社長・・・降参ですわw 46
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- 2015/07/23(Thu) -
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指定された店を訪れ、店内の奥の事務所へ顔をだすといかにもそのスジの人間と分かる3人の男と連れの女が1人事務所にいた。 張に促されソファーの正面に座ると、同時にカンジョンが奥の机からこちらの狭いソファーへ席を移し、わざとらしくすぐ隣に座り込んできた。 カンジョンの脇で店内の4画面モニターを見ていた3人目の大男は立ったままでこちらのソファーを一瞥(いちべつ)するとまたモニターへ目を移して画面を見ている。 テーブルの上に女が置いた安シャンパンのグラスに手を延ばすと、張が口を開いて俺をここへ呼んだ経緯(いきさつ)を独り言の様に話し出した。 カンジョンの誕生日祝いに6階にあるこのテナントビルで1番広い店で飲んでいた際、たまたま近くのテーブルで飲んでいた俺の友達と席を合流し、色々な話題の中で区役所通りや伊勢丹デパートの前でよく信号につかまっている「謎の赤い跳ね馬」に話しが飛び火したらしい。 ・・・UFOかよ 「 こちらは 岡田さん です 」 張が脇のカンジョンを岡田と紹介した 「 わたしは ここのビルの オーナーをしてます 張です 」 知ってたか?と言う自慢顔でこちらを覗き込んだ こんな見合いの席の会話には全く興味がないし面倒だ。 無言でスル~した。 愛想が無く、口数の極端に少ない客人にカンジョンが興味を持った様で、テーブルの隅を中指で軽く叩きながら身を乗り出して視線を合わせた。 「 名前 まだ おたくから聞いてなかったな・・ 」 低い声だった 「 ・・・・・ 」 「 あんな車を転がしてんだから ホストの チャラチャラお兄さんかと思ったが・・ ちがうな 」 こういったスジの連中から下から目線でものを言われると、マズイ事に 「お前らにとやかく言われる筋合いはないわ」 と自分の顔に書いてしまう持病wが俺にはある様で、カンジョンにも顔を読まれた様だった。 少し前屈みの姿勢で両手をシャンパングラスに添えていたが、そのグラスをテーブルに戻しながら姿勢を整えハッキリと声をだした。 「 この前の ダチから 俺の名前 聞いてませんでしたか・・ 」 「 済みませんでした 名前は めめ と言いまして 新宿駅向こう 都庁の近くでサラリーマンしてます 」 「 岡田さん・・ カンジョンさんのお名前は 以前から お名前だけは聞いていました 」 勝負をする気になった 「 おまえ・・ どこの看板しょってるんだ 顔だけは よくこの辺で見るが 」 獣の様に瞳孔が広がり 両目が光った 「 いえ 看板は背負ってません 本当です 」 「 張さんと そこの奥の人の名前は 知りませんでしたが 張さんがここのビルのオーナーだったとは 驚きました 」 「 カタギには見えねえゼ おたくよぉ 落ち着き過ぎてるわなぁ 」 「 だいたいのガキ達は ここ来るとビビッて愛想笑いでごまかしてハイハイ言うが・・ おたく 何も言わず 立ってたよな 」 「 い~え 目の前に カンジョンさんがいたんで 緊張して動けなかったんですよ 」 「 カンジョンさんは歌舞伎町の伝説ですから 」 ^^ 「 伝説だと? おまえ オレの事 知ってるのかよ 」 「 ええ 今日お会いするまではお名前とすれ違うだけでしたけど 」 「 ふん・・ そうか 」 「 おまえは よく このあたりで車転がしてるのはよく見るけどなぁ ホストか ホストの経営者かと思ってたわ 」 「 オレを見たのは 今日って言ったよな・・ おい 」 「 ええ 例の・・ あの事があってから 戻っていたのは知りませんでした 」 「 あの事か・・ 」 「 歌舞伎町で遊んでる連中なら皆んな知ってる事です 口には出さないだけで 」 「 おまえは口にだした・・ けどな 」 「 済みません 」 「 オレの事知ってるなら 話しやすいわなあ 」 カンジョンが張の方を見た 「 そこのヤツも 最近 戻ったばかりですよ 」 張が奥の男をアゴでさした モニターを見てる男も刑務所戻りか・・ 「 黒羽から1年くらい前だったかな 」 「 黒羽ですか? ・・・ 」 栃木県の黒羽刑務所の情報には不自由しないほど仕入れ先はこの街にあった 「 珍しいですね 彼 韓国人に思えましたが 初犯の黒羽とは 」 「 おまえ 詳しいなぁ 」 カンジョンが睨らみをきかせて こっちを見た 「 彼は 廬(ろ)と言います 薬で行ってました 」 張が廬を遠目に見た 「 薬・・・ 2回目で 1年半ですね 」 「 知ってるなぁ おい おい おい 」 カンジョンが うすら笑いを浮かべた 「 第7工場で 靴 を造ってたそうです 」 何かを確かめるように張がこちらを見た こいつ・・ 「 第7工場? 確か・・ 第7工場は木工所ですよ 靴工場は第11工場ですね 」 「 おまえ 経験者か? 」 カンジョンが振り向いた 食い付いてきたw しめた 「 昔ですね・・・ 昔 若いときに5年ほど 黒羽ですが 」 「 お~ 驚いたなぁ 何したんだよ? 」 塀の中を経験した奴らは こんな話しが大好きなのだ 「 5年 ですか? 」 お前も食い付くかの 張w 「 ええ・・ 若いときに惚れた飲み屋のロシアの娘が店にコンタクト 架空の借金を300万ほど付けられてまして その借金を期日まで払わないと倍になると泣きつかれて・・ 」 「 ・・・まあ 若かったんで パチンコ店の駐車場で モデルガンで集金を襲って 銀行員から金奪って その日の夜 飲み屋に金持って行って 女の借金全額支払ってきました 」 「 残りの金は その女に全部やって 逃がしましたけど・・ 」 「 1週間ほど レンタカーの中で寝泊まりして 女が 博多に行ったと知って 警察暑へ自首に向かう途中で 盗難車ナンバーで引っかかって パトカーとカーチェイスして捕まりましたw 自首扱いではないのでガッツリやられましたけど・・ 」 「 まぁ~ パクられた警察署内では刑事からも 平成のネズミ小僧 って呼ばれてましたわぁ 」 「 すげえなぁ おまえ 」 「 ホントですか 」 張はもっと聞きたい顔をしている 「 ええ 強盗致傷 強盗5年 傷害2年 で求刑7年 1年まけてもらって 判決6年でしたわ 」 「 一発で実刑w 推定求刑が5年以上は執行猶予が無い事を知りませんでしたからね・・ 」 「 仮放もらって少し早めに出ましたけど 黒羽に3年半 喜連川刑務所に移って1年半 でしたわ 」 「 喜連川いたのか 」 「 ええ 造園科に移って 草むしりしてましたわ (笑」 「 当時 函館の船舶系と喜連川の土木系 もう1つどこかは忘れましたが 日本に3カ所だけあった塀の無いオープン刑務所をも経験してるんですよ 俺w 」 「 おまえ おもしろいな 」 呆(あき)れた顔をした 「 廬 お前の先輩 あにきだ! この人! 」 張が奥でモニターを見ている廬(ろ)へ大声をだした 「 いえ 若い時ですから 今じゃ しがないサラリーマンで塀の中よりも苦労してますが (笑」 主導権は握った まぁ、刑務所の情報ならばこの街で遊んでいればあちこちで耳にする。 その情報をかき集めれば経験した者にも怪しまれない位の話しは出来てしまうだろう。 刑務所は大まかに3種類に分かれ、二十歳前の少年刑務所、初犯刑務所、再犯刑務所に別れる。 少年刑務所で二十歳を迎えると一般の初犯刑務所へ移送される。 何度実刑を受けても前回の刑との間に10年間の空白があれば以前出所した初犯刑務所となる。 そして、組関係者や構成員名簿に名前がある者、身体に入れ墨があるものは無条件で再犯刑務所(府中や富山etc)へ送られる。 処遇(規則)が厳しいかゆるいかの違いはあるが刑務作業や日常生活にはそれ程大きな違いは無い。 よく前科*犯と言う言葉を聞くが、前科*犯よりも「前歴*回」の方がソイツの悪さが分かる。 前科とは実刑の回数だが、前歴とは捕まったが起訴されなかった回数を言う。 警察の照会でも「前科1犯 前歴5回」と回答される。 前科1犯・前歴5回ならば6回捕まって1回だけ起訴・実刑を受け、5回は数ヶ月間警察署に泊められた後、釈放された事になる。 罰金も前科1犯に数えられるが、交通違反での罰金はカウントされないので安心をw。 ある程度の知名度がある刑務所内での生活状況や専門用語を少し知っていれば十分に酒のツマミくらいにはなるし、予想以上に刑務所の経験者はそんな当時の生活話が好きな奴が多いのである。 さぁ~てと、ぼちぼちとここへ呼ばれた本当の理由でも探ってみるかな。 社長・・・降参ですわw 47へ 夏だなぁ~
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