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英文契約書を読むためのヒント…のようなもの(2)

経緯はこちらを参照あれ。本題に入る前の辞書とかの話が長くなったので、そちらは別エントリにした。今回(とその次)は既に,@kataxさんが書いているエントリの内容と一部重なってしまうことをご容赦ください。

さて、最初は、何故英文契約を読むのが大変なのか、というところを考えてみたい。個人的に思いつくのは次の4つかと。
  1. 契約書はそもそも日本語でもシンドイ
  2. しかも英語
  3. さらに英語の中でも用語が特殊
  4. それで長いし、量が多い
最初の2つは、今回は無視する。このエントリを読むような人はあまり該当しないものと考えることにする。でないと話が進まない(じゃあ書くな、と思ったが…一応そこは脳裏に浮かんだというアリバイってことで(謎))。

英語の中でも用語が特殊というのはいくつかに大別できるような気がする。
  1. ラテン語由来のもの
  2. 英語だけど特殊な用語
  3. 普通に使う言葉だけど、意味が特殊なもの
1.については、英語を母国語にする方々にとっても特殊な用語ということになる。親切な契約書だとラテン語由来のものは斜体表記とか、下線が引いてあったりとかすることもある(そうでないこともある)。ともあれ、いずれにしても意味が定まっている言葉なので、適切な辞書を引けば答えは出るはず。英辞郎でも対応してくれるようなので、とりあえずはマメに調べてみるしかない。契約書で出てくるのはそれほど数はないので、そのうちに意味を覚えるものも出てくると思う。
2と3については、厳密に区分できないかもしれないが、3のような用語があるということは頭の隅に留めておく必要がある。actとかactionなんてのがその例かも知れない。英辞郎でも一応説明の中には出てきている。actには「法令」という意味もあり、Companies Actで会社法、という意味になったりする。actionには「訴訟」という意味もあり、Civil Actionというと民事訴訟ということになる(民事訴訟に関する同名の映画がある…LLM前のサマースクールで見た)。読んでいて疑問に思ったら、辞書をマメに引いてみるしかない。できれば、法律用語辞典も含めて、複数の辞書にあたるのが良いと思う。

・・・というだけでは面白くないので、特徴的なものをいくつか。

特殊な用語、用法という意味では、よく出てくるのが、助動詞。
shallが義務で、mayが権利、というのが一応の「お約束」(例外があるけど)。willはshallより弱いニュアンスの義務だったり、単なる未来だったりすることもあり得るので、面倒くさい。禁止については、may not, must not, shall notという辺りが使われているように思う。
(この点について、英文契約についての著作の多い長谷川俊明先生は、shall notが使われることが多いとコメントされている。Linkした記事も含めた「契約用語の用法」のサイトは、記事が玄人向けで、その内容を理解するのが大変だが、有用なサイトであるのは確か)

あと、here-なんとか、there-なんとかも、よく出てくる。here-のhereは、その文書、という意味。契約書であれば、this Agreementというところ。hereinだったら、in this Agreementということになる。書く側にとっては便利な用語。there-の方は、hereではない、どこかで、there-が使われているところの近所で言及されている何か、ということになる。それ以外はhere-とかと一緒。there-のthereが何を言っているのかについては、文脈から考えるしかない。これも書く側にとっては使い勝手が良いものの、あいまいさが残るので、使わないよう推奨されていることもある。

もう一つ。notwithstandingとか、Provided, however, that…とか契約書とかでないと見ない接続詞句もある。前者は優劣関係を示すのに使ったりする。Notwithstanding the foregoing というと、「前に書いていたことに拘らず」と、ちゃぶ台返しみたいな感じになる。後者は「但し…」という意味で但し書きの表現で使う。

それと同語反復も多い。any and all(一切の、という意味のところで出てくる)とか、by and between(二者契約で、…の間でという意味で使う)とか、がそう。そういうことをするから、余計に文章が長くなる。過去の経緯があってのことなのだが、過去の経緯があって、反復することがあるということだけ抑えておけば、当座の用事には足りるだろう。

長くなってきたので、今回はここまで。次は長くて量の多い文書をどう扱うか、というところ。


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