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民主党・菅改造内閣の大企業法人税減税の議論に大反対の世論を

2010-09-27 06:20:19 | 国内政治
優遇税制 巨大な内部留保
それでも法人税減税か
大畠経産相「5%下げ」論を考える

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 大畠章宏経済産業相は19日のNHKの番組で、「世界の法人税(率)の平均は30%から25%だ。日本は40%程度」と高いから「雇用の維持や中小企業、輸出産業を日本国内にとどめるために5%程度の法人税(率)引き下げを決断する時機に入っている」と主張しました。

財界の意向に

 これに先立ち、日本経団連の米倉弘昌会長は17日、法人税率引き下げをめざす菅改造内閣の「新成長戦略」について「一刻の猶予も許されない」と強調しました。大畠経産相の発言は、日本経団連の意向をくんだ素早い対応といえます。

 しかし、日本の法人税率は、本当に高いのでしょうか。

 日本企業の実際の税負担率は、研究開発減税など数々の優遇策を受け、法律で定められた税率(国と地方の合計)約40%をすでに大幅に下回っています。

 輸出中心の大企業(資本金10億円以上)で見ると、実際の税負担率はソニー12・9%、パナソニック17・6%、本田技研工業24・5%、トヨタ自動車30・1%(03~09年度決算データから試算)。経常利益上位100社の平均でも33・7%です。

なぜ海外進出

 そもそも、日本企業は、日本の法人税率が高いから海外進出したわけではなく、低賃金の労働力や現地の市場を追い求めて海外へ出て行きました。

 自公政権から「政権交代」した民主党政権は、海外に進出した日本企業に対して、外国で課税された法人税分を日本国内の法人税から差し引く「外国税額控除」などの恩恵を与え続けています。そればかりか、自公政権が09年4月から導入した「海外子会社配当益金不参入制度」も引き継ぎ、海外子会社が日本の親会社に配当する利益の95%を非課税にする制度も開始しています。日本企業を国内にとどめるどころか、海外進出をあおっているのが実態です。

 大企業(金融・保険業と郵政3社を除く)の内部留保が09年度、前年度より約11兆円も増え、総額243兆9000億円となるなか、法人税減税は必要でしょうか。

 “一握りの大企業が潤えば、それが滴り落ちて、中小企業も労働者も豊かになる”という民主党の「新成長戦略」は、自民党政権が行ってきた破たん済みの経済政策そのものです。暮らし最優先の経済政策への転換こそが求められています。(松田繁郎)

(出所:日本共産党HP 2010年9月21日(火)「しんぶん赤旗」)

主張
法人税減税
財界奉仕の議論に根拠はない

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 発足したばかりの菅改造内閣の閣僚から法人税率引き下げを求める発言が相次いでいます。

 大畠章宏経済産業相は19日のNHK番組で「雇用の維持や中小企業、輸出産業を日本国内にとどめるため(法人税率の)5%程度の引き下げを決断する時期に入っている」とのべました。野田佳彦財務相も記者会見で「法人実効税率の見直し」を強調しています。

実際の負担率は低い

 法人税を減税すれば雇用や中小企業にも恩恵があり、輸出産業を国内にとどめることができるという議論には根拠がありません。

 経産省や財界は、日本の「法人実効税率」40%は飛びぬけて高いと言っています。しかし、40%はアメリカと同等の水準で、カリフォルニア州などでは日本より高い税率です。財界が注目する世界企業番付では、そのアメリカの企業が上位2000社のうち500社以上を占めています。

 「法人実効税率」は国の法人税率30%と地方の法人所得課税を併せた表面的な税率を示しているにすぎません。大企業は研究開発減税や外国税額控除をはじめとする数々の優遇措置を受け、実質的な税負担率は平均で30%程度にとどまっています。

 企業の公的負担は税金だけでなく社会保障の負担もあります。それを合わせて比べた財務省の調査によると、日本の大企業はドイツやフランスの大企業より2、3割低い負担にとどまっています。

 法人税を減税すれば雇用や中小企業にも恩恵があるかのように言うのは、“大企業優遇”の批判をかわす虚構でしかありません。

 大企業は5年連続で過去最高益を更新した2000年代にも、正社員を減らして非正社員に置き換え、正社員の賃金も抑制するリストラを進めました。その結果、過去10年のうち8年間は所定内給与が前年よりも減っています。大企業は空前の大もうけをあげながら雇用の破壊を続ける一方で、株主配当や役員報酬を増やすとともに巨額のため込み金を積み上げてきました。減税で大企業の利益を増やしてやっても、雇用に回る見込みはまったくありません。

 中小企業は内需低迷や大企業の下請け単価の買いたたきで7割が赤字決算を余儀なくされ、法人税を払えない状態です。しかも、中小企業は一定の所得までは軽減税率(18%)が適用されるため、法人税の基本税率(30%)引き下げで恩恵を受けるのは専ら大企業になります。

大企業本位を改めて

 経産省などの調査によると、企業が投資先を決める最大の要因は現地の市場としての魅力にほかなりません。だから、東京都の調査でも、8割の企業が法人税を10%減税しても日本に「回帰しない」と答えています。問題は法人税率ではなく、長年にわたって家計と内需を冷え込ませてきた日本経済のあり方そのものにあります。

 雇用と中小企業にしわ寄せし、ため込み金と利益を拡大してきた大企業の身勝手な行動が暮らしと経済を壊し、日本を「成長の止まった国」にしています。

 再び財界・大企業の身勝手な要求に従って法人税を減税し、その財源として消費税を増税する道は日本経済の未来を閉ざす道です。

 大企業本位から暮らしと中小企業優先へ、日本経済のかじを大きく切るときです。

(出所:日本共産党HP 2010年9月26日(日)「しんぶん赤旗」)

主張
経団連税制提言
身勝手が内需にとどめを刺す

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 日本経団連が14日、来年度「税制改正」の提言を発表しました。

 国民の不安と閉塞(へいそく)感を払しょくし、経済成長と豊かな国民生活のために税制と財政、社会保障を一体で「改革」していくことが急務だ―。提言は、このようにのべて消費税率の一刻も早い引き上げと法人税率の引き下げを改めて要求しています。

「究極のバラマキ」

 経団連の提言は、消費税率を速やかに「少なくとも10%」へ、さらに「2020年代半ばまでに…10%台後半、ないしはそれ以上」へ引き上げるよう求めました。法人税率は「先行して少なくとも5%」の引き下げ、早期に2けたの引き下げを求めています。

 暮らしと内需が冷え込んでいるときに、庶民に重くのしかかる消費税を大幅に増税して、大企業に減税を求めるという身勝手極まりない要求です。

 円高が進むと暗雲が立ち込めるように不安が広がる原因は、内需が弱くて外国の需要にしか希望を持てないような日本経済のあり方を抜きには考えられません。家計と中小企業に重い負担を強いる消費税増税は、低迷する内需にとどめを刺す無謀な財源策です。

 京都大学の中野剛志・助教は次のように指摘しています。「需要のない中での法人税減税は、この法人部門の貯蓄を増やすだけで国内投資を促進しない。…法人税減税こそ究極のバラマキだ」(『日経ヴェリタス』6月27日号)

 大企業はこの1年でため込み金を10兆円以上増やして250兆円規模に膨らませています。大企業は配当や役員報酬を増やす一方で賃金も研究開発投資も減らして利益をため込んでいます。法人税を減税しても株主や役員を潤わせ、「カネ余り」を広げるだけです。

 1990年代以降の大型プロジェクトと大企業・大資産家減税の大盤振る舞いで一気に膨らんだ財政赤字も、国民の不安と閉塞感の大きな原因です。「巨額の赤字は将来の増税となってはねかえってくるのではないか」「財政赤字があるから暮らしの予算を増やせないのではないか」という不安と閉塞感です。

 “だからいま、消費税を増税すべきだ”というのは何の解答にもなりません。国民の「将来の増税」への不安は、数ある税金の中でも特に国民の暮らしにかかる税金の増税に対する不安です。消費税の増税は、この国民の「将来の増税」への不安を現時点で実現してしまう最悪のやり方です。

 菅直人首相も「社会保障と財源は消費税を含めた一体的な議論が必要だ」と繰り返しています。暮らしの予算確保のためには消費税増税しかないかのような財界流の議論が横行し、国民の閉塞感をますます強めています。何より、消費税増税で生み出す財源のほとんどは大企業向けの法人税減税に消えていく計算になります。

閉塞状況打開の道は

 必要なのは雇用や中小企業にしわ寄せして利益を増やす大企業の行動を民主的なルールをつくって改めさせ、巨額の利益とため込み金を社会に還流させる改革です。それを通じて内需主導の成長を実現して税収を増やすことです。

 同時に5兆円もの軍事費にメスを入れ、行き過ぎた大企業・大資産家減税を是正する以外に閉塞状況を打開する道はありません。

(出所:日本共産党HP 2010年9月16日(木)「しんぶん赤旗」)
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1949年から開始された「レッド・パージ」被害者の名誉回復と国家賠償を今こそ

2010-09-13 04:28:53 | 国内政治
主張
「レッド・パージ」
名誉回復と国家賠償を今こそ

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 日本共産党員やその支持者であるというだけの理由で「企業破壊者」などのレッテルを張られ、職場を追われた「レッド・パージ」被害者の人権救済申し立てを受け、日本弁護士連合会(宇都宮健児会長)があらためて被害者の名誉回復と補償などの措置を政府に勧告しました。2008年10月に続き2回目の勧告です。

 長崎や横浜の弁護士会でも勧告がだされており、国家賠償を求めた裁判も始まっています。申立人の救済にとどまらず、3万人ともいわれる犠牲者すべての名誉回復と補償が急いで求められます。

歴史の誤りをただす

 「レッド・パージ」は、戦後の日本が、連合国軍総司令部(GHQ)の支配の下、事実上アメリカの単独占領下に置かれた1949年から50年にかけ、労働運動が活発だった公務員や民間の職場などで無法・不当な解雇や免職処分を受けた事件です。有無をいわせず職場から追い出された人は、苦しい生活のなか解雇の撤回を求め、粘り強くたたかってきました。

 日弁連の勧告は、日本共産党員かその「同調者」であることだけを理由にした「レッド・パージ」について、「思想・良心の自由及び結社の自由の侵害であり、重大な人権侵害行為であった」と指摘しています。それは文字通り、歴史の誤りへの断罪です。

 「レッド・パージ」は、米占領軍と日本政府による労働運動の右傾化と民主運動の弱体化をねらった日本共産党への大弾圧でした。日本政府はGHQの指示を絶好の機会として、閣議決定まで行い、使用者・経営者を扇動し、解雇を強行しました。

 勧告は、この歴史的経過について、レッド・パージは「日本政府も自ら積極的にその遂行に関与し、または支持して行われた」として、日本政府の責任を明らかにしています。08年の日弁連勧告は自公政権の麻生太郎首相に提出されました。麻生政権は勧告にこたえませんでした。今回の勧告は、民主党政権の菅直人首相にあてられています。菅政権が2度目の勧告にどうこたえるかが問われます。

 日弁連勧告が前回も今回も、52年のサンフランシスコ条約で日本が形のうえでは独立を回復した後、「日本政府として…被害回復措置を容易に行うことができたにもかかわらず、今日までこれを放置してきた」とし、「国の責任は重い」とのべていることは重大です。

 これまで日本政府は、「レッド・パージ」が占領軍による超法規的な命令だったことをたてに解雇された人たちの救済を認めてきませんでした。人権侵害を救済すべき司法も、その責任を果たしてきませんでした。そうした誤りはいまこそ正されるべきです。

民主主義をすすめるため

 弁護士会という日本の司法の一翼を担う法律家の公的組織が、再三の勧告で「レッド・パージ」被害者の救済を求めたことは重く受け止められるべきです。憲法にもとづき民主主義を前にすすめるために、歴史の誤りはあいまいにされるべきではありません。

 同時に日弁連の勧告が、職場の思想差別が克服されていない現状をあげ、思想信条の自由、法の下の平等の保障を「現代的な人権課題」としていることも重要です。「レッド・パージ」被害救済の今日的な意義も、ここにあります。

(出所:日本共産党HP 2010年9月4日(土)「しんぶん赤旗」)

日本共産党 知りたい聞きたい
レッド・パージってなんですか?

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 〈問い〉 レッド・パージとはなんですか? どれくらいの人が職を追われたのですか?(千葉・一読者)

 〈答え〉 レッド・パージとは1949年~50年、アメリカ占領軍の指示で政府や企業が強行した日本共産党員とその支持者にたいする無法・不当な解雇のことです。推定で4万人以上が職場を奪われました。

 戦後、日本を占領したアメリカは、労働運動や民主的運動の発展、49年総選挙での日本共産党の躍進(35人当選)、中華人民共和国の成立(同年10月)などに直面して対日政策を180度転換させました。48年12月のA級戦犯容疑者釈放につづき、戦争協力者約20万人の公職追放を解除する一方、49年4月には、「団体等規正令」を公布して、共産党員を登録制にし、戦前の特高警察の流れをくむ公安警察を復活させるなど、民主的な勢力にたいする凶暴な弾圧にのりだしました。

 とくに、職場や労働組合への共産党の影響力をいっきょに壊滅させるため、松川事件(49年8月)など一連の謀略事件をでっちあげ、国民に共産党への恐怖心をあおりたてました。

 レッド・パージは、こうした情勢のもとで3つの段階を経て強行されました。49年の定員法による官公庁の「行政整理」のなかで1万人以上、民間の企業整備のなかで2万人以上の活動家が追放され、つづいて一方的な「不適格者リスト」によって、民主的な教員1100人が教壇から追われました。

 朝鮮戦争の勃発(50年6月25日)を前後し、連合国軍最高司令官マッカーサーは共産党中央委員の公職追放を指令するとともに公然とレッド・パージを指示し、政府は「共産主義者等の公職からの排除に関する件」を閣議決定しました。こうして、新聞、放送を皮切りにした文字通りのレッド・パージはやがて電力、石炭、化学、鉄鋼、造船、国鉄、電通など全産業に広がり、「企業の破壊者」「暴力分子」の烙印(らくいん)を押され職場から追われた犠牲者は1万3000人を超えました。

 レッド・パージは国民の基本的人権を明確にうたった憲法をふみにじった無法な弾圧でした。いま各地で犠牲者が名誉回復と国家賠償を求めて立ち上がっているのは当然です。多くの労働組合などがこれに協力しているのは、ふたたびこんな無法を許さない保障をつくる上で重要な意味をもつからです。(喜)

(出所:日本共産党HP 2005年4月2日(土)「しんぶん赤旗」)
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衆院比例定数80削減は大政党独裁への道ー民意を最大に反映する選挙制度へすることが必要ー

2010-09-06 13:53:18 | 国内政治
比例定数80削減
小選挙区制の害悪いっそう

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 菅直人首相(民主党代表)が執念を燃やす衆院比例定数の80削減。同党代表選でも菅首相は「衆議院で80議席、参議院で40議席の国会議員の定数削減について年内に党の方針を取りまとめる」と政見に明記しました。民主党としても2003年総選挙以来、マニフェストに「比例定数80削減」を掲げ続けています。しかし、比例部分の削減論議は、現在の選挙制度の導入の経過に照らしても、選挙制度のあるべき基準に照らしてもまったくなり立たないものです。

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大政党本位に民意歪める

 小選挙区比例代表並立制が導入されてから、これまで5回の総選挙(1996年、2000年、03年、05年、09年)が行われました。浮き彫りになったのは、大政党本位に民意を大きくゆがめ、少数政党を排除する小選挙区制の害悪です。

 グラフ(1)は、直近2回の総選挙で民主、自民両党が小選挙区で得た得票率と議席占有率(小選挙区全300議席に対する割合)です。

 05年総選挙で自民党が得た296議席のうち219議席は小選挙区のもの。小選挙区での同党の得票率は47・8%でしたが、議席占有率は73%にもはねあがりました。

 政権交代がおきた09年総選挙でも“4割台の得票で7割議席”となりました。大勝した民主党は小選挙区の得票率は47・4%で過半数に達しませんでしたが、議席占有率は73・7%(221議席)となったのです。

 こうした得票率と議席占有率のズレが生まれるのは、小選挙区制が民意をゆがめる制度だからです。各選挙区で最大得票数の候補者1人しか当選できないため、それ以外の候補者の得票は議席に結びつかない「死に票」となります。「死に票」は、05年衆院選で3300万票(小選挙区投票総数の48・5%)、09年総選挙では3270万票(同46・3%)にのぼります。

 一方、比例代表は180の定数を全国11のブロックに分けているため、大政党に有利ながらも、小選挙区に比べれば格段に民意を反映したものとなっています。

 仮に衆院の総定数(480)を各党の比例票で配分すると、グラフ(2)のようになり、民意をふまえて少数政党の議席も確保されます。

民主党“一党独裁”状態に

 小選挙区制の弊害が浮き彫りになるなか、民主党が主張する比例定数の80削減が強行されればどうなるでしょうか。

 小選挙区定数300、比例代表定数100となり、総定数に対する小選挙区の比重は62・5%から75%へと一気に高まり、単純小選挙区制に限りなく近づきます。

 各比例ブロックの定数は四国ブロックが6↓3、北海道が8↓4、中国ブロックが11↓6、北陸信越ブロックが11↓6など大幅に減り、民意を正確に議席に反映する比例代表制の長所が大きく損なわれ、大政党に有利な仕組みにほぼ完全に“変質”してしまいます。

 これらの問題は、各党の議席に端的にあらわれます。

 09年衆院選結果で比例定数80削減のもとでの議席を試算すると、民主党は42・41%の比例得票率で、小選挙区も含め衆院議席の68・50%を占め、同党だけで3分の2以上の議席を得ることになります。自民党の議席占有率は比例得票率とほぼ同じ。一方、日本共産党をはじめ他の党は30・86%の比例得票率を得ながら、議席はわずか8%に押し込められます。(グラフ(3))

 3分の2以上の議席を占めれば、参院で法案が否決されても、民主党単独で衆院で3分の2以上で再議決・成立させることが可能となり、まさに“一党独裁”状態となってしまいます。

“虚構の多数”で悪政次々

 「消費税など国民につらくて苦しいことを訴えるのが選挙制度改革の本質」。いま自民党政調会長を務める石破茂衆院議員は1993年当時の国会で小選挙区制導入の狙いをこう述べ、細川首相(当時)も「まったくその点は同感だ」と答えました。国民に痛みを強いる政治をすすめるうえで、それに反対する声を締め出すのが小選挙区制導入でした。

 表は、この10年間に政権与党が国会で強行した主な法律や政策です。なかでも「聖域なき構造改革」を掲げて2001年に小泉政権が誕生して以降、医療・介護・年金の大改悪や労働法制の規制緩和、自衛隊の海外派兵などが急速に推し進められました。

 05年総選挙は小選挙区制の“虚構の多数”の害悪を劇的に示しました。小泉政権は郵政問題一本に争点をしぼるという国民を欺く手法をとり、自公は衆院議席の3分の2を超える327議席を獲得。政権退場となる09年総選挙まで「与党3分の2議席」を使って国民が反対する法案を強行してきました。福田、麻生両政権下では実に9回も再議決が強行されています。

共産党 民意反映の制度に

 日本共産党は、比例定数の削減は議会制民主主義を根底から覆す問題だとして、断固反対し、比例定数削減反対の一点で一致する、すべての政党、団体、個人に日本の議会制民主主義を守るための共同のたたかいをよびかけています。同時に、「国民の声を反映する民主的選挙制度とは何かを正面から議論すべき」(志位和夫委員長)だと考えています。

 選挙制度のよしあしを測る最大の基準は、民意を正確に議席に反映するかどうかです。この立場から日本共産党は、衆院選挙制度について主権者・国民の意思を正確に反映できない最悪の選挙制度である小選挙区制を廃止し、比例代表など民意を反映する選挙制度に改めるよう提案しています。

 また政党助成金の撤廃、選挙供託金の国際水準なみへの引き下げ・選挙活動の自由化などを求めています。

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導入の経過からも成り立たず
「比例で民意を反映」と約束

 現在の衆院の選挙制度である小選挙区比例代表並立制は、「金権腐敗をなくす政治改革」を口実に、「非自民」の細川護煕内閣が1994年に導入しました。

 そもそもの政府案は、小選挙区250、全国区の比例代表250という内訳でしたが、細川首相と野党だった自民党の河野洋平総裁との「修正」協議で、小選挙区300、全国11ブロックの比例代表200へと、比例部分が大幅に切り縮められてしまいました。

 日本共産党は当時から「国民の民意が議席に正しく反映する、これが選挙制度の最大の基準だ」(志位和夫書記局長=当時)と主張。小選挙区比例代表並立制は3割台、4割台の得票率で、6割もの議席を占めることになるとの試算も示し、民意をゆがめ、国民多数の意思を切り捨てると批判しました。

「民意集約」を批判

 政府は「小選挙区によって民意の集約を図っていく、比例制によって多様な民意の反映を図っていく、(民意の)集約と反映が相まって、健全な議会制民主主義が実現される」(細川首相)などと、「民意の集約」論を持ち出してきました。

 それにたいしても、日本共産党は「結局、国民の少数の支持しかなくても国会で多数を握り、政権をつくれる。少数の支持しかなくても政権をにぎりつづけようというのが民意の集約論だ」(志位氏)と批判。「代表民主主義の原点に立って、正確、正当な選挙によって国会が選出されることが憲法の要請」だと主張しました。

 政権選択に向けた「民意の集約」としての小選挙区制をあくまでごり押しする一方で、細川首相も、「確かに小選挙区というのは、いわゆる『死に票』などが多いというようなことが言われておりますが、その『死に票』などを補うということで今度の改正案におきましては比例制度を加味したわけであります」(94年1月10日、参院政治改革特別委員会)と答弁。小選挙区の負の部分と、多様な民意を国政に反映させるという比例代表の役割を認めざるを得ませんでした。

比例部分切り縮め

 実際には、細川首相が小選挙区と比例制と半々で「相補う」とした並立制は、自民党との「修正」で比例部分が200に減り、その後、180にまで削られました(2000年)。その結果、日本共産党が一貫して主張してきた通り、民意をゆがめ、“虚構の多数”をつくりだすという小選挙区制の害悪はいよいよあからさまとなりました。

 細川氏や、細川内閣で首相特別補佐を務めた田中秀征元経済企画庁長官らは最近、比例定数削減を批判する発言(別項)をしています。

細川護煕元首相も批判

 「最初の政府案は小選挙区250、全国区の比例代表250でしたが、法案成立時は小選挙区300、ブロック制の比例代表200。いまは300と180。だんだん二大政党制に有利になっています」「(民主党の比例代表80削減案について)それはよくない」「私は選挙制度は中選挙区連記制がいいとずっと思っていました。日本人のメンタリティーからすれば、小選挙区で『白か黒か』という選択をし、敵対的な政治になるのは好ましくない」(「朝日」09年8月9日付)

田中秀征元経済企画庁長官

 「比例定数の削減は容易だが、これは制度の根幹理念に抵触する。単に『政治の無駄使い排除』の政策目的のためにすることは許されない」「菅首相は、自ら93年の細川護煕政権で、小選挙区250、全国比例250の“並立制”を推進したではないか。比例定数の大幅削減は“並立制”の根本理念に反するものだ」(「ダイヤモンド・オンライン」10年8月5日付)

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 小選挙区比例代表並立制 衆院議員の総定数480を、1選挙区から1人の議員を選ぶ小選挙区選挙(定数300)と、政党の得票に応じて議席を配分する比例代表選挙(同180)という二つの選挙から選ぶ制度。比例代表は全国11にわけた比例ブロックで選びます。有権者は1人2票もち、小選挙区選挙で候補者名、比例代表選挙では政党名をそれぞれ書いて投票します。

小選挙区制は世界の流れにも逆行

 民主党の比例定数80削減の方針は、単純小選挙区制への“一里塚”とでもいうべきものですが、それは世界の流れにも逆行するものです。

 OECD(経済協力開発機構)加盟32カ国中、日本の衆院にあたる下院の選挙区すべてが小選挙区という国は、英、米、仏、カナダ、オーストラリアの5カ国にすぎません。ヨーロッパを中心に約20カ国が比例代表制度を採用し、その他もほとんどが、小選挙区と比例の併用、並立制となっています。

 民主党が議会制度の「モデル」としている英国でも、現在、小選挙区制見直しの動きが出ています。

 英国では従来、保守党と労働党の「二大政党」のいずれかが過半数を占めてきましたが、今年5月の総選挙の結果、どちらも過半数をとれず、保守党と第3党の自由民主党との連立政権が誕生しました。同連立政権は、新しい選挙制度(修正小選挙区制)を提案し、来年5月5日には国民投票が準備されています。

 また、同国はEU(欧州連合)諸国のなかで唯一、EU議会選挙を小選挙区制でおこなってきましたが、1999年の選挙から比例代表に変更しています。

(出所:日本共産党HP  2010年9月6日(月)「しんぶん赤旗」)

参議院改革・政治的民主主義

参議院の「一票の格差」を抜本是正し、民主主義が花ひらく社会をめざします

 参議院の「一票の格差」を抜本的に是正します……09年9月、最高裁は、選挙区間の格差が最大4・86倍だった07年参院選挙をめぐる「一票の格差」訴訟で、「投票価値の平等の観点から大きな不平等があった」とし、国会が速やかに「適切な検討」をおこなうよう求めました。さらに、格差の大幅な縮小を図るためには「現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要」と指摘しています。これは、憲法で保障された「選挙権の平等」からみて当然です。日本共産党は、2013年の選挙までに、民意を正確に反映させるためにも現行の選挙制度を見直し、「一票の格差」を抜本是正することが必要と考えます。

 その際、参院の現行総定数(242人)削減に反対し、民意を正確に反映する比例代表制度を守ります。参院議員数は他国の第二院と比較しても、人口に対する議員比率からみても多すぎるということはありません。定数削減は、主権者である国民の声を国政に反映しにくくするものです。現行の全国一区の比例代表制は、実際の選挙でも得票率と獲得議席比率はほぼ同じです。比例代表制は、主権者である国民の意思と選択を議席の上に正確に反映させることのできる民主的な制度です。

 民意が参議院の審議と運営に正しく反映されるためには、少数会派の意見が尊重されることが必要です。ところが、参院では、10人未満の会派を議会の交渉団体として認めず、議院運営委員が割り当てられていません。本会議質問も著しく制限する議会運営が続けられています。

日本共産党は、ただちに、以下の内容で改善をもとめてゆきます。

(1)10人未満会派にも、議院運営委員会の委員を割り当てること。

(2)重要法案などについては、小会派にも本会議質問の機会をふやすとともに、十分な質問時間を確保すること。

 国会議員定数削減に反対し、国民主権にふさわしい民主的な選挙制度をめざします……09年8月の総選挙について、「1票の格差」があるとして、全国10カ所の高裁(1支部を含む)で提訴され、そのうち現在まで4つの高裁で「違憲」、3つの高裁で「違憲状態」との判決が下されました。衆参各選挙での格差是正にとりくむ課題は、基本的人権と民主主義の観点から、党派を超えた焦眉の課題となっているといわなければなりません。

 同時に、日本共産党は、衆院の選挙制度について、民意を乱暴にゆがめる小選挙区制をただちに廃止し、全国11のブロック別比例代表で選出できるようにすることを提案します。また、各党との協議の中で、かつての中選挙区制に戻すことについても検討に値すると考えます。

 ところが、自民・民主両党はもちろん、最近次つぎと誕生した新党は、「国会議員定数削減」を競い合っています。

国会議員定数についての各党の参院選にむけた主張

民主党
衆院比例定数を80削減、参院定数は40削減

自民党
国会議員定数を3年後に1割、6年後に3割削減

公明党
衆参それぞれ選挙制度を変えて、定数を削減

みんなの党
衆院180削減、参院142削減

新党改革
国会議員の定数を半減させる

たちあがれ日本
衆院80、参院42削減

日本創新党
国会議員や地方議員の定数を半減

 定数削減が強行された場合を2009年総選挙の結果にあてはめると、民主党と自民党の「2大政党」を中心とした勢力で95%前後の議席を独占してしまいます。そうなれば消費税増税反対、辺野古への米軍新基地押しつけ反対、憲法9条を守れなどの国民多数の声が国会から締め出され、暮らしや平和を破壊する政治が思うままにすすめられてしまいます。定数削減の真の狙いは、ここにあります。日本共産党は、国会議員定数の削減に反対し、主権者国民の意思を反映できる議員数を確保するよう主張します。

 衆参の国会議員は、80年代には、それぞれ512(衆院)、252(参院)の定数がありました。ところが、この20年のあいだに衆参ともに定数が削減され、現在では、衆院480(最高時からマイナス32議席)、参院242議席(同10議席)となっています。ただ定数が削減されただけでなく、前述のように選挙制度そのものが民意をゆがめる制度とされたために、国民の声が国会に届きにくくなりました。

 もともと日本の国会議員定数は、人口比で比較すれば、世界でも最下位の部類に属します。人口1000万人以上の国で、二院制がある国は、世界で41カ国となりますが、人口10万人あたりの国会議員数は、日本は下から9番目の33位です。G7(主要7カ国)で比較した場合でも、州議会が独立国家なみの権限をもつ連邦国家のアメリカをのぞけば、日本が最下位(人口10万人あたり0.38人)です。(イタリア1.07人、イギリス1.06人、フランス0.93人、ドイツ0.74人)

「むだの削減」というなら政党助成金の全廃を……定数削減を主張する政党は、その理由について、(1)国会議員も“痛み”を分かち合う必要がある、(2)ムダを削減するため――などと主張しています。しかし、これらは道理も根拠もないどころか、国民主権の原理からみても有害な議論でしかありません。真剣に“痛み”を分かち合い“ムダを削減する”というのであれば、なによりも年間320億円にもたっする政党助成金をきっぱり廃止することこそ求められています。かりに全額廃止することになれば、その影響は、現在の国会議員の6割に相当する450人を削減した分に相当します。

 政党助成制度は、もともと「政治とカネ」の黒い関係が次つぎと暴露されるもとで、「企業・団体献金の禁止」とセットで1994年に導入されたものでした。ところが、「政治とカネ」の黒い疑惑は、政権交代後も途切れることなく国政の大問題となりつづけてきました。片方の手で国民の税金である政党助成金をうけとりながら、もう一方の手で企業・団体献金を受けとり、さらに闇のカネまで手にしていることが明らかになっているのです。いまこそ、政党助成金を全廃するとともに、企業・団体献金の全面的な禁止が必要です。日本共産党は、政党助成金も企業・団体献金も廃止や禁止を主張しているだけでなく、それをうけとらないことをみずから実行しています。心ある政党なら、こうした行動は、いますぐにでも実行できるはずです。

 政党助成金制度が導入されて15年がたち、この間に各党が受け取った金額は、自民党2364億円、民主党1381億円、公明党375億円、社民党323億円にもなります(2010年予定額を含む)。この制度は、“企業・団体献金をなくす代わりに”などという口実で設けられたものですが、この約束は反故にされつづけ、いまや“企業・団体献金も、政党助成金も”のありさまです。

民主党の収入の8割、自民党の収入の6割が政党助成金でまかなわれています。自民党も民主党も「官から民へ」などといいますが、自分たちこそ税金を食いものにする“国営政党”“官営政党”です。日本共産党は、国民の税金から政党が活動資金を分け取りすることは、その党を支持していない国民にも有無をいわせず“献金”を強制するものであり、「思想・信条の自由」や「政党支持の自由」に反する憲法違反の制度であると厳しく指摘し、受け取りを拒否してきました。政党助成金制度はきっぱり廃止します。

 一方で、永田町のなかでは、ひきつづき「世襲」が問題になっています。少なくない自民党や民主党の議員が「世襲」議員です。しかも、政治資金団体を世襲しても、税金をおさめる必要はいっさいありません。これも、多額の相続税を負担している国民からみれば政治家の異常な特権の1つというべきものです。日本共産党は、政治家の世襲に反対するとともに、最低限、政治資金団体の世襲については、世間並みかそれ以上の相続税を課すことを要求します。

 公選法改正など、選挙活動の自由拡大を求めます……日本の公職選挙法は、「べからず選挙法」といわれるように、さまざまな規制が設けられています。これは政治的民主主義や国民の参政権の保障という点でも、重大な問題です。国政選挙に立候補する場合、供託金は比例代表で600万円、選挙区で300万円必要です。1回の選挙に立候補するのに、これだけの資金を融通できる一般国民がどれだけいるでしょうか。諸外国の供託金は、隣の韓国が180万円、欧米諸国は、ほとんど10万円前後です。日本共産党は供託金を大幅に引き下げることを求めます。

 また、戸別訪問の禁止をはじめ、選挙期間中のビラ、ポスターの配布規制、インターネットを使った選挙活動規制など「禁止・規制法」としての性格をもっている公職選挙法を改め、主権者である国民が気軽に多面的に選挙に参加できる制度に変えることを要求します。

 世界の8割以上の国で実施されている18歳選挙権の実現をめざします。

議会制民主主義の形がい化につながる「国会改革論」に反対します……民主党などは、「政治家同士の議論をおこなうために」などという口実のもとに、「国会改革」を強行しようとしています。その内容は、(1)内閣法制局長官をはじめとする官僚の国会答弁をいっさい禁止し、(2)国会審議とは別に行政官僚などの「意見聴取会」を設定する――などというものです。

 こうした議論は、国会の機能を否定し、議会制民主主義を形がい化するものでしかありません。第1に、予算の策定や法律の制定、条約の承認などとともに、行政を監督するという国会の権能を事実上、否定することになるということです。国の行政が法律にもとづいて中立・公正に運営されているかどうか、執行状況に問題点がないかなどは、国会審議を通じて国民の前に明らかにされます。行政監督権を立法作業から切り離してしまえば、法律そのものの制定にも重大な支障をきたすことになりかねません。

 第2に、なによりも重大なのは、法制局長官を国会答弁にたたせないことによって、国連などの「国際機関」や「国際社会」の要請があれば、日本の自衛隊も武力行使に参加できるという民主党流の解釈改憲を現実のものにしようという思惑があります。

 「国会改革」というなら、いま早急に必要なのは、衆参いずれかの院で10議席以上なければ党首討論ができないというような、少数政党を不当に国会審議の場から排除したり、発言の機会を少なくしたりしている規定を抜本的にあらためることです。

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比例定数削減論の狙いは、その後には消費税増税などの国民負担の実現ー無駄というなら政党助成金を削減をー

2010-08-29 18:22:53 | 国内政治
地方紙 社説から異論
比例削減
少数意見を封殺/政党助成金削減を

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 民主党が参院選後の臨時国会で衆院比例定数80削減の法案を提出・成立させる構えをみせていることに、地方紙が「社説」で批判や疑問の声をあげています。

 「比例定数削減 少数意見を封殺せぬか」の見出しを掲げたのは北海道新聞3日付。「消費税増税に向け『議員自らが血を流す』というが、乱暴すぎる。筋違いではあるまいか」「国会で民意を代表する議員の数や選挙制度のあり方は、各党の消長にも直結する。民主主義の土台にかかわる重大なテーマだ」と指摘します。

 日本が小選挙区制導入の「手本」とした英国で比例代表併用を検討する動きが出ていることや、日本の国会議員数が人口比でみると国際的に多い方ではないことをあげ、「定数を削減することが直ちに国民の期待に応える道だとは言い切れまい」としています。

 京都新聞4日付も、菅直人首相が「より厳しいことを(国民に)お願いするときには定数削減をしっかり実現したい」(1日)とのべたことに対し、「身を削る姿勢を示すことで消費増税への批判をかわす狙いのようだが、それではあまりにも荒っぽい」と批判。「議員数や選挙制度のあり方は議会制民主主義の根幹をなす。国民の声を幅広く反映する国会をどう実現するか。その視点を忘れないでもらいたい」とし、「急ぐべきは『1票の格差』の是正」だと提起しています。

 信濃毎日新聞6月28日付は「定数削減に走るのは短絡的に過ぎる。衆院に小選挙区制が導入されてから、得票率の小さな差が獲得議席の大きな差となって現れるようになった。定数を減らせば、中小の政党が国会に議員を送り込むのはさらに難しくなる」と警鐘を鳴らしています。

 河北新報3日付は「定数削減も結構だけれど」としつつ、「比較的実施しやすい比例代表に限ることは、比例に込められた多様な民意を吸い上げる機能を弱める懸念がある」としています。

 東京新聞8日付は、「八〇削減しても六十億円弱程度の予算削減にとどまる」とのべ、「共産党以外の政党が三百二十億円を『山分け』しており、国会議員が身を削るなら、この方がより実質的な意味がある」と指摘。

 さらに、「懸念するのは、民主党が衆院の定数を比例代表から削減しようとしていることだ」と強調。「比例定数が減れば、少数政党は議席を得にくくなる」「少数意見の切り捨てにつながるのなら見過ごせない」とのべています。

(出所:日本共産党HP 2010年7月9日(金)「しんぶん赤旗」)

民主党がたくらむ
比例80削減の危険

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 参院選後の衆院比例定数80削減を声高に言い始めた菅政権・民主党。「参院で過半数をいただければ民主党だけでも議員定数の削減ができる」(枝野幸男幹事長)としており、今回の参院選で消費税増税に反対するとともに、増税の布石である比例削減を許さない審判を下す必要が差し迫っています。

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民主党案は比例限定 完全小選挙区制狙う

 2009年総選挙結果で試算すると、比例定数80削減が強行されれば、民主党だけで衆院議席の68%、3分の2以上の議席を得ることになり、参院で法案が否決されても民主党単独で再議決を強行できることになります。

 そうなれば、消費税増税や米軍基地押し付けなど民主党政権が進めようとしている重大問題が問答無用で通ることになりかねません。

 しかも、民主党は80削減にとどまらず、衆院での完全小選挙区制を狙っています。

 民主党が比例定数80削減をマニフェストに初めて掲げた03年総選挙で、当時党代表だった菅直人首相は「将来的には単純小選挙区だけの定数300もありうる」(同9月3日)と述べ、比例80削減が完全小選挙区への一里塚であると語っています。

 比例定数を標的にするのはなぜか。同党の安住淳選対委員長は05年総選挙のさい、「少数政党に鼻面を引き回されて、本当に公正なのか」(同8月25日、石巻青年会議所主催の公開討論会)と発言。政権交代直後に岡田克也外相(当時幹事長)も「比例を中心にすると結局は第3党が主導権を持つことになって、かえって民意をゆがめられる」(09年9月6日のNHK討論)と、少数政党の締め出しをあけすけに語っています。

 今回の参院選でも、自民党や公明党、みんなの党、三つの新党が国会議員定数削減を競い合っています。しかし、「比例定数」の削減に限定して主張しているのは民主党だけです。

「削られる」のは議員ではなく民意

 民主党は「国民に厳しいこと(増税)をお願いする前に、国会議員自ら身を削る」などと、比例定数削減を合理化します。しかし、比例定数削減で「削られる」のは、国民の民意なのです。

 「議員を減らして財源を削減しても、民意が反映されなくなれば元も子もない」。「朝日」6月29日付「声」欄に、高校生の投書が載りました。「(比例削減は)事実上の少数政党、少数意見の抑圧ではないのか」「国会議員を減らすと、国民の意見が国会に届きにくくなるのではないか」とのべています。

 「信濃毎日」6月28日付社説は、「国会議員の数は少なければいいというものではない。定数を減らすと、声の小さな人たちの利害を国政に反映させるのがどうしても難しくなる」と論じています。

 国会議員は、国民と国会をつなぐパイプです。その数を少なくすれば、民意を国会に届けるパイプが細くなるだけです。

 そもそも日本の国会議員数は、衆参合わせて722人、人口10万人あたりの議員数は0・57人で、人口比で比較すれば世界でも最下位の部類に属します。人口1000万人以上の国で二院制を採用している国は世界で41カ国ですが、人口10万人あたりの下院(衆院)議員数は、日本は下から9番目の33位。G7(主要7カ国)で比較した場合でも、連邦国家のアメリカを除けば日本は最下位です。

ムダ削減を言うなら政党助成金撤廃こそ

 「ムダづかいを根絶」「政治家自ら身を切る」というなら、政党・政治家が真っ先に「切る」べきは、政党助成金です。毎年320億円もの税金を日本共産党以外の政党が分け取りしています。

 民主党の政党助成金の依存ぶりは他党に比べて際立ち、実に本部収入の83・6%を占めます(08年)。自民党は51・4%、公明党は18・8%、社民党は51・1%です。

 支出でも民主党は選挙関係費、宣伝事業費、購読料を取るはずの機関紙誌の発行経費まで100%政党助成金を充てています。日常の活動も選挙活動も国民の税金に頼りきりの「国営政党」となっているのです。

 仮に国会議員を80人減らしても、国会議員の歳費、立法事務費、秘書給与など56億円の削減にしかなりません。政党助成金320億円は、国会議員450人削減に匹敵する金額です。

 巨額の税金を政党が山分けする“既得権”には一切手を触れずに、民意を反映する比例定数を削減するのは許されません。

比例削減突出提案に各党からも異論の声

 比例削減を突出させた民主党案にはメディアや定数削減を主張する他党からも異論が出ています。

 愛媛新聞は、「各党は国会議員の定数削減を競い合う」としたうえで、「議員削減は、民意を削る荒療治」と批判。「本来、政治は全国民がかかわるのが理想だ。1億2751万人が集まれる議場がないから、代表を国会に送る。定数を決める客観基準は人口比だ。いざ減らすとなると、人口が少ない地方の選出議員から削られる」とのべています。

 また、「少数政党に不利な比例の部分だけ切るのは反対。共産党も社民党も民意があるから出てきているのだから」(自民党・石原伸晃組織運動本部長、6月26日放映の民放テレビ)、「民意を正確に議席に反映するのは比例区だ。比例区を減らすのではなく、(選挙区を全廃して)すべて比例区にすればいい」(みんなの党・渡辺喜美代表、「朝日」6月26日付)などの意見も出ています。

(出所:日本共産党HP 2010年7月3日(土)「しんぶん赤旗」)

小選挙区制 存在問う時代
比例定数削減 穀田氏が批判
CS番組

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 21日放送のCSテレビ「朝日ニュースター」の「闘え!山里ジャーナル」で、菅直人首相が表明している国会議員定数の「衆院比例80削減・参院40削減」の是非をめぐって激論が交わされ、削減への異論・反論が噴出しました。日本共産党の穀田恵二国対委員長が出演しました。

 「僕は反対派」という、お笑いコンビ・南海キャンディーズの山里亮太氏がキャスターを務め、「国会議員の数は本当に減らす必要があるのか」と声を上げました。

 民主党の伴野豊衆院議員が「国民に負の分配をお願いすることが多い。国会議員からまず身を削れという声が出ている」と発言したのに対し、穀田氏は「国民に負担増を強いるためだという本音が出た」と強調。比例代表の削減は「民意を反映する部分を削ることだ」と厳しく批判しました。

 『週刊朝日』の山口一臣編集長は、国会議員の特権が問題だと指摘。穀田氏は「特権は廃止すべきだ。例えば東京選出の議員に滞在費はいらないと私たちはずっと反対している。共産党以外、政党助成金を減らせと誰もいわない。理不尽なことが多すぎる。問題を洗いざらい出すべきだ」と応じました。

 「朝日」の曽我豪編集委員は、菅首相が消費税増税を打ち出して国民の反発を招いた後で定数削減を強調し始めたことにふれ、「困ったときの定数削減だ」と批判。伴野氏は「国民受けするというところから始まったのは事実だ」と認めざるを得ませんでした。

 山里氏は「(削減の)デメリットはどうか」と問いました。

 穀田氏は、衆院比例定数を80削れば民主党が4割台の得票で3分の2を超す議席を独占し、参院で否決された法案も再議決できると指摘。共産党や、それより得票の少ない政党は議席をなくす危険があると述べました。山里氏は「少数政党は『ダメ出し』のプロだ。いなくなったらめちゃくちゃなことになりそう」と語りました。

 さらに、NPO法人ドットジェイピーの北島優子事務局次長は「問題が出てきているのは小選挙区だ」と発言しました。穀田氏は「『政治改革』の名で導入された選挙制度(小選挙区比例代表並立制)がよかったのか検証する時代にきている」と応じ、(1)選挙制度のあり方(2)一票の格差(3)政党助成金撤廃と企業・団体献金禁止(4)高すぎる供託金(5)選挙活動の自由―などの問題を国民的に議論すべきだと主張しました。

 穀田氏は特に小選挙区制について、人為的に「二大政党」の多数をつくるものだと批判。その「二大政党」が瓦解し始めている下で、国民の多様な意見を反映させる選挙制度はどうあるべきかの議論が重要だと強調しました。

 「朝日」の安井孝之編集委員は「多様な民意をすくう必要がある。政権交代できればいいという時代とは違う。それにあった選挙制度とは何かを考えるべきだ」と応じました。

(出所:日本共産党HP 2010年8月23日(月)「しんぶん赤旗」)

ラジオ番組
“政治主導遠のく”
小池氏 比例定数削減を批判

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 日本共産党の小池晃政策委員長は20日、ラジオ日本「マット安川のずばり勝負」に出演しました。「秋の政局をにらむ 党利を超えた政道を歩めるのか」と題して番組が進み、後期高齢者医療制度や国会議員の定数削減、日韓関係などについて1時間半にわたってリスナーからの質問に答えました。番組中もメールやファクスで共産党への質問や小池氏への激励が相次ぎ、数十通に及びました。

 番組のなかで司会のマット安川氏は、菅政権について「ねじれ国会だが、しゃべるほうもねじれていることが多くて、ころころ意見が変わってくる。国民にとっては不安です」と水を向けました。

 それに対し小池氏は、「民主党は野党のとき言っていたこととまったく違うことをやる。例えば後期高齢者医療もすぐにやめるんだと言って、(廃止)法案まで出して一緒になってがんばった。ところが与党になったら、すぐにはやめられないと言って、今でも後期高齢者医療制度は続いている」と指摘。「政党・政治家だったら野党のときに言っていたことを実行するのが政権交代だと思う。こんなことをやられたら国民は投票のしようがない」と語りました。

 「議員の定数を減らすと政治主導がますます難しくなるという話を聞いたことがあり、不安になってしまう」とのメールも寄せられました。

 小池氏は「国会議員の数を減らすと『政治主導』は本当にできなくなると思う。少なくなればなるほど国会の(無駄遣いなどを)チェックする力は弱くなっていく」と述べました。

 また、「『日韓併合』は合法的であり侵略ではないと思う」との意見も寄せられ、小池氏は「過去の歴史の事実を事実として認めるところからお互いの関係が始まると思う。日本による軍事的な圧力の下で一方的に併合した。不法・不当な形で結ばれた条約だというのが私たちの立場です」と説明しました。

(出所:日本共産党HP 2010年8月21日(土)「しんぶん赤旗」)

比例定数80削減で…
民主42%の得票で68%の議席
少数政党締め出す恐れ

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 菅直人首相が枝野幸男民主党幹事長らに「8月中に民主党内でとりまとめ、年内の与野党合意」を指示した国会議員の定数削減問題。衆院で比例定数を80、参院では40程度減らそうという内容です。比例定数削減はどのような事態を生み出すのでしょうか。

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 いま衆院の総定数は480議席です。このうち、300議席は定数1の小選挙区で選び、残りの180議席を全国を11に分けた比例ブロックで選びます。

 民主党案はこの比例部分を80削減し、定数100にしようというもの。各ブロックの定数は四国で6→3、北海道で8→4、中国で11→6、北陸信越で11→6など大幅に減り、民意を正確に議席に反映する比例代表制の長所が大きく損なわれ、大政党に有利な仕組みに“変質”してしまいます。総定数に対する小選挙区の比重は62・5%から75%に一挙に高まり、これまで比例代表で議席を得ていた少数政党が締め出されるおそれがあります。

 民主党が主張する比例定数80削減がいかに民意を切り捨てることになるか。2009年総選挙結果で試算するとその害悪が浮かび上がります。

 民主党は比例代表42・41%の得票率で、小選挙区も含め衆院議席の68・50%を占め、1党だけで3分の2以上の議席を得ることになります。自民党の議席占有率は比例得票率とほぼ同じ。一方、日本共産党はじめ、ほかの党は30・86%の比例得票率を得ながら、議席はわずか8%に押し込められます。

民主単独で「再議決」可能

 比例定数80削減によって民主党単独で3分の2以上の議席を占める―これは何を意味するのでしょうか。

 先の参院選結果、野党が参院で過半数を占め、衆院では民主党など与党が過半数を維持する与野党逆転となっています。

 菅首相が「与野党が合意をしなければ法案が通らない、政策が実行できない」(7月30日の記者会見)と述べたように、政府・与党提出の法案が衆院で与党の賛成多数で可決できても、参院で野党が反対すれば法案は成立しません。ところが、図下のように、参院で否決されても、衆院で3分の2以上で再議決し、成立させることができます。(憲法59条)

 07年の参院選で過半数割れとなった当時の自民・公明の与党は参院で法案が行き詰まると次々再議決を使い、海外での自衛隊の武力行使に道を開く「海賊対処」派兵法や新テロ特措法、大企業優遇減税を優先する租税特措法などの成立を強行してきました。民主党の3分の2以上の議席占有は、参院で法案が否決されても、同党単独で再議決が強行できることになります。まさに「一党独裁」です。

(出所:日本共産党HP 2010年8月1日(日)「しんぶん赤旗」)
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社会的弱者である労働者と勤労国民の協力で人間らしく働くルールを確立させよう―内部留保の社会的還元を

2010-08-17 03:03:50 | 国内政治
1.労働・雇用

人間らしく働けるルールを確立します――内部留保の社会的還元を

 労働者の3人に1人、若者や女性では2人に1人が非正規労働者で、そのほとんどが年収200万円以下の「ワーキング・プア」(働く貧困層)です。正社員でも、長時間過密労働による過労死やうつ病などのメンタルヘルスが後を絶ちません。10年間下がり続けてきた賃金は、経済危機を口実にさらに切り下げられています。「名ばかり店長」「名ばかり正社員」と言われる使い捨て労働、無権利で過酷な労働条件もまかり通っています。

 失業者が増え、雇用不安が高まり、賃金が下がった結果、個人消費は落ち込む一方で、経済危機から抜け出す道は見えません。結婚ができない、子どもを産めないなど、少子化への影響も深刻です。自殺や犯罪の増大との関連も指摘されています。

 大企業が溜めこんでいる229兆円もの内部留保を社会的に還元して雇用危機を打開し、労働者の状態を改善することは、内需にしっかりと基盤をおいた日本経済の安定的発展のためにも、技能の継承や労働者の「士気」など企業の健全な発展にとっても、さらには日本社会の将来展望にとっても、決定的な意義をもっています。そのためにも、解雇の規制、非正規の正社員化や均等待遇、「サービス残業」の根絶、長時間労働の是正、最低賃金の引き上げ、過密労働の規制と労働災害の防止・認定基準の緩和など、人間らしく働けるルールを確立することは、緊急で最重要の課題です。

 人間らしく働けるルールの確立のためにも、ILO(国際労働機関)の一連の労働時間・休暇関係の条約をはじめ、111号(雇用における差別禁止)、158号(解雇規制)、175号(パートタイム)などの条約を批准します。

 (なお、労働基本権回復など、公務員労働者については「公務員制度改革」の項を参照してください)。

解雇、退職、配転強要、労働条件の一方的切り下げを許しません

 違法・無法な「非正規切り」とともに、正社員でも労働者の人権を無視した強制配転や退職強要が横行しています。契約期間中の解雇や退職の強要は違法です。労働者の被る不利益の大きい配転命令は無効です。

 政府が2003年に労働基準法を改悪して「解雇自由条項」を盛り込もうとしたときに、日本共産党は、労働者・労働組合と協力してこれをやめさせ、逆に解雇を規制する条項をはじめて盛り込ませました。さらに、「解雇規制・雇用人権法」を提案して、労働者の人権をまもり、ヨーロッパ並みの労働契約のルールの確立をめざしています。

 大企業の身勝手な首切りをやめさせ、雇用の責任を果たさせるためには、解雇規制を強化することが必要です。判例でうちたてられてきた「整理解雇4要件」(差し迫った必要性、回避努力、選定基準・人選の合理性、労働者・労働組合の合意)を法律として明文化して一方的な解雇を禁止し、裁判などで争っているときの就労権を保障します。希望退職・転籍についても、本人同意・取消権、労働組合の関与などのルールを確立します。解雇を目的としたいじめや嫌がらせを禁止し、人権侵害をきびしく取り締まります。労働基準監督署が、退職強要などを日常的に監視し、取り締まるようにします。分社化などにともなう雇用と労働条件のルールをつくります。55歳一律転籍など、年齢による雇用契約の不利益変更や採用制限を禁止します。事業所の閉鎖、移転、縮小の際の自治体との協議の仕組みをつくります。

 高年齢者雇用安定法が改定され、年金の支給開始年齢引き上げにあわせて、65歳までの段階的な雇用延長が事業主に義務づけられました。雇用延長措置をとる企業は93%になっていますが、希望者全員を採用しない、雇用延長しても賃金が定年前の半分以下という企業が多数になっています。アメリカやヨーロッパのように、年齢を理由にして雇用や賃金など労働条件について差別することを禁じます。高齢者雇用延長制度については、希望者全員採用と年齢による賃金などの労働条件差別をやめさせます。

 退職金の後払いである企業年金の一方的な切り下げを許さず、受給権を守ります。

異常な長時間労働を是正し、安定した雇用を拡大します

 日本では、ヨーロッパと違い、労働基準法で残業の上限が定められていないため、長時間労働が横行しています。その労基法さえふみにじる「サービス残業」も横行しています。日本共産党は、1967年以来30年間、300回を超える国会質問で「サービス残業」は企業犯罪だと追及し、2001年には、厚生労働省に根絶のため企業が責任をもって時間管理を強化するなどを内容とする「サービス残業」根絶通達をださせました。過去8年間だけでも1547億円以上の未払い残業代を支払わせています。

 通達を活用し、職場からのとりくみを強化するとともに、「サービス残業根絶法」を制定し、悪質な企業には、企業名を公表するとともに、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせるようにします。中間管理職や裁量労働制の労働者の時間管理をきちんとさせます。

 「店長」「マネージャー」といいながら、管理職としての権限、実態もない「名ばかり管理職」にたいする残業代不払いを許しません。

 01年に5割を切った有給休暇の取得率は、その後も年々下がり、08年には、47.7%にまで低下しています。ヨーロッパでは、有給休暇の完全取得は常識になっています。年次有給休暇を最低20日とし、一定日数の連続取得と完全消化を保障します。

 「サービス残業」をなくすだけでも、新たに115万人分の雇用が生まれます(民間のシンクタンク労働総研の試算)。有給休暇の完全取得による経済効果は16兆円、188万人分の雇用が生まれます(財界系のシンクタンク日本生産性本部の試算)。当面、「残業は年間360時間以内」という大臣告示をただちに法定化し、残業割増率を現行25%増から50%増に、深夜・休日は100%増に引き上げます。さらに、労働基準法を抜本的に改正して拘束8時間労働制とし、残業時間を1日2時間、月20時間、年120時間に制限します。恒常的な長時間残業や有休をとれないことを前提にした生産・要員計画をなくします。深夜労働・交代制労働、過密労働をきびしく規制します。EU(欧州連合)のように、連続休息時間を最低11時間は確保します(深夜12時まで働いたら翌日の出勤は11時以降)。こうして労働時間を抜本的に短縮し、安定した雇用の拡大につなげます。

労働者派遣法を抜本的に改正し、使い捨て労働をなくします

 大量の派遣労働者が、違法に長期間働かされつづけたあげく、経済危機を口実として仕事を奪われてきました。300万人以上いた派遣労働者は、09年1年間で、約100万人減となっています。日本は、他国に例を見ない「派遣労働者使い捨て」の国となっています。そのおおもとには、労働者派遣法を再三にわたって改悪し、対象業務を原則自由化し、専門業務での派遣期間の撤廃などの規制緩和をすすめ、正社員を大量に派遣労働者に置き換えてきたことがあります。日本共産党は、違法な派遣・非正規切りとたたかう労働者・労働組合のみなさんと力を合わせて、大企業の派遣法違反の実態を告発し、国会で繰り返し取り上げ、労働者保護のための労働者派遣法の抜本改正を求めてきました。

 しかし、民主党政権の提出した派遣法「改正」案は、「製造業は原則禁止」といいながらも、実際は、1年以上の雇用の見込みさえあれば「常用型」として、これまでと同様に製造業派遣を認めるなど、大きな抜け穴をもつ欠陥法案であり、名ばかり「改正」法案です。不安定な「登録型」派遣の禁止でも、専門業務を例外とするなど、一般業務を専門と偽装することを正すどころか、派遣を固定化するものとなっています。派遣労働者のなかで「これでは私たちは救われない」との怒りが渦巻いています。

 労働者派遣法を抜本的に改正し、派遣労働を一時的臨時的業務に制限します。製造業派遣や日雇い派遣を全面的に禁止し、使い捨て労働をなくします。登録型派遣は真に専門的な業務にきびしく限定します。派遣受け入れ期間の上限は1年とし、違法があった場合は派遣先に期間の定めなく直接雇用されたものとみなし、正社員化をすすめます。派遣先の正社員との均等待遇、グループ内派遣の制限を行い、常用代替を規制します。

有期雇用を制限して均等待遇と正社員化をすすめるとともに、「個人請負」などの脱法的契約を許しません

 契約社員やパート、期間社員などの非正規労働者は、細切れの雇用契約の更新を繰り返し、つねに雇用不安のなかで働いています。派遣先企業が、直接雇用に切り替えても、数カ月の契約をくりかえし、いつでも「雇い止め」「首切り」自由の「期間工」とされるケースが後をたちません。労働基準法では3年を越える雇用契約ができないことになっていることから、「最長2年11カ月契約」と称して、それまではいつでも「雇い止め」できると「曲解」「誤解」し、違法・脱法を繰り返しているケースもあとをたちません。現行法でも、契約途中の解雇は厳しく規制されており、また、契約更新の「ある」「なし」や、更新する際の基準について明示しなければならず、反復更新を重ねていれば、「解雇権濫用法理」が類推適用されます。現行法を厳しく守らせ、労働者の泣き寝入りを許しません。

 ヨーロッパでは、有期労働は、合理的な理由のある場合に限られ、正社員との均等待遇なども当たり前となっています。有期雇用については、一時的臨時的で合理的な理由がある場合に限定し、賃金やその他の待遇について正社員と均等待遇にすることを明確にします。

 日本最大の非正規雇用をかかえる日本郵政グループは、ワーキングプアを大量につくりだし、同様の事業を行う宅配事業者のなかに非正規化を広げる牽引者ともなってきました。日本共産党は、国会でこの問題をとりあげ、正社員化への流れをつくりだしてきました。希望する人全員を正社員化するよう、ひきつづき力を注ぎます。

 本来、労働者として企業の指揮・命令を受けて仕事をしているのに「個人請負」契約として、社会保険など労働者としての権利を奪う脱法行為も増えています。こうした違法行為もきびしく取り締まり、ILOの「雇用関係に関する勧告」(198号)を活用し、請負や委託で働く労働者を保護します。「多様な働き方」の名で、非正規雇用の拡大をすすめる政府・財界の政策に反対します。

男女がともに、人間らしく生き、働ける労働条件を確立します

 女性の2人に1人が、パートや契約、派遣などの非正規雇用のもとに置かれています。

長時間・過密労働のなかで、育児休業どころか、結婚や出産しても働きつづけられる女性は3割にすぎません。

 「転勤できない」「業務がちがう」などを表向きの理由とした男女間の昇給・昇格差別、賃金差別の結果、男性の正社員に比べて、女性の正社員の賃金は7割、女性の非正規では4割という格差があります。派遣労働者でも、女性の時給は男性の9割です。実態は一般業務であるのに専門業務派遣だと偽装されて、長期に細切れ契約で働かされ、30歳代で事実上の「定年」という実態もあります。雇用形態差別がそのまま男女間格差に直結し、退職金や年金支給の低さなどにも大きな影響を与えています。わが国も批准しているILO100号条約(同一価値労働・同一報酬)にもとづき格差を是正します。

 労働時間を短縮し、男女賃金格差を是正することは、男女ともに仕事も家庭生活も両立できる社会にする上でも重要です。

 日本共産党は、賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件の均等待遇と正社員への道の拡大をめざし、「パート・有期労働者均等待遇法」を提案しています。賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について、労働者がパート・有期労働者であることを理由として、正社員と差別的取扱いをすることを禁止します。正社員を募集するときは、パート・有期労働者に応募の機会を優先的に与えるようにします。短期の雇用契約のくり返しを、期間の定めのない雇用契約とみなした判例を法制化します。合理的理由のない「短期・反復雇用」「契約社員」は不公正な契約として規制し、正社員に移行させます。正社員が、育児・介護などの理由のために、一定期間、パートタイム労働者として働き、また正社員にもどれるようにします。「均等待遇」に違反している企業に対して、罰則を設けることも含めきびしく取り締まります。

 1985年に男女雇用機会均等法が制定されて25年。しかし、日本の男女賃金格差は130カ国中90位と世界でも最下位の部類に甘んじています。雇用機会均等法では、「間接差別の禁止」について、「募集・採用で身長・体重・体力を要件にすること」「転勤を採用・昇進の要件にすること」などの3例の限定的な列挙にとどめています。条件をつけずに「間接差別」の禁止を明記すべきです。雇用形態差別や低賃金の業務に女性の比率が高くなっていることなどについて、実効性ある措置をとることが求められています。

 (詳しくは「女性」の項を参照してください)。

最低賃金の抜本的引き上げなど、政治の責任で賃金の大幅底上げを実現します

 貧困と格差が広がるなかで、年収200万円以下の「ワーキング・プア」といわれる労働者が、1000万人を超えるようになっています。働いても働いても低賃金でアパートも借りられず、ネットカフェで寝泊りしながら働いている青年もいます。労働者がまともな生活ができるようにするためにも、労働者全体の賃金を底支えするためにも、最低賃金の引き上げが必要です。職場・地域の運動と世論の広がり、日本共産党の国会論戦が相まって、最低賃金法が40年ぶりに改定されました。改定最賃法では、最賃決定基準として、生計費とかかわって憲法25条の生存権規定が盛り込まれました。この改定にふさわしい最賃の大幅引き上げを実現します。最低賃金の決定基準は、生計費のみとし、改定最賃法にも残されている企業の「支払い能力」を削除します。民主党の最賃引き上げ先延ばしをゆるさず、中小企業への適切な支援をはかりながら、すみやかに時給1000円以上への引き上げをめざすとともに、全国一律の最低賃金制度を確立します。

 中小零細企業が最低賃金を支払えるように、大企業の下請けいじめや規制緩和による過当競争をきびしく規制するとともに、助成措置を講じます。「官製ワーキング・プア」を許さないためにも、国や自治体の非常勤職員の賃金を引き上げます。国や自治体と受注する事業者との間で結ばれる契約に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定める法律や条例(公契約法・条例)を定めます。また、自治体が誘致する企業について、正社員化の度合いや均等待遇の状況を重要な判断基準とさせます。

失業者の生活と職業訓練を保障し、安定した仕事、公的仕事への道を開きます

 労働者は、失業すればとたんに収入が途絶え、貯蓄だけが頼りです。派遣や期間工の労働者は、貯蓄もできないような劣悪な労働条件で働かされ、首を切られると同時に寮から追い出されてホームレスになっています。ILOは昨年、日本は失業手当を受給できない失業者の割合が77%にものぼり、先進国中最悪の水準にあると発表しました。失業者が安心して仕事を探せるようにするためにも、雇用のセーフティーネットの拡充が不可欠です。

09年の雇用保険法の「改正」では、雇用保険から排除されている失業者1008万人のうち適用対象になるのは148万人にすぎません。雇用保険の拡充は、「失業保険が切れる」から劣悪な労働条件でも就職せざるをえないという状況を改善し、「ワーキング・プア」をなくしていくうえでも重要です。失業給付期間を、現在の90−330日から180−540日程度までに延長します。給付水準の引き上げ、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくし、受給開始時の3カ月の待機期間をなくすなど抜本的に拡充します。

 安定した仕事につく機会を広げるために、専門学校なども活用して職業訓練制度を抜本的に充実させます。フランスでは、職業訓練への資金提供を企業に義務づけています。ドイツには、企業が職業訓練生を一定の報酬を支払って受け入れ、終了後は正社員として採用するという制度があります。政府は、雇用保険を受給していない労働者や、給付を受けても再就職できなかった労働者を対象に、職業訓練とセットで訓練期間中の生活を保障することを柱とした「緊急人材育成・就職支援基金」を創設しました。しかし、3年間の時限措置であり、単身者月10万円、扶養家族ありで12万円と、生活保護基準にも満たない不十分なものです。低賃金で貯えもなく、企業内での教育訓練の機会もなかったワーキング・プアやフリーターの職業訓練を重視し、有給の職業訓練制度や訓練貸付制度を創設し、訓練期間中の生活援助を抜本的に強化します。

 民主党政権が「事業仕分け」で打ち出した全国83カ所の地域職業訓練センターの全廃方針を撤回し、希望するすべての失業者に職業訓練の機会を提供します。

 「ネットカフェ難民」だけでなく、「ファミレス難民」や「バーガー難民」まで生まれています。公園の青テントから出勤している人もいます。ワーキング・プアや失業者に、公共・公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度など、生活支援を強め、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設します。

 「ふるさと雇用再生特別交付金制度」など、政府の不十分な雇用創出制度を抜本的に拡充するとともに、国と自治体の責任で、効果のある公的就労事業を確立します。国と自治体の協力による臨時のつなぎ就労の場を確保させます。また、福祉、医療、環境、防災、教育など、国民のくらしに必要な分野が慢性的に人手不足状態にあります。この分野での雇用を、職業訓練と結びつけ、人間らしい賃金・労働条件を確保して拡大することは、国と自治体の重要な責任です。

 働く者が連帯してみずから受け皿をつくり、仕事をつくりだす「協同労働の協同組合」(「労働者協同組合」)について、労働者性を担保した根拠法を制定します。

新卒者の就職難を打開します

 日本共産党は、2010年4月21日、「新卒者の就職難打開へ――社会への第一歩を応援する政治に いまこそ、国、自治体、教育者、そして企業と経済界が真摯な取り組みを」という新卒者の就職難に関する政策を発表しています。くわしくはこちらをご覧ください。

http://www.jcp.or.jp/seisaku/2010/20100421_syuusyokunann_dakai.html 

国と地方の労働行政を強化します

 人間らしく働けるルールを確立するために、国の労働行政の強化は不可欠です。労働基準監督署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。ILO理事会の決定にそって、労働基準監督官を2倍にします。職業訓練の充実や再就職支援、労働者の権利と雇用主の義務を知らせる広報・啓蒙活動を強化します。そのために、ハローワークの体制を抜本的に拡充します。中央と地方の労働委員会の民主化と機能の強化、パワハラ・セクハラをはじめ個別労働紛争の処理制度の充実をすすめます。学校教育で労働者の権利をしっかり教えるようにします。

(出所:日本共産党HP )
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日本政府の国債借金問題ー民主党の菅首相・「赤旗」報道に暴言、日本共産党・志位氏がピシャリと反論ー

2010-07-06 01:33:26 | 国内政治
菅首相「赤旗」報道に暴言
国債問題 志位氏がピシャリと反論

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 4日に放送されたフジテレビ「新報道2001」の党首討論で、菅直人首相が「『赤旗』で、国債は出しても大丈夫という趣旨のことをギリシャとの比較の中で出しておられた」と事実に反する発言をし、日本共産党の志位和夫委員長に説明を求める場面がありました。

 菅首相は、事実無根の断定をもとに志位氏に対し、「共産党として(国債を)どこまで増やして大丈夫と言われるのか、めどがあるならこの場で言ってみてください」と質問しました。

 志位氏は「大丈夫だなどということは、『赤旗』に一言も書いていません」と即座に否定。「(『赤旗』には)ギリシャと日本は状況が違うと。ギリシャの場合は、借金の7割は外国からの借金だと。日本の場合9割は国内だと、この違いを無視してはいけませんよと(書いている)。大丈夫だなんて一言も書いてない」と反論し、ギリシャの財政破たんが法人税減税、消費税増税を行ったことでもたらされたことを説きました。

 本紙2日付の記事は、菅首相が「ギリシャのようにならないために」増税の議論が必要だと主張していることを念頭に、日本とギリシャでは国債の海外保有比率が大きく違うことや、ギリシャが法人税引き下げと消費税引き上げで税収を減らしたことなどを指摘し、首相の説明を批判する内容です。日本の国債増発についての記述はありません。

(出所:日本共産党HP 2010年7月5日(月)「しんぶん赤旗」)
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年収300円以下の大量の不安定労働者と失業者をつくりながら大企業トップ役員へは減税のモラルハザード

2010-07-06 01:27:49 | 国内政治
大企業トップ役員への減税
1人あたり1900万円
報酬上位200人平均

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 政府は高額所得者を優遇するため、所得税と住民税の最高税率を1999年に引き下げました。この措置によって大企業のトップ役員200人が受けた減税額が、昨年度だけで合計38億3272万円、1人当たり約1916万円にのぼることが分かりました。菅直人首相は「財政再建」のために消費税率10%を口にしますが、この不公平税制こそ正すべきです。

 6月末締め切りで金融庁に提出された3月期決算企業の有価証券報告書で、昨年度1億円以上の報酬を受け取っていた役員が200人以上にのぼりました。報酬額が判明した役員のうち上位200人について、本紙が試算しました。

 大量の派遣労働者切りで社会問題を引き起こした自動車メーカーは、日産、トヨタ、ホンダ3社の役員10人で合計2億5507万円の減税。日本最高の役員報酬、8億9100万円を受け取っていたカルロス・ゴーン日産自動車社長の減税額は1億2291万円となります。

 大企業優遇税制のため、実際に払った法人課税負担率(2003年~09年の法人3税納税額と税引き前当期純利益の比率)がわずか12・9%だったソニーのハワード・ストリンガー会長兼社長の減税額は1億1357万円でした。ソニー1社だけで6人計1億9888万円の減税となります。

 10年以上法人税を払っていないメガバンクでは、みずほ、三菱UFJ両行の役員9人で1億864万円の減税。過去注入された公的資金を返し終わっていない新生銀行も4役員で計5329万円の減税です。

 北島義俊・大日本印刷社長は1億809万円、金川千尋・信越化学会長は7218万円でした。

 所得税・住民税の最高税率は98年にはそれぞれ50%、15%でしたが、翌年引き下げられ、今では所得税40%、住民税10%です。今年から1億円以上の役員報酬の公開が義務づけられたため、これまでに判明した分から、98年時点の税率と現行税率で課税推計額の差額を計算しました。

応分の負担を

 日本共産党は所得税・住民税の最高税率を元に戻し、給与所得控除に頭打ちを設けるなど、高額所得者に応分の負担を求めるべきだと主張しています。

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 〈表の推計方法〉

 (1)2009年度決算で明らかにされた報酬額(ストックオプションなどを含む。退職金は除く)を給与収入として税額を計算。他の企業役員との兼務による副収入がありうるが、考慮に入れず

 (2)扶養親族はゼロとして計算。社会保険料控除は一律114万円(財務省のモデル試算の係数)

 (3)以上を考慮した上で1998年当時の税制と現行税制による税額の差を算出。最高税率は98年当時所得税50%、住民税15%、現行は所得税40%、住民税10%

 (4)外国人役員は日本に居住して課税されていると仮定

(出所:日本共産党HP  2010年7月5日(月)「しんぶん赤旗」)
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テレビ党首討論での日本共産党・志位委員長の発言ー財界いいなりの消費税増税許さない-

2010-07-06 01:24:29 | 国内政治
財界いいなりの消費税増税許さない
テレビ党首討論 志位委員長の発言
NHK「参院選特集」

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 日本共産党の志位和夫委員長は4日のNHK番組「参院選特集」に出席し、民主、自民、公明、国民新、社民、みんなの党、たちあがれ日本、新党改革の各党首らと討論しました。司会は影山日出夫解説委員。

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消費税増税
大企業減税がセット、社会保障にも財政再建にも回らない

 大きな争点になっている消費税問題について、菅直人首相は「強い経済、財政、社会保障を一体的に実現するなかの一つとして消費税についてふれた」と発言。自民党の谷垣禎一総裁は「予算を組み替えれば簡単に出てくるのが前提だったはず」、公明党の山口那津男代表も「負担を求めるところだけ一緒に議論しようといってもだめだ」と発言。これに対し菅氏は「自公政権がやってきたことについて説明もないままいわれるのは不公平」などとのべました。

 国民新党の亀井静香代表は「総理も消費税を今やるなんておっしゃっていない」とかばいだてし、社民党の福島瑞穂党首は「消費税というけれどなぜ富裕層に対する減税策を元に戻すといわないのか」とのべました。

 志位氏は次のようにのべました。

 志位 菅さんは、今度の消費税の税率の引き上げについて、「福祉のためだ」、あるいは「財政再建のためだ」とおっしゃるんですけれども、民主党のマニフェストには、「強い経済」という項目があって、その目玉として法人税率引き下げと書いてある。「強い財政」の目玉として消費税の増税が書いてある。すなわち消費税の増税というのは、大企業の法人税の引き下げとセットで押し出されている。ここが重大だと思うんです。

 財界は、いま法人税は40%から25%まで4割下げろといっています。経済産業省が出した文書でも、25%という同じ数字が書いてある。ここまで下げますと、2007年度のリーマン・ショック前の実績で計算しますと、法人税収に9兆円の穴があくんですよ。

 菅さんは、今は(法人税収が)少ないというけれども、菅さんたちは3%の(経済)成長を目指すわけですから、そのときには同じ穴があくわけです、9兆円の穴が。

 そうして消費税5%を上げたとしても、実際には財源になるのは11兆円です。

 結局、増税しても、それは大企業の減税に消えてしまって、社会保障の財源にも財政再建にもならない。ですから、こういうやり方には絶対反対というのが私たちの立場です。

法人税
日本は高くない、三大銀行は10年以上1円も払ってない

 これに対し菅氏は、「課税ベースを広げて景気が回復すれば法人税収を変えないでいることは十分可能」と指摘。法人税減税についても「法人税は国際的な競争の問題で日本が突出している」として引き下げる考えを改めて表明しました。

 志位氏は次のように反論しました。

 志位 民主党がいう課税ベースの拡大とは、租税特別措置の見直しのことだと思います。しかし、たとえば(民主党は)研究開発減税などは恒久化するといっていますから、どうカウントしても数千億円程度にしかなりませんよ。さっき言った9兆円の穴はとても埋まらない。

 それから「国際競争力」ともいうけれど、日本の法人税はけっして高くありません。日本経団連の幹部が“日本の法人税は見かけほど高くない、表面税率は高いけどいろいろな政策減税があるので高くない”と(いっている)。

 実際、いろいろな優遇税制があって、(大企業の)上位100社でみますと(法人税の負担率は)40%もありません。30%です。ソニーは12%、パナソニックは17%、三大メガバンクに至ってはこの10年間以上、法人税を1円も払っていない。こういう実態があるんです。

 これを、「国際競争力」だと言ってどんどん下げるのが当たり前というのは、財界の論理なんですよ。これに菅さんが屈したというのが、いまの現状です。

ギリシャの財政破たん
原因は法人税減税と消費税増税、菅首相がやろうとしている路線

 司会の影山氏は「消費税引き上げと財政再建が両立するのか」と質問。菅氏は、ギリシャの財政破たんをあげて、「共産党は(国債を)いくら増やしても大丈夫なことをいわれておられますが」などと日本共産党を攻撃しました。

 これに対し志位氏は次のように批判しました。

 志位 事実をねじまげる発言はやめてほしい。借金を増やしてもいいなんてどこでもいってませんよ。

 私たちがギリシャの問題で指摘したのは、ギリシャの財政破たんというのは日本とは状況が違うと(いうことです)。ギリシャでは、7割が外国人投資家の借金だが、日本の場合は9割が国内です。同列には扱えませんよといっている。

 なぜギリシャで財政破たんが起こったかというと、この10年間で法人税を40%から24%に下げて税収に大穴をあけてしまった。消費税のほうは18%から23%に5%上げた。

 つまり菅さんがやろうとしていることを10年前から先取りしてやったのが、ギリシャなんですよ。“ギリシャのようになる”っていうけど、“ギリシャのようにしようとしている”のが、菅さんの路線だ。

 私たちはそういうことを批判したわけであり、今の巨額の財政赤字については、5兆円の軍事費にメスを入れる。行き過ぎた大企業・大資産家への減税にメスを入れる。こういうことできちんと再建していく道を私たちは責任もって提示しています。

財政再建と経済成長
大企業応援から暮らし応援に切り替え、内需を活発に

 菅氏は「この20年間の経済財政運営が間違っていた」としたものの、「法人税も下げるほうが景気にプラスという意見も強い」と発言。

 各党は「企業ものびないといけない」(谷垣氏)、「産業振興が大事」(亀井氏)、「経済成長と歳出削減が車の両輪」(山口氏)、「デフレギャップ30兆円を解消するには日本銀行に30兆円の資金を供給してもらう必要がある」(みんなの党・渡辺喜美代表)とのべました。

 志位氏は次のようにのべました。

 志位 財政再建と経済成長という問題を考えるさい、この10年間の日本経済の教訓というのがあると思うんです。

 菅さんのおっしゃったように10年間、GDP(国内総生産)はまったく伸びなかった。自公政権がやったことは、大企業に対しては年間5兆円の減税をやりました。そして、庶民に対しては定率減税の廃止など年間6兆円の増税をやった。その結果、大企業は利益を2倍以上に増やした。しかし、働く人の賃金は総額で1割減った。GDPは伸びない。こういう状況になったわけです。大企業は強くなったけれども、国民は貧しくなり、成長が止まってしまった。そのなかで税収も落ち込んで、経済成長も財政再建も共倒れになったというのがこの10年なんですよ。

 じゃあ、どうやって両立させるかといったら、大企業応援から暮らし応援に切り替える。たとえば、「使い捨て」労働をなくして、派遣法は“抜け穴”なしの抜本改正をやって、「雇用は正社員が当たり前」にする。大企業による下請けいじめをやめさせて公正な取引のルールをつくる。後期高齢者医療制度は4年後に先送りじゃなくてただちに撤廃する。こういう暮らし応援に切り替えていく。そのことによって内需、家計、これを活発にして経済を健全な成長の軌道に乗せていく。これがやはり、本当の意味での暮らし応援の「経済成長戦略」だと私たちはいっております。

10年間成長止まった日本経済
「大企業減税、消費税増税」は、自・公政権と同じ道

 司会の影山氏は、「(民主党は)成長戦略のなかで法人税の税率を主要国並みに引き下げるということを明記されました。一方で、消費税は将来的に上げていく、法人税は下げると。これは、民主党政権が、家計重視から企業重視の方向にかじをきったということなんでしょうか」と問いかけました。

 菅氏は「法人税だけを議論するのでも消費税だけ議論するのでもなく、全体の議論を」などとごまかしました。

 志位氏は次のように指摘しました。

 志位 結局、きょう菅さんと議論して明りょうになったのは、消費税は上げるけれども、法人税は下げると。このやり方こそ、この10年間の、あるいは20年間の経済の長期停滞、衰退、これを招いてきたやり方だと思うんですよ。

 この10年間成長が止まった。これはやはり、大企業には減税をやって庶民には増税をやる。あるいは、労働法制の規制緩和をやり、これが本当に社会を荒廃させ、家計と内需を壊して、(経済が)成長しなくなったわけです。それと同じやり方を菅さんはやろうとしている。すなわち、大企業に減税して消費税を増税するという、自公政権がやってきたやり方とおんなじじゃないですか。

 これは「第三の道」でもなんでもない。自公政権がやってきた「第一の道」と「第二の道」を足したようなものですよ。それと同じ道で焼き直しだと思います。

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テレビ朝日系番組

菅首相の党首討論欠席
この10年で初めて、理屈が立たない

  4日放映のテレビ朝日系番組「サンデー・フロントライン」には、日本共産党の志位和夫委員長をはじめ7党の党首(民主党は幹事長)が出席し、討論しました。

 冒頭、司会の小宮悦子氏は、菅直人首相が「各テレビ局への番組出演は1回だけ」との理由で同番組の出席を断ったことについて「とっても残念」と発言。代理の枝野幸男民主党幹事長が「逃げている訳ではない」などと述べてスタジオが騒然となり、志位氏は次のように述べました。

 志位 私はこの10年、党首討論会に参加していますが、小泉(純一郎)さんのときも、安倍(晋三)さんのときも、麻生(太郎)さんのときも、こんなふうに選挙戦本番に入って、与党第1党の党首が出ないということはなかったですよ、一度も。

 「各局1回ずつ」といいますが、小泉さんにしても、みんな複数回やったんです。これが当たり前だった。「1回ずつ」ということで討論を拒否する。これは理屈が立たない。

民主党政権の総括
数々の公約違反の大もとに米国と財界いいなり政治

 消費税増税をめぐる論争の後、司会者やコメンテーターから「9カ月の民主党政治はどういうことだったのか」との問題提起がされ、志位氏は次のように語りました。

 志位 私は、小宮さんや(「朝日」編集委員の)星(浩)さんがおっしゃったようにこの1年間の総括は大事だと思うんですよね。

 私たちは、政権交代があったときには、国民のみなさんの政治を変えてほしいという願いを反映して、(民主党政権も)いくつかの前向きの政策を出したと思うんですよ。例えば普天間基地は「県内移設はしない」「国外、最低でも県外」と。しかし、(民主党政権は)辺野古に新基地をつくるという日米合意を結んでしまった。後期高齢者医療制度はただちに廃止というのが公約だったのに、4年後に先送りだというふうになる。あるいは、労働者派遣法の問題でも結局、「抜け穴」だらけのものになってしまう(司会「そういったことをすべて総括する選挙だということですね」)。内政で日本経団連の圧力がかかってくると、もう消費税の問題、かじを切ってしまう。あるいは、日米関係ではアメリカの言いなりで、「海兵隊は抑止力ではない」と言っていた自分の考えを捨てて「抑止力だ」と。この二つの問題があると思うんですね。

財源問題
5兆円の軍事費と、ゆきすぎた大企業・大資産家への減税にメスを

 来年度予算編成に向けた財源問題が議論となり、民主党の枝野氏が「埋蔵金」や「事業仕分け」で歳出にメスを入れれば財源をつくれると述べたのに対し、志位氏は次のように発言しました。

 志位 私は、まさに政治が手をつける場所があると思うんですよ。たとえば5兆円の軍事費の問題です。とくに米軍向けの予算です。「思いやり」予算、あるいはグアム移転費用。これは、民主党は野党のときに反対してきたんですよ。(「思いやり」予算の)特別協定にも、グアム協定にも反対してきた。ところが、これが民主党政権のもとで3370億円まで膨れ上がっているわけですよ。やはり、こういうものは全廃して、軍事費でも1兆円ぐらいは全体で切れます。

 それから、ゆきすぎた大企業・大資産家への減税の見直し。とくに、証券優遇税制というものがあります。これは、株の配当や譲渡で得られた所得に対して税金が10%しかかかっていないわけですよ。本則20%にすぐに戻すべきですし、富裕層は30%にすべきです。アメリカにしてもイギリスにしても(富裕層に対する課税は)大体3割から4割が世界標準ですから、大金持ちには相応の負担をしてもらう。

 この二つの部分にきちんとメスを入れないと、結局、もう財源は消費税しかないという議論にすぐもっていくわけですね。

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フジテレビ系番組

消費税増税の震源地
日本経団連が4月に出した方針書にこたえた動き

 4日放映のフジテレビ系番組「新報道2001」では、8党党首が消費税増税問題を中心に討論しました。

 このなかで菅直人首相は「自民党が10%と提案したので、(民主党は)議論の上で参考にしたいと言った。マニフェストでは超党派で話しあおうと言っている。ぶれてもいないし後退もしていない」と発言。自民党の谷垣禎一総裁も「総理としてきちんと問題提起されたのは率直に評価する」など、消費税増税で応じる姿勢をみせました。

 日本共産党の志位和夫委員長は、いまの消費税増税が法人税減税の穴埋めで持ち出されていることや、民主、自民などが持ち出している「日本の法人税は高い」との言い分に反論したうえで、消費税問題について次のようにのべました。

 志位 今回の消費税増税議論の震源地は、日本経団連だと思います。4月に「成長戦略2010」という文書を出して、消費税率を一刻も早く上げて、法人税を下げろと、セットで押し出したわけですね。それに応えての(菅政権の)動きだと。

 実は、1989年に消費税を導入したときにも、同じやり方でやられた。あの時も「福祉のため」といわれた。しかし福祉は良くなりませんでした。

 22年間で、消費税の税収総額は224兆円。しかし同じ時期に、法人3税で208兆円の減収があった。

 結局、国民が額に汗して納めた消費税は大企業減税の穴埋めに使われた。これをもう1回繰り返そうというのが、菅さんのやろうとしていることだと思います。

(出所:日本共産党HP  2010年7月5日(月)「しんぶん赤旗」)
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消費税など庶民増税を許さず、大企業・大資産家優遇の「逆立ち税制」をただす日本共産党の選挙政策

2010-06-29 17:46:40 | 国内政治
 税制

消費税など庶民増税を許さず、大企業・大資産家優遇の「逆立ち税制」をただします

 カジノ資本主義の破たんが明らかになる中で、世界では昨年来、これまでの大資産家優遇、多国籍企業優遇の税制の見直しが行われてきています。イギリスでは、今年4月から、証券税制を含めて所得税の最高税率が引き上げられました。アメリカでも、オバマ政権と民主党が、所得税の最高税率引上げなどの富裕層への増税を提案しています。医療保険改革の財源としても、富裕層のメディケア税の税率引上げなどが決められました。こうした動きは欧米各国に広がってきています。

 ところが、日本では、自公政権のもとで庶民には定率減税廃止や配偶者特別控除廃止、高齢者への増税など、年間の税額にして5兆円以上もの増税が行われる一方、大企業や大資産家には、98年以降の10年間に、法人税率や所得税最高税率の引下げ、研究開発減税、証券優遇税制など、総額で年間8兆円以上(07年時点)もの減税を行うという「逆立ち税制」が進められてきました。

 自公政権にかわった民主党政権も、子ども手当の財源として人的控除の廃止・縮減による増税を打ち出したのに続いて、消費税についても「4年間は上げない」という公約を投げ捨てて、増税の方針をはっきり打ち出しました。菅首相は「10%」という数字にまで言及しています。その一方で、法人税率の引下げを掲げています。経済産業省が要求しているような法人税減税を実施したら、消費税を10%に増税したとしても、そのほとんどが法人税減税の穴埋めに消えてしまい、財政再建にも社会保障財源確保にも役立ちません。

いまでも巨額の利益を上げている大企業に減税しても、内部留保のため込みがますます増えるだけです。その減税の穴埋めを消費税で行えば、国民生活はますます圧迫され、景気がいっそう冷え込むことは必至です。

 税は「応能負担」が原則です。所得の少ない人には少なく、所得の多い人にはより多く負担してもらう、そして、生活に必要な最低限の所得をも得られないような人は非課税にするのが当然です。「貧困と格差」が大きな問題となっている今こそ、この原則がいっそう大事になっています。

 大企業や大資産家に減税の「大盤振る舞い」をしてきたことが、税収に大きな穴をあけ、巨額の政府債務の原因にもなっています。財政危機から脱却する道を確立するためにも、行き過ぎた減税にメスを入れることが必要です。

 日本共産党は、(1)当面する経済の危機的状況から、緊急にくらしと営業をまもる、(2)「逆立ち税制」のゆがみをただす、(3)財政危機から脱却する見通しを確保する――という3つの角度から、次のように税制の改革を進めます。

 法人税減税の穴埋めのための消費税の増税に反対します
民主党は、「4年間は消費税を上げない」「無駄を削れば財源はできる」と言ってきましたが、それが破綻し、消費税増税に舵をきりかえようとしています。自民党も、さまざまな「新党」も、消費税増税を主張しています。しかも、これらの政党は、いずれも「法人税率を引き下げる」と、口を揃えて主張しています。法人税減税の穴埋めのための消費税増税であることは明らかです。

 日本経団連や経済産業省は、いま40%の法人実効税率を25〜30%に下げろと要求しています。かりに25%に引き下げたら、9兆円もの減収になります。消費税率を10%に引き上げたとしても増収額は12兆円ですから、そのほとんどが法人税減税の穴埋めに消えてしまいます。

 消費税の増税は、消費を冷え込ませ、景気に大きな打撃となります。菅首相は、「増税しても、その税収を正しく使えば景気に悪影響はない」などといっていますが、これはとんでもないでたらめです。所得の落ち込みで苦しい家計から消費税をしぼりたてて、巨額の内部留保をためこむ大企業への減税に回すことが、「正しい使い方」だとでもいうのでしょうか。

 「財政危機だから消費税増税も仕方ない」とか「社会保障の財源確保のためには消費税増税が必要だ」という議論も、増税を国民におしつけるためのごまかしです。それは、消費税導入以来の実績をみれば明らかです。消費税導入以来の22年間で、税収は累計224兆円にもなりますが、ほぼ同じ時期に企業が納める法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税)は208兆円も減ってしまい、消費税収入の9割以上が、その穴埋めに消えてしまったのです。このため、消費税は社会保障の財源にはなりませんでした。そして、この22年間で、国・地方の長期債務残高は246兆円から850兆円へと3.5倍近くに増え、対GDP比でみても60%前後から180%へと3倍に増えてしまいました。

また、消費税は、低所得者ほど負担の重い税金であり、そもそも社会保障の財源にはふさわしくありません。

日本共産党は、法人税減税の穴埋めのための消費税増税にきっぱり反対し、国民のみなさんと力を合わせて、増税阻止のためにたたかいます。

消費税は、将来的には廃止をめざしつつ、当面、次のような改善をすすめます。

―──食料品など生活必需品の消費税を非課税にします。食料品や水光熱費などの生活必需品は、所得の多少によって支出額があまり違わないため、所得対比でみた消費税負担率が低所得者ほど重くなる「逆進性」がとくにひどくなります。こうした品目を非課税にすれば、家計をたすけるとともに、税制のゆがみをただすことにもつながります。

―──消費税の免税点が年間売上3000万円から1000万円に引下げられた結果、零細な業者までが消費税の納税義務を負わされ、税が払えないために廃業を余儀なくされるなど、深刻な事態が広がっています。売上3000万円以下の業者は課税業者の半分にもなりますが、消費税収全体に占める割合は3.6%にすぎません。しかし、1業者あたりの税額は25万円で、零細な業者にとっては大きな金額です。消費税の延納措置を認めるとともに、免税点を引き上げます。

―──保険診療などの医療費は消費税非課税とされていますが、病院や診療所が仕入れる医薬品や医療機器などには消費税が課税されています。これによって、医療費の負担も増えるとともに、病院などの経営も圧迫されています。医療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税が還付されるようにします。

人的控除廃止に反対し、課税最低限の引き上げなど、所得課税の減税をはかります

民主党政権は、子ども手当の財源確保を口実にして、所得税の扶養控除や配偶者控除の廃止をねらっています。国民の強い反対を前にして、今年度は廃止するのは16歳未満の年少扶養控除だけにとどめましたが、総選挙のマニフェストでは言っていなかった住民税の控除まで廃止し、「存続する」と明言していた特定扶養控除まで、高校生分について縮減してしまいました。来年は、さらに配偶者控除や成年の扶養控除まで廃止することをねらっています。これらの人的控除は「生活に不可欠な経費には課税しない」という「生計費非課税」の原則を具体化したものであり、憲法に定められた生存権に基礎を置くものです。これらの控除を、代替措置もないままに一方的に廃止する増税には、断じて反対します。

06年7月に発表された経済協力開発機構(OECD)の報告書は、日本の生産年齢人口の相対的貧困率が13.5%と、OECD平均の8.4%を大きく上回り、アメリカに次いで第2位であることを示しました。重大なことは、他のOECD諸国では税制と社会保障によって貧困率が大きく改善(18.2%→8.4%)されているのに、日本はわずかしか改善せず(16.5%→13.5%)、税制による貧困率の改善度合いが最も少ない国だと指摘されていることです。

 ほんらいなら所得格差是正のために役割を果たすべき税制が、日本ではほとんどその役割を果たしていないのです。それは、税を課すべきでないような貧困層にまで、所得税や住民税の負担が及んでいるからです。いま、独身サラリーマンの所得税の課税最低限は、わずか114万円です。これは、生活保護基準額にも満たない水準です。国際的に見ても低すぎる日本の最低賃金(時給713円)で年間2000時間働いた程度の年収しかなくても、所得税が課税されてしまうのです。これは、「生活に不可欠な経費には課税しない」という「生計費非課税」の原則を踏みにじるものです。

 日本の課税最低限は、国際的にも異常に低い水準です。7年前に、政府は「日本の課税最低限は高すぎる」と大宣伝して配偶者特別控除を廃止しましたが、この結果、サラリーマン4人世帯の課税最低限は、325万円に低下しました。さらに、民主党政権が年少扶養控除を廃止し、16〜18歳の特定扶養控除を縮減してしまったため、4人世帯でも子どもが16歳未満の場合の課税最低限は、220万円に下がってしまいます。今では欧米諸国の課税最低限は、日本よりはるかに高くなっています(4人世帯で、アメリカ320万円、イギリス334万円、ドイツ561万円、フランス433万円)。

 日本の課税最低限が低いのは、基礎控除が年間でわずか38万円に抑えられたままになっているためです。月額3万円で、どうして「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)ができるというのでしょうか。日本の基礎控除に相当する金額は、イギリスでは96万円、ドイツでは106万円、フランスでは78万円です。日本でも大幅な引き上げが必要です。

―──政府がねらっている所得税・住民税の配偶者控除と成年扶養控除の廃止に反対します。民主党は「所得控除は金持ち優遇」などといっていますが、これは誤りです。所得税・住民税の配偶者控除を廃止した場合、年収500万円なら7.1万円の増税で、対年収比で1.4%の増税ですが、年収1億円なら18.5万円の増税で、対年収比では0.185%にしかなりません。

―──民主党政権が決めた年少扶養控除の廃止の影響で、保育料などの負担が増大しないよう、対策を行わせます。

―──基礎控除を現行の2倍に引き上げ、ヨーロッパ諸国の水準に近づけます。これによって、サラリーマンの所得税の課税最低限は、単身者で156.6万円に上昇します。

―──120万円に引き下げられた高齢者の公的年金等控除の最低保障額を140万円に戻します。所得500万円以下の高齢者について、所得税50万円、住民税48万円の老年者控除を復活します。高齢者の住民税の非課税限度額を復活します。

―──介護保険の要介護認定を受けている人などが障害者控除の認定を受けやすくするように、制度運用の改善をはかります。

―──介護保険や医療保険など、家族の年金などから源泉徴収された社会保険料についても、それを実質的に負担している納税者の所得から社会保険料控除ができるように、改善をはかります。昨年10月から開始された住民税の年金からの特別徴収(天引き)については、各人の希望で普通徴収に変更できるようにします。

―──寡婦控除について、死別の場合だけでなく、離婚の場合やいわゆるシングル・マザーにも適用されるように、制度の改善をはかります。

―──「住宅は福祉」の観点に立って、家賃に関する税の控除制度の創設をはかります。

中小企業支援税制を強化します

この20年間に、中小企業は100万社以上も減少しました。政府の「構造改革」路線で内需が冷え込まされてきたあげくに、大企業の下請けいじめなどで、ただでさえ経営が大変なうえに、消費税の免税点引き下げなどの増税が加わって、「税金が払えず廃業に追い込まれる」という事態も生まれています。大企業ばかりを優遇する税制をあらため、中小企業や零細な事業者を支援する税制に転換します。

―──家族従業者に支払った賃金を「損金」扱いすることを認めていない所得税法56条を廃止して、家族の働き分を経費に認めます。

―──法人税にも累進制を導入し、中小企業の一定範囲内の所得については、現行より税率を引き下げます。

―──法人事業税の外形標準課税を資本金1億円以下の小規模企業にまで拡大することは、赤字企業などに過大な負担を負わせることになるので反対します。

―──事業用資産については、一定期間の事業の承継を条件に、相続税の猶予制度を設けます。

―──「納税者憲章」を制定し、消費税納税にあたっての仕入税額控除否認、機械類への償却資産課税の強化、倒産に追い込む差し押さえの乱発など国と地方の過酷な徴税・税務調査をあらためます。

証券税制をはじめ大資産家優遇の税制をあらためます

この間、大資産家向けの減税が繰り返されてきました。99年には、所得税・住民税の最高税率(課税所得3000万円超)が、あわせて65%から、50%に引き下げられました。2003年度には「証券優遇税制」が導入され、上場株式の配当所得や株式譲渡所得の税率は、わずか10%(所得税7%、住民税3%)に軽減されてしまいました。これは庶民の預貯金の利子への税率(20%)の半分です。額に汗して働く庶民には、定率減税廃止などで増税をおしつけながら、カネを右から左に動かしただけで得た所得には、10億円稼ごうと100億円稼ごうと、たった10%の課税で済んでしまいます。

ほんらい所得税は、所得が高い人ほど負担率が高くなる累進税制になっているはずです。ところが、国税庁の統計では、所得が1億円を超えると逆に負担率が下がってしまいます。お金持ちほど、株式の配当や譲渡による所得が多いからです。こんな不公平がまかり通っていたのでは「働くのが、ばからしい」という風潮を広げてしまいます。

いま、世界では、金持ち優遇の税制を見直す動きが進んでいます。イギリスでは、今年4月に所得税の最高税率が40%から50%に引き上げられ、株式配当などの最高税率も32.5%から42.5%に引き上げられました。アメリカでも、オバマ政権は所得税の最高税率を36%から39.6%に、株のもうけの所得税率を15%から20%に引き上げることを提案しています。アメリカでは、このほかに住民税も課税されます(ニューヨーク市の場合は、最高12.6%)。今春に成立した医療制度改革法でも、富裕層のメディケア税の税率を引き上げられることになりました。

株式配当や譲渡所得の税率は、ドイツでは25%で、付加税(所得税の5.5%)を含めるとて26.375%、フランスでは所得税が18%、社会保障関連の目的税12.1%をあわせて30.1%となっています。わずか10%しか課税しない日本の証券税制の金持ち優遇は際立っています。

こうした金持ち優遇税制を改めることが、経済危機の中で必要な財源を確保するためにも、格差と貧困の是正に向けて税制による所得再分配機能を再建・強化するためにも、不可欠です。

―──引き下げられた所得税・住民税の最高税率を引き上げ、累進税制を強化します。税率を98年の水準に戻せば、約7000億円の増収になります。現行では何千万円の給与があっても5%が控除される給与所得控除については、頭打ちを設け、高額所得者優遇にならないようにします。

―──世界に例を見ない大資産家優遇の配当や株式譲渡所得の税率軽減措置を、ただちに廃止し、税率を20%に引き上げます。将来的には、配当や譲渡所得などは、勤労所得とあわせた総合課税を原則とし、大資産家には応分の負担を求めますが、それまでの間も、欧米諸国の水準にあわせて30%以上に税率を引き上げます。その際、庶民の少額の投資には、大資産家とは区別して税負担の軽減をはかります。

―──2003年に70%から50%に引下げられた相続税・贈与税の最高税率を元に戻すなど、大資産家への課税を強化して社会的格差を是正します。

大企業優遇税制をあらためます

1986年度には43.3%だった法人税率が、42%(87年度)、40%(89年度)、37.5%(90年度)、34.5%(98年度)と、次々と引き下げられ、99年度以降は30%にまで下げられてしまいました。ところが、大企業・財界は、「日本の法人税率は外国に比べて高い」などといって、さらに引き下げを要求しています。民主党政権も法人税の減税を検討し、自民・公明や各「新党」も、法人税減税の大合唱です。

しかし、大企業はリーマン・ショックの起きた08年度こそ利益を減らしましたが、09年度には再び利益を増やし、内部留保も大幅に増やしています。上場企業の手元資金(現預金と短期保有有価証券の合計)も63兆円と史上最高を記録し、大企業は空前の「カネ余り」状態にあります。法人税の減税は、このカネ余りをいっそう促進するだけです。

 そもそも、「日本企業の負担は重い」というのは正確ではありません。法人税の実効税率は40%といわれていますが、研究開発減税や海外子会社からの配当益金不算入などによって、日本のトップクラスの大企業は、平均しても税引き前利益の30%前後しか税を負担していません。

また、企業の公的負担を考える場合には、税だけでなく社会保険料の事業主負担も考慮しなくてはなりません。その場合には、財務省の試算でも、日本の大企業の負担はフランスやドイツの7〜8割にすぎません。

 「負担を軽くしないと企業が海外へ逃げていく」という宣伝もされています。しかし、海外子会社からの配当を非課税にするなど、海外進出企業を優遇する税制を進めてきたのは政府自身です。企業が海外に行ってしまうことを心配するなら、こうした海外進出企業優遇税制こそ改めるべきです。

―──景気回復の状況をみながら段階的に、大企業の法人税率を97年度の水準(37.5%)に戻します。法人事業税についても税率を引き上げます。現在の経済状況では、最高でも2兆円程度の税収にしかなりませんが、景気が回復して07年度と同程度の利益があがる経済状況になれば、これだけで国・地方あわせて4兆円規模の新たな財源になります。

―──03年度に大幅拡充された研究開発減税は、研究開発費の10%程度を法人税から減額するというものです。当初は「法人税額の20%まで」という限度額がありましたが、08年度からは別枠で法人税額の10%までの減税が追加され、最高30%までの手厚い減税になっています。この制度を利用しているのは、ほとんどが大企業です。こうした大企業優遇にメスを入れます。

―──グループ内の黒字企業と赤字企業の利益を相殺させることができる連結納税制度によって、年に5000億円もの減税になっています(国税庁の08事務年度)。トヨタ、日産自動車、ホンダ、NTT、日立、ソニー、東芝など、名だたる大企業が連結納税制度の利益を受けています。こうした税金逃れをやめさせます。

―──海外を含めた企業再編が進められる中で、大企業の利益の中で、グループ企業や海外子会社からの配当が占める割合が増加しています。こうした配当には、「配当益金不算入制度」や「外国税額控除制度」などが適用されるため、税負担が大幅に軽減されています。そのうえ、昨年から「海外子会社からの配当非課税制度」が導入され、「海外で稼げば日本の税金はゼロ」という状況になっています。これでは、ますます海外進出の勢いが強まり、国内産業の空洞化を招きかねません。こうした優遇税制を縮減します。

―──09年度には、大銀行は軒並み業績を回復し、6グループ合計の連結経常利益1.8兆円という巨額の利益を上げていますが、銀行自身の法人税納税額はゼロとなっています。過去の「不良債権処理」で生じた「欠損金」が繰り越されているからです。大銀行の多くは、今後も2〜3年は「法人税ゼロ」が続く見込みです。この間に、欠損金の繰越期間を5年から7年に延長する減税の効果もあらわれています。こうした減税をあらため、大銀行にもうけに応じた税を求めます。

社会情勢の変化に対応した税制改革をすすめます

―──現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入をすすめます。

―──投機マネーの暴走を抑え、途上国支援の財源を確保するために、国際連帯税の導入を検討します。

―──集合住宅の共用部分の固定資産税を軽減します。

―──都市計画区域内農地への宅地並み課税の廃止をめざし、当面、生産緑地指定の要件を緩和し、追加指定を広げます。

―──芸術・文化団体への寄付税制を充実するとともに、民間劇場や映画館の固定資産税の減免などの支援をすすめます。

―──税源移譲によって所得税の最低税率が引下げられたため、NPOなどへの寄附金控除の効果が低所得者では削減されてしまいました。住民税でも寄附金控除を認めるなど、改善をはかります。

―──政府は、「プライバシー保護」を口実として、高額納税者や法人企業についての公示制度を廃止してしまいましたが、一定以上の金額については、復活します。とくに大企業については「プライバシー」は理由にならず、公開は当然です。
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参議院議員選挙ー消費税増税計画は四つの点で道理なしー

2010-06-29 16:53:54 | 国内政治
消費税増税計画
四つの点で道理なし
志位委員長が小池氏と訴え

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 参院選(24日公示、7月11日投票)の公示前最後の日曜日となった20日、日本共産党の志位和夫委員長は参院東京選挙区予定候補の小池晃政策委員長と、水道橋駅前で必勝への支援を呼びかけました。

 駅前は、東京ドームに野球観戦に向かう人々でにぎわい、立ち止まって演説に耳を傾ける人や「頑張れ!」と手を振る人も。街頭宣伝は党スポーツ後援会の主催で、新日本スポーツ連盟の永井博会長が応援の訴えを行いました。

 「待っていました」とのかけ声を受けてマイクを握った志位氏は、「いよいよ参院選です。消費税と沖縄・米軍普天間基地の問題という二つの大きな争点がはっきり浮かび上がってきました」と切り出しました。

 とくに菅直人首相が打ち出した消費税の10%への増税計画には道理がないと4点にわたって批判。(1)消費税が弱い人ほど重くのしかかり、大企業は一円も払わなくてすむという最悪の不公平税制であること(2)大企業の法人税減税とセットで打ち出されていること(3)「福祉のため」といいながら、政府側は後期高齢者医療制度の撤廃を先送りするなど福祉をよくする姿勢を何も示していないこと(4)「財政再建のためだ」という理屈も成り立たないこと―を解明しました。

 志位氏はこの4点目にかかわって、財政問題の解決のためにはいまの財政破たんの原因を見定める必要があると指摘。その原因として、(1)90年代に米国に630兆円の公共事業を約束し、無駄な事業を広げたこと(2)軍事費を5兆円にまで増加させ、米軍向け予算も史上最大にしてきたこと(3)大企業や大金持ち減税で歳入に“大穴”を開けたこと―という三つの問題をあげました。

 志位氏は「原因がはっきりしている以上、財政を立て直し、暮らしの財源をつくる道もはっきりしています」と指摘。民主党政権のもとでもいまだに続いている1メートル1億円の東京外環道など無駄な事業を中止し、軍事費を減らし、大企業・大資産家に世間なみの負担を求めればよいと訴えると、拍手とともに「そうだ」の声があがりました。

 志位氏が最後に「消費税を10%に増税する、沖縄に海兵隊の基地を押し付ける―民主・自民のこの二つの大連立に正面から立ち向かい、増税・新基地建設反対と堂々と主張できるのは日本共産党だけです。この党を伸ばして暮らしと平和を守る希望ある道を開こう」と訴えると、大きな拍手があがりました。

 小池氏は「日本のスポーツ予算は世界と比べてもあまりにも少なすぎる」と述べ、「心からのびのびとスポーツを楽しめる国づくりをすすめていこう」と訴えました。

 近所のビルから出てきて演説を聞いた都内の女性(59)は「消費税を上げられたら生きていけない」。プロ野球観戦に向かう途中の都内の会社員男性(48)も「これ以上の増税はサラリーマンなら誰もが困る。安月給の4人家族だが、生活やっていけないよ。増税する民主、自民には投票しない」と話しました。

(出所:2010年6月21日(月)「しんぶん赤旗」)

NHK日曜討論
市田書記局長の発言

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 日本共産党の市田忠義書記局長が、20日放送のNHK「日曜討論」の各党書記局長・幹事長討論でおこなった発言を紹介します。

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消費税増税

大企業減税の穴埋めに――財政再建にも役立たない、絶対に反対

 番組では冒頭、菅直人首相が消費税引き上げに関して「自民党が提案した10%を一つの参考にする」とした発言について議論が集中。民主党の枝野幸男幹事長は「消費税は基本的に社会保障にあてるが、そうすると10兆円ぐらい足りない。そこを考えると10%前後という自民党さんの提案というのは、議論の土俵としては一致できるのかなと思っている」と発言。市田氏は次のように述べました。

 市田 いま国民の暮らしが大変なときに、(消費税率が10%になると)4人家族の平均所帯で年間約16万円の負担増になる。合計で約34万円の負担で、1カ月分の給料が吹っ飛んでしまう。ワーキングプア(働く貧困層)と呼ばれる人、年収200万円以下の人が1千万人を超えていて、失業者も多い。そういう人たちに逆進性の一番強い、収入の少ない人ほど負担が重くなる消費税をかぶせようとしている。

 しかも法人税減税とセットだという。たとえば直嶋正行経済産業相は、先行的にまず法人税減税をやると、15%だけど来年から5%実施と言われるわけです。

 ギリシャの問題を引き合いに出して財政再建うんぬんと言われますが、もし法人税を15%下げればこれだけで9兆円の税収減です。消費税を5%上げて10%にしてもほとんどが法人税減税の穴埋め、いわば大企業減税の穴埋めのために使う(ことになる)。こういうやり方は財政再建にとっても社会保障にとっても逆効果だ。この間、(消費税が)導入されてから累計で224兆円を消費税に取られて、一方で法人3税の減税が208兆円。大企業減税の穴埋めに消費税が使われたことは、歴史が証明しています。

 これだけ暮らしが大変な時に、何かあれば消費税というやり方に対しては、われわれは絶対に反対だということを選挙でも訴えていきたいと思っています。

自・民・公・「みんな」が増税の大合唱――暮らしが大変な国民に負担をかぶせるのか

 これに対し各党は、「社会保障のための消費税を含む税制の抜本改革は必要だ」(公明党・井上義久幹事長)、「将来的な増税はわれわれも不可避だと思っている。国民もそう思っている」(みんなの党・江田憲司幹事長)と、消費税増税の方向では一致。一方で枝野幹事長は、「10%」という数字は「一つの参考だ」と強調、民主党の公約だという明言は避けました。市田氏は次のように指摘しました。

 市田 自民、民主、公明、みんなの各党とも、時期は別として、消費税は上げるべきだという点では「大連合」ができていると私はみています。

 それから枝野さんが先ほど、(10%について)与野党で協議しようと思えば民主党として参考になる考えを示す必要があると言われたけれど、今朝の別の番組でも公式の記者会見でも、玄葉光一郎政調会長が民主党としての公約だとおっしゃった。そういうことはごまかしてはだめだと思う。

 たとえば普天間基地の問題でも、鳩山さんが「国外、最低でも県外」と言われた。マニフェストには在日米軍の見直しとだけ書いてあるので、あれはマニフェスト違反ではないと言いますが、しかし、党首が選挙中に言ったことは、誰が見ても公約なんですよ(枝野「それは否定しません」)。

 言葉では社会保障のためだと言われるけれど、例えば、自分で約束された「後期高齢者医療制度を速やかに廃止する」というのは、結局4年後ですよね。野党の時代には「医療費の窓口負担が非常に高い、受診抑制につながる」と言われたが、これを軽減するということも全然具体化していない。

 大企業は今、内部留保を220兆円以上ためこんでいる。マスコミでも60兆もカネ余り現象が起きていると報道されているのに、大企業に応分の課税をしないで減税して、暮らしが大変な国民に増税するというのは、これは誰が考えても「生活第一」という考え方と根本から矛盾するんじゃないですか。

国民の懐を温めてこそ、暮らしも経済もよくなる

 討論では、昨年の総選挙での民主党マニフェストが議論の対象となり、枝野氏が「税収が9兆円落ち込んでいる。(そこは)見通しが間違っていた」と自公政権のせいだと主張。自民党の大島理森幹事長は「税収が減ったから(増税する)といえば、消費税を赤字国債の補てんにしていく議論になる」などと主張しました。市田氏は次のようにのべました。

 市田 要するに無駄を削って予算の組み替えをやれば20兆円以上のお金が出てくる、だからやれますというのが公約だったわけですね。ところがそれは破たんして、「4年間は消費税を増税しない」と言っていたのが、2012年から与野党で合意できればもう消費税の増税もやるとおっしゃっているのですから、これはやっぱり公約違反だと思います。

 無駄を削るというけれど、大事な無駄を削れるところがほかにいっぱいあるんですよ。1メートル1億円もするような外郭環状道路とか、あるいは5兆円にのぼる軍事費の無駄を削るとか。民主党政権になったら「思いやり予算」と米軍再編経費が史上最高になった。自民党政権のときよりも多い3370億円ですよ。こういうところは事業仕分けの対象になっていない。

 それから大企業・大資産家優遇税制。たとえば株の売買でもうけたのにかかる税金はいま1割でしょう。本則では2割だ。これを本則にもどすだけでも財源がいっぱいうまれるわけです。(しかし)そういうことをやらない。やっぱり私は、無駄を削るというのなら軍事費をきちんと削る、それから税金は負担能力に応じて払ってもらうというのが当然だと思う。それからこの10年間、GDP(国内総生産)は先進資本主義国が全部あがっているのに日本だけ横ばいでしょう。雇用者報酬が落ち込んでいる唯一の国ですよ、先進資本主義国のなかで。経済の成長を考えたら、国民の懐がいま冷え込んでいるのだから、懐を温めてものの売り買いを活発にすることによって暮らしも経済もよくすると、そうすれば税収も増えていくわけですから。雇用や中小企業、社会保障、農業を支援してこそ、暮らしも経済もよくなる。そういう方向に転換すべきで、消費税増税、法人税減税なんてのはやっぱり論外だと思いますね。

菅内閣について

「普天間」・社会保障―― 鳩山政権の数々の公約違反に、全く反省がない

 番組では、最後に「菅政権のすべり出しをどうみるか」について議論になり、首相が交代したのに予算委員会も開かずに国会を閉じたことについて、枝野氏が「残念ながら政権交代以降の国会論戦のあり方についてはさまざまなところで問題があった。特に与党のところで問題があった」などと弁明。市田氏は次のようにのべました。

 市田 総理が代わって、予算委員会をやらないで国政選挙を迎えたという例は、私どもの調査によれば、この二十数年来、一度もなかったことです。やはり鳩山さんが国民の批判の前に政権を投げ出さざるを得なかったと。それは普天間の問題あり、「政治とカネ」の問題あり、くらしの問題で公約を裏切った。だとすれば、どこに問題があったかということを国会の中で明らかにして、新しい総理はその反省の上に立ってどこをどう直すかということを国民の前に示すべきだったと思う。

 同時に、こうした討論会は大事です。だから党首の討論会を、いろんなメディアで複数回、NHKも民間放送も含めてやるということをぜひお約束していただきたい。

米国・財界にモノが言えない 自民・公明の政治と共通の弱点がある

 また、司会の影山日出夫氏(NHK解説委員)が菅内閣支持率について、「脱小沢効果か」と質問したのに対し、市田氏は次のように答えました。

 市田 世論調査をみても、「脱小沢」効果があらわれているのは、そうだと思うんです。ただ政策を支持できるかというと1割ぐらいという答えも出ています。小沢さんと鳩山さんを陰に隠しただけで、菅さんが、その反省の上にたってどういう政治をやろうとしているのか。いの一番にオバマさんとの電話会談で「普天間の辺野古移設は約束守ります」と話した。これまでと全然変わっていない。

 それから「政治とカネ」で、小沢さんと鳩山さんをカーテンの陰に隠したけれども、国会の場ではただの一度も事実関係が明らかにされていないでしょう。くらしの問題でも、後期高齢者医療や雇用問題をどうするのか、あの穴だらけの派遣法改定案でいいのかと(いう問題がある)。こうした根底に、アメリカや財界に堂々とモノが言えない政治が横たわっている。これまでの自公政治と共通の面が民主党政権にあった。それがいまの事態を迎えているわけで、一時的な支持が高いのを恐れない。アメリカや財界に堂々とモノをいう政治の実現のために力を尽くしていきます。

(出所:日本共産党HP 2010年6月21日(月)「しんぶん赤旗」)

大企業20社の利益剰余金 1.5兆円増
経済活性化へ内部留保の還元を

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 企業の内部留保の一部である利益剰余金の保有額上位20社(銀行を除く)の総計が2010年3月末時点で53兆7823億円に達し、09年3月末の52兆2527億円から1兆5296億円積み増していることが本紙の集計で分かりました。

 各企業の利益剰余金を増加幅の多い順で見ると、NTTが3401億円増の5兆4067億円、三菱商事が2189億円増の2兆7485億円、ホンダが2067億円増の5兆3499億円など。利益剰余金が最も多かったのは今回もトヨタ自動車で、369億円増の11兆5686億円でした。

 このほかキヤノンは349億円増の2兆9150億円、日産自動車は408億円増の2兆4565億円でした。

 上位20社中、利益剰余金を増やした企業は16社でした。20社の積み増し額は年収500万円の労働者の賃金約30万人分にあたり、これを取り崩すだけで多くの雇用を生むことができます。

 大企業の内部留保は正規労働者の非正規への置き換え、リストラ、賃下げ、下請け単価たたきによって膨れ上がりました。その多くは預金、株式などです。

 トヨタ自動車の場合、グループ企業を含めない単体では総資産10兆3500億円のうち工場、機械などの有形固定資産は13%しかなく、資産の大部分は金融資産。ため込んだ利益の一部を非正規従業員の正社員化や賃上げで吐き出すことは十分可能です。

 日本の経済を立て直すには内部留保の還元が欠かせません。

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 利益剰余金 企業の年々の利益を積み上げたものから、株主配当などで社外に出ていく部分を除いたものが内部留保です。このうち、営業活動を通じて蓄積されたものが利益剰余金。内部留保の大きな部分を占めています。

(出所:日本共産党HP 2010年6月25日(金)「しんぶん赤旗」)

「日本の法人税は高すぎる」というが
三大銀行 10年以上 法人税ゼロ
この不公平税制こそただせ
志位委員長が指摘

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 日本共産党の志位和夫委員長は28日、千葉県内での街頭演説のなかで、「日本の法人税は高すぎる」という財界の言い分が、まったく事実と違うことを指摘しました。そのなかで「三大銀行(メガバンク)グループ傘下の6銀行は、10年以上、法人税をまったく払っていない」という事実を告発しました。

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 企業は法人税納付にさいし、過去の損失を7年間繰り越して黒字と相殺できる仕組みとされています(財界の強い要求で2004年度の税制「改正」で繰り越し期間が5年から7年に延長)。大手銀行は、不良債権処理で発生した巨額の損失を繰り越すことで、課税所得が相殺され、法人税納付ゼロがつづいているのです。

 「法人税ゼロ」の事実を告発した志位氏は、こう訴えました。

 「大銀行は、『不良債権処理』の名で国民の税金を何十兆円も入れてもらいながら、この間、中小企業へのひどい貸し渋り、貸しはがしをつづけてきました。その大銀行が、税逃れのしくみによって、法人税ゼロとなっている。大銀行は、消費税を1円も負担していないだけでなく、法人税も1円も払っていない。この不公平税制こそただすべきではありませんか」

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 三大銀行グループ 三菱UFJ、みずほ、三井住友の三大銀行のグループ。10年以上、法人税を払っていません。

 2010年3月期決算では、三菱UFJが3887億円、三井住友が2716億円、みずほが2394億円の当期純利益を計上、黒字となりましたが法人税はゼロです。一方で、中小企業向け融資はこの1年間で、合計3兆8500億円も減らしました。

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製造業大企業は……

 製造業大企業をみると、現行の法人実効税率は約40%ですが、実際に納めている法人税の負担率は、ソニー12.9%、パナソニック17.6%などです。研究開発減税や海外で払った税金を差し引ける税制など、さまざまな大企業優遇税制があるからです。

(出所:日本共産党HP 2010年6月29日(火)「しんぶん赤旗」)

大企業の内部留保 大資産家優遇税制
政府の姿勢 変化
共産党が論戦で動かす
首相「具体的検討したい」

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 2日に衆院通過した来年度予算案。日本共産党は組み替え要求も提出して反対する一方、この間の国会論戦では、日本共産党のかねてからの主張が、政府の姿勢に大きな変化をつくりだしてきました。「大企業・大資産家に応分の負担を」―。暮らしの危機を打開するためになくてはならない課題をめぐる新しい動きです。(清水 渡)

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 日本共産党の志位和夫委員長は1月18日の党国会議員団総会で、「大企業に国民生活と日本経済に対する社会的責任を果たさせる」ことを提起。政府予算案について「大企業と大資産家に対する優遇税制は温存する」ものだと批判しました。

 衆院本会議の代表質問(2月2日)で、志位氏は「『選ばれた企業のみに富が集中』するシステムをあらため、大企業の巨額の内部留保と利益を、雇用と中小企業に還元させる政策への転換が必要」「額に汗して働く国民の税金よりも、ぬれ手で粟(あわ)の株取引で大もうけをしている大資産家の税金が低いのはあまりに異常」だと迫りました。

 一方、鳩山由紀夫首相は、施政方針演説(1月29日)で「命を守りたい」との「理念」を連呼しましたが、財源について、大企業・大資産家に負担を求める立場は一切、示しませんでした。代表質問での志位氏の提起に対しても「内部留保の活用というものは本来、企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すべきもの」と冷たく背を向けるだけでした。

 しかし日本共産党との論戦の中で、鳩山内閣の姿勢に変化が見られました。内部留保の問題では、8日の衆院予算委員会での議論が出発点です。

 志位氏は大企業の内部留保が10年間で142兆円から229兆円へと急膨張する一方、労働者の雇用者報酬は279兆円から262兆円に落ち込んだことをグラフで示して、システムの転換を強く求めました。鳩山首相は「グラフを拝見すると、内部留保が大変にふえているという実態はあると思う。それをどうするか、一つの(政治的な)判断はあり得るのではないか」と答弁したのです。

 さらに鳩山首相は志位氏との党首会談(2月17日)では、「大企業の内部留保を還元させる具体的な方法を検討してみたい」とまで踏み込みました。

さらなる運動で転換を

 財源論では大資産家優遇税制の問題で変化が見られました。

 2月12日の衆院予算委員会では日本共産党の佐々木憲昭議員が証券優遇税制の問題を取り上げました。同税制は株式譲渡益や配当にたいする課税を、20%の本則から10%に軽減しています。自公政権の時代に始まったこの制度について、鳩山首相は2月2日の衆院本会議では、「大変経済が今厳しいという現状があり、10%に軽減をしている」と述べ、継続を当然視していました。

 しかし佐々木氏が、鳩山首相自身がブリヂストン株だけでも7年間で約5200万円もの減税を受けているとの試算を示し、証券優遇税制の是正を求めると、鳩山首相は「優遇税制が適当か新政権でもしっかりと議論はされるべきだ」とのべざるをえなくなりました。

 鳩山首相はその後、志位氏との党首会談で、証券優遇税制の是正、所得税最高税率の引き上げについて、政府税調での「検討課題」だと明言しました。

 所得税の最高税率については2月19日の衆院財務金融委員会で佐々木氏の追及に菅直人財務相が「日本では最高税率を下げてきたが、必ずしもそういう考え方だけでは日本経済全体が持ち上がらなかった」と引き上げ検討を表明。証券優遇税制についても、2月24日の衆院財務金融委員会で峰崎直樹財務副大臣が「できるだけ早く(10%から20%に)引き上げたいという問題意識は共有している」と表明しています。

 消費税増税を許さず、生まれてきた変化を現実の転換に結びつけるため、さらなる論戦と国民の運動が重要になっています。

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「応分の負担を」の声次々
衆院予算委公聴会

 変化の動きは政府内にとどまりません。2月24日におこなわれた衆院予算委員会公聴会での公述人の意見は―。

 「税、社会保障を通じた公正な所得再分配の強化、労働分配率の向上、教育の機会均等の保障、さらに、公正で透明な企業間取引などが不可欠」(逢見直人連合副事務局長)

 「(大企業がもつ)過剰資金に対して適切な課税を取る」「財政(学会の)関係者からすると、(所得税の)累進強化というのは…ある意味で常識的なこと」(二宮厚美神戸大学大学院教授)

 「税制改革に際しては、例えば所得税の累進率や控除額の見直し、相続税の強化…検討の余地は多い」(高橋伸彰立命館大学教授)

 「(法人税を)40%に引き上げる」「所得税の最高税率を40(%)だったのを50(%)に引き上げる」(菊池英博日本金融財政研究所所長)

 ニュアンスや具体策の違いはあれ、ほとんどの公述人が「能力に応じた負担」に言及しました。

(出所:日本共産党HP )
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