優遇税制 巨大な内部留保
それでも法人税減税か
大畠経産相「5%下げ」論を考える
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大畠章宏経済産業相は19日のNHKの番組で、「世界の法人税(率)の平均は30%から25%だ。日本は40%程度」と高いから「雇用の維持や中小企業、輸出産業を日本国内にとどめるために5%程度の法人税(率)引き下げを決断する時機に入っている」と主張しました。
財界の意向に
これに先立ち、日本経団連の米倉弘昌会長は17日、法人税率引き下げをめざす菅改造内閣の「新成長戦略」について「一刻の猶予も許されない」と強調しました。大畠経産相の発言は、日本経団連の意向をくんだ素早い対応といえます。
しかし、日本の法人税率は、本当に高いのでしょうか。
日本企業の実際の税負担率は、研究開発減税など数々の優遇策を受け、法律で定められた税率(国と地方の合計)約40%をすでに大幅に下回っています。
輸出中心の大企業(資本金10億円以上)で見ると、実際の税負担率はソニー12・9%、パナソニック17・6%、本田技研工業24・5%、トヨタ自動車30・1%(03~09年度決算データから試算)。経常利益上位100社の平均でも33・7%です。
なぜ海外進出
そもそも、日本企業は、日本の法人税率が高いから海外進出したわけではなく、低賃金の労働力や現地の市場を追い求めて海外へ出て行きました。
自公政権から「政権交代」した民主党政権は、海外に進出した日本企業に対して、外国で課税された法人税分を日本国内の法人税から差し引く「外国税額控除」などの恩恵を与え続けています。そればかりか、自公政権が09年4月から導入した「海外子会社配当益金不参入制度」も引き継ぎ、海外子会社が日本の親会社に配当する利益の95%を非課税にする制度も開始しています。日本企業を国内にとどめるどころか、海外進出をあおっているのが実態です。
大企業(金融・保険業と郵政3社を除く)の内部留保が09年度、前年度より約11兆円も増え、総額243兆9000億円となるなか、法人税減税は必要でしょうか。
“一握りの大企業が潤えば、それが滴り落ちて、中小企業も労働者も豊かになる”という民主党の「新成長戦略」は、自民党政権が行ってきた破たん済みの経済政策そのものです。暮らし最優先の経済政策への転換こそが求められています。(松田繁郎)
(出所:日本共産党HP 2010年9月21日(火)「しんぶん赤旗」)
主張
法人税減税
財界奉仕の議論に根拠はない
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発足したばかりの菅改造内閣の閣僚から法人税率引き下げを求める発言が相次いでいます。
大畠章宏経済産業相は19日のNHK番組で「雇用の維持や中小企業、輸出産業を日本国内にとどめるため(法人税率の)5%程度の引き下げを決断する時期に入っている」とのべました。野田佳彦財務相も記者会見で「法人実効税率の見直し」を強調しています。
実際の負担率は低い
法人税を減税すれば雇用や中小企業にも恩恵があり、輸出産業を国内にとどめることができるという議論には根拠がありません。
経産省や財界は、日本の「法人実効税率」40%は飛びぬけて高いと言っています。しかし、40%はアメリカと同等の水準で、カリフォルニア州などでは日本より高い税率です。財界が注目する世界企業番付では、そのアメリカの企業が上位2000社のうち500社以上を占めています。
「法人実効税率」は国の法人税率30%と地方の法人所得課税を併せた表面的な税率を示しているにすぎません。大企業は研究開発減税や外国税額控除をはじめとする数々の優遇措置を受け、実質的な税負担率は平均で30%程度にとどまっています。
企業の公的負担は税金だけでなく社会保障の負担もあります。それを合わせて比べた財務省の調査によると、日本の大企業はドイツやフランスの大企業より2、3割低い負担にとどまっています。
法人税を減税すれば雇用や中小企業にも恩恵があるかのように言うのは、“大企業優遇”の批判をかわす虚構でしかありません。
大企業は5年連続で過去最高益を更新した2000年代にも、正社員を減らして非正社員に置き換え、正社員の賃金も抑制するリストラを進めました。その結果、過去10年のうち8年間は所定内給与が前年よりも減っています。大企業は空前の大もうけをあげながら雇用の破壊を続ける一方で、株主配当や役員報酬を増やすとともに巨額のため込み金を積み上げてきました。減税で大企業の利益を増やしてやっても、雇用に回る見込みはまったくありません。
中小企業は内需低迷や大企業の下請け単価の買いたたきで7割が赤字決算を余儀なくされ、法人税を払えない状態です。しかも、中小企業は一定の所得までは軽減税率(18%)が適用されるため、法人税の基本税率(30%)引き下げで恩恵を受けるのは専ら大企業になります。
大企業本位を改めて
経産省などの調査によると、企業が投資先を決める最大の要因は現地の市場としての魅力にほかなりません。だから、東京都の調査でも、8割の企業が法人税を10%減税しても日本に「回帰しない」と答えています。問題は法人税率ではなく、長年にわたって家計と内需を冷え込ませてきた日本経済のあり方そのものにあります。
雇用と中小企業にしわ寄せし、ため込み金と利益を拡大してきた大企業の身勝手な行動が暮らしと経済を壊し、日本を「成長の止まった国」にしています。
再び財界・大企業の身勝手な要求に従って法人税を減税し、その財源として消費税を増税する道は日本経済の未来を閉ざす道です。
大企業本位から暮らしと中小企業優先へ、日本経済のかじを大きく切るときです。
(出所:日本共産党HP 2010年9月26日(日)「しんぶん赤旗」)
主張
経団連税制提言
身勝手が内需にとどめを刺す
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日本経団連が14日、来年度「税制改正」の提言を発表しました。
国民の不安と閉塞(へいそく)感を払しょくし、経済成長と豊かな国民生活のために税制と財政、社会保障を一体で「改革」していくことが急務だ―。提言は、このようにのべて消費税率の一刻も早い引き上げと法人税率の引き下げを改めて要求しています。
「究極のバラマキ」
経団連の提言は、消費税率を速やかに「少なくとも10%」へ、さらに「2020年代半ばまでに…10%台後半、ないしはそれ以上」へ引き上げるよう求めました。法人税率は「先行して少なくとも5%」の引き下げ、早期に2けたの引き下げを求めています。
暮らしと内需が冷え込んでいるときに、庶民に重くのしかかる消費税を大幅に増税して、大企業に減税を求めるという身勝手極まりない要求です。
円高が進むと暗雲が立ち込めるように不安が広がる原因は、内需が弱くて外国の需要にしか希望を持てないような日本経済のあり方を抜きには考えられません。家計と中小企業に重い負担を強いる消費税増税は、低迷する内需にとどめを刺す無謀な財源策です。
京都大学の中野剛志・助教は次のように指摘しています。「需要のない中での法人税減税は、この法人部門の貯蓄を増やすだけで国内投資を促進しない。…法人税減税こそ究極のバラマキだ」(『日経ヴェリタス』6月27日号)
大企業はこの1年でため込み金を10兆円以上増やして250兆円規模に膨らませています。大企業は配当や役員報酬を増やす一方で賃金も研究開発投資も減らして利益をため込んでいます。法人税を減税しても株主や役員を潤わせ、「カネ余り」を広げるだけです。
1990年代以降の大型プロジェクトと大企業・大資産家減税の大盤振る舞いで一気に膨らんだ財政赤字も、国民の不安と閉塞感の大きな原因です。「巨額の赤字は将来の増税となってはねかえってくるのではないか」「財政赤字があるから暮らしの予算を増やせないのではないか」という不安と閉塞感です。
“だからいま、消費税を増税すべきだ”というのは何の解答にもなりません。国民の「将来の増税」への不安は、数ある税金の中でも特に国民の暮らしにかかる税金の増税に対する不安です。消費税の増税は、この国民の「将来の増税」への不安を現時点で実現してしまう最悪のやり方です。
菅直人首相も「社会保障と財源は消費税を含めた一体的な議論が必要だ」と繰り返しています。暮らしの予算確保のためには消費税増税しかないかのような財界流の議論が横行し、国民の閉塞感をますます強めています。何より、消費税増税で生み出す財源のほとんどは大企業向けの法人税減税に消えていく計算になります。
閉塞状況打開の道は
必要なのは雇用や中小企業にしわ寄せして利益を増やす大企業の行動を民主的なルールをつくって改めさせ、巨額の利益とため込み金を社会に還流させる改革です。それを通じて内需主導の成長を実現して税収を増やすことです。
同時に5兆円もの軍事費にメスを入れ、行き過ぎた大企業・大資産家減税を是正する以外に閉塞状況を打開する道はありません。
(出所:日本共産党HP 2010年9月16日(木)「しんぶん赤旗」)
それでも法人税減税か
大畠経産相「5%下げ」論を考える
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大畠章宏経済産業相は19日のNHKの番組で、「世界の法人税(率)の平均は30%から25%だ。日本は40%程度」と高いから「雇用の維持や中小企業、輸出産業を日本国内にとどめるために5%程度の法人税(率)引き下げを決断する時機に入っている」と主張しました。
財界の意向に
これに先立ち、日本経団連の米倉弘昌会長は17日、法人税率引き下げをめざす菅改造内閣の「新成長戦略」について「一刻の猶予も許されない」と強調しました。大畠経産相の発言は、日本経団連の意向をくんだ素早い対応といえます。
しかし、日本の法人税率は、本当に高いのでしょうか。
日本企業の実際の税負担率は、研究開発減税など数々の優遇策を受け、法律で定められた税率(国と地方の合計)約40%をすでに大幅に下回っています。
輸出中心の大企業(資本金10億円以上)で見ると、実際の税負担率はソニー12・9%、パナソニック17・6%、本田技研工業24・5%、トヨタ自動車30・1%(03~09年度決算データから試算)。経常利益上位100社の平均でも33・7%です。
なぜ海外進出
そもそも、日本企業は、日本の法人税率が高いから海外進出したわけではなく、低賃金の労働力や現地の市場を追い求めて海外へ出て行きました。
自公政権から「政権交代」した民主党政権は、海外に進出した日本企業に対して、外国で課税された法人税分を日本国内の法人税から差し引く「外国税額控除」などの恩恵を与え続けています。そればかりか、自公政権が09年4月から導入した「海外子会社配当益金不参入制度」も引き継ぎ、海外子会社が日本の親会社に配当する利益の95%を非課税にする制度も開始しています。日本企業を国内にとどめるどころか、海外進出をあおっているのが実態です。
大企業(金融・保険業と郵政3社を除く)の内部留保が09年度、前年度より約11兆円も増え、総額243兆9000億円となるなか、法人税減税は必要でしょうか。
“一握りの大企業が潤えば、それが滴り落ちて、中小企業も労働者も豊かになる”という民主党の「新成長戦略」は、自民党政権が行ってきた破たん済みの経済政策そのものです。暮らし最優先の経済政策への転換こそが求められています。(松田繁郎)
(出所:日本共産党HP 2010年9月21日(火)「しんぶん赤旗」)
主張
法人税減税
財界奉仕の議論に根拠はない
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発足したばかりの菅改造内閣の閣僚から法人税率引き下げを求める発言が相次いでいます。
大畠章宏経済産業相は19日のNHK番組で「雇用の維持や中小企業、輸出産業を日本国内にとどめるため(法人税率の)5%程度の引き下げを決断する時期に入っている」とのべました。野田佳彦財務相も記者会見で「法人実効税率の見直し」を強調しています。
実際の負担率は低い
法人税を減税すれば雇用や中小企業にも恩恵があり、輸出産業を国内にとどめることができるという議論には根拠がありません。
経産省や財界は、日本の「法人実効税率」40%は飛びぬけて高いと言っています。しかし、40%はアメリカと同等の水準で、カリフォルニア州などでは日本より高い税率です。財界が注目する世界企業番付では、そのアメリカの企業が上位2000社のうち500社以上を占めています。
「法人実効税率」は国の法人税率30%と地方の法人所得課税を併せた表面的な税率を示しているにすぎません。大企業は研究開発減税や外国税額控除をはじめとする数々の優遇措置を受け、実質的な税負担率は平均で30%程度にとどまっています。
企業の公的負担は税金だけでなく社会保障の負担もあります。それを合わせて比べた財務省の調査によると、日本の大企業はドイツやフランスの大企業より2、3割低い負担にとどまっています。
法人税を減税すれば雇用や中小企業にも恩恵があるかのように言うのは、“大企業優遇”の批判をかわす虚構でしかありません。
大企業は5年連続で過去最高益を更新した2000年代にも、正社員を減らして非正社員に置き換え、正社員の賃金も抑制するリストラを進めました。その結果、過去10年のうち8年間は所定内給与が前年よりも減っています。大企業は空前の大もうけをあげながら雇用の破壊を続ける一方で、株主配当や役員報酬を増やすとともに巨額のため込み金を積み上げてきました。減税で大企業の利益を増やしてやっても、雇用に回る見込みはまったくありません。
中小企業は内需低迷や大企業の下請け単価の買いたたきで7割が赤字決算を余儀なくされ、法人税を払えない状態です。しかも、中小企業は一定の所得までは軽減税率(18%)が適用されるため、法人税の基本税率(30%)引き下げで恩恵を受けるのは専ら大企業になります。
大企業本位を改めて
経産省などの調査によると、企業が投資先を決める最大の要因は現地の市場としての魅力にほかなりません。だから、東京都の調査でも、8割の企業が法人税を10%減税しても日本に「回帰しない」と答えています。問題は法人税率ではなく、長年にわたって家計と内需を冷え込ませてきた日本経済のあり方そのものにあります。
雇用と中小企業にしわ寄せし、ため込み金と利益を拡大してきた大企業の身勝手な行動が暮らしと経済を壊し、日本を「成長の止まった国」にしています。
再び財界・大企業の身勝手な要求に従って法人税を減税し、その財源として消費税を増税する道は日本経済の未来を閉ざす道です。
大企業本位から暮らしと中小企業優先へ、日本経済のかじを大きく切るときです。
(出所:日本共産党HP 2010年9月26日(日)「しんぶん赤旗」)
主張
経団連税制提言
身勝手が内需にとどめを刺す
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日本経団連が14日、来年度「税制改正」の提言を発表しました。
国民の不安と閉塞(へいそく)感を払しょくし、経済成長と豊かな国民生活のために税制と財政、社会保障を一体で「改革」していくことが急務だ―。提言は、このようにのべて消費税率の一刻も早い引き上げと法人税率の引き下げを改めて要求しています。
「究極のバラマキ」
経団連の提言は、消費税率を速やかに「少なくとも10%」へ、さらに「2020年代半ばまでに…10%台後半、ないしはそれ以上」へ引き上げるよう求めました。法人税率は「先行して少なくとも5%」の引き下げ、早期に2けたの引き下げを求めています。
暮らしと内需が冷え込んでいるときに、庶民に重くのしかかる消費税を大幅に増税して、大企業に減税を求めるという身勝手極まりない要求です。
円高が進むと暗雲が立ち込めるように不安が広がる原因は、内需が弱くて外国の需要にしか希望を持てないような日本経済のあり方を抜きには考えられません。家計と中小企業に重い負担を強いる消費税増税は、低迷する内需にとどめを刺す無謀な財源策です。
京都大学の中野剛志・助教は次のように指摘しています。「需要のない中での法人税減税は、この法人部門の貯蓄を増やすだけで国内投資を促進しない。…法人税減税こそ究極のバラマキだ」(『日経ヴェリタス』6月27日号)
大企業はこの1年でため込み金を10兆円以上増やして250兆円規模に膨らませています。大企業は配当や役員報酬を増やす一方で賃金も研究開発投資も減らして利益をため込んでいます。法人税を減税しても株主や役員を潤わせ、「カネ余り」を広げるだけです。
1990年代以降の大型プロジェクトと大企業・大資産家減税の大盤振る舞いで一気に膨らんだ財政赤字も、国民の不安と閉塞感の大きな原因です。「巨額の赤字は将来の増税となってはねかえってくるのではないか」「財政赤字があるから暮らしの予算を増やせないのではないか」という不安と閉塞感です。
“だからいま、消費税を増税すべきだ”というのは何の解答にもなりません。国民の「将来の増税」への不安は、数ある税金の中でも特に国民の暮らしにかかる税金の増税に対する不安です。消費税の増税は、この国民の「将来の増税」への不安を現時点で実現してしまう最悪のやり方です。
菅直人首相も「社会保障と財源は消費税を含めた一体的な議論が必要だ」と繰り返しています。暮らしの予算確保のためには消費税増税しかないかのような財界流の議論が横行し、国民の閉塞感をますます強めています。何より、消費税増税で生み出す財源のほとんどは大企業向けの法人税減税に消えていく計算になります。
閉塞状況打開の道は
必要なのは雇用や中小企業にしわ寄せして利益を増やす大企業の行動を民主的なルールをつくって改めさせ、巨額の利益とため込み金を社会に還流させる改革です。それを通じて内需主導の成長を実現して税収を増やすことです。
同時に5兆円もの軍事費にメスを入れ、行き過ぎた大企業・大資産家減税を是正する以外に閉塞状況を打開する道はありません。
(出所:日本共産党HP 2010年9月16日(木)「しんぶん赤旗」)