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経済時評-21世紀の資本主義/新自由主義、ケインズ、マルクス-

2009-01-05 03:18:45 | 国際経済
経済時評
21世紀の資本主義
新自由主義、ケインズ、マルクス

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 米国発の金融危機から世界的大不況の足音が迫ってくるにつれて、「新自由主義の終焉(しゅうえん)」を多くの人びとが感じはじめています。

 そこで、最近、次のようなテーマが、よく話題にのぼるようになってきました。

 「新自由主義の時代が終わったら、またケインズの時代が復活するのだろうか」

 私は、とりあえず次のように考えています。

 「二十一世紀の資本主義は、かつてのケインズ主義が単純に復活するのではなく、ふたたび『歴史発展の本道』に立ち戻るとみるべきではないか。そうなるように願っている」

 新年にあたり、この「歴史発展の本道」という意味について考えてみたいと思います。

「新自由主義」という“迷い道”から抜け出す緊急策とケインズ
 よく知られているように、ケインズは、資本主義の恐慌や失業増大をおさえるには、政府による「総需要管理」政策が必要だと主張し、それを経済理論として体系化しました。このケインズ主義は、一九二九年大恐慌から資本主義を立ち直らせるニューディール政策の理論的基礎となりました。

 今回の金融危機、世界大不況にたいする資本主義諸国の対応をみると、ケインズ主義的な経済政策の復活、しかも、これまでの「新自由主義」の「小さな政府」論の理念をかなぐり捨てて、「大きな政府」論のオンパレードという感じです。ケインズが理論化した「総需要管理」政策は、恐慌に対応する緊急策としては、今日でも有効だからです。

 「新自由主義」派の、市場に任せておけばすべてうまくいくという市場原理主義の考え方は、もともと資本主義の経済理論としても時代錯誤であり、早晩、行き詰まらざるを得ない“迷い道”だったといえるでしょう。「百年に一度」の経済危機をもたらした「新自由主義」への反省もないまま、なし崩しで、ケインズ主義がよみがえってきたという感じです。

 二十一世紀の資本主義が、「新自由主義」という“迷い道”から完全に抜け出すには、「新自由主義」のどこに問題があったのか、しっかりした理論的な総括が必要でしょう。一時的な方便として、ケインズ的な緊急策を導入するだけだったら、いつかまた“迷い道”に入り込むことになります。

20世紀のケインズ理論の意義と限界
 ケインズの理論化した通貨・金融政策や財政政策による「総需要管理」は、現代資本主義の経済政策の前提になっています。その意味では、二十一世紀の現在でも、ケインズ経済学を研究する意義は失われていません。

 しかし、「新自由主義」にかわって、ふたたびかつてのケインズ主義がそのまま復活し、二十一世紀の資本主義世界を長期にわたって主導するということにはならないでしょう。

 かつての二十世紀中盤のケインズの時代と二十一世紀の今日では、歴史的な条件が大きく変化・発展してきています。

 ケインズ主義が資本主義世界をリードしていた一九三〇年代後半から六〇年代にかけての資本主義は、重化学工業を生産力的な土台としていましたが、現在は、ICT(情報通信技術)の急激な発展によって産業構造は大きく変化しています。世界経済は、多国籍企業が主導するグローバルな性格を強めています。

 もともとケインズの階級的立場は、資本主義を修正しつつ、その延命をめざすというものでした。ケインズの貨幣理論や有効需要理論は、軍需生産や大型公共事業の拡大などの財政スペンディング(浪費)政策、インフレ政策で犠牲を勤労者にしわ寄せすることを許容していました。労働者・国民の暮らしを守るというものではありませんでした。

 日本におけるケインズ研究者として知られる宇沢弘文氏も、現代の課題は、「ただ単純にケインズ的な政策が有効かどうかというものを越えた次元の問題になっている」(注)と指摘しています。

21世紀の資本主義の理論的課題とマルクス
 二十一世紀の資本主義には、ケインズの時代にはなかった新しい理論的課題が生まれています。たとえば、次のような課題です。

 (1)戦争や軍需によらない、世界平和の基礎を固める産業や経済を発展させる

 (2)地球温暖化への対応など環境にやさしい産業発展、経済成長を実現する

 (3)かつての植民地・従属国などの新興国を含む新しい国際経済秩序を実現する

 (4)科学技術の進歩を労働条件向上と労働生産性上昇の統一的実現に役立てる

 これらの課題は、いずれもかつてのケインズ理論だけでは解くことはできません。二十一世紀の資本主義がかかえる理論的課題に取り組んでいくために、その道しるべとなるのは、ケインズではなく、むしろマルクスです。

 十九世紀に生きたマルクスは、二十一世紀の世界を見ることはできませんでした。しかし数百年先の世界史をも展望するマルクスの思想的射程には、人類の膨大な知的遺産を土台として形成された科学的理論(『資本論』などの理論体系)の裏付けがありました。

 二十一世紀に生きるわれわれに求められることは、現実と格闘するなかで創造的に理論を発展させたマルクスの精神をよみがえらせて、マルクスの残した理論的遺産を道しるべに、二十一世紀の資本主義が提起している新しい理論的課題に立ち向かうことでしょう。

 マルクスにはじまる科学的社会主義の思想と理論の創造的展開のなかにこそ、二十一世紀の資本主義にとっての「歴史発展の本道」がある、こう私は考えています。(友寄英隆)

 (注)「対談 いま、ケインズを読む意味」(『世界』二〇〇九年一月号)。

(出所:日本共産党HP 2009年1月4日(日)「しんぶん赤旗」)
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欧州連合(EU)の勧告ー労働者の所得税減税も消費税減税も“景気刺激に有効”ー

2008-11-29 05:35:58 | 国際経済
消費税減税を
“景気刺激に有効”EU勧告
労働者の所得税も

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 【ロンドン=岡崎衆史】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は二十六日、金融危機と景気後退に対応するため、各国に消費税(付加価値税)や労働者の所得税減税を勧告する内容を含む「欧州経済回復計画」を発表しました。再雇用や中小企業の活動支援などEU域内総生産(GDP)の1・5%に当たる総額二千億ユーロ(約二十五兆円)の包括的景気刺激策が盛り込まれています。

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 消費税減税についての勧告では、「素早い導入が可能」であり「財政的刺激を与えて消費を支える」と評価し、一時的な税率引き下げの効果を強調。労働集約型サービスや、環境にやさしい製品についてより低い税率を恒常的に適用するよう促しました。また、労働者の所得税減税が低賃金労働者の購買力を下支えすると強調しました。

 英政府は二十四日発表の包括的景気対策で消費税率引き下げを盛り込みました。これに続いて欧州委員会が消費税減税に踏み込んだことは、この経済危機の中の対策として、消費税と労働者の所得税減税が世界の常識となりつつあることを示しています。

 発表された「欧州経済回復計画」では、困難な時期にもっとも困っている人を支援する「連帯と社会的公正」が基本原則としています。二つの柱として、購買力強化と需要を増やすこと、新たな成長へ向けた環境・省エネ技術などへの投資があげられています。再雇用支援や職業訓練では、十八億ユーロの投入を表明。中小企業支援については、欧州投資銀行が三百億ユーロを融資するとしました。さらに、ブロードバンド設備やエネルギー供給網の整備に、五十億ユーロが拠出されるといいます。

 包括策のうち、千七百億ユーロは加盟国が負担し、残り三百億ユーロをEU側が拠出。十二月のEU首脳会議で承認されれば、来年から二年間を対象に実施に移されることになります。

(出所:日本共産党HP 2008年11月28日(金)「しんぶん赤旗」)
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経済時評-GMの経営危機/問われる産業・貿易政策のあり方-

2008-11-27 01:37:32 | 国際経済
経済時評
GMの経営危機
問われる産業・貿易政策のあり方

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 これまで一世紀にわたって世界一の自動車企業として君臨してきたGM(ゼネラル・モーターズ)が、経営破たんの危機にひんしています。

 GMの株価は、一時は一ドル台にまで急落し、トヨタの時価総額の三十分の一以下になり、来春には手元の運転資金が枯渇、本社ビル売却まで検討していると伝えられます。

 GMの救済それ自体は米国の国内問題ですが、同時に、二十一世紀の産業政策や大企業の経営のあり方、市場と競争政策のあり方にかかわる重要な意味をもっています。

「救済法」か、「破産法」か
 米議会は今月十八、十九両日に、GM、フォード、クライスラーのビッグ・スリーを救済するための法案をめぐる公聴会を開きました。GMのワゴナー会長は、経営危機の原因について「販売の急減と金融危機」をあげ、経営戦略の失敗を認めようとしませんでした。

 たしかに米国の新車販売は、十月には前年比31%減、とくにGMは45%減となり、これはもう一種の“自動車恐慌”ともいえる不振ぶりです。もともと米国の自動車販売は、住宅販売と同様、消費者ローンに深く依拠してきました。そこへガソリン高騰、環境重視による低燃費志向が加わり、急激な信用収縮によって、GMの得意とする大型車の販売に急ブレーキがかかりました。

 しかし、GMの経営不振の背景には、短期的な利益を追求し、経営者と株主への利益配分を最優先する米国流経営の行き詰まりがあります。そのために、欧州や日本、中国、インドなどの新興国も加わった激しい新車開発競争に敗北したのです。著名な自動車産業アナリストのマリアン・ケラーは、すでに『GM帝国の崩壊』(原著は一九八九年)のなかで、巨大化したGM経営の病根を指摘しています。

 GMの場合、医療保険などの企業負担の債務が経営を圧迫しているともいわれますが、これは米国の社会保障制度の不備の影響です。

 GMの救済をめぐっては、新たに「救済法」を制定して公的資金の低利融資で経営を立て直すか、既存の「破産法」を適用して再建するか、このどちらかの選択が問われています。いずれを選んでも、資産の売却、工場閉鎖、労働者への過酷なリストラなどによる「再建計画」を提出するよう求められます。

 しかし、それだけでは、とりあえず株主と経営者を救済するだけで、米国の自動車産業を真に立て直すことはできないでしょう。GMが復活するには、二十一世紀に求められている自動車産業の再生めざして、労働者の雇用や労働条件、地域経済を守りながら、経営のあり方の根本的変革が必要でしょう。

「保護」か、「市場原理」か
 いまのところ米国内の世論は、政府がGMを救済することには、反対論が大勢のようです(注1)。米議会でも、民主党提案の救済法案にたいして共和党から反対意見が続出し、結論を十二月に持ち越しました。

 救済法案に反対する共和党の論拠は、国家財政で特定の企業や産業を救済すれば、競争の論理、市場の論理に反するということです。「新自由主義」の産業政策論からすれば、これは筋のとおった主張です。

 いま問われていることは、GMが破産した場合の米国経済への深刻な影響と、「新自由主義」の市場任せの産業政策のどちらを選ぶか、その“選択”といえるでしょう。

 もし米国が自動車産業の救済という産業保護政策を国内で選択するならば、WTO(世界貿易機関)の貿易交渉などで、他国の「保護主義」を批判し、「市場原理主義」を押しつけてきた貿易政策も根本的に見直すことが必要でしょう。自国は「保護主義」で、他国には「市場原理主義」を強要するというのでは、まったく筋がとおらないからです。

 いずれにせよ、米国の自動車産業を再建するためには、当面の公的資金の支援の問題としてだけでなく、これまでの米国の産業・貿易政策のあり方を、より長期的視点から根本的に再検討することが必要でしょう。

※  ※  ※  ※

 世界でいちばん読まれている経済学教科書といわれるJ・E・スティグリッツ教授の『入門経済学』(第二版)では、第一章で「自動車産業と経済学」をとりあげ、「経済学者にとっては、自動車産業は経済学に含まれるほとんどの分野を説明するための出発点の役割を果たす」と述べています(注2)。

 GMが開発・発展させたモデルチェンジなどのマーケティング手法、投資収益率などの会計手法、分権化などの組織手法などは、今日にいたるまで、大企業の経営手法の模範として定着してきました。P・F・ドラッカーがGMを調査して書いた『会社という概念』、A・D・チャンドラーがGMとフォードを比較した『競争の戦略』、GMの経営者だったA・P・スローンの『GMとともに』などは、経営学の古典的著作になっています。

 二十世紀には、発展する大企業のための「経営学」の素材を提供したGMは、二十一世紀のいま、没落の淵から再生の道を探る大企業のための「経営学」の素材を提供しているかのようにみえます。(友寄英隆)

(注1)米民間調査会社ラスムッセンの調査では、救済反対が48%、賛成が35%という(「日経」十一月二十四日付)。

(注2)スティグリッツは、二〇〇二年の第三版では、第一章を自動車産業でなく、「コンピューターとインターネットの発展」から書き始めている。

(出所:日本共産党HP 2008年11月26日(水)「しんぶん赤旗」)
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経済時評-国際的な金融改革への過渡期-

2008-11-22 02:04:06 | 国際経済
経済時評
国際的な金融改革への過渡期

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 世界的な金融危機に対処するための緊急金融サミット、G20会議(二十カ国・地域首脳会議)が十四、十五日に開かれました。

 昨年夏に「米国発の金融危機」が勃発(ぼっぱつ)していらい、主要国は、破たんした金融機関への救済や信用収縮する資本市場への資金提供に追われてきました。新興国を含めて、金融のあり方を議論する国際会議が開かれたことは、きわめて歴史的意義のあることです。

 今回のG20会議の、邦訳で一万字近い宣言を子細に読むと、投機的な金融活動への規制強化の方向は明確に打ち出されていますが、実効性のある具体策は、来年四月までに開く次回会議まで先送りされています。世界は、国際的な金融改革の扉を開いたが、まだ乗り越えなければならない困難な課題があるという感じがします。

 国際的な金融改革の方向を検討するさいには少なくとも次の四つの視点が必要だと思われます。

(1)破たんした金融機関の救済や信用収縮の犠牲を、各国の勤労国民や新興国に一方的に押し付けないこと。

(2)米国主導の「新自由主義」金融政策の路線を、きっぱり転換すること。とりわけ米国自体が、その立場に立つこと。

(3)「基軸通貨ドル」体制の見直しへむけて、国際的経常収支不均衡の是正をすすめること。

(4)大国主導のIMFなどの金融制度・国際機構の改革を、新興国の意向を重視して促進すること。

「規制強化」に消極的な米国の姿勢が孤立
 こうした視点から、金融サミットへいたる欧米日の対応を振り返って見ましょう。

 今回の会議の開催にもっとも積極的だったのは、EU(欧州連合)でした。EUは、事前に加盟国の首脳会議を開き、意見を調整したうえで、すべての金融分野の規制や監督を強化することなどの五原則をまとめ、新興国と連携して、抜本的金融改革を米国に強く求める立場を明確にしていました。

 これにたいし、ブッシュ大統領は十三日にニューヨークで演説し、金融危機の原因は「途上国から先進国への資本流入が金融機関のずさんな融資を拡大」したことにある、などと強調し、「米国の規制緩和が原因」という見方を強く否定しました。そして、資本主義の繁栄は「自由な市場」にこそあり、「過度な規制強化」に反対する立場を示しました。

 日本の麻生首相は、会議で「危機の克服」と題する提案を発表しました。そのなかでは、「金融危機の発生」は、「新たな金融商品の出現やグローバル化に、各国政府による監督・規制が追い付いていけなかった」からだとしながら、こう強調していました。(注1)

 「自由な市場原理に基づく競争、資本フローが、今後とも成長の基礎であり続けることは言うまでもない」。

 「米国の経済力が低下し、世界最大の債務国となった現在、果たしてドル基軸通貨体制は今後とも安定的に持続するのか、という声がある。しかし、我々としては、現在の国際経済・金融システムが依拠している、ドル基軸体制を支える努力を払うべき(である)」。

 これはアメリカの主張にすりよる姿勢―旧態然たる対米追随路線です。

 G20会議の結果は金融規制にたいする米国の消極姿勢は完全に孤立する形となり、規制強化の方向が打ち出されました。

オバマ新政権の「変革」路線がどうなるか
 今回のG20会議の経過から言えるのは、深刻な金融危機を契機として、世界は二十一世紀の新たな国際金融秩序の形成をめざす過渡的な時期に入ったということです。あえて“過渡的”というのは、従来の「新自由主義」的金融・経済政策からの転換をはかるべき米国自体が、まさに政権移行の過渡期にあるからです。

 今回の国際会議にあたって注目されたことは、ブッシュ路線を批判して当選したオバマ次期大統領がどのように関与してくるかということでした。オバマ氏は直接には登場せず、代理を送るだけにとどまりました。

 日本共産党の志位和夫委員長は、オバマ氏の当選にあたっての談話で、「『変革』の路線がオバマ新政権の政策と行動にどう具体化されるかに、注目する」と指摘しています。来年一月二十日に就任するオバマ新大統領の「変革」路線がはたしてどのようなものになるのか、まだ明らかではありません。

 今年のノーベル経済学賞を受けたクルーグマン・プリンストン大教授は、「様々な指標を見れば、我々が世界的な大不況に突入しつつあるのは明らかだ」(注2)と述べています。

 世界的な金融危機の震源地である米国の大不況が深まれば深まるほど、米国の「変革」は加速し、本格化していかざるをえないでしょう。次回のG20会議までに、米国がどう変わっていくか、それが当面の最大の焦点です。(友寄英隆)

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(注1)首相官邸ホームページより。なお、麻生首相は、十一月十四日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」(電子版)に、この提案文書の趣旨を個人論文の形で寄稿している。その論文では、「自由な市場原理を基礎にするべきこと」を、より強調する英文になっている。

(注2)「朝日」十一月十七日付。

(出所:日本共産党HP 2008年11月20日(木)「しんぶん赤旗」)
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経済時評-米国発の金融危機(3)/迫る恐慌の性格・対応策-

2008-10-21 22:24:20 | 国際経済
経済時評
米国発の金融危機(3)
迫る恐慌の性格・対応策

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 米欧首脳は十八日、世界的金融危機に対応する緊急サミット(首脳会議)の開催で合意しました。金融危機は、実体経済の不振と絡み合い、世界同時不況の懸念が広がっています。

 IMF(国際通貨基金)の最新の世界経済見通しでは、世界経済は大恐慌以来の金融危機に直面し、「実体経済も大きな下降局面に入りつつある」。来年の実質成長率は、米国が0・1%、ユーロ圏が0・2%、日本が0・5%で、軒並みゼロ成長と予測しています。

 しかし、IMFの見通しは、まだまだ甘い。とりわけ米国経済の実体は深刻です。

産業循環上も本格的な「景気後退」局面に
 米国経済は、九〇年代の十年にわたる景気上昇の後、二〇〇〇年にITバブルが崩壊して景気後退に入りました。ところが、それは同時テロ後の超金融緩和・金持ち減税ですぐに中断し、そのままアフガン・イラク戦争による“軍拡景気”へと続きました。

 しかし昨年夏に金融危機が勃発(ぼっぱつ)する以前から、本格的な景気後退が近いことを示す兆候が広がってきました。景気を支える消費は、家計赤字の膨張で伸び悩み、金融危機の発端となった住宅価格の下落そのものが、実体経済の矛盾を信用膨張(各種ローンの急増)で覆い隠してきたことの限界の現れでした。

 住宅産業とともに米国経済を支えてきた自動車産業も、売り上げが落ち込み、GMはじめビッグスリーの経営は破たん寸前です。

 米国経済は、新自由主義的資本蓄積のもとでの、初めての本格的な景気後退に直面しています。新自由主義的資本蓄積の特徴は、一方には巨額な富が多国籍企業・大金持ちに集中するのにたいし、他方には膨大なワーキングプアと貧困が累積することです。貧困層の増大は、家計消費を押し下げ、ひとたび不況になると大型で長期化する恐れがあります。

 そこへ、深刻な金融危機の影響が反作用してきます。株式など金融資産価格の暴落で、富裕層の消費支出の大幅減退も必至です。

※  ※  ※

 米国経済の矛盾の根源を、米国民の「過剰消費」にみる考えもあります。

 「過剰消費が危機を大きくするふいごの役を果たした」「米国の『過剰消費』経済がどう変わるかも、今後の行方を決める重要な要素だ」(行天豊雄・元大蔵省財務官)(注1)


 しかし、米国は「貧困大国」でもあり、衣食住医にもこと欠く多数の人びとがいます。

 また米国の「過剰消費」は、日本、中国などの輸出が支えてきました。海外での「過少消費」(=「過剰生産」)抜きに、米国の「過剰消費」だけを論ずることはできません。

 米国だけでなく、日本や中国、その他の新興国もふくめグローバルな規模で展開されてきた資本蓄積の矛盾(グローバルな「生産と消費の矛盾」)が、まず米国で噴き出しつつあるといえるでしょう。その意味で、米国の景気後退は、世界同時不況へ直結しています。

※  ※  ※

 今回の米国の景気後退は、金融危機が先行してはじまったことが特徴です。

 マルクスは、貨幣恐慌(今でいう金融恐慌)には二つのタイプがあると述べています。

 一つは、貨幣恐慌が「特殊な種類の恐慌」として独自に起こり、実体経済に反作用する場合、もう一つは、「全般的生産・商業恐慌の特殊的局面」として起こる場合です。(注2)

 今回の金融危機は、米国型「金融モデル」の破たんによる独自の貨幣恐慌(マルクスのいう前者のタイプ)としての性格をもっています。同時に、全般的恐慌の一環としての貨幣恐慌(後者のタイプ)の性格も重なっています。

 金融危機が実体経済に反作用するだけでなく、実体経済の矛盾が金融危機を長引かせ、悪循環が続く可能性があります。

米国経済の再生のために、三つの要素
 差し迫る恐慌に、どう対応するか。

 一九三〇年代の「ニューディール」より、さらに革新的な「二十一世紀型ニューディール」とでもいうべき政策体系が求められます。米国経済の再生のためには、次の三つの要素を盛り込むことが必要でしょう。

 第一。国民生活密着型の緊急対策―

 恐慌の犠牲を勤労者、中小業者にしわ寄せしない需要・供給の両面からの対策。とくに低所得者・失業者・自営業者を救済する政策。

 第二。米国型「金融モデル」の改革―

 金融にたいする民主的な規制の再確立。金融の投機化の規制・透明化。金融制度の民主化。戦争の中止による財政再建と経常収支赤字の計画的縮小。新興国を含むルールある通貨・金融秩序を構築するための国際協調。

 第三。新自由主義的資本蓄積の改革―

 ワーキングプアを解消する労働改革(技術革新を労働条件改善に活用)。物づくりを重視、市場まかせ・金融優先でない産業政策。大企業・富裕者への公正な負担で医療・福祉制度の確立。環境重視の「成長モデル」の構築。

 こうした経済政策は、米国だけでなく、各国で共通に求められているものです。(友寄英隆)

(「米国発の金融危機」(1)は八日付、(2)は十六日付)

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(注1)「朝日」〇八年十月十八日

(注2)『資本論』、新日本新書(1)、234ページ

(出所:日本共産党HP 2008年10月21日(火)「しんぶん赤旗」)
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経済時評-米国発の金融危機(2)/「基軸通貨ドル」はどこへ行く-

2008-10-16 22:41:48 | 国際経済
経済時評
米国発の金融危機(2)
「基軸通貨ドル」はどこへ行く

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 米欧日の七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は十日、公的資金注入による資本増強などの五項目を盛り込んだ異例の「行動計画」を発表しました。

 直後の株価は世界的に急騰し、下落相場にひとまず歯止めがかかりました。しかし、これで金融危機が終わったわけではありません。とりわけ米国では公的資金の注入が国家財政の負担となり、ドル不安を増幅します。

 今回は、ブッシュ政権が、一方でアフガン・イラク戦争による巨額な軍事費と財政赤字を拡大し、他方で新自由主義的な金融政策を推進してきたために、経常収支赤字を限りなく膨張させ、基軸通貨ドルの信認をそこねてきた問題について考えてみたいと思います。

「ドル暴落」の要因と、それを繰り延べてきた条件
 日本経済新聞は八月二十八日朝刊で、「ドル防衛の秘密合意」のスクープを掲載しました。

 「米金融不安でドルが急落した今年三月、米国、欧州、日本の通貨当局がドル買い協調介入を柱とするドル防衛策で秘密合意していたことが明らかになった。ドル暴落で世界経済に大きな混乱が広がるのを回避するためで…緊急共同声明も検討された」


 ドル暴落の懸念は、すでに九〇年代から繰り返し指摘されてきました。米国が巨額な経常収支の赤字を出し続けてきたからです。

 ニクソン大統領がドルと金との交換停止を強行した一九七一年から〇六年までの間の経常収支赤字の累積額は、実に六兆ドル(一ドル=一〇〇円で概算しても六百兆円)を超え、ヘッジファンドの四倍近い額です。(注1)

 海外へ流出した不換ドルの大部分は、米財務省証券や米大企業株・債券の購入によって米国へ還流し、経常収支赤字をファイナンスすることでドル暴落を繰り延べてきました。

 こうした海外からの大量な資本流入がいつまで続くか。ブッシュ政権は、「米国の資本収支黒字」について、「原理的には…いつまでも純資本流入を受け取る(経常収支赤字を計上する)ことができる」などという“超楽観的な分析”をしています。(注2)

 たしかに基軸通貨ドルのもとでの米国型「金融モデル」の発展とICT(情報通信技術)革命という二つの条件の結合、さらにソ連崩壊後の軍事的な一国覇権体制も加わったために、米国の資本市場は“バブル的繁栄”を続け、大量の資本流入が続いてきました。しかし、これらの歴史的条件は、今回の金融危機によって急速に失われつつあります。

「ドルの一極支配」に代わる通貨秩序の模索
 最近では投資家としてよりも警世家として著名なジョージ・ソロス氏は、近著でサブプライム・バブルよりもはるかに巨大な、基軸通貨ドルの「超バブル」の時代が終焉(しゅうえん)を迎え、ドル暴落は必至だ、と述べています。(注3)

 ドル暴落は、ドル保有国にとっては、多大な損失を意味します。

 「日米欧をはじめ世界中のドル保有国が団結してドル防衛に動いている」「中期的にドル安が進むのは避けられそうにもない…ドル、ユーロ、円の事実上の三極体制に向かうとみていいのではないか」(丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長)(注4)


 ローレンス・サマーズ元米財務長官は、ドル体制を維持するには、中国の役割が決定的に重要だと主張しています。世界一の外貨保有国となった中国との協調を重視する米国の新たな戦略がかいまみえます。(注5)

 いずれにせよ、米国の地位低下、中国、インド、ブラジルなど新興諸国の経済発展による世界経済の構造変化のもとで、世界は、ドル一極支配に代わる国際通貨の新秩序を模索する時代に入りつつあるといえるでしょう。

※   ※   ※

 「基軸通貨ドルのゆくえ」は、理論的にも興味深い研究課題です。

 岩井克人東大教授は、次のように述べています。

 「私が考える1つのシナリオは、基軸通貨としての『世界ドル』と、米国内の通貨としての『国内ドル』を何らかの形で分けるような仕組みが、模索されるのではないか、ということだ」(注6)


 しかし、「国内ドル」と区別される「世界ドル」が信認されるためには、その「世界ドル」の価値を担保する条件(かつての「金・ドル交換」のような国際的約束)が不可欠でしょう。歴史的に振り返れば、米国経済が「金・ドル交換」に耐えられなくなったから、米国はその約束を一方的に破棄したのであり、当時よりさらに米国経済の地位が低下したもとでそうした条件が可能だとは思えません。

 いま必要なことは、第二の基軸通貨として発展しつつあるユーロの生成・発展の歴史的経験に学ぶことでしょう。ユーロは、ドイツ・マルクやフランス・フランなど、どの国の国民通貨ともまったく異なる共通通貨として、民主的なルールのもとで誕生した新しいタイプの「貨幣」だからです。(友寄英隆)

(「米国発の金融危機」(1)は八日付)


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(注1)経常収支赤字額は年々増大しており、二〇〇〇年以降の七年間だけで約四兆ドル(約四百兆円)にものぼる。

(注2)『二〇〇六年大統領経済諮問委員会年次報告』(邦訳『米国経済白書2006』毎日新聞社)、一三四ページ。

(注3)『ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ』講談社、二〇〇八年。

(注4)「日経」九月二十六日付。

(注5) “How to handle the falling dollar”The Financial Times:October 28,2007

(注6)『エコノミスト』二〇〇八年九月九日号。

(出所:日本共産党HP  2008年10月16日(木)「しんぶん赤旗」)
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経済時評-米国発の金融危機(1)/なぜ危機が起こったのか-

2008-10-08 21:19:21 | 国際経済
経済時評
米国発の金融危機(1)
なぜ危機が起こったのか

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 世界的な株価下落が続いています。

 米国の「金融安定化」法は成立しましたが、金融不安は、いちだんと深まる様相です。「金融安定化」法によって、金融機関の不良債権を買い取り、一時的に救済したとしても、巨額な損失を抱えた金融機関の資本不足を解決することにはなりません。

 しかも、公的資金投入のツケはそっくり国家財政に回ってきます。ある試算では、今後の政府の資金負担の総額は一兆八千億ドル(約百九十兆円)にまで膨らむ可能性があるといわれます。「金融安定化」どころか、ドル暴落の不安をますます高めざるをえません。

 米国発の金融危機は、これからどうなるのか? ドル暴落は? 実体経済の世界恐慌との関係は? 日本はどうすべきか? などなど、一回の時評ではとても論じきれません。何回かにわけてとりあげてみたいと思います。

公的規制を徹底的に排除した「金融モデル」
 まず、今回の米国発の金融危機はなぜ起こったのか、その深部の原因をどうつかむか、という問題です。

 マスメディアに登場する証券アナリストの解説では、米国の住宅価格が下げ止まれば、金融危機も解決すると言います。しかし、それほど単純な話ではありません。

 今回の金融危機は、きわめて精緻(せいち)な金融工学=「新自由主義」的金融理論にもとづく米国型「金融モデル」のもとで起こりました。

 米国型「金融モデル」の特徴は、最先端の金融技術を駆使して、金利や為替のデリバティブ(金融派生商品)取引、不動産や金融債権の証券化、資本市場からの資金調達によるM&A(企業の買収・合併)など、投資銀行業務(日本の証券会社の業務)を中心に巨額な利益を得てきました。

 米国型「金融モデル」のためには、公的規制を徹底的に撤廃することが必要でした。

「過剰な規制は、金融サービスの生産コストを増大させる。今や撤廃されたグラス・スティーガル法は、その実例である」(注1)


 こうした金融の規制撤廃の結果、金融業の主導権は、預金を集めて企業に融資する商業銀行から投資銀行に移りました。「預金から投資へ」のスローガンのもとで、一般庶民の資金も資本市場へ巻き込まれてきました。

 米国型「金融モデル」の象徴だった投資銀行が次つぎと破たんしたことは、今回の金融危機の性格を鮮明に示しています。

新自由主義的資本蓄積と信用膨張の破たん
 米国型「金融モデル」のもとでの米国経済の繁栄は、「金融の自由化」と市場原理主義の経済政策を世界に広げて、基軸通貨ドルの特権によってアメリカに資金を集中し、ドル高、株高を続けることで成り立っていました。

 米国の政府・金融界は、金融危機の直前まで、米国型「金融モデル」は、「イノベーションと経済成長を促進し」、「米国経済の安定性を高めてきた」と礼賛し、その「グローバルな比較優位性」を誇ってきました。(注2)

 たしかに、米国型「金融モデル」のもとでICT革命(情報通信技術革命)が発展しました。マイクロソフト、インテル、グーグルなどICT企業の急成長は、リスクをともなうベンチャー企業への資金の提供という意味で、資本市場の活性化が一定の役割をはたしたといってもよいでしょう。

 しかし、ICT革命は、利潤第一主義、効率最優先の新自由主義的資本蓄積の手段となり、経済社会に大きなゆがみをもたらしました。

 グローバルな規模でも、各国の国内でも、富が大企業、大金持ちに集中し、それが巨額な金融資産を形成しました。それらの膨大な金融資産の多くは生産資本に再投資されないまま「過剰な貨幣資本」となり、ヘッジファンドや投資銀行の手で投機マネーとして、あるときは株式バブルを、あるときは土地・住宅バブルを、あるときは国際商品(原油や穀物)バブルを、引き起こすようになりました。

 米国の投資銀行が主導した「金融資産の証券化」は、資本市場の流動性を速める金融技術の革新でしたが、現実には、世界の過剰貨幣資本の投資先として、不良債権を世界中にばらまく“金融的術策”となりました。

 今回の金融危機の直接のきっかけはサブプライムローン(低信用者向けの住宅ローン)の破たんでした。それは米国の「住宅ローンの証券化」が、グローバルに膨張した信用連鎖のもっとも弱い環になっていたからです。

 グローバルな規模での新自由主義的な資本蓄積の矛盾―一方に膨大なワーキングプアと貧困、他方に巨額な金融資産(過剰な貨幣資本)の累積という矛盾―が限界にきて、膨張した信用の連鎖がはじけたとき、それが「百年に一度の金融危機」(グリーンスパン前FRB=米連邦準備制度理事会=議長)のはじまりでした。(友寄英隆)

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(注1)(注2)『二〇〇六年大統領経済諮問委員会年次報告』(邦訳『米国経済白書2006』毎日新聞社)、一七八ページ、一七〇ページ。一九三三年のグラス・スティーガル法は、銀行が商業銀行業と投資銀行業を同一行内でおこなうことを禁じていた。

(出所:日本共産党HP 2008年10月8日(水)「しんぶん赤旗」)
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米国内の格差 広がる-高額所得者(全世帯の1%)に所得総額の23%集中-

2008-09-06 08:17:37 | 国際経済
高額所得者(全世帯の1%)に
所得総額の23%集中
米国内の格差 広がる
経済政策研究所 報告書を発表

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 【セントポール(米ミネソタ州)=西村央】ワシントンにある民間研究機関、経済政策研究所は、八月末に「二〇〇八―〇九 アメリカ労働者の状態」と題する報告書を発表しました。報告書は、ブッシュ政権八年間で米国内の所得格差が一段と広がっていることを各種データで明らかにしています。

 報告書は、米国の経済成長をもたらすために多くの労働者が懸命に働いてきたにもかかわらず、ほとんどの米国の世帯は自らつくり出した経済成長の恩恵を受けていないと指摘。所得格差の急速な拡大は、経済の成長や労働生産性の向上が幅広い国民の所得増につながるという構造の崩壊を示していると分析しています。

 格差の一例としてあげているのは、所得上位の1%の高額所得者に全世帯所得の23%が集中しているという点。この比率は、一九一三年以降最も高くなっています。

 報告は、これらの格差は市場経済の結果として出てきており、格差をさらに広げているのは、ブッシュ政権の高額所得者優遇の減税策だと分析。低所得者にはほとんど恩恵がなく、減税は中間所得層で一家計あたり約千ドルなのに対し、所得上位1%の高額所得者は一家計あたり五万ドルとなっています。

 被雇用者を見ても、経営者や幹部社員など上位10%と残りの90%の所得格差は、一九七九年に二十倍だったのが、二〇〇六年には七十七倍以上になっています。

 報告書は、生産性の向上や経済成長は勤勉で創造的な労働者全体の努力によるものであり、ごく一部の幸運なものがつくり上げたものではないと指摘。企業業績が勤労者全体に振り向けられておらず、米国民がすでに間違いが明白になった「ニューエコノミー(高成長が恒久的に続くとする経済理論)」のわなに捕らわれたままになっているとして、次のように分析しています。

 「昨年のこの報告書で、生産性向上の保証があっても、生活水準が停滞したままという実態についての調査を開始した。その経済サイクルは今も継続し、こうした状態に終止符が打たれたと評価するのは難しい。二〇〇〇年代の経済サイクルは生産性の向上という約束では前進があったが、その成長がより良い生活水準をもたらすという約束は果たされているとは決して評価できない」

(出所:日本共産党HP 2008年9月5日(金)「しんぶん赤旗」)
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後期高齢者医療-徴収延期自治体で通知始まる/保険料に抗議殺到-

2008-07-21 00:34:40 | 国際経済
後期高齢者医療
保険料に抗議殺到
徴収延期自治体で通知始まる

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 七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度で、保険料の年金からの天引きを延期した全国三十一市区町村でも、今月中旬から保険料額の決定通知と納付書が届き始めました。そのほとんどで十月から年金天引きが始まります。

 十八自治体が延期していた東京都では、区役所などに抗議が殺到。渋谷区役所では問い合わせが続いたため、土日も窓口をあけて対応しています。

 毎月七万―八万円かかる妻の入院費を工面しているという男性(89)=渋谷区=は、福島県で病気入院中の妻(78)の通知が届いたことに驚き、根拠をただしに区役所を訪れました。「妻の年金はゼロなのに保険料が発生する。払いたくても払えない。所得のない人には課税しないのが当たり前の原則だ」と話します。法律のコピーをもらいましたが、納得できません。

 大田区でも、通知を見たお年寄りが区役所に詰め掛けています。窓口では、「夫婦二人で十一万円もあがった」と泣き出す女性も。

 男性(79)は「年寄りは先がないから金はかけられないというやり方だ。即刻廃止しないと(気持ちが)収まらない。一生懸命働いてきて、気がついたら七十九歳になっていた。国民全体の問題だ」と話します。

 新宿区では十九日、日本共産党新宿地区委員会が同制度の廃止を求めて宣伝行動をしました。訴えを聞いていた男性(86)は「保険料があがった。払えなければ保険証がとりあげられる。共産党が一生懸命いっているように廃止するしかない」と語りました。

(出所:日本共産党HP 2008年7月20日(日)「しんぶん赤旗」)
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経済時評-原油暴騰と米先物委の責任-

2008-06-18 04:48:14 | 国際経済
経済時評
原油暴騰と米先物委の責任

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 原油価格が一バレル=一四〇ドル近くに高騰しています。昨年前半の五〇~六〇ドル台から、年明けには一〇〇ドルを突破し、さらにわずか半年足らずで四十ドルも上昇しました。

 五月末の政府の『エネルギー白書』でも認めているように、最近の原油暴騰の主要な原因が投機マネーによるものであることは、もはやだれも否定できません。今月七日の五カ国(日米中印韓)エネルギー相会合も、共同声明のなかで「現在の原油価格水準は異常だ」との共通認識を示しました。

 原油、原材料、食糧などの価格暴騰は、異常な商品投機にたいする国際的な規制が必要になっていることを示しています。

 しかし、自由な取引で成り立つ市場経済のもとで、商品投機をどのように規制するか。

CFTCの極秘調査と市場監視
 アメリカにCFTC(全米商品先物取引委員会)という独立行政機関があります。

 日本でもよく知られているSEC(証券取引委員会)にくらべると、CFTCはほとんどなじみがない組織です。SECが証券取引を監視するのにたいし、CFTCは、商品先物取引で価格操作や虚偽情報の発信など不正行為がないかを監視し、違反者の訴追などをおこなっています。

 そのCFTCが五月二十九日、原油取引で相場操縦による価格つり上げの疑いがあるため、昨年の十二月から極秘で調査してきたという異例の声明を発表しました。(注1)

 この声明によると、今回の調査は、経験豊富なスタッフを総動員し、エネルギー会社やトレーダーを対象に、全米規模で、市場での資金の流れや、原油の売買契約、輸送、備蓄などを対象にしているといいます。そして、いまあえて極秘調査の実施を公表したのは、「現在の前例のない異常な市況、相場操縦から市場を守るためである」と述べています。

 CFTCは、続いて六月三日には、農産物の先物取引でも同様の調査をすると発表しました。さらに同月十日には、商品先物の相場動向を調査する目的で、CFTC、SEC、FRB(米連邦準備制度理事会)などによる合同調査委員会を設置すると発表しました。

 CFTCは、米議会証言では、これまで一貫して商品高騰と投機との関係を否定し、「牙を持たないトラ」などと揶揄(やゆ)されてきました。そもそもCFTCの収入は、先物取引の手数料からなっており、投資ファンドの参入で市場規模が膨らむことは歓迎すべき立場です。

 そのCFTCが、なぜ急に投機抑制のために積極的に動きはじめたのか。

旧来の投機とは根本的に異なる「インデックス投機」を野放しにした
 実は、五月末のCFTCの声明には、重要な伏線がありました。

 それより十日前の五月二十日、米上院の公聴会で、元ヘッジファンド経営者のマイケル・W・マスターズ氏が証言し、巨額な投機マネーの横行こそが現在の異常な商品高騰を招いたことは明白であると述べ、さらに、「CFTCがこの投機の増大を誘発した」と、CFTCの責任を厳しく批判したのです。同氏は、投機を誘発したCFTCの役割を、たいへん具体的に証言しました。

 「CFTCは、一部の投機家が商品先物市場に実質的に無制限にアクセスできるよう規制緩和をおこなってきた」(注2)


 マスターズ氏は、ウォールストリートの銀行家や国際的投資ファンドによる投機的先物取引は、商品価格の変動をリスクヘッジ(危険を保険)するための先物取引(旧来の投機)とは、根本的に目的が異なる「インデックス(指数)投機」(注3)の手法を使っている、と述べました。そして、この「インデックス投機」こそ原油や食料を買い占めて価格を暴騰させている元凶である、と証言しました。

 マスターズ氏のCFTC批判は、CFTCが「インデックス投機」を規制緩和で野放しにし、むしろその活動を積極的に奨励したうえ、統計的にも旧来の投機と「インデックス投機」の区別を隠ぺいして両者の見分けがつかないようにしてきたという点です。まさにCFTCの責任重大というわけです。

 マスターズ氏は、高騰した商品価格を引き下げるには、直ちに「インデックス投機」を統計的にも区分できるよう再分類し、厳しく規制すべきであると提言しています。

投機的資本のディスクロージャーが必要
 異常な商品投機をおさえるには、投機的先物取引の規制とともに、投資ファンドへのディスクロージャー(経営情報の開示)の義務付けなどによって、投機的資本を金融の面からも規制することが必要です。

 たとえば世界最大手の英国系ヘッジファンドである「マン・グループ」のピーター・クラーク最高経営責任者(CEO)は、日本の投資資金が大量に商品先物市場に流れ込んでいると、次のように述べています。

 「マネー流入の主役はいまや日本の個人投資家だ。個人からの預かり資産四百三十億ドルのうち日本だけで二四%を占める。国別では米国や欧州各国を上回り最大だ」(「日経」〇八年六月四日付)


 これが真実だとすれば、「マン・グループ」を通してだけでも、日本の個人投資家の一兆円を超える資金が商品投機などに回っていることになります。しかし、その“個人投資家”の実態はまったくわかりません。投資ファンドのディスクロージャーによって資金の流れを明らかにし、市場の透明性を高めることは、無責任な投機活動を抑えるためにぜひとも必要です。(友寄英隆)

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(注1)CFTC(U.S. Commodity Futures Trading Commission)に関する情報は、次のサイト参照。

http://www.cftc.gov/index.htm

(注2)マイケル・W・マスターズ氏の議会証言の全文は、次のサイト参照。

http://hsgac.senate.gov/public/_files/052008Masters.pdf

(注3)インデックス(指数)投機(Index Speculation)とは、各種の代表的な商品指数にしたがって主要な商品先物に投資配分する投機。

(出所:日本共産党HP  2008年6月17日(火)「しんぶん赤旗」)
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