M&Aの契約実務 / 藤原 総一郎 (著), 大久保 涼 (著), 宿利 有紀子 (著), 笠原 康弘 (著), 大久保 圭 (著)
M&Aの法務については、DDとか全体像については既に書籍化されたものがあるけれど、契約に絞った本というのは今までなかったのではないだろうか。表明保証、補償、誓約等々、英米法由来の概念を、そのまま日本法の下で使用しているのが実務になっているけれど、日本法の下ではどういうところに気をつけるべきか、という観点から解説してくれている本。前半では、各種の契約スキームにつき、概要と留意点を解説しており、後半では株式譲渡契約を題材に、典型的な条項につき、標準的な例と、考えられる派生的な条項について解説している。
それほど分厚い本ではないので、取引前に一読しておき、こんな条項はこういう点にを付けないといけないということを頭にある程度いれて取引に臨むと、抜け・漏れが生じる確率を減らせるのではないかという気がする。もちろんM&Aの入門書として法務担当者が読むというのも良い使い方だと思う。
個人的には、表明保証について、リスク分担の機能(保証内容については、保証した側がリスクを負い、その他は相手方が負うことになる)の他に、対象会社に関する問題点を燻り出す機能(売主が表明保証対象から除外を求めてくる中で、買主は問題点を把握することになる)があるという指摘が、勉強になった。