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警察官不祥事:匿名や非公表の正当性を問う 警察発表実態調査から浮かぶ問題点

2008-06-30 04:43:29 | 国内警察
 警察官不祥事:匿名や非公表の正当性を問う 警察発表実態調査から浮かぶ問題点

 毎日新聞は、昨年4月から1年間の警察における匿名発表の実態を全国調査した。警察官の不祥事を「任意事件だから」などの理由で匿名(あるいは非公表)にしたり、被害者の意向がくまれなかった例を報告する。【まとめ・本橋由紀】

 (1)不祥事--飲酒事故でも名前を明かさず

 岩手県警が県警関係者の不祥事2件を公表していなかったことが07年11月、分かった。06年に男性警部補を同僚女性へのセクハラで戒告処分としたケースと、05年に男性事務職員を盗撮行為で書類送検し、6カ月の減給処分にしたケース。警部補は、女性が被害届を出していないため刑事事件にならず、事務職員は任意の取り調べで盗撮を認めたため逮捕しなかった。

 県警は「私的行為による懲戒処分は停職以上を公表するという警察庁の指針に沿って対処した」と説明。指針では「発表基準に該当しないものでも、警察の信頼確保のため必要な場合は発表する」との規定がある。しかし「隠ぺいの意図はない。指針で対象外だからだ」との説明を繰り返した。

 香川県警自動車警ら隊の巡査(23)が昨年9月、酒を飲んで乗用車を運転し当て逃げ事故を起こした。県警は道交法違反(酒酔い運転、事故不申告)容疑で書類送検した。この件では、巡査を懲戒免職処分にしたものの、県警は「身柄を取っていない」との理由で、記者が求めたにもかかわらず巡査の名前を最後まで発表しなかった。

 金沢市内のアパートで07年5月、石川県警警部補(44)がナイフを腹に刺された状態で見つかった。県警は「殺人未遂事件の発生」と事件を発表。被害者を「県警本部勤務 警部補(44)」とした。発生から10日後、県警は「警部補が自分で刺したことが分かった」と発表したが、匿名だった。「軽犯罪法違反(虚偽申告)で、通常は発表していない」との理由。その後、警部補を懲戒戒告処分としたが、その際も匿名だった。

 北海道警根室署員4人が任意聴取中の男性に暴行を加えた。釧路地検が昨年6月、4人を起訴猶予処分とすると発表したが、名前は明かさなかった。

 (2)書類送検--公選法違反でも広報せず

 昨年7月の参院選で証紙を張っていない違法ビラを配布したとして、自民党山梨県連の事務局長と幹事長の県議(その後、失職)が公職選挙法違反(文書頒布)の容疑で書類送検され、略式起訴された。2人には罰金20万円、公民権停止3年の略式命令が下った。

 県警は書類送検をしたものの発表せず、甲府地検が08年3月28日、事務局長と県議の略式起訴事実と略式命令の内容についてのみ発表した。県警は「他県でも同様の事案は広報していない」と説明した。

 この事件では複数の県議や事務局長の関与がうわさされていたため、各社は県警に「書類送検でも広報を」と要請していた。

 青森県三沢市で07年10月、米軍三沢基地所属の米兵が起こした軽傷ひき逃げ事故を、県警三沢署が「証拠隠滅や逃亡の恐れがない」と任意で調べ、08年3月に道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で青森地検八戸支部に書類送検した。事故自体は発表したが書類送検は伏せられた。「書類送致事件は公表していない」という理由。報道で事実が明らかになった。

 昨年11月、福島市の庭坂郵便局で、元職員の男性が定額貯金約200万円を着服したことが発覚。福島署が業務上横領事件として書類送検したが発表しなかった。

 地検への取材で送検が判明し、福島署に確認したところ「任意事件だから」との回答だった。

 (3)被害者の希望--実名での取材に応じる人も

 3月23日、茨城県土浦市のJR荒川沖駅周辺で8人が殺傷された事件で、茨城県警は被害者の氏名を発表する際、被害者の「希望」をつけた。「実名は勘弁してください」などと書かれている被害者の中には、実名で取材に応じた人もいた。

 知的障害を持つ安永健太さん(当時25歳)が、佐賀市の国道を自転車で蛇行していたとして、5人の警察官に取り押さえられた直後に急死した。県警は匿名で発表。佐賀署は「遺族が名前を出さないでくれと言っている」と説明した。

 ところが、遺族を取材すると「当日は、匿名を希望した。佐賀署が『バイクをけって逃げた』という説明をしたからだ」と話した。その後、安永さんが警察官に取り押さえられる最中に意識をなくしていたことが判明し、遺族は実名での報道を希望。毎日新聞も実名報道に転じた。

 食卓を震撼(しんかん)させた中国産ギョーザの中毒事件(今年1月)では、千葉市で2人、市川市で5人の入院患者が出た。しかし、千葉県警は、入院した被害者の氏名を匿名で発表した。「被害者に取材が及ぶと迷惑する」「氏名を公表する事案ではない」との理由で、報道側は実名公表を求めたが対応は変わらなかった。

    ×  ×

 事件・事故が起きた時、被害者名の発表を実名・匿名のどちらにするかの判断を警察に委ねるとした項目を盛り込んだ犯罪被害者等基本計画が05年12月に閣議決定された。

 その項目は「警察による被害者の実名発表、匿名発表については、犯罪被害者等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国民の知る権利を理由とする実名発表に対する要望を踏まえ、プライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮していく」というものだった。これについて、政府の基本計画検討会が当時▽取材・報道の自由に規制を加えるものではない▽実名発表を求める被害者まで匿名にはしない▽警察の恣意(しい)的な判断や安易な匿名発表の拡大を認めるものではない▽匿名発表とする場合はその都度、マスコミに理由を説明し、議論に応じる--との見解を示したが、必ずしも見解が守られていない実態が浮き彫りになった。

 ◇隠ぺいの疑い招く--服部孝章・立教大教授(メディア法)
 公人による不祥事の匿名での発表や、不祥事自体の不公表は「隠ぺいをしているのではないか」との疑いを招くもので、捜査機関への信頼確保の点からも看過できない。公人は、国民の知る権利の対象であり、懲戒処分、書類送検のいずれの場合も警察官がかかわった事件は、社会的な公益性は高く、一般私人より厳しい扱いは当然で、実名発表すべきだ。事件の被害者・遺族側の希望を理由にした匿名発表についても警察が十分な説明をしていない疑いがある。報道機関による検証にふたをすることにつながる。

 ◇個人情報の混乱続く--鈴木正朝・新潟大法科大学院教授(情報法)
 現在起きている個人情報の保護に名を借りた過剰反応や情報隠しは、啓発活動によって一般国民が専門家と同じように法律を解釈できれば収まるという問題ではない。そもそも法律の規定があいまいなため、解釈で解決することは無理なのだ。個人情報保護法の改正を見送った政府や国民生活審議会・個人情報保護部会の委員が力不足を認めず、保護法制全体の抜本的な見直しに及び腰なままでは、一連の「混乱」は今後も続くだろう。

(出所:毎日新聞 2008年6月16日 東京朝刊)

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参院委で少年法改定案を可決ー少年審判の機能変質ー

2008-06-12 00:48:43 | 国内警察
少年審判の機能変質
仁比議員反対討論
少年法改定案を可決
参院委

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 参院法務委員会は十日、原則非公開の少年審判の傍聴を、殺人など重大犯罪に限り被害者や家族に認める少年法改定案を、自民、公明、民主の賛成で可決しました。日本共産党は反対しました。

 採決に先立ち、日本共産党の仁比聡平議員が反対討論に立ち、「被害者の傍聴は、少年審判の機能を変質させる恐れが極めて強い」とし、加害少年が十二歳未満の場合は傍聴を認めないとする修正案でも懸念は消えないと批判しました。

 仁比氏は、置き去りにされてきた被害者の願いに応えることは「重要な政治課題だ」としたうえで、少年法は少年の更生と再犯防止を目的としていると強調。少年が委縮することなく審判に参加できる環境の確保が不可欠だと訴えました。

 仁比氏は、被害者の傍聴による少年の委縮は否めないと指摘。委縮が予想されれば傍聴を認めないというが、どのような状態を委縮とするかも明確でなく、裁判官の裁量的判断に歯止めがかかっているとは言えないと主張。結果的に、被害者の要求があれば傍聴を認めることになりかねないと警告しました。

 また、被害者が閲覧・謄写できる範囲を、少年の高度のプライバシーを含む記録まで拡大することについても、「少年の更生への影響からみて問題だ」と批判しました。

 仁比氏は最後に、徹底かつ慎重な審議を求めてきたにもかかわらず、審判廷の視察すら行わずに採決に至ったことを厳しく抗議しました。

(出所:日本共産党HP 2008年6月11日(水)「しんぶん赤旗」)
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 クローズアップ2008:少年法改正へ 審判傍聴可能に 被害者尊重、残る懸念

2008-06-09 23:18:46 | 国内警察
 クローズアップ2008:少年法改正へ 審判傍聴可能に 被害者尊重、残る懸念

 非公開で行われる少年審判について、殺人や傷害など被害者の生命にかかわる事件に限って被害者や遺族の傍聴を認める少年法改正案が3日に衆院本会議で可決され、今国会中に成立する見通しとなった。被害者の申し立てを受けた裁判官が、加害者側の弁護士の意見を参考に傍聴の可否を判断する。被害者の権利を尊重する流れに沿った改正だが、少年の更生や教育的側面を重視する立場からは懸念の声も上がる。【坂本高志、関谷俊介】

 ◇「処分に影響」、悩む裁判官
 「これまで(審判で)裁判官は『君も大変だったんだね』などとソフトな言葉で少年の内省を促してきたが、傍聴する被害者を意識せざるをえない。少年の立場に配慮した審理が難しくなる」。あるべテラン裁判官は、被害者の傍聴が少年の処分や審判のあり方そのものにも影響を与えかねないとの懸念を示す。

 少年審判は、殺人などの重大事件で家庭裁判所が「検察官関与」を決めたケースを除いて裁判官、家裁調査官と少年、付添人(弁護士)らで進められる。少年法は非行少年の健全育成や更生が目的で、刑罰を科すことを主眼とする刑事裁判とは異なる。審判についても「なごやかに行う」と定め、非公開のうえに被害者側の傍聴も認めていなかった。

 改正の背景には、04年12月に成立した犯罪被害者基本法を受けた被害者の権利拡充の流れがある。00年の改正少年法に関して定めた「5年の見直し期間」を経て、法務省内で行われた06年秋の意見交換会。犯罪被害者団体も参加した席では、「審判の傍聴ができなければ、被害者や遺族は事件の真相を知ることができない」との意見が相次いだ。

 こうした状況を受け、傍聴の是非を昨年11月に諮問された法相の諮問機関・法制審議会は約3カ月で、傍聴を認める答申を出した。反対は委員16人中3人にとどまった。

 しかし、反対の意見も根強い。日本弁護士連合会が4月に開いたシンポジウム。強盗傷害の非行事実で少年院へ送られた経験を持つ男子大学生(24)は「裁判官に『ここ(審判)は君を責めたりする場所ではない』と声をかけられ、素直になれた。自分の暗黒の部分を被害者の前で言うのは抵抗がある」と発言。大学教授や元家裁調査官らパネリストからも「被害者の『真相を知りたい』との要望には、審判終了後に家裁が丁寧に説明して応えるべきだ」などの意見が出た。

 少年法に詳しい前野育三・関西学院大名誉教授は「被害者の立場を改善しようという視点は重要だが、困難なかじ取りを現場に強いる改正だ」とみる。

 ◇非行に対する目厳しく--97年神戸事件きっかけ
 「少年審判は『犯罪が被害者の知らないところで闇に葬られてしまう』という印象を持っていた。傍聴が実現するのはうれしい」。大阪府寝屋川市で昨年10月、万引きした2人組の少年を追いかけて、19歳の少年に刺殺されたコンビニ店員、上内健司さん(当時27歳)の父親(57)は成立の動きを歓迎する。

 19歳の少年には無期懲役が言い渡されたが、もう一人の15歳の少年は家裁が中等少年院送致とした。今回の改正案が審議入りする直前の5月、鳩山邦夫法相と面会し、審判の傍聴などを求める約2万4500人分の署名も提出した。「(15歳の)彼の肉声はついに聞けなかった。遺族にとっては19歳も15歳も同じ」と悔しがる。

 被害者の多くの思いは、この父親の気持ちに近い。しかし、傍聴に異を唱える被害者もいる。17歳の少年が5人を死傷させた西鉄高速バス乗っ取り事件(00年)で重傷を負った主婦、山口由美子さん(58)だ。

 山口さんは事件から約5年後、医療少年院にいた少年と面会した。「事件直後の少年には『何が悪い』という思いしかない。それを審判でぶつけられても被害者は傷つくだけ。時間がたち、心から謝ってもらい、うれしかった。長い時間をかけて少年をサポートし、被害者にもその状況を知らせることが必要と感じた」と話す。

 06年に家裁が審理した事件のうち、殺人や傷害致死、強盗致死など傍聴対象となる事件は業務上過失致死事件(交通事故など)を除くと、50件程度だ。傍聴を希望しない被害者や傍聴に反対する付添人(弁護士)の存在を考慮すると、実際の運用は「年間10件前後ではないか」とみる法務省幹部もいる。

 少年法を巡っては、14歳の少年が起こした神戸連続児童殺傷事件(97年)をきっかけに改正が繰り返されてきた。最初の改正は00年。刑罰適用年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げ、重大事件の審判では検察官立ち会いも認めた。07年には、長崎県佐世保市での小6同級生殺害事件などを背景に少年院送致の年齢を「おおむね12歳」に引き下げ、14歳未満に対しては警察の強制調査権も与えた。

 一連の改正に、多くの識者は「非行に対する社会の目が厳しくなり、教育福祉的側面が後退している」とみる。

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 ◇少年法改正を巡る動きと事件◇
97年 6月 神戸市の連続児童殺傷事件で14歳少年を逮捕

00年11月 刑事罰対象者の16歳から14歳への引き下げ、審判での検察官の立ち会いや裁判官による被害者の意見聴取を認める改正法成立(約50年ぶりの改正)

04年 6月 長崎県佐世保市で11歳の小6女児が同級生の女児を殺害

   12月 犯罪被害者基本法成立

07年11月 14歳未満の少年が起こした事件で、警察に強制調査権を与える改正法施行

       法相が被害者らによる少年審判傍聴に関し、法制審議会に諮問(08年2月原案通り答申)

08年 5月 答申内容を盛り込んだ改正法案が審議入り

       衆院法務委員会で賛成多数で可決(30日)

    6月 改正少年法成立?

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 ◇衆院法務委で可決された改正案の概要◇
(1)殺人や傷害致死、業務上過失致死事件などの審判で被害者らの傍聴を認める

 ※被害者側の傍聴は12歳未満の事件では認めない

 ※12、13歳の事件では特段の配慮をする

 ※弁護士である付添人から意見聴取し傍聴の可否を判断

(2)被害者らに対し事件記録の閲覧や謄写を原則認める

(3)施行後3年をめどに法律の内容を検討する

(出所:毎日新聞 2008年6月3日 東京朝刊)
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少年法改定案-被害者が審判廷を傍聴して「更生」目的守れるか?-

2008-06-09 10:38:15 | 国内警察
少年法改定案
被害者が審判廷を傍聴
「更生」目的守れるか
仁比参院議員に聞く

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 与党と民主党は、殺人など重大犯罪に限り原則非公開の少年審判廷の傍聴を、被害者やその家族に認める少年法改定案(三日に衆院通過)を、今国会で成立させようとしています。法案に反対の日本共産党の仁比聡平参院議員(法務委員)に問題点を聞きました。(聞き手 佐久間亮)


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(写真)インタビューにこたえる仁比議員

 改定案は、これまで少年審判が果たしてきた役割を変質させる恐れが極めて強くあります。日本弁護士連合会などから強い懸念が出され、被害者団体でも意見は分かれており、国民的合意は得られていません。

 衆院では、修正案提出後わずか三時間の委員会質疑で通過させましたが、拙速な議論は許されません。

 少年法は加害少年の更生を目的としています。少年審判では、裁判官が対話を通して少年の内面に向き合い、少年院送致、保護観察などの処分を決めます。少年は、自らの非行や被害者の苦しみと本格的に向き合い、過去の生活や行動を見つめ直します。

委縮の可能性
 少年の内省は、少年院など保護処分の段階でも深化します。しかし、それが実りあるものになるかは、審判廷での少年に対する裁判官の向き合い方にかかっていることが多く、少年が委縮することなく参加できる環境の確保が不可欠です。そのため、少年審判は原則非公開とし、審判廷は裁判官が少年と近い距離で向き合うようになっているのです。

 被害者の同席によって、少年が委縮する可能性は否めません。そのことで必要な情報を得ることができなくなれば、少年の更生に向けた適切な処遇を困難にするという指摘もあります。

 影響は少年だけではありません。審判では、少年の保護者や学校の先生などからも話を聞きます。被害者を前にして、少年の更生に必要な言葉かけを委縮せずにできるかという懸念があります。

 審判廷は十畳ほどと非常に狭く、被害者の息遣いも聞こえるでしょうし、視野に入ることもあります。万一、被害者が感情的になった場合、不慮の出来事が起こらないかという心配もあります。

 審判は、殺人事件の場合、ある被害者団体の表現でいえば四十九日の前に開かれます。その段階で、被害者が少年法の理念を踏まえながら対応することは極めて難しく、逆に少年の不用意な発言で傷つけられる恐れさえあります。

 したがって、加害少年と被害者の関係のあり方は、少年司法手続きのなかでもっとよく検討する必要があります。

12歳の根拠は
 与党と民主党は、加害少年が十二歳未満の場合は傍聴を認めないとする修正案を共同提出しましたが、なぜ十二歳以上なら認めてもよいのか、科学的根拠は明らかでなく、懸念はなくなりません。

 二〇〇七年の少年法改定では、少年院送致の年齢が「十四歳以上」から「おおむね十二歳以上」に引き下げられました。民主党はこの改定を、引き下げの根拠が明確でないと批判していました。

 法案には、被害者が閲覧・謄写できる少年事件の記録範囲を、少年の生い立ちや家族構成といった身上・経歴まで広げる問題もあります。

 これまでも、本来流出してはならない調書や少年の内面にかかわる情報が、マスコミで大きく報じられることがありました。今回、閲覧・謄写の範囲が広がれば、さらに少年のプライバシーを損ない、更生に悪影響を及ぼす事態が起こる懸念がぬぐえません。

 少年法は二〇〇〇年以降、毎国会のように改定が強行されてきましたが、その運用と効果については十分に検討されていません。今国会で改定案を強行することで、いっそう少年司法手続きをめぐる対立を深刻化させることがあってはなりません。

(出所:日本共産党HP 2008年6月8日(日)「しんぶん赤旗」)
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卑劣な捜査手法改めよ-代用監獄を廃止/取り調べの全過程の「可視化」/守れ言論・表現の自由-

2008-04-09 18:53:41 | 国内警察
卑劣な捜査手法改めよ
仁比氏 冤罪「引野口事件」で追及
参院法務委

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 日本共産党の仁比聡平議員は八日の参院法務委員会で、二〇〇四年三月、実兄殺害と放火容疑で北九州市の片岸みつ子さんが逮捕された冤罪(えんざい)事件「引野口事件」を取り上げ、卑劣な捜査手法の問題を明らかにしました。

 福岡地裁小倉支部の三月五日の無罪判決は、「捜査機関は、同房者を通じて捜査情報を得る目的で、意図的に同房状態にした」と、代用監獄にスパイ目的に女性を送り込んだことを認めました。

 さらに「本来取り調べと区別されるべき房内での身柄勾留(こうりゅう)が犯罪捜査のために濫用(らんよう)された」とし、福岡県警の捜査手法を「虚偽自白を誘発しかねない不当な方法」と批判しています。

 仁比氏は、片岸さんが「夫まで共犯者扱いされ厳しい取り調べのあと自殺に追い込まれ、長男は私の無実をはらすため仕事を失った。家族の時間を返してほしい」と述べたことを紹介。「代用監獄での身柄拘束を濫用し、『犯行告白』をねつ造するような卑劣な捜査手法が、家族の人生を台無しにしている」と指摘し、代用監獄を廃止するよう迫りました。

 鳩山邦夫法相は、「ご家族の人生まで破壊されてしまうことが十二分にあり得る。そういうことが二度とないように厳しく指導したい」と答えました。

(出所:日本共産党HP 2008年4月9日(水)「しんぶん赤旗」)

鹿児島・志布志事件でシンポ
“取り調べで権利侵害”
全面可視化求める

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 日本弁護士連合会第十回国選弁護プレシンポジウム「志布志事件~国賠判決を受けて、捜査の適正化を考える~」が五日、鹿児島市内で開かれました。二〇〇三年の鹿児島県議選をめぐる公選法無罪事件(志布志事件)を通じて、取り調べの全過程の「可視化」など捜査の適正化を求め開かれたもの。主催は鹿児島県弁護士会。

 ジャーナリストの鳥越俊太郎氏が基調講演しました。北海道警の裏金問題などを引き合いに、「警察の腐った部分が典型的にでてきたのが志布志事件だ」と指摘。おどしやすかし、ない事実をあるものにするという「冤罪(えんざい)の手本」「集大成だ」と厳しく批判しました。

 シンポジウムでは事件に関し、被疑者と弁護人が立会人なしに接見できる権利・秘密交通権が「どのように侵害されたか」をテーマにパネルディスカッションが行われました。捜査の適正化をめぐって鳥越氏や弁護士、学者ら五人が活発な議論を交わしました。

 シンポジウムに先立って志布志事件の被害者ら十一人が記者会見を開きました。自白段階での録画を導入するなど捜査機関が一部「可視化」を掲げたことについて、「無意味だ」と強く非難しました。

 藤山忠・国賠原告団長は「警察の都合のよいところだけ録音・録画するのであれば、裁判員がえん罪の片棒をかつぐ可能性がある」と語りました。「踏み字」事件被害者の川畑幸夫さんは一部「可視化」が、かえって無実の人を犯人に仕立て上げるおそれがあると警鐘を鳴らしました。

(出所:日本共産党HP 2008年4月6日(日)「しんぶん赤旗」)

言論弾圧考える
7日に市民集会
ビラ配布などで逮捕 6事件弁護団が共催

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 ビラ配布などの言論活動が犯罪として逮捕・起訴される事件の問題点を考える「これってホントに犯罪? 守れ言論、活(い)かそう憲法! 4・7市民集会」が七日、東京・霞が関の弁護士会館で開かれます。

 僧りょの荒川庸生さんが日本共産党の都議会報告などを配り逮捕・起訴された「葛飾ビラ配布弾圧事件」や、市民団体メンバーが自衛隊官舎に反戦ビラを配り起訴された「立川ビラ弾圧事件」など、六つの事件の弁護団が共催します。

 集会ではジャーナリストの大谷昭宏さんと、東京慈恵会医科大学の小澤隆一教授(憲法学)が対談。各事件の弁護団からの報告もあります。

 一審で無罪、二審で有罪とされた立川事件は、今月十一日に最高裁判決を迎えます。同じく住居侵入罪に問われている葛飾事件も、一審無罪、二審有罪という経緯をたどっています。

 弁護団は「言論・表現の自由が行使できないと民主主義社会は成り立たない。市民の声で事態を変えていきたい」としています。

 午後六時から、資料代五百円。予約不要。問い合わせは自由法曹団03(3814)3971。

(出所:日本共産党HP 2008年4月4日(金)「しんぶん赤旗」)

ビラ配布なぜ犯罪
守れ言論・表現の自由
6事件弁護団が集会

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 ビラ配布などの表現行為が刑事事件として立件されている問題を考える「これってホントに犯罪? 守れ言論 活かそう憲法4・7市民集会」が七日、東京・霞が関で開かれ、会場定員の二百五十人を超える人が参加しました。ジャーナリストの大谷昭宏さんと東京慈恵会医科大学の小沢隆一教授(憲法学)が対談。「ビラを配っただけの人を罰していいのか、という世論をつくりだすことが必要だ」などと語りました。

 僧侶の荒川庸生さんが逮捕・起訴された「葛飾ビラ配布弾圧事件」や、市民団体メンバーが自衛隊宿舎に反戦ビラを配り起訴された「立川ビラ弾圧事件」など、言論・表現の自由にかかわる六つの事件の弁護団の共催。立川事件の最高裁判決を間近(今月十一日)に控えた開催となりました。

 ともに一審無罪・二審有罪となった立川・葛飾両事件の弁護団が、それぞれの経過を報告しました。

 対談では、大谷氏が「(弾圧事件が相次いだことで)さまざまなかたちで『モノを言うな』という流れができかかっている。狙いは明らかに言論の委縮効果だ」と発言。小沢氏は立川、葛飾両事件について「両事件とも一審判決に比べ、二審判決では粗雑で露骨な処罰意識が前面にでている。(六つの事件は)国民主権や地方自治という原則に対する攻撃だと思う」と語りました。

 その後、六事件の被告本人や弁護団が決意などを表明。二審判決確定の公算が大きい立川事件に関する抗議声明と、葛飾事件の無罪判決を求める声明を採択しました。


 六事件は葛飾、立川両事件のほか、国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件、大分・選挙弾圧大石市議事件、都立板橋高校卒業式事件です。

(出所:日本共産党HP 2008年4月8日(火)「しんぶん赤旗」)
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冤罪「取調べ指針」-反省も自浄も欠く警察組織-

2008-01-29 21:18:48 | 国内警察
論点 焦点
冤罪「取調べ指針」
反省も自浄も欠く警察組織

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 「我が国の刑事手続において、被疑者の取調べは、事案の真相解明に極めて重要な役割を果たしていることは、論を俟(ま)たないところである」―警察庁が二十四日まとめた「警察捜査における取調べ適正化指針」は、こんな挑戦的な文言ではじまっています。

人権無き密室捜査
 鹿児島県議会選挙をめぐり公職選挙法違反で起訴された十二人の被告全員が無罪になった志布志事件、女性暴行で服役後に真犯人があらわれ再審で無罪が確定した富山氷見事件と重大な冤罪(えんざい)事件が相次ぎ、警察の違法捜査の実態に厳しい批判が集中するなかで発表された「自己批判」の文書です。それが、従来の捜査手法の基本に誤りは無く、一部に行き過ぎや逸脱があっただけだという基本認識に立つのですから、警察組織の無反省と自浄能力の欠如はここにきわまっています。

 冤罪は、刑事事件の捜査段階での警察や検察の取り調べで、被疑者が意に反して虚偽の「自白」を強要されることで起こります。外部との連絡がとれない密室で、肉体的にも精神的にも責めさいなむ取り調べが横行し、無実の人に取り返しのつかない苦しみを与える冤罪を繰り返していることに、捜査機関は本格的な自己点検を迫られているのです。

 直接捜査にあたる警察の立場でそのあり方を見直した「指針」は、警察官が取り調べでやってはならない行為(不適正行為につながる恐れのある行為)を七項目にわたり規定しました。

 ▽被疑者の身体への接触▽直接・間接の有形力の行使▽一定の動作・姿勢の強要▽ことさら不安、困惑を招く言動▽便宜供与の約束▽被疑者の尊厳を著しく害する言動―などを禁じるという規定は、あまりにも当たり前の中身です。ところが、これまで警察組織には、こうした取り調べについての明示的なルールは何もなかったのです。

 裏を返せば、こうした規定をあらためて設けなければならないほどに、被疑者の人権を蹂躙(じゅうりん)する威圧、脅迫、利益誘導など違法・不当な取り調べが蔓延(まんえん)しているということです。

 志布志事件では、親族からのメッセージに見立てた文字を記した紙を床に置き、いやがる被疑者の足首をつかんで無理やり踏ませた「踏み字」で自白を強要した元捜査員が、特別公務員暴行陵虐罪で起訴されました。この元捜査員は裁判で「踏み字」が被疑者にたいする侮辱だとは「思わない」と臆面(おくめん)も無く証言しています。

 志布志で起きたのは、警察内部の隠語で「たたき割り」と呼ばれる強引な捜査手法でした。風評や情報をもとにした見込み捜査で、被疑者のアリバイも、物的証拠も無視し、犯罪者と決めつけて、警察の描いた筋書きにそった自白を強要するやり方です。

 筋書きにそった自白をとった捜査員が優秀だと評価され、そうでなければ「ダメなやつだ」と捜査から外されるという元刑事の証言も報じられています。「事案の真相解明」どころか、警察が事件をつくり、自白をでっちあげるという体質的な問題点があらわになっています。

 戦後の日本では、免田、財田川、松山、島田の四つの死刑確定事件が一九八〇年代に相次いで再審無罪となりました。いずれも脅迫や拷問、利益誘導で、やってもいない殺人の自白を強要された事件です。しかし、密室の取り調べと自白の強要は遠い過去の解決済みの問題ではなく、今日も全国で繰り返されている事実を、取り調べにあたる警察はまず直視すべきです。

「可視化」実現こそ
 警察・検察の違法・不当な自白強要の抑止策として期待されているのが「取り調べの可視化」です。取り調べの一部始終をビデオ撮影やテープ録音し、後で検証することができるようにすることです。

 国連の国際人権(自由権)規約委員会が日本に導入を勧告するなど、「可視化」は国際水準からみても当然の流れですが、検察、警察はかたくなに拒んでいます。日本共産党は、国民のための司法・警察制度改革の課題としてその実現を強く求めています。

 「可視化」の実現を求める世論の強まりを意識して、「指針」は、不適正な取り調べが行われていないかを監督する新制度を設けることを打ち出しました。しかし、警察本部ごとに捜査部門とは別に監督担当者を置くというだけのことで、いわば身内のチェックを制度化するにすぎません。

 捜査の「適正化」を真剣に考えるなら、警察はこんな制度でお茶をにごそうとするのではなく、「可視化」の実現にこそすすむべきです。(論説委員会・竹腰将弘)

(出所:日本共産党HP 2008年1月29日(火)「しんぶん赤旗」)
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外国人指紋採取:「拒否者には強制力行使も」…法務省通知

2007-11-27 01:45:20 | 国内警察
クローズアップ2007:来日外国人、指紋採取開始 不法入国摘発に効果
 
 ◇改正入管法

 06年5月に成立し、16歳未満や、戦前から日本に暮らす在日コリアンら特別永住者、外交官らを除く全外国人に入国、再入国の際の生体情報(指紋と顔写真)の提供を義務付ける。生体情報は法務省で管理され、犯罪捜査にも利用される。法相がテロリストと認定した者への強制退去規定もある。英国は日米より対象が狭く、査証申請時に指紋を採取する。

 全国の空港と港で20日、来日する外国人から指紋・顔写真の提供を義務付ける新しい入国審査が始まる。9・11テロを受けた米国に次いで2番目の導入となるが、99年に全廃された「指紋押なつ制度」の復活ともいえる内容だ。治安のため不可欠とされる一方、究極の個人情報が管理されることへの抵抗感も小さくない。外国人ビジネスマンが日本を敬遠する恐れも指摘されている。

 ◇「犯罪者扱い」批判も

 今年3月、他人名義の旅券で入国したとして、成田空港で中国人の20代の女が逮捕された。入管職員は、左右5本ずつの指の皮膚が切られているのをみて驚いたという。女は05年に不法残留容疑で強制退去されており、その際に指紋を採取されている。調べに対し「指紋でばれないようにした」などと供述した。

 06年の統計では、強制退去者約5万6400人のうち、約13%が前にも強制退去させられていた。ある入管幹部は「生体情報の提供が義務となれば、他人になりすますのは不可能。全指を判読不能にしても、逆に摘発のきっかけになる」と自信をみせる。

 下半期で約36億円の予算をかけ、携帯用も含め約540台の装置を配備してスタートするシステムは、採取した生体情報と約1万4000件の国際指名手配情報、約80万人の退去強制者の資料(要注意リスト)を照合させる。国会答弁などでは、目的の「主」はテロ対策。来年7月の北海道洞爺湖サミットを控える政府関係者は「テロリストにとって大きな抑止力になる」という。だが、実際には「従」の不法入国対策の方が、目に見えて効果が出るとみられる。

 入管には今後、年間約600万~700万人の情報がコンピューター上に蓄積されていくとみられるが、これは犯罪捜査にも使える。ある警察庁幹部は「日本で事件を起こしては帰国する外国人犯罪グループを水際で摘発することが可能になる」と歓迎している。

 一方で批判も強い。

 「外国人向けと高をくくっていると、日本人にもツケが回ってくる」。10月27日、制度に反対する複数の市民団体が主催したシンポジウムで「米自由人権協会」幹部、バリー・スタインハード氏は約150人を前にこう語った。指紋押なつ制度全廃以来、身柄拘束など刑事手続き以外では指紋提供の義務付けはなかった。犯罪者同様の扱いへの抵抗感に加え、生体情報がどう使われるのかが見えにくいのも問題点だ。

 また、国内に住む外国人がいったん出国し、再入国しても指紋を採られる。トルコの迫害から逃れてきたというクルド人の男性(29)はかつて入国の際、入管に収容され指紋を採取された。「このシステムは外国人全体を犯罪者とみている証しだ」と訴える。

 さらに、テロ対策といっても「穴」がないわけではない。例えば、旅客機の乗員からは生体情報を全員採取するが、船員は入管の人員不足もあって「可能な範囲で採る」ことになっている。ある法務省関係者は「元々テロ対策として万全ではない。第一、照合する要注意リストにどれだけのテロリスト情報があるというのか。『広く指紋を集める』ことが目的化する危険性も否定できない」と疑問視する。【坂本高志】

 ◇「情報漏れ危機」、会計検査院が警告--4年先行のアメリカ

 米国では日本よりも4年弱早く、04年1月に同様の制度「US-VISIT」が始まった。米国に潜入した外国人が実行犯だった01年9月11日の米同時多発テロを教訓に、好ましくない人物の入国防止体制を強化する一方、観光・商用客や留学生の訪問を促進するのが目的だ。

 14~79歳の外国人を対象に査証申請時や入国時、指紋採取と顔写真の撮影をするほか、航空会社を通じて入手した乗客の情報を犯罪容疑者などのデータベースと照合。当局は既に約8500万人分の情報を収集し、米国土安全保障省のロバート・モクニー担当部長は「査証偽造が阻止できるようになった。約2000人の入国を拒否した」と説明する。国土安全保障省によると、生体情報の採取は現在285カ所の空港、港、陸上の入管施設で実施され、情報は連邦捜査局(FBI)や外国政府による犯罪捜査にも使われる。情報は厳重に警備された場所2カ所に保管され、「プライバシーの保護には万全の体制を敷いている」(モクニー氏)という。

 だが、米会計検査院は「情報の保護体制が不十分で流出や悪用の危険性がある」と警告。9月には米司法省監察官が報告書で、入国審査の「監視リスト」について「検査した38%に不正確、不完全または矛盾したり未更新の情報があった」と指摘した。【ワシントン和田浩明】

 ◇入国審査待ち時間増加、ビジネスへ悪影響懸念

 「新制度の導入で入国審査の待ち時間が増えるのではないか」と気をもんでいるのが、約10万人と言われる日本駐在の外国人ビジネスマンだ。再入国許可を得ていれば、これまでは空港の入国審査で日本人と同じ列に並んで再入国できたが、今後は初来日の外国人と同様に指紋採取と写真撮影が義務付けられる。

 在日米国商工会議所は「成田空港の待ち時間は国際金融センターとしての東京の競争力をそいでいる」などとして、入国審査を10分以内で済ませるよう日本政府に要望書を提出。また、日本進出欧州企業を支援する「欧州ビジネス協議会」の政策担当者ヤコブ・エドバーグ氏によると、欧州の経営者からは「香港なら都心に近いうえ、入国カード1枚で入れる」など、日本から近隣諸国への「外国人ビジネスマン流出」に警鐘を鳴らす意見も出始めているという。

 成田空港では、ピーク時には全ブースに入国審査官を配置するほか、再入国外国人専用の列を設けるなど、外国人ビジネスマンらに便宜を図る。【吉富裕倫】

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 ■ことば

 ◇改正入管法

 06年5月に成立し、16歳未満や、戦前から日本に暮らす在日コリアンら特別永住者、外交官らを除く全外国人に入国、再入国の際の生体情報(指紋と顔写真)の提供を義務付ける。生体情報は法務省で管理され、犯罪捜査にも利用される。法相がテロリストと認定した者への強制退去規定もある。英国は日米より対象が狭く、査証申請時に指紋を採取する。

(出所:毎日新聞 2007年11月20日 東京朝刊)

 外国人指紋採取:「拒否者には強制力行使も」…法務省通知
 
テロ対策などのため、20日始まった来日外国人に指紋提供を義務付ける入国審査制度で、法務省入国管理局が、指紋提供と退去を拒否する外国人は収容し強制的に採取するよう地方の各入国管理局に通知していたことが分かった。同制度について、法務省は強制的に指紋採取はしないとして「提供」と説明してきたが、拒否者に対して強制力で臨む措置を指示した形だ。「外国人を犯罪者扱いする運用」との批判が強まりそうだ。

 指紋の採取や顔写真の撮影は、空港、港での入国審査時に実施し、その場で入管が保有する過去の強制退去者、国際指名手配犯などのリストと照合。一致した者は入国拒否され、提供拒否も国外退去となる。退去命令にも従わない場合、入管は強制退去手続きに移行し、身柄を空港内の収容場に収容する。その際に指紋を採るかどうかは明らかにされてなかった。

 ところが、今月上旬に出た法務省入管局警備課長通知は「保安上の必要がある時は身体検査できる」などの入管法の規定を根拠に、入国警備官に強制力をもって拒否者から指紋を採取するよう指示。同時にビデオ撮影することも求めている。

 その後、拒否者は運航業者に引き渡し、強制退去させる流れとなるが、永住者や日本人の配偶者がいるなど国内で生活する人は「戻る国」がなく、対応が問題になりそうだ。入管局幹部は「拒否者にも十分に説得を重ね、強制しなくてもすむよう努める」と話す。

 入管法に詳しい関係者によると、不法残留容疑などで外国人の違反調査を行い、指紋を採るのは任意が原則で、強制採取はほとんどないという。関係者は「拒否者は入国できない以上、危険が国内に持ち込まれることはない。さらに指紋を強制的に採取し強制退去者リストに保存する正当性はあるのか」と批判する。

 外国人の人権問題に詳しい田中宏・龍谷大教授は「全廃された外国人登録の際の指紋押なつ拒否についても、刑事罰のうえに再入国不許可という過剰な制裁を加えていた。今回の通知内容も法的根拠に乏しく、同様の発想による過剰制裁だ」と話している。

(出所:毎日新聞 2007年11月21日 2時30分 (最終更新時間 11月21日 9時55分)

 来日外国人指紋採取:23空港5港でスタート 退去者ゼロ

新しい入国審査が始まり、指紋と顔写真を取られる外国人入国者=成田空港第2ビル上陸審査場で2007年11月20日午前9時、丸山博撮影 16歳未満や特別永住者らを除く来日外国人から指紋・顔写真採取を義務付ける新しい入国審査制度が20日、全国の空港と海港で始まった。テロや不法入国防止が目的だが、外国人の人権制約に対し反発も予想される。入国時に一律に指紋を採取するのは04年に米国が導入して以来、世界で2番目となる。

 指紋などの生体情報の採取を柱とする改正入管法は昨年5月、成立。法相がテロリストと認定した者の強制退去規定もある。電磁的に採取した両人さし指の指紋などは、その場で指名手配者の情報(約1万4000件)や過去の強制退去者の指紋(約80万件)の「要注意リスト」と照合する。

 また、生体情報は法務省入国管理局がコンピューターで管理し、捜査当局からの照会があれば犯罪捜査にも利用される。政府は例年の入国者数から、毎年600万~700万人分の情報が蓄積されるとみている。日本弁護士連合会や外国人団体などは指紋採取に反対し「採取したとしても照合を完了した時点で消去すべきだ」と主張している。

 この日、航空機や船舶が入ってくるのは23の空港と5海港。入管職員は審査で行列を作る外国人たちに新制度への理解と協力を呼びかけた。午前9時現在、採取を拒否し国外退去を命じられた外国人や要注意リストと一致したのはゼロ人。また、日本人が指紋を登録すれば、迅速に成田空港から出入国できる「自動化ゲート」の受け付けも始まった。【坂本高志】

 ◇「仕方ない」「なぜ」…1時間半かかった人も

 航空旅客の6割近くを占める成田空港にはこの日、午前6時過ぎに最初の便が到着。各国からの観光客やビジネスマンらが審査ブースに降り立ち、指紋の採取や顔写真の撮影に応じた。

 パキスタンのアハマド・シャキルさん(43)は「日本では初めての試みなので、審査する側も不慣れなのでしょう。少し時間がかかっても安全のためなら仕方ない」と理解を示した。一方、カナダのルーシー・キャッセさん(61)は「治安のためかもしれないが、指紋を採られると人権の問題も感じる。早く入国したいのに待つのにうんざりした」と顔をしかめた。

 指紋と顔写真を電磁的に読み取る装置は、全国の空港や海港に携帯用も含めて約540台を配備。六つの国・地域の文字で使用法を説明している。採取から要注意リストとの照合まで通常、30秒~1分程度で完了し、全体の審査終了まで最長待ち時間を20分以内にするのが政府目標だ。

 それでも、指紋の読み取りがスムーズにいかずに入力操作を何度も繰り返す入国者も少なくなかった。朝の混雑する時間帯には長い列もでき、いらだつ人も。シンガポールから到着したオーストラリアのポール・ヌンテンさん(42)は機械の調子が悪く別の列に移ったため入国審査が終わったのが1時間半後。「こんなのばかげている」と疲れた表情。同様の審査制度を導入している米国のジュリー・ブームさん(30)は「両手の人さし指を機械に置くだけで簡単。全然気にならない」と話した。

 ◇在日韓国人ら法務省前でデモ

 一方、東京・霞が関の法務省前では、制度に反対する市民団体や外国人ら約60人が「外国人はテロリストじゃない!」、「指紋押なつにNO」などのプラカードを掲げ、デモを行った。在日韓国人の青年はマイクで「長い年月をかけて指紋押なつ制度を全廃した歴史を忘れ、再び外国人を差別するのは許されない」と訴えた。【坂本高志、鈴木梢】

(出所:毎日新聞 2007年11月20日 12時08分 (最終更新時間 11月20日)

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取り調べの可視化-えん罪生まぬ司法への第一歩-

2007-11-02 07:45:29 | 国内警察
主張
取り調べの可視化
えん罪生まぬ司法への第一歩

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 日本の司法制度改革をめぐり、「取り調べの可視化」実現を求める声が高まっています。

 刑事事件の捜査段階で警察や検察が被疑者に対して行う取り調べの一部始終をビデオ録画やテープ録音し、後で検証できるようにすることです。無実の人に取り返しのつかない苦しみを与える冤罪(えんざい)事件は、威圧や脅迫、利益誘導などで、被疑者が自白を強要されたことから起きています。可視化は、こうした違法・不当な取り調べを抑止し、冤罪を防ぐためです。

国際水準へ当然の流れ
 鹿児島県議会選挙をめぐり公職選挙法違反で起訴された十二人の被告全員が無罪になった志布志事件、女性暴行で服役後に真犯人があらわれ再審で無罪が確定した富山氷見事件と、重大な冤罪事件が相次ぎました。確定判決が「自白の成立過程で、追及的・強圧的な取調べがあった」(志布志事件)と述べる通り、外部との連絡をとれない密室で、長時間にわたり、肉体的にも精神的にも責めさいなむ取り調べが行われ、被疑者が意に反して虚偽の「自白」をさせられたことが明らかになっています。

 日本の刑事裁判では、取り調べで作成された自白調書に過度に依存する「自白偏重」がしばしば問題にされます。自白を強要された被疑者が、裁判で「強要」を主張し、自白を否定しても、客観的に証明するのはきわめて困難で、それが誤判の原因になっています。可視化は、その検証を可能にし、無法な取り調べを抑止する効果もあります。自白の任意性・信用性の認定に長い時間がかかっているいまの裁判を迅速化するうえでも大きな意味があります。

 日本共産党は、国民のための司法・警察制度改革の課題として、捜査機関の取り調べの全過程を可視化するよう求めてきました。

 国会では、仁比聡平参院議員が、欧米やアジアの多くの国で可視化が導入され、国連の国際人権(自由権)規約委員会が日本にたいして導入を勧告している事実をあげ、「国際水準は可視化が当然の流れ。なぜ抵抗するのか」と政府を追及しました(三月、法務委員会)。吉井英勝衆院議員も「密室で自白を強要する違法な捜査方法をなくし、可視化を速やかに実現すべきだ」と要求しました。(十月二十六日、内閣委員会)

 これに頑強に抵抗しているのは警察です。国会答弁では▽被疑者と捜査員の信頼関係が崩れる▽暴力団員などが組織の報復を恐れ供述しなくなる▽第三者のプライバシーが侵害される―という「理由」をあげていますが、いずれも運用面の工夫で解決することです。これでは、警察は違法な捜査手段を手放したくないのだと判断せざるをえません。

 鳩山邦夫法相は検察幹部を集めた最近の会合で「冤罪事件はあってはいけない。冤罪は限りなくゼロ、できればゼロにしなければならない」と訓示しました。しかし、冤罪を生む構造的な問題に手をつけず、捜査担当者の心構えをいくら説いても意味がありません。可視化の実現は冤罪を生まぬ司法への第一歩です。

裁判員制度を前に
 二〇〇九年には裁判員制度がはじまります。冤罪を生まない、国民が参加しやすい制度とするためには、明瞭(めいりょう)な証拠提出が必要です。可視化の実現はそのためにも不可欠です。

 冤罪は被害者の人生を台無しにします。強引な取り調べで泣かされている無実の人々が少なくない現実を見据え、人権を守る法制度への改正を急ぐべきです。

(出所:日本共産党HP 2007年11月1日(木)「しんぶん赤旗」)
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信号無視で逮捕は違法、警察対応を批判 東京地裁判決

2007-10-18 04:26:30 | 国内警察
 信号無視で逮捕は違法、警察対応を批判 東京地裁判決

 交通取り締まり中の警視庁警察官に信号無視の疑いで現行犯逮捕された男性(66)が慰謝料1万円を求めた訴訟で、東京地裁は16日、全額を支払うよう都に命じる判決を言い渡した。都側は「信号無視は軽微な違反ではなく逮捕の必要があった」と主張していたが、綿引穣裁判長は「必要がないのに逮捕しており違法」と判断した。

 男性は06年1月、品川区の路上で車を運転中に信号無視の疑いで現行犯逮捕され、その日に釈放された。訴訟では、信号無視を認めず運転免許証を見せるのも拒んだ男性に、逮捕に必要な「逃亡のおそれ」などがあったかが争点となった。

 判決は、免許の提示について「そもそも酒気帯び運転など道路交通法で提示を義務づけている違反を警察官が疑った形跡はなく、提示しないことを直ちに逃亡のおそれがあるとみることは許されない」と指摘。現場での警察官と男性との位置関係から「ふいをついて逃亡を図ると考えるのは非現実的だ」と判断した。

 その上で、憲法が保障する「人身の自由」を強調。「交通違反は比較的軽微な罪であるうえ、反則行為にすぎない今回のような場合に無制限に現行犯逮捕を行えるとすると、容疑者に無用で過酷な負担を科すことになりかねない」と警察の対応を批判した。

 原告側代理人によると、男性は「金額で争いたくない」として請求額を1万円にしたという

(出所:朝日新聞 2007年10月17日06時01分)
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「ぐ犯調査」規定削除を-国家公安委員長に 少年警察規則「改正」で要求-

2007-10-12 05:01:09 | 国内警察
「ぐ犯調査」規定削除を
国家公安委員長に 少年警察規則「改正」で要求
党国会議員団

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 日本共産党国会議員団は十日、泉信也国家公安委員長に対し、少年警察活動規則「改正」案について「ぐ犯調査」規定の削除などを求めました。石井郁子衆院議員、仁比聡平、井上哲士両参院議員が行いました。

 同「改正」案は、「改正」少年法の十一月施行に伴うもの。

 少年法「改正」の国会審議では、「ぐ犯(将来罪を犯すおそれのある)少年である疑いのある者」に対し警察の調査権限を付与する条項が削除されました。しかし、警察庁が発表した規則「改正」案は、「ぐ犯調査」を新設し、警察官が「罪を犯すおそれがある」と判断すれば調査を実施可能にしようとしています。

 議員団は「ぐ犯調査」の規定削除とともに、「改正」少年法が、触法少年(法に触れる行いをした十四歳未満の少年)の弁護士付添人選任権を定めたことを踏まえ、規則「改正」案の「触法調査」の規定に、少年にたいし弁護士付添人選任権を告知することや、「意に反して供述を強制されることはない」と告知するよう定めることなどを求めました。

 仁比議員は、「『ぐ犯少年』の条項については、与党から修正が出されて削除された。今度の規則『改正』案はそこで懸念された内容が書かれている」と指摘し、国家公安委員会で慎重に審議するよう求めました。

 泉公安委員長は「日弁連をはじめたくさんの意見をいただいている。それらをしっかり受けとめて、最終的な案をつくりたい」とのべました。

(出所:日本共産党HP 2007年10月11日(木)「しんぶん赤旗」 )
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