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蒼龍総本山オフ会 西新宿 No3
- 2018/04/28(Sat) -
 
 実は、この度のオフ会会場になっている「鳥元」は、会社から徒歩で10分程の居酒屋だった。 会社は都庁の筋向かい、新宿中央公園の隣なので、是非ともKGBさんからのリクエスト、いや強いお願い、いや半強制w的な要望で「秘書達をオフ会に呼び出して、一緒に飲みたい!」と、事前に打診の書状が俺に届いていた。

 会社では毎年、家族同伴での花見会が熱海の小島、初島で恒例的に開催されている。 8日(日)の花見会に退職した会社のマブダチ、社長からサチを通じて俺にも顔をだせ!と連絡が入っていた。 セクハラや問題を起こして首を切られた訳では無いwので甘えて顔を出そうか、出すまいかと・・・思い悩んでいたのだが、秘書達に会う良い機会だったので熱海まで足を運んで来た。

 元々、右目の調子が悪くなり、黄斑変性という名の病気を発症させ、左右の画像の大きさが違って見えるので目まいがとまらない。 また、古傷の座骨神経痛をもかかえ、夜な夜な不規則な生活をしていたせいで悪化し、歩くことも、車を運転することも辛くなってしまったのだった。 目が見えない以上、海外の現地時間に合わせてのチャット会議も負担になり、書類も読めない。 大学時代からのダチである社長へ「秘書達の昇級」を条件に退職したのだ。 彼からは今でも会社に戻って来いと、電話をもらうのだが、もはや俺の腹には復帰の意志は無くなっている。

 その最中(さなか・・・もなか、ではないw)、熱海で3匹の元秘書達に会ってオフ会の件を話して来た。



  サチ   イズ   ミミ


 俺の第一秘書だったサチは今では海外事業部の室長(=部長)になり、第二秘書のイズは同じく海外事業部のアジア開発・促進部の課長だ。 第三秘書のミミもヨーロッパ促進課を担当している。 有能な上司(めめ←ここ大事だからねw)に使えていたお陰で3匹共に女性ではかなりのポジションに居る。 昔、この3匹の採用面接をしたのも俺である。

 リゾートホテルではしゃいでいる3匹を呼び出し、この度のオフ会の件を伝えた。

「おい、月末の28日、新宿郵便局の近くの居酒屋でIXAのオフ会があるんだけど、顔出してくれないか?」
「え?合コン?」サチが真っ先に食いついたw
「チャウわいw IXAのオフ会で俺を入れて4人で飲むんだよ」
「ハニィー、オフ会って何?」
「おいw いまだに ハニィー はやめれ、アホミミが」
「アコ(私)、月末の予定、良くわからないから・・・」アコ(私)だと?フィリピン人かよ
「私はいきたいなぁ~^^」イズは乗る気だ
「ねねね、専務、4人で飲むの?」サチが面子が気になっている様だ
「おまえ、KGNさんって知ってるだろうが」
「KGBさんって、あ~、チャットで何回か話した事、あるかも」
「あるかもじゃね~よ。 おまえ、蒼母衣衆の時、内チャへ乱入したろうがよぉ」
「え?そだっけ? イズじゃない?それ」
「え~~わたし、乱入とかしてないわよ」
「おまえら二人、乱入してるわぁ。 忘れたのか?」
「いつの話?」さちが首をかしげる
「2年位前」
「え~~~~そんな昔の事、覚えていないわよ。 ね~イズ?」
「むりむりw 覚えてない」

「あ・・・あのなぁ~、乱入事件の件はどうでもいいから、28日(土)、夜、顔出してくれないか?」
「夜って、行ったら飲みたくなるし・・・飲んでからオフィスへ戻れないじゃないの・・・・専務じゃあるまいし」
「俺でも飲んで会社へいかねぇ~わ」
「行きたいんだけど、打ち合わせしてる時間だし・・・・ね、イズ」
「うん。 専務、私達の仕事時間、知ってるでしょう?」
「だなぁ・・・・。9時~5時じゃねぇもんなぁ~」
「え~、でも行きたいなあ^^」
「おまえ、IXAのオフ会じゃなくても飲めればいいんだろが」
「え!あたい、専務のために、と」
「やかましいわぁ。 ただ酒飲めれば何でも良いんだろうが」
「えへ♡」
「えへ、じゃねぇ~わ」
「だよなぁ~・・・・時間帯がキツイよな。 飲まなくて食べて帰ってくれれば俺の顔が立つんだが・・・・」
「行ってあげたいけど・・ね」イズがマジ顔で考え出した

「土曜の夜中だと、丁度アメリカと週末会議の打ち合わせ前だからね・・・」
「だよね」
「ハニィ~、何時?」珍しくミミが聞いてきた
「夜の8時過ぎならいつでもOK」
「8Pmなの?」
「多分、10時頃までは確実に飲んでると思うけどなぁ」
「ふ~ん」

「ただ、2次会で店を移動してしまうかもなぁ」
「じゃ、だめじゃんw 2次会のお店、わかんないし」サチが2017年のボジョレー・ヌーヴォーを飲み干した
「ん~そかぁ」

「平日のお昼なら抜け出せるんだけどね」
「そそ」
「ウィークエンドはみずかしいネ」みずかしい?難しだろ

「ね~専務、顔出したらエルメス買ってくれる?」サチw
「アホ!」
「残念・・・」


「だよなぁ~・・・・まぁ気が向いたらと言うか、時間が取れそうなら郵便局の向かい側の居酒屋・鳥元までたのむわ」
「は~い」
「余り期待、しないでね。ごめんなさい」
「そ~専務の仕事、そのまま受け継いでるから、夜はきついわよね」

「まあ~新宿で花見も無理だし、機会があれば昼飯合コンでもするかぁ」
「専務、それ、いいかも^^」


 余り期待は出来ないが、彼女達の良いところは不可能を可能にしたり、出来ない事が出来たりする事だから、全ては当日任せとなった。





 そんな事を目の前のKGBさんやはせぽんさん、隣の天寿さんとジョッキを合わせながらサプライズの淡い期待をしていた。






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蒼龍総本山オフ会 西新宿 No2
- 2018/04/26(Thu) -

               w


 テーブルの奥の席に腰を下ろし、壁に背中を預け、一人おしぼりで手を拭きながら「確か集合って18時だったよなぁ~?違ったかな~?」と、思いを巡らしていると見慣れた顔が突然あらわれた。

「こんちわぁ~ス!」と、満面の笑顔のKGBさんが、めめさん早いっスね!とでも言いたげに見えた^^
「ちっわぁ~、俺もたった今、席に着いたところだよ」
「そですか。 ん~と、席、ここでいいかな・・・」と、俺の正面に腰を下ろした 

「お久しぶりです^^ めめさん、痩せました?」ん?
「いや、いや、前回よりも増えてるハズ」w
「え? そうですか? なんか頬(ほほ)が少し・・・」と、自分の頬を 撫(な)ぜて見せた
「あ~、ちっとここ2~3日寝不足なんでね」
「そ~なんですか?」

 毎回思うのだが、KGBさんの記憶力は半端ねぇ~ほど鋭いのだ。 見かけはマッチョな陸(おか)サーファーなのだが、俺以上に頭脳明白で、記憶力は恐ろしいほど鋭いのだw。 ただし・・・酔っていない時の話であって、酔ってしまえば1+1も=3と答えるKGBさんなのだ。 (笑) 「みんなが揃(そろ)う前に外で一服してくるね」と、言い出そうとしたその時、3人目のメンバーが席にやって来た。

「こんにちは、始めまして・・・」と、座っていた俺とKGBさんへ直立不動の体制から深々と頭を下げてくれた

 KGBさんとマッタリしていた所へ、礼儀正しく直立不動でお辞儀をされたので慌てたw。 KGBさんと思わず目を合わせて二人で立ち上がり、こちらからもお辞儀をかえした。

「て・・天さんですよね?」 KGBさんが尋ねた
「ええ^^ 天寿です」と、笑顔で答えた
「始めまして!」 KGBさんが両手で天寿さんの手を取った
「始めまして」と、俺も天寿さんと握手をかわした

「天さん、どっちが誰か分かりますか?」 KGBさんが天寿さんへ投げかけてみた
「え~と・・・こちらがKGBさんで、そちらがめめさん・・・?」 図星だったw

 以前、初めてKGBさんのお膝元の小岩で、はせぽんさんとオフ会をした時に、第一印象から彼は「KGBさんをめめと、めめをKGBさんだと思いました」と、言われ、この度も天寿さんが誰を誰と言うのか密かにKGBさんと二人で楽しみにしていた。

「あ・・当たりですw」 KGBさんが残念そうに答えた
「当たっちゃいましたねぇ^^ その通りで、そちらがKGBさんで、俺がめめです^^」 KGBさんの残念そうな顔を見て笑った

「どぞどぞどぞ、座ってください」 KGBさんが天寿さんを促した
「あ!では、失礼します」と、天寿さんが俺の隣に座った

「改めまして、始めましてKGBです」 KGBさんが再度両手をだして、テーブル越しに天寿さんと握手をした
「めめです。 よろしくです」と、俺も隣同士で握手を交わした

「天さん、どちらからですか?」 気になっていたので尋ねてみた
「あ、自分は埼玉です」
「埼玉ですか? じゃ、はせぽんさんと同じだから新宿よりも池袋の方が近いし、電車、便利なのかな?」
「同じくらいですね。 電車が違いますから」
「そうですか。 時間、新宿まで35分位ですか?」
「全部でそのくらいですね」
「ですかぁ、オフ会参加、有り難うございます」
「いえいえ、こちらこそ、お声掛け戴きまして有り難うございました。 めめさんやKGBさん、はせぽんさんに是非とも会いたかったものですから^^」 物腰の柔らかい天寿さんだった


「お通しをお持ちしました」と、店員が小鉢を運んできた。
「お通しはお代わり自由ですんで」 KGBさんが小鉢を覗き込みながら言った

小鉢の脇にクラッカーが付いていたので、1枚つまみ上げて口に入れた瞬間に、はせぽんさんが飛び込んで来た。

「遅くなりました~」と、真っ赤なサッカーのユニフォーム姿のはせぽんさんだった^^
「こんちわ~」 KGBさんが自席をずらした
「ちわぁ~」 座ったままでオフ会3回目の顔なじみへお声掛けをした
「始めまして、天寿です」 初対面のはせぽんさんへ、天さんが立ち上がって挨拶をした
「こんにちは、はせぽんです」 初対面の天さんへ笑顔で挨拶をかえして、KGBさんの隣に座った

「はせぽんさん、サッカーの試合の帰り?」 ユニフォーム姿を見て聞いてみた
「いいえ、これ、違うんです・・・」と、あわててユニフォームの上を1枚脱ぎだしたw
「子供さんの試合の応援?」
「ん・・・・・と」 ユニフォームを脱ぐのが忙しくて軽く聞き流されてしまったw

「ここで慌てて脱いだって事は、その真っ赤なユニフォーム姿で電車で来たんかい?」 突っ込もうかと思ったが・・・やめたw


 取りあえず、オフ会初参戦の現盟主を含め、今回の4人が顔を合わせることが出来たのだった。


 前回のオフ会も同じく新宿だったが、めめのアレンジで早稲田寄りのホテルでめめ、輝夜さん、イシュさん、KGBさん、はせぽんさんと5名で午後15時から終電を逃したメンバーも出た午前0時まで盛り上がったものだが、この度もまさかの居酒屋を5時間も乗っ取り、終電でへべれけに酔っ払いながらの帰宅となるとは誰も予想は出来なかった。


 会場となった「鳥元」はKGBさんの「顔」のお陰で、お店のお偉いさんとの麻雀仲間らしく、4人が揃うとわざわざ席まで挨拶に来てくれて、焼酎以外は全てお任せで陣取らして戴いた有りがたいお店だった。 


 焼酎の中ボトルとアイスペールをKGBさんが手慣れたオーダーで注文し、まずはロックと水割りで4人で乾杯し、毎度の楽しい宴がスタートした。^^



                        


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蒼龍総本山オフ会 西新宿 No1
- 2018/04/23(Mon) -
   
            大集合w
     
         飲み過ぎで へべれけ~ のオフ会 ^^


 21日、夜18時からJR新宿駅西口にある新宿郵便局から向かい側路地、徒歩1分の焼き鳥をメインにする居酒屋、鳥元(とりげん)・新宿西口店でオフ会が執り行われました。^^




 18時の集合とのことだったので、少し早めにマンションを出て、伊勢丹のロレックスやブルガリの売店のお姉ちゃんを冷やかしながら、中国人らしき数人のグループが道端で大声で何かを叫んでいる脇を無視して素通りし、横断歩道を渡ってビックカメラの脇を抜け、新宿郵便局方面へと足を進めた。

 この通りの突き当たりが京王プラザホテルがあり、その裏に都庁がある。 その都庁の筋向かい側に俺が世話になった会社があるのだが、会社帰りでも俺はこの通りをあまり歩いたことが無かった。 新宿郵便局に用事がある時にだけ通る裏道だった。

 郵便局の向かい側の左に2本の路地があるのだが、1本目の路地だったのか2本目の路地だったのかを思い出せず、取りあえず2本目の路地を左に曲がって「鳥元」の看板を探した。 左前方に直ぐに看板は見つかった。 時間を確認すると18時30分だった。 集合が18時なのできっとすでにIXA仲間が集まっている事だろう。 

 鳥元の近くまで寄って、店の入り口向かいの立体駐車場へと向きを変えて立ち止まった。 左手にぶら下げていた鞄からタバコを取りだし火を付け、鞄を足元に置いて店の向かい側から入り口周辺を一服しながら伺った。 ひょっとしたらまだ誰かが遅れて来るかもしれない様な気がしたからだ。 

 タバコを2本吸い終わり、おろし立てのリーガルの踵(かかと)でもみ消し、3人が待って居るハズの店のドアを開いて鳥元の店内へ足を踏み入れた。

「いらっしゃいませぇ~」 入り口右の会計カウンターから可愛い声で美人店員が迎えてくれた^^

 入り口正面のカウンター席には客は見えなかった。 一瞬、正面の奥の仕切られている席に男女3名の客が見えた。 

「お一人様ですか? ご予約のお待ち合わせですか?」 会計カウンターの中から尋ねられた

「うん、予約での待ち合わせなんだけど」
「何名様でしょうか?」 笑顔が可愛い
「え~と、4名のはずだと思う」
「4名様ですね」
「うん」

「木村様のお席でしょうか?」
「木村? いや、違うと思う」
「では山本様?」
「違う・・・」 KGBさんの本名での予約でない事を祈ったw
「高木様? 内山様?」 手元にある予約名と人数の書かれたボードを見ながら次々と名前を尋ねられるw

「ん~とね、多分、グループ名での予約だと思うんだけど・・・」
「グループ名で・・す・・か・・」 彼女も悩みながら声のトーンが下がる

「あおりゅう・・・、せいりゅう・・・なんとか?」
「あ!それそれ!」 自分でも蒼母衣衆での予約なのか、蒼龍総本山での予約なのかが定かではなかった

 まさか、「ゲームのグループで、あおほろしゅう・・とか、せいりゅうそうほんざんとか・・・」と、聞けるほど俺の心臓は強くない

「せいりゅうそうほんざん様ですね。 はい、ご予約がございます。 でも・・・まだ誰もみえていませんが・・・」 オイw 誰もいないだと?

「まだ誰も来てないの?」
「はい、まだ来てませんが、お席へとご案内いたしますので」 彼女の笑顔は「変なグループ名~」と、でも言いたげだった

「ご予約のお客様! 31番へご案内をお願いしま~す」 彼女が正面の案内係に俺を預けた
「畏まりました。 31番へご案内いたします」 若いお兄ちゃんがこちらへと、手招きをした

 あれ~18時の集合だよなぁ~・・・と、考えながら入り口正面奥の左端のテーブル席へと案内をされた。

 木製の大きな4人掛けテーブルの上に小皿が3枚重ねられ、4人分用意されていた。 席へ案内してくれたお兄ちゃんが1度消え、戻りで熱いおしぼりの入ったバスケットを持って来た。

 女性の前では絶対にやってはいけない作法であるが、おしぼりの1本を取り上げ、熱々のおしぼりで思いっきり顔を拭いた。w この気持ち良さは女性には分からないはずだ。

「お飲み物は何にしますか?」
「ノンアルビールを取りあえず持って来て」と、彼にたのみテーブルの上のメニューを引き寄せ、目を走らせた。

 顔を拭き終えたおしぼりで手を念入りに拭いていると、いきなり見覚えのある顔がやって来た。

「こんちわぁ~ス!」 KGBさんだった^^ 








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運命だから・・・
- 2018/04/18(Wed) -

 今日1日だけで3度も 「・・・・運命だから」 と、言う言葉を耳にした。

 眠ようと思ってベットに入ったのだが、気になって起き出してしまった。

 朝、友人の見舞いに花を買って大学病院へ行って 「これも・・・・・運命だから」 と、彼女は言った。

 昼、別な友人(♀)と飯を喰っている最中に 「あなたとは・・・・・運命かも」 と、彼女も言った。

 夜、歌舞伎町のガールズ・バーで1人飲んでいると 「しょうが無いけど・・・・・運命なのかも」 と、呟かれた。

 「運命」・・・・・。 俺は運命と言う言葉を信じないタイプの人間だ。

 朝の彼女の言った「運命」は、こうなってしまった後悔の意味に聞こえる。
 昼の娘の「運命」は、偶然の巡り合わせに聞こえた。
 そして、夜の彼女の「運命」はどうしようも無い現実を写していた。

 たったひと言の「運命」だが、幅が広すぎて、聞き手の都合に合わせて聞き取られている。

 俺がもし「運命だから・・・」と、言うならば、それは、後悔や偶然、現実逃避ではなく紛れもなく、

 
 俺の DNA が、「俺が生まれて来てから死ぬま」での、決まり事を順番にこなしている 最中 での出来事を「運命」と、

 
 呼ぶ事だろう。

 つまり、何が、どんな事がこれから先に起ころうが、それは全て決められた道を歩いている課程での出来事であって、
 
 諦めでも、偶然でも、後悔でも無い 100% 決められた上での出来事が = 運命 だと信じている。


 だから、明日、ガンが発症したならば、それは生まれた時から決められた時間が来ただけの事であって、

 明日死んでも、それも生まれた時に決められた時間だと思っている。


 俺はそんなヤツなのだ。


 寝るw Am 02:30

 めめ。

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まじいなぁ~  ・・・ No31  完結
- 2018/04/08(Sun) -

 ものの2~3分で若い刑事がフォンへグラスに入った水と俺にはプラスティク容器に入ったアイスコーヒーを持って来た。 ついでに昔懐かしいステンレスの灰皿を置いていった。

 つい先日書かれたフォンの供述調書を取りに行った刑事はまだ戻って来ない。 わざとらしくタバコに火をつけた。 フォンが目を丸くして驚いている。 端から見たらかなり大胆な行為かも知れないが、個室でタバコくらい俺にはなんてことはない。 ただ、窓も換気口もないのでタバコの煙がそのまま部屋に充満してしまった。 ま、いいかぁ。

 ブラックのアイスコーヒーを啜りながら一本目のタバコを丁度消した時、刑事が部屋へ戻ってきた。 煙に嫌そうな顔をしてドアを目いっぱい開いて俺を睨んだ。 いくら睨まれても、ここで俺が悪たれをついても逮捕される訳では無いので好き勝手にやり放題だった。

「この調書には持っていた鞄を取られて、中の財布から現金2万円を抜き取られたと、書いてあるが・・・」
「だから、その辺はフォンの勘違いなんですよ。 ね、フォンさん」
「・・・・・」
「勘違いでも奪われたとある以上は」
「思い間違いだったんですよ」
「おたくね、こっちも仕事できちんと取り調べをしているわけだから、いい加減な事はここに書けない事くらいは分かるでしょうが」
「分かります。 良く分かりますが、以前の内容と、最近落ち着いてから思い出した事柄とに色々と違いがでまして、ね」
「2日にわたって同じ内容のことをそこのラッサミさんが言った事になってますがね」
「勘違いです」
「おたくね、勘違いでしたじゃ、済まないんだよ」 いらだってきている
「良く聞いてくださいよ・・・」
「本人が当時、動揺してどんな自供をしたかは知りませんが、その本人がここにいて、勘違いだと言っているんですよ」
「動揺していた当時と、今、こうして落ち着いている時と比べて、どちらに信憑性がありますか?」
「・・・・・」
「わかりますよね」

「あんた、弁護士じゃないんだろう」
「ええ、ただの知り合いで通訳です。 ですが、正しく通訳も翻訳も出来ますよ」
「今日、ここへ来たのは言った、言わないとか、やった、やらないとかの話じゃなくって、告訴を全面的に取り下げに来たんですよ」
「取り下げと言っても簡単ではないんだよ、あんた」
「簡単じゃない事は良くわかりますが、取り下げの事実は変わりません」

「そっちの人、えと、ラッサミさん・・・、この人の言う通り本当に取り下げに来たんですか?」
「・・・・はい」
「困ったなぁ」
「困ってるのはこっちです」

「自供の聴取ではあなたが殴られて、千葉の市川のアパートで鞄を奪われ、現金を抜き取られた事に間違い無いと供述してサインをしてるじゃありませんか?」
「・・・・・」
「刑事さん、サインをもらう前に本人へ読み聞かせて、確認してサインをもらってると思いますが、日本語が不自由な事と、当時は相手の事を憎んでいたでしょうから死刑にでもしてやりたいと思うのは分かりますよ。 でも、冷静になって考えてみるとかなり事実と供述が違うことに気が付いたわけですよ、フォンさんが、だから、こうして来ている訳ですよね」

「じゃ、供述書は全部間違いだとでも言いたいのかい」
「いえ、そう言ってる訳ではありません」
「いいか、この調書は2日も3日もかけて同じ内容を何度も確認しながら担当の刑事が書き上げて、内容に間違いが無ければサインして下さいと、サインをもらってるものなんだよな」
「ええ、でしょうね」
「間違いが無いからサインが有るわけだろうが」
「だから、その辺は勘違いでしたと、言っているんですよ」
「おたく、いい加減にしてもらえないかな・・・関係者でもない第3者が何を言ってるのか分かってるのか」
「刑事さん、そちらこそ何か勘違いしていませんか? 俺が話してることはここにいるフォンから聞いて、フォンに代わって通訳をしているわけだから、本人そのものでしょうか・・俺が」
「・・・・・」
「それに、あまり言いたくないですけどね、このまま裁判になって、証人喚問の時にフォンが「全て私の勘違いでした」と、言い出したらどうしますか? 検事さんも大恥をかきますよ、裁判官の前で」
「・・・・・」
「当然、検事さんから調べ直せと警察へ連絡が来たら、2度手間、3度手間を取るのはそちらのほうじゃないんですかね」
「・・・・・」


 刑事が何も言葉を返してこなくなったこのチャンスに、言いたい事を言う事にした。

「刑事さん、今日は言い争いに来たんじゃないんですよ。 彼女が事実と違う供述をした様で、物事がかなり大きくなっているので、本当の事を伝えに来ただけですから。 それでも、フォンの調書を100%信用して裁判をすると言うのでしたら、彼女は裁判所で証言をひっくり返す事になりまよ」


「実は・・・もう逮捕されてる容疑者の家族とも会って来ていて、示談書も慰謝料も受け取っているんですよ」

「え?」

「示談成立済みで、慰謝料も受け取っていると言ったんですよ」 ざまあみろ^^

「示談成立? 証拠はどこにある?」

「ここにありますよ、ほら」 鞄から1枚、書類を取りだして机の上に置いた

「え? なんだって?」 あわてて刑事が手に書類を取った

「こ・・これは」
「そうです、示談書です」 ^^

「示談書と言っても・・・」
「ですよね。 受け取れませんか?」

「・・・・・」
「警察に示談書を持ち込んでも余り意味の無い事くらいは知ってますよ俺でも」

「・・・・」
「直接、担当検事へ送った方が早いですよね」

「そうすると無駄な仕事をひと月もさせてしまう訳ですから、検事へ送る前に誠意でここに今日来たんですよ」
「今回の事件はここにあります様に示談が成立していて、慰謝料も今、彼女が手にしてます」
「同じ書類が2部有りますので、1部は告訴の取り下げ請求としておいていきます」
「もう1枚のこちらは今日、これから私の知人の弁護士を通して検事局へ行ってもらい、提出させてもらいますので」

「まいったなあ・・・」
「刑事さんの顔を潰したらいけないと思ったんで先に知らせに来たんです」

「そこのフォンさん・・だっけ、本当に取り下げするの?」
「・・・・・はい」

「そうですか・・・、じゃ、1枚はこちらで預からしてもらいます」
「宜しく御願いします」

「まいったなぁ・・・あんた、仕事、何してる人なんだ?」
「まじめに納税をしてるただの会社員です」 ^^

「なんだそりゃ?」
「いや、何でもありませんw ただの会社員ですがタイ語が話せるので外国人の相談役を引き受けただけです」

「タイ語?話せるのか?うちでボランティアの通訳しないか?」
「いやです!」

「え?なんでよ?」
「以前、新宿署でボランティアをして安い時給で24時間、寝てる時間も無く起こされた経験もありますので」

「え?そうなの?」
「そうです」

「いや~ まいったなぁ」
「こっちは先に検事局にいかないで、担当のポンジョ(本所警察署)へ顔を立てるつもりで来たんですけどね」

「そっかぁ~」
「取りあえず、1枚受け取ってください。 と、受け取り書、下さい」

「だなぁ~」
「もう1枚は、今日、これから新宿の弁護士に会ってこの事件の検事局を探してもらって持って行ってもらいますから」

「これで、間違い無く今回の事件の告訴の取り下げが出来ますよね」
「だなぁ~」 

「では受け取りを下さい」
「ちょっとまって、ちょっとまって。 今、書類をもって来るから」

「御願いします」
「はいはい」

 思いっきり困った顔をして刑事が出て行った。 フォンは横で震えていた。 怖かったのかな?


 逮捕されると48時間以内に検察官(検事)のもとへ事件が移されるので、事件自体は検事扱いになる。 刑事は検事のお手伝い程度に供述調書を造り、それを元に検事が起訴(裁判)か、不起訴かを決める訳なので、最終的な判断は検事にある。

 しかし、通常、示談が成立していればほぼ100%不起訴になる。 または、罰金刑になっても実刑は免れるのである。

 今日、フォンからもらった1枚を錦糸町警察署へ提出する必要は本当の意味では無いのだが、提出しないよりもは早い釈放を狙ったのだった。 不起訴が分かっていながら、今後は供述書を作る事(取り調べ)はなくなる訳である。


 ステンレスの灰皿を机の脚の脇にかくして置いたのだが、腕を伸ばして取りだし、机の上に置いてタバコに火をつけた。 最高にうまいいっぷくだった。 ブラックのアイスコーヒーもぬるくなっていた。

 時計に目を落とすと午後3時を回っていた。



 10分後、刑事が戻って来た。 書類を2枚机の上に置いた。
 
 1枚は示談書の預かり書で、もう1枚は告訴の取り下げ状だった。 喜びでタバコを消す手が震えた。

「じゃ、そちらのフォンさんだっけ? ラッサミさんだっけ、ここに今日の日付とサインをして下さい。 ハンコは持ってませんよね」
「はい・・・ハンコは持って来ていません」

「じゃ、まず、日付と名前、登録証の名前ね。 ここに書いて」
「はい」

「こっちの書類にも日付と名前を」
「はい」

「あとは2枚との拇印をもらいます。 右手の人差し指でお願いします」
「はい」

「あ~、少し黒くなるけど、そこのティッシュで指を拭いて下さい」
「はい」

「はい、有り難うございます」
「では、この紙が示談書の預かり書で、こっちが告訴の取り下げ状です」
「はい」

「刑事さん、この2枚とも関係者が不起訴になったらもう必要ないですよね?」
「と、思いますが、取りあえずは2~3年は保管をしていて下さい」
「ですかぁ。 分かりました」

「では、随分とお時間を取らせましたけど、有り難うございました」
「あと、事件の事で、何かありますか?」
「いいえ、書類の提出に来ただけですから」
「そうですか」
「ええ」

「あんた見たいな人、始めてみたなあ」
「え?」
「警察を手玉にとる人だよ」
「いや? 何の事やら」 w 
「では、これはこれで預かっておきますから」
「宜しくお願いします」
「・・・・・」 フォンは無口だったが、指に付いた黒いインクが気になっている様だった

「さて、フォンさん 帰ろうか」
「はい」
「失礼します」
「そこのエレベーターまで一緒に行きますから」
「有り難うございます」


 閉まったエレベーターの中で両手の甲をみて見た。 指先が少しだけ震えていた。 興奮していた。
 
 懲役5年を不起訴に出来そうなのだから当然のことかも知れないと自分で納得した。


 エレベーターを降りて受付の脇を通り、正面玄関へ出た。

「ごめん、フォンさん、ちょっと待ってて」 と、警察署の中へ引き返した。 刑事からもらった書類のコピーをしたかったのだ

 受付で「済みません、上で書類をもらったんですが、1部ずつコピーをお願いしたいんですが」と、下手にでてみた。
「え~コピーですか? 奥の交通課の隣に行ってください」
「有り難うございます」

 交通課の隣の総務らしい部署にコピー機が見えた。
「済みません、上で戴いた書類のコピーをお願いしたいのですが」 ここでも下手にでるw
「あ? いいですよ。 用紙を下さい」
「2枚有りますので、1枚ずつお願いします」
「分かりました」 と、受け取った用紙を見てギョッとしている・・・だよね

 無事に2枚コピーしてもらい正面玄関のフォンの元へ近づいた。

「はい、フォンさん。 コピー渡すね。 オリジナルは俺が持っておくから」
「ありがとうございます」

「もう二人でやることはないから、これでおしまいだね」
「そうですか」

「ま、いろいろ心境は複雑かも知れないけど、これでお互い幸せになれるさ」
「ですね・・・」

「取りあえず、有り難う。 君の借金は俺が責任をもってチャラにするから。 それと、今日、受け取った100万円は返せとは言わないから安心していいよ。 俺が約束するよ」
「はい・・・」
「もし、なにか心配事や相談事があるなら俺に連絡してくれ」
「はい」
「090-9312-9797 めめ、て言うから 俺の名前」 鞄からモンブランで用紙の裏にメモった

「? めめ ?」
「ああ、新宿のめめだよ」
「え? 本当のめめさん?」
「ああ、本物だよ」
「・・・・・・・知らなかった」

「ケース バイ ケースで鬼にも仏にもなるさぁ」
「名前は聞いたことがあります・・・」

「今回は鬼だったけど・・・フォンさんには」
「・・・・・」

「今度は力になれる事があれば遠慮しないで連絡してくれ。 出来る事ならするから」
「はい」

「ん?」
「めめさん・・・ごめんなさい」

「ん?」
「ゲオチャイのママさんが笑いながらお金を渡してくれたの・・・私に」

「よかったじゃん」
「だって・・・・」

「気にすることはないさ。 お互いに幸せになれるんだからさ」
「今回のことは・・・・ごめんなさい。 友達が直ぐに警察に行けばきっと借金は払わなくても良くなるって言われて・・・・」

「おおかた、そんな」事だろうと思ってたさ。 でも、もう終わったから」
「はい」

「もう止めよう、この事件の話は。 もう全てがチャラだからさ ね」
「はい」

「どこか送ろうか・・・と言っても、いずらいよね一緒は」
「はい・・・駅、そこですから歩きます」

「だね。 じゃ、またなにかあったら・・・・」
「はい。 さようなら」

「じゃね」
「はい」

 ワイ(タイ式の両手を胸の前で合わせる動作)をしてフォンは駅へ足を進めた。

 俺も駐車場のS500へもどりサンルーフと全ての窓を全開にしてタバコに火をつけた。







 逮捕から20日後、

 4人の内3人は不起訴。 勿論、タエちゃんも帰って来て、金沢へ向かった。
 主犯格のゲオチャイのママの娘リカは罰金50万円の略式裁判判決だった。

 1%でも可能性があれば俺は動くさ・・・・





                                   完結。


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まじいなぁ~  ・・・ No30
- 2018/04/08(Sun) -

 この更新をしている今日は4月の8日(日)。 朝早くから熱海の初島に来ている。
 
         エクシブ初島クラブ1     エクシブ初島クラブ2


 世話になった以前の会社から、毎年恒例の花見会へ誘いをうけたからだ。
 社員の家族参加で慰労会をかねたイベントだ。 年末にも行われ、1室1泊5,000円で泊まれる。
 勿論、差額は会社持ちだが、会員制クラブなので全国各地の施設を利用出来る。

 体調不良を理由に退職した会社なので、顔を出すのもバツが悪いのだが社長から直々にオファーがあったので参加している。
 久々に昔の部下達の姿をみると立派に成長していた。 きっと元の上司がいろんな意味で有能だった証だ。 ←キッパリ!

 芸能人の熱海での隠れ宿に良く利用されるのだが、メンバー費用も250万~と手頃で使い勝手が良いリゾートクラブだ。

 マッタリしながら広い部屋に引きこもりブログの更新をしている自分が悲しい・・・・・。


 「 オフ会 告知 」

 4月の21日(土) 新宿の西口、新宿郵便局のすぐ近くの居酒屋 
 鳥元 https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13006736/ で午後18時~ 安東家、蒼龍総本山のオフ会が
 KGBさんの主催で執り行われる事となりました。

 遊びに来たい読者さん、めめの素顔を垣間見たい人はお気軽に飲み会に参加して下さいませ~ (^_-) 
 参加費5,000円だそうです。

  *****

 通されたのは2階の刑事課のある一番奥の小さな部屋だった。 3畳ほどの広さで窓が無い。 昼なのに薄暗くヒンヤリとした空気がよどんで漂っている。 部屋の真ん中に事務用のスティール机だけがあり、折りたたみ椅子がドアの脇に立てかけられていた。

 俺とフォンにパイプ椅子を組み立て、机に寄せた。 「どうぞ」と、若い刑事が俺とフォンを促して、座らせてから部屋を出て行った。


 ここへ案内したのは若手の刑事だが、部屋にフォンと二人で居ると入れ替わりで年齢が50を超えた風格の、気むずかしそうな刑事が部屋へ入って来た。 目だけがギラついているいかにも刑事の目だ。 「おまえら、とんでもない事をしでかしに来てくれたなあ」と、でも言いたそうな顔だった。

 こんな刑事など俺にとっては朝飯前だった。 ただフォンが雰囲気に飲まれ萎縮してしまい下を向いたままだった。

「で、どんな件でしたっけ?」 刑事が目で圧力をかけてくる
「俺はこのフォンさんの知人で通訳ですが、彼女がかかわった事件の取り下げに来ました」 キッパリ伝える
「事件の取り下げ?」
「ええ、そうです。 告訴の取り下げです」
「告訴の取り下げって、調べが進んでるんですよ」
「ええ、面倒なことは良く分かっていますが、何分にも彼女に思い違いや、勘違いがかなり有りましたので」

 面倒くさそうな顔で刑事が俺の目を覗き込んだ。

「取りあえず、おたくの何か身分証を見せてもらえますかね」
「免許証しかありませんが、いいですか」
「ええ、結構です。そちらの方も外国人登録証を見せてもらえますか・・」 フォンの鞄を見ながら尋ねた

 財布から免許証を取り出し正面に座っている刑事に渡した。 フォンも鞄から財布を取り出し、登録証を机の上に置いた。

「じゃ、これ、コピー取りますから・・・良いですかね?」
「どうぞ。 その前に、1階の受付で渡したこの事件の刑事さんの名刺を返してもらえますか?」
「名刺?」
「ええ。先ほどの若い刑事さんが受付で受け取って持っていますから」
「じゃ、先ほど案内した彼に聞いてみますから、待ってて下さい」
「お願いします。 担当の刑事さんが誰か分からなくなると、面倒くさくなりますから」
「・・・・」 黙ったまま俺の免許証とフォンの登録証を持って部屋をでた。 出入り口のドアは開いたままだ

 俺の免許証をコピーして、ついでに犯歴の照会をする事だろう。 あまり良い気分では無い。 前科は無いが前歴は残っているハズなのだ。
 前科とは逮捕、起訴されて裁判にまで行けば、無罪でも有罪でも前科1犯となる。 裁判で罰金刑でも有罪の扱いとなるので前科1犯である。 前歴とは逮捕されて起訴まで行かないで釈放された回数が前歴となる。 逮捕され1日でも警察に泊められたことがあれば前科は0でも前歴1となる。 つまり、警察のお世話に何回なっているのかが照会で分かってしまうのだ。 痛くもない傷口を探られる気分だった。
 
 10分ほどでさっきの50過ぎの刑事が戻って来た。 右手にフォンの登録証と俺の免許証と白い名刺が見えた。 ゆっくりと俺の顔を見ながら椅子に腰を下ろして、机の上に登録証と免許証を置いた。 

「コピー取らさせてもらいました。 どうそ」 俺とフォンの前に手で押し出した
「それと、これですね担当刑事の名刺は・・・」 俺に渡した
「ええ、そうです。 有り難うございました」
「これは私の名刺です。 吉田と言います」 名刺を渡された

 目を通すと1課1係の係長の名刺だった。 かなり位の高い刑事だ。 

「そちらさんは警察は怖いですか? そんなに堅くならなくてもいいのに」 フォンを見ながら刑事が笑った
「・・・はい」 フォンの声がかすれていた
「ですか、はははは」 低い声で笑った
「で、こちらさんは余んまり警察が怖くないようですね・・・」 俺を、見てうすら笑いをした
「まぁ、新宿に永いこと住んでいれば、大概(たいがい)の物事には動じなくなりますからね」
「ですか・・・」 ニヤリと笑った もうこちらの前歴は割れている顔だった

「では、詳しくお話を聞きましょうか」 刑事が姿勢を正して椅子に座り直した



「今日、突然でしたけどお伺いしたのは、こちらのフォンさんの事件の事でです」
「フォンさん?」
「フォンと言うのは通称名ですが、IDにはラッサミ・トン・ブン・マーと言う正式名が載っているはずです」
「・・・・ん」 登録証に目を落としながら確認をした

「TVのニュースや新聞等でもかなり書かれてましたけど、ここ、錦糸町でこちらのフォンさんが借金の返済トラブルから殴られ、拉致されて暴行や鞄から現金を取られた、強盗されたと言う事件です」
「確かに、内の係で捜査してるんだが・・・」
「その件なのですが、調書を取る際にかなり動揺をしていた事と、日本語のニュアンスが良く分からなかったので受け答えでハイ、ハイと、答えていたらしいのですが、最近、落ち着いてから詳しくフォンさんに聞いてみると、殴られたのは確かなのですが、バックからお金を取られたと言うもの勘違いで、鞄から財布を取り出し、テーブルの上に置いて「お金はそれだけしか今は無いから」と言ったらしいのです」
「・・・・・で」
「机の上の財布から現金3千円だけを抜き取って、相手からは財布を彼女へ手渡してもらったと」
「・・・・・」
「分かりますよね、言いたい事は」
「・・・・・」 黙ったままこちらの目を見ている
「彼女から鞄を取り上げて、嫌がる彼女から無理矢理に財布を奪って現金を抜き取ったのでは無いと、言う事です」
「・・・・・」 
「それに」
「ちょっと待ってもらえますかね。 調書を見てみますから」
「是非、確認して下さい」
「供述書を取って来ますから、このままで」
「ええ、どうぞ」

 顔をしかめながら部屋を出て行った。 事件の大きなポイントの強盗と、テーブルの上に自分から財布を置いて「中身を確認させた」では、全く事件にはならないのだ。 たとえ、その確認をした財布から3千円を抜き取っても、本人の目の前で同意を得て抜き取ったのなら犯罪では無い。 ここが1番の突っ込み処なのだ!

 しかし、報道では、アパートの部屋内で彼女から財布の入った鞄を奪い=強盗、現金を抜き取り、その際に抵抗する彼女、フォンに乱暴(暴行、怪我をさせた=致傷)をしたと、言う事になっていた。

 俺がその場で見たわけでは無いが、事件後にタエちゃんが同じ同僚に話した内容では、間違いなくフォンがテーブルの上に置いた鞄の中から、フォンに言われて財布の中身を確認して財布から3千円を抜いたと、聞いていた。 今となれば横にチョコンと座っているフォン自身から話を聞き出せば事実は分かるだろうが、そんな事は今更になっては無意味でしか無かった。

 やった、やらないなど、本人の記憶でも曖昧なものなのだ。 
 調書を作る刑事次第で天と地ほどの調書(物語)が出来上がる。 要は警察側をいかに納得させる事が出来る話であるかどうか?だけが重要な事なのだ。


「なにか 飲みますか?」 先ほどの若い刑事が部屋の入り口で聞いてきた。

「フォンさん、何飲む?」 小さくなってる彼女に尋ねた
「私、お水でいいです」 蚊の鳴くような声だった
「じゃ、お水と俺にはアイスコーヒーをお願いします。 ブラックで」 ^^
「え?・・・そちらがお水とアイスコーヒーですか・・・」
「ええ、お願いします。 気持ちを落ち着かせたいんで灰皿もお願いします」 ^^
「・・・わかりました。 少々お待ちください」


 取り調べ室でタバコなど、滅多にない事だし、俺にも久々の経験だった・・・。    笑



                         まじいなぁ~  ・・・ No31へ




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まじいなぁ~  ・・・ No29
- 2018/04/07(Sat) -
 
 錦糸町警察署はJR錦糸町駅から直ぐ北側、錦糸公園沿いの四つ目通りから、スカイツリーへ向かう中間点に位置する。
 昔から本所警察署と呼ばれていて、錦糸町警察署とは呼ばれていない。 地元では本所(ほんじょ)が訛って、「ポンジョ警察」と呼ばれ、駅からゆっくり歩いても10分もかからない。

 正面入り口の左側へ会社から乗ってきたS500を駐車場へ駐め、時計に目を落とす12時15分をまわっていた。 車から降り、示談書の入った鞄を持ち、正面玄関へ向かいながらフォンの姿を探す。 40過ぎのタイ人女性なら、ひと目でフォンと気づくはずだ。
 あたりを注意深く見渡したが姿は見えない。 警察署の正面玄関から中を覗くと受付の警官から用件を尋ねられたが、友人と待ち合わせだと、軽くあしらって駐車場へ戻った。 フォンの姿が見えるまで車の中で待つ事にした。

 車に戻り禁煙車のサンルーフを全開にする。 運転席と助手席の窓ガラスも一番下まで下げる。 タバコに火をつけながら昨日のフォントの会話を思い出していた。 「こわい・・・」と確かに口にした彼女の言葉が耳に残っていた。 実家へ飛ばした取り立て屋の奇襲が効をそうした。 タイ国の実家をも巻き込んで、どうしても混乱の内にフォンから示談と告訴取り下げを取り付ける必要があった。 
 関係者が逮捕後、20日以内にもみ消さなくては実刑は確定なのだから・・・。

 
 気が付くと12時を40分ほど回っていた。 ここまで待たされると流石にこっちが不安になる。 本当に来るのか心配になり始めた。 そんな時だった。 警察署の正面に1台のTAXIが停まった。

 運転手へ代金を支払い、TAXIから降りて正門前で直立不動のままで今来たばかりの駅の方を向いている女の後ろ姿を見ながら、車内で吸っていたタバコを半ドアにして車外へ落とし、投げ出した足で踏み消した。 サンルーフと窓を閉めながら彼女の動きを目でおって、ゆっくりと車から降りてドアをロックした。


 駐車場からゆっくりと彼女の方へと近寄って行く。 と、警察署の正面で振り返った彼女と目と目が合った。 40歳台には見えないほど若作りをしている女だった。 一瞬後退りをしたがその場を動かなかった。 彼女の目の前まで行って声をかけた。

「フォンさん かい?」
「ええ」
「昨日、電話をした者だけど、ゲオチャイへ行って来たのかい?」
「今、行って来ました・・・けど」
「じゃ、お金は受け取ってるね」
「ママさんから受け取りました」
「OK, じゃ約束通りだよね」
「待って、本当にもうタイの実家には取り立ては行かないわよね・・・」
「ああ、約束通り、もう行かない予定だけど」
「予定ってなに?」
「あなたが、フォンさんが約束を守ってくれれば心配は無いハズ」
「・・・・・分かりました」
「約束通り、この前の事件の件での、告訴を取り下げてもらえればそれで良い事だからさ」
「・・・・」
「難しくないから、任せてくれ」
「はい」

「まずは俺が持って来ている書類へサインをしてもらいたいんだけど、警察署の中で書こう」
「ええ」

 2人で正面玄関から署内の左奥にある免許証書き換えセンターのテーブルに向かおうとすると、受付の警察から声をかけられた。

「どういった用件ですか?」
「済みません、今、書類を書き終えてから伺いますので。 そこの机、お借りします」
「どうぞ」

 怪訝そうな顔で俺とフォンの2人の顔を2度見、3度見している。 受付の2人の警官を無視して奥の机に向かった。 後ろからフォンがついてくる。
 カウンター式の机に鞄を置いて中から書類を2枚を取りだして、1枚をフォンへ手渡した。 同じ中身の書類だ。

 手渡された書類を見ているが、中身は日本語なので分からないと、言うジェスチャーをした。

「フォンさん、あんた本当に俺を怒らせてしまったんだよ、今回は・・・」
「・・・・・」
「だから借金を返せなければ、実家も親戚の子供達の通っている学校まで火をつけてやろうかと思ったさぁ」
「・・・・」
「言っておくけど、俺はあんたのおかげで最後に逮捕されたタエちゃんの友達なんでね」
「彼女の友達から今回の事を聞いたけど、随分と話が違う気がするんだよ」
「で、友達までが逮捕されてしまったんで、あんたの実家まで巻き込んだ訳さ」
「・・・・・」
「でも、昨日、あんたと約束をした通り、借金は無しにして、プラス100万円で事件を取り下げると言う事で、あんたも約束を守るなら俺の方も約束を守るからさぁ」

「それで、いいよね」
「・・・ええ」

「もし、いやだと、言われたら火事を起こして、火をつけた犯人達の全員をラオスへ逃がす予定だったのさ」
「・・・・」

「まぁ、約束を守ると言う事なんで、話を進めるけどさぁ」
「この書類の内容は、今回の事件に付いて勘違いや、事実と異なる供述を間違ってしてしまったので、当事者の家族との示談を納得して受け入れ、告訴を全面的に取り下げます。 また、慰謝料名目で現金100万円を受け取りました。 と、言う内容が日本語で書かれているから、あなた、フォンさんは書類のここへサインをして」

 彼女の持っている書類の一番下の右端にサインをせがんだ。

 フォンは何も考えずに簡単にサインをした。 続けて、2枚目の控えにもサインをさせた。 簡単だが、示談書の完成だ。
 1枚はここの警察署へ提出して、同じ物のもう1枚は担当の検事へ知り合いの弁護士を通じて送りつけるのである。
 

 
 2枚の書類にフォンからサインをもらい、1枚は提出しなくてはならないので、もう1度、2人で受付へ向かった。


「すみませんが、刑事事件の告訴の取り下げをしたいのですが」 受付でわざと大声で話した
「え? どう言う事ですか?」
「告訴の取り下げをしたいんです」
「取り下げ?」
「はい」
「どんな事件ですか? 担当の刑事は分かりますか?」
「フォンさん、担当の刑事さんの名刺でも持ってないかな?」 振り返ってフォンに尋ねた
「え~と、名前は忘れたけど、名刺はこれです」 しめた
「担当は刑事1課の橋本さんです」 名刺を読みながら受付に手渡した。
「少々、お待ち下さい。 お二人のお名前をここへ書いて下さい」 受付票を渡された

 フォンはローマ字で書き終え、受付票を俺に手渡した。 俺も名前を書いて2枚を受付に渡した。

「上から人(刑事)が来るまで、そちらのソファーでお待ち下さい」 受付が目の前の長椅子を指さした
「おまちします。 フォンさんも座って」 彼女から座らせた

 いきなり受付が慌ただしくなった。 担当が誰だとか、事件の告訴を取り下げに来ているとか、パニクっている。 多分、上の刑事1課でも同じ事が起きていることだろう。

 何よりもフォンが刑事の名刺を財布の中に入れて有ったことが幸いだった。 面倒な手間が省ける。 

 フォンは腹を決めた様に見えた。 この事件の件は俺から言われるように取り下げて、借金はチャラで+100万円を手にした方が利口な事くらいは気が付いているんだろう。 

 
 あとは俺と刑事との勝負だ。 
 告訴の取り下げなど、刑事にとってこれ以上の最悪で屈辱的な事はない。

 フォンは他人ごとの様に成り行きに身を委ねていた。

「1課の橋本が取り調べ中なので、別の者が来ますから」 受付から若い警官が伝言で来た
「分かりました。 お待ちします」 誰が来ようとも示談書と取り下げは受理させる気でいる腹でいた


 5分ほどすると奥のエレベーターから若い刑事が降りてきた。

「え~と、めめさんとフォンさんですか?」
「ええ、そうです」
「では、お話を聞きますので、2階の部屋の方で・・・」
「わかりました」 他人ごとの様な顔をしているフォンを促して3人でエレベーターで2階の刑事課へ向かった。


 相談室、と言うよりもは・・・広めの取り調べ室へ案内された。 フォンの顔がこわばってきていた。

「私の方で話をお聞きしますので・・・・」 若い刑事とベテラン刑事が入れ替わった

 
 

 拗(こじ)れさせると面倒になるので、要点、要点に注意をして伝える事にした。







                           まじいなぁ~  ・・・ No30





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