未来を信じ、未来に生きる。

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日本共産党・志位委員長代表質問への民主党・鳩山首相の答弁 (要旨)

2009-10-30 19:18:03 | 国内政治
 志位委員長代表質問への鳩山首相の答弁 (要旨)

 志位和夫委員長の代表質問(29日)に対する鳩山由紀夫首相の答弁(要旨)は次のとおりです。

【雇用】

 改正雇用保険法により、とくに再就職が困難な方に給付日数が60日分延長され、本年4月から8月までで約24万人に延長が行われています。今後ともこうした延長給付の活用などによって雇用のセーフティーネットを整備し、国民の安心感を高めてまいりたい。

 求職活動中の生活と住居の支援について、これまで雇用保険を受給できない失業者に対する第二のセーフティーネットとして、生活支援の融資や職業訓練期間中の生活保障、住宅手当の支給などを実施して、さらに今般決定した緊急雇用対策のなかで、住居を失った生活困窮者の方に住宅を確保する取り組みを行うということになっています。きめ細やかな対策をそこで展開をいたすことにしており、仕事や住居を失った方の再就職をこれによって支援をしてまいります。

 雇用調整助成金については、緊急雇用対策においてさらなる支給要件の緩和を行ったところです。今後の経済・雇用情勢の推移を踏まえて、雇用調整助成金による雇用の維持の支援に機動的に取り組んでまいります。

 雇用、生活の安定を図るため、正規雇用を希望する非正規の労働者の方々に対して、正規雇用に向けて積極的に支援をすることは極めて重要だと認識しています。非正規労働者に対するワンストップによる就業支援、事業主への助成制度の活用などによって非正規労働者の正社員としての就職を支援し、企業に対しても安易な雇用などが行われないよう、労働関係法令順守の指導をこれから徹底をしてまいりたい。

【労働者派遣法改正】

 派遣切りに象徴される派遣労働者をめぐる雇用環境を含めて、非正規の雇用全体の労働条件の改善への取り組みは、内閣の最重要課題の一つだと認識しています。一人ひとりが安全、安心、生きがいを実感しながら働くことのできる社会の実現に向けて、緊急雇用対策に加え、労働者派遣法の改正に向けて取り組みをすでに開始をしています。

 雇用にかかわる行き過ぎた規制緩和を適正化し、労働者の生活の安定を図ることは重要です。貧困の原因は、いろいろあると思いますが、労働法制の規制緩和もあり、派遣労働者が増え、今般の経済危機においていわゆる派遣切りの対象になったことも事実だと理解しています。3党連立合意を踏まえ、労働者の保護を強化する方向での労働法制の整備をしていく所存です。

 労働法制のなかでの労働者派遣法の改正内容ですが、民主党マニフェストおよび3党連立合意には、登録型派遣の原則禁止、製造業派遣の原則禁止、違法派遣の場合の直接雇用みなし制度の創設などが盛り込まれていまして、労働者派遣法の具体的改正内容については、いま申し上げたことを踏まえて、通常国会への法案提出を目指し、厚生労働省の労働政策審議会で検討をスタートをしているところです。

【後期高齢者医療】

 年齢で人間を差別をする、こういった後期高齢者医療制度が大変けしからん制度であることは、私どももよく理解をしており、その廃止を求めて私どもは今般選挙でたたかってきたこともご案内の通りです。

 後期高齢者医療制度を廃止をすることは事実ですが、廃止後の制度のあり方について、高齢者はもとより、市町村をはじめ関係者の方々の理解を得ることが必要であることは論をまちません。

 老人保健制度にいったん戻すことについて、たびたび見直しを行うということになり、高齢者の方々に不安や、あるいは混乱を生じてはいけない、こんな思いもございまして、またシステムの改修や被保険者の情報の移管などに約2年かかるということであり、また多額の経費も必要になるということもあり、新たな制度に直接移行するほうが合理的であると判断をいたしたところです。老人保健制度に戻すことよりも、幅広い国民の納得と信頼が得られる新たな制度を創設をしたい。これは決して先送りではありません。

【農業】

 農産物の平均関税率が12%であるということは理解しています。ただ一方では、わが国の農業にとって重要な品目については輸入により国内の農業に大変悪影響を及ぼす懸念がありますので、高い関税を維持しているところです。

 国際化の流れのなかで貿易の自由化あるいは国内の農業への影響との両方をにらむ必要があるということで適切な関税というものを設定していくことが求められています。

 米国とのFTAの交渉促進を含めた国際交渉について、貿易投資を自由化する、その観点から当然、推進をしなければならないことだと理解しています。しかし一方で、食の安全・安心、安定供給、食料自給率の向上、国内農業、農村地域の振興などを考えなければなりません。決して損なうことがあってはならない、そのように認識しております。

 戸別所得補償制度について、関税撤廃とセットではないかとのご指摘ですが、3党連立合意や民主党マニフェストにおいて、戸別所得補償制度は、決して関税の撤廃が前提だということではないことをご承知おきいただければと思います。

【財源問題】

 高速道路の無料化と福祉にかかわる質問でした。高速道路の無料化も流通の活性化を促すという意味では、地域において大きな経済効果をもたらすものだと理解をいたし、さらには家計を直接応援する施策でもあり、子ども手当や高校の実質無償化などと合わせて、国民の暮らしを守る政策として大変意味のあるものだと理解しています。

 子ども手当の財源ですが、子ども手当を創設する際、所得税の控除の見直しにつきましては、政府税調を立ち上げたところでして、そこで本格的に検討を行って年末に向けて結論を出します。今後予算編成の過程を通じて、財源の確保、方策を含めて政府全体で制度の具体的な内容を決めてまいります。

 総合的な子育て支援についてのご質問でございますが、社会全体がまさに支え合い、助け合って負担をするという発想が非常に大事だと思っております。子ども手当の創設に加えて、保育所の増設など、待機児童の解消に向けて努力をいたしますし、また、多様な保育サービスの量の確保もしてまいらなければなりません。仕事と子育ての両立のための支援をいたすなど、総合的な子育て支援策の充実に努めることをお約束します。

 在日米軍の駐留経費は、わが国の負担をより効率的で効果的なものにするために、包括的な見直しが必要だと認識しています。今後とも在日米軍駐留経費の負担については、透明性を確保しながら、包括的な見直しに取り組んで、国民の理解を得てまいりたい。

 現行の金融所得課税は、分離課税のもとで基本的に20%の比例税率が適用され、このうち証券税制について、ご案内のとおり現在税率を10%に軽減しています。景気がかなり厳しい、経済金融環境が非常に厳しい状況のなかで、優遇措置を講じているわけで、あくまでも時限的な措置です。証券税制を含め個人所得課税のあり方については今後、政府税調でしっかりと議論してまいることをお約束します。

【沖縄の基地問題】

 アジアの太平洋地域には、いまだに不安定な要因があると理解をしています。こういうなかで沖縄を含む在日米軍の抑止力というものも、まだわが国の安全保障において必要なものだと理解をするべきだと考えています。在日米軍の再編について、こういった安全保障上の観点も踏まえて、過去の日米合意というものもある。この経緯を慎重に、検証をする必要がある。検証を行いながら、沖縄の方々の思いをしっかりと受け止めていきたい。そして、日米間で真剣にこの問題に取り組んでいきたいと思っております。この件に関して、現在、岡田外務大臣と北沢防衛大臣のもとで、真剣な検証を行っていただいているところです。最終的には私自身が決めることで、対米従属政治だとはまったく思っておらないことを付け加えさせていただきます。

(出所:日本共産党HP 2009年10月30日(金)「しんぶん赤旗」)
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日本共産党の志位和夫委員長が29日の衆院本会議でおこなった代表質問

2009-10-30 19:13:54 | 国内政治
新政権 見えない「転換」
志位委員長代表質問
暮らし・平和 “要”の問題迫る

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 国民の暮らしから安心と希望を奪った旧来の政治からの転換をはかることができるかどうかが、鳩山新政権に問われている――。29日の衆院本会議で日本共産党の志位和夫委員長はこう述べて、「いま強く転換が求められている肝心要の問題」について首相の見解をただしました。首相から、自公政治からの転換の中身は示されたのか――。

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雇用 正社員が当然の社会に
首相 通常国会に派遣法改正案

 自公政治のもとで進んだ「人間らしい雇用の破壊」をどうただすかは、「転換の要」中の「要」です。志位氏はこの問題で、「二つの喫緊の課題」をあげました。

 一つは、失業者とその家族をホームレスにしない取り組みです。

 志位氏は、(1)失業給付の緊急延長(2)求職活動中で困窮しているすべての失業者への生活・住居支援の拡充(3)中小企業への雇用調整助成金の抜本的拡充―の三つの対策を提案し、政府の決断を迫りました。

 二つ目は、大企業の横暴を抑え、人間らしい労働のルールを再構築することです。

 エコカー減税による増産に非正規雇用の復活で対応するトヨタの例を挙げ、「大企業の横暴勝手を許していいでしょうか」と追及。「『雇用は正社員が当たり前の社会』をめざすべきだ」と述べ、労働者派遣法の抜本改正を求めました。

 鳩山首相は「企業が安易な雇用など行わないよう、労働関係法令順守の指導を徹底していく」と前向きに答弁。派遣法の改正でも、「(所信表明では)逐一触れていないが重要性に関しては十分に認識している」と述べ、来年の通常国会への法案提出を初めて言明しました。

沖縄新基地 一喝され迷走 これで対等か
首相 米軍の抑止力も必要

 外交では、「アメリカとどう向き合うのか」が、旧来政治からの「転換の要」です。その重大な試金石が、日米間の不平等の象徴である沖縄の米軍普天間基地問題にあると指摘し、沖縄県民の思いを受けとめ、従属外交を転換した対米交渉を強く求めました。

 鳩山首相は、総選挙中の党首討論で、普天間基地「移設」について「県外移設か国外移設」と明言しました。ところが、20、21両日に来日したゲーツ米国防長官が、日米合意をたてに同県名護市辺野古への新基地建設を強圧的態度で求めて以来、公約を覆す発言が閣僚から相次いでいます。

 「米国に一喝されたら、態度を変え公約を覆す。こんなことでどうして対等の日米関係といえるのか」―志位氏は、自公政権時と変わらない対米従属の姿勢をただしました。

 辺野古への基地移設方針が持ち上がって13年。各種世論調査では基地建設反対が圧倒的です。

 「新基地建設のための杭(くい)を一本も打たせていない事実にこそ、沖縄県民の意思は示されている」―こう力説した志位氏は、「危険きわまりない普天間基地の即時閉鎖、県内移設・新基地建設は許さないという県民の思いをしっかりと受けとめ、本腰を入れた対米交渉を行え」と迫りました。

 首相は、「沖縄の思いをしっかり受けとめる」「日米間で真剣に取り組んでいく」と答えながらも、「在日米軍の抑止力も安全保障上必要だ」「過去の日米合意もある」と指摘し、「真剣な検証を行っている。最終的には私自身が決める」と述べるだけ。「対米従属政治とはまったく思っていない」と弁明しました。

後期医療 延命は痛み増すだけ
首相 「廃止」いいつつ先送り

 社会保障での政治変革の「要」は、自公政権がすすめた削減路線を拡充に転換することです。

 志位氏は削減路線の「最悪の象徴」として、世界に例のない年齢での差別を持ち込んだ後期高齢者医療制度をとりあげ、鳩山首相が「新しい制度」ができるまでは廃止しないという「先送り」方針なのかとただしました。

 昨年5月に4野党(民主・共産・社民・国民新)が共同提出した廃止法案は、制度をただちに廃止して老人保健制度に戻すとし、民主党の答弁者もそれが「非常に重要」としていたのです。

 ところが鳩山首相は、「まさに年齢で人間を差別する、大変けしからん制度」と述べて「廃止」を明言しつつ、「たびたび見直して混乱を生じてはいけない」などとして、老人保健制度に戻すことは拒否。「新制度」への移行を「先送りではない」と弁解しました。

 しかし、志位氏が指摘したように、「延命させればさせるだけ『差別への怒り』を広げ、2年ごとの保険料引き上げという痛みを増す」のが後期高齢者医療制度。「多くの高齢者から『とても4年も待てない』と強い怒りの声が上がっている」のです。実際、厚労省は来年4月には保険料が全国平均で10・4%上がると試算しています。

 「この制度をすみやかに廃止することこそ、混乱の原因を大本から取り除く解決策」(志位氏)です。

財源 「思いやり」予算メスを
首相 「包括的見直し」言及したが…

 「いったい財源は大丈夫か」―。志位氏は国民に広がる不安の声を取り上げて、(1)税金の使い道の優先順位(2)財源を庶民増税に求めるべきでない(3)軍事費、大企業・大資産家優遇をひきつづき「聖域」とするのか―の3点を質問。「聖域」にメスを入れる問題で、米軍への「思いやり」予算と証券優遇税制を取り上げました。

 米軍への「思いやり予算」は、概算要求では、自公政権時代と同じ水準の1919億円。志位氏は「日米地位協定上も支払う義務のない『思いやり予算』に切り込む意思はあるのか」と迫りました。

 鳩山首相は「包括的な見直しが必要」と初めて言及しましたが、概算要求額についてはなにもふれませんでした。

 また、証券優遇税制の問題では、現在日本では株取引などで得た所得に対する税率はわずか10%。アメリカの25%やフランスの30%と比較して、格段の低さです。

 志位氏は「汗水たらして働いて得た所得より、濡(ぬ)れ手で粟(あわ)の不労所得のほうが税金が軽いというのは異常」と追及。鳩山首相は「時限的措置」と述べたものの、「政府税調でしっかりと議論したい」とするだけでした。

 財政問題で新政権の弱点が浮かび上がりました。

農業 歯止めない自由化反対
首相 FTAなど国際交渉を推進

 志位氏は、「食料自給率が4割にまで落ち込んだ日本農業をどう再生させるか、日本国民の存亡がかかった大問題」とし、歯止めのない輸入自由化からの転換が「要の問題だ」と強調しました。

 EU(欧州連合)20%、ブラジル35%、韓国62%…。志位氏は、他国の農産物の平均関税率もあげ日本の関税率12%が異常に低いという認識があるかと追及。民主党がマニフェストに明記した自由貿易協定(FTA)の「促進」が不安と怒りをよびおこしているとして、「これ以上の輸入自由化、関税撤廃を絶対に行うべきではない」と力説しました。

 志位氏は、政府の「関税撤廃とセットの戸別所得補償制度では、穴のあいたバケツに水を注ぐようなもの」と批判。「農産物の価格保障と所得補償を組み合わせ、再生産が可能な農家収入を保障することと、関税など国境措置の維持・強化を進めることが必要だ」と提起しました。

 これに対し鳩山首相は「戸別所得補償制度は、決して関税の撤廃が前提ではない」と述べながら、「FTAやWTO(世界貿易機関)などの国際交渉の推進」と「食料自給率の向上、農業、農村地域の振興を損なわない」と両立不可能な立場を表明しました。

志位委員長の代表質問
衆院本会議

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 日本共産党の志位和夫委員長が29日の衆院本会議でおこなった代表質問は次の通りです。

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 私は、日本共産党を代表して鳩山総理に質問します。

 さきの総選挙で、国民は、自民・公明政権に退場の審判をくだしました。私たちは、この結果を、日本の政治にとって前向きの大きな一歩であり、新しい歴史のページを開くものとして、歓迎するものです。同時に、民主党を中心とする新政権に対しては、「政治を変えてほしい」という期待とともに、さまざまな不安や批判の声もおこっています。わが党は、「建設的野党」の立場に立って、国民の期待にこたえるとともに、不安や批判を代弁して問題点をただし、日本の政治をさらに前にすすめるために力をつくす決意であります。

暮らし――いま強く転換が求められている要の問題を問う

 国民が自公政権にきびしい審判をくだした要因は、何よりも国民の暮らしから安心と希望を奪ったことにありました。鳩山新政権が、この旧来の政治の害悪をただし、そこからの転換をはかることができるかどうかが問われています。ところが、総理の所信表明演説では、「政治を変える」という言葉は繰り返されましたが、国民の暮らしにかかわって、いま強く転換が求められている肝心要の問題について、具体的方策は語られませんでした。そこで以下、具体的に、総理の見解をただします。

雇用――失業者支援、労働法制の規制緩和の抜本的な転換を

 人間らしい雇用の破壊は、旧来の政治がつくりだした、もっとも大きな害悪の一つです。私は、新政権が、つぎの二つの喫緊の課題に真正面から取り組むことができるかどうか――ここに旧来の政治からの転換の要があると考えます。

 第一は、失業者とその家族をホームレスにしないための本腰のとりくみです。いま、失業率は史上最悪の水準となり、失業給付が切れたり、雇用保険に未加入なために、生活の糧を奪われ、ホームレスになってしまう失業者が続出しています。ところが政府がさきに策定した緊急雇用対策は、自公政権の対策の延長線上にとどまるもので、これでは昨年末の「年越し派遣村」にあらわれたような事態の再来を防ぐことは到底できません。私は、旧来の延長線上の対策から抜け出して、つぎの三つの対策を実行することを緊急に求めるものです。

 ――一つは、失業給付の緊急延長です。現行の90日間の失業給付では多くの失業者は再就職を果たせません。緊急措置として給付期間を半年以上に延長すべきです。

 ――二つ目に、失業者の7割以上が、失業給付が切れたり、もともと対象外で、生活の糧が奪われた状態です。求職活動中で生活に困窮しているすべての失業者に、生活と住居の支援をおこなう制度への抜本拡充が必要です。

 ――三つ目は、中小企業への雇用調整助成金の抜本的な拡充です。雇用の7割を支える中小企業での雇用維持のための経営努力は限界を超えています。給付期間の延長、助成額の引き上げは待ったなしの課題であります。

 これらの緊急対策は、どれも法律の改正を必要としない、政府の決断ですぐにでもとりくめるものです。総理の答弁を求めます。

 第二は、大企業の横暴を抑え、人間らしい労働のルールを再構築することです。

 いまトヨタをはじめ自動車、電機などの大企業で、期間工や派遣など非正規雇用を復活させる動きが広がっています。ところが契約雇用期間は、4カ月から6カ月という極めて短期で、それが切れたら再び「非正規切り」をおこなうことを、あらかじめ予定しているのです。エコカー減税などでの増産の対応を「非正規」でおこない、減税が切れたら再び「非正規切り」。こんな大企業の横暴勝手を放置していいでしょうか。増産で人員が必要なら、正社員をこそ増やすべきではありませんか。総理、大企業に雇用への社会的責任を果たさせるために、政府として強力な指導をおこなうべきではありませんか。

 同時に、労働法制の抜本的転換が必要です。総理は、所信表明演説で、「働くことの尊さ」について力説されましたが、それを大本から奪っているのが派遣労働に代表される「使い捨て」労働です。ところが総理は、演説で、労働者派遣法の改正について、一言ものべられませんでした。これは一体どういうわけでしょう。

 政府は、貧困の指標の一つである「相対的貧困率」を初めて正式に公表し、1997年以降、貧困が拡大していることを明らかにしました。総理は、日本で貧困が拡大している最大の原因が、派遣労働の「自由化」を中心にした労働法制の規制緩和であり、その抜本的な転換が必要だという認識をお持ちではないのでしょうか。

 労働者派遣法は、究極の不安定雇用である登録型派遣の原則禁止、製造業への派遣の禁止、違法行為があった場合には派遣先企業に直接雇用義務を課す「みなし雇用」の導入など、抜本改正に踏み出すべきです。「雇用は正社員が当たり前の社会」をめざすべきだと考えますが、総理の見解をうかがいます。

社会保障――後期高齢者医療制度は「先送り」でなくすみやかな撤廃を求める

 社会保障を削減から拡充に転換することも、大きな要をなす問題です。とりわけ、世界に例のない「年齢による差別」を持ち込んだ後期高齢者医療制度は、社会保障削減路線がもたらした最悪の象徴です。この制度について、総理は、所信表明演説で、「廃止に向けて新たな制度の検討」をすすめるとのべました。長妻厚生労働大臣は、「廃止にむけて元に戻すのではなく、4年以内に、そのまま新しい制度に移行していこうという考え方をもっている」と発言しています。総理、「新しい制度」ができるまでは廃止しないという「先送り」が新政権の方針なのですか。多くの高齢者から「とても4年も待てない」と、強い怒りの声が上がっていることをどう受け止めますか。

 昨年の国会で当時の野党4党が後期高齢者医療制度の廃止法案を共同提案したときには、民主党の提案者も、最大の問題点は「差別への怒り」だとして、「いったん元に戻すことが非常に重要」、「戻したうえで、旧老人保健法制度の問題点を是正する」と国会で答弁していたではありませんか。「まず廃止」の方針を転換した理由は何か。答弁を求めます。

 一部に「老人保健制度に戻したら混乱する」という議論がありますが、去年3月までの老人保健制度は、高齢者を国保や健保に加入させたまま、現役世代よりも窓口負担を軽減する財源調整の仕組みで、どこにも「混乱」などなかったではありませんか。大混乱をもたらした最大の原因は、「年齢による差別」という制度を持ち込んだことにあります。すみやかにこの制度を廃止することこそ、混乱の原因を大本から取り除く解決策ではありませんか。

 後期高齢者医療制度は、延命させればさせるだけ、「差別への怒り」を広げ、2年ごとの保険料引き上げという痛みを増す制度です。わが党は、後期高齢者医療制度は、「先送り」でなく、ただちに廃止し、老人保健制度に戻す。そのうえで75歳以上の医療費無料化、国保への国庫負担の増額などの改善をはかるべきだと考えます。総理の答弁を求めます。

日本農業の再生――歯止めない輸入自由化路線の転換を求める

 自民党農政のもとで、食料自給率が4割に落ち込んだ日本農業をどう再生させるかも、日本国民の存亡がかかった大問題です。

 私は、日本農業をここまで落ち込ませた最大の原因の一つは、歯止めのない輸入自由化をすすめてきたことにあり、ここに旧来の農政からの転換が求められる要の問題があると考えます。農産物の平均関税率は、EUが20%、アルゼンチンが33%、ブラジルが35%、メキシコが43%、韓国が62%であるのに比べて、日本はわずか12%まで下がっています。主要国の中で、すでに関税が最も低い国の一つが日本なのです。総理は、この認識をお持ちでしょうか。

 この点で、民主党が、「マニフェスト」で、「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易、投資の自由化をすすめる」と明記したことが、広い農業関係者、国民に不安と怒りをよびおこしています。米国の関係者は「農業とコメを含めないFTAはありえない」と明言しており、そうなれば農業とりわけコメに壊滅的打撃が与えられます。財界団体で構成された日米経済協議会が委託した試算によると、日米FTAによる関税撤廃で、日本の農業生産は激減し、コメの生産は82%も減少してしまいます。これ以上の輸入自由化、関税撤廃は絶対におこなうべきではありません。

 総理は、所信表明演説で、「戸別所得補償制度の創設」を表明されましたが、関税撤廃とセットでは、穴のあいたバケツに水を注ぐようなもので、何兆円という財源を投入しても農家の経営は守れないでしょう。日本農業の再生のためには、農産物の価格保障と所得補償を組み合わせて、再生産が可能な農家収入を保障することと、関税など国境措置の維持・強化をはかることを、一体にすすめることがどうしても必要です。総理の答弁を求めます。

財源問題――国民が不安をいだいている三つの問題点を問う

 つぎに来年度予算案の編成にかかわって質問いたします。さきに発表された来年度予算案の概算要求は、95兆円を超える史上最大の規模となっています。もちろんこのなかには、国民要求にかなった内容も盛られています。

 同時に、「いったい財源は大丈夫なのか」という大きな不安が、国民のなかでひろがっています。来年度予算案がどうなるかは、これからの予算編成作業にかかっていますが、私は、現時点で根本的見直しを求めたい問題点を、3点に絞って提起するものです。

税金の使い道の優先順位――高速道路より福祉を優先すべき

 第一は、税金の使い道の優先順位という問題です。概算要求には高速道路の無料化予算が盛り込まれていますが、はたしてこれが最優先の仕事でしょうか。温暖化対策とのかかわりでも慎重な検討が求められるのではないでしょうか。メディアの世論調査でも、反対が賛成を上回り、早急な実施を求める声は少数ではありませんか。高速道路無料化に要する1兆3000億円があれば、高齢者と子どもの医療費を国の制度として無料にすることができます。私は、国民の大切な税金は、高速道路よりも福祉にこそ優先的に使うべきだと考えますが、総理の見解を求めます。

庶民増税を財源にすべきではない――扶養控除、配偶者控除の廃止に反対する

 第二は、財源を庶民増税に求めるべきではないということです。子どもへの手当の拡充は当然ですが、その財源として、扶養控除と配偶者控除の廃止を抱き合わせることに、私たちはくみするわけにはいきません。私たちのもとには、子どもを持ちたくとも持てないご家庭、健康上の理由で働きに出たくとも出られないご家庭などから、「立場の弱い、少数者を切りすてる心ないやり方ではないか」という強い不安と批判がたくさん寄せられています。庶民の一部を犠牲にして、一部に回すというやり方は、けっして国民の理解を得ることはできないのではないでしょうか。こうしたやり方では、子ども手当が給付されたご家庭も、心から喜べないのではないでしょうか。さらに、人的控除の廃止には、生計費非課税という税制の民主主義の大原則を侵すという大問題がありますが、どうお考えでしょうか。

 くわえて、子育て支援というなら、「手当」の増額だけでなく、認可保育園の大幅拡充で待機児童をゼロにする、「子育て」と仕事が両立できる雇用のルールをつくるなど、総合的な支援策が必要であります。以上についての総理の見解を求めます。

二つの分野――軍事費、大企業・大資産家優遇をひきつづき「聖域」とするのか

 第三は、旧来の政治が「聖域」としてきた軍事費と大企業・大資産家優遇という二つの分野にメスを入れることです。概算要求を見る限りでは、この分野はひきつづき「聖域」とされています。「聖域」に切り込む意思があるのかどうか。端的に2点ただします。

 一つ。米軍への「思いやり予算」は、自公政権が8月におこなった概算要求額とまったく同額のまま概算要求に盛り込まれています。日米地位協定上も支払う義務のない「思いやり予算」に切り込む意思はあるのかどうか。答弁を求めます。

 二つ。大資産家むけの証券優遇税制も継続されようとしています。株取引などで得た所得に対する税率は、アメリカで25%、フランスで30%にたいして、日本はわずか10%です。汗水たらして働いて得た所得より、濡(ぬ)れ手で粟(あわ)の不労所得の方が、税金が軽いというのは異常だと考えませんか。少なくとも本則の20%に戻すべきだと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

 二つの分野を「聖域」とせず本格的なメスを入れれば、消費税増税に頼らなくても、暮らしのための財源はつくれます。日本共産党は、この立場から将来にわたって消費税増税に反対をつらぬくものであります。

沖縄基地問題――対米従属外交からの転換を強く求める

 アメリカとどう向き合うか。これも旧来の政治からの大きな転換が求められている要の問題です。総理は、所信表明演説で、「対等の日米関係」ということを力説されましたが、その最初の重大な試金石となるのが、沖縄の普天間基地の問題です。

 総理は、総選挙の最中の党首討論で、普天間基地は「県外移設か、国外移設」と明言してきました。ところが、この間、米国のゲーツ国防長官が来日し、名護市・辺野古への新基地建設を強圧的態度で求めていらい、この公約を覆す発言が閣僚から相次いでいます。

 岡田外務大臣は、それまでの態度をひるがえして、「県外は事実上選択肢として考えられない」と発言しました。北沢防衛大臣は、辺野古への新基地建設について、基地機能の一部をグアムや岩国に移すから公約違反ではないとして容認する驚くべき詭弁(きべん)をのべました。これらの発言に大きな怒りが広がっています。

 総理、米国に一喝されたら、態度を変え、公約を覆す。こんなことでどうして「対等の日米関係」といえますか。これでは自公政権の対米従属政治と変わらないではありませんか。

 総理は、「沖縄県民の意思を尊重する」と繰り返しておられますが、県民の意思はとうに明りょうとなっています。辺野古への基地移設の方針がもちあがっていらい13年。どの世論調査でも県民の圧倒的多数は新基地建設に反対です。だいたい13年間にわたって新基地建設のための杭(くい)を一本も打たせてこなかったという、この事実にこそ、沖縄県民の意思は示されているではありませんか。それを尊重するというなら、基地の県内たらい回しなどありえない選択ではありませんか。

 沖縄の基地問題を解決しようとすれば、アメリカの顔色をうかがったり、理不尽な圧力に屈するという旧来の対米従属外交を転換し、「基地のない沖縄」を願う県民の思いを、正面から米国にぶつける対米交渉をおこなうことがどうしても必要です。

 危険極まりない普天間基地は即時閉鎖する、県内移設は許さない、新基地建設は許さない。これこそ沖縄県民の断固たる意思です。私は、総理に、この思いをしっかりと受け止め、本腰を入れた対米交渉をおこなうことを強く求めるものであります。

 総理の明確な答弁を求めて、質問を終わります。

(出所:日本共産党HP  2009年10月30日(金)「しんぶん赤旗」)
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生活保護ー「子ども手当」が収入とみなされると、生活保護の収入基準を超え、保護を打ち切り?-

2009-10-29 02:35:33 | 国内政治
子ども手当
生活保護世帯どうなる
高橋議員と全生連がただす

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 「子ども手当が収入とみなされると、生活保護の収入基準を超え、保護を打ち切られるのでは」「手当をもらうと、その分保護費が減らされないか」―こうした不安の声が生活保護世帯に広がっています。日本共産党の高橋ちづ子衆院議員は23日、全国生活と健康を守る会連合会(全生連)の前田美津恵事務局次長とともに、厚生労働省の見解をただしました。

 民主党が昨年4月に国会に提出した子ども手当法案では、手当を生活保護受給者の収入としては認定しないとされています。しかし、厚労省の担当者は「生活保護の補足性の原理(資産や能力などあらゆるものを活用することを要件として保護が行われる)の問題がある」と述べ、制度上、収入認定から除外できない可能性を示唆しました。

 また、手当を受けても、その分保護費が減らされ、手取りが一円も増えない懸念もあります。現行の児童手当は一度収入として認定し、「児童養育加算」として同額を保護費に上乗せする措置がとられています。全生連は、子ども手当も同様の扱いにして、実質的に収入認定しないことを求めています。

 高橋議員は「子ども手当は、親の収入などに関係なく子どもの育ちを支えようというものなのに、一番大変な人たちが喜べない制度となるのはおかしい」と強調。生活保護世帯も含めすべての子どもに手当が届く制度設計を、厚労省に強く要請しました。

国は子どもを大切に

 全生連事務局次長 前田美津恵さんの話 厚労省は「生活保護費には、子どもの養育に必要な額がすでに含まれている」などとして、子ども手当を現在の保護費に丸ごと上乗せすることに、消極的な姿勢を見せています。

 しかし、ことし7月から学習支援費が導入されるなどしたいまも、生活保護費では子どもの教育費を十分にまかなえません。生活保護世帯は、子どもに好きな部活動もさせてやれないなど、つらい思いをしています。

 子ども手当を、そうした不足しているところに使えるよう、国は制度設計すべきです。国が子どもを大切にすれば、その子たちはこの国の将来を担おうという気持ちになります。私たちも大いに運動を強めたいと思います。

(出所:日本共産党HP 2009年10月24日(土)「しんぶん赤旗」)
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民主党政権内で生活保護の母子加算復活と引き換えに高校就学・学習支援費の削減・廃止の動き

2009-10-29 02:27:15 | 国内政治
生活保護の母子加算復活と引き換え
高校就学・学習支援費
削減困る
国会内で集会

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 民主党中心の政権内で、生活保護の母子加算復活と引き換えに高等学校等就学費や学習支援費を削減・廃止する動きがあることから、これに反対し母子加算の早期復活を求める緊急集会が21日、国会内で開かれました。

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 主催は、生活保護問題対策全国会議や生存権裁判を支援する全国連絡会、全国生活と健康を守る会連合会など14団体です。

 参加者は「母子加算の復活は歓迎しつつ、高等学校等就学費や学習支援費の削減は許さない」として、国会内外で取り組みを強めようと確認しました。

 集会で、神奈川県内に住む女性(35)は「高等学校等就学費のおかげで大学生の長男と高校生の長女は高校に通えた。これがなくなると、小6の次女を高校に通わせられるか不安です。来年中学校に入学する次女のために、制服などを購入するための準備も必要。学習支援費もなくなったら困ります」と訴えました。

 生活保護問題対策全国会議の代表幹事を務める尾藤廣喜弁護士は、「母子加算を復活させて高等学校等就学費や学習支援費を削るという発想は、前自公政権下で厚生労働省が『就労促進費などがあるから母子加算は復活させなくていい』と主張することと同じ発想だ」と批判しました。

 日本共産党の赤嶺政賢衆院議員と紙智子、山下芳生両参院議員が駆けつけました。山下議員は「民主党が『コンクリートから人へ』と主張するなら、まず母子加算の完全復活をさせるべきだ。世論と運動を広げて国会でたたかっていきたい」と述べました。

 集会には民主党議員も出席。中根康浩衆院議員(厚生労働委員)は、高等学校等就学費や学習支援費の削減で母子加算を復活することについて「公約違反だろう」と話しました。

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 高等学校等就学費と学習支援費 高等学校等就学費は、2005年度に創設。支給対象は、高校生のいる生活保護世帯。学用品費や授業料、入学準備金、入学金などが対象です。学習支援費は、生活保護世帯の貧困の再生産を防ぐことを目的として今年7月に導入されました。参考書代などを対象としています。支給対象はいずれも、1人親世帯に限りません。

(出所:日本共産党HP 2009年10月22日(木)「しんぶん赤旗」)
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経済同友会終身幹事の品川正治さんが発言ー経済は企業社会から市民社会へ軸足を/憲法9条は人間そのものー

2009-10-28 15:03:46 | 国内政治
政治を前に インタビュー
財界も審判を受けた
経済同友会終身幹事 品川 正治さん

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 しながわ・まさじ1924年、神戸市生まれ。現在、経済同友会終身幹事、財団法人国際開発センター会長、全国革新懇代表世話人。東京大学法学部卒。日本興亜損保(旧日本火災)社長・会長、経済同友会副代表幹事・専務理事を歴任。著書に『これからの日本の座標軸』『9条がつくる脱アメリカ型国家』『戦争のほんとうの恐さを知る財界人の直言』など。

 総選挙で自公政権が退場し、民主党を中心とする政権が誕生しました。これは、国民がつくり出したものです。

 「政権交代」「自公政権退け」が国民的なスローガンになりました。民主党がいいだしたからスローガンになったのではありません。

勝ったのは国民

 民主党も、かつては新自由主義の「構造改革」を、自民党と競っていました。それを、いわば否定する形で、国民のスローガンに乗れるように変えていった。だから、民主党の勝利というよりも国民の勝利ですよね。

 日本の資本主義というのは変わっていましてね。かつて一度も、社会民主主義政権の経験をもっていません。これは、ヨーロッパとは違います。アメリカも社民政権の経験はありませんが、しょっちゅう政権交代があります。

 軍産複合体ということはアメリカではよく言われるけれど、日本の場合は、政官財というトライアングルができていました。経済はもちろん、外交に関しても、このトライアングルで動かしていく。

 自民党は選挙の時には、政治は市民社会のものだといい、選挙で当選した次の日から企業社会のための仕事をしている。族議員になって、政官財のトライアングルの一員としてしか動かないということになっていたんです。

 企業社会のためにしか働かない政官財の鉄のトライアングルを、国民は壊したわけです。

 大企業はアメリカをマーケット(市場)にしています。アメリカで商売するためには、アメリカ流の資本主義の方がアメリカからも信用されるし、商売しやすい。ところが、アメリカ流資本主義は、国民にとってはなんのプラスにもなりません。

 2002年から07年までの景気は「いざなぎ景気」を超える戦後最長の景気だといわれました。しかし、国民は、景気がいいなんて思ったこともない。労働者の賃金は逆に減っています。

 こうした事実から、国民は「自公政権は退場」「政権交代」をスローガンに、政官財のトライアングルを壊したのです。

内部的には動揺

 自公政権が壊れたことで一番大きな転換点を迎えたのは、財界だと思います。

 財界は「保守2党」を主導していたわけですよね。ところが、奇妙なことに、自民党一辺倒で、自民党と一体となってやってきた。政権交代で、財界は内部的には、かなり動揺しているんですよ。

 自分の会社の労組の委員長が大臣になることを予想していた社長なんて一人もいないですよ。

 政治は国民のもの、市民社会のものであって、企業社会のものではありません。このことをはっきり思い知らされたのではないですかね。

 世界的な企業の経営者だって1票しかもっていない。彼が10万票もっていたら、それこそ刑務所にはいらなければなりません。

 なのに、政治は企業社会のものだと思っていることが、大きな誤りだったんですね。

 私が、経済同友会の副代表幹事をやっている時に、ある大物財界人に言われたことがあります。「君たちは、そんな提言みたいなことばかりやっているが、我々の時は総理を呼びつけたものだ。いまの財界人は小物すぎるじゃないか」。私は、「日本の民主主義を悪くしたのはいったいだれなんですか。あんたたちではないか」と開き直ったんです。

貧困・格差生む経営者に資格ない

 日本経団連は、「口も出すから、金も出す」という。企業献金を出すのに、政党に点数をつける。自民党にしかAはつけない。民主党はAはなし。自分たちが要求したことを、どれだけ実行しているかで点数をつける。社会のためにどれだけやっているかではない。こんなばかげたことはありませんよ。

 企業献金は、なにか利益を得ようと思ってやれば贈賄です。何も利益はないけれども金を出しましたといえば、背任ですよ。

大企業のためだけ

 私は保険会社をやっていましたから、顧客には自民党以外の支持者もたくさんいますよ。共産党支持者も。会社の金を自民党だけのために使うなんてことはできっこありません。

 ヨーロッパでいうと、社長はカトリック、副社長はプロテスタントという場合、カトリック関係の政党にだけ会社の金を寄付するなんてことはできません。これが当たり前の感覚なんです。自分のお金なら別ですが。

 経団連は、大企業だけがよければいいという組織に変わってしまいましたね。トリクルダウンと称して、とにかく大企業が外需でもうければGDP(国内総生産)も増えるし、そのおこぼれが国民にくるという言い方でした。そんなのイカサマですよ。規制緩和と称して、雇用を壊し、賃金を抑えてきました。

 少なくとも結婚でき、子どもをつくれるという給料を出す。それだけの自覚を持っておれば、経営者も政策について発言できるけれどもね。結婚もできない、子どもも産めないような給料しか出さない。それを賃金だと称して労働力を買ってもうけているような経営者には、ものをいう資格はないのではないか。

経済も人間の目で

 こんどの総選挙の結果は、自公政権が審判を受けただけでなく、財界が審判を受けたんだと思わなければなりません。

 そのあらわれが、昨年暮れからの「派遣村」でした。東京のどまんなか、立法、行政、司法の三権のトップが集まっている。日比谷公園から、日本の国民に本当の意味での貧困とか格差とかいうものを、はっきり知らせました。「派遣村」は大企業といえども、国民からうらまれたら成り立たないということを教えました。

 お上がつくった状況のなかで、どう順応していくか。国民はそんなものではないですよ、私たちも状況をつくれますよ、ということをはっきりと示すことができました。これも、自民党が総選挙で完敗した要因のひとつだと思います。「派遣村」が政治を動かし、マスコミを変えたことは、国民に大きな自信を持たせました。

 民主党政権は温室効果ガスの25%削減を鳩山首相が国際公約するなど、いいスタートを切れたと思います。ただ、見極めるのはまだ難しいね。

 国民も、政治にまともに向き合わないといけません。民主党にまかせておけばいいんだということになると、こわい。それはやっちゃいけないことです。あれだけの議席があれば、自民党と組めばなんでもできてしまう。

 民主党のマニフェストについても、すべてやってくれと国民は承認したわけではありません。

 憲法問題にはやはり不安があります。鳩山さんも改憲派であることは間違いない。国民は民主党に308議席を与えたわけだからね。民主党を十分に監視する責任があります。

 憲法9条は、人間の目でみて戦争は絶対に許されないというものです。戦争は罪のない母親が死ぬ。赤ん坊が死ぬ。逃げる力のない人がみんな死んでいく。戦争はしない、できないという日本の憲法は60年間守ってきたから、人間の目でみる憲法になったと思っています。

 そういう憲法を持っている国だから、経済も人間の目でみなさい。私の結論は、それに尽きるんです。これ以上弱い人にしわ寄せしない形で不況をどう乗り切るか。弱い人には一番苦しい消費税の増税などはやらない。そうならないと私はおかしいと思います。

建設的野党の役割

 共産党は「建設的野党」といっておられます。民主党政権を見極めながら、国民の立場からぜひ対応していただきたいと思います。

 自民党や公明党をあそこまで追い込んだのは、民主党の力ではなく、国民の力です。九条の会、革新懇や貧困と格差をなくすたたかいなどの力は大きいと思います。その点で、共産党の果たした役割は大きいと思います。

 共産党は自信をもったらいい。政策が悪いわけでもない。政官財のトライアングルのなかで、常に日本共産党をなんとか締め出そうという力が働いてきました。自民・公明の議席を減らした分が、共産党にはいかずに民主党にいったのも、「反共」でしょう。ここを、どう乗り越えていくかでしょうね。自民党の支持基盤は崩れています。とくに若い力をどう結集していくかでしょうね。

 アメリカも日本もチェンジのスタートを切りました。しかし、日本のチェンジの中身をどうしていくか。そこに「建設的野党」としての共産党の存在意義があると思います。

聞き手 渡辺 健
写 真 佐藤光信

(出所:日本共産党HP 2009年10月28日(水)「しんぶん赤旗」)
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日本共産党国会議員団総会で志位和夫委員長が行ったあいさつ

2009-10-27 16:11:21 | 国内政治
「期待」「不安」「探求」――すべてにこたえる論戦を
議員団総会 志位委員長があいさつ

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 議員団総会であいさつした志位氏は、国民がいまの政治に抱いている気持ちを、「期待」「不安」「探求」の三つのキーワードで表し、「『建設的野党』として、このすべてに前向きの答えを出すように頑張りぬきたい」と決意を表明しました。

 「政治を変えたい」という国民の「期待」にこたえ、政治を前に動かす仕事については、「国民のたたかいを起こし、わが党が国会で道理に立った論戦を行ってこそ初めて実現の道が開かれる」と強調しました。

 この中で、お年寄りを差別する後期高齢者医療制度に言及し、閣僚が撤廃の先送りを宣言しているが、ただちに撤廃し、元の制度に戻した上で適切な改善をはかるべきだと力説しました。

 国民の新政権への「不安」にこたえた取り組みについては、問題点、間違った点を、論戦を通じて「条理をつくしてただす」仕事を強調しました。

 概算要求が95兆円を超え、財源問題は国民の最大の「不安」になっていると指摘。新政権の(1)税金の使い道の優先順位の問題(2)財源を庶民増税に求めるという問題(3)軍事費と大企業・大資産家優遇という「聖域」にメスを入れる姿勢がみられないという問題をあげ、日本共産党ならではの論戦に力を入れたいと表明しました。

 さらに志位氏は、自公政権に代わってどういう新しい政治をつくるかという国民の「探求」について、新政権からは「この日本を全体としてどうしたいか」という全体像が見えてこないが、「国民はそれこそ求めている」と述べました。

 志位氏は、沖縄の米軍新基地建設をめぐる政府の態度を批判しながら、どんな問題でも前向きな答えを得ようとすれば、「財界中心」「軍事同盟中心」の「二つの政治悪」を正し、「国民が主人公」の新しい日本に進むことが求められると指摘し、草の根の運動と連帯した大奮闘を呼びかけました。

日本共産党国会議員団総会での
志位委員長のあいさつ

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 日本共産党の志位和夫委員長が26日の国会議員団総会で行ったあいさつは以下の通りです。

「期待」「不安」「探求」――国民の気持ちすべてにこたえる奮闘を

 みなさん、おはようございます。臨時国会の開会にあたりまして、ごあいさつを申し上げます。

 この臨時国会は、国民が自公政権に退場の審判を下し、民主党政権がつくられたもとでの初めての論戦の舞台となります。国民は、この国会に大きな関心と期待を寄せていると思います。ですから、私たちの国会にのぞむ姿勢としては、国民のみなさんの気持ちにそくして、一緒になって新しい日本の進路を見いだしていくという姿勢での論戦が大切だと思います。

 新政権が発足したもとで、いま国民が政治に対してどういう気持ちをいだいているか。私は端的にいってキーワードが三つあると思います。

 一つは、「政治を変えてほしい」という「期待」であります。これは非常に強いものがあります。

 二つ目は、「本当に変わるのか」「財源は大丈夫か」などの「不安」であります。

 そして三つ目は、自公政権に代わって、どういう新しい政治が必要か、その真剣な「探求」であります。

 私たちは、「建設的野党」として、国民の「期待」、「不安」、「探求」、これらのすべてに前向きの答えを出すように、がんばりぬきたいと思います。(「よし」の声、拍手)

「期待」――国民のたたかいと道理にたった論戦こそ

 国民の「期待」にこたえて、政治を前に動かす仕事についてのべますと、私たちは、新政権に対して、「良いことには協力する」と表明してきました。しかし、その実現を確かなものにするためには、また、国民にとってより良いものとして実現するためには、新政権まかせというわけにはいきません。国民のたたかいをおこし、国会で道理にたった論戦を行って、はじめて実現に道がひらかれます。

 たとえば、後期高齢者医療制度の問題であります。厚生労働大臣は、「廃止に向けて元に戻すのではなく、4年以内にそのまま新しい制度に移行していく」と発言しました。これは、「新しい制度」ができるまでは、この差別医療制度の撤廃を先送りするということを表明したものにほかなりません。この発言に対して、「4年も待てない」という強い怒りの声がおこっているのは当然です。

 この問題については、私たちは、希代の差別医療制度は先送りでなく、ただちに廃止し、元の老人保健制度に戻し、そのうえで適切な改善を図るべきだと、これこそ国民多数の声だと、新政権に強く求めていくものです。(「よし」の声、拍手)

 いまいったことは、かつて野党4党で、この制度の撤廃法案を提出したときに、民主党の代表者も主張してきたことであり、これまでの方針の変更の理由は何かということを、ただしていきたいと思います。

 政治を一つひとつ動かすためには、どんな問題でも、たたかいと論戦があってこそ前に動きます。わが党の真価を発揮したがんばりを、やっていきたいと思います。

「不安」――財源問題で三つの根本的見直しを求める

 国民の新政権にたいする「不安」にこたえた取り組みについていいますと、私たちは民主党政権の問題点、間違った点については、条理をつくしてただす論戦を行っていきたいと思います。

 この臨時国会は、新政権が来年度予算案、すなわち新政権のもとでの初めての予算案を編成する作業と同時並行で行われます。先日発表された来年度予算の概算要求をみますと、総額で95兆円を超える史上最大の規模になりました。

 もちろん、このなかには、国民の要求にかなった内容も含まれています。同時に、「いったい財源は大丈夫か」という不安と心配の声も寄せられています。来年度予算案がどうなるかは、予断をもっていえませんけれども、私たちは現時点で、ここは問題だと、ここは見直すべきだという点に、きちんとものをいっていきたいと思います。

 一つは、税金の使い方の優先順位という問題です。高速道路の無料化ということがいわれていますが、これが税金の使い道と優先順位として正しいか。環境とのかかわりでも慎重な吟味が必要ではないか。私たちは、高速道路より福祉が優先されるべきという立場でのぞみたいと思います。

 二つ目は、財源を庶民増税に求めるという問題です。子ども手当の拡充は当然でありますが、その財源を扶養控除と配偶者控除の廃止に求めるというやり方に、私たちはくみするわけにはいきません。この問題では、私たちのもとに、毎日のように不安と怒りの声が寄せられています。国民の一部を犠牲にして一部にまわすというやり方では、国民の理解はえられません。これもたださなければならない大きな問題です。

 三つ目は、軍事費と大企業・大資産家優遇という「二つの聖域」にメスを入れるという姿勢がみられないということです。軍事費についていうと、防衛省が出した概算要求は、自公政権の今年度の予算とほとんど同じ額の内容でした。「思いやり予算」についてもまったく変わらない額を計上しています。こういうものこそ、抜本的縮減のメスを入れるべきではないか。大企業や大資産家に対するゆきすぎた優遇税制にこそメスを入れるべきではないか。こうした論戦は、日本共産党だけができる論戦ですから、大いに力を入れて取り組みたいと思います。

「探求」――「二つの政治悪」を浮き彫りにし、新しい日本への道筋を

 こうした仕事と一体に、新しい政治への「探求」にこたえる仕事を行いたいと思います。新政権の閣僚からは、さまざまな個々の発言が続きます。いろいろな発言が毎日のニュースをにぎわしているわけですが、この日本を全体としてどうしたいのか、新しい日本の全体像については語られているとはいえないと思います。個々のさまざまな議論はありますが、全体像がみえてこない。しかし、国民はそれをこそ求めていると思います。自公政権に代わって、どういう新しい日本をつくるのか、真剣な「探求」の途上にあるのが、いまの国民の多数の状況だと思います。

 この「探求」に、正面からこたえる論戦を行おうではありませんか。国民の切実な要求や関心から出発しながら、どんな問題でも前向きな答えを得ようとすれば、「財界中心」、「軍事同盟中心」という「二つの政治悪」を正すことが必要になってくる。そして、「国民が主人公」の新しい日本に進むことが求められてくる。このことが、論戦を通じておのずと明らかになっていくような努力をお互いに図りたいと思います。

 いま、沖縄の普天間基地の問題が、国政上の熱い焦点となっております。先日、米国のゲーツ国防長官が来日して、たいへん強圧的な言動を繰り返しました。そうしましたら、外務大臣からは、「県外(移設)は考えられない」、すなわち“県内たらい回ししかありえない”という発言が出てまいりました。これは、民主党が選挙中にのべていた「県外移設、国外移設」という公約・方針に照らしても、説明のつかないことであります。

 鳩山首相は、「沖縄県民の意思を尊重する」ということを繰り返していますが、県民の意思の尊重ということであったら、もう答えははっきり出ているわけです。この問題がもちあがってから、13年間、新基地建設のための杭(くい)一本打たせてこなかった。この事実そのものが県民の断固たる意思を示しているのです。

 アメリカは核兵器の問題などでは前向きの変化がおこっているけれども、日米関係では変化はおこっていません。それは、日米関係については変化が必要だとアメリカが思っていないからです。なぜ思っていないかというと、歴代の自民党政治があまりにも卑屈な対米追従外交を続けてきたからです。だから、日本という国は、強圧的にモノをいえば、何でもいうことを聞く国だと思っているわけです。

 そのアメリカの姿勢を変えようとすれば、沖縄県民、日本国民の立場に断固として立った、本腰を入れた対米交渉が必要です。これなしに、相手を動かすことはできません。そういう本腰を入れた対米交渉こそいま必要なのだということを、私は強く求めたいと思います。

 アメリカの顔色をうかがったり、アメリカの強圧的な態度に屈したりする態度をあらため、「基地のない沖縄」を目指す沖縄県民の願いに立って、断固たる対米交渉を行え――このことを新政権に強く求めていこうではありませんか。(拍手)

 こういう論戦を通じて、私たちが目指す「国民が主人公」の新しい日本の姿がおのずとみえてくるような努力を、お互いに心がけたいと思います。

 私たちの「建設的野党」としての真価が問われる最初の舞台となる大事な臨時国会です。衆参の国会議員団が秘書団と力を合わせ、そして何よりも草の根の運動と連帯して、わが党の真価を発揮する大奮闘をやろうではありませんか。ともにがんばりましょう。(拍手)

(出所:日本共産党HP 2009年10月27日(火)「しんぶん赤旗」)
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民主党政権の課題ー貧困ビジネス・悪質商法への規制強化を/貧困ビジネス宿泊所撤退へー

2009-10-26 10:41:15 | 国内政治
貧困ビジネス宿泊所撤退へ
建設計画に住民から批判
東京・板橋

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 東京都板橋区で、住居のない人の生活保護費から高額の入所費用を徴収する「無料低額宿泊所」の建設を計画していた特定非営利活動法人(NPO法人)やすらぎの里(中野区)が、住民の「貧困ビジネス」を批判する声などによって、建設計画からの撤退を表明していることが、20日までに分かりました。

 やすらぎの里の宿泊所計画では、7平方メートルの部屋の入所費用が、月に家賃5万3700円(生活保護の住宅扶助上限額)、食費4万5000円もかかり、単身者世帯生活保護費約13万円の大半が徴収されます。(本紙10月11日付既報)

 同法人が北区で運営する宿泊所を現地調査した住民からは、「ベニヤ板で仕切った3畳の部屋でこの費用は暴利だ」「人が人として住める施設ではない」と声が上がっていました。

 16日夜に行われた住民説明会には、70人の住民が参加し、区からも福祉部管理課長と福祉事務所長が出席。「保護費をむしりとる貧困ビジネスは来るな」などの意見が相次ぎ、やすらぎの里側も「(住民協定を結べなければ開設できないという)区の要綱を守る」と答えていました。

 板橋区福祉部管理課の担当者によると、19日、やすらぎの里側から電話で撤退の意向が示されたといいます。地域の住民で結成した「宿泊所」建築反対連絡会の会員が、20日、やすらぎの里に問い合わせたところ、「撤退する。21日にも、区役所へ書類で報告する。24日の次回説明会には出席しない」という回答でした。

 この会員は、「貧困ビジネスを批判する世論が高まり、住民運動が急速に広がったことが業者を撤退に追い込んだと思います。悪質業者では入所者の人権は守られない。困っている人には、国と自治体が自立できるようサポートすべきです」と話しています。

 同連絡会世話人代表は「日本に、ヨーロッパのような安定して働けるよう支援するシステムがないことが、一番の問題ではないでしょうか。法の不備を突いて、福祉をもうけの対象とするような事態がまかり通ることのないよう、公的支援で、社会的弱者を守ってほしい」と訴えました。

(出所:日本共産党HP 2009年10月21日(水)「しんぶん赤旗」)

貧困ビジネスに批判
住民ら「悪質業者来るな」
地元への説明を偽る
東京・板橋「無料」宿泊所計画

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 生活困窮者を食い物にする「貧困ビジネス」が社会問題となるなか、東京都内で持ち上がった「無料低額宿泊所」の建設計画に、地域住民から「悪質業者は来るな」「国・自治体が責任をもって住まいを確保すべき」だと声が上がっています。(田代正則)

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 問題となっているのは、特定非営利活動法人(NPO法人)やすらぎの里(中野区)が事業者となり、東京都板橋区で進められている宿泊所の建設計画。

 入所費用は、月に家賃5万3700円(生活保護の住宅扶助上限額)、食費4万5000円で、単身者世帯生活保護費約13万円の大半を徴収するといいます。

 やすらぎの里は当初、「3階建ての老人施設」を建てると近隣住民の一部に説明していましたが、途中で「5階建ての宿泊所」に変更。路上での立ち話や住民側からの問い合わせしか行われていないのに、板橋区には、区の要綱で定められた住民説明会を開いたと報告していました。

 宿泊所の部屋数も、住民には、37室(1室14平方メートル)で1室1人と答え、区には81室(1室7平方メートル)の建設案を示すなど、住民に偽って建設計画をすすめていました。

 住民たちは、「本当に社会的弱者を助けるなら、地元住民に説明し協力を求めるものでしょう。こそこそ建設を進めるのは信頼できない」と口々に話します。

 同法人は06年にも、大田区で虚偽の開設目的を説明されたと怒った地域住民の反対運動にあい、宿泊所の開設が中止になっています。

 建設予定地のすぐ近くに住む住民は、「住居のない人の支援は、民間丸投げにせず、国や自治体が責任をもってほしい。公営住宅の空き室を使ったり、民間アパートを借り上げて、自立して生活できるようにすべきではないでしょうか」と強調しました。

3畳、食費込み12万円余
都内劣悪「宿泊所」

 東京都板橋区での無料低額宿泊所建設計画が問題になっているやすらぎの里は、隣の北区でも宿泊所を運営しています。

 古い元ビジネスホテルの部屋をベニヤ板で3畳弱に仕切ったものでした。「異臭がひどく、衛生状態も疑問です。あんなに狭くて家賃5万3700円では“高額宿泊所”です」と話す人もいます。

 日本共産党の金崎文子板橋区議が現地調査したところ、家賃5万3700円、食費4万5000円に加え、水光熱費1万5000円、日用品費9600円をあわせて、12万3300円を生活保護費から徴収していると分かりました。手元には、6000円そこそこしか残らないことになります。

 しかも、北区の宿泊所は、民間団体「FIS」が運営していた施設で2008年4月から事業を行っていることも分かりました。FISは、劣悪な宿泊所運営で逃げ出す入所者も多く、徴収した入所費用から多額の使途不明金を出して問題となっています。

 板橋区の要綱では、宿泊所を設置する場合、住民説明会を開き、住民と協定を結ばなければならないと定めており、区議会健康福祉委員会で10月6日、住民の提出した陳情の住民説明会の開催を求める項目が、全会一致で採択されました。

 区の担当職員も「住民の理解が得られるまで、建設を見合わせるよう要請する」と答えました。

 やすらぎの里の担当者は、宿泊所運営費用についての本紙の取材に対し、「プライベートなことなので、答える必要はない」と話しました。

 宿泊所運営に乗り出す業者が増加する背景には、公的責任がおざなりにされている実態があります。

 東京都内で生活保護法に基づき住宅扶助を行う「宿所提供施設」は、たった6施設491人分しかありません。

 国民のたたかいで、自公前政権も重い腰をあげ、雇用と住居も失った人がアパート入居を果たすまでの臨時的住宅(シェルター)を自治体が確保する際の補助金を引き上げましたが、肝心の自治体が失業者の集中を恐れ、十分活用されないままになっています。

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 無料低額宿泊所 社会福祉法で定められた第2種社会福祉事業で、「生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる」とされています。入所者のほとんどが生活保護を受給しています。

(出所:日本共産党HP 2009年10月11日(日)「しんぶん赤旗」)

「無料低額」宿泊所告訴へ
元入居者「生活保護費横領解明を」

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 生活保護受給者を対象にした無届け・無料低額宿泊所が社会問題となるなかで21日、宿泊所の元入居者2人が宿泊所を運営する団体の代表を相手取り、業務上横領や私文書偽造などが行われていたとして、今月28日までに刑事告訴すると発表しました。告訴されれば全国で初めてのケースとなります。

 告訴するのは水谷正勝さん(61)と田川渥さん(64)。水谷さんは千葉市内で宿泊所を運営する「稲毛厚銀舎」、田川さんは千葉市内に本拠をおく任意団体「市民活動団体シナジーライフ」をそれぞれ告発します。

 水谷さんは2006年11月ころ、東京都内で「稲毛厚銀舎」関係者に声をかけられ同行。翌日、水谷さんら約10人を千葉市稲毛区役所に連れて行き、本人の同意を得ないまま生活保護を申請したといいます。水谷さんに知らせないまま銀行口座を開設して、通帳・キャッシュカードを管理。入金される生活保護費約12万円のうち、水谷さんには3万円を手渡していました。

 田川さんは昨年6月ころ、都内で「簡単に生活保護が認定される」と声をかけられ、千葉市内で生活保護を申請、民間アパートに入居しました。保護費約14万円のうち田川さんに手渡されたのは約2万円の現金と10キロの米だけだったといいます。

 都内で記者会見した2人は、生活保護費が他に使われている構図を明らかにしたいと語りました。

 また埼玉県川口市の宿泊所に入居していた50代の男性も告訴する予定といいます。

(出所:日本共産党HP 2009年10月22日(木)「しんぶん赤旗」)
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トヨタよ また使い捨てか-「長く働きたいのに…」/期間工募集再開/契約期間示さず 最長でも6カ月-

2009-10-24 08:27:52 | 国内労働
契約期間示さず 最長でも6カ月
期間工募集再開
トヨタよ また使い捨てか
「長く働きたいのに…」

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 トヨタ自動車が今月から再開した期間従業員の採用で、肝心の契約期間を示さないで募集し、長くても6カ月の雇用契約しか結んでいないことが分かりました。本紙の指摘に今後は契約期間を明示すると表明しましたが、労働者からは「昨年来の期間工切りに反省もなく、また使い捨てを繰り返すなんて許せない」との声が上がっています。

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 トヨタは1600人を採用する計画で、この1年間に雇い止めた期間工約6000人を対象に募集。応募者に雇用条件を示した文書を送るとともに「面接不要」だとして愛知県豊田市内にある社員寮に入り、研修を受けるよう指示しました。

 ところが、雇用条件を書いた文書には肝心の契約期間や更新の有無が記載されておらず、入寮し研修を受けて初めて契約期間が知らされる仕組みになっていました。

 しかも、示された雇用条件で働く誓約書と身元保証人の誓約書は、契約期間を空欄のままで署名なつ印して持参するよう指示していました。労働条件の明示などを義務付けた労働契約法などにも反するやり方です。

 「肝心の契約期間も示さず、『これで来い』なんてバカにしている」と憤るのは、応募した九州の20代男性。「4月末に雇い止めされ雇用保険も9月末で切れた。あれだけ多くの首を切りながら反省もない」

 各人に示された契約期間は4~6カ月。更新は「する場合あり」となっていますが、「通算して2年11カ月を超えて更新はしない」と明示された文書が配られました。

 6カ月契約を結んだ50代男性は、「半年後に更新されるかも分からない。地元に帰っても仕事はない。できるだけ長く働きたいのに」と顔を曇らせます。

 トヨタ広報部は、契約期間などを明示しないことについて「文書の送付が遅れた」と弁明し、今後は明示すると表明しました。しかし、すでに契約期間も分からず応募した人は600人。依然として契約期間が示されていない人もいます。

 トヨタ自動車は昨年、「最高2年11カ月働ける」といって募集しながら契約更新せずに次々と雇い止めし、社会的批判をあびました。08年1月に9000人もいた期間工は今年9月末には1200人に激減。ところがエコカーの生産増などを理由に1年もたたずに募集を再開し、今度は契約期間も示さずに募集を行っていたのです。

安定雇用へ正社員増やせ

 豊田市のトヨタ自動車堤工場では、7月から残業と休日出勤が再開されました。

 労働者は「残業は目いっぱいの45分。休日出勤は全体で月2回やっており、フル生産状態になっている」と話します。

 「期間工をあれだけ切っておいてわずか1600人では雇用をまもる社会的責任をはたしたことにはなりません」と語るのは、堤工場で働く正社員の大場博さん。

 「エコカー増産も、減税に押された需要の先食いといわれているように、いつまで続くか分からない。昨年、あれだけ批判されたのに、生産の調整弁としてまたぞろ使い捨てするなど許されません」と話します。

 期間工のなかには、採用するといって入寮したのに健康診断によって不採用にされ、追い返されるケースも出ています。

 東北から来た20代の男性もその一人。「尿酸値が高いといって不採用といわれた。体調は万全で絶対に大丈夫だと思っていたのに、ここまで来て落とされるのは納得いかない」と話します。

 トヨタ広報部は「診断基準を厳しくしていない」と説明しますが、「健康診断で落とされた人は研修途中で抜けていくので分かる。入寮した人のうち約50人~60人、応募者の1割が不採用にされた。“健康診断が厳しくなっている。採用者を計画より減らそうとしているのではないか”と話題になっている」と話す労働者もいます。

 日本共産党豊田市議団とトヨタ自動車党委員会は14日、工場門前で、「年末にかけて雇用情勢はますますひどくなる。その口火を切ったのはトヨタだった。そのことに反省もなく、再び路頭に迷わせるような状況をつくってはなりません。大企業に雇用をまもる社会的責任を果たさせるとともに、『雇用は正社員が当たり前』の社会にしましょう」と訴えました。

 前出の大場さんはいいます。

 「残業や休日出勤をさせるんだったら、もっと期間工を雇えるはずです。長すぎる労働時間を短縮するためにも、トヨタは正社員をもっと増やし、安定した雇用をつくる社会的責任を果たすべきです」

(出所:日本共産党HP 2009年10月23日(金)「しんぶん赤旗」)

志位委員長、トヨタと初会談
大量解雇を中止・撤回し雇用を守る責任果たせ

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 日本共産党の志位和夫委員長は二十四日、トヨタ自動車の古橋衛専務、宮直樹常務と党本部で会談し、トヨタ自動車とグループ企業がすすめている大量解雇の方針を中止・撤回し、大企業として雇用に対する責任を果たすよう求めました。これは志位委員長の申し入れにトヨタ側が党本部で会談したいと応じて実現したもの。大企業の幹部が党本部を訪れるのは初めてです。会談には党側から吉井英勝、佐々木憲昭の両衆院議員が同席しました。

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 志位委員長は、冒頭、「期間・派遣労働者の大量解雇が深刻な社会問題になっているが、トヨタという日本を代表するリーディング・カンパニー(主導的企業)が大量解雇の引き金を引いた、その社会的責任はきわめて重大だと考えている」「株主への巨額の配当、巨額の内部留保を考えても大量解雇が避けられないとする合理的理由は考えられない。大量解雇を中止・撤回し、雇用にたいする社会的責任を果たすよう求める」とのべました。

 そのうえで、四点にわたってトヨタ側の認識と見解をただしました。

「非正規切り」 人道に照らし許されない

 第一は、「非正規切り」が人道に照らして許されないという問題です。

 志位氏は、トヨタ自動車とその連結企業で九千八百五十人、トヨタ・グループ総計で一万千六十人の人員削減計画が進められていることを指摘。「雇い止め」された非正規社員が職を失うと同時に住居も失い、ホームレスに追い込まれている事態などを示し、「人道に照らして許されない。トヨタでは、期間従業員を景気の『調整弁』と位置づけているのか」とのべました。

 古橋専務は、人道問題との指摘には「ある側面そうだと思う」とのべつつ、期間従業員の位置づけについては「従業員の一つの形態と考えている」とのべるにとどまりました。

契約中途の解雇 法令に違反

 第二は、法令順守の問題です。志位氏は、期間・派遣労働者の契約中途での解雇は法令違反となり、たとえ契約満了の「雇い止め」であっても「雇用継続への合理的期待が認められる場合」などは、解雇と同じように扱われ、違法となると指摘。トヨタが「最長で二年十一カ月まで働ける」とうたう求人広告で期間従業員を募集・採用しながら、今回の人員削減でその多くが六カ月など短期で「雇い止め」としているのは「違法性がきわめて高い」と指摘しました。

 宮常務は「トヨタ本体では中途解約は行っていない。グループ企業、仕入れ先にも同じ姿勢でやってほしいといっている」と説明するとともに、契約満了の「雇い止め」については「やれることは可能なかぎりやっているつもり」とのべました。

大量解雇には合理的理由ない

 第三は、大量解雇が避けられない合理的理由がないことです。

 志位氏は、トヨタ自動車がこの八年間に、株主への中間配当を五倍に、内部留保を二倍近く増やしていることを指摘。「雇用維持のためには内部留保の0・2%、中間配当の八分の一を回すだけで足りる」とのべ、「この点でも大量解雇の合理的理由はない」と強調しました。

 古橋専務は「配当は三月期決算をみて決める」「内部留保については、内部留保を取り崩してまで(期間従業員の雇用を維持することはない)というのが、経営判断だ。そこは価値判断の違いだと思う」とのべました。

 志位氏が、「いま日本の経済界では、労働者の生活よりも、大株主への配当を優先させる傾向が顕著だと思う。こうした『株主至上主義』とでもいうべき風潮は、資本主義のあり方としても一つの堕落ではないか」とただしたのに対し、古橋専務は「アメリカ的株主優先は、あまりにもどうかなと思う」、「日本型経営とアメリカ型経営についていま議論されるべきだ」とのべました。

経済を悪循環に突き落とす

 第四は、競い合って大量解雇をすすめれば日本経済を雇用破壊と景気悪化の悪循環に突き落とすことになるという問題です。

 志位氏は、「日本経済を立て直すには外需依存から脱却し、内需に軸足を移すことが必要だ。大量解雇をすすめれば景気の底が抜けてしまう。それはトヨタにとっても自殺行為ではないか」とのべました。

 古橋専務は「そういう論理もあるかもしれない」としながらも、「国内での需要がないので外に出た。需要が先か雇用が先かという議論だと思う」と語りました。

 志位氏は、内需を低迷させたのは政治の責任とともに、大企業の企業行動に大きな問題があると指摘するとともに、豊田章一郎名誉会長が、終戦直後、経営危機のなかで雇用を維持するために事業を広げようとカマボコづくりの修業を行ったことにもふれて、「トヨタがその社会的責任を深く自覚して、大量解雇を中止・撤回するよう重ねて求める」とのべました。

(出所:日本共産党HP 2008年12月25日(木)「しんぶん赤旗」)

トヨタ内部留保13兆円
正社員化 財源は十分

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 金融バブル、住宅バブルによって演出されたアメリカの好景気のもとで、アメリカむけ輸出を急増させてきたトヨタや日産など日本の自動車メーカーが、輸出が不振になるといって、いっせいに非正社員の「首切り」計画を発表しています。

非正規8万人超

 これまでトヨタなど自動車メーカーは、非正社員を低賃金で酷使し、大もうけしてきました。たとえば、トヨタ本体の正社員の平均賃金は八百三十万円です。期間社員は、二百二十~二百五十万円です。期間社員は正社員と同じ生産ラインで働いています。

 トヨタが期間社員などを大々的に導入したのは二〇〇三年からです。〇八年までに、トヨタ本体で八千人から一万八千人へと二・二倍以上に増やし、トヨタグループ全体でも、四万人から八万七千人へと、二・一倍以上になっています。

 そのなかでトヨタグループは、経常利益を大幅に伸ばしました。内部留保(隠し利益)は、〇三年度の九兆五千億円から〇七年度の十三兆九千億円へと、一・五倍近くも増やしています。非正社員の汗と涙で積み増しした内部留保です。

 こんなに内部留保を増やしながら、その最大の“源泉”となってきた期間社員を減益が見込まれるといって、放り出すようなやり方は許されるものではありません。

 派遣や期間社員などの非正社員を正社員化すれば、雇用が安定・拡大し、内需を拡大することにつながります。それは、「内需主導での経済成長」にとって不可欠の課題です。労働総研の試算では、正社員になりたいと考える派遣社員など三百六十三万人の非正社員を正社員化すれば、五兆円近くの消費需要を増やし、GDP(国内総生産)を0・8%押し上げます。選挙目当ての二兆円のばらまき「定額給付金」のGDP押し上げ効果は0・1%といわれていますから、その八倍もの効果があります。

 非正社員の正社員化は、経営者がやる気になればできることです。段ボールメーカーのレンゴーが千人の派遣労働者を正社員化する方針を打ち出しました。レンゴーの経営指標をみると、経常利益は、百億円、内部留保は千二百億円です。社員(一万人)一人当たり内部留保は千二百万円です。派遣社員(千人)を正社員化することによって、社員一人当たり内部留保は千百万円に減少します。

 レンゴーは、「安定生産継続に向け正社員にすることで要員を確保する」として、「人件費は年間数億円増える見通しだが、士気向上で生産効率向上につなげる」としています。

経営の危ぐなし

 トヨタの連結子会社レベルで非正社員の正社員化をしても、レンゴーと比較して、経営になんの問題もないことは、経営指標が示しています。トヨタグループ全体の内部留保は十三兆九千億円です。社員(三十一万六千人)一人当たり内部留保は四千四百万円です。レンゴーの四倍近くです。派遣・期間社員など非正社員(八万七千人)全員を正社員化しても、社員(四十万三千人)一人当たり内部留保は三千四百五十万円もあります。経営が危うくなる危ぐはまったくありません。

 非正社員の正社員化をはかる財源は、トヨタの例にも見られるように大企業には十分あります。

 労働総研の試算では、三百六十三万人の非正社員を正社員化するために必要な賃金増加額は、八兆円ですが、大企業の内部留保二百二十八兆円の3・5%をはき出せば可能です。日本の大企業は今こそ、雇用を守る社会的責任をはたすべきです。(日本共産党国民運動委員会労働チーム 藤田宏)

(出所:日本共産党HP 2008年11月20日(木)「しんぶん赤旗」)
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2009年に『資本論』を読む-このタイトルの自主ゼミが東京大学で開かれています-

2009-10-23 10:06:03 | 国内社会
ゆうPRESS
新鮮 資本論
「搾取」ってムチ打ち働かせるイメージだった
労働者の主張の大事さわかった
東大で自主ゼミ

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 「2009年に『資本論』を読む」。このタイトルの自主ゼミが東京大学で開かれています。日本共産党の不破哲三社会科学研究所所長の『「資本論」全三部を読む』(新日本出版社)を使って月2回、1年で読み切ることをめざして、1、2年生が学びます。(染矢ゆう子)

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 ゼミが始まったのは2008年度から。東大の1、2年生でつくる日本民主青年同盟(民青同盟)駒場班が新入生からとったアンケートで関心のある民青同盟の活動を聞いたところ、「『資本論』を読みたい」という学生が多かったことから始まりました。昨年は10人、今年は13人からスタートしました。

貧困と格差が深刻化のなか

 講師を務める日本共産党東京都委員会の石井耕太さん(57)は「世界的な経済危機が起こったり、日本で貧困と格差が深刻化するなかで、資本主義そのものについて深くつかみたいという思いが強まっているのではないでしょうか」と話します。

 「『資本論』が理解できたら、かっこいい」と参加した由理さん(1年)は、理系の学生です。

 「商品からはじまり、価値、貨幣、資本、と分析をすすめる方法は原子、分子と分析をすすめる化学みたい。そうやって社会を見て、目の前の現象を説明できるのがすごい」。ゼミには欠かさず出席しています。

 サヤカさん(2年)は、参加するまで、搾取といえば、ムチを打って労働者を働かせるようなイメージを持っていました。

 「普通の『雇い』『雇われ』の中に搾取がひそみ、普通に賃金をもらっていても、(賃金分の)必要労働時間以上に働かされているという(剰余価値の)しくみにびっくりしました」と話します。

 実家は中小企業を経営し、しばしば労働組合との交渉が決裂しているといいます。

 「要求実現をかかげてストライキや春闘をする労働者に対して、『経営する方も大変なのに』と思っていました。でも、労働者が権利を主張し、対立することがなくなると搾取されるだけになると分かりました。労働組合も大事だと思いました」と話し、「資本主義の矛盾をどう変えていくのか興味があります。2、3ページで挫折した『資本論』の本文も読んでみたい」と意欲をもやします。

頭から拒否していたけど

 「『資本論』、マルクスというと、共産主義万歳というイメージがあって、頭から拒否していた」と話す弘樹さん(1年)。「一度読んでみようよ」と話す民青同盟員に誘われて、参加するようになりました。

 「『資本論』に書いてあるのは、資本主義のしくみがどうなっていて、どういう矛盾があるのかということが中心なんだと分かりました。マルクスは生産手段を共有することが必要と言っているだけ。それでいいじゃないかと思いました」と言います。

 講師の石井さんは「マルクスの理論についての新鮮な発見と、それが現代に生きていることを、ともに実感しながらすすめています」と話しています。(学生は仮名)

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 マルクス『資本論』の魅力について2人に話を聞きました。

「これでいいのか」 考える姿勢ができる

 神戸女学院大学教授の石川康宏さんの話 『資本論』は、資本主義社会の全体像をつかまえるという野心にもとづいた著作です。リストラ、貧困、恐慌等がなぜ起こるのかを根本から統一して考えています。

 大学で学ぶ近代経済学は、全体としては資本主義が人びとの利害をどう調和させるかをのべるものです。しかし、実際には調和の破綻(はたん)が周期的な恐慌を生み出しています。

 『資本論』は、資本主義社会がこれまでの社会とどこが違うのかを、人類史的視野でつかむことができます。社会に流される生き方でなく、これでいいのかと考える姿勢ができます。すべてを一度にわかろうとしないで、最後までページをめくってみましょう。

労働者なんだと実感させられる

 労働学校で『資本論』を学ぶ、保険代理店に勤めるM子さん(30)の話 『資本論』に書かれた19世紀の資本主義のもとでの資本家と労働者の対立関係は今も変わりません。『資本論』を学び、今の自分が労働者なんだと実感しました。豊かで文化的な生活を送ろう、貧困からぬけだそうと思ったらたたかわなあかん、と思いました。

不破さんが語る
30日・11月6日にセミナー
マルクスは生きている~公開連続セミナー

◇講師=不破哲三日本共産党社会科学研究所所長

◇第1回「大学時代にマルクスが必読な理由」

 10月30日(金)

◇第2回「マルクスの眼で見た21世紀の日本と世界」

 11月6日(金)

◇時間=いずれも午後6時20分から

◇場所=東京大学駒場キャンパス内(京王井の頭線「駒場東大前駅」東口下車すぐ)

(出所:日本共産党HP  2009年10月19日(月)「しんぶん赤旗」)

生産手段の社会化 交通機関や放送局は?

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 〈問い〉日本共産党の綱領第5章には、「社会主義的変革の中心」は「主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である」と書かれています。生産をしていない交通機関や放送局は社会化されないのでしょうか。(大阪・一読者)

 〈答え〉 日本共産党の綱領第5章は、日本社会が資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義社会への前進をはかる段階の展望を述べているものです。そこでは、「社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化」であり、「生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される」という基本的な発展方向を明らかにしています。その際、どの分野の生産手段が社会化の対象となるのか、それがどのような所有形態へとすすむのか、といったことは、この変革が現実の課題になった段階で、政治情勢や経済・社会の状況を踏まえて検討されるべきものです。

 当然、資本主義時代の価値ある成果や経験がうけつがれ、いっそう発展させられるでしょう。

 綱領はまた、「社会主義・共産主義の社会がさらに高度な発展をとげ」た後に、「人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会への本格的な展望が開かれる」という、長期の展望も明らかにしています。ここに書かれている未来の共同社会は、搾取そのものがなくなる社会です。そこへいたる過程では、財貨の生産をおこなわないサービス産業も含めて、今日の大企業が担っている経済活動のすべてが、いずれは何らかの形で社会的な所有・管理・運営へすすんでいくだろう、というのが理論的展望です。

 なお、鉄道などの交通機関は、原料や商品を運ぶことで生産の一端を担うという性格をもっていますし、国民生活と日本経済を支える大事な産業です。したがって、そのあり方については、安全性と経済効率の両面からの検討が必要です。

 また、放送や新聞などのマスメディアは、国民の言論の自由や人権の保障という面からも重要な機関であり、「真に平等で自由」な社会の言論機関にふさわしい経営の形態が探求されることになります。(哲)

 〔2007・2・14(水)〕

(出所:日本共産党HP 2007年2月14日(水)「しんぶん赤旗」)

「生産手段の社会化」って どういう意味?

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 〈問い〉 日本共産党の綱領にある「生産手段の社会化」って、どういう意味ですか?(岡山・一読者)

 〈答え〉 生産手段とはごく簡単にいえば、物を生産するための原料(=労働対象)と工場・機械など(=労働手段)のことです。いまの資本主義社会は、これをごく一部の人たちが占有し、もうけ本位に生産しており、これが社会のゆがみや環境破壊につながっています。

 当面する民主的変革の過程を経て、私たちがめざす次の段階が、資本主義を乗り越えた未来(社会主義・共産主義の社会)への前進です。ここでの変革の中心的な指標が「生産手段の社会化」です。生産手段の社会化を土台にどんな社会をつくるか。第23回党大会で決めた新しい日本共産党綱領はそれを次の三つの側面から描きだしています。

 (1)生産手段の社会化は、人間による人間の搾取を廃止し、すべての人間の生活を向上させ、社会から貧困をなくすとともに、労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台をつくりだす。

 (2)生産手段の社会化は、生産と経済の推進力を資本の利潤追求から社会および社会の構成員の物質的精神的な生活の発展に移し、経済の計画的な運営によって、くりかえしの不況を取り除き、環境破壊や社会的格差の拡大などへの有効な規制を可能にする。

 (3)生産手段の社会化は、経済を利潤第一主義の狭い枠組みから解放することによって、人間社会を支える物質的生産力の新たな飛躍的発展の条件をつくりだす。

 この変革は、国民の合意のもと、一歩一歩の段階的な前進を必要とする長期の過程です。人類史の新しい未来をひらく歩みですから、青写真はありません。国民が英知をもって挑戦する創造的な開拓の過程となるでしょう。

 ですから、新しい綱領では、(1)生産手段の社会化は多様な形態をとるが、どんな場合でも「生産者が主役」という原則を踏み外してはならないこと(ソ連では「国有化」して国家が工場などをにぎりさえすれば、これが「社会化」だということで、現実には官僚主役の経済体制がつくりあげられた。これを絶対にくりかえしてはならないこと)(2)改革の道すじの全体が「市場経済を通じて社会主義へ」という特徴をもつが、どのようにして、計画性と市場経済とを結びつけるのかなどは、知恵の出しどころであること(3)「計画経済」を、国民の消費生活を規制する「統制経済」に変質させてはならないこと―など、基本点を明記しています。(喜)

 〔2006・4・8(土)〕

(出所:日本共産党HP 2006年4月8日(土)「しんぶん赤旗」)
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参議院の補欠選挙(25日投開票)-日本共産党を伸ばし、政治情勢の変化を確実なものにしようー

2009-10-20 18:36:13 | 国内政治
参院補選
共産党勝利で政治さらに前へ
志位委員長が訴え 神奈川

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 鳩山新政権発足後、初めての国政選挙として注目を集めている参院神奈川・静岡両選挙区の補欠選挙(25日投開票)で17日、日本共産党の志位和夫委員長と市田忠義書記局長がそれぞれ応援に入りました。志位氏は横浜、川崎市で、市田氏は静岡、浜松市で「建設的野党」日本共産党の前進を訴えました。

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共産、民主のどちらが伸びれば、政治を前にすすめる力になるか

 志位委員長は、参院神奈川補選について、「共産、民主、自民の三つどもえのたたかいだが、まず自民は率直にいって論外です」と切り出し、「自民党はもっぱら『自民党再生』を訴えているが、『再生』という前に、国民の暮らしと安心の希望を奪ったことへの『反省』こそ必要です。それなしに前向きの仕事はできません」とずばり。

 そのうえで、「今度の選挙の焦点は、日本共産党と民主党のどちらが伸びれば、日本の政治をさらに進める力になるか――ここにあります」と力説。民主党政権には、「政治を変えてほしい」という期待も寄せられているが、「財源は大丈夫か」など不安の声も多いと思うとして、「国民の期待と不安の両方の思いにこたえる『建設的野党』――日本共産党を伸ばしてこそ、自公政権退場後の日本の政治をさらに前にすすめる一番の力になります」と訴えました。

「良いことに協力」――共産党伸ばしてこそ、たしかな実現に道が開かれる

  志位氏は、新政権に「良いことは協力」という立場で臨むが、「その実現は、新政権まかせではすすまない。国民のたたかいを起こし、共産党を伸ばしてこそたしかな実現の道は開ける」と強調。雇用、社会保障、地球温暖化対策、日米「核密約」という焦点の問題で、党躍進の意義を縦横に語りました。

 雇用の問題では、緊急の失業対策を求めるとともに、労働者派遣法の抜本改正など人間らしい労働のルールづくりが急務になっていること、財界・大企業が「国際競争力」を盾にとって抵抗しているもとで、財界・大企業に正面からモノが言える党をのばしてこそ、実現に道が開かれると訴えました。

 社会保障の問題では、後期高齢者医療制度について、新政権が「撤廃」を表明したが、「新制度が出来てから」と2013年に先送りしようとしていることは問題だと指摘。自民、公明は「老人保健制度に戻せば混乱する」といって妨害するが、混乱などおこっていなかったとのべ、すみやかに差別医療の制度は撤廃し、元の老人保健制度に戻し、そのうえで制度をより良くしていこうと力説しました。

「財源は大丈夫か」――三つの問題点をただす

  志位氏は、さらに、「建設的野党」として、「民主党政権の問題点、間違った点は、道理をもってただす仕事にとりくむ」と表明。国民が不安を持っている問題点として、財源問題、「マニフェスト絶対主義」ともよぶべき態度など政権運営・国会運営の民主主義にかかわる問題点について率直な提起をおこないました。

 財源問題にかかわっては、「新政権の来年度予算案の概算要求が史上最高の95兆円超まで膨らむもとで、多くの国民が『財源は大丈夫か』と心配されているのではないでしょうか。予算案がどうなるかは予断をもっていえませんが、次の三つの問題点をただしていきたい」とのべました。

 一つは、「税金の使い方の優先順位はこれでいいのか」という問題です。新政権は高速道路の無料化を掲げているが、「高速道路よりも福祉にこそ優先して税金は使うべきではないか」と訴えました。

 二つは、「財源を庶民増税にもとめる」という問題です。新政権がすすめようとしている「子ども手当」について、子育て支援の経済的給付を拡充することは当然だが、財源を扶養控除、配偶者控除の廃止など、庶民増税に求めることに強い不安が広がっていることを、党本部に寄せられた声などを紹介して指摘。「国民の一部を犠牲にして、一部に回すというやり方は理解が得られない」とのべました。

 三つは、軍事費、大企業・大資産家優遇を「聖域」にしようとしているという問題です。志位氏は、防衛省の概算要求には「米軍再編」「思いやり予算」など軍事費が今年度の当初予算並みに計上され、新政権からは大企業・大資産家優遇税制にも手をつける意志が見られないと指摘。「ここにこそ改革のメスを入れるべきです」と訴えました。

「財界中心」「軍事同盟中心」という政治のゆがみを大本からただす党

 志位氏は、「建設的野党」のもう一つの仕事として、「財界中心」「軍事同盟中心」の政治のゆがみを大本からただす仕事にとりくむ決意を表明。米国オバマ政権が、核兵器問題などで前向きの変化を起こしているが、「日米関係では変化が必要だと思っていない」こと、それは長年にわたって自民党政権が卑屈な対米追従外交を続けてきたからだと指摘。沖縄や神奈川の基地問題についても、それを解決しようとすれば「これまでの追従外交を一変させ、よほど本腰を入れたとりくみをしないと動かない」とのべ、「日米安保条約をなくそうと主張している日本共産党を伸ばしてこそ、基地問題など直面する問題を前向きに解決する道が開かれる」と訴えると、大きな拍手がわきおこりました。

共産党への願い 政治を前に動かす力
参院静岡補選 市田書記局長が訴え

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 日本共産党の市田忠義書記局長は17日、静岡市、浜松市の2カ所で、参院静岡選挙区補選(25日投票)での勝利を訴えました。

 静岡市の清水駅前では、雨が降る中、数十メートルにわたって沿道に連なった傘をさす聴衆。浜松駅前では、パイプイスも準備され、真剣に最後まで演説を聞く多く人の姿が見られました。

 市田氏は冒頭、自公政権ノーの審判を下した先の総選挙を受け、「日本の政治は大きな変化を遂げようとしている」と指摘。ただ、「これからの政治が国民の願う方向に向かうかどうかは、国民の世論と運動、私たちのがんばりにかかっている」と語り、日本共産党が「建設的野党」として(1)国民の切実な要求を実現する(2)悪政の根本にあった財界中心、日米軍事同盟中心の政治を大本からただす―二つの仕事に全力をつくす決意を表明しました。

 そのうえで、「すでにその成果は表れている」と強調した市田氏。たとえば、日米核密約問題で、日本共産党が資料を提供し、岡田外相が事実関係の調査を指示するなど前進させていることを紹介し、「良いことは実現し、悪いことには歯止めをかける大きな力になる」と力をこめると「がんばれ」の声援が飛びました。

 さらに市田氏は、鳩山政権に対し、「いいことをいっている」という期待の声とともに、「やり方が少し強引すぎるのではないか」との心配の声も上がっていることにふれ、「たとえ、いいことであっても、それを実施するにあたっては、国民の合意をえた上で、国会で議論してやるのが当たり前」と、民主党の「マニフェスト絶対主義」というべき強引な態度を指摘。「いま政治に求められている一番の課題は、国民の切実な声に応えることだ」とし、雇用、社会保障、中小零細企業、子育てなどの課題で、暮らしを守ることを具体的に提起しました。

 とくに、昨年を上回る深刻な事態になりかねない雇用問題では、短期契約の非正規雇用で増産体制を敷く大手自動車会社などの姿勢を批判。労働者派遣法の抜本改正とともに、「期間工など直接雇用についても、期限を限った働かせ方への法的規制がどうしても必要だ」と訴えると、大きな拍手で沸きました。

 また、市田氏は「建設的野党」の力の源泉として、日本共産党が財界中心・日米軍事同盟中心の悪政の大本をただす立場に立っていることなどを力説。総額90兆円超に膨らんだ鳩山政権の来年度予算の概算要求額についても「財政難のなかで大丈夫か」という声があがる一番の原因が「歳出もさることながら、歳入のゆがみが正されていないからだ」と述べ、「ムダな軍事費を削り、大企業・大資産家に応分の負担を求めれば、新たな借金や消費税に頼らなくても財源は生まれる」と訴えました。

 市田氏が「大きな支援の輪を広げ抜いて、再び国会に送り出してほしい」と力をこめると、聴衆は大きな拍手で応えました。

(出所:日本共産党HP 2009年10月18日(日)「しんぶん赤旗」)
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