法人税 入門の入門〈平成22年版〉/ 辻 敢 (著), 齊藤 幸司 (著)
先日のエントリに引き続き、法人税について入門、ということで、この一冊。ざっと目を通したので感想をば。冒頭に「徹底してやさしく書いた」とあるけど、そうかな、という気がする。複式簿記の知識は前提としているし、経理用語についても説明なく使われている。これが「やさしい」と思えるくらいになってください、というどこかで聴いたことがあるような意味合いで書かれているわけでもないだろうと推測される。そういう意味で、経理の人向けとしての入門になっているかもしれないにしても、まったくの素人が読むにはきっとハードルが高いだろう(僕自身は、すっかり忘れてはいるが、最初の勤務先で経理をしたことがないわけではないので、微妙だが)。
ただし、前記の点を前提に読むのであれば、それほど悪い本ではないのではないだろう。読みにくくはないし、書かれている事柄についての説明は、丁寧だと思う。文章もこなれているので、通読にもそれほど時間はかからないように思う。また、セクションごとに末尾にまとめがあるのも、理解と記憶の定着のうえで、有用に思われる。
一方で、書かれていないことについては問題があるような気がした。入門書というので、個々の処理の背後にある考え方が説明されているか、というと、そういうことよりも、どういう処理をすべきか、基本的なところについての説明が中心になっているようだ。経理の人がこれを手引きにしつつ、例外的なところは、もっと知識のある人の手助けを借りながら、何とか申告ができるようになったり、経理業務が回せるようになる、という目的を達するための入門書、と考えるほうが妥当なのだろう。そういう用途が多いだろうから、そのこと自体について異議を申し述べる気はしないが、法人税について、どういう考え方で個々の規定があるのか、ということを理解したいという目的を達成するために読む入門書としては、あまり適さないという気がした。
あと、受取配当金の益金不算入に関する説明は、何となく舌足らずで、これらについては、以前読んだ「法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる 」/奥村佳史での説明の方が分かりやすかった。
と、まあ、あまり肯定的でないことばかり書くのもアレだが、だからといって読んで損をしたという風には思っていない。不勉強ゆえに知らなかったこともいろいろ分かったからで、例えば次のようなところ。
あと、受取配当金の益金不算入に関する説明は、何となく舌足らずで、これらについては、以前読んだ「法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる 」/奥村佳史での説明の方が分かりやすかった。
と、まあ、あまり肯定的でないことばかり書くのもアレだが、だからといって読んで損をしたという風には思っていない。不勉強ゆえに知らなかったこともいろいろ分かったからで、例えば次のようなところ。
- ノウハウの提供を受けるために支出する頭金などについては、税法上の繰延資産として5年以内の範囲で償却可能。
- リベートは現金で支払わないと交際費になる。しかし、事業用資産や少額物品をあげた場合には、交際費とならない。
- 試験研究費の総額に対して税額控除ができる。
(dtk注:このほかにも一定の試験研究費については、更に控除があるとのこと。試験研究費の扱いについては、もう少し詳しく書いて欲しかったような気がした。)