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ロールス・ロイスTAXIの運転手に、観光客と市場帰りの現地人とで賑(にぎ)わうコロン通り(Colon Street)の半ばあたりで止めてくれるように指示してスピードを下げてもらった。 セブ島ではいろんな意味で有名なコロン通りだが、この通りをゆっくりと歩いたことは1度もなかった。 この辺一体は歴史が感じられるほど古めかしい建物が多く、殆どが1970年代に立て変えられている。 歴史的な観光スポットも数多く、そのせいで泣きをみる観光客も後を絶たない地域で、1人で歴史跡をアチコチと珍しがって歩いていると、ひったくりやスリがカモを探して目を光らしている通りである。 携帯でも話しながら100mも歩けば確実に4~5人に囲まれ、携帯をさしだすか命を差し出すか選択を迫られるし、時計やネックレスはプレゼントするために身に付けている様なところなのである。
慣れるまで新宿の歌舞伎町や大久保通りを1人で歩くのは勇気がいるが、ここと比べると雲泥の差がある。 財布は持たない、携帯はもたない、貴金属は身に付けない、なによりも日本人であることを知られてはいけないやっかいな通りである。 人とぶつかったな?と思ったら、まず、スリやひったくりに100%あったと思った方がいい。
そんな通りのド真ん中で車は停まって後ろのドアを開けて座席から降りてくれるのを待っている。 さすがに・・キツイw。 ここで降りればたった1人で群馬サファリパークか富士動物公園の策(さく)無し動物公園に投げ出されるのと同じ心境である。 ましてやTAXIがロールス・ロイスとくれば・・その先は分かりきった結末が待っているハズだ。
珍しく内心ドキドキで車から降りた。 時間がまだかなり早いのでもう一度車に乗り直し別な場所で時間潰しでもしたい衝動に駆られたが、TAXIはもうその場にはいなかったw。 あちらこちらからの視線が痛いほど分かる。 ライオンに囲まれたメリ~さんの羊であるw。
生き残るにはこの辺に慣れた振りをしなくてはならない。 歩道を10mほど歩き出し、とにかくガードマンのいる店にたどり着かなくてはならない。 大きめのファースト・フード店やスーパーマーケットには必ずガードマンがいる。 予定していたティアラのプロダクション事務所の向かい側にたどり着くにはまだ2~300mはありそうだった。 TAXIが目標の病院を通り過ぎて停車してくれたせいで戻らなくてはならないハメになり、サファリパークのライオン居住区を歩く気分だが、動揺を感じさせては一巻の終わりである。
途中、ハンバーガー・ショップの Jollibee があり、ガードマンが見えた。 しめた。 店に立ち寄りガードマンに親しげに・・いや、なれなれしく肩に手を当てて挨拶をして・・道を聞いたw。 病院の位置を確かめたかったのである。 肩に手を乗せられて驚いたガードマンが右の腰のピストルに手を掛ける前に先に現金のチップを目の前にチラツかせ、道を尋ねてみた。 親しげにオーバーにお礼を言って背中で道路側の出入り口を遮(さえぎ)って素早くチップを渡す。 外の道路側からはチップは背の影になって見えないハズ。 ガードマンとは知り合いの様な素振りで店を出た。 ガードマンが言う事には、ドン・カルロス病院の名は聞いた事はあるが正確なビルまでは分からないので、もう少し先のザ・ピザが安い? 違う、ザ・ビサヤス大学近くでもう1度聞いてみるといい、との答えだった・・。
アチコチからの視線はまだ感じられた。 確かに視線はまだ付いて来ている。 クソ熱い土地柄で背広姿もかなり妙で目立つ事は確かだった。 目立つよな~w。 しかし、背広を脱ぐ事が出来ない弱みがあるのだった。 大学があった。 ピザ安x ビサヤス大学がある。 門番のガードマンにドン・カルロス病院を訪ねてみたが知らないので奥で聞いてくる、と親切なガードマンだった。 正門の外で待っていると・・マズイ! 直感で正面と後ろから来た3人に囲まれると感じ、とっさに正門の脇のガードマン・ブース(警備室)に入り込んだ。 3人は正門脇に立っていた。 5分ほどで奥の事務室に行っていたガードマンが戻って来て、丁寧に説明をしてくれた。 その説明を聞いてビビッたw。 ドン・タコスだか、ドン・カールだかw、どん・カルロス病院はここから7ブロック、約7~800mも先で、病院の名前は残ってるので現地の人達は「ドン・カルロス病院」と呼んでいるが、正確には「ドン・カルロス高校」である事が分かった。 w・・・。
約1kも先である。 しかも3匹の腹ぺこコヨーテを引き連れて歩かなければならない。 歩いている最中に食われるのは明確である。 ガードマンにチップを渡して、警備室から出た。
警備室からでて、大学の正門へ向かいながら背広をゆっくり脱いで右手に持った。 そして、自分から3人の方へ向かって行く。 コイツら3匹と勝負である! 正門を出た瞬間に3人が囲むように近づいて来た。 囲まれた。 ゆっくり深呼吸をして、3人の目の前でタバコを取り出して派手なデュポンで火を付けた。 3人の目がライターに釘付けになるのが分かる。
1人が声を掛けてきた。
「 トリップ? 」 観光か?
「 ・・・・ 」 無言で睨(にら)みかえしてみる
「 トリップ? 」 同じ質問が
「 デ ハポン・・(日本から来た・・) ジョ ソイ ハポネース 。(日本人だ) 」 スペイン語でかえす
「 ・・・・ 」 スペイン語にあっけにとられていたが、通じてる様だった 流石、スペイン&キューバ領w
彼らは予定外の展開には弱いのである。 日本語か英語での返事が返ってくるもんだと決めつけている彼らにスペイン語は予定外の展開となる。 日本語や英語がかえってくればすかさず3人でタガログ語をまくし立てて相手を不安がらせて彼らのペースに持って行くのだ。 ひるんで怯(おび)えているとナイフで脅かすか、財布や貴金属をひったくって逃げるのである。 5年ほど前の深夜に左手首を切り落とされてロレックスを奪われたのもこの地域だ。 犯人は・・警官だったが・・。
予定外のスペイン語に3人で顔を見合わせている。 ここだ!
「 I’m Yakuza Japanese Yakuza 」 日本のヤ*ザだが
左腕の入れ墨を見せてやる。 勿論・・ステッカーだが、ホテルのアーケードで買ったそれらしく見えるタツゥだ
セブのマフィアは日本のそのズジの関係者(組)と接触があるので、Yakuza と言う言葉だけは共通語で知っている。 彼ら以上の格上である地元のマフィア達がYakuza屋さん達wに雇われて、仕事をもらっている事も知っているのである。 だから、地元の上役がお世話になっているYakuzaさんを怒らしては、彼らもタダでは済まない事ぐらいは良く分かっているのだ。 目の前の相手が日本のYakuzaとなると彼らもかなり分が悪いはず。
1人が他の2人にコイツに構わないで行こう、と目で合図をした。 形勢逆転でこっちの完全無血勝利である以上、このまま帰すにはもったいないw。 すかさずッ
「 ほら、小遣いをやる 」 日本のYakuza屋さんの太っ腹を見せつけるw $10ずつ渡した
「 その代わり、この先のドン・カルロス高校までついてこい! 」 と、3匹を逆に他のハイエナからの護衛にする事にした。 こんな事はフィリピンで2~3度危険な目に遭ッた経験があれば、小銭の使い方をマスターするものである。 彼らの日当はおおよそ100円~500円ほどなので、$10なら喜んで付いてくる。 安い即席のボディーガードを3人雇い、クソ熱いまっ昼間だが仕方なくまた背広に腕を通して左腕を隠した。
3匹をお供に引き連れてビサヤス大学を出て、ドン・カルロス高校を目指す。 でかいショッピングモールのメトロストアを右手に通り過ぎ、セブ・メイン・キャンパス大学を通り抜ける。 さっきピザ安い大学wから出て来て300mほどでまた大学である。 向かい側はスーパーマーケットとは名ばかりの大ショッピングモールがあり、この通りはまさにセブの中心街を誇っていた。
3匹のボディーガードを雇って歩いていても、何故か視線をそうとう感じるのである。 と言うよりも視線が増えている様な気までしてきた。 何気なく頭を動かしてショッピングモールを見るフリをしながら左右を見て見ると、目と目が合うと途端に目をそらす連中が多い。 ハイエナだw。 ヒョットして、この3匹が獲物を料理した後に自分たちもあわよくば・・と思って付いて来ている連中がいるのか・・。 ボディーガードに雇った3匹が逆に目立ってしまった様だった(>_<)。
まぁ、直接に襲われない以上は何匹ハイエナが付いて来ても問題はないが、ただ1つ、向こうの事務所を張り込むつもりでいた事が多少は厄介になる気もしてきたが、上手く事務所の向かい側に隠れて人の出入りをチェックしながら、ティアラと社長の帰りを待たなくてはならない。 ん? 事務所の向かいのビルって・・・高校だろ・・確か?。
フィリピン本島(ルソン島)とここセブ島とでは治安が全く異なる様に感じる。 路上での携帯はダメ、バックはダメ、財布はダメ、貴金属もダメ、後ろポケットは入れない、近づいてくる子供に注意、ミラーサングラス男には気をつける・・etc キリがない。 まぁ~本島で食いっぱぐれた連中が流れて来た島なので本島よりもかなり危険度は増すが、セブでも数人で固まって行動していれば問題も無いようだが、女性は危ないと言われる地域近くには絶対に行っては行けない。 セブを満喫するならホテルの近くで海水浴なら許せる範囲なのだが、それでも流石に夜間は気を付けないとマズイ箇所が結構ある。
真っ昼間に1人でさ迷う男も危険だが、なにせ、ミラー・サングラスを掛けた現地の男達にはなおさら注意が必要で有り、彼ら、マフィアのトレンドは・・そのミラー・サングラスなのである。 そんなサングラスをアチコチで掛けて店番をする店員が多く、気の抜けないコロン通りは繁華街と繋がっているので、仲間に連絡を取ればものの10分で100人は集まった来る処だw。
ひたすらコロン通りを西へ進み、おおきな交差点を越えると向かい側左にセブ・イースタン大学が現れた。 また大学かよw。 前方に怪しげな黒いビルディングが現れた。 カティプナン・ビルと呼ばれ、ワニの養殖をしてルイビトンに皮を卸している会社が入っている。 このビルは見学OKらしい。 見学者がワニに食われた話しもまだ・・聞こえてきてはいない・・w。
歩いた・・・歩いた・・死ぬほど歩いた気がする。 約1kmを真昼に背広姿で歩くのだから相当に思考力も衰え、いい加減にラリッテくる。 3匹のボディーガードは・・気が付くと消えていたw。 おいw、って何処行ったんだよ?。 $10分の仕事はしてないハズだが、もう目と鼻の近くまで歩いて来られたのだからまぁ~許してやることにした。
ドン・カルロス高校へ無事に午後14時45分、到着。 ティアラの情報によればこの高校か病院の向かい側の正面に彼女の事務所があるはず。 正面向かい側は・・・空き地だった。 建物を取り壊し、コンクリートで基礎を固めた工事現場跡が痛々しく残っていたが、そこは空き地である。
今さらになって気づいたことだが、ティアラも数回しか来ない事務所周りの情報など詳しく知ることはないハズで、とすれば、事務所に携帯でも入れて周りの情報を聞いた通りにメモって連絡してくれたのだろう。 適当な受け答えがかえってきた様だ。 今から事務所のビルを探さなくてはならない。 近くなのは確かなのだろうが事務所で会う約束の時間まで30分しかない。 イレギュラーでここまで歩いて来るの時間までは含めていなかったので、時間が押しまっている。 まずいな・・空を仰いで流れる雲を見つめた。
頭の中の筋書きでは、14時30分頃には現着して事務所の向かい側に陣取り、ティアラが戻って来る15時頃まで事務所に出入りする怪しい人数を数え、2人が戻って来たのを確認したら約束の15時30分前にそのままソロ凸の予定だった。 しかし・・事務所すらまだ特定する事が出来ていないのだ。
相変わらず不自然な視線を感じる。 そこいら中に2~3人のグループを作ってタムロッているセブ人の中にたった1人で見慣れない背広姿で、東洋系の中国人か、韓国人か、日本人かがまるで渋谷のハチ公前での待ち合わせの様にカルロス高校の正門付近で立ち止まりながらキョロキョロと何かを探している。 どこから見ても地理に不慣れで困惑している姿が、通りで獲物を探している奴らには打ってつけのカモネギ姿に写っているに違いなかった。
あせる気持ちを抑えてもう1度周りを確かめてみると左斜め向かいにはでかい教会が見える。 とにかく教会へ歩き出した。 こんな目立つ所で立っていたくはない。 教会に向かう人達がいるが、彼らに道を尋ねても無視されるか、いい加減な答えしか返ってはこないだろうと思い、教会に入り込んだ。 「サン・ニコラス・デトレンティーノパニッシュ教会」の文字が入り口の壁にはめ込まれていた。 中は思ったよりも広く、50名ほど頭数が正面を向いて座っていた。 日本の教会の様にキリストを中央に祭る様式ではなく、3段のひな壇式に格段に6人の聖者達、中央にはキリスト、父ヨセフ、母マリアが祭られている。
教会の中で少し落ち着いてくると 「 なぜ 教会に来たの? 」 と頭をよぎった。 その通りだった。 教会で祈りを終えた人に 「 この辺に 怪しいプロダクションはありませんか? 」 ・・・とは・・聞けない。 無駄足だった。
どうしても病院という言葉が胸につかえていたので入り口前で尋ねみると、 以前は、高校の中に病院があったのだが山側の裏手に移転をしてミラー病院の名で現存している事が分かった。 ミラー病院・・ティアラからの情報では間違くここの向かい側にある高校が、以前はカルロス病院であったことは間違いない気がする。 しかし、その病院が移転して新しい名前で開院している・・。 まいった・・。 時間ばかりが過ぎていく。 このまま約束の15時30分の約束に間に合わなければ・・いや、その後の事は考えないことにした。
教会の石段に腰をかけて携帯を取り出した。
ポチッ ♪♪~♪
「 ハ~イ サッちゃん で~す! 」 ・・・Orz お気楽すぎるゎ あいつw
「 サチ! 頼む! ティアラのエージェント事務所が見つからない 事務所を探してくれ! 」 声がマジったw
「 ん? 専務・・ OK! このまま 待って! すぐ調べるから切らないでネ! 」 頼む・・ サチ
「 コロン通り西ハズレのカルロス高校がカルロス病院だったらしく、 ティアラは その病院の向かいのビルだと・・ 」
「 まって 今 検索してるから 」 ハイw
「 専務 時間 大丈夫なの? 」
「 いや・・ ヘタ打ったわw 」
「 も~ しゃ~ないな~ やっぱ サチが同伴しないとダメか・・ 」 いえ いえw そんなこたぁ~ないと思うw
「 専務 エージェント事務所のTEL番号 教えて! 」
「 ん~と・・ 032-340-1122 」
「 ん? 1122って・・・ 」
「 どした? 」
「 ワンワン ニャンニャン~♡ 」 死んだゎw
「 いい? 専務 良く聞いてネ! 高校があるでしょう その 向かい側は 空き地でしょ? 」
「 ピンポン! 」
「 も~ 真面目に聞いて! 高校を背にして その空き地の右となりがコンビニでしょう? 」
「 見える 確認できる! 」
「 その コンビニの隣の5階建てのビルがそうよ! 電話番号と住所がピッタリコン だから! 」
「 そか コンビニがはいっている10階建てのテナントに隠れてて 見えなかったわ 」
「 サチ 39~ (サンキュ) 流石に やれば出来る子だな 」
「 で~しょう♡ サチに不可能はない! キャハ~ 」 キャハ・・か
「 じゃ これから いいとこなんでスタンバイを! イズ&ミミとも連絡を付けておいてくれ 頼む 」
「 了~解~で~ス! 専務・・ 死なない帰って来てネ・・ なんチャって♡ 」
「 む~ 帰れたら まずは お前の首 絞めてみるわ 待ってろ な 」
「 キャ~♡ 死に顔は綺麗じゃなきゃダメだから~ 上半身は 攻めないでね♡ 」 何のこっちゃw
「 ・・・・ 近いうちに ナ ・・・w 」
「 いっ寺~ しゃいませ~ 」 宇宙人かよ
「 じゃな ノシ 」
「 ノシ! 」 ・・・なにが えらそうに ノシ! だょ
ポチっ・・・
コンビニへ早足で向かう。 入り口でガードマンがいかにも本物です、というピストルを右の腰ホルダーに覗かせていた。 重くない?それ? 聞いてみたかったが・やめて、コンビニから外をうかがうことにした。 隣のビルだが、ここだと事務所の出入りが見えない。 時間も15時10分を過ぎていた。 もう既に事務所に入っているのか?まだ到着していないのかが分からず唇をかんでいた。 週刊誌でも見ているふりで外を伺いたかったが、並んでいた雑誌の全てがエロ本だぉw。 背広を決め込んだ紳士が、エロ本にのめり込んでいる・・と言う自分の姿を想像して雑誌に手をのばすのを諦めたw。 エロ本に手をのばして引っ込めた背広姿の東洋人を見て、ガードマンがニヤリと不気味な笑い顔をみせた。
くそ~、出入り口が見えない。 直に確かめるしかないな・・と思い、コンビニを出る事にした・・いや、山盛りのエロ本達が後ろ髪を引っ張るのだが、泣く泣くコンビニの出入り口に向かい、冷たい缶コーヒーを買って店を出た。
隣のビルの入り口はオープンで誰でも出入り出来そうなのだが、事務所が入っているフロアーが何階なのかが分からない。 社名プレートを探してもそんな几帳面なモノはあるはずがない。 仕方なく各階へ上がって調べることにした。 2階から調べる。 外見では通常のテナントビルに見えたのだが、2階でエレベーターを降りて息を止めた。 部屋は3部屋ある。 左右に一部屋ずつ、突き当たりに1部屋だ。 各部屋のドアは鋼鉄製で、防火扉が取り付けられている。 左右の部屋はその防火扉が閉まったままで、突き当たりの奥の部屋だけが防火扉が開いていた。 ん? ドアの奥にまたドア? 防火扉を合わせると3重の扉になっている。 これだと、扉を閉められれば中でカラオケを歌っても聞こえなそうであるw。 部屋の中で何があっても・・例えマグナム銃をぶっ放しても隣の部屋には聞こえないハズである。
部屋の入り口には事務所名が分かるものはなにもない。 奥のドアの上の部分に部屋番号だけが202と読めた。 そしてその番号の横に赤い紙に金色で漢字が書かれているお札が貼られていた。 残りのふた部屋は完全に防火扉が閉じているので中には誰もいないハズである。 奥のひと部屋は中華系の事務所の様である。
エレベーターの扉からは3部屋とも丸見えなので、ここでエレベーターのドアが開いたら・・逃げ場がない。 間違いなく不審者扱いで連れて行かれるだろう。
3階へ向かう。 エレベーターのドアが開くと2階と同じ位置で3部屋がある。 全て鋼鉄製の防火扉が閉まっていたのでこの階でレベーターを降りずに4階のボタンを押した。
4階でエレベーターが停まり、ドアが開く。 ここは左右に2部屋しかない。 部屋が広く取られている。 突き当たりの部屋がなく壁になっていて、左右の2部屋で仕切られているのだろう。 ここの階も2部屋防火扉が閉まっている。 多分・・ここも違う気がする。 残りの5階がプロモーション事務所なのか?。
4階でエレベーターの中からドアのオープンボタンに指を掛け、そのまま押しながら5階へ行こうかどうか少し躊躇(ちゅうちょ)したが、やはり上がって、軽くフロアーの雰囲気を確かめておけば不安はなくなるはず・・と、速攻で1階へ戻るつもりで5階のボタンを押してみた。
5階でエレベーターは止まり、ドアが開いた・・・閉まったw。 うへ~w 誰かが下の階でエレベーターを呼びやがッたのだ。 あわてて4階のボタンを連打する( ←10合流かよ? )。 4階でエレベーターを飛び降り、隠れる場所を探したがみあたらない。 だよねw 皆んな鋼鉄製の防火扉が閉まっている。 下から上がってくるエレべーターがこの階で止まる確率は1/4。 確率・・・高すぎだろ~~ワw。
て・・・ん? ここの4階でエレベーターが止まり誰かが降りて来たら・・・ 「 ハーバープロモーションは 何階? 」 って聞けば良いだけジャンw。 なんだかな・・・地域の悪名に負けてしまっていた様だったことに気が付いた。 別にいつも通りに振る舞えば良いだけの話しだったのだ。
エレベーターは5階へ直行した。 これだな・・直感的にティアラの到着を感じた。 ただ、さっき5階でエレベーターのドアが開いた際に正面に見えた防犯カメラが気になった。 カメラ写りが良ければいいのだが・・・ん?ちがうか?
すかさず1階まで降りると・・高級車がビルの正面に止まっていた。 車内には2人見える。 この車でプロダクションの社長とテァイラを乗せて来たのだろう。 隣のコンビニへ何気ない顔で戻り、店でハイネケンを6本パックx2個を買い込み両手にぶら下げて事務所に乗り込むことにした。
いきなり胸の携帯が ♪~ で切れた。
ティアラからだ。 事務所に到着したことを教えてくれたワン・コールだ。 さてと・・ 行くかな・・。 隣のビルまで戻り、エレベーターのボタンを・・押せないw。 左右のビールがジャマなのである。 右手のビールを床に置き、携帯をチェツクする。 やはりティアラからのワン・コールだった。 SMS(ショートメイル)も届いていた。 「 5F 」 と、だけ書かれていた。
15時25分。 いい時間だ。 エレベーターに乗り込み5階のボタンを押す。 勿論、両手にはハイネケンをぶら下げている。 両手がふさがっている事をアピールする為の演技だ。
5階に再度w到着。 ドアが開く。 正面にはお決まりの防犯カメラが派手にこちらを睨(にら)んでいた。 エレベーターを降りてゆっくりと周りを見回すフリをして徐々にカメラへ近づいていく。 部屋は左右にある。 左右の事務所・・は鉄壁の防火扉が閉まったままだった。 コイツら・・・部屋に入った後にも防火扉を閉めているのか・・。 あ、って事は・・各階の事務所も営業中でも入り口の防火扉を 「 防火 」 ではなく 「 防犯 」 用に絞めていたのか><。 うかつだった。
ワザとゆっくりと珍しそうにカメラへ近づき、カメラに向かってビールをぶら下げた両腕を上げて見せてみた。 さて・・どちらの扉が開くか? 右?か、左?か・・。
右側のドア、いや、鋼鉄製の防火扉が開いた。 中からか人相の悪い男が2人出てきた。 その1人が通路の奥でカメラに向かってビールを見せびらかしている変な男に・・俺かw 手招きをして呼んでいる。 両腕を下ろして彼ら2人の方へ歩き出した。
2人の男の2mほど前で立ち止まり
「 社長と約束がある 東京、新宿の めめ だが、 タレントの写真と金額の相談に来た 」 ハッキリ用件を伝える
「 今日の3時半の約束で アポを取っている。 確かめて 社長を呼んでくれないかな? 」 立場は 50 VS 50 をアピール
ゆっくりと英語で話す。 1人が事務所へ入って行った。 もう1人は残り、無言でこちらの体のアチコチに目を走らせていた。 両腕にはビールをぶら下げたままだ。 武器は身に付けて無い。 向こうは多分・・ズボンの背にナイフかピストルを突っ込んでいるハズである。 おかしな素振りをしたらハイネケンで顔面パンチであるw。 痛ソ~w。
時間はそんなに経ってはいないハズだが、やはり永~く感じるもので、2~3分が30分ほどにも感じられた。
先ほどの男が戻ってきて手招きをした。 しめた! 問題はなさそうだ。 厚さ7~8cmもある防火扉を横目に事務所へ足を踏み入れた。 ドアだけで3枚・・誰が押し入るんだよ・・こんな所に・・と考えながら、直に突入するよりもは事務所にゴキブリホイホイでも2~3缶ブン投げて、外から防火扉を押さえた方がズッと効果的だと思うのだった。
入り口手前に大きめの事務用デスクが置かれ、ラフなアロハシャツの男が2人と白いブラウスの結構♡可愛いw女の子が2人で電話の対応をしていた。 奥の窓際に応接セットが置かれ、ラタン(藤の木)のソファーが見える。 日本でならばそこそこの高級品だが、ここでは現地生産品で安いだろう。
事務所の広さは約200平米はゆうにありそうで、かなり広い。 ここの事務所は外から見た感じでは1フロアーに2つの事務所が入っている様に見えたのだが、中は繋(つな)がっていた。 部屋の中央に扉があり、その扉の脇の小さめのテーブルに一目でカタギではないと分かる3人がトランプをしていた。 多分、部屋の間取りは凹型のフロアーを3室に区切っていて、入り口に近いスペースにプロモーションの看板を出し、部屋の真ん中部分を共有のリビングと、タレントの女の娘達の控え室に使用し、一番奥の部屋が社長室になっているのだろう。 つまり、一番奥の部屋はエレベーターから降りた左側のドアの部屋なのだ。 今、ティアラはその一番奥の社長室にいるのだろう。
事務所の真ん中のリビングに通された。 先ほど部屋へ入れてくれた2人の男はそのまま社長室へ消えた。 2人が隣の部屋に入るまで立っていたが、テーブルに両手のビールを置き、ラタンのソファーに腰を下ろしながら社長室に通じる隣の部屋の前でトランプをする3人の男達を見ていた。 ポーカーでもなく、ブラックジャックでもないルールの分からないゲームだった。 入り口近くで電話応対をしていた右側の一番若く見えた女の子がホットコーヒーを入れて持って来てくれた。 ん~二十歳そこそこに見える娘だった。 彼女の肌の張り具合がうちの3匹の秘書達とは確かに違って見えたw。 コーヒーをガラステーブルの上にそっと置いて、軽く微笑みながら後ろへ振り向き、自分の席に戻って行った。
そのコーヒーを飲もうとした瞬間にトランプ台の上の携帯がなりだし、電話を受けた男がこちらを見ながら何かを話している。 そろそろか・・。 訛りの激しい言葉(フィリピンでは7つの方言がある)で、全く内容が聞き取れない会話をしていたが、携帯を切ってテーブルに置き、他の2人に何か指示を出した。 その2人がおもむろに立ち上がり、こっちにやって来た。
「 カムスタ カヨ! 」 ? 何語だ? どこかで聞いたような・・
「 なに? 」
「 カムスタ カヨ 」 さっきと同じだ
「 パンパンガ ダカ 」 もう1人も薄ら笑いながら 話し掛けてきた
「 パンパンガ ? 」 パンパンガって?
2人共に訛りのある言葉だった。 少し困った顔をして、ワザとさっきの 佐々木希? 似の彼女の方へ目を移して助けを求めてみた。 笑いながらこっちに来てくれた。
「 一緒に来て と 言ってるのよ 」 彼女が通訳をしてくれた
「 彼は パンパンガ出身なんで 言葉がちがうのよね 」 あ~ 分かりそうで分からないパンパンガ語だったのだ
「 2人と 奥の部屋に行って 」 通訳がいて 助かった
「 有り難う 奥の部屋だね 」
「 そう 社長が待ってる みたい 」
「 キュート カ ナマーン (可愛いね 君) 」 お世辞でもないが 遊んで見たw
「 もう~ ボラボラ なんだから・・ 」 お世辞が上手い=女たらし なんだから・・
「 日本人は お世辞は 言わないからね 」 そう言って ソファーから立ち上がった
「 (^o^) 」 笑ってるし・・
むさ苦しい2人に付いていった。 隣の部屋のドアの前で電話を受けていたもう1人の男がジッと素振りを見ていた事くらいは感じていた。 だから、なおさらふざけて彼がどんな反応をするモノかと・・みたかったのである。 怒るのか、笑うのか、無表情なのかでおおよそ彼のボスの性格が分かるのである。 社長の気質を知っていれば、社長に彼が怒鳴られないようにアホな日本人に一言、二言、何かあるはずである。 ヘタをすると・・ぶっ飛ばされる事もあるがw。
2人について行く途中で、テーブルの上のビールを持って来るのを忘れた事に気付いて1人Uターンをしてソファーまで取りに戻った。 ビールを両手の指に引っかけ、何もなかったかのかの様に3人の所まで戻った。 3人に右手を軽く上げてビールを見せて社長への土産だと告げて持ち込もうとした途端、3人共に厳しい表情で持ち込みは禁止だと告げられた。 どんな爆弾が持ち込まれるか分かったもんじゃないよな・・確かに。 少し厳し過ぎる気もするが当たり前の事なのだろう。
ビール6缶x2=12缶をトランプテーブルの上に置き、3人に付いて手ブラで社長室へ向かった。 ドアを抜けた先にw・・・またまたドアがある。 おいw迷路かよっ・・ここは。 ドラえもんでもこんなにドアは持ち歩かないと思うほど次々にドアが現れるのだ。 ドアの数だけ部屋がある訳である。 つまり、一部屋を小分けして各部屋毎に ガードマン=用心棒 を置いているのである。 どんだけ心配症なことか。
・・・・ あきれて言葉がでないほどここの社長はドア好きなようである。
いくつかの小部屋を抜け、社長室に辿(たど)りついた。 部屋は20畳ほどの広々とした部屋だった。 手前に大きなソファーがあり、一番奥に執務机と会議用の机が並べて置かれていた。 執務用の机に社長はいた。 部屋に入った瞬間からずっと目を離さずに彼はこちらを見ていた。 気が付くと部屋の左側に5人、右側にここまで案内して来た3人を含めて6人が立っている。 自分がこの部屋の主なら、いくら広い部屋でもむさ苦しい男が11人もいたら確実に3分も保たないで酸欠になってしまいそうである。
ま、即刻、むさ苦しい野獣達と等価交換でピチピチ美女達との入れ替えをするだろうけれども・・ネw。
立ったままで部屋の隅々に左回りで視線を走らせ、部屋の雰囲気と何か話題に出来る装飾品か美術品を探した。 珍しい物や別段高価な物は見当たらなかった。 何かが足りない・・。 部屋にあるべきモノがない・・そう感じた途端にとてもマズイ事に気が付いてしまった。 ティアラが部屋の中にいない・・・見当たらないのだ。 アイツ・・・何処にいるんだ・・・。
これは大きな想定外である。 もっと気楽に社長と話し合いながら何気に話題を東京経験者のタレントへと話しを進め、ティアラが同席した瞬間から話題を彼女に移し、彼女の話題から彼女を切り離す金額の話しへと進めて行くハズだった。 本人がいなくては自分の口からはティアラの名前は出せないのだ。 マズイ・・な。
とにかく突っ立ている訳にもいかないので社長の元へ挨拶に行こうと動いた途端、左右から3人の男達に遮(さえぎ)られた。 ん? 何だ? 1人が目の前にやって来た。 こちらが日本人なので言葉が不自由と分かっているのか手振りで指示をしてきた。 所持品検査である。 身に付けている物を手渡せと手振りで言っている。 手には何も持っていない。 ついさっきビールを置いてきたばかりで手ブラである。 それでも背広のポケットから探り始め、ズボン、靴下までチェツクをしてくる。 しかも・・部屋中の全員の視線が集まっているのだ。
せめてボディータッチくらいはさっきの気の利いた彼女にして欲しいものであるw。 相手が可愛い娘なら喜んで検査してもらうのだが、コイツらなら指一本でも触れて欲しくはない。
結局、所持品はクレジットカードが1枚と$100札1枚しか入っていないw財布、携帯、$10札をクリップして9枚、これだけである。 社長と話しが終わるまで預かると言うのである・・。 まずい・・携帯は途中経過をサチやイズにコール数で合図をするために使うアイテムなのだから。
ここはハッタリで勝負してみるしか他に道は無いように思えた。 一か八か・・九か・・十かであるw。
左腕をゆっくり胸の位置まで持って来る。 そのまま右肩を少し傾けて下げる。 妙な動きに全員が注目する。 ゆっくりゆっくり左手で背広の左襟(えり)をつかみ、右手で背広を脱いでいく。 ボタンを1つハズして思いっきり大きなゼスチャーで左腕から背広を脱ぐ。 そして右腕を背広からゆっくりと抜いて二つ折りにした背広を右手で持った。 なんてことは無い、ただ、背広をゆっくりと脱いだダケである。 そして今度はゆっくりと左腕の肘を立ててネクタイをほどき始めた。 滞在先のホテルでレジィーナちゃんが選んでくれたネクタイだ。 全員の目が左腕に集中しているのが分かる。 財布と携帯をドサクサに紛れて背広の内ポケットにしまい込み、背広を左手に持ち替えて注目させ、と同時に正面の社長へ頭をゆっくり下げて日本式のお辞儀で一礼してみせた。
フィリピンでは入れ墨での入国は禁止されている。 にもかかわらず入れ墨をした日本人が目の前にいる。 軽いパニックで本物の Yakuza屋さん が現れた思い込み、ひるんでいるのが空気を通じてわかる。 そこへ、すかさず社長へお辞儀で一礼したことで、周りの11人よりも立場は上のYakuzaさんだが、そのYakuzaさんが社長に深々と頭を下げたのだから、この日本人よりも社長は上と位置付けて、社長も11人の手前でメンツを守ったまま立場が逆転しているのである。
いつも仕事をもらっているYakuzaさんらへは逆らえない、しかし、うちの社長はそのYakuzaさんとタメ、同等に付き合える人だと彼らには錯覚(さっかく)をさせたのである。 このタツゥ(入れ墨)の効果は抜群で、以前、ある組の関係者3人で地元のマフィアを10人ほど病院送りしてしまい、その示談交渉で100人以上ものYakuza屋さんがフィリピン入りして以来、入国も厳しくなったのだが、組の垣根を越えた助太刀入国でYakuzaさん=日本最大のマフィアグループと、今でもセブの地元では思い込まれているのである。 セブ島のリゾート地でタツゥを入れた海水客を数多く目にするのも、実は、暗黙の了解で好きに泳いで下さい、と言っているのである。
背広を脱いで、左腕のタツゥをチラ見させただけで、空気が変わり、立場逆転であ。 後は出来るだけ大人しく話しを進めていくだけである。 勿論、携帯は誰にも渡しませんw。
目の前の3人の間を抜けて社長の前まで歩いて行く。 社長の顔をよく見ると・・流石に貫禄のある怖い顔立ちだったが、六十を越えたおっさんにしか見えなかった。 机の前でもう1度お辞儀をして軽く挨拶がわりに造り笑いをしてみる。 向こうの緊張も溶けたのが伝わってくる。
「 社長さん お時間を戴きまして 心から有り難うございました 」 半分は英語でも通じている様だ
「 皆さんにと、お土産のビールを持参したのですが 入り口で彼に取られてしまいました 」 彼を指さしてみた
「 土産もナシで大変申し訳ありませんので 今日の相談料として 帰りに向かいの銀行ATMから$1,000のお約束させて戴きます 」
「 その証拠に このカードの入った財布は どうぞ預かって戴いて結構です 」 財布を一番近くの大男に渡した
社長の顔が $1,000 のところで緩んだのを見逃す めめ ではないw。 10万で生きてここを出られるのなら安いモノである。
「 今日は 東京、新宿でパブを開きたいので若いタレントを10人ほど欲しんですが・・条件と金額を教えてください 」
「 できれば 写真で確認をお願いしたいのですが 」
「 こちらの ハーバープロダクションのことは 新宿の三和興産から紹介されて来ました セブでは一番だと聞いています 」
「 宜しく お願いします 」 思いっきり下手にでてみた
「 新宿からか・・ 」 初めて声を聞いた 顔に似合わずカン高い声であった
「 ええ 歌舞伎町です 」
「 あそこは・・ 先月も20人ほど送ってるな・・ 」
「 10人・・ 使えるタレントは 先月送ったんで 今はいないな 」 ハイ、じゃ他をあたります・・とは言えないw
「 そっちで話すか 」 会議用の大きなテーブルを指さした
「 有り難うございます 」
大きなテーブルの角で立ったまま社長の席に着くのを待った。 執務用のデスクから立ち上がりながら部屋の中央部で立っていた背の低い男に何ごとか大きな声で指示をしながらこちらのテーブルのド真ん中の席に座った。 かなりの年配の様に見えるが声だけはカン高いのため、少し声を出すと部屋中に響く。 社長が会議用のテーブルに付くと立っていた男達がバラバラと部屋から出て行った。 ふぅ~wやれやれである。 あんなに部屋に居残られては気になって話しを上手くもって行けないな(主導権を取れない)・・と心配をしたが、居残り組の2~3人相手の打ち合わせなら好きな様に料理が出来そうだ。
社長がテーブルの中央部に座ったので、日本なら正面でも問題は無い。 しかし、正面同士での会話では敵対感が強くなる。 相手をお互いに自分より 「 下 」 の人間と上から目線になりやすいことと、一般的には正面同士の空間を 「 理性の空間 」 と呼び、相手側よりも自分の意見を通そうとする傾向が出やすく、真正面の相手よりも常に優位に立とうと意識的に攻撃的な会話になりやすのである。 ま、何より真正面に可愛い娘が座ってくれるなら色々と全てに興味も沸くが、おやじ相手では興味もなにも沸くハズが無いw。
社長が座り終わるまでテーブルの角(カド)に立っていたが、おもむろに彼の左腕側、席を2個飛ばして笑顔で椅子に座った。 なんで俺の横に来るんだ?と言いたそうな顔を一瞬見せたが、何も言わずにジッとこちらの動きに睨みを効かせている。 敵意や嫌がる素振りをモロに表すのでは無く、純粋に 「 何だよ? コイツ 」 と言うゥ顔を見せた。 この席なら、表情を読まれたくない時は自分で左側を向けば隠れる事も出来るし、予定通りに後でティアラが現れた際に彼女を左側に座らせれば、好きなだけ目で合図を送れるからである。 まぁ、この席は 「 情の空間 」 と呼ばれ、説得する相手の左側は誘導しやすく、落としやすい空間と呼ばれている。 相手の右脳に訴えるのだそうである。 ← 本当かよw まぁ、おやじ好きで近くに座った訳ではない事は確かである。
席に着くと背広の内ポケットに隠していた携帯のアラームが ピピピッピ~♪ 鳴りだした。 通常の呼び出し音ではなく、指定時間を教えてくれるアラーム音だ。 ウッ。 午後16時、4時を教えるアラーム音だ。 そろそろマニラのイズ&ミミへ連絡を入れなくてはならない時間なのだ。 まずい・・こっちはこれからスタートなのだから。 「 失礼します! 」 と、平気な顔で携帯を取り出しアラームを止めた。 すかさず、左側を向いて携帯を膝の上で電光石火以上の早さで、まずはイズへ、そしてサチへ、最後にティアラの携帯にワンコールを送って切った。 めめからのワンコール・カットはまだ進行中でミッションが遅れている合図である。 テァイラへは事務所に入った合図と決めてあった。 サチとイズは2コール・カットを待っている。 2コール・カットが来ればイズはマニラでティアラとのTV局の契約にミミとの2合流wで攻撃に専念し、契約後は3コール・カットで連絡が入る取り決めにしてある。
すまん・・イズ、もう少し時間をくれ・・。 ティアラ~頼む~早めにここに顔を出してくれ~・・頼むから。
何も無かった顔で携帯を背広の内ポケットにツッコミ、ゆっくり愛想笑いをしながら・・
「 4時ですね、 お時間を取らせると申し訳がないので 話しを進めたいのですが・・ 」 切り出してみた
「 オイ、アルバムを持ってこい! 」 携帯の事など気にとめていない様子で近くの男に命令をした
おもむろに左足の靴下を脱いだw。 ここへ来る前に隠したデュポンを取り出したw。 靴下から取り出したライターを見せ、タバコをせがんでみた。 こんな日本人など見た事も無いだろう~とも思うが、完全にこっちのペースである。 タバコと灰皿を使いパシリの男が持って来た。 マルボロに火をつけながら指先を見た。 タバコを持つ指が・・まったく震えていない。 何者だよ?お前は・・・
・・・・・ ただ、時間が止まってくれることだけを祈っていた・・・・。
(-.-)y-゜゜ 続く・・
正義の味方も 時には 悪モノに変わるのものなのサ・・・
ふふふ・・ ババアの ベンツ 奪い取ってやった!