未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

ニッポン密着:東京・秋葉原殺傷 加藤容疑者の軌跡 流転、そして暴発

2008-06-18 05:12:31 | 国内社会
 ニッポン密着:東京・秋葉原殺傷 加藤容疑者の軌跡 流転、そして暴発

 午前5時半過ぎ、バスが市内を回って男たちを拾う。国道を北上する間、晴れていれば朝日に輝く富士が左手に見え隠れする。だが、外を眺める者はいない。

 6時過ぎ、静岡県裾野市の関東自動車工業東富士工場に着く。トヨタ自動車の子会社。6時半、始業の合図で派遣社員の一日が始まる。東京・秋葉原の17人殺傷事件の加藤智大(ともひろ)容疑者(25)は、塗装の汚れを肉眼で調べる工程を担当していた。

 わずかなほこりの付着も許されない。10分間のトイレ休憩と45分間の食事を除き8時間立ち詰めで、数時間の残業もざら。汚れを見逃せば工程長が飛んでくる。下手をすれば始末書を書かされる。

 「塗装面をにらんでいると、すぐに目が痛くなる。初日で辞める者もいるが、やつはまじめだった」。一緒に働いた20代の派遣社員が言う。「トヨタの期間工(契約工員)になりたいと言っていた」。応募したが、不採用。

 はかない夢だった。

 5月半ばリストラのうわさが流れた。同22日、工場の空調が壊れ、ふだん物静かな加藤容疑者が「暑い」とイライラを爆発させた。

 今月3日、派遣社員200人を50人に減らすと伝えられた。米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)や原油高の影響で工場は生産を15~20%縮小する。「月末で辞めてもらう」。150人がそのひと言で収入を断たれることになった。

 何かが決壊した。5日の出社後に暴れ、姿を消した。

  □    □

 青森市の名門、県立青森高校(青高(せいこう))を卒業して、流転の人生が始まった。

 人口8500人の岐阜県坂祝(さかほぎ)町。入学した中日本自動車短大の周囲は里山と田畑が広がる。夜になるとカエルが鳴き、街の灯が遠くに見えた。イタリアの国立フェラーリ工業専門学校と提携し、整備士を目指す若者が集まっていた。

 加藤容疑者は併設の学生寮に入った。周辺にはコンビニと、中華料理店が1軒。50代の女主人が記憶の糸をたぐる。「そういえば夜たまに一人で来て、漫画を読んでいた。短大の学生はお得意さんでよく覚えてるけど、印象薄いわ」

 短大を出て、派遣社員として各地を転々とする。埼玉と茨城では派遣会社の借り上げ社宅で暮らした。

 埼玉の社宅を見せてもらった。3DKのマンションに3人で住む。6畳間3部屋を1部屋ずつ使い、キッチン、風呂、トイレは共用。だが、キッチンの流しに食器はなく、生活臭がまるでない。誰もが6畳間にこもり、音漏れに細心の注意を払うせいか、部屋全体が静まり返っている。

 茨城の社宅では、疲れきって帰宅した40代の派遣社員がこぼした。「事件で派遣に偏見を持たれたら迷惑だ。正社員になれず、仕方なくやっている。頑張ってはい上がろうという人も大勢いる」

  □    □

 強風の日には波しぶきが吹き込む。津軽半島の海沿いに、加藤容疑者の母親(53)の実家はあった。才媛(さいえん)とうたわれて青高へ進む。「地元の弘前大に行くくらいなら……」と県外の国立大を受けたが、かなわず、金融機関に就職した。

 父親(49)は青森市に育ち、県立高から同じ金融機関へ。2人は間もなく結ばれ、男児2人をもうけた。加藤容疑者は長男だ。

 父親は努力を重ね、学歴のハンディをはね返し、各支店の営業を統括する役職に上り詰めた。教育熱心な母親は、祖父母に「教育には口を出さないで」とくぎを刺した。「子供は必ず大学へやる」。高卒の夫婦は厳しい態度でわが子に臨んだ。

 幼いころ、しかられて家から閉め出され、弟の手を引き祖父母の家まで歩いた。近所の人は「そこまでしなくても」と胸を痛めた。

 期待通り青高に合格し、母親は実家に喜びの電話を入れた。

 高校1年の夏。「成績が振るわない」。母親は沈んだ顔で親類に打ち明けている。夫婦仲は冷え、父親は酒に逃げ、自宅の垣根のそばに寝転がって夜を明かすこともあった。

 両親は10日、報道陣の前に姿を見せ、母親は地面に崩れた。親族が電話すると、母親は「亡くなられた方に償いきれない」と泣いた。

 よりどころとなるべき家は壊れ、派遣社員としてどこにも根を張れずに流れていく。浮草が最後にたどり着いたのは、虚実入り乱れる「アキバ」だった。【まとめ・井上英介】(毎週日曜日掲載の「ニッポン密着」は、紙面の都合で本日掲載しました)

(出所:毎日新聞 2008年6月17日 東京朝刊)

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連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚・刑執行 増殖する時代の病=毎日新聞・社会部長・小川一

2008-06-18 05:10:40 | 国内政治
 連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚・刑執行 増殖する時代の病=社会部長・小川一

 宮崎勤死刑囚は、26歳の時に警視庁に逮捕された。秋葉原17人殺傷事件の加藤智大容疑者は25歳。死刑執行の一報を聞いた時、20年近い歳月をはさんだ同世代の2人が重なり合って見えた。

 私は当時、警視庁担当の記者として宮崎死刑囚の事件を追っていた。アニメやホラーなどの膨大な数のビデオが積まれた部屋。その中で行われた殺害幼女のビデオ撮影。「今田勇子」を名乗って被害者宅に犯行声明を郵送、遺骨も届ける異様な行為。仮想空間と現実の境が消えたとしか思えない驚異の犯罪の出現に、誇張ではなく体が震えた。

 ほどなくインターネットが登場し、ネット社会という無限の仮想空間が新たに出来上がる。宮崎死刑囚が社会に見せつけた時代の病は、さらに増殖を続けている。現実と仮想の境が見えず、現実感覚を失った事件がいま、不幸にも各地で続発している。

 秋葉原殺傷事件の加藤容疑者は携帯サイトにひとり書き込みを続けていた。その姿と自室でビデオ鑑賞にふける宮崎死刑囚が私には二重写しになる。もし、当時、ネットがあれば、宮崎死刑囚はどんな書き込みをしたのだろうか。

 仲間と互いに顔を見ながら、笑い、怒り、泣く。体を触れ合って愛情を確かめ、心を通わせる。そんな当たり前のことが難しくなった孤独な時代に、私たちは生きている。命の重みを見失ってしまったかに見えた宮崎死刑囚は、どんな思いで死に赴いたのか、それが気になってならない。

(出所:毎日新聞 2008年6月17日 東京夕刊)

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宮崎死刑囚に刑執行 事件から20年/93年の死刑執行再開以降の法相の執行命令数

2008-06-18 05:07:40 | 国内政治
連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚・刑執行 鳩山法相「慎重に検討、数日前命令」
 鳩山法相は17日午前11時から法務省で会見。宮崎死刑囚ら3人の氏名をやや上ずった声で読み上げ「いずれも身勝手な理由で尊い命を奪った言語を絶する残忍な事案。慎重にも慎重に検討し、数日前に執行を命令した」と述べた。

 宮崎死刑囚の死刑の執行が判決確定から2年4カ月と比較的短期間だったことに対する見解を求められ「確定の順というのが原則だが、事案ごとに検討する。たまたま従来より短かったということ」と説明。前回執行から約2カ月で決断したことについては「時期は選んでいない。正義の実現のため、法の支配する国を守っていくために執行させていただいている」と強調した。

 連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚に刑執行 事件から20年--鳩山法相下、13人目

 ◇別の2人にも執行
 法務省は17日、88~89年に東京都と埼玉県で起きた連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚(45)=東京拘置所収容=ら3人の死刑を執行したと発表した。死刑執行は4月10日以来。鳩山邦夫法相の下での執行は4回目、計13人に上り、93年3月の執行再開以降の法相では最も多い執行数となった。また、これで現在の死刑囚は102人になった。

 80年代末の日本社会に衝撃を与えた同事件の発生から丸20年。宮崎死刑囚は捜査や公判で不可解な供述を繰り返し、詳しい動機や背景を語らないまま、06年2月の判決確定から2年4カ月で死刑が執行された。

 殺人罪などで起訴された宮崎死刑囚は公判で「夢の中でやったような感じ」「ネズミ人間が出てきて怖くなった」などと述べ、責任能力が最大の争点となった。1審での精神鑑定は(1)人格障害だが完全な責任能力がある(2)多重人格で責任能力は限定的(3)統合失調症で責任能力は限定的--の3通りに分かれる異例の展開になったが、1、2審、上告審とも、完全責任能力を認めた。

 最高裁は「殺人の主たる動機は性的欲求や、死体等を撮影して自分だけの珍しいビデオテープを持ちたいという収集欲に基づく」と指摘した。

 ほかに執行されたのは▽山崎義雄(73)=大阪拘置所収容▽陸田(むつだ)真志(37)=東京拘置所収容=の両死刑囚。確定判決によると、山崎死刑囚は仲間と共謀し85年11月、仙台市の主婦(当時49歳)を絞殺し、保険金から報酬を受領。90年3月には主婦のおい(同48歳)を殺害した。陸田死刑囚は勤務先のSMクラブの乗っ取りを計画し、双子の兄らと共謀して95年12月、経営者の男性(当時32歳)ら2人を殺害した。【石川淳一】

 ◇4人誘拐殺害
 ◇宮崎死刑囚の確定判決
 1988年8月、埼玉県入間市で幼稚園児(当時4歳)を誘拐、東京都あきる野市の山林で殺害して遺体を焼いた▽同年10月、埼玉県飯能市で小学1年生(同7歳)を誘拐、あきる野市の山林で殺害した▽同年12月、埼玉県川越市で幼稚園児(同4歳)を誘拐して飯能市で絞殺、遺体を山林に捨てた▽89年6月、東京都江東区で保育園児(同5歳)を誘拐、殺害して遺体を捨てた▽同年7月、東京都八王子市で小学1年生にわいせつ行為をした。

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 ■法相の執行命令数■

 (93年の再開以降)

 法相    在任期間       執行数

後藤田正晴 (92・12~93・8)  3

三ケ月章  (93・8~94・4)   4

永野茂門  (94・4~94・5)   0

中井洽   (94・5~94・6)   0

前田勲男  (94・6~95・8)   5

田沢智治  (95・8~95・10)  0

宮沢弘   (95・10~96・1)  3

長尾立子  (96・1~96・11)  3

松浦功   (96・11~97・9)  7

下稲葉耕吉 (97・9~98・7)   3

中村正三郎 (98・7~99・3)   3

陣内孝雄  (99・3~99・10)  3

臼井日出男 (99・10~00・7)  2

保岡興治  (00・7~00・12)  3

高村正彦  (00・12~01・4)  0

森山真弓  (01・4~03・9)   5

野沢太三  (03・9~04・9)   2

南野知恵子 (04・9~05・10)  1

杉浦正健  (05・10~06・9)  0

長勢甚遠  (06・9~07・8)  10

鳩山邦夫  (07・8~)      13

(出所:毎日新聞 2008年6月17日 東京夕刊)

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特集ワイド:秋葉原殺傷事件 問われる「社会の責任」--大塚英志さんに聞く

2008-06-18 05:04:55 | 国内社会
 特集ワイド:秋葉原殺傷事件 問われる「社会の責任」--大塚英志さんに聞く

 ◇神戸芸術工科大教授・大塚英志さんに聞く
 東京・秋葉原で17人が殺傷された事件発生から約1週間。逮捕された派遣社員、加藤智大(ともひろ)容疑者(25)は「ウソをつくつもりはない」と素直に応じ、捜査員に自分の不遇を訴えているという。犯行予告をしていた携帯サイトには、職場への不安や家族に対する不満を書き残していた。この事件の奥に何が見えるか。漫画原作者で神戸芸術工科大教授の大塚英志さん(49)に聞いた。【坂巻士朗】

 ◆加藤容疑者と永山元死刑囚の共通点

 ◇時代の「若者像」との格差/軍用の武器を使用/親から「捨てられた」意識
 「今回の事件を起こした彼を見ていると、永山則夫を思い出します」。永山則夫・元死刑囚は1968年、19歳の時に警備員ら4人をピストルで無差別に殺害したとして、97年に死刑が執行された。極貧家庭で8人兄弟の四男として生まれ、バクチ好きの父親と逃げ出した母親から育児を放棄された。「おれが無知で、貧乏だったから」と法廷で事件の背景を語っている。大塚さんには、永山元死刑囚の時代を描いた漫画「アンラッキーヤングメン」(角川書店)の作品がある。

 「永山は中学卒業後、集団就職で青森から上京した。このころ、大学生たちが少年マガジンを読み、アングラ劇団が始まった。つまり、サブカルチャーが生まれた。永山は職を転々とした後、新宿でジャズバーの店員となった」。大学生という新しい若者像にたどりつけなかった永山元死刑囚と、正社員との格差が広がる「派遣社員」である加藤容疑者の位置が、時代を超えて重なるという。

 60年代の若者文化の中心が新宿なら、現代は秋葉原だ。永山元死刑囚は在日米軍基地から盗んだピストルで犯行を重ね、加藤容疑者はミリタリーショップでダガーナイフを手に入れた。「永山が幼いころから家出を繰り返し、母親から『捨てられた』ことに拘泥する姿も、彼と重なりあう」。加藤容疑者は、携帯サイトの掲示板に、<中学生になった頃(ころ)には親の力が足りなくなって、捨てられた>と書き込んだ。「ネットやアキバと関連付けようとすればするほど、彼の姿が見えなくなる」

 共通点を並べたうえで、大塚さんは強調する。「永山の時代と今が『変わった』とすれば、事件を受け止める側に『社会の責任』という感覚が希薄化したことに尽きます。メディアの報道は、心の闇という決まり文句を繰り返し、直接的な原因をサブカルチャーに求め、自己責任として個人の厳罰化を叫んできた。しかし、派遣労働者の問題は『社会問題』で、そのような『社会』を容認してきたのは誰なのか。今日ではさすがに考え込まずにはいられなくなっている」

 「加害者を生んでしまったことに、私たちの責任はないだろうか。かつて繰り返された問いをもう一度真摯(しんし)に考える時期に来ています。加害者の責任の一端を担う社会の枠組みをもう一度復興できるかが問われている。労働格差に悩む若い人の間で、蟹工船が読まれる時代なのです」

 加藤容疑者は掲示板にたくさんの「自分について」を書き込んでいる。

 <平日の昼間からふらふらしている俺(おれ)ってなんなんだろうね>

 <いつも悪いのは全部俺> 大塚さんは「彼は自分であることの不安や、社会が実感できない不安に耐えかねていたのでしょう。自分だけの言葉で『誰かぼくの声を聞いてくれ』では誰にも届かない。彼は他者と会話する言葉を使うことができず、返事がこない孤独に耐えることができなかった。そして、返信する側も彼を受け入れることができなかった」と語る。誰もが発信者になれるインターネット。未熟な言葉を発しているのは加藤容疑者だけではないだろう。

 では、どうしたらいいのか。大塚さんは「難しいことじゃない。見知らぬ誰かと話すことから始めればいい。アキバは本来、それが可能な街だったはずです」と話した。

 ◆甘え、努力不足……アキバの声

 若者らは事件にどのような思いを持ったのか。発生から最初の週末となる14日、秋葉原で聞いた。

 ◇神奈川県相模原市、大学3年の男性(21)
 「加害者はあまりにも自分勝手。事件の重大性の前では、孤独だったとか、仕事への不安というのはとても理由にはならない」

 ◇千葉県柏市、鉄工会社勤務の男性(26)
 「自分は定職に就いているが、仕事がうまくいかない不安を持つ人はたくさんいると思う。相談する人はいなかったのか」

 ◇東京都中野区、大学4年の男性(21)
 「仕事がうまくいっていないのは自分の努力が足りないから。絶対に許しちゃいけない」

 ◇東京都足立区、メイド喫茶店員の女性(19)
 「あの日も近くで店のビラを配っていたから、自分が被害者になってもおかしくなかった」

 ◇横浜市、金融会社勤務の男性(23)
 「親を恨んでいたというが単なる甘えでは。亡くなった人、その遺族の悲しみを想像できなかったのか」

 ◇東京都、福祉職(26)
 「彼の供述をみると、今になって重大さに気づいている気がする。発生直後の現場を子どもに見せようとする親や、携帯電話で撮影していた人がいると聞いて異常に感じた」

 ◇東京都板橋区、就職活動中の男性(26)
 「追いつめられていたのはかわいそうだが、やったことは許されない。相手の見えないネットの掲示板のやりとりでは、人間の深いところは分からないのに」

 ◇埼玉県鴻巣市、会社員の男性(40)
 「計画的な犯行で同情の余地もない。カメラの前で謝っていた彼の親がかわいそうだった」

 ◇川崎市、会社員の女性(30代)
 「警察官は多いが、街のにぎやかさは変わらない。事件の場所で、亡くなった人のことを考えて手を合わせた」

 ◇東京都大田区、会社員の女性(23)
 「思春期の挫折は誰にでもある。私が彼と違うのは、周りの人が力になってくれたことかな」

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 ◇「夕刊特集ワイド」へご意見、ご感想を
[email protected]

ファクス03・3212・0279

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 ■人物略歴

 ◇おおつか・えいじ
 東京生まれ。小説や評論活動も。「『捨て子』たちの民俗学-小泉八雲と柳田國男」で07年の角川財団学芸賞。憲法や戦後民主主義に関する著書もある

(出所:毎日新聞 2008年6月17日 東京夕刊)

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連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚・刑執行(その2止) 残忍さ、異様さ残し

2008-06-18 05:03:04 | 国内政治
 連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚・刑執行(その2止) 残忍さ、異様さ残し

 ◇「覚めない夢の中で…」 ビデオ、雑誌に埋もれ
 連続幼女誘拐殺人事件は、残忍さだけでなく、遺骨を被害者方に運んだり、犯行声明を郵送するなど異様さが際立っていた。宮崎死刑囚の自宅の部屋からは大量のビデオなどが見つかり、倒錯した幼児性愛もクローズアップされた。

 宮崎死刑囚は事件のさなかに、「今田勇子」名の犯行声明と遺体の顔写真を女児宅や新聞社に送りつけ、犯人像や意図を巡る推測が飛び交った。1審判決は、「犯行を遺族や報道機関に告知して自己を顕示するとともに捜査のかく乱を企図した」と認定した。

 8畳ほどの自室には、大量のビデオテープやコミック雑誌が積み上げられ、警察の捜索より前に異様な部屋の様子が大きく報道された。「おたく族」という言葉が流行語になり、事件の背景が幅広く論じられた。

 宮崎死刑囚は公判で「覚めない夢の中でやったような感じ」「別の島のことのように思う」などと発言。精神鑑定の問診でも「『ネズミ人間』が出てきて恐怖の中にたたきこまれ、後は分からない」「自分の分身が(女児を)車に連れ込み、解剖行為をした」などと述べ、3通りの精神鑑定が出る異例の経過をたどった。

 鑑定の一つは、宮崎死刑囚が「多重人格」に陥り、小児性愛や死体性愛の傾向を持つ別人格が犯行に及んだとの見方を示し、社会の関心を集めたが、地裁判決はこの鑑定を採用せず、完全責任能力があるとして死刑を選択した。

 ◇「再審準備中」弁護士が抗議
 宮崎死刑囚の弁護人を務めた田鎖麻衣子弁護士は17日、「数カ月前から再審請求の準備を進めていた。こうした事情を知りながら、死刑を執行したことに強く抗議する」とのコメントを発表した。5月末には鳩山邦夫法相に書面で刑を執行しないよう要請していた。

 田鎖弁護士は再審請求について宮崎死刑囚から依頼を受け、今年2月ごろから準備を進めていた。宮崎死刑囚は東京拘置所で精神科の治療を受けていたといい、専門家に意見書の執筆も依頼していた。田鎖弁護士は「まさかという思いもあったが、不安が的中してしまった」と話した。

 ◇時代の変化象徴--福島章・上智大名誉教授(犯罪精神学)の話
 時代の変化を象徴する事件だった。1人の犯罪者が社会の大きな関心や論議を呼んだ先駆けでもあり、責任能力についても法整備のきっかけになった。精神鑑定では統合失調症や多重人格など、さまざまな判断が出された。統合失調症を発病していたとしても責任能力に大きく影響を与えるものではなかったと考えるし、多重人格についても証拠に照らして無理な見方だった。死刑確定、執行はやむを得ないだろう。

 ◇死刑当然の犯罪--渥美東洋・京都産業大法科大学院教授(刑事法)の話
 幼い子供たちの尊い命が奪われた犯罪で死刑は当然。法務省が事件を十分調査し、誤判や恩赦の余地がないと判断をしたのだろう。個別の事件の事情によるので、一概に刑の執行時期が早いかどうかは言えない。宮崎死刑囚のような猟奇的なケースは、若年時の発達上の障害を早期に発見し対策を講じることが重要だが、秋葉原の殺傷事件を見ても、まだ社会的システムの構築は十分でないと感じる。

 ◇生きたかったのか--「《宮崎勤》を探して」の著書がある評論家、芹沢俊介さんの話
 「即刻恩赦を請求してください」という本人の手紙が昨年関係者に届いたと聞いた。彼は生きたかったのだろう。宮崎事件にはその後の神戸連続児童殺傷や池田小事件の原形のようなものを感じる。家族や社会の中で自分の存在が認められていないのは、「透明な存在」と言った神戸事件の少年や、秋葉原事件の容疑者にも通じる。時代の病理性は強まっていて、彼を死刑にしても事件が終わったことにはならない。

 ◇詐病だったと思う--作家、佐木隆三さんの話
 東京地裁で宮崎死刑囚の裁判をすべて傍聴したが、謝罪の言葉が全くなく、すっとぼけていたという印象がある。1審で異なる3通りの精神鑑定の結果が出たが、私は宮崎死刑囚は詐病だったと思っている。近年でも、広島や栃木で下校途中の女の子が殺されるという似たような事件が起きたが、4人もの幼女を手にかけた残虐性は際立っている。

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 ■解説

 ◇早まるペース、進まぬ議論
 鳩山邦夫法相の下で13人目となる17日の死刑執行は、これまで抑制的に進められてきた執行の在り方が様変わりしたことを強く印象付けた。連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚の執行という衝撃に加え、93年の死刑執行再開以降、最多の執行命令をした法相という事実も重く、執行までの期間も短縮化される傾向にある。

 鳩山氏は昨年12月、就任約3カ月で3人の執行を命じた。それ以降、約2カ月ごとに3人(今年2月1日)、4人(同4月10日)、3人(今回)と異例の早いペースで執行が続いている。近年は平均約7年かかっていた判決確定から執行までの期間も、前回の執行では3人が4年以内、今回も宮崎死刑囚の2年4カ月をはじめ3人全員が4年以内だった。

 刑事訴訟法の「確定から6カ月以内に執行」という規定を鳩山氏が意識しているのは間違いない。それは、司法の厳罰化で死刑確定者が100人を超える状況を危惧(きぐ)する法務省の意向とも重なる。

 ただ、死刑制度を巡ってはさまざまな議論がある。一部の国会議員は仮釈放のない「終身刑」導入に向けた動きをみせている。一方、鳩山氏は省内に「勉強会」を設置し、昨年12月には、執行された死刑囚の氏名などの公表に踏み切ったが、それ以上の議論が省内で進められている様子はない。死刑廃止を訴える団体などからは「鳩山氏が唱える死刑の『自動的執行』がなし崩し的に進んでいる」との批判も出ている。

 市民が死刑判決を決めることもある裁判員制度のスタートを見据え、死刑制度に関する一層の議論が求められる。【坂本高志】

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 ◆「告白文」要旨

 ◇「今田勇子」名で犯行告白
 宮崎死刑囚が出した「犯行告白文」の要旨は次の通り(〇〇、△△は被害者名)。

 御葬式をあげてくださるとのことで、本当に有難うございました。御陰様で、私の子、共々、やっと「お墓」に葬ってやれることができました。

 では、どうして〇〇ちゃんをあやめたかについて告白をいたします。

 私は、私の不注意からなる不慮の事故で、5才になる、たった1人の子供を亡くしてしまいました。私は、床下に穴を掘って子供を埋めました。

 「〇〇ちゃんは、知っている人でも、すぐについてゆく子ではないだろう。」と、皆さんは言っていますね。当然です。すぐについて来ません。実は、私も〇〇ちゃんを知っていて、〇〇ちゃんも私を知っています。もし私が捕まった時、皆さんは、私を見て驚かれるでしょう。

 〇〇さん、残念ながら私は、あなた方の身近に居ます。近くが遠いのです。

 私は、引っ越してきた家の床下に埋めた子供の隣りに、〇〇ちゃんの骨を埋め、これで、やっと、ほっとしました。これで全てが終わったのです。

 それが、しかしです。やがて、群馬の方で、不明だった子の家のそばで、子供の骨が発見されました。「その骨を△△ちゃんのものとしてもよい。」という発表があった。私は、この事で、ある決心をし、計画をたてたのです。

 我が子の骨を、〇〇宅の葬式として、正式に「お墓」に入れてもらおうと思ったのです。私は、送る前に骨を焼きました。段ボール箱に私の子の骨を入れ、〇〇ちゃんの歯数本と、体の骨を少し入れて混ぜました。

 私にできることなら、神にさからってでも、あと15年は捕まりたくないと思っています。そう心に思っていれば、もし神様がそれよりも前に、警察官を私の前に持ってきた時に、「あと15年は捕まりたくない」という私の願いをふみにじってくれるから、私の、真に会いたい状態の我が子に、私は対面できる。だから私は、「捕まりたくない」と言ったのです。

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 ◇連続幼女誘拐殺人事件と裁判の経過
 <88年>

 8月 埼玉県入間市の幼稚園児(4)が失跡

10月 同県飯能市の小学1年生(7)が失跡

12月 同県川越市の幼稚園児(4)が失跡

 <89年>

 2月 入間市の園児宅に遺骨届く

  〃 朝日新聞社に「今田勇子」名の犯行声明文

 3月 入間市の園児宅などに「今田勇子」名の告白文

 6月 東京都江東区の保育園児(5)が失跡

 7月 宮崎死刑囚を幼女への強制わいせつ容疑で東京都八王子市内で現行犯逮捕。

    10月までに4件の誘拐殺人で起訴

 <90年>

 3月 東京地裁初公判で起訴事実の一部を否認

 <97年>

 4月 東京地裁が死刑判決

 <01年>

 6月 東京高裁が宮崎死刑囚側の控訴棄却

 <06年>

 1月 最高裁が上告棄却。2月に死刑が確定

(出所:毎日新聞 2008年6月17日 東京夕刊)

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連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚・刑執行(その1) 最後まで謝罪なく

2008-06-18 05:01:16 | 国内政治
 連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚・刑執行(その1) 最後まで謝罪なく

 ◇絞首刑を再三批判 「薬物注射」導入を主張
 連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚(45)の死刑が17日、東京拘置所で執行された。判決確定から2年余り。宮崎死刑囚は再審請求の意向を示し、死刑制度を批判する手紙も公表したが、鳩山邦夫法相は早期の執行を決断した。社会を揺るがした特異な事件の発生から20年。法廷で不可解な発言を繰り返した男からは、最後まで反省や謝罪の言葉は聞かれなかった。

 「絞首刑は残虐」。宮崎死刑囚は、月刊誌「創」の篠田博之編集長にあてた手紙の中で現行の死刑制度を批判する持論を再三展開した。

 同誌06年7月号によると、宮崎死刑囚は現行の絞首刑について「踏み板(床板)がはずれて下に落下している最中は、恐怖のどんぞこにおとしいれられるのである(人権の軽視になってしまいます)」と主張。薬物注射による執行の導入を訴えた。

 また、07年5月の手紙では「この国の現行の死刑執行方法だと、死刑確定囚の人は、刑執行時は恐怖とたたかわねばならず、反省のことなど考えなくなる」(同誌07年8月号)とも述べていた。

 篠田編集長によると、宮崎死刑囚からはほぼ毎月、手紙が届いた。幻聴を訴えたり、拘置所内で放送されたラジオ番組の内容を詳細に記すこともあった。しかし、10年以上にわたる300通以上の手紙の中で、被害者や遺族への謝罪はなかったという。

 執行を聞いた篠田編集長は「全く想定していなかった。極めて異例の早い執行だ」と驚きを隠さなかった。「彼は病気の影響もあって無頓着で、自分がどういう境遇にあるのか、よく分からない様子だった。死刑確定の意味についてもしっかり説明は受けていないようだった」と振り返った。

 06年1月に最高裁で上告が棄却された後、東京拘置所で面会した関係者に対し、宮崎死刑囚はほおづえをつきながら「(死刑は)何かの間違い」と語った。再審請求する意向を周囲に示していたという。

 なぜ、あのような事件を起こしたのか。この疑問を解こうと、臨床心理士の長谷川博一・東海学院大教授は最高裁判決の前日から約2週間の間に8回、宮崎死刑囚と拘置所で面会した。だが、公判で「(犯行時に)ネズミ人間が出てきた」などと不可解な供述をしていた宮崎死刑囚は、面会でも「常識では通用しない答えが多い」(長谷川教授)。反省の言葉を口にすることもなかったという。

 ◇元取調官は「思い複雑」
 埼玉県警捜査1課の取調官だった佐藤典道さん(67)は「事件の悲惨さとご遺族の気持ちを思うと死刑執行はやむを得ないと思うが、40日間宮崎という男を取り調べた者としては複雑な思いがある」と語った。

 宮崎死刑囚は取り調べに淡々と応じていたという。「感情をあまり表に出すことがなく、受け答えに心が入っていない印象だった。『なぜ』と聞いても『たまたま』などと答える。反抗するわけではなかったが、彼の心の内に迫り、真実を語らせるのに苦労した」と振り返った。

 警視庁捜査1課の元捜査員は「執行まで長かった。遺体を切断するという残酷さ、せい惨さが頭を離れない。あってはならない事件だった。被害者の女の子も生きていれば成人している年齢だ。ご遺族も悔やんでも悔やみきれないだろう。死刑は当然だと思っている」とかみしめるように話した。

 ◇20年がたっても癒やされぬ遺族
 事件から月日がたち、被害者遺族の周辺も大きく変わった。

 東京都江東区の被害女児(当時5歳)の遺体が発見された埼玉県飯能市内の霊園には、「子供が犠牲になる事件がなくなるように」と石碑が建てられている。管理人の男性(66)は17日、「午前11時ごろ、ラジオで死刑執行を聴いた。お花を供えようと準備している。ずいぶん長く時間がかかったが、これで女児も安らかに眠れるだろう」と話した。

 女児が住んでいたアパートの一室には、現在も父親名の表札がかけられ、ひっそりと静まり返っていた。

 埼玉県飯能市の被害者の女児(当時7歳)の自宅は、住宅地の一角にある。近所の人の話によると、現在は父親と兄の2人で暮らしているという。17日午前は不在で、近くに住む女性は「あれから20年たつと思うと複雑な心境だ」と話した。

 また、当時4歳の被害女児が住んでいた埼玉県入間市内の団地は、表札が別の住民のものに変わっていた。団地に住む住民によると、女児の家族は2、3年前に引っ越したという。住民たちは一様に「事件のことは思い出すのでしゃべりたくない」と語り、今も癒やされない様子だった。

(出所:毎日新聞 2008年6月17日 東京夕刊)
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保育の制度改悪-いったいどこが子育て支援か-

2008-06-18 04:54:25 | 国内経済
主張
保育の制度改悪
いったいどこが子育て支援か

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 保育所入所児童が毎年増えつづけるなかで、公立保育所は統廃合や民営化でこの十年で千六百カ所も減らされています。

 こうしたなかで、政府と財界が一体になり、保育の「市場化」へ制度的な決着をつけようと、新たな提言にそって「結論を出す」(福田康夫首相)保育制度改悪の重大な動きがすすんでいます。

シナリオは財界
 日本保育協会の調査では二〇〇四年に公立保育所の国庫負担金が一般財源化された結果、六割の市区が保育所運営費を減らしています。大阪では、半数の自治体で非正規保育士が五割を超えています。全国には、雨漏りする施設、耐震基準に満たない施設も放置されています。保育所待機児が二万人近くにのぼる深刻な事態の解決は待ったなしです。

 子育て支援の地域の要として保育所の役割が大きくなっています。公的保育制度を根底から崩す「企業参入」は国民の保育要求解決の方向にまったく逆行しています。

 この間、経済財政諮問会議の民間議員や規制改革会議などからの提言があいつぎました。少子化で減る労働力を女性の就労で補うために、保育の「規制緩和」と「市場化」で、「メニューの多様化と量的拡大」を図れというものです。

 それは、保育分野にお金をかけず、市場開放が可能となるよう最低基準などの歯止めを緩め、いろんな施設に直接申し込めるよう「選択の自由」にするというものです。

 五月に厚生労働省社会保障審議会少子化対策特別部会は、自治体が責任をもって子どもたちを認可保育園にいれる現制度から、保育園と保護者の「直接契約」制度の導入を提言しています。

 児童福祉施設としての保育所は、法の基準にもとづき、公共サービスとして住民に等しく保障されるものです。地方自治体は、保育に欠ける児童を保育所で「保育しなければならない」のであり、保護者の入所希望を受け付け、保育料は親の所得に応じて決められています。それによって、所得の差で差別されずに、保育を受ける権利が保障されています。

 直接契約の導入によって、保育が「もうけ優先」の「市場」にゆだねられるとどうなるでしょうか。

 コスト競争による人件費削減で非正規保育士の増加や「よい保育を望むなら負担は当然」と、保育料の大幅引き上げに歯止めがなくなります。施設間格差が拡大し、父母の所得や負担能力による、保育所の選択がすすむでしょう。ひとり親家庭、低所得世帯や障害児の保育が排除される恐れも否定できません。

 大商社の伊藤忠会長が責任者の地方分権改革推進委員会は、保育所施設や職員などの国基準をなくし、市町村独自で決める方向も検討しています。“地方の裁量権の拡大”などではなく、国の最低基準の縛りをとりはらい、保育の地域格差を容認するものです。国の基準をなくすことは国の責任を放棄することです。この改悪の最も深刻な犠牲になるのは幼い子どもたちです。

保育市場化にストップを
 現在の子育て世代はもちろん、未来の子育て世代は、仕事にも家庭・子育てにも希望がもてる将来を切実に願っています。その制度的な保障の一つが公的保育制度の充実です。

 日本共産党は、政府・財界による保育制度の改悪、「市場化」の流れにストップをかける国民的なたたかいの発展をよびかけ、ともに力をつくすものです。

(出所:日本共産党HP  2008年6月17日(火)「しんぶん赤旗」)
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宇宙基本法成立で自民議員ら軍事利用の一挙加速へ-防衛省との連携など日本経団連で説明-

2008-06-18 04:52:42 | 国内政治
宇宙基本法成立で自民議員ら
軍事利用の一挙加速へ
防衛省との連携など日本経団連で説明

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 宇宙の軍事利用に道を開いた宇宙基本法が五月二十一日に国会で成立したのをうけて、自民党推進議員らが宇宙兵器開発などで宇宙航空研究開発機構(JAXA)と防衛省との連携などへ踏み込む方向を日本経団連へ説明していたことが十六日、わかりました。

 日本経団連で説明をしたのは自民党宇宙開発特別委員長の河村建夫元文部科学相。十三日に開かれた日本経団連・宇宙開発利用促進委員会(委員長・谷口一郎三菱電機相談役)主催の「今後の宇宙政策に関する懇談会」で明らかにしたものです。

 席上、河村氏は、宇宙開発利用を国家戦略と位置づける宇宙基本法について自公与党に民主党も加わった議員立法で成立に持ち込んだ意義を強調。そのうえで「軍事目的の宇宙利用」へ向けた今後の方向性と検討課題について言及し、(1)「専守防衛」だからこそ外国に依存しない情報収集能力の保持が必要(2)逼迫(ひっぱく)した財政状況の下で実行に移すための検討(3)従来タブーであったJAXAと防衛省との連携―の三点をあげました。

 これは早期警戒衛星やスパイ衛星の開発・保有やJAXAと防衛省との宇宙兵器の共同開発を視野に入れ、そのため財政上の裏づけ措置を求めていくなど宇宙軍事利用を一挙に加速する考えを示したものです。

 同基本法は日本共産党、社民党だけの反対で成立、八月二十八日施行の運びです。

 自民、公明、民主、国民新四党議員は五日に宇宙基本法フォローアップ議員協議会を設け、「超党派」による基本法推進体制をつくりました。同議員協が音頭をとり、防衛(軍事)秘密との関連やJAXAの組織のあり方などについて施行一年後の基本法見直し検討をすでに日程にのせています。

(出所:日本共産党HP 2008年6月17日(火)「しんぶん赤旗」)
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大阪・橋下知事が資金パーティー-1万円会費 1300人参加-

2008-06-18 04:50:31 | 国内政治
大阪・橋下知事が資金パーティー
1万円会費 1300人参加

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 大阪府の橋下徹知事は十六日、当選後初めての政治資金パーティーを大阪市内のホテルで開きました。会費は一万円。知事与党の自民、公明の府議や国会議員、自治体首長、タレント、作家で元経済企画庁長官の堺屋太一氏、府の特別顧問で建築家の安藤忠雄氏をはじめ千三百人が参加しました。

 知事はあいさつで、先に発表した「大阪維新プログラム案」について、福祉や医療などの分野の削減には反対の世論が多いことには触れず、「人件費を削減し、府民には大変な痛手を伴う財政再建案だが、府民の多くの支持を得ている」と強調。「将来の夢やビジョンは国と地方とのしくみを変えなければ見えない」として府民にとってどんな大阪をめざすのかを示さないまま、「最終的な責任は有権者。みなさんが動いて変えるかどうかだ」と声をはりあげました。

 パーティー券は、太田房江前知事が「政治とカネ」をめぐって三選出馬を断念したこともあり、企業・団体へは販売していないとしています。

(出所:日本共産党HP 2008年6月17日(火)「しんぶん赤旗」)
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経済時評-原油暴騰と米先物委の責任-

2008-06-18 04:48:14 | 国際経済
経済時評
原油暴騰と米先物委の責任

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 原油価格が一バレル=一四〇ドル近くに高騰しています。昨年前半の五〇~六〇ドル台から、年明けには一〇〇ドルを突破し、さらにわずか半年足らずで四十ドルも上昇しました。

 五月末の政府の『エネルギー白書』でも認めているように、最近の原油暴騰の主要な原因が投機マネーによるものであることは、もはやだれも否定できません。今月七日の五カ国(日米中印韓)エネルギー相会合も、共同声明のなかで「現在の原油価格水準は異常だ」との共通認識を示しました。

 原油、原材料、食糧などの価格暴騰は、異常な商品投機にたいする国際的な規制が必要になっていることを示しています。

 しかし、自由な取引で成り立つ市場経済のもとで、商品投機をどのように規制するか。

CFTCの極秘調査と市場監視
 アメリカにCFTC(全米商品先物取引委員会)という独立行政機関があります。

 日本でもよく知られているSEC(証券取引委員会)にくらべると、CFTCはほとんどなじみがない組織です。SECが証券取引を監視するのにたいし、CFTCは、商品先物取引で価格操作や虚偽情報の発信など不正行為がないかを監視し、違反者の訴追などをおこなっています。

 そのCFTCが五月二十九日、原油取引で相場操縦による価格つり上げの疑いがあるため、昨年の十二月から極秘で調査してきたという異例の声明を発表しました。(注1)

 この声明によると、今回の調査は、経験豊富なスタッフを総動員し、エネルギー会社やトレーダーを対象に、全米規模で、市場での資金の流れや、原油の売買契約、輸送、備蓄などを対象にしているといいます。そして、いまあえて極秘調査の実施を公表したのは、「現在の前例のない異常な市況、相場操縦から市場を守るためである」と述べています。

 CFTCは、続いて六月三日には、農産物の先物取引でも同様の調査をすると発表しました。さらに同月十日には、商品先物の相場動向を調査する目的で、CFTC、SEC、FRB(米連邦準備制度理事会)などによる合同調査委員会を設置すると発表しました。

 CFTCは、米議会証言では、これまで一貫して商品高騰と投機との関係を否定し、「牙を持たないトラ」などと揶揄(やゆ)されてきました。そもそもCFTCの収入は、先物取引の手数料からなっており、投資ファンドの参入で市場規模が膨らむことは歓迎すべき立場です。

 そのCFTCが、なぜ急に投機抑制のために積極的に動きはじめたのか。

旧来の投機とは根本的に異なる「インデックス投機」を野放しにした
 実は、五月末のCFTCの声明には、重要な伏線がありました。

 それより十日前の五月二十日、米上院の公聴会で、元ヘッジファンド経営者のマイケル・W・マスターズ氏が証言し、巨額な投機マネーの横行こそが現在の異常な商品高騰を招いたことは明白であると述べ、さらに、「CFTCがこの投機の増大を誘発した」と、CFTCの責任を厳しく批判したのです。同氏は、投機を誘発したCFTCの役割を、たいへん具体的に証言しました。

 「CFTCは、一部の投機家が商品先物市場に実質的に無制限にアクセスできるよう規制緩和をおこなってきた」(注2)


 マスターズ氏は、ウォールストリートの銀行家や国際的投資ファンドによる投機的先物取引は、商品価格の変動をリスクヘッジ(危険を保険)するための先物取引(旧来の投機)とは、根本的に目的が異なる「インデックス(指数)投機」(注3)の手法を使っている、と述べました。そして、この「インデックス投機」こそ原油や食料を買い占めて価格を暴騰させている元凶である、と証言しました。

 マスターズ氏のCFTC批判は、CFTCが「インデックス投機」を規制緩和で野放しにし、むしろその活動を積極的に奨励したうえ、統計的にも旧来の投機と「インデックス投機」の区別を隠ぺいして両者の見分けがつかないようにしてきたという点です。まさにCFTCの責任重大というわけです。

 マスターズ氏は、高騰した商品価格を引き下げるには、直ちに「インデックス投機」を統計的にも区分できるよう再分類し、厳しく規制すべきであると提言しています。

投機的資本のディスクロージャーが必要
 異常な商品投機をおさえるには、投機的先物取引の規制とともに、投資ファンドへのディスクロージャー(経営情報の開示)の義務付けなどによって、投機的資本を金融の面からも規制することが必要です。

 たとえば世界最大手の英国系ヘッジファンドである「マン・グループ」のピーター・クラーク最高経営責任者(CEO)は、日本の投資資金が大量に商品先物市場に流れ込んでいると、次のように述べています。

 「マネー流入の主役はいまや日本の個人投資家だ。個人からの預かり資産四百三十億ドルのうち日本だけで二四%を占める。国別では米国や欧州各国を上回り最大だ」(「日経」〇八年六月四日付)


 これが真実だとすれば、「マン・グループ」を通してだけでも、日本の個人投資家の一兆円を超える資金が商品投機などに回っていることになります。しかし、その“個人投資家”の実態はまったくわかりません。投資ファンドのディスクロージャーによって資金の流れを明らかにし、市場の透明性を高めることは、無責任な投機活動を抑えるためにぜひとも必要です。(友寄英隆)

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(注1)CFTC(U.S. Commodity Futures Trading Commission)に関する情報は、次のサイト参照。

http://www.cftc.gov/index.htm

(注2)マイケル・W・マスターズ氏の議会証言の全文は、次のサイト参照。

http://hsgac.senate.gov/public/_files/052008Masters.pdf

(注3)インデックス(指数)投機(Index Speculation)とは、各種の代表的な商品指数にしたがって主要な商品先物に投資配分する投機。

(出所:日本共産党HP  2008年6月17日(火)「しんぶん赤旗」)
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