政府は20日、防衛力の抜本的強化に向け自衛官の処遇改善などを検討する関係閣僚会議を首相官邸で開き、具体策を盛り込んだ基本方針を取りまとめた。給与引き上げを念頭に令和10年度に自衛官の俸給表を改定するほか、7年度から特殊業務に関する手当の新設や増額などの措置を講じる。自衛官の定年引き上げも検討する。
自衛官の給与を定める俸給表は、警察官などに適用される公安職俸給表をベースに一定の超過勤務手当を上乗せした仕組みとなっている。昭和25年、自衛隊の前身である警察予備隊発足時から適用されており、本格的な改定は初めてとなる。現在、防衛省が勤務実態調査を進めており、専門家の意見も参考に給与水準などを検討する。
新設・増額される手当は計33に上り、防衛省は「過去に例がない」規模だとしている。例えば航空管制官手当や対領空侵犯措置に対処する航空機の整備員への手当を新設するほか、災害派遣手当を引き上げる。7年度予算案に盛り込む。
自衛隊は精強性を保つため若年定年制を採用しており、多くの自衛官が56歳で退職する。10年度以降、一般隊員の定年を2歳程度引き上げる方向で検討を進める。一部職域に適用されている60歳定年を宇宙、サイバーなどの分野に広げることも検討し、来年夏をめどに方針をまとめる。
約3カ月間の基礎的教育訓練を受けるため初任給が低く設定されている「自衛官候補生」を廃止し、当初から自衛官として採用する新たな制度を設ける。石破茂首相は会議で「実効性を確保し、(自衛官の)充足率が向上しなければ意味がない。施策の深化に向けた検討を継続していく」と述べた。