私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

Idle No More (4)

2013-01-24 13:33:57 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 
 カナダ政府と国会議事堂を望むオタワ河の中の小島のティーピー(インディアンのテント)の中で、テレサ・スペンスは、依然として、昨年12月11日に始めたハンストを続けています。彼女が酋長を務めるアタワピスカト・インディアン保留地は、カナダ北部の広大なハドソン湾(ベイ)の南の尻尾の部分、ジェームズ・ベイの西側にあり、約二千人の人口、その三分の一は19歳以下の若者です。2011年10月末、彼女は保留地の住宅事情と生活用水が危機状態にあるとして、政府に緊急援助出費を要請しました。迫り来る厳冬(零下20~30度は普通)を目の前にして、保留地には2ダース以上の家族がテント生活を余儀なくされていました。インディアン保留地の状況はしばしば「カナダの中の第三世界」という言葉で形容されますが、まさにその通りの保留地が無数に存在しています。住宅・飲料水、失業率、平均寿命、幼児死亡率、就学率、自殺率、などについての統計数字は、そのことを具体的に裏付けます。例えば、先住民の若者の自殺率は非先住民のそれより数倍も高いのです。特にイヌイット(エスキモー)の場合は10倍以上と報じられています。昨年12月、人権侵害監視団体アムネスティ・インターナショナルも次のように報告しています。:
■ By every measure, be it respect for treaty and land rights, levels of poverty, average lifespans, violence against women and girls, dramatically disproportionate levels of arrest and incarceration, or access to government services such as housing, healthcare, education,water and child protection, Indigenous peoples across Canada continue to face a grave human rights crisis.(あらゆる尺度に照らして、それが条約や土地所有権の尊重であれ、貧困度、平均年齢、女性に対する暴力、桁外れに過大な逮捕と投獄の水準、また、公営住宅、健康管理制度、教育、上下水道、児童保護といった政府サービスへのアクセスについてであれ、カナダ中の原住民は綿々として深刻な人権の危機に直面し続けている。)■
これは、いわゆる第三世界の国々の話ではありません。世界中で最も住みよい国の一つとして評判の“民主的先進国”カナダの話です。
 アタワピスカト保留地からの要請に対するハーパー首相の反応は傲慢かつ疎漏の極みでした。保留地の住宅危機の原因は酋長テレサ・スペンスの放漫な(あるいは不正な)財政にあるとして、テレサ・スペンスを酋長の地位から追放したのですが、テレサ・スペンスからの訴えを受けた連邦裁判所は、国の会計監査院に調査を依頼して、アタワピスカト保留地の公金消費について不当な事実がないことを確かめ、彼女は酋長の地位に戻りました。しかし、ハーパー首相は「9千万ドルもやっているのにあの金は何処に消えた!」と、したたかに政治的効果を狙った放言を既に行なっていたのです。しかしこの9千万ドルという金額は2006年以来の政府補助金の総額で、しかも、保留地の住宅の維持と建設の為だけにひも付きで充てがわれた資金ではありません。それにも関わらず、このハーパー首相の発言はマスメディアを通してカナダ国中に「そうだ!我々は、怠け者で碌でなしのインディアンに、今まででも既に、金を沢山やり過ぎている!」という声を沸き上がらせました。保守的なメディアには、一般国民の過半数がこの意見だと強調したものもありました。平常市民なるものが突然示す醜悪さです。そして、国の会計監査局がアタワピスカト保留地の公金消費について不当な事実がないことを確かめた後も、保守的マスコミはこれにもめげず、今度は、「酋長テレサ・スペンスは公金着服をしなかったかもしれないが、何十人もの部族の人々がテントで凍死しかかっているのに、自分は温々と政府から7万1千ドルの給料を貰っている」と非難を続行しました。7万1千ドル、これはしがない一大学准教授でも入手出来る年俸です。
 テレサ・スペンスがハンストに踏み切った直接的な背景の一つは以上の通りですが、もう一つ、さらに重大な背景があります。アタワピスカト保留地の西で保留地から少し外れたところにダイヤモンドの埋蔵地が発見され、2005年頃から、かのセシル・ローズに発する世界最大のダイヤモンド鉱業会社デビアス(DeBeers)が開発採鉱を始め、2008年からは本格的な商業生産がスタートしました。このダイヤモンド鉱山は膨大な量の下水を放出し、それがアタワピスカト保留地の下水処理能力を低下させて、下水の逆流が原因で住めなくなる家屋が出ていることが以前から疑われていたのですが、州政府も連邦政府も、そして、デビアス社も相手にしない。はっきりと保留地内の土地ではないにしても、この地域はもともとアタワピスカトの人たちの生きて来た土地であります。そこにダイヤモンドが見つかったとして、それをVictor鉱山と命名し、道路、航空機滑走路、上下水道施設などなどビクター鉱山経営に必要なインフラを荒野の中に強引に整備し始めましたが、それらはアタワピスカト保留地に恩恵をもたらすよりも、むしろ、負担を増大しかねない形で進められました。雇用の面でも、現地人の採用には熱意がなく、アタワピスカト保留地の慢性的に高い失業率の改善にはつながっていないようです。
 業界誌によると、2010年度には、デビアス社は2010年度に33%の売上増を報告し、特に年度前半から後半への収益の増加は55%で12億ドルという記録的な利益を収めました。カナダのビクター鉱山がこれに貢献したことは確かでしょう。2010年度にデビアス社はカナダで経営する二つのダイヤモンド鉱山に関係する保留地など8つの自治体に523万ドルを寄付したと報告していますが、デビアス社にとっては涙金、貧困に苦しむ自治体にとっては焼け石に水の額でしょう。私の耳には、どこかアフリカの奥地での話のように聞こえます。
 しかし、すでに前回強調したように、テレサ・スペンスは涙金の上乗せを求めてハンストを始めたのではありません。このブログ・シリーズ『Idle No More (1)』で、「アイドル ノー モア」という合い言葉は、昨年10月、Nina Wilson, Sylvia McAdam, Jessica Gordon, Sheelah McLean という4人の女性たちによって創り出された事を述べました。現在、テレサ・スペンスのハンストに象徴される、この運動の焦点はハーパー政権が強行成立させたC-45という悪法に対する反対です。C-45については、すでに一般的な解説をしましたが、実はこのオムニバス的な法律の成立の背後にはハーパー首相の極めて具体的な一つの野望があるのです。それはカナダのアルバータ州のオイルサンド石油を大量に米国に運んで売りつけるという野望です。この動きは日本の近未来のエネルギー政策とも密接に連なっています。

<追記(24日午後6時):テレサ・スペンスがハンストを終止したことをCBCが報じているのに気が付きました。この報道に対して多数のコメントが寄せられていて、テレサ・スペンス批判の内容のものが殆どです。実に興味深い現象だと私は考えます。>

藤永 茂 (2013年1月24日)


Idle No More (3)

2013-01-19 22:38:27 | ã‚¤ãƒ³ãƒãƒ¼ãƒˆ
 カナダの保守党政府(ハーパー首相)が提出していた議案C-45 は総括的な予算案(omnibus budget bill)で、2012年12月14日に国会上院で50-27で可決されました。400頁を超す厚さの法案で多数の重要な既存法律の変更が含まれています。INM運動に関連する項目としては、Navigable Waters Protection Act(航行可能水路保護法)、Canadian Environmental Protection Act(カナダ環境保護法)、などの他に、先住民保留地で部族(バンド)の管轄下にある個人的所有の土地の売買の手続きの簡易化についての既存法の変更などが含まれています。航行可能水路保護法だけを取ってみても、変更の影響は甚大です。カナダの詳しい地図を見ればよく分かりますが、氷河期が終り、氷河が北に退いた後の、この広大な北辺の大地には無数の河川で結ばれた無数の湖水が残り、ここには全世界の淡水の40%が保たれているとも言われます。アメリカのよく知られた進歩的雑誌「プログレッシブ」の記事によれば、これまで航行可能水路保護法はカナダの2百6十万の河川、湖、それに海浜の大部分を保護して来たが、この度のC-45の成立で、今や87カ所だけが保護されるだけになったのだそうです。別のデータによると、97の湖、62の河川だけが保護法の制約を受けるだけになったとのことです。これに加えて、これまでの環境保護法が骨抜きになり、先住民に属しているとされている土地が部族共同体のコントロールを受けずに、売買が可能になったとなると、C-45の狙いの一つがグロテスクに浮かび上がって可視化してきます。先住民たちが大地にしがみつくようにして第三世界的に生きている広大なカナダ北辺の地は地下資源の宝庫なのであり、それを開発し、またそれらの宝を南に運ぶための交通輸送施設(道路、パイプラインなどのインフラ)を確保するためには、北辺の土地と水を自由に手に入れ、使いたいという強い動機がハーパーのカナダ政府にはあるのです。
 この恐るべき悪法C-45がカナダの国会で50対27という票決で可決されたという事実、これを易々として受け入れる現在のカナダの政治的な危機状況を深く憂慮して、我がテレサ・スペンスは立ち上がったのです。“もはや座視はすまじ”と決意した彼女のハンストはもう40日目に近づいています。魚のスープだけで固形食は取っていないので、だいぶん弱って来た模様です。彼女はティーピーの中でこう語ったと伝えられています。
■ When I die, I expect my body to be carried out of here with honour, and to go and lay in peace with my ancestors.(私が死んだら、私の体はここから葬儀にふさわしく運び出されて、私の祖先が眠る墓地に安置埋葬されることを期待する。)■
 次回には、彼女が率いる千五百人ほどのアタワピスカト・バンドの人々がどのような生活環境の下で生きて来たかを具体的にお話ししましょう。しかし、彼女は自分のバンドの生活改善のために政府に物乞いをしているのではありません。彼女は遥かに遥かに遠くを見ているのです。

藤永 茂 (2013年1月19日)



Idle No More (2)

2013-01-18 21:42:42 | ã‚¤ãƒ³ãƒãƒ¼ãƒˆ
 前回(1月9日)のブログ『Idle No More (1)』を出したすぐ後で、悪法C45 に強く反対してハーパー首相に直接面会を求めて拒否され、その実現のためにハンストに入っていた女性酋長テレサ・スペンスが、ハーパー首相の方が少し譲歩して1月11日に面会を申し出て来たのに対して、今度は、要求していた条件が満たされていないとして、彼女の方が会談を拒否したことを知りました。これは事態の重要な展開ですが、これを知ったのは、思いがけないPress TV というイランの国営テレビ局のウェブサイトからでした。
 この放送局は、シリア情勢に就いて、シリア政府寄りの報道をするので、反政府武装勢力を全面的に支持する米欧側はこれを沈黙させようと試みています。昨年11月30日、シリアの首都ダマスカスでプレスTVなどの自動車6台が爆破されて炎上し、また12月20日には英国でプレスTVの放送ライセンスが取り消されました。プレスTVは米欧の世界マスメディア支配に対するイラン政権の対抗情宣活動の一翼を担っていることは明らかですが、全くの“大本営発表”ではないことは、この数ヶ月視聴を続けている経験から断言できます。どの報道機関にも特徴的な語り口のようなものがあります。国営的機関での、その良い例はキューバのGRANMA International やエリトリアのTesfaNews です。他にも沢山そうした興味深い例があるに違いありません。現場で仕事をしている人たちには、その気になれば、それなりのジャーナリスティックな自由空間が存在する筈です。そのあたりから、それぞれの報道機関に特有の一種の味わいのようなものが出てくるのでしょう。その意味から言えば、プレスTVとNHKのどちらがより忠実に“大本営発表”的か、分かったものではありません。プレスTVがINM(Idle No More)運動を素早く大きく取り上げ、NHKは殆ど何も取り上げようとしないのは、INMが反抗している暴力が、イランを苦しめている暴力と同じ、米欧(イスラエルを含めて)の帝国主義的植民地主義的暴力であるという意識をプレスTVのニュース報道編集員たちがはっきりと持っているからだと思われます。
 INM運動を大きく取り上げている報道サイトに、もう一つ、VT(Veterans Today)という米国の退役軍人ジャーナルがあります。極めてアクの強い反イスラエル、反ユダヤの政治的発言体で、したがって、その筋から激しい非難攻撃を受けているので、ご存じの方もあるでしょう。この異色のウェブサイトとカナダ先住民のIdle No More運動との接点は何処にあるか。カナダの先住民人口は約120万,全人口の約5%、その内の数十万人は国内の「棄民」の状態にあります。アメリカの退役軍人は2600万人、全人口の約13%に上りますが、そのかなりの数が、やはり「棄民」的な状態にあります。退役軍人のホームレスの数が比率的に目立って高いことは度々指摘されていますが、精神的障害者、自殺者の多いこともVT(Veterans Today)が声を大きくして人々の関心を喚起しています。1月14日、アメリカ軍の新聞「スターズ・アンド・ストライプス」(我々の世代には懐かしい新聞)が、2012年の年間の米軍兵の自殺者数は349人でこれはアフガニスタンでの戦死者数を上回ることを報じました。このニュースはいち早くプレスTVの報じる所となりましたが、VT(Veterans Today) の主筆Gordon Duff は、これに就いての見解を発表して、この349人

http://www.veteranstoday.com/2013/01/16/press-tv-figures-describing-veterans-suicides-beyond-misleading-duff/

という数字がむしろ問題の本質を隠蔽していることを明らかにしました。ダフ氏によると、これまでに何万という数のアメリカ兵が不名誉な理由や精神障碍の故に除隊(discharge) を強いられ、民間人の身分に押し戻されて、退役軍人としての保障手当から外されて人生を狂わされてしまう場合が無数にあるといいます。そうした人々の自殺を含めれば、退役軍人の自殺者数は一年8、9千人にもなるだろう、だから、349人というまことしやかな数はマヤカシの数だとダフ氏は言うのです。このGordon Duffという退役軍人、実はプレスTVと密接な関係を持ち、しばしば報道記事を寄せています。上掲の記事の中にも、目を引く不思議な文章があります。:
■ Why Does Only Press TV Care About the Welfare of American Soldiers and Veterans? They are “Iran,” aren’t they supposed to be “the enemy?”?Is, just perhaps, someone lying to us? (なぜプレスTVだけがアメリカの兵士と退役軍人の福祉を気に掛けるのか? 彼らは“イラン”であり、“敵”であるはずではないのか?もしかしたら、誰かが我々に嘘をついているのかも?)■
ここでダフ氏の言説一般の信憑性を問題にする必要はありません。アメリカ軍の平の兵士の大部分がもともとアメリカの下層民出身であり、彼らが従軍中も退役後も一種の「棄民」として扱われて来たことは、ダフ氏から教えられるまでもなく、少し調べれば明白になる社会的事実です。ここに棄民的人間集団としての北米先住民の抗議運動INMをVT(Veterans Today)が積極的に取り上げる理由があります。同じ問題がそこにあるのです。カナダのレスブリッジ大学教授アンソニー・ホール(Anthony J Hall)の筆になる『アメリカ革命からアイドル・ノー・モアまで』と題する長い論文が1月7日付けのVTに掲載されています。ここにもVTジャーナルのINM運動への肩入れの強さが示されています。読み応えのある論文です。

http://www.veteranstoday.com/2013/01/07/from-the-american-revolution-to-idle-no-more/

 今日はプレスTVやVTジャーナルのことに関わり過ぎて、肝心のINM運動の話の方が疎かになりました。明日はテレサ・スペンスがあくまでこだわる悪法C45の話から始めます。

藤永 茂 (2013年1月18日)


Idle No More (1)

2013-01-09 14:49:40 | ã‚¤ãƒ³ãƒãƒ¼ãƒˆ
 これは今カナダで、そして、それに呼応してアメリカでも、燃え上がっている原住民(いわゆるインディアン)の抗議運動に与えられた名前であり、彼らの決起の叫びでもあります。その意味を考えながら、何か良い翻訳が出来ないものかと努力した挙句に“もはや座視はすまじ”という古めかしい言葉に一応落ち着いたところですが、これでは今の若い人々には訴える力がないでしょうから、このブログ記事を読んで、もっと今の世にふさわしい翻訳を提案して下さるようお願いします。この北米インディアンたちの“もはや座視はすまじ”運動について私の想いは膨らむばかりですので、話は多分長くなると思います。
 「アイドル ノー モア」という合い言葉は、昨年10月、Nina Wilson, Sylvia McAdam, Jessica Gordon, Sheelah McLean という4人の女性たちによって創り出されました。現在、この運動のシンボル、焦点は、カナダの首都オタワの国会議事堂に面する凍結したオタワ河の上にティーピー(インディアン伝統のテント)の中で、昨年12月11日以来、死を覚悟でハンガー・ストライキを続けているアタワピスカト部族の酋長テレサ・スペンスという女性です。昨年10月から国会で審議されていたC45と銘打たれた議案が12月14日に上院で可決され、法令になりました。テレサ・スペンスは悪法C45 に強く反対して、ハーパー首相に直接面会を求めて拒否され、その実現のためにハンストに入りました。オタワ河の氷は厚さ1メートルを超え、ティーピー周辺の温度は容易に零下30度に達している筈です。インディアンが死を覚悟したと言う時は本当に死を覚悟するのです。この勇敢な50歳の女性が死を賭してまで我々に告げようとしていることに、我々はよく耳を傾けなければなりません。前にも、私が度々申し上げたことですが、これは、窮状にあるインディアンたちをどう救ってあげるかというような生ぬるい問題ではなく、危殆に瀕している我々自身をどう救うかという問題なのです。
 なお、今後は、今までの慣習を捨てて、このブログは不定期に発表させて頂きます。

藤永 茂 (2013年1月9日)



正月三日

2013-01-04 10:30:31 | ã‚¤ãƒ³ãƒãƒ¼ãƒˆ
 「正月三日」という言葉があります。その含意の一つに、三日まではゆっくりお休み、という意味があると思います。30年ほど前まではデパートやスーパーも三日まで休んでいたものですが、今年などは一日か二日から開店するお店が殆どになってきました。
 私の住まいの近所に、主に料理店の人々が顧客の業務用スーパーがあります。個々のパッケージの品物の量が多めなので、老夫婦ふたり暮らしの私どもにとっては少し不向きなのですが、なにしろ距離が近いし、チラシ広告などもせず、どこかのんびりとしたとても良い雰囲気なので、私の日々の買い物場所になっています。このスーパー、昨年までは毎年、正月の5日まで見事に休んでしまっていました。私にしてみれば、いささか不便であり、5日以前にお店を開ける料理店さんの買い出し係にとっても具合が悪かった筈ですが、この業務用スーパーは頑固に古い習慣を守り続けていました。従業員の人々は、毎年、ゆっくりとお正月を楽しんでいたに違いありません。ところが、お時勢に押されて、今年は1月4日から店を開けたようです。
 この正月は、私が年末にオーダーした書籍や雑品が、驚くべき迅速さで、一日、二日、三日と配達されて来て、配達にやってきた若者たちに何だか申し訳ない気がしました。私がこう言うのを偽善的だと思わないで下さい。玄関に出て受領印を押した時の率直な気持です。
 元日の新聞とか年賀状とかは昔から世話になっているので、これは配達をして貰いたいと希望しますし、三が日中にも、昔から働いてくれている多数の人々がいるのは承知していますが、出来るものならば、なるだけ沢山の人々が、もっとゆっくりお正月を楽しめるような世の中にしたいものです。このブログを、習慣になっている水曜日にではなく、本日金曜日にアップすることにしたのも、同じ、のんびりしたい気持からです。今年もよろしくお願い致します。

藤永 茂 (2013年1月4日)