未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

クローズアップ2008:諫早干拓訴訟判決 4度目の開門催促、国側に立証責任

2008-06-29 01:20:20 | 行政裁判
 クローズアップ2008:諫早干拓訴訟判決 4度目の開門催促、国側に立証責任

 長崎県の国営諫早湾干拓事業を巡る27日の佐賀地裁判決が厳しく指弾したのは、中・長期の開門調査を拒む農林水産省のかたくなな姿勢だった。有明海の環境変化が何に由来するかの立証責任は、漁業被害を訴える漁民ではなく、国の側にあるという論理だ。国が開門調査を催促されたのは、これで4度目。判決は一度動き始めたら止まらない巨大公共事業に一石を投じたが、開門が実現するにはなおハードルがある。

 諫早湾干拓事業の開門調査の実施を司法などが促したことは、これまでも3例ある。

 最初は01年12月。農水省が設置したノリ第三者委員会が実施を提言した。その後、農水省OBらが委員を務める検討会議が否定的な見解を示し、04年5月に亀井善之農相(当時)が調査を見送った。

 次は佐賀地裁が04年8月、工事差し止めの仮処分決定の際、第三者委が提言した調査をしていないと指摘。このために生じた「より高度の証明が困難になる不利益」が、原告だけの負担になるのは不公平という指摘だ。

 仮処分決定を取り消した05年5月の福岡高裁も、国側に「中・長期開門調査を含めた調査、研究を今後とも実施すべき責務を負っている」と付言した。

 今回の判決は、中・長期開門調査を直接命じるものでないとしつつも、「速やかな調査実施、適切な施策」を求める異例の言及をした。さらに、調査をしない農水省の姿勢を「立証妨害に等しい」と批判した。排水門の開閉権が国にある以上、現状では漁民側が一方的に立証の不利益を被るというわけだ。

 原告弁護団は、「漁民らにこれ以上の立証を求めることは不可能を強いる」として「人員や費用を負担しうる」農水省に因果関係がないことの証明を求めた点で、画期的な判決と評価する。馬奈木昭雄弁護団長は「佐賀地裁の仮処分決定も同じ理論。最高裁で否定されたことをまた原点に戻した」と話す。

 五十嵐敬喜・法政大教授(公共事業論)は「完成後の公共事業については、これまで損害賠償を求めるしかなかったが、今回は裁判所が開門という措置を求めた点が画期的だ」とし、全国の公共事業を巡る問題への影響力を強調する。【姜弘修、関谷俊介】

 ◇県「高潮の阻止難しい」/専門家「海よみがえる」--分かれる評価
 開門を求めた判決に対し、県側は「現実無視だ」と猛反発するが、専門家からは「今ならまだ海はよみがえる」という声も。中・長期開門による防災、水質、農業などに対する影響について、専門家らの評価も分かれる。

 干拓地周辺は大雨や高潮の被害が絶えない地域だ。長崎県は「常時開門となれば、高潮被害を食い止めることが難しくなる」と訴える。

 調整池は水質調査で一度も目標値を達成していない。開門されれば「汚い水」が有明海に流出するため、漁業関係者からは逆に影響を心配する声もある。

 干拓地では41の個人・法人が今春から営農を始めた。戸原義男・九州大名誉教授(干拓工学)は「地下水の塩分濃度が上がり、麦や大豆の栽培が難しくなる。営農へのマイナス面は大きい」と話す。

 一方、東幹夫・長崎大名誉教授(水域生態学)は「02年に実施した27日間の短期開門調査ですら、明確に水質改善が見られた。5年あれば生物による浄化作用などが観測できるはず」と期待する。

 小松利光・九州大大学院教授(沿岸域環境学)は「台風接近時などは排水門を閉めればよい。水位に応じた対応で防災は可能」と指摘する。【宮下正己、阿部周一】

 ◇「なお干拓」矛盾--耕作放棄地、農地の1割
 「中・長期の開門は困難。短期開門や実証調査、シミュレーションなどあらゆる努力をしてきた。これまでの調査で十分だ」。農水省農村振興局の斎藤晴美整備部長は27日の会見で、判決が命じた5年間の開門調査に応じない姿勢を強調した。

 強気の背景に、04年に佐賀地裁が出した工事差し止めの仮処分決定を福岡高裁が取り消し、最高裁で確定した経緯がある。省内では「今回も上級審で覆る」との見方が大勢だ。

 しかし、国営干拓事業は過去にも多くの問題点が指摘されてきた。環境破壊や漁業被害だけでなく、事業自体の「無駄」も行政監察や会計検査などで取りざたされた。

 諫早など干拓事業の多くは1950~60年代、コメ増産のために構想された。だが70年ごろからコメは過剰に転じ、干拓で64年に誕生した秋田県大潟村では、入植者が減反政策に反発しヤミ米の出荷を強行した。

 宍道湖・中海の淡水化を伴う島根県の中海干拓事業では、シジミの大量死などが問題になり、03年に中止に追い込まれた。造成された農地約331ヘクタールの約2割は農業以外に転用されたり、今も売れ残る。三重・愛知県の木曽岬干拓(74年完了)で生まれた土地は、県境争いも絡んで長年放置された。約370ヘクタールの土地は、土捨て場やスポーツ施設など、すべて農業以外の用途に充てられる計画だ。

 国内では農地面積の1割近い38万ヘクタールが耕作放棄地になっている。その解消が課題になる中、国のメンツで進められた干拓事業は、農政の矛盾を象徴している。【行友弥】

==============

 ◆諫早湾干拓事業の変遷◆

1952年 国が長崎大干拓構想を立案

      閉め切り面積約1万ヘクタール。米作地6718ヘクタールを造るとした

  70年 長崎南部地域総合開発事業に変更

      規模は変えず、陸地は畑と工業用地とし淡水湖の水は上水道にも利用

  77年 着工予算がつく

  82年 着工できないまま農水相(当時)が打ち切りを宣言

  83年 諫早湾防災総合干拓事業に変更

  86年 事業着手

  89年 諫早湾干拓事業として着工

  97年 潮受け堤防閉め切り

2001年 干拓規模を見直し、農地を縮小

  07年 完工。総事業費は当初予定の約2倍の2533億円

(出所:毎日新聞 2008年6月28日 東京朝刊)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

諫早湾干拓事業訴訟:佐賀地裁判決(要旨)

2008-06-29 01:18:38 | 行政裁判
 諫早湾干拓事業訴訟:佐賀地裁判決(要旨)

 有明海沿岸4県の漁業者ら約2500人が国を相手取り国営諫早湾干拓事業(諫干)による潮受け堤防排水門の常時開門などを求めた諫干開門訴訟で佐賀地裁が27日言い渡した判決の要旨は次の通り。

 1 漁業権または漁業を営む権利に基づく妨害予防及び妨害排除請求の可否について

 (1)現行漁業法のもとにおける漁業権においては、組合員の地位は、いわば社員権的権利にすぎないから、漁業権自体が個々の組合員に帰属すると解することは困難である。

 (2)漁業法8条1項の定める漁業行使権は、物権的性格を有し、第三者がその権利の存在を争いまたは権利行使の円満な状態を侵害したときには、組合員はその第三者に対し妨害予防請求権や妨害排除請求権を行使することができる。

 2 人格権、環境権及び自然享有権に基づく請求の可否について

 略

 3 有明海における環境変化と本件事業との因果関係の有無について

 (1)本件潮受け堤防の閉め切りの前後で明らかに変化が認められる環境要因としては、諫早湾、有明海湾奥部及び熊本県海域における赤潮の年間発生期間等の増大があるものの、赤潮の増大については、消去法によりその原因を特定できるほどに科学的知見の集成が行われていない。

 その余の点についても、結局のところ、全体として潮受け堤防の閉め切り前のデータが不足しており、閉め切りによる環境因子に対する暴露(閉め切り後)群と非暴露(閉め切り前)群の統計的有意差及び相対的危険度・寄与危険割合を確証する方法がなく、量と効果の条件や消去の条件を定量的に示すことはできないから、本件潮受け堤防の閉め切りと有明海の環境変化について因果関係を認めることは困難であり、高度の蓋然(がいぜん)性をもって認定するのは困難といわざるを得ない。

 もっとも潮受け堤防の閉め切りと諫早湾内及びその近傍場の環境変化との間の因果関係は、相当程度の蓋然性の立証はされているというべきである。

 (2)現状において、中・長期開門調査を除いて、本件潮受け堤防による影響を軽減した状況における観測結果及びこれに基づく科学的知見を得る手段は見いだし難いにもかかわらず、漁民原告らにとって、被告管理にかかわる本件各排水門の操作を行うことができないのは明らかである上、多大な人員費用の負担を必要とする有明海の海況に関する詳細な調査を漁民原告らに要求することも酷に過ぎるから漁民原告らにこれ以上の立証を求めることは、もはや不可能を強いるものといわざるを得ない。

 これに対し被告は、本件各排水門を管理している上、信頼性の高い観測を行うための人員や費用を負担し得ることは明らかであり、また中・長期開門調査は、諫早湾内の流動を回復させるなどして本件事業と有明海における環境変化との因果関係に関する知見を得るための調査として有用性が一応認められており、その実施についても不可能を強いるものではない。

 加えて、第1次仮処分決定における抗告審や公調委からも、中・長期開門調査等の実施を求められていることに照らせば、とりわけ、原告らにより、相当程度の蓋然性の立証がされている、諫早湾内及びその近傍場の環境変化に関する限りは、被告が中・長期開門調査を実施して上記因果関係の立証に有益な観測結果及びこれに基づく知見を得ることにつき協力しないことは、もはや立証妨害と同視できると言っても過言ではなく、訴訟上の信義則に反するものといわざるを得ない。したがって、被告において、信義則上、中・長期の開門調査を実施して、因果関係がないことについて反証する義務を負担しており、これが行われていない現状においては、諫早湾内及びその近傍場の環境変化と本件事業との間に因果関係を推認することが許されるというべきである。

 もっとも、上記推認は、現時点での科学的知見及び被告が中・長期開門調査を実施していない現状を前提とするものであり、上記推認の基礎とした事情が今後変化する可能性があることは当然に予測されるところである。

 そして、中・長期開門調査による観測・現地調査については、予備的請求のうち、上記推認の基礎とした事情が継続することが予測される5年間に限り本件各排水門を開放する限度で認容できる。

 4 漁業被害と本件事業との間の因果関係の有無について

 (1)略

 (2)本件事業は、諫早湾内及びその近傍場においては、魚類の漁船漁業並びにアサリ採取または養殖漁業の漁業環境を悪化させていると認められる。

 その余の漁業については、本件事業により漁業環境の悪化が生じているとは認められない。

 5 本件潮受け堤防の閉め切りの公共性の有無について

 潮受け堤防が発揮している防災機能等については新たな工事を施工すれば代替しうる。農業生産についても、漁業行使権の侵害に対して、優越する公共性ないし公益上の必要性があるとは言い難い。

 防災機能等を代替するための工事には短くとも3年間の工期を必要とすることも考慮すれば、原告らは本判決確定の日から3年間は本件各排水門の開放を求めることはできない。

 6 原告らの中・長期開門調査に対する期待権侵害の有無について

 略

 7 結論

 (1)よって、主文のとおり判決する。

 (2)なお、本件訴訟は、中・長期の開門調査自体を求めるものではなく、もとより本判決もこれを直接的に命じるものではないが、当裁判所としては、本判決を契機に、すみやかに中・長期の開門調査が実施されて、その結果に基づき適切な施策が講じられることを願ってやまない。

(出所:毎日新聞 2008年6月28日 東京朝刊)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本共産党と第169通常国会(5)-米軍特権/質問にメディア注目-

2008-06-29 01:13:32 | 国内政治
論戦貫いた156日間
日本共産党と第169通常国会(5)
米軍特権
質問にメディア注目

--------------------------------------------------------------------------------

  今国会が開会してまもなく発生した米海兵隊員による女子中学生暴行事件(二月)は、基地を抱える自治体・住民に衝撃を与えました。

 「基地ある限り米軍犯罪はなくならない」。日本共産党の赤嶺政賢議員は、三月十八日の衆院本会議でこん身の力で告発しました。神奈川県横須賀市では、脱走米兵によるタクシー運転手殺害も発生。全国で相次ぐ米兵犯罪にどう立ち向かうのかが問われました。

 同時に、イラクやアフガニスタンに出撃し、日本国内では事件・事故を繰り返す在日米軍に卑屈なまでの特権を与え続ける日本政府の立場も、国会審議の焦点の一つになりました。

米軍にも衝撃
 日本共産党は、特権の実態を突き付けて追及し、マスメディアからも大きな注目を浴びました。

 「これでは、米兵が日本で罪を犯しても大したことではないという意識を生み出す」

 日本共産党の井上哲士議員が、こう告発したのは、米兵受刑者の食事の特権的優遇です。(四月二十二日の参院外交防衛委員会)

 米兵受刑者を収容している横須賀刑務所で、日本人受刑者に「まぜめし」「煮浸し」といった夕食を出す一方、米兵には「ペッパーステーキ」「ビーフヌードルスープ」などなど…。フルーツやデザートもほぼ毎食欠かさず出され、その差は歴然としています。政府は、厚遇の根拠に、日米地位協定に基づく日米合意を挙げています。

 井上氏には、マスメディアの取材が相次ぎました。「“思いやり”塀の中も」(神奈川新聞、六月八日付)、「卑屈なほどに米兵に手厚い『地位協定』の縮図」(『週刊ポスト』六月十三日号)などと批判しました。

 地位協定は、米軍が有料道路を使っても、料金が課されないことも定めています。免除された料金は、日本政府が肩代わりしているのです。

 井上氏は、ディズニーランドなど観光旅行のバスツアーや、レジャーで私的に使うレンタカーの高速料金まで含まれていることを暴露しました。(四月十七日の参院外交防衛委)

 米軍準機関紙「星条旗」も、井上氏の追及を異例の報道。米軍は、この追及後に、横田基地のホームページの該当個所を削除しました。米軍が受けた衝撃の大きさを物語るものです。

 特権は、さらに―。

いつまで続く
 今国会で日本政府は、在日米軍への「思いやり予算」を続ける新たな日米特別協定の国会承認を迫ってきました。

 「思いやり予算」は、在日米軍の維持経費について米側が負担すると定めた地位協定にも違反する支出です。特別協定は、政府が「暫定的な措置」として一九八七年から始めたもので、今回は五回目の延長でした。

 「一体いつまで続けるつもりなのか」

 日本共産党の笠井亮議員が、その異常さをただしたのに対し、福田康夫首相は「今から予断をするべきではない」と述べ、廃止のめどさえ示しませんでした。(四月二日の衆院外務委員会)

 同協定の採決では、前回の延長で賛成した民主党も反対に回り、参院では否決されました。衆参両院のいずれかで条約が不承認になったのは初めてのことです。(つづく)

(出所:日本共産党HP 2008年6月28日(土)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北朝鮮政府が原子炉冷却塔を爆破

2008-06-29 01:11:12 | 国際政治
北朝鮮 原子炉冷却塔を爆破

--------------------------------------------------------------------------------

 北朝鮮は二十七日午後、寧辺の核施設にある原子炉(黒鉛減速炉)の冷却塔を爆破しました。米CNN、韓国MBCなどが伝えました。寧辺の原子炉は核兵器開発に使われるプルトニウムを生産するために使われた施設です。

 北朝鮮の非核化は現在、核施設の無能力化などを完了させる第二段階の大詰めにあります。冷却塔の解体は当初、無能力化の次の核廃棄段階で行われる措置でしたが、前倒しで爆破されました。

 訪朝中のソン・キム米国務省朝鮮部長も寧辺入りして、爆破の様子を視察。「極めて重要なステップだ」と語りました。

 ライス米国務長官は二十七日、日米外相会談後の記者会見で、「稼働していた原子炉だったことを忘れてはならない」と述べ、非核化に向けた意義を評価しました。

 冷却塔は原子炉の廃熱を処理するための施設。原子炉が稼働していれば、冷却塔から水蒸気が発生するため、米情報当局は衛星などで確認しながら、北朝鮮の核開発活動を監視してきました。無能力化の措置によって、内部の装置はすでに搬出されていました。

(出所:日本共産党HP 2008年6月28日(土)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北朝鮮の核申告をどうみるか?ー朝鮮半島 非核化へ一歩ー

2008-06-29 01:09:24 | 国際政治
どうみる北朝鮮の核申告
朝鮮半島 非核化へ一歩

--------------------------------------------------------------------------------

 「六カ国協議が打ち出した段階的プロセスの重要なステップだ」。二十六日、北朝鮮の核計画申告を受けて、テロ支援国指定の解除を米議会に通告したブッシュ大統領は、声明の中でこう述べました。六カ国協議の合意に基づき、非核化への新たな一歩を踏み出した北朝鮮核問題。その解決は、朝鮮半島と北東アジアの新たな平和の秩序につながるものです。

--------------------------------------------------------------------------------

 米朝がそれぞれ実施した核申告とテロ支援国指定の解除通告は、六カ国協議で合意した「第二段階」で残されていた核心部分での前進といえます。申告の範囲と内容をめぐる米朝の協議を踏まえ、北朝鮮がこれまで行ってきた核開発の実態を把握し、検証していく土台が築かれたからです。

 六カ国協議が始まった二〇〇三年、米ブッシュ政権は北朝鮮を「悪の枢軸」と非難、先制攻撃も辞さない姿勢を見せていました。北朝鮮は、これを「宣戦布告」と受け止め、核武装を推進しました。世界一の軍事力を誇示し、北朝鮮に核放棄を求める米国と、“核カード”で米国に「敵対政策」の放棄を求める北朝鮮の対立は、朝鮮半島と北東アジアの緊張を高めました。北朝鮮の核開発は、日本の安全を直接脅かすものでした。

6カ国協議「共同声明」
 それに転機をもたらしたのが、〇五年九月の六カ国協議の共同声明の採択でした。共同声明は、北朝鮮核問題を「平和的方法」で解決する原則を改めて確認。北朝鮮は、すべての核兵器、核計画を放棄し、核不拡散条約(NPT)に復帰することを約束しました。六カ国はそれに対応した措置を「行動対行動の原則」に基づき、段階的にとっていくことで合意しました。

 協議に参加した六カ国が、国連憲章と国際規範を順守し、朝鮮戦争(一九五〇―五三年)以来、対立を続けた米朝両国が、相互の主権尊重、平和共存を確認したことも、その後の交渉を進める上で重要な基礎となりました。

 〇六年の北朝鮮の長距離ミサイル発射と核実験は、新たな緊張をもたらしましたが、国際社会が、六カ国協議の枠組みでの解決を一致して要求。米国は、米朝二国間協議を拒否していたそれまでの政策を転換しました。米朝協議を受けて北朝鮮は六カ国協議に復帰し、核放棄に向けた「初期段階」(〇七年二月合意)、「第二段階」(〇七年十月合意)の措置がとられることになりました。

 米朝両国が実施した措置は、核問題の背景にある、六十年近くにわたり続いた米朝対立の解消、清算の第一歩という点でも大きな意味を持っています。

 米国が、テロ支援国指定の解除通告とあわせて解除を表明した対敵国通商法は、朝鮮戦争の時期から続くもので、北朝鮮の国際経済システムへの参加を阻む障害となってきました。北朝鮮が「敵対政策」の象徴として最も強硬に主張してきた要求の一つでした。

核兵器放棄次の段階に
 六カ国協議は今後、北朝鮮の核申告の内容を検証。二〇〇五年の共同声明で約束された「すべての核兵器と既存の核計画の放棄」に向けた新たな段階の議論に入ります。

 共同声明は、朝鮮半島の非核化とあわせ、北東アジア地域の緊張要因となってきた米朝、日朝関係の正常化を各国の約束として確認。国際法上は今も続く朝鮮戦争を終わらせ、朝鮮半島に恒久的な平和体制を築く目標を掲げています。

 地域の対立要因を取り除いた先にあるのが、六カ国協議を通じて、紛争を平和的に解決し、協力を増進する「北東アジアの永続的な平和と安定」(〇五年九月の共同声明)の地域安全保障体制です。長く続く対立構造を終えんさせ、新しい秩序をこの地域に確立できるかどうかは、米朝両国をはじめとした六カ国協議参加国すべての努力にかかっています。(中村圭吾)


--------------------------------------------------------------------------------

拉致解決の促進にも
 日朝間の懸案である拉致問題の解決も、核問題を含む北朝鮮にかかわる諸問題に包括的に対処するなかで前進をはかることができます。

 国交がないままの日朝関係を前進させる大きな契機となったのが、二〇〇二年九月の日朝首脳会談と、そこで合意された日朝平壌宣言でした。それに先立つ日朝外務省局長級協議(同年八月)で、「日朝間の諸懸案の解決を包括的に促進するという方式」(共同発表文)が確認されたことが、首脳会談の開催に結びつきました。

 首脳会談で北朝鮮側は、不十分ながらも拉致の事実を初めて認め、一定の謝罪をしたのです。

 〇五年九月の北朝鮮核問題に関する第四回六カ国協議の共同声明は、米朝国交正常化問題と並び日朝国交正常化問題を明記。両国が「平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として」国交正常化の措置を取ると約束したと規定しました。

 これにより、平壌宣言の方向は、二国間の合意にとどまらず、六カ国協議の合意という国際的な裏づけを得ることになりました。

 昨年二月の第五回六カ国協議では、朝鮮半島非核化や米朝国交正常化などとともに日朝国交正常化の作業部会がつくられました。同会合の合意文書では、「ある作業部会における作業の進捗(しんちょく)は、他の作業部会における作業の進捗に影響を及ぼしてはならない」ことが明記され、「包括的解決」路線がいっそう具体化されました。

 今年六月十一―十二日には日朝実務レベル協議が北京で開かれ、外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長が出席しました。同氏は、「六カ国の中で日朝がまったく動いていないという図式は、六カ国(協議)全体を進めるということでもマイナスだ。日朝が進めば六カ国は進む。日朝が進まなければ六カ国は停滞する」と北朝鮮側に説明し行動を促したと述べています(十七日の日朝国交正常化推進議連総会での発言)。

 その結果、北朝鮮側は、「拉致問題は解決済み」というこれまでの態度を変更し、その再調査を約束しました。

 このような経過は、「核兵器問題が道理ある形で解決されるなら、日朝間の懸案である拉致問題の解決についても、その進展をうながす新しい条件となりうる」(二十六日の日本共産党の志位和夫委員長の談話)ことを示しています。(坂口明)

(出所:日本共産党HP 2008年6月28日(土)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北朝鮮問題-日本共産党は,どのような態度をとり、提案をしてきたかー

2008-06-29 01:07:30 | 国際政治
北朝鮮問題
日本共産党がとってきた態度は

--------------------------------------------------------------------------------

 北朝鮮の核計画の申告とこれを受けての米国の「テロ支援国家」指定解除の動きを受け、北朝鮮問題は新たな局面を迎えました。日本共産党は、北朝鮮問題の道理ある解決に向け、この間どのような態度をとり、提案をしてきたのでしょうか。

--------------------------------------------------------------------------------

問題の包括的解決を支持
 一九九九年、日本共産党の不破哲三委員長(当時)は国会の代表質問で、北朝鮮と日米両国との間で軍事的対応がエスカレートしているとし、その悪循環を断ち切るためにも、「北朝鮮との正式の対話と交渉ルートを確立する」よう提案しました(一月の衆院本会議)。さらに、交渉ルートを開く中で拉致問題を含め日朝間の諸懸案を解決すべきだと主張しました。(十一月の衆院本会議)

 〇二年九月には日朝首脳会談で日朝平壌宣言が署名され、核、拉致、過去の清算などの諸懸案を包括的に解決し、国交を正常化することが確認されました。日本共産党はこれを強く支持し、その後、一貫して宣言の立場で問題の解決にあたるよう主張してきました。

 北朝鮮の核兵器開発の発覚を受け、〇三年八月には六カ国協議がスタートし、〇五年九月に共同声明を採択します。

 共同声明は、北朝鮮が核兵器と既存の核計画を放棄することと、米国が朝鮮半島に核兵器を有せず、北朝鮮への攻撃・侵略の意思のないことを確認しました。

 これについて日本共産党の志位和夫委員長は談話を発表し、「朝鮮半島の非核化をはじめとする諸問題の平和的解決への重要な前進となった」と高く評価しました。

 また、共同声明が日朝国交正常化の問題を取り上げたことについて、日朝平壌宣言の方向が「日本と北朝鮮の二国間の合意にとどまらず、六カ国協議の合意という国際的な裏づけを得ることになった」と指摘。この確認に基づき、拉致問題の速やかな解決を含めた、諸懸案の包括的解決のための政治的対話を呼びかけました。

 〇六年十月、北朝鮮が共同声明に反して核実験を強行した際には、六カ国協議や日朝平壌宣言など国際取り決めを蹂躙(じゅうりん)する暴挙だとして厳しく抗議。同時に、(1)国際社会が一致協力して対応する(2)問題の平和的・外交的解決という立場を堅持して臨む―という二つの原則を強調しました。(志位委員長の談話)

“核問題での弱点ただせ”
 国連安保理制裁決議の全会一致での採択など国際社会が一致結束した対応と平和的・外交的な解決を追求した結果、〇七年二月に北朝鮮は六カ国協議に復帰。〇五年九月の共同声明を実施するための「初期段階の措置」で合意します。さらに〇七年十月には「第二段階の措置」が合意されます。

 これを受け、志位委員長は衆院本会議代表質問(同十月)で「北朝鮮の核問題は、日本にとって一番切実な問題の一つなのに、これまで日本政府が核問題では熱意がないと世界の少なくない国からみられてきたのは残念」と述べ、そうした「弱点」を「大胆にたださなければならない」と提起しました。

 同時に、拉致問題と核問題の関係については「いま進行しているプロセスで核問題の道理ある解決がはかられるならば、拉致問題の早期解決の新しい条件が開かれることになるでしょう」と述べていました。(榎本好孝)

(出所:日本共産党HP 2008年6月28日(土)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする