「専務・・・せんむ・・・せ、ん、む」 左脇を誰かにボールペンで突つかれた気がして我に返った
「ん?」
「ん?じゃなくて、来月からのマレーシアでの展開に関して、見越し計上利益の概要を説明してって社長からのご指名よ」
「え?」 会議中だった事をすっかり忘れて、例の事件の事やこれからの面会の事を考えていて俺には何も聞こえなかった
「ここから読んで」 イズがこっそりと資料ファイルにマーカーでラインを引いていてくれていた
会議など殆ど参加もせずに外出してしまい雲隠れするのだが、今日は運が悪く、社内で連絡を待っていて自室でマッタリしていたところに午後13時からの会議がはいっていた。 イズは議事録係で俺に同伴して一緒に会議に顔を出している。
なぜに専務が会議をサボれるのか?不思議に思うかもしれないが、俺の海外事業部は他の営業部署とは異なり売り上げの目標などという数字は存在しないのだ。 セールスをして売り上げ、利益を上げる部署とは違って、海外や国内の企業から「こんな製品を探しています」とか、「この新商品を海外で売りたいのですが」という、企業と企業を結びつけて、そこで生まれた利益を分けてもらうシステムの部署なので、探す「品物」や結びつける「企業」が無ければ利益などは計上されない部署なのだ。
よって、営業数値を重視する会議など俺には関係の無い会議で、まぁ~、厳格に言えば、専務という立ち位置からの
ひな壇に飾られているだけの会議なのだ。
「専務、早く、ここから読んで」 イズがせかしてくる
椅子に腰をかけたままでゆっくりとイズがマークしてくれている箇所だけを読み進める。 会議資料に書かれてる事を小学生の様に単語をかみ砕き、ゆっくりと読み続ける。 2ページ目の半分ほどを読み進めて面倒くさくなってしまった。 こんな資料の読み合わせ会議など参加する意義など感じない俺には拷問なのだ。 で、後はイズに任せる事にした。
「これ以上の来期の計上利益の詳しい説明は、第2秘書のイズからご説明させて戴きますので・・」 先はイズへ丸投げしたw
豆鉄砲を食らった鳩のように大きな目玉で驚いたイズだが、彼女は賢い娘なので俺の続きを読み始めた。
中国が日本の技術を身に付け、品質もそこそこ向上し、今や生産工場は中国、ベトナム、マレーシアへ移りはじめている。 なかでもマレーシアは企業税に関してはタックス・ヘブン(天国)なので拠点をマレーシアへ移す企業も世界中から集まって来ている。 投資額でも世界第1位である。
まぁ~俺には興味もない国なのだが・・・。
イズが6ページ程の資料を読み終わり、大きく深呼吸をして右を振り向き俺の顔をみた。 「専務、ただじゃ許さないからね!」という目をしていた。 怖いわぁ ><
「イズ、有り難う~ 今日の会議スーツも素敵だよ^^」 お世辞を言ってみても効果はなさそうだった・・
マレーシアへ総務部の一部を移すメリットをイズが説明し始めた。 と、その時、背広の内ポケットで携帯のバイブレーターが踊り始めた。 内ポケットへ手を入れ、名前を確認すると「木下」と表記されていた。 彼だ。
携帯をそのまま取らずに1度切り、手に持って社長へ「ちょっと電話をしてきます」とサインを送って会議室を足早で出てドアを閉めた。
エレベーターホールの吹き抜けまで足早で歩きながらリダイアルのボタンを押した。 ♩~♩~
「はい 木下です」 彼がすぐでた
「すみません、会議中でしたのでかけ直しました」
「会議中ですか、申し訳ありません」
「いえいえ、気にしないで下さい。 で、 今、どこですか?
「今、上野駅に着きました。 これから新宿へ向かいますが・・・」
「上野? じゃ、新宿じゃなくて池袋駅で落ち合いましょうか?」 あ!話してしまってから後悔した 荷物が下に山ほど有った
「池袋ですか?」
「ええ、新宿から向かうのも、上野から向かうのにも同じくらいですからね時間。 新宿まで来てまた池袋へ向かうと時間も掛かりますし・・・」
「・・・・・」
「あ~そっかぁ~・・・・面会の前に少し打ち合わせもしたいし、今後の事もゆっくり話したいですよね・・・・では新宿でお待ちしています。 新宿駅に着いたらTAXIで都庁の向かい側の中央公園でTAXAIをおりて連絡して下さい。 直ぐ近くですので会社」
「分かりました。 では新宿へ行きますので 宜しくお願いします」
「では、連絡をお待ちしています」
「それでは」
「秋葉原からですと20分ほどで新宿へ着きますので」
「有り難うございます、では」
「では、お待ちしています」
ポチッ
午後1時30分を少し回っていた。
このまま会議に戻る気分では無い。 会議はイズに任せて自室へ戻ることにした。 エレベーターの↓ボタンを押して昇ってくるエレベーターを待った。 会議室の1階下が俺の部署だ。 大会議室は会長室、社長室、視聴覚室と同じ最上階のフロアーにある。
海外事業部へ戻ると誰もいなかった。 ん? サチは? ミミは? まぁ~いいかぁ~と、自室のドアを開くとサチとミミの2人が俺の部屋でプリンを食っていた。 w 会議中とばかり思っていた俺が急に帰って来たんで2人とも目が飛び出して驚いた。
「オ~マィ~ガァ」 ミミが叫んだ
「><・・・・」 さちは声が出ない
別に驚くことでは無い。 俺の会議中にイタリアン高級ソファ~でマッタリとリラックスしてプリン試食タイムを開催しでテーブルに7個のプリンが乗っかっていた。 テーブルの上から1個、プッチンプリンとプラスチックスプーンを取って部屋を出た。 エレベーターホール脇の吹き抜けに背を預けてプリンを食ってみた。 ここ、新宿へ向かっている彼の気持ちを考えるとプリンの味は良く分からなかった。
吹き抜けのホールから見える中央公園の樹々は優しく揺れていた。
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