はその“帰りの便”が羽田着に変更になったことを知らせるためだった。

ということは、この便に乗れば12時間後に、私は満開の桜の中にいる。ボストンバッグひとつ持ってこの便に乗れば・・・
でも帰りの便はどうする?また直前だから、またびっくりする値段に違いない。
それにどう考えても、現実的に、今1週間いなくなると、後で高いツケが回ってきそうだ。
世の中にたえて桜のなかりせば・・・いや、あの電話さえかかってこなかったら、誘惑と戦わずにすんだのに、まったく。
桜の夢ははかなく散った。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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