本棚の作り方について
毎年BLJではこの季節に出る号でブックガイドを出しているということで、こちらも便乗企画をさせてもらったが、同様に便乗企画をはっしーさんがされていて、かつ、TL上での指摘を受けて(こちらもいくつかコメントさせてもらったけど:はっしーさん、お手数をかけましたm(__)m)、改訂も既になされている。ともあれ、一連のやり取りを見ていて感じたことをメモしておく。話がそれるのでコメントにはしないという次第。
そもそも企業の法務の書棚に本をどういう風に揃えるかという点では、前の勤務先で、自分の退職直前に本を揃えたときに、色々考えたこともあり、その関係で興味関心が有るわけです。
(その時のメモがこちらとこちら)
そもそも企業の法務の書棚に本をどういう風に揃えるかという点では、前の勤務先で、自分の退職直前に本を揃えたときに、色々考えたこともあり、その関係で興味関心が有るわけです。
(その時のメモがこちらとこちら)
はっしーさんのエントリで引用されていた企業法務戦士さんのツイートにある、「基本書」の類をわざわざ部署で買う必要はないという意見は、個人的には賛成するところではある。僕の場合、自腹で買わないと読まない可能性が高いので余計にそう思う。ただ、それは、個々人の心構えの問題としては良いとしても、法務セクションの管理者の立場になったときに、その心構えを共有しない下の人に共有できるかというと、その点、時として疑問が生じる余地があるのではないか、というのが一連のやり取りを見ていて最初に感じたこと。
もちろん、そういう心構えのできていない人はそもそも法務に配属されない、というのなら、それはそれで結構なことだが、法務にどういう人が配属されるのか、また、法務に配属される人について法務がどの程度コントロールできるのか、ということは、会社ごとの状況、その会社での法務の位置づけによって異なるかもしれず、先の命題は常に成り立つものとは考えにくいように思う。そして、そのような心構えのない人に自費で購入させるのは簡単な話ではないだろう。また、仮に心構えがあっても、法律書は、特に数を買うとフトコロにやさしくないので、給与の水準が一定以上ないと厳しいかもしれない。
(もちろん、会社にあれば必ず読むのか、というとそうでもないし、会社においておいても、全員が全員読むとは言い切れない。その辺をどうするか、という話は別に考えないといけないのだろうが…)
また、心構えの問題とは別の問題として、配属される人間の法律についてのレベル感もばらつきがあるかもしれない。仮に法学部卒だったとしても、そもそも学部の時にどこまで法学が身についたかどうかも分からないし、10年以上営業をしてから法務というようなケースでは法律の知識は頭にないかもしれないし、あってもupdateされていないかもしれない。それに法学部卒しか法務に配属されない、とも限らないだろう。そういうばらつきがあるとなれば、「基本書」なしに「概説書」だけで仕事が回せるということにもならないかもしれない、というのが次に気になった点。この辺は弁護士事務所と企業の法務セクションとでは、同じ分野の仕事をするに際しても、揃えるべき本に違いが生じ得る一つの理由になるのだろう。
さらに、概説書が膨大なものになると、その中で迷子になって、実務がおかしくならないか、という点も気にかからないではない。実際、僕自身、恥ずかしい話だが、最初の勤務先で法務に配属されたての頃、まったく勉強したことのない分野の案件に対応することになり、いきなりその分野の概説書を読み始めて、途方にくれた覚えがある。幸い先輩たちに指導を仰いで実害は出なかったはずだが…。
結局のところ、企業の法務セクション(部であれ、課であれ)の本棚のあり方は、その法務セクションの現状と今後の展望を反映したものにならざるを得ないわけで、予算や場所を含めた制約要因の中で、現時点での身の丈、というか、業務内容と読み手であるスタッフのレベルにあった揃え方は最低限しないといけないのではないかと思ったりする。まあ、これは、書籍に限った話ではなく、企業の法務セクションにおける判例の検索サービスの導入の可否や社外のセミナーへの参加のあり方とかと軌を一にするのだろうが。
追記)本については、その瞬間に見ることができないと役に立たないということもあると思うので、家に本があるだけでは役に立たない可能性があるのと、あと、こちらは某先輩にご指摘いただいたのだが、本も買える時に買わないと、絶版になったり売り切れになったりするので、適時に買っておくことも重要ということがあると思います。さすがに個人レベルでその辺のレベルまで管理するのは限界があるかと…。
もちろん、そういう心構えのできていない人はそもそも法務に配属されない、というのなら、それはそれで結構なことだが、法務にどういう人が配属されるのか、また、法務に配属される人について法務がどの程度コントロールできるのか、ということは、会社ごとの状況、その会社での法務の位置づけによって異なるかもしれず、先の命題は常に成り立つものとは考えにくいように思う。そして、そのような心構えのない人に自費で購入させるのは簡単な話ではないだろう。また、仮に心構えがあっても、法律書は、特に数を買うとフトコロにやさしくないので、給与の水準が一定以上ないと厳しいかもしれない。
(もちろん、会社にあれば必ず読むのか、というとそうでもないし、会社においておいても、全員が全員読むとは言い切れない。その辺をどうするか、という話は別に考えないといけないのだろうが…)
また、心構えの問題とは別の問題として、配属される人間の法律についてのレベル感もばらつきがあるかもしれない。仮に法学部卒だったとしても、そもそも学部の時にどこまで法学が身についたかどうかも分からないし、10年以上営業をしてから法務というようなケースでは法律の知識は頭にないかもしれないし、あってもupdateされていないかもしれない。それに法学部卒しか法務に配属されない、とも限らないだろう。そういうばらつきがあるとなれば、「基本書」なしに「概説書」だけで仕事が回せるということにもならないかもしれない、というのが次に気になった点。この辺は弁護士事務所と企業の法務セクションとでは、同じ分野の仕事をするに際しても、揃えるべき本に違いが生じ得る一つの理由になるのだろう。
さらに、概説書が膨大なものになると、その中で迷子になって、実務がおかしくならないか、という点も気にかからないではない。実際、僕自身、恥ずかしい話だが、最初の勤務先で法務に配属されたての頃、まったく勉強したことのない分野の案件に対応することになり、いきなりその分野の概説書を読み始めて、途方にくれた覚えがある。幸い先輩たちに指導を仰いで実害は出なかったはずだが…。
結局のところ、企業の法務セクション(部であれ、課であれ)の本棚のあり方は、その法務セクションの現状と今後の展望を反映したものにならざるを得ないわけで、予算や場所を含めた制約要因の中で、現時点での身の丈、というか、業務内容と読み手であるスタッフのレベルにあった揃え方は最低限しないといけないのではないかと思ったりする。まあ、これは、書籍に限った話ではなく、企業の法務セクションにおける判例の検索サービスの導入の可否や社外のセミナーへの参加のあり方とかと軌を一にするのだろうが。
追記)本については、その瞬間に見ることができないと役に立たないということもあると思うので、家に本があるだけでは役に立たない可能性があるのと、あと、こちらは某先輩にご指摘いただいたのだが、本も買える時に買わないと、絶版になったり売り切れになったりするので、適時に買っておくことも重要ということがあると思います。さすがに個人レベルでその辺のレベルまで管理するのは限界があるかと…。