私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

エチオピアとエリトリアが危ない

2021-11-08 21:50:48 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 

 今エチオピアが大変なことになっています。丁度、10年前の10月20日にリビヤの指導者カダフィが惨殺され、当時アフリカで最も成功していた国家であったリビアは無残に崩壊し、いわゆる失敗国家(failed state)の見本のような状態になって今日に及んでいます。このところ連日エチオピアの反政府軍勢力が首都アディスアベバに向かって軍を進めているというニュースが報じられ、アビイ・アハメド首相の率いる政府は全土に非常事態宣言を発令しました。リビアの二の舞にならないよう祈っています。

 このブログ記事は11月8日午後に書き始めていますが、そのきっかけは今日の朝日新聞の朝刊の第一面のトップ記事『シリア内戦 拷問克明』という異常なトピックの選択です。この特集記事は1面に続いて2面=『証言次々』4面=『監視と密告の社会』と展開され、この時点で日本を代表する大新聞がこの特集を組むことが、私には全く異様なことに思われます。これは、エチオピアとその隣国エリトリア、それと同時にキューバとベネズエラが恐るべき惨劇に襲われる前兆ではないか、と心配でなりません。このブログを読んでくださっている読者の中には、以前、私がエリトリアを「アフリカのキューバ」と呼んだことを記憶している方もおいでになると思います。

 朝日新聞の今回のシリアの特集記事に触発されて私の心の中で発生した竜巻は大き過ぎて、急には記述できませんが、今は、日本国内でも国外でもしきりに報じられているエチオピアの反政府軍勢力なるもの、TPLF(Tigray People’s Liberation Front, ティグライ人民解放戦線)、についての肝要なコメントだけ書き付けておきます。ティグライ人と呼ばれる人々はエチオピアの全人口の約6%を占める少数民族で、その主要な居住地域はエチオピアの北部で隣国エリトリアと接していますが、1991年から2018年までのおよそ27年間、米国の強い支持の下で、エチオピアを強権的に支配してきました。米国はまたTPLF軍事勢力を使って、隣の「アフリカのキューバ」エリトリアに戦争を仕掛け、エリトリアの「カストロ」イサイアス大統領の政府の転覆を図りましたが、それが成功しない内に、二十数年間、TPLFの圧政にい苦しんだ大多数のエチオピア国民が遂にTPLF主導の政権を失脚させ、アビイ・アハメド首相の率いる新しい政権が成立し、それとともにアビイ・アハメド首相とイサイアス大統領との間に気心が通じ、2國間の紛争が目出度く収束ました。これがアビイ・アハメドのノーベル平和賞受賞の主な理由です。しかし傀儡としてのTPLFの衰退を米国が受け入れる筈がありません。この1年間にティグライ地区は旱魃によるひどい飢饉に襲われ、今はUSAIDを率いるサマンサ・パワーは国連世界食糧計画(UNWFP) を叱咤して大量の食料や支援物資をティグライ地区に送り込んでいます。これは、私の推測ですが、このルートを使って、米国はTPLFの軍事勢力を再増強しているのだろうと考えます。ここで、私の頭の中では、エチオピア情勢とシリア情勢が繋がります。シリアとそのアサド政権を破壊してしまうことを米国は決して諦めていません。シリア領土内には戦乱に苦しんでいる人たちが大量にいます。米国はここでもしきりに“人道主義的支援物資”を送り込んでいます。しかし、これらの支援は明らかにアサド政権に対する反政府勢力の増強に使われています。エチオピアでの人道支援のルートとシリアでの人道支援のルートの果たしている役割の類似性、この辺りに、11月8日の朝日新聞の特集記事の源があるように、私には思えてなりません。

<付録>

 リビアについて、私はカダフィが惨殺される以前からこの国のことが心配になって、2011年の6月1日から7月6日にわたって六回の連続記事を書きました。そのうちの3つとカダフィ惨殺直前にジョン・ピルジャーが書いた記事を下に掲げておきます:

(1)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/2eaa25971be661ca6a89cabe16ea26bb

(5)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/8f040f8b81a6c95c63f9fa5f538dfcc6

(6)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/d1a55721f1007c79fbb1d28bff2f91cb

(アフリカが。コンゴが危ない)(2011年10月27日。ジョン・ピルジャーの記事の翻訳が主)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/cc93ab0c5060537478076023c4ad4a87

 

藤永茂(2021年11月8日)


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ミャンマーとの類似性 (セコイアの娘)
2021-11-16 09:02:51
私には、エチオピアの現状が、ミャンマーに酷似しているように思います。
1)ノーベル平和賞
アビィ首相もアウンサンスーチーも、平和賞を受賞している。そして、ともに民族浄化という言いがかりで、バッシングの嵐にあう。
2)ティグライとロヒンギャ
国際社会の圧倒的同情を集め、正義がどちらにあるかをひっくり返す。

酷似は、偶然ではない。
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類似点追加 (セコイアの娘)
2021-11-16 09:07:29
3)共に要所であること
アフリカの角と呼ばれる要所、ミャンマーはインド洋に出られる要所
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記事を複写させて頂いた件 (和久希世)
2021-11-16 16:26:06
何時も拝読させて頂いています。
今日自分のブログに、こちらの記事を複写させて頂きましたので、ご了承下さいませ。

http://blog.livedoor.jp/dendrodium/archives/87177432.html
「コロナワクチンの供与が無かったのはエリトリアにとって不幸な事ではなかったけど・・・・・」
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