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葛飾ビラ配布弾圧事件の最高裁判決と国公法弾圧堀越事件ー裁判の現状、それに対する人権・民主主義運動ー

2009-12-04 19:25:50 | 憲法裁判
“公平さ期待できず”
堀越事件 弁護団が特別抗告

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 国公法弾圧堀越事件の弁護団は11月30日、東京高裁の中山隆夫裁判長ら3人の裁判官に対する忌避申し立てが却下されたことを受け、「公平で客観性のある審判を期待できない」として、最高裁に特別抗告を申し立てました。

 前回の公判(11月18日)で、弁護側は、新たに開示された公安警察が盗撮したビデオ22本につき、法廷での取り調べを請求、裁判所がこれを却下したことを不服として、忌避を申し立てました。これについても、裁判所は「訴訟を遅延させるのみが目的」として、その場で簡易却下しました。

 今回の特別抗告は、忌避の理由の正当性をめぐって、3裁判官を相手取って裁判を求めたもの。

 弁護団は、今回の忌避は、たんなる訴訟の遅延目的ではなく、重大な争点となっている捜査の違法性、国公法と人事院規則で禁じている政治活動の違憲性を解明する上で、盗撮ビデオの取り調べは必要不可欠だ、と主張。これを取り調べないのは、公平な裁判を受ける権利の侵害(憲法37条)に当たると指摘しています。

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葛飾ビラ配布弾圧判決
各紙が批判
表現の自由脅かす/市民感覚とかけ離れ

 葛飾ビラ配布弾圧事件の有罪判決を受け、新聞各紙は解説や社説で「合点いかぬ最高裁判決」(「朝日」1日付社説)などと、判決に強い疑問を投げかけています。

 「朝日」社説は「ビラを配っている人を逮捕して刑事罰を求めるのは乱暴すぎる。たいていは住民と話し合えば解決する問題だろう」と強引な逮捕を批判しました。

 同社説は「住民や管理人に承諾を得る機会がないとき、玄関の近くにある集合ポストにビラを入れることさえ、逮捕の対象になるのだろうか。こうした疑問への答えを判決からは見いだせない」と、あいまいな司法判断に疑問を呈しています。

 東京新聞1日付社説は、国公法弾圧堀越事件や世田谷国公法弾圧事件をあげて、「まるで、『左翼』と呼ばれる人々らが、警察当局に“狙い撃ち”されている印象さえある」と捜査に疑問を呈しました。

 同11月30日付夕刊の解説は、立川ビラ弾圧事件(昨年、最高裁で有罪判決)との違いに触れ、「立川事件は、住民の抗議後もビラを配り続けた点が悪質とされたが、荒川(庸生)被告は事件当日まで、苦情を言われたことはなかった」と、突然に逮捕され、有罪とされた異常性を指摘。栃木県の地元紙、下野新聞1日付論説も「経緯には釈然としない」と書きました。

 「表現の自由脅かす判決」と題した北海道新聞1日付社説は「疑問の多い判決だ。憲法で保障された権利への配慮を欠き、言論活動を萎縮(いしゅく)させる不安を感じる」「政党ビラの投入は逮捕、拘束され、有罪となるほど悪質な行為なのだろうか。刑事罰を科すのは市民感覚とかけ離れている」と、批判しました。

 一連の言論弾圧事件について、日弁連の人権擁護大会や国連の自由権規約委員会が「懸念」を表明したことを各紙が紹介しています。北海道新聞社説は「国際機関からの批判に答える、どんな論法があるのか」と、判決に問いかけています。

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日弁連がコメント

 日本弁護士連合会は11月30日、同事件の最高裁判決についてコメントを発表しました。

 コメントでは、国際人権(自由権)規約委員会が「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである」という日本政府への勧告を紹介。

 「日弁連は、最高裁に対し、表現の自由の重要性に十分配慮し、国際的な基準を充足する判断を示すよう要望する」とのべています。

(出所:日本共産党HP 2009年12月2日(水)「しんぶん赤旗」)

日本の非常識 世界懸念
ビラ配布弾圧 最高裁不当判決
荒川さん「国際社会に訴える」

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 葛飾ビラ配布弾圧事件で最高裁による有罪判決は、市民による政治活動の自由をめぐって世界の「常識」に照らして日本の「非常識」を浮き彫りにしました。弾圧犠牲者の東京都葛飾区の僧侶・荒川庸生さんは国際的舞台でもたたかう決意を2日、あらためて表明しました。(森近茂樹)

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 荒川さんは、マンションのドアポストへ日本共産党葛飾区議団の議会報告などのビラを配った行為で逮捕、起訴されました。11月30日、最高裁は住居侵入罪を認める判決を確定させました。

 裁判所の判断や市民のビラ配布を弾圧する日本の警察・検察の民主主義を踏みにじる姿勢は、国内だけでなく国際的にも以前から問題視されていました。

 ビラ配布など、言論・表現の自由は、憲法で保障された国民の権利ですが、国際的にも市民的・政治的権利をうたった国際条約の「国際自由権規約」で、表現の自由(19条)、政治参加の権利(25条)を保障しています。

 自由権規約の実行を監視する機関である国連自由権規約委員会は、葛飾事件や国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件など、日本で続発したビラ配布弾圧事件を問題視して2008年10月、日本政府にたいして是正勧告(別項)をおこないました。

 勧告では「私人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法のもとで逮捕・起訴されたことを懸念する」と表明。市民の政治活動を「警察、検察官及び裁判所が過度に制約しないよう」求めています。

 葛飾事件の弁護団は、最高裁にたいして、この事実を指摘して「国際社会での『常識』が問われている」と強く主張してきました。

 日本弁護士連合会は、一連のビラ弾圧を批判して11月6日に決議した「表現の自由を確立する宣言」で、自由権規約委員会の勧告を紹介。「表現の自由にたいするあらゆる不合理な制限を撤廃すべきであるとの勧告がなされた」と指摘しています。

 こうした国内外からの批判を無視した最高裁の判決は、「憲法の番人」としての資格が問われるだけでなく、世界の民主主義の流れにも大きく逆行しています。

 荒川さんは、「日本の最高裁は、憲法も国際規約もまったく守っていない。日本でビラ配布の権利を守るたたかいをすすめると同時に、国際社会にも日本の民主主義と人権を無視した実態を訴えていく。自由権規約の第1選択議定書(個人通報制度)が批准されたら大いに活用するし、それまでも、あらゆる方法でアピールしていきたい」と話していました。

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“政府批判リーフ配布で逮捕を懸念”

国連自由権規約委の日本への勧告(要旨)

 委員会は、公職選挙法の下での戸別訪問の禁止、選挙運動期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由および参政権に対して課せられた非合理的な制約につき懸念を有する。委員会は、政治活動家と公務員が、私人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法の下で逮捕、起訴されたとの報告についても懸念する。

 締約国は、規約第19条および第25条の下で保護されている政治活動および他の活動を、警察、検察官および裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである。

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 第1選択議定書(個人通報制度) 国際自由権規約とセットになった条約で、同規約で保障された権利を侵害された人が、国内の裁判などで権利が回復されない場合、国連の自由権規約委員会へ直接救済の申し立てができる「個人通報制度」を定めています。日本は、自由権規約は批准していますが、同議定書は批准していません。

(出所:日本共産党HP 2009年12月3日(木)「しんぶん赤旗」)

ビラ判決 最高裁を批判
東京弁護士会が会長声明

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 マンションで政党のビラを配布した行為が住居侵入罪にあたるとして最高裁が有罪判決を下した葛飾ビラ配布弾圧事件で、東京弁護士会(山岸憲司会長)は1日、判決を批判し最高裁に「『憲法の番人』としての役割を果たすよう強く要望する」とした会長声明を発表しました。

 声明は「ビラの配布は市民が意見を表明する重要な手段の一つであり、それを警察、検察及び裁判所が過度に制約することは、民主主義の死命を制する重要な人権である表現の自由に対する重大な危機である」と表明しています。

 国際人権(自由権)規約委員会が昨年10月、一連のビラ配布弾圧事件を懸念し、日本政府に「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである」と勧告していたことを指摘。今回の判決は「日本の表現の自由の保障の現状がこのように国際的にも強い批判を受けている中で出されたものであり、その問題性は極めて大きい」、「ビラ配布の憲法上の意義を十分に踏まえ、厳格審査すべきである」と批判しています。

(出所:日本共産党HP 2009年12月4日(金)「しんぶん赤旗」)
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最高裁が不当判決ーこれが「憲法の番人」なのか/警察・検察の弾圧を「合法化」する葛飾ビラ配布事件判決ー

2009-12-02 02:32:38 | 憲法裁判
きわめて反動的な判決
葛飾ビラ配布弾圧で市田氏

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 日本共産党の市田忠義書記局長は30日、国会内で記者会見し、葛飾ビラ配布弾圧事件で被告の荒川庸生氏を有罪とした同日の最高裁判決について、「憲法の精神に照らして許されない、きわめて反動的な判決だ」と批判しました。

 市田氏は、「マンションの廊下や階段を通ることが生活の平穏を侵害する犯罪でないことは誰の目にも明らかだ。国民の常識に反した今回の判決は、自由と民主主義、人権の点から厳しく批判されなければならない」と強調。「マンションの管理組合がビラ配布の禁止を決めた事実はないし、そもそも憲法が保障する表現の自由を管理組合が禁止できるという考え方が誤っている」とのべました。

 また、この判決は国民の目、耳、口をふさぐものであり、他の分野に広がらないよう世論を喚起していく必要があると指摘。「政治的立場を問わず、こういうことが許されていいのかと警鐘乱打し、世論を広げたい」とのべました。

ビラ配布 不当判決
最高裁 上告棄却 弾圧を追認

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 東京都葛飾区のマンションで、日本共産党の区議団ニュースや区民アンケートなどを配布した僧侶の荒川庸生(ようせい)さん(62)が住居侵入罪で不当に起訴された葛飾ビラ配布弾圧事件の上告審判決が30日、最高裁第2小法廷であり、今井功裁判長は、荒川さんの上告を棄却する判決を言い渡しました。罰金5万円とした二審の有罪判決が確定します。日中穏やかにビラを配っていただけの荒川さんの行為を「犯罪」に仕立て上げた違憲・違法捜査に基づく弾圧事件を追認した極めて不当な判決です。

 判決言い渡しの前に、松井繁明主任弁護人による異例の意見陳述が認められました。

 松井氏は「商業ビラの配布は日常的に行われており、なぜビラ配布が犯罪なのかという国民の素朴な疑問に判決は答えるべきだ」とのべ、「本件があからさまな共産党弾圧であることは明らか。司法の名でこれを容認するのか」と厳しく指摘しました。

 しかし、判決は「憲法21条1項は表現の自由を無制限に保障したものでなく、思想を発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害することは許されない」などとしました。そのうえで、マンションの玄関ホールにチラシやパンフレットなどの投函(とうかん)を禁止する張り紙があったことなどから、「立ち入りが管理組合の意思に反することは明らか」などと形式的判断に終始しました。

 同事件で、一審東京地裁は2006年、「ビラ配布を処罰対象とする社会通念は確立していない」として無罪判決。07年、東京高裁が逆転有罪の不当判決を言い渡していました。

 判決後、荒川さんは「自由と民主主義、ビラをまき、受け取る権利を勝ち取るたたかいをこれからも続ける」と語りました。

主張
葛飾ビラ配布事件判決
これが「憲法の番人」なのか

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 東京・葛飾でのビラ配布弾圧事件の上告審で、最高裁第2小法廷は11月30日、マンション各戸へのビラ配布を「犯罪」とした東京高裁判決を追認する判決を言い渡しました。

共同住宅も配布は自由

 僧侶の荒川庸生さんは2004年12月、日本共産党の「葛飾区議団だより」や区民アンケートなどをマンションのドアポストに配布しました。この行為は一般に市民が普通にやっている当たり前の行動であり、マンションの廊下や階段などを通ったことが住居の平穏を侵害する犯罪などではないことは誰の目にも明らかです。

 一審は無罪、二審は有罪。最高裁が「憲法の番人」として求められていたのは、表現の自由と民主主義を守って無罪を言い渡すことです。国民常識に反した今回の判決は、きびしく批判されなければなりません。

 マンションや旧公団など共同住宅へのビラ配布は、政党の政策であれ、労働組合の宣伝であれ、市民運動であれ、商業広告であれ、全住民に対して誰でも気軽にできる大切な表現手段です。とりわけ荒川さんが行ったビラ配布は、都議会、区議会の現状や議員の活動を有権者に知らせ、住民要求を集約するもので、民主主義と地方自治を支える重要な活動です。

 ところが最高裁判決は、言葉の上では「表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければなら」ないとのべながら、マンション管理組合の管理権にもとづくビラ配布の禁止措置は認められるとしました。これは、共同住宅で現実に行われているビラ配布の実態からかけ離れている点でも、最高裁が憲法の民主的原則を棚上げする点でも、まったく説得力のないものです。

 荒川さんが配布したマンションの管理組合は、住民の総意で政治活動用のビラ配布の禁止を決めた事実はありません。荒川さんの件で被害届も出していません。そもそも、憲法の表現の自由で保障されているビラ配布を禁止することを管理組合が決定できる、という考え方が間違っているのです。

 わが国では、自衛隊のイラク派兵が強行されるなかで、政治の民主的改革や「憲法を守れ」と要求するビラ配布に対する弾圧が相次ぎました。葛飾ビラ事件や、国家公務員が休日に職務と無関係に「しんぶん赤旗」号外を配布したことを、国公法・人事院規則の政治活動制限に違反するとした堀越事件、世田谷事件がそれです。

 これに対し、国連自由権規約委員会は昨年12月、日本政府に言論表現の自由を守る措置をとるよう勧告しています。裁判所が言論表現の自由を守ることができない現状が続いていることに、国内外からさらにきびしい批判が寄せられるのは避けられません。

日比谷集会の成功を

 言論表現の自由を守るたたかいを粘り強く広げてきた全労連、国公労連、自治労連、国民救援会、自由法曹団など実行委員会は4日、「言論・表現の自由を求める12・4日比谷集会」を開催します。

 憲法で保障された言論の自由を現実にゆきわたらせるため、葛飾ビラ配布最高裁判決に抗議し、ビラ配布の権利を守る世論をいっそう広げましょう。その新たな一歩として日比谷集会を大きく成功させることをよびかけます。

(出所:日本共産党HP 2009年12月1日(火)「しんぶん赤旗」)

ビラ配布禁止掲示 どう考える?

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 〈問い〉 最近、私が入居したマンションにビラ配布禁止の掲示があります。管理組合で話し合いたいと思っていますが、言論の自由、政治活動の自由と、住民の安全等との関連をどう考えたらいいのでしょうか?(神奈川・一読者)

 〈答え〉 マンション住民が安全に暮らしたいという願いと、言論、政治活動の自由を尊重することとは、当然両立できるものです。

 マンションの多くは、建物ができた時から「ビラ・チラシお断り」「チラシなど無断立ち入り禁止」などの掲示がされています。管理組合で議決して同種の掲示をしているところもあります。

 しかし、そこにはよく考えなくてはいけないことがたくさんあります。まず、外部の人が来てマンションの集合ポストなどにビラ配布をする行為がただちに居住者の安全等を侵害するというものではありません。警察が住民の不安を利用し、ビラ配布に対し安全を侵害するとみなした防犯対策を奨励していることも問題です。

 政党や諸団体の政策や活動を知らせるビラの配布は、何よりも憲法の保障する言論・表現、政治活動の自由として最大限に尊重されなければなりません。

 それは、国民が政治的意思を形成するうえで重要な媒体です。政治活動ビラは「民主主義社会の根幹を成すものとして…商業的宣伝ビラの投函(とうかん)に比して、いわゆる優越的地位が認められている」との判決もあります(東京地裁八王子支部、04年12月16日判決)。ですから、政治活動ビラの配布に不安や迷惑を感じる人も、政治活動を保障するため、ビラ配布を認めることが大切だといえるでしょう。

 同時に、居住者にとって配布されたビラを読むのは、知る権利を実現することです。管理組合が、ビラを読みたいという居住者の意思を無視して配布を制限することはできません。

 実際にビラ配布を一切禁止すると、どんな問題が起こるでしょうか。東京のある管理組合で「ビラの一切禁止」の掲示が問題になりました。そこでは、議論の結果、自治体の断水工事や電気会社の欠陥製品対応のお知らせが届かなくなれば、「生活に不便だから配布一切禁止はダメ」「配布は認めよう」と合意し、さらに「『このビラはよい、政党のビラは悪い』などと管理組合で一般的に選別することはできない。ビラを読む・読まないは居住者が決めることだ」と一致、掲示内容を「風俗関係の広告物は厳禁します。防犯のため不審者は警察に通報します」に変えました。

 管理組合は、政治活動の自由と居住者の知る権利を保障しつつ、安全や防犯対策をすすめることが必要だと考えます。(岡)

(出所:日本共産党HP 2006年9月2日(土)「しんぶん赤旗」)

違憲立法審査の現状は?

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 〈問い〉 最高裁の違憲立法審査の現状はどうなっているのでしょうか?(京都・男性)

 〈答え〉 違憲立法審査権は、司法権の立法権に対するチェック機能としてきわめて大切な意義をもち、憲法第八一条で「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審の裁判所である」と定められています。

 最高裁が具体的事件をもとに違憲立法かどうかの審査を求められることは多いのですが、違憲立法だとの判断をくだすことにはきわめて消極的です。歴代自民党内閣が最高裁裁判官の任命権を利用して政府の意にそう裁判官を集めてきた結果です。

 最近は、憲法の民主的条項を尊重する日弁連推薦の弁護士出身の最高裁裁判官が任命されるようになり、世論の高まりを背景に、違憲立法審査の判断に一定の変化が生まれつつありますが、衆院・参院の定数格差是正を求める訴訟、嫡出子と非嫡出子との間に相続分の格差を設けた民法の規定は法の下の平等に反するとの訴訟でも、違憲判断をする裁判官は依然として少数にとどまっています。

 日本共産党は、最高裁判所裁判官の任命のあり方を、真に国民の意思が反映するよう、国民各層の代表者で構成される最高裁裁判官任命諮問委員会をつくり、内閣の最高裁長官の指名と最高裁裁判官の任命にあたっては、諮問委員会の答申を尊重させることによって、内閣の恣意的人事を排し、任命の民主化をはかることを提案しています。

 総選挙時の最高裁裁判官国民審査でも、判決に対する各裁判官の態度について日常的に積極的な広報や報道をおこなうことや、投票では信任は〇印、不信任は×印を記入することとし、無記入投票は棄権とみなすなど改善が必要です。違憲が争われている裁判について、国民のあいだでの宣伝や署名運動を広範に発展させ、裁判所を国民世論で包囲するようなとりくみが大事です。(光)

〔2004・2・14(土)〕

(出所:日本共産党HP 2004年2月14日(土)「しんぶん赤旗」)
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日弁連が表現の自由考えるシンポービラ配布弾圧問題を正面から取り上げた決議をあげるのは初めて-

2009-11-09 01:54:39 | 憲法裁判
「ビラ配布逮捕」に警鐘
日弁連 表現の自由考えるシンポ

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 日本弁護士連合会の第52回人権擁護大会が5日から2日間の日程で、和歌山市内で始まりました。5日は三つのシンポジウムが催され、「いま表現の自由と知る権利を考える」をテーマにした第1分科会には全国から弁護士や市民ら約620人が参加。政治的なビラを配布しただけで逮捕・起訴され有罪となる状況を厳しく批判しました。

 人権擁護大会で表現の自由問題を本格的に取り上げたのは初の試みです。基調報告書は、日本共産党のビラを配布して逮捕・起訴された葛飾ビラ配布弾圧事件、国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件や市民団体メンバーの自衛隊官舎へのビラ配布で有罪が確定した立川事件などの事例を紹介。「日弁連は(ビラ配布などへの)制約を見過ごすと、表現の自由に対する制約がより拡大しかねないと危惧(きぐ)している」と警鐘を鳴らしています。

 「表現の自由保障の現状と課題」と題して立命館大学法科大学院の市川正人教授が基調講演。簡易で安価なビラの戸別配布が市民の表現手段として大きな意義があると指摘。「裁判所が大衆的宣伝にたいする規制にチェックの役割を果たしていない」と批判しました。

 事件の当事者として葛飾事件の荒川庸生さんが、「私の事件の最高裁での判決は、日本の民主主義の分水嶺(れい)となる」と裁判勝利への決意を語りました。

 表現の自由や裁判所の現状などを考えるパネルディスカッションもおこなわれました。

(出所:日本共産党HP 2009年11月6日(金)「しんぶん赤旗」)

日弁連 人権擁護大会で
ビラ弾圧批判を決議

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 日本弁護士連合会が和歌山市で開催した第52回人権擁護大会最終日の6日、政治的ビラの配布にたいする規制を批判し、自由な配布を求める内容などを盛り込んだ「表現の自由を確立する宣言」を決議しました。日弁連がビラ配布弾圧問題を正面から取り上げた決議をあげるのは初めてです。

 「宣言」は、政治的内容のビラを投函(とうかん)する行為で住居侵入罪や国家公務員法違反で逮捕・起訴され、有罪判決を受けるなど「刑罰をもって市民の政治的表現の自由が脅かされる事態が生じている」と憂慮。国際人権(自由権)規約委員会からも不合理な制限の撤廃を勧告されていると指摘しています。

 市民の重要な意見表明の手段であるビラ配布を過度に制限することは「ビラの配布規制にとどまらない市民の表現の自由の保障一般に対する重大な危機」と警鐘を鳴らしています。

 こうした事態打開のための日弁連の提言として▽国、地方公共団体、特に警察や検察は、市民の政治的表現行為に干渉・妨害しない▽裁判所が「法の番人」として、市民の表現の自由に対する規制を厳格に審査する▽政府、国会は早急に公職選挙法および国家公務員法などを改正する―ことなどを求めています。

 人権擁護大会では、取り調べの可視化、地球温暖化、消費者被害、人権擁護などの問題でも宣言を決議しました。

(出所:日本共産党HP 2009年11月7日(土)「しんぶん赤旗」)

ビラ配布禁止掲示 どう考える?

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 〈問い〉 最近、私が入居したマンションにビラ配布禁止の掲示があります。管理組合で話し合いたいと思っていますが、言論の自由、政治活動の自由と、住民の安全等との関連をどう考えたらいいのでしょうか?(神奈川・一読者)

 〈答え〉 マンション住民が安全に暮らしたいという願いと、言論、政治活動の自由を尊重することとは、当然両立できるものです。

 マンションの多くは、建物ができた時から「ビラ・チラシお断り」「チラシなど無断立ち入り禁止」などの掲示がされています。管理組合で議決して同種の掲示をしているところもあります。

 しかし、そこにはよく考えなくてはいけないことがたくさんあります。まず、外部の人が来てマンションの集合ポストなどにビラ配布をする行為がただちに居住者の安全等を侵害するというものではありません。警察が住民の不安を利用し、ビラ配布に対し安全を侵害するとみなした防犯対策を奨励していることも問題です。

 政党や諸団体の政策や活動を知らせるビラの配布は、何よりも憲法の保障する言論・表現、政治活動の自由として最大限に尊重されなければなりません。

 それは、国民が政治的意思を形成するうえで重要な媒体です。政治活動ビラは「民主主義社会の根幹を成すものとして…商業的宣伝ビラの投函(とうかん)に比して、いわゆる優越的地位が認められている」との判決もあります(東京地裁八王子支部、04年12月16日判決)。ですから、政治活動ビラの配布に不安や迷惑を感じる人も、政治活動を保障するため、ビラ配布を認めることが大切だといえるでしょう。

 同時に、居住者にとって配布されたビラを読むのは、知る権利を実現することです。管理組合が、ビラを読みたいという居住者の意思を無視して配布を制限することはできません。

 実際にビラ配布を一切禁止すると、どんな問題が起こるでしょうか。東京のある管理組合で「ビラの一切禁止」の掲示が問題になりました。そこでは、議論の結果、自治体の断水工事や電気会社の欠陥製品対応のお知らせが届かなくなれば、「生活に不便だから配布一切禁止はダメ」「配布は認めよう」と合意し、さらに「『このビラはよい、政党のビラは悪い』などと管理組合で一般的に選別することはできない。ビラを読む・読まないは居住者が決めることだ」と一致、掲示内容を「風俗関係の広告物は厳禁します。防犯のため不審者は警察に通報します」に変えました。

 管理組合は、政治活動の自由と居住者の知る権利を保障しつつ、安全や防犯対策をすすめることが必要だと考えます。(岡)

 〔2006・9・2(土)〕

(出所:日本共産党HP 2006年9月2日(土)「しんぶん赤旗」)
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世田谷国公法事件-宇治橋さんに不当判決 東京地裁-

2008-09-21 01:31:46 | 憲法裁判
世田谷国公法事件
ビラ弾圧に屈しない
宇治橋さんに不当判決 東京地裁

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 厚生労働省職員だった宇治橋眞一さん(60)が休日に職場から離れた場所で「しんぶん赤旗」号外を配り、国家公務員法違反の罪に問われた事件の判決公判が十九日、東京地裁でありました。小池勝雅裁判長は、ビラ配布が「公務員の政治的中立性に抵触する、強い違法性を有する行為」だとして、求刑通り罰金十万円の実刑判決を言い渡しました。宇治橋さんは不当判決として控訴します。

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 公判で検察側は、郵便局職員の選挙活動を違法とした猿払事件最高裁判決(一九七四年)に全面的に依拠して、宇治橋さんの行為の違法性を主張していました。

 この日の判決は猿払判決について「有力な学説からも厳しい批判が加えられている」としながらも、「合理性を欠くとはいえず、同種事案の解決の指針として確立している」と論述。「下級裁判所としては同判決を尊重すべき立場」だと述べました。

 その上で、宇治橋さんの行為を「政治的偏向の強い行為」だと指摘。こうした行為が「自由に放任されると、公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政に対する国民の信頼が損なわれる」と、猿払判決の論理をほぼ踏襲して述べました。

 弁護側は公判で「勤務時間外に私服でビラを配っただけ。なんら犯罪行為ではなく、行政の中立性を損なう危険もなかった」と無罪を主張していました。

 この点について判決は「公務の中立性が具体的に害されなかったとしても、(政治的行為を禁じた)国公法の規定を適用することは違憲ではない」と断言。国家公務員の表現の自由が制約されるとしても「間接的、付随的なものに過ぎない」としました。

 この事件では、警視庁公安総務課が捜査の主体になりました。弁護団は「日本共産党を対象とした違法捜査だ」と指摘しましたが、判決は「(本件が)捜査機関の日本共産党に対する差別的な取り扱いに基づくとはいえない」と述べ、公安警察の捜査を追認しました。

“検察の言いなりだ”
 「不当判決に抗議する」「ビラ配布の権利を守れ」―。世田谷国公法弾圧事件で「不当判決」の垂れ幕が掲げられると、東京地裁前に怒りのシュプレヒコールがこだましました。

 毎回のように傍聴に訪れ、裁判を支援してきた元国家公務員の女性は、「ビラ配りが犯罪なんてどう考えてもおかしい。勝つまで応援していきます」と話しました。

 判決後、地裁前で行われた抗議集会では、宇治橋眞一さんが「検察官の言いなりの恥ずかしい判決です。裁判所の良識が問われます。無罪判決を勝ち取るまでがんばります」と力強く訴えました。

 弁護団の小部正治弁護士が「血も涙もない最悪の判決だ」と判決内容を厳しく批判しました。

 参加者の一人、東京都品川区の男性(62)は「判決は政治的なビラまきを委縮させることが狙いです。絶対に負けるわけにいきません。みんなでどんどんビラをまいて、きたるべき総選挙にも勝利し、不当判決をはね返したい」と語りました。

主張
世田谷国公法弾圧事件
国民のビラ配布の権利守ろう

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 集合住宅へのビラ配布で、また不当な判決が出されました。東京・世田谷での国家公務員法による弾圧事件です。

公務員ゆえの不当判決
 政党や政治団体の構成員や支持者などが、集合住宅や一戸建て住宅の郵便受けにビラを配ったり、駅頭や街頭でビラを配布したりすることは、日本中で普通に行われている政治活動です。とくに住宅へのビラ配布は、まわりから見て配っている人がどんな職業なのかなどは、全く関係ありません。

 ところが、ふつうの人が配れば何でもないことが一般の国家公務員が配れば犯罪だというのが、今回の国公法事件で厚生労働省職員の宇治橋眞一さんに東京地裁が言い渡した判決の論理です。一般の国家公務員には憲法に認められている表現の自由や政治的権利がないなどということはありません。

 そもそも一般の国家公務員に政治的行為が制限されているのは、「行政の中立性」を守る必要があるからだというのが当局側の説明です。一般の公務員を指揮する首相や各省大臣、副大臣、政務官なども、こと行政にかかわるかぎりは、「行政の中立性」を守らなければなりません。憲法第一五条に、公務員は「全体の奉仕者」とされているとおりです。しかし、彼らは特別公務員として、政治的行為は何ら制限されていません。

 一方で政治家として全面的な政治活動をおこなっていても、「行政の中立性」は守っているし、守れるというのでしょうか。実際に彼らが「行政の中立性」を守っているかどうかは別としても、制度としては指揮をするトップは限りなく政治活動をしても行政にあたっては中立性が守れて、指揮される一般の公務員は時間外に職場とまったく離れた場所で、国家公務員だということを誰にも知られずにビラを配布しても違法だ、犯罪になるというのは、まったく納得できない不思議な理屈だといわなくてはなりません。

 この不思議な理屈は、裁判所の判例としては一九七四年の猿払事件など三事件の最高裁判決で出されたものですが、憲法などの学会ではきびしく批判されているものです。そういうこともあって、その後、この政治的行為の規定(人事院規則)では、ほとんど取り締まりがなされてきませんでした。

 そういう時代錯誤の規定を、〇六年の国公法堀越事件につづいて、また判決でよみがえらせ、正当な言論行為、表現の自由をおさえつける武器にしようというのは、絶対に許されることではありません。政治的行為の規定による国家公務員への刑事罰攻撃は、適用してはならないだけでなく、規定そのものの廃止こそ、いまなされなければならないことです。

言論の自由守るために
 言論の自由にたいする攻撃であるビラ配布裁判では、もうひとつマンションへのビラ配布を住居侵入罪で起訴した東京・葛飾事件もあります。国政を民主的に改革し、政治の中身を変える活動のなかで、言論の自由を守り、拡大することはいよいよ大切になっています。

 日本共産党は、国公法堀越事件の控訴審、葛飾ビラ配布事件の上告審とあわせ、国公法世田谷事件の控訴審での勝利めざして、世論と運動を広げ、国民と力を合わせて、いっそう奮闘する決意です。

 世田谷国公法事件
公務員の権利を無視
時代錯誤で不当な判決
日本共産党 市田忠義書記局長が談話

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 日本共産党の市田忠義書記局長は十九日、国公法世田谷事件の東京地裁判決について、次の談話を発表しました。

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 国公法世田谷事件で、東京地裁は本日、宇治橋眞一氏にたいして、罰金十万円の有罪判決を言い渡した。

 世田谷事件は、厚生労働省職員の宇治橋氏が、二〇〇五年総選挙の最終日に、世田谷区内の警察官官舎に「しんぶん赤旗」号外を配布したもので、配布場所では住居侵入という別の容疑で検挙されたものが、宇治橋氏が国家公務員だと判明すると、住居侵入は不問に付して国家公務員法違反(政治的行為)で起訴していたものである。

 国家公務員法にもとづいて人事院規則として制定されている政治的行為の禁止規定は、すべての国民に表現の自由などを保障している憲法二一条や国際自由権規約に反する違憲・違法の規定であることは、ひろく学会や言論界から指摘されていることである。今回の判決は、各方面から批判をあびて事実上もちいることのできなかった一九七四年の猿払事件の最高裁判決を、〇六年の国公法堀越事件につづいて復活させようとする時代錯誤のものである。

 裁判では、住居侵入での逮捕の違法性、そもそも国公法と人事院規則の政治的規定による規制の違憲性、業務時間外に職場と無関係の場所で、かつ国家公務員の外見のまったくない状況のもとでの政治活動が人事院規則にさえまったく抵触しないこと―などを明確にしてきたが、裁判所はこれらの主張を一顧だにすることなく、有罪判決を下したことは、きわめて不当である。

 日本共産党は、公務員の市民的政治的自由を確立するために、世田谷事件と堀越事件の二つの国公法事件の裁判を、当事者と弁護団、労働組合や諸団体、個人と協力して、世論と運動を発展させ、当事者の無罪をかちとるとともに、国家公務員の政治的行為の規制そのものを打ち破るために、全力をあげていきたい。

(出所:日本共産党HP  2008年9月20日(土)「しんぶん赤旗」)
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裁判員制度は実施延期をー日本共産党の見解/市田書記局長が記者会見(要旨)ー

2008-08-09 05:45:10 | 憲法裁判
裁判員制度 実施延期を
国民の合意、条件整備不十分
市田氏が会見

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 来年五月に実施予定の裁判員制度について、日本共産党の市田忠義書記局長は七日、国会内で記者会見し、「制度への国民の合意がなく、冤罪(えんざい)を生まないための制度保障も進んでいない」として、実施を延期することを強く求めました。今後、政府への申し入れやほかの野党への働きかけを検討します。(会見要旨)

 市田氏は裁判員法の成立(二〇〇四年)について「民主的な司法を実現する第一歩としてわが党も賛成した。ただし無条件の支持ではなく、実現のためにはさまざまな環境整備が必要だと主張してきた」と説明しました。

 その上で、同制度をめぐる現状について▽日本世論調査会の調査(三月)で、裁判員を「務めたくない」と答えた人が72%で、「務めてもよい」(26%)の三倍に達するなど、国民多数の合意が得られていない▽国民が安心して参加できる条件が整備されていない。例えば選ばれれば「原則として拒否できない」とされながら、職場で公休扱いされる保障がない。また、守秘義務違反などに罰則が設けられている▽殺人や放火などの重大事件が対象になるのに、短期間で結審することを見込んでいる。検察側証拠の全面開示や取り調べ過程の全面可視化が実現しないままでは「冤罪(えんざい)を生む新たな舞台」になりかねない―などの問題点を列挙しました。

 法曹関係者からも延期を求める声があがっていることも指摘。「こうした主張を無視し、国民的合意のないまま実施すれば、重大な禍根を残す」と強調しました。

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 裁判員制度 国民から無作為に選ばれた裁判員が裁判官と同じ権限で刑事裁判に関与する制度。司法にたいする国民の理解をすすめ、その信頼の向上を図ることを目的に、二〇〇四年五月の国会で、裁判員法が成立しました。対象となる事件は殺人、強盗致死など死刑または無期懲役・禁固にあたる重要事件で、〇七年の場合二千六百四十三件(全事件の2・7%)。裁判では原則として裁判官三人、裁判員六人の合議で、有罪か無罪か、有罪の場合の量刑をどうするかを決めます。

裁判員制度の延期求める
市田書記局長の記者会見(要旨)

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 日本共産党の市田忠義書記局長が七日、裁判員制度の延期を求めて国会内でおこなった記者会見の要旨を紹介します。

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 一、今日会見を開いたのは、裁判員制度についての日本共産党の態度について明らかにするためです。裁判員制度が、来年五月から実施されます。年内にも裁判員候補が決定され、約三十万人にその通知がなされる予定になっています。

 一、日本共産党は以前から司法制度の民主的改革を主張し、民主的で公正な司法を実現する第一歩であり、国民への司法参加の出発点になるものとして、裁判員法に賛成しました。この法律は、二〇〇四年に成立したものです。

 一、同時に、わが党は、裁判員制度の実施と導入にあたっては、「さまざまな環境整備」が必要であることを賛成したおりにも強調し、実施までの間に、政府や裁判所が必要な環境整備をおこなう必要があることを一貫して主張し、関係する委員会の場でもさまざまな問題点を指摘し、改善を求めてきました。

 一、制度の実施まで一年を切ったにもかかわらず、この制度にたいする国民の合意がなく、このまま実施することには国民の納得をえられないこと、また国民が参加しやすい制度という点でも、この間の条件整備はけっして十分ではなかったこと、さらに、冤罪(えんざい)を生まない司法を実現するという点でも、現状のままでは重大な問題点をはらんでいるといわなければなりません。また、この問題を直接担当する法曹関係者からも、深刻な懸念が表明されています。したがって、来年からの制度の実施については再検討し、実施を延期することを強く求めます。

国民の合意・理解が得られていない
 一、制度実施の延期を求める第一の理由は、裁判員になることにたいして、国民の多数が消極的、否定的な意見をもっていることです。日本世論調査会による調査(三月)によれば、裁判員を務めたくないという立場を表明した人は72%、務めてもよいと表明した人は26%で三倍に達しています。この制度を管轄する最高裁の調査でも、「参加したくない」とする意見(38%)は、「参加してもよい」(11%)の三倍以上となっています。

 裁判員制度に対する国民の合意がないまま制度を実施するなら、司法制度の民主化と国民の裁判参加という制度の前向きの方向に逆行する重大な矛盾に直面することは明白です。

 国民からの理解を得られていないということです。制度に賛成の人も反対の人も、世論の状況を見ると、圧倒的な国民が裁判員にはなりたくないと考えている。国民的合意が得られていないもとで、すでに決まっているからといって来年五月から実施するというのはよくない、というのが、第一の理由です。

安心して裁判員になる条件が整っていない
 一、第二の理由は、国民が安心して裁判員になるための条件整備が、依然として整っていないことです。

 その一つは、仕事や日常生活との関係で、裁判員になることが過大な負担となりかねないことです。裁判員になれば、最低でも三日間から五日間、場合によっては一週間や十日以上にもわたって、連続的に裁判員として裁判に参加しなければなりません。この間、どのような地域に住もうと、どんな職種であろうと「原則として裁判員を辞退できない」とされています。しかも、会社員の場合、それが「公休」扱いされるかどうかは、個々の企業の判断に委ねられることになっています。中小零細企業や自営業者の場合も、辞退できるかどうかの明確な基準はなく、それぞれの裁判所の判断に任せられています。

 二つ目は、裁判員になることにともなうさまざまな罰則が設けられている問題です。その代表的な例が、裁判員の「守秘義務」です。これは、判決にいたる評議などについて、家族であれ友人であれ、その内容を明らかにすることを禁じたものですが、それに違反した場合、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が科せられることになっています。わが党は、裁判員法の採決にあたって、こうした罰則を取り除く修正案を提起しましたが、改めてこうした罰則のあり方を検討することが求められています。

 三つ目は、裁判員になることの心理的な負担・重圧や、思想・信条にかかわる問題です。裁判員制度の対象となる裁判は、死刑や無期懲役・禁固刑につながる「殺人」や「強盗致死傷」、「放火」などのいわゆる「重大犯罪」です。こうした裁判では、ふだん接することのない犯罪被害者や現場の写真、証拠などに直接触れることになります。

 これが心理的負担になることは、当の裁判所自身が「裁判員の心のケアが必要」というほどのものです。一方、国民の間には、死刑制度をはじめとして「人を裁くこと」にたいして、否定的な見方も含めさまざまな考え方があります。各種の世論調査でも、裁判員になりたくないとする最大の理由は、「有罪、無罪の判断が難しい」「人を裁くことをしたくない」などが挙げられます。

「冤罪」を生まない制度的保障がない
 一、第三の理由は、「冤罪」を生まないための制度的な保障がないことです。この点で、最も懸念されることは、裁判の対象が重大犯罪であるにもかかわらず、最初から三日ないし五日間程度で結審すると見込んでいることです。裁判を短期間で終わらせるために、裁判員制度の導入の際に「公判前整理手続」を行うことになっていますが、これは、裁判員を除く職業裁判官と検察、弁護士の三者が、非公開で裁判の進め方と証拠、論点を事前に話し合うというものです。しかし、証拠の開示が捜査当局の一方的な意思の下に置かれ、警察や検察による被疑者の取り調べが密室で行われている現状で、こうした制度が導入されれば、裁判員裁判が「冤罪を生む新たな舞台」にさえなりかねないということです。

 一、裁判員制度については、それを直接担うことになる法曹関係者からも延期を求める声があがっていることは、真摯(しんし)に受け止めなければなりません。いくつかの弁護士会もそういう意見表明をしています。

 国民の間に合意がなく、法曹関係者の中にもさまざまな意見があります。

 こういう主張や現状を無視したまま制度を実施するなら、重大な禍根を残す結果にならざるを得ません。したがって、再検討をして実施の延期を求めるというのが、わが党の立場です。

(出所:日本共産党HP  2008年8月8日(金)「しんぶん赤旗」)
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神奈川県川崎市(阿部孝夫市長)の政党機関紙購読調査事件ー反共市長と公明党が共産党潰しー 

2008-07-21 00:40:03 | 憲法裁判
職員の人権守ろう
政党機関紙訴訟で学習会
川崎

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 神奈川県川崎市(阿部孝夫市長)による市幹部職員への政党機関紙購読調査に対し、市職員など六氏が憲法違反の思想調査だとして市を相手に損害賠償を求めている裁判(横浜地裁川崎支部・二十九日結審)の学習会が十八日、川崎市で開かれ七十人が参加しました。主催は同裁判を支援する会。

 証人として法廷に立った日本共産党前市議の西村英二、元民放アナウンサーの安藤八重子、元市職員の星田一雄、角田(つのだ)和嘉子の四氏が思いを語りました。

 角田氏は「(調査は)市長が中立性を破って職員の心のなかまで支配するもの」とのべ、安藤氏は「市民のための仕事をする職員を色分け・排除することは市民のためにならなくなると予測したが、市役所が活気を失い、市が住民を敵視するようになり、(予測が)現実になった」とのべました。

 岩村智文弁護団長が講演し、購読調査は阿部市長が公明党と組み、市職員の思想信条を攻撃して市長の反共路線へ服従させるためのものだと批判しました。また、公務労働者の内心・思想の自由、知る権利、プライバシー権など基本的人権を守り発展させるべきだとのべました。

 日本共産党の石川建二川崎市議が、阿部市長が職員削減をすすめるなか、毎年五人の自殺者が出るような職場になっている実態を示し、職員の人権を守るためにたたかう決意をのべました。

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 川崎市の政党機関紙購読調査 「しんぶん赤旗」購読で市職員に共産党市議が圧力をかけているとの公明党議員の二度の質問にこたえ、阿部孝夫市長が、いっせい地方選前の二〇〇三年三月、係長以上の職員全員に「市議から政党機関紙購読の勧誘を受けたことがあるか」「圧力を感じたか」「購読したか」などを聞くアンケート調査を実施したもの

(出所:日本共産党HP 2008年7月20日(日)「しんぶん赤旗」)
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平和・人権裁判勝利へ-静岡 全国交流集会始まる-

2008-07-02 07:19:11 | 憲法裁判
平和・人権裁判勝利へ
静岡 全国交流集会始まる

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 平和や基本的人権にかかわる裁判に取り組む人が経験を交流する「裁判勝利をめざす全国交流集会」が二日間の日程で二十九日、静岡県熱海市で始まりました。自衛隊のイラク派兵を違憲とした名古屋高裁判決やえん罪事件、裁判員制度などについて、当事者らが意見を交わしました。

 全労連と自由法曹団、日本国民救援会の共催で、今年で十八回目。全国の事件当事者や弁護団、支援団体メンバーなど約百七十人が参加しました。

 特別報告に立ったイラク派兵差止訴訟弁護団事務局長の川口創弁護士は「法廷で裁判官に、イラクでの掃討作戦の実態を、具体的な事実で伝え続けた。判決は、自衛隊『違憲・合憲』の議論を超えた次元で、すでに日本が多国籍軍の一員として参戦していることを正面から認めた。この判決を生かしていくことが大切だ」と語りました。

 留置場での同房者の証言を証拠として殺人などの罪に問われ、無罪判決を受けた「えん罪引野口事件」の元被告、片岸みつ子さんと長男の和彦さんも経緯を報告。「刑事事件を長期にたたかうのは困難なこと。知人らがつくってくれた『支える会』に助けられた」と、支援団体の大切さについて述べました。

 関西学院大学大学院の川崎英明教授(刑事訴訟法)は「裁判員制度のもとでどう裁判をたたかうか」と題し講演。「裁判員は公判を実際に見て判断する。これまでの調書依存、自白依存の刑事裁判を克服する契機にすることが求められる」と語りました。

 日本共産党の仁比聡平参院議員も出席。「個別の裁判を通じて基本的人権を実現するため、政治の立場からも力を尽くす」とあいさつしました。

 その後、ビラ弾圧などの言論弾圧事件、非正規や解雇などの労働事件、刑事の再審事件など六つの分科会に分かれて議論しました。

(出所:日本共産党HP  2008年6月30日(月)「しんぶん赤旗」)
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生存権訴訟:老齢加算廃止、生存権侵害せず 原告12人の請求棄却--東京地裁

2008-06-28 01:43:15 | 憲法裁判
 生存権訴訟:老齢加算廃止、生存権侵害せず 原告12人の請求棄却--東京地裁

 70歳以上の生活保護受給者に上乗せ支給されていた老齢加算を廃止したのは生存権を保障した憲法に違反するとして、東京都内の高齢者12人が居住する3市7区に廃止処分の取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は26日、請求を棄却した。全国8地裁に起こされた同種訴訟で初の判決。原告側は控訴する方針。【銭場裕司、夫彰子】

 大門匡(たすく)裁判長(岩井伸晃裁判長が代読)は「生活保護費に付加して給付されている老齢加算を廃止しても、現実の生活水準を無視した著しく低い基準になるとは言えない」と述べた。食費を切り詰めたり、葬儀列席を控えている原告の生活については「不自由を感じる場面が少なくなく、廃止を問題視するのは無理からぬことだ」と理解を示しつつ「憲法25条が保障する『健康で文化的な最低限度の生活』を満たしていないとは言えない」と判断した。

 廃止の理由として厚生労働省は「低所得層の単身世帯では70歳以上の支出が60代を下回り、老齢加算に見合った『特別な需要』はない」としてきたが、判決は「合理的な根拠があり、裁量権の逸脱・乱用はない」と追認した。

 老齢加算は、高齢者には消化に良い食べ物や暖房が必要で、墓参りなど社会的費用もかかるとして1960年に創設された。対象者は約30万人。各原告は月額1万7930円を受給していたが、04年度9670円、05年度3760円と段階的に引き下げられ、06年度に全廃された。

 ◇小泉改革で決定、母子加算も全廃
 老齢加算は「小泉改革」で社会保障費の抑制論が強まる03年末、厚生労働省の生活保護に関する検討会の提言がきっかけで廃止が決まった。その流れで一人親や両親不在の世帯を対象にした母子加算も、05年度から段階的な減額が始まり、来年度には全廃される。

 両加算の撤廃は「(生活保護を受けない)低所得世帯の方が受給世帯に比べ消費支出額が少ない」との検討会の提言が根拠。今回の判決は、家計調査をもとに生活保護世帯を「低所得層より豊か」と位置付け「生活の最低基準」までも相対比較で切り下げる厚労省の方針に沿った内容になった。厚労省の江利川毅事務次官は26日の会見で「生活実態に合うよう制度設計をしてきた政府の方針が基本的に認められたと考える」と判決を評価した。

 ◇「早く死んでくれと言わんばかり」 79歳、年20万円以上カットされ--原告団長
 「予想を裏切られた。国は金のない年寄りに早く死んでくれと言わんばかりです」

 原告団長の横井邦雄さん(79)は判決後の会見で悔しさをにじませた。

 横井さんの毎月の収入は生活保護費の約7万5000円のみ。老齢加算の廃止で年20万円以上がカットされ、おかずを2、3回に分けて食費を切り詰める生活が続く。「結局は食費を削って寿命を縮めている。見舞いや葬式も不義理にしてしまい、心に痛みが残ります」と語った。

 慢性のバセドー病を患う長女(56)と2人で暮らす原告の八木明(めい)さん(82)は「自分がいなくなった後、長女の生活はどうなるのか。このままだと切り捨てられる一方になる」との思いで裁判に加わった。会見では「勝訴しか考えていなかったので、涙がぽろぽろこぼれて止まらなかった。生活が苦しい人たちを裏切っていいのか」と唇をかみしめた。

 原告代理人の新井章弁護士は「全く時代感覚に欠けた判決。高裁に適正な判断を仰ぎたい」と批判した。

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 ■解説

 ◇生活実態調査、判決も「強く要請」
 東京地裁判決は憲法が保障する生存権の侵害は否定したが、生活保護を受ける高齢者の不自由さも指摘した。財政難を理由に社会保障費を安易に削る行政の動きにお墨付きを与えたわけではなく、厚生労働省には生活保護の理念と生活実態に即したきめ細かい制度運用が求められる。

 生存権が争点になった大型訴訟は、1960年の1審判決で低すぎる生活保護基準が違法とされた「朝日訴訟」以来。2審で逆転敗訴したが、基準はその後向上した。しかし、緊縮財政が続く中で老齢加算が廃止され、再び生存権の問題が浮上した。

 全日本民主医療機関連合会によると、老齢加算の廃止後、5割超の世帯が食費を切り詰め、約4割が洋服を全く買っていない。聞き取り調査をした社会福祉士らは「付き合いを控えて孤独感が強まり、惨めな思いをしている」と口をそろえる。

 判決も「原告は余裕に乏しく、非常につましい生活を送り、あらゆる場面で節約を強いられ、不自由を感じる場面が少なくない」と認めた。生活保護に詳しい森川清弁護士は「まず緊縮財政方針ありきで、厚労省が生活実態調査に基づいて廃止を決めたかは疑問だ」と指摘している。

 生活保護を巡っては、09年度での母子加算廃止のほか、基準を更に引き下げる動きもある。判決は「本体と言える生活保護費の減額が問題とされるのであれば、生活実態にかかる調査が極めて強く要請される」と言及しており、正確な実態調査なしに安易な削減をすることは許されない。【銭場裕司】

(出所:毎日新聞 2008年6月27日 東京朝刊)

 生存権訴訟:「底辺の声」聞いて 原告・横井さん訴え 老齢加算廃止巡りあす判決

 70歳以上の生活保護受給者に上乗せ支給されていた老齢加算を廃止したのは、生存権を保障した憲法に違反するとして、東京都内の高齢者12人が、居住する3市7区に廃止処分の取り消しを求めた訴訟の判決が26日、東京地裁(大門匡裁判長)で言い渡される。全国8地裁で係争中の同種訴訟では初の判決になる。

 「生活が苦しくなると削るのは食費。肉などは2、3回に分けて食べるようになったよ」。原告団長の横井邦雄さん(79)は1人暮らしの都営住宅で苦笑いした。がんを患い、緑内障で左目の視力を失いながらも、裁判を闘い続けてきた。

 横井さんは活版印刷の元職人。バブル経済の崩壊で雇い先がなくなり、96年から生活保護を受けている。現在の収入は生活保護の月約7万5000円のみ。2年前、老齢加算制度が「特別な需要はない」との理由で完全廃止された。約1万8000円を減額され、「年間20万円以上のカットはきつすぎる」と嘆いた。

 生活はぎりぎりの状態で、香典を出せず、弔電で済ます。京都の姉の見舞いも年1回に減らし、「自宅のお風呂もやめて、区が配布した月4回の入浴券でしのいでいる」と言う。

 高齢者には消化のよい食べ物や暖房などが必要で、墓参りなど社会的費用もかかるとして、1960年に老齢加算制度ができた。裁判で横井さんらは、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」が損なわれていると強調してきた。

 「判決に期待したい。我々の裁判は年寄りだけの問題じゃなくて、底辺の声なんです」。ワーキングプアの問題にも心を痛める横井さんは力を込めて語った。【銭場裕司】

(出所:毎日新聞 2008年6月25日 東京夕刊)

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生活保護老齢加算-東京地裁判決が原告の訴えを棄却ー

2008-06-28 01:38:36 | 憲法裁判
生活保護老齢加算
「廃止は違憲」の訴え棄却
東京地裁判決 原告は控訴へ

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 七十歳以上の生活保護受給者に支給されていた「老齢加算」の廃止で、憲法二五条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」ができなくなったとして、東京都内の生活保護受給者十三人(現在は十二人)が区や市に廃止処分の取り消しを求めた訴訟の判決で二十六日、東京地裁は「廃止には合理的な根拠がある」などとして、原告の訴えを棄却しました。判決後、原告・弁護団は「貧困と格差を拡大する政府の不当な政策を是認した判決」だと批判、控訴する考えを表明しました。


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 高齢者や母子家庭の生活保護世帯に対する加算措置の廃止をめぐる同様の訴訟は、ほかに九地裁で争われており判決は初めてです。

 大門匡裁判長(岩井伸晃裁判長が代読)は、低所得者層の消費水準が七十歳以上の生活保護受給者よりも低いことなどを理由に、「老齢加算を付加しなければならない特別の需要がない」と指摘。同加算の廃止処分は「現実の生活条件を無視した著しく低い基準を設定したとまではいえない」と述べました。

 老齢加算は、加齢に伴う食事への配慮や慶弔費の増加など「特別な需要が認められる」として、生活扶助費に上乗せして、月に約一万八千円支給されていました。

 ところが、「社会保障構造改革」路線を打ち出した小泉自公政府は、老齢加算を必要とする「特別な需要は認められない」として、二〇〇六年度に全廃しました。

 訴訟で、原告は、老齢加算でかろうじて最低限度の生活を維持していたのであり、「特別な需要」を認めずに廃止したことは、憲法二五条に違反すると訴えました。

批判・抗議・新たな決意
判決報告集会に300人
 判決後、東京都内で判決報告集会が行われ、三百人がつめかけました。

 生存権裁判を支える東京連絡会の佐藤直哉代表委員は「激しい怒りと抗議の意を表明したい」と表明。判決について弁護団の田島浩弁護士は「きわめて不当だ」とのべ、「国の政策を認めるものだ」と批判しました。

 参加者からは「格差、貧困是正に逆行する判決だ」「多くの市民に実態を知らせ、人権を守るたたかいをひろげたい」などの発言が続きました。

 全労連の小田川義和事務局長は、貧困を広げた「構造改革」に迎合する判決だと批判し、「生活改善をこれ以上閉ざしてはならない。全国のたたかいと結んで、頑張りたい」とのべました。

 集会に参加した女性(53)=東京都調布市=は「原告を支えて、引き続くたたかいに立ち向かっていきたいと、思いを新たにしました」と語りました。

“生存権侵害の実態見てない”
弁護団会見
 東京生存権裁判の原告・弁護団は東京地裁での判決を受けて、声明を発表し、同地裁内で記者会見しました。

 声明は、判決について、(1)生活保護基準以下の生活を強いられている国民の貧困を解決するのではなく、この貧困状態に合わせて生活保護基準を切り下げ、格差と貧困を拡大する政府の不当な政策を是認したもの(2)老齢加算の重要な役割を何ら理解することなく、老齢加算の廃止で高齢保護受給者の生存権を侵害している実態から目を背け、行政の違憲・違法な措置を追認した不当なものだと批判しました。

 新井章弁護士は「昨今の日本社会を覆っている社会保障圧迫に対し、何らの問題意識を示すことができなかった残念な判決」だとのべました。

 年内中に地裁判決が出る予定の京都訴訟の竹下義樹弁護士は「老齢加算はおまけで、餓死や孤独死していない以上は文句をいうなという判決。原告の生きざま、生活保護が果たしている現実の姿を裁判長が直視しなかった」と指摘しました。

(出所:日本共産党HP 2008年6月27日(金)「しんぶん赤旗」)
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<NHK番組改ざん事件>知る権利に背を向けた最悪の最高裁判決 ― 醍醐 聡・東大教授

2008-06-27 02:34:36 | 憲法裁判
 <NHK番組改ざん事件>知る権利に背を向けた最悪の最高裁判決 ― 醍醐 聡・東大教授(しんぶん赤旗)

 さる十二日、最高裁判所第一小法廷(横尾和子裁判長)はNHK・ETV番組「問われる戦時性暴力」の改ざん事件に対して原告(バウネット・ジャパン)の訴えを全面的に退ける判決を言い渡しました。今回の最高裁判決はNHKの放送の自由は何のためにあるのかという根源的な問題への判断をはぐらかした最悪ともいえる内容です。

 判断をしたこと しなかったこと

 裁判では二つの点が争われました。一つはNHKによる番組改ざんに政治家の介入があったのかどうかであり、もう一つは原告がNHKに対して抱いた期待権――取材を受けた時の企画の趣旨通りに放送されるであろうと期待し信頼する権利――をNHKが侵害したのかどうかでした。しかし、最高裁判決は一つ目の争点には何の即断も示さず、二つ目の争点について要旨次のように判断しました。

 ①放送法第一条~第三条が定めた放送の自由は国民の知る壌利に奉仕するものとして表現の自由を規定した憲法二一条の保障の下にある。

 ②番組の編集に当たって放送事業者の内部で、さまざまな立場、観点から検討されるのが常であり、その結果、最終的な放送の内容が当初企画されたものとは異なるものになる可能性があるのは当然である。

 ③したがって、NHKから取材を受けた者が、取材の過程で提供した素材が放送に使用されると期待したり信頼したりしたとしても、そうした期待や信頼は原則として法的保護の対象とはならない。


 知る権利めぐる支離滅裂な判断

 放送法が定めた放送による表現の自由は最高裁判決の要点①にあるように、「国民の知る権利に奉仕するため」にあります。ところが、NHKが行った番組改ざんは、戦時性暴力の実態を伝えようとした元「従軍慰安婦」と元日本軍兵士が女性国際戦犯法廷で行った証言をカットするなどしたものでした。こうした証言は日本の歴代政府、与党政治家があいまいにしてきた日本の戦争責任を国民が判断する上で貴重な資料となるものでした。

 このような証言をNHKが切り捨てたことは放送の自由が奉仕するものとされた国民の知る権利に背く行為にほかなりません。このような番組改ざんまで「表現の自由」を持ち出して免罪した最高裁裁判官の憲法解釈の稚拙さ、自己矛盾はあきれるばかりです。

 レトリックでの政治介入の放免

 最高裁判決のもう一つの問題は、政治家の発言を忖度してなされた番組改ざんをNHK内部の自律的な検討の結果であるかのようにすり替えている点です。確かに番組改編のなかにはNHK内部の番組制作者相互の議論を経てなされた部分もないわけではありません。

 しかし、少なくとも番組放送の直前の二〇〇一年一月二十九日に行われた元「従軍慰安婦」らの証言場面の削除は、同日、安倍晋三氏(当時、官房副長官)と面会し安倍氏から本件番組を「公平公正」なものにするよう求められた松尾放送総局長や野島国会担当役員ら(いずれも当時)がNHKの制作現場に戻り、番組制作とは無縁な野島氏が主導・指示する形でなされたものでした。これも「NHK内部での」検討の結果であるかのように描いた最高裁の事実認定は番組改ざんの圧力をかけた政治家を放免する悪質なすり替えのレトリック(修辞)です。

 政治に弱い体質 監視への再出発

 以上をまとめれば、今回の最高裁判決は政治に弱いNHKを政治に弱い司法がかばい立てした判決といっても過言でありません。しかし、番組制作に関わった永田浩三、長井暁の両氏の勇気ある証言で浮かび上がった政治介入とそれを付度したNHK幹部の政治におもねる根深い体質は今後も視聴者の記憶から消えることはありません。視聴者はNHKの優れた番組には激励を送る一方で、政治に弱いNH打の体質を厳しく監視し、視聴者主権の公共放送を確立する運動を今後も粘り強く続けていくことが重要です。

 (だいご・さとし 東京大学大学院教授、NHKを監視・激励するコミュニティ共同代表)

(出所:「しんぶん赤旗」 08・6・18)
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