契約書作成の基礎と実践―紛争予防のために / 植草 宏一 (著), 松嶋 隆弘 (著)
最近何故か、契約書関係の本が新しく出ているけど、さすがに食傷気味ということで、図書館で借りてみた。良かった点をいくつかあげてみる。
- 新刊なので当然かもしれないが、CISGや債権法改正の現状も含め、判例や条文へのレファレンスが豊富。
- 基本的なところから、理論的なところまで、詳しく説明しているという印象。説明については、権利保全に関する部分が類書に比してよりページを割いている印象。
- 要件事実も視野に入っている(ようだ…そもそも要件事実がよくわかっていないので…)。
- この種の本には珍しく?、簡単ではあるが、印紙税法以外の税法への目配りがなされている(印紙税法の話は、他のところでも見られるので、そこはもっと端折って、その他の税法の話をしてもらったほうが良かったかもしれない)。
- 個人的には完全合意条項や表明保証といった英米法由来の条項について、日本法の下でどういう扱いになるのかという分析は有用だと感じた。
逆に?と思った箇所もいくつか。
- 「表明保証条項は、契約書の分量を分厚くすることで、タイムチャージによる報酬の金額を高くしようとする大手法律事務所と、そのような大手法律事務所に高額の報酬を支払うことによりステータスないし何らかの価値をみいだす大企業の思惑の一致により成り立っている面がある」という記載。
何を根拠に言っているのか訊いてみたいところ(その手前にある、表明保証事項の大半は、別の方法または法令で対応可能という記載も、具体的にどうやって対応可能なのか書いていない点でどうかと思うのだが…)。大手法律事務所側については知らないが、そもそもcopy & pasteで済むような話に近ければそれほどタイムチャージは稼げないのではないかと思うし、反対に、大企業側は、特に最近は、記載のような思惑があるとは思いにくいのだが…。 - 契約書のチェックリストが冒頭にあって、これはこれで有用なのだが、一つ気になったのは、特許保証の有無の欄について、例文として、「本製品は、第三者の知的財産権を侵害しないことを保証する」とあるところ。実務的に自信をもって保証できる例(しかも地域的な限定もなしに)がどれくらいあるのだろうか?