Working With Contracts: What Law School Doesn't Teach You /Charles M. Fox
ようやく一通り目を通したので感想等をメモ。
(2012年7月27日追記:和訳が商事法務から出るらしい)
Skadden, Arps, Slate, Meagher & Flomで勤務していた弁護士の手による契約書draftingの本。アメリカの若手lawyer向けではあるが、日本の企業法務の担当者が英文契約のレビューやドラフティングをする際にも参考になる一冊。安価で分量も多くないので、一読したうえで、手元において折に触れて参照するのが良いような気がする(僕はそうするつもり)。
アメリカのロースクールでは契約書のドラフティングについて、普通は教えたりはしないので、ロースクールを出ても契約書のドラフティングやレビューをどのようにすれば良いのかすぐに分かるとは限らない。そこで、契約書とは、ロースクールで書いてきたその他の文書と異なり、読者を説得するのではなく、読者が書き手と同じ理解をすることが求められているというところから話を始めている。
そのうえで契約書の基本要素として
- 表明保証(一定時点での当事者に関するスナップショット)
- 誓約事項(今後の行為に関する制約)
- クロージングのための前提条件
- 契約条項の違反に対するremedy、および
- 定義
- ドラフティングの考え方
- 契約書作成のテクニック
- 作成された契約書のレビュー等の仕方
- 修正・同意・放棄についての説明
- 形式面に関する論点
- 表明保証などについてのより詳細な解説
- いわゆる一般条項についての解説
- グロサリー(注:実はここも結構有用かもしれないと思ったりする。特に頻度は少ないけどファイナンス系の契約を見るときには)
Although the case law on the subject is mixed, most practitioners take the view that an obligation to use best effort includes the obligation to make every possible effort, and to use all possible financial resources, to achieve the desired goal.
(注:強調はdtkが加えた)
ラフな訳はこんな感じか。
この点についての判例の見方はばらばらだが、実務家の大半は、"best effort"を行う義務には、目標達成のために、可能な一切の努力を行うこと、および、可能なあらゆる財源を行使することを含むという見方を取っている。
費用を理由にして、特定の手段を講じないというのは許されないわけで、確かにハードルが高いので、無闇矢鱈に使うべき話ではないということがよくわかる。
他のところも、説明は明快だと思うので、法律英語の勉強という面でも良いのかもしれない。