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まじいなぁ~  ・・・ No22
- 2017/12/30(Sat) -
Chrome で書いています。


 香港にモデルをしている3人のマブダチがいる
 その1人のメナちゃんが、1年半ほど前からモデル業を止めて、イベントやクラブでのDJを始めて大ブレーク中
 今では DJ Mena と言えばアジアのクラブではかなり知られた名前になった

                MENA モデル時代     DJ MENA


  
 つい最近 「あなたのために作った」 と、これを公開してくれた。 ウソだと分かっていても、本人から言われると嬉しいわなぁ
           不醉不歸  Don't Let Me Down  がっかりさせないでね! と言う題名・・・   意味深・・・

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 サチと2人、気まずい雰囲気でエレベーターの中で無言で過ごす。 途中のフロアーで何回か扉が開いて社員が出入りをしながら挨拶をしてくれたが、お構い無しに無言で通した。

 エレベーターからサチが先に降りると、紙袋を抱えたまま海外事業部へ足早のまま、部屋のドアの脇のIDチェックに首から提げたカードを押し当て、ドアを右膝で大きく開いて中へ消えていった。 多分、荷物の袋を机の上に置き、俺の入室を腕を組んで正面で待っている事だろう。 そのまま部屋の前を通り過ぎて、非常階段へ向かった。 おもむろに非常階段のドアを開いて、内ポケットからタバコを取りだし、火を付けた。 喫煙禁止場所だが、俺には関係なかった。 喫煙室まで行くほど人間が出来ていない俺を、自分が一番よく知っている。

 ものの数分で1本のタバコを吸い終わり、2本目に火を付けようとしたが、思いとどまり、足元の吸い殻を非常階段に蹴飛ばして部屋に戻ることにした。 きっとサチの目は三角になっている事だろう・・・。 イズにも会議を抜け出して、丸投げした引け目もあった。

 ドアの前で深呼吸をして、部屋のドアを開いた途端、目を疑った。 机の上にジャージや下着、ブラジャー、ヒートテックのインナーが散乱していて、サチと、イズとミミで取り合いになっていたw。 大阪のおばちゃんのバーゲン会場に迷い込んだ様だった。w
 サチはさっきは「あたし、いらないから・・」と、ほざいておきながら、イズとミミと争奪戦を繰り広げていた。 
「あたし、これとこれ!」 サチ
「え~、それ私が先に取ったのに・・・」 イズ
「このジャージ可愛いですから、ミミ、もらいます」 ユニクロには目を向けないミミまでが、机上バーゲンセールに参加していた

「あのなぁ・・・おまえら・・・」 まぁ、いいかぁ
 サチに趣味が悪いとか、地味だとか言われ、当たり前だろう~差し入れ品だものと、胸の中で答えていたが、そのサチが1番手に取っていた。w

「喧嘩しないで、適当に分けて、もって行っていいからな」 3匹の耳に聞こえたかは不明だが、とっとと、自室へ入って内側からドアをロックして、事務室側と俺の部屋を仕切るハメ殺しのガラス窓のブラインドも下ろした。 

 もう1度、頭の中で整理をしたかったのだった。


 錦糸町と言う土地柄、ゲオ チャイが絡んでいる事は否めなかった。 それと、弁護士の件。 錦糸町へ探りを入れる必要があった。 だれから情報収集をするべきか・・・。 俺が直接タイ料理レストランのゲオ チャイへ出向いても良いが、本当の事は教えてはくれないだろう。 そこで、錦糸町で看板を出さずに、マンションの1室をかりて、携帯電話だけでタイ式マッサージのデリへをしているある店の娘に接近して、話を聞き出す事にした。

 錦糸町と言う土地柄、「当店は風俗行為は一切御座いません」と、言う宣伝広告を出している店ほど、風俗斡旋をしている事は歌舞伎町と同じだ。 そこで、歌舞伎町から五反田、錦糸町へと流れた ノイ と言う知り合いの娘に連絡をしてみることにした。

 ノイは二十歳過ぎの細身で可愛い娘だった。 元々はタイ本国のパッポン通りにあるポールダンスバーで客を取って、田舎に家を建てることを夢見ていた。 2週間の観光ビザで入国して、錦糸町で働き、1度、帰国してから、またひと月後に錦糸町へ戻ってくる出稼ぎ娘の1人だが、俺が錦糸町へ足を伸ばす度にゲオ チャイで良く食事をしていた仲である。 俺の顔がゲオ チャに割れている以上、探りを入れると警戒される恐れがある。 その点、ノイはいつもゲオ チャイで飯を食っているので多少の事情は彼女の耳にも入っていると踏んだのだ。

 さっそくノイに携帯してみる。

 ♫~♩

「あ~ めめさん、お久しぶりで~す♡」 いきなり♡を投げつけられたw
「あのさぁ ノイちゃん 今晩 、錦糸町へ行くから 飯 どう?」
「え~と・・・今日の夜? 何時?」
「夜7時頃でどお? 誰か、予約、入ってる?」
「7時ならいいわよ。 9時から指名が入ってるから」
「OK じゃ、7時にいつもの ゲオ チャイ で待ってるから」
「は~い♡ 7時にご飯、いきま~す♡」
「じゃね」
「ばいばい」

 別にノイとは深い関係では無い。 タイのパッポン通りで働いていたので、日本語も英語も堪能で話しやすいのだった。 タイから着たばかりの娘は日本語が話せないので余り指名が入らないが、彼女は流ちょうな日本語を話すので、指名客も多い。
 勿論、観光ビザで来ているので2週間だけだが、働いている事もが、違法行為である事も知っている。 だから、なじみの客しか取らないのである。 

 余談だが、タイ本国のタニヤ通りや、パッポン通りでポールダンスをしながら客を取る売春では、2時間で3,000円にしかならない。 その点、日本なら2時間2万円~が相場だ。 ただし、日本に来る為にはブローカーを介して、30万円の借金を負わされる。 旅費往復10万+衣食住2週間=30万円。 それ以上の金額を2週間で簡単に彼女達は稼ぎ出す。 稼ぎは1回50%が手取りとなる。
 受け入れの店も、無店舗風俗業などの資格を持たないまま、勝手に口コミでやっている所が殆どだ。 

 最近も小岩の娘から泣きつかれた。 30万円が返せないと言うのだった。 景気の良い街とそうでは無い街では格差が生じる。 しかし、ブローカーへの30万は借金をしてでも支払わなくては帰国出来ない。 オーバーステーになれば5年は日本サイドへ再入国が出来なくなる。 近く、小岩でボロもうけをしている店を叩き潰すつもりだが、その前に、この錦糸町のミッションを何とかしなくてはならない。 情報収集が今後の動きの全てを左右する、重要な手がかりだった。


 今晩、ノイちゃんと錦糸町のゲオ チャイで食事をしながら、少しでも多くの情報収集をするつもりだ。 それも敵のふところの中でのことだった。

 
 時計を見ると午後6時を少し過ぎていた。 事務所を出てその足でTAXIを拾い錦糸町へ向かった。

  
              
                     まじいなぁ~  ・・・ No23へ


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まじいなぁ~  ・・・ No21
- 2017/12/24(Sun) -
Chrome で書いています。


         Merry Christmas! と言える日本は幸せ・・・
                          アメリカでは Happy Holidays! と言います。


      5年前1   5年前2   5年前3   5年前4

                       5年前は可愛かったのに・・・ Orz



      社員旅行1   社員旅行2   社員旅行3   社員旅行4

                       近頃ではこんなヤツになってますw


 S500の車内では2人とも殆ど無言だった。 運転手が2人の様子から、雰囲気を察して丁寧な運転をしてくれた。 タエちゃんの旦那、彼を上野駅まで乗せて行き、軽い挨拶で分かれた。

「専務、この後、どちらか行かれますか?」
「いや、会社まで頼むわぁ」
「畏まりました」

 車の中でズッと気になっていた事が体中に広がってくる。 錦糸町・・・。 事件が起きたきっかけも錦糸町だし、逮捕された警察も錦糸町の本所警察署。 町中で噂話が流れ無いはずがない。 と、言うよりも、タエちゃんはどんな奴と錦糸町で食事をしていたのか? 錦糸町の何処で食事をしていたのかだった・・・。

 実は、錦糸町にはタイ人社会では関東最大の地下組織とネットワークがある。 その隠れ蓑が「ゲオ チャイ」と言うタイ料理レストランだ。 よほどのお上りさんか、観光客以外のタイ人なら、ゲオ チャイと言う名を聞けば、知らない人間はいないだろう。
 元々、ヤミ金融と地下での海外送金でしのいでいる組織だ。 現在も、堂々とタイ料理レストランを営んでいる。 誰でも気軽に、日本人でも読めるメニューを並べている。
 
 成田空港の隣町に大栄町と、言う町に素晴らしいタイ国式のお寺がある。 ワット パクナムと言う名で、実は俺もそこの寺には創立時から絡んでいる。 小学校の廃校を買い取り、内装をいじって、僧侶の宿泊施設と仏間がある。 校庭だった庭先に今では素晴らしい仏殿が出来、数々の黄金色に輝く仏像達が並んでいる。 仏殿もタイ国と全く遜色は無いほどの造りになっている。 その仏殿を作る際に三億円ほどの金を寄進したのが錦糸町のゲオ チャイだ。 俺も心づくし程度の寄進はしていたが、桁が違う。 仏像への入魂式にはタイから国王の一族も訪れ執り行われ、記念式典を本国でも大々的に報じられたのだった。

 この錦糸町のゲオ チャイが、今回の事件や弁護士の選任への関与が、「絶対にある!」と言う気がしてならないのだ。 タエちゃんへ弁護士が、既に付いていると知ったときから、胸の中で引っかかっていたのだ。 強盗致傷罪の弁護を引き受ける弁護士など、そこいら中を探しても、簡単な事では無い。 金額も女3人、男1人の計4人だと、安く見積もっても4~500百万は堅い。 そんな金を出せるのはやはりゲオ チャイ意外には考えられなかった。 自分の足元に火の粉が飛び移る事を嫌ってか、ゲオ チャイが動いたに違いない・・・。 もしくは、主犯格の女ボスが、ゲオ チャイの関係者なのかも知れない・・・と、頭をよぎっていた。

  (-.-)y-~~

 新宿インターのカーブを、俺の赤馬に負けない程の気持ちの良いコーナリングで曲がり、左にハイヤットを横目で見ながら、俺を後ろに乗せたS500がインターを降りる。 そのまま会社の地下駐車場へ流れ込み、役員専用の駐車スペースで、車はゆっくりと駐まり、快いエンジン音だけがコンクリートの壁に響いていた。

「専務、お疲れ様でした」 早々に先に降りて、俺のドアを開けようとする
「お疲れ様、今日は有り難う。 たすかったよ」 自分でドアを開いて左足から降りる
「トランクの荷物はどうなされますか?」
「ん~・・・・持っていくわぁ。 トランク、開けてくれないかな」
「畏まりました。 預かっておく事も出来ますが・・・」
「いや、もう使い道が無い物ばかりなんで、持ち帰るよ」
「分かりました」

 運転手がトランクを開き、中から大きな袋を2つ、両手で取りだした。 
「有り難う」
「いえ、こちらこそ専務さんにお気遣いを戴きまして、申し訳、ありませんでした。有り難う御座います」
「口止め料だよ」 笑 
「承知、しました」 笑
「運行記録は適当に書いておいてくれ」
「はい、そうしておきますので、ご心配なく」
「助かるわ。 じゃ、これもって上、行くから」
「お疲れ様でした」
「ああ、また何かの時は頼むわ」
「いつでも御連絡をして下さい」 毎度、礼儀正しい運転手さんだった

 左手にユニクロで一番デカイ紙袋を2袋ぶら下げ、エレベーターへ向かいながら、後ろ姿のまま右手を上げて彼に感謝した。

 エレベーターのボタンを押す。 タエちゃんへの差し入れのつもりのジャージやインナー、下着類が山ほど入ってる。 1袋にまとめられないかと入れ替えてみた。 無理矢理にスキ間に押し込んでパンパンだが、1袋に出来上がった。 しかし・・・思いっきりふくれあがってる、怪しげな紙袋になっている。 「しゃあねぇかぁ~ これで・・・」1人で呟き、降りて来て、開いたエレベーターに乗り込んだ。 運良く、誰も乗っていない。

 ものの5秒で1階ロビーに到着をしてドアが開く。 このエレベーターは地下駐車場への直行専用なので、開いたドアの正面には人影がなかった。 ラッキィー!っと、心の中で一息付いてから、体を小さくして、目立たないようにこっそりと、ゆっくり脇にある高層階様のエレベーター側へ移動する。 ロビーには数人の人影があった。 同じエレベーターに、俺を知っている会社の人間が乗らない事を心から願って、降りてくるランプを見上げていた。 すると、

「よ~! めめ~!」 デカイ声が俺の背中をグサリと刺したw 

 心臓が一瞬大きく鼓動をして・・・停止したw

「めめ~! チョイ~!」 聞き覚えのある声だった

 間違えなく、背中の奥にある受付のあたりから聞こえる社長の声だったw。 俺のことを「めめ!」などと、社内で呼び捨てにするヤツは社長しかいない。 
 恐る恐る、ゆっくりと荷物を持っていない右側から振り返ると、受付嬢が2人立ち上がってこっちを正視しているのが見えた。 と、脇には社長と会長が立っていたw。

 マーフィーの法則通り、「全ての物事は、自分が予期する1番悪い結果へと流れる」・・・頭をよぎった。 これ以上の最悪な場面は無い。 会議を途中で抜け出し、帰社すると、パンパンに膨らんだユニクロマークがデカデカと入った紙袋を手に持ち、社長と会長が受付前で何かを話していた最中に、俺が地下から現れたのだった・・・。

 シカトする訳にもいかず、紙袋をぶら下げながら受付へ向かった。

 受付に近くなるに従って心臓の鼓動が不規則になる。 まいった・・・。 1番会いたくない連中に捕まってしまった。 言い訳を考える余裕さえなかった。

「よ! めめ。 それ、ここに預けて、チョッとこっちに来てくれ」 社長と会長が出口へゆっくりと向かう。 取りあえず荷物を受け付け嬢へ手渡し、「すぐ、戻るから」と、社長と会長を追いかけた。

2人が先に出口で待っていた。
「いや、お前ん所のサチ君の事なんだが、なぁ~」 サチ? あいつ、また何かやらかしたのか?
「お前から推薦状を受け取ってから、会長とも何度か話もしてたんだが」 ん? 推薦状?
「今度、室長候補で良いんだよな」
「めめが抜けた後は、彼女で良いんだよな」

 サチの昇進の件だった。 
 ふた月ほど前に提出していた海外事業部の室長、つまり、部長の一つ上の候補と言う事で、願箋を俺が推薦状として書いていたのだった。 
「ええ、彼女なら十分やりくりが出来ますから、是非」
「ん~、分かった」 社長が念を押した
「じゃ、そういう事で近いうちに役員会を通すから、君も出席をして、役員へ説明と推薦を促してもらえるかね?」 会長が尋ねる

「勿論です。 併せて、イズとミミの昇級の件も報告させて戴きます」
「分かった」 会長がうなずいた

「じゃ、来月か、再来月の株主総会の前が良いですね」 社長が会長へ伺う
「ん~、じゃ、その方向で」 会長が俺を見る

「宜しくお願い致します。 お世話になりましたが、どうも方目と腰の調子が悪く、完治が難しいと、診断書がでてますので・・・。 勿論、サチも海外事業部としても、十分、やりくりは出来ますので」
「わかった、じゃ、そういう事で」 社長が幕を引いた

「有り難う御座います」
「まだ、他言無用でな・・・」 会長
「ですね」 社長

「分かりました。 では、宜しくお願い致します。 失礼します」
「あ! めめ!」 ?
「はい・・・」
「お前、今日の会議でイエローカード5枚目な。 イズ君、困ってたぞ。 でも、彼女が会議、上手くこなしたけどな」
「済みません、急用で・・・」
「まぁ、いいさぁ」 しょうが無い、また、何かに片足を突っ込んでるんだろうなぁ~と、言う顔をして見せた

「じゃ、また、めめ君」 会長が歩き出した
「では、失礼します」
「イエロー5枚目だからな!」 笑いながら社長が振り返り、会長の後に付いた

 先に会長と社長の2人の秘書達がコンビニ前で待っていた。 4人で飯でも行くのだろう。 形だけ深々と頭を下げて4人を見送った。 
 
 俺が会議を途中で抜け出す事は多々あった。 海外との直接TVチャットを多用するので、海外のクライアントからの急な呼び出しや、秘書達の商談にも呼ばれ、重要な最終価格の決断に関わる事も多いのだ。 よって、会議の途中下車は半分、いや殆ど公認されていたのだった。 

 しかし、それは、あくまでも仕事上での事であって、社長へは後で私用での下車がバレたりしてもいた。 で、イエローカードが出る訳である。 今回は5枚目をもらったw。 イエローカード何枚でレットカードになるのかは知らないが・・・。


 社長に呼ばれ、会長と3人での確認はサチの昇進の確認だった。 併せて、イズとミミも秘書役を解いて、昇進させる腹だった。 現在は俺に3人の秘書達が付いている訳だが、今後は海外事業部の室長にサチを据えて、イズとミミでサポートさせる形にするように推薦しておいたのだ。

 地下エレベーターからロビーに移り、社長に見つかったときは心臓が凍えたwが、何てことは無い、内輪話だった。 ホッと胸を撫で下ろし、ロビーの受付へ紙袋を取りに戻った。 


 へ? 受付にサチがいる。 ん? 何でサチがいるんだ? しかも、ホッペタを膨らましていた。

「ネェ~専務、もう~恥ずかしい事、しないで!」 いきなり怒られた@@
「ん?」
「こんなに女物の下着とか買い込んで・・・もう!変態!」 w
「あのなぁ~」
「も~言い訳は部屋で聞くから、もう、これ持って行くわよ!」 ハイw
「・・・」 親にエロDVDを見つけられた気分だった・・・

エレベーターに歩きながら
「まったく・・・。 受付のサヤちゃんが、専務が会長と社長と3人が出掛けたから、預かった荷物、どうしますかって?連絡くれたのよ」 w
「で、取りに来たら・・・もう! 何やってるのよ、ホントに!」
「・・・」
「なにかコソコソやるなら、見つからないようにやってよね! もう!」
「・・・」
「中見たけど、このユニクロ、地味すぎてあたし、要らないからね」
「・・・」
「ブラとかパンツとか・・・恥ずかしいだから、もう!あたし」
「・・・」

 エレベーターを待っている間中、サチに攻められた。 
 俺にも事情があるんだよ・・・分かってはくれないかなぁ~将来の 室長 さんよぉ・・・。

  
 
 てか、受付嬢からの怪情報は、予想以上に素早く会社中に知れ渡ってしまった・・・Orz

 ハーレム専務が、変態専務に昇格した。






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まじいなぁ~  ・・・ No20
- 2017/12/23(Sat) -
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 エレベーターで1階へ降りると、同じ門番がいた。 おや?早いですね、とでも言いたそうな顔だったが、2階での対応を思い起こしていたので、門番など相手にもしたくなかった。 来た時は先頭だったが、帰りは2人の後ろに一緒に付いて来た。 アルミの出入り口を開けてもらい、「有り難う御座いました」と軽く会釈した。 「ご苦労様でした」と声だけが閉まった扉からかえって来た。

 留置所をやっと見つけ出し、私撰弁護士を付けて情報を集めようとしたら、私撰弁護士が付いていた。 あげくの果てに、面会にまで来てみると、タエちゃんから「知らない人」だと言われる。 訳が分からない事件だ。 おまけに女性物の下着やジャージが山ほど余ってしまった。 笑えない結果だった。

 出口近くの鉄格子近くで車を呼んで、タバコに火をつけた。 空が悲しいほど青い。 煙を手の届きそうな青空へ吹きかけていると、彼が深々と頭を下げた。

「色々と、本当に有り難う御座いました。 差し入れまで買って来てもらって・・・済みませんでした。 気が動転してて、自分では差し入れの事なんが、全く気が付きませんでした」
「いやいや、留置所へ放り込まれたら、下着と金ですからね」 笑
「さっきの5万円、必ずお返ししますから、少し時間を下さい」
「いや、タエちゃんに、とっととここの留置所から出てきてもらって、彼女から受け取りますよ^^」
「ほんと、助かります」
「まぁ~当面の間、必要な物があれば、中からでも買ってもらえますからね」
「そうですね」
「男なら、入らない物の方が少ないハズなのに、ここは厳しいですね・・・さすが女子専用の差し入れは」
「ですよね」
「まぁ、ここにいる事も分かったし、今日は運がよかったんでしょうよ。取り調べが午前中で終わったのか、丸々1日、空きの日だったのか、時間的にも夕食5時ですから、早めに戻って来ていたのかも知れませんねがね」
「居場所がわかって、また、弁護士が付いていた事もわかって、なんか、安心って事じゃないけど、落ち着きました」
「そりゃ~良かったですよね。本当に」
「ええ」

「面会に来ても知らないと、言い張るんだから、ご主人の所へも連絡が行かなかった訳ですね・・・」
「そうでしょうね」
「タエちゃんらしいじゃないですか」
「え?」
「旦那さんや友達に迷惑をかけたくない思いなんでしょうよ、きっと」
「そうでしょうかねぇ」
「きっと、そうですよ。 会いたくないハズなんてないですよ。 俺なら喜んで面会しますけどね^^」
「・・・」
「我慢したんでしょうね・・・彼女なりに」
「ですかね」
「強いですね。 旦那さんに知られたくない、迷惑をかけたくない一心でしょうね」
「・・・」
「でも、俺にまで強がらなくても良いのにさぁ~」
「すみません」
「いや、あなたが謝る事じゃないですよ」
「・・・」
「俺はただ、タエちゃんが強いなって、感心してるだけなんでね」
「・・・」
「警察も弁護士も、その気になれば金沢の住所くらい分かるハズですから、きっとタエちゃんが弁護士へ、金沢へは連絡しないで欲しいと伝えたんでしょうよ」
「ですかね」
「後の事はもう少し調べて、俺からまた連絡しますから、金沢で、何か動きがありましたら教えて下さい」
「わかりました。 何かありましたら直ぐに連絡します」
「俺の方も気になる事があるんで、2~3日したらまた連絡しますから
「おねがいします」
「連絡は夜の方が良いですよね」
「ええ、出来れば夜だと、必ず家にいますから」
「分かりました」
「どうも 錦糸町 と言う街が気になるんですよ」
「・・・」
「まぁ~2~3日、待ってて下さい。 弁護士も付いている事だし、大きな心配は無いと思いますので」
「はい、安心しました。 今日は本当に有り難う御座いました」

「で、」
「?」
「車が来た様ですから、上野駅で良いですか、東京駅がいいですか?」
「え~いえいえ、その辺の駅で」
「水くさいこと言わないで下さいよ。 じゃ、上野駅まで行きましょう」
「すんません」

 右側から歩道橋の下を抜けて、S500が滑り込んで来た。
「乗りましょう」
「はい」
 運転手がハザードを付けて、降りてこようとしたところを止めて、トランクを開けさせた。 ユニクロの袋をトランクに投げ込み、そのまま2人で後ろの座席へ乗り込んだ。

「専務、どちらまでですか?」
「金沢の駅まで頼むわ」
「え?かなざわ・・・」
「冗談だよ、冗談。 上野駅まで頼むわぁ」
「畏まりました」 笑


 タエちゃんは面会に行った俺と旦那を知らないと、言い張った。 旦那のことを思って、知らないと言い張ったのだろう。 会いたくないハズなど無い。 絶対、会いたいハズだ。 ・・・なのに。 

 タエちゃんは旦那へ迷惑が及ぶことを恐れて、知らないと言ったのだ。 強い心の持ち主だと痛感させられてしまった。 俺よりも心の強い女性だった。





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まじいなぁ~  ・・・ No19
- 2017/12/23(Sat) -
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            ん?なんだよ

              だから・・・なんだ?



 鉄の格子戸まで来て、入り口を探した。 大きな横開きの格子戸には出入りの出来る入り口が無い。 もう少し先へ進むとアルミ製のドア1枚の出入り口があった。 脇のインターフォンを押す。

 ピンポン~♩~
「はい、ご用件をどうぞ」 どこかにモニターでもあるのか、押した途端に返答があった
「面会なんですが」 脇のインターフォンへ大声で答える
「今、そちらへ行きますので、少々、お待ち下さい」 面倒くさそうに、おやじの声がした

 ここの出入り口からでは塀の向こうの様子が窺えない。 さっっきの鉄格子からなら中が丸見えだったのだが、待つしか無い。
しばらくすると建物の正面口のドアの開く音が聞こえ、こちらへ歩いて来る足音が聞こえた。 
 ガチャ
 アルミのドアが開いて、小柄な制服の男がドアノブに手をかけたままで立っていた。
「中へどうぞ」
 手荷物を持って2人で入り口をくぐると、またガチャリと、ドアを閉めた。

「面会入り口の受付は2階ですから」 歩きながら小柄な制服男が頭だけ振り向いて、俺とタエちゃんの旦那を確かめた
「左ですね」 と、だけ答えて4階建ての濃い茶色の建物の、正面玄関の前で立ち止まった
「どうぞ」
 入り口を入ると正面にエレベーターがあった。 このエレベーターで取り調べの警察署へ護送されるのだろう。 一般的には護送の出入り口は、目立たない警察署の裏口近くで、階段そばに出入り口が多いが、ここは建物の正面だった。

 エレベーターに3人で乗り込む。  
 2階に到着して、右側を見ると、正面に大きな文字で「受付」と書かれたプレートがぶら下がっていた。 タエちゃんの旦那、彼と目を合わせて、受付へ向かった。 制服の男は最後について来た。
 腰ほどの高さで、ここら側と向こう側とが受付として仕切られている。 役場のカウンターの様な造りだ。

「どういったご用件ですか?」 定年近い警官が訪ねてきた
「面会と差し入れです」 俺の後ろからタエちゃんの旦那さんが声を上げた

 少し大きめの声で答えた事にムッとした顔で、受付の警官が答えた
「あ~面会は、本人が取り調べ中だと、ここにはいませんから、出来ないですね」 ぶっきらぼうな声だ
「いるか、いないか、教えてください」 彼が返す
「じゃ、まず、ここへ面会者の名前と、面会に来た人の名前、住所、関係を書き込んで下さい」 わら半紙のコピーを渡された

 彼が俺の前に出て、差し入れの袋を片手に持ったまま、先に手に取った。

「そちらは?」 両肘をカウンターにつき、手を組んだままで、下から俺を見る
「ここの留置所にいる女性の友人で、彼、旦那の友人でもありますけど」 ひと言、友達です、でも良いのだが・・・
「じゃ、あんたも、これを書いて」 わら半紙を手渡わたされた

 面会相手の氏名の欄を残して、自分の名前、住所、関係を書き込む。 タエちゃんの氏名欄は、旦那の記載をチラ見して、彼が書いた名前と同じに「木下 ラッタナポン」と書き足した。 2人で同時に記載したわら半紙をカウンターの制服爺へ手渡した。

「何か、身分証明書をお願いします」 2人で免許証を渡した

「え~と、チョット待って下さいね。 本人が何処にいるか確認しますから」 2枚のわら半紙を後ろのワイシャツ姿の女性に渡す

 ワイシャツ姿の事務員女性が仕切りで見えない奥の方へ消えていった。 2人で奥の様子を伺う。 

「せっかく来ても、ここは会えない方が多いんですよね。 土日なら、多分、大丈夫なんですがね・・・」 カウンターで答えた

「もし、本人が取り調べ中で不在でも、差し入れは出来ますよね」 少し悪たれをつきたくなる相手だった

「え~と、差し入れは出来ますけど、そこに書いている様に、差し入れ品も、色々と制限があって面倒なんですよ」
 彼がゆっくりと後ろを振り返って、カウンター後ろの仕切り版に貼られている「差し入れ制限類」と、言う紙を指さした。
「で、せっかく差し入れ品を持って来てもらっても、規定に合わないと全部の品、持ち帰ってもらわないといけないんですよね」


 しまった・・・。
 男性の場合と違って、女性の場合は色々とサイズや規定が事細かく決まっている事を、今頃になって思い出してしまった。

「よく、郵送での差し入れも来ますけど、殆ど入りません。 でも、こちらからは送り返す手間はしませんから、倉庫で保管か、取りに来なければ、廃棄処分になるんですよね・・・」

 タエちゃんの旦那と目が合うと、俺がしくじった表情を読み取って、彼も困った顔をしてみせた。 留置所で使える物なら、釈放の際に「これ、処分して下さい」と、言えば、通常は保管されていて使い回される。 いきなり逮捕されて身の回り品が無い時など、一時的に使われるのだった。 一般的には、自分の所持金で購入した物を「私物」と呼び、使い回しで配給される物は「官物(かんぶつ)」と呼ばれる。 練り歯磨き以外は、処分品のおおよそは使い回されることが多い。

 ユニクロでタエちゃんが楽な様にとサイズには考慮したはずだが、それ以外の色々な事で許可される物と、許可されない物とを選別される事に、俺の内心で「しくった!」っと、顔に出てしまったのだった。


 カウンター奥の仕切り版の影からさっきの女性が出てきた。 手には俺と、タエちゃんの旦那が書いた書類を持っている。

「この名前の方は確かにいますよ。 今日はここにいます」 そこで一呼吸してから続けた
「でも、この女性は2人の事を 知らない と、言っていますが・・・」

「へ?」 
「今、ここにいるのは確かだけど、友人と旦那を知らないと、言ったんですか?」 俺の耳を疑った
「はい、2人は知らない人だと・・・」
 タエちゃんの旦那が噛みついた。
「知らないはず、ないだろうが。 わざわざ金沢からこうして出来てているのによぉ」 熱くなっていた
「でも、確かに知らないと、言ったんですよ」
「そりゃ、おかしいだろうがぁ」
 熱くなった彼を軽くなだめて、聞き直してみた。
「会いたくないと、言ったんではなくて、知らないと、言われたんですね」
「ええ、そうです。 お二人の名前も面会に来ていることも伝えましたが、そんな人は知らないと、言われたんです」
「・・・ですか」 一瞬、驚いたが訳がありそうに思えた
 知らないと、言われて混乱している彼の方を向いて、ゆっくりと彼に話した。
「タエちゃんがうちら、二人を知らないと、言ってるのは何か訳があるんでしょう。 本人が、知らないと、言ってる以上はしょうが無いですね」
「知らないわけがないさ・・・」
「だから、タエちゃんに何か理由でもあるんでしょうね」
「こまったなぁ~。 わざわざ仕事を休んでまで来たのに・・・しらねぇ・・・かぁ」
「面会は諦めましょう。 ここに二人で来た事だけでもタエちゃんは分かったハズですから」
「・・・しゃ~ねぇ~わなぁ~」

 カウンターから事務の女性と彼とのやり取りを聞いていた制服警官がおもむろに言った。
「たまにこんなケースもあるんですよね」 意味ありげだったが、聞き流した

「分かりました。 タエちゃんがうちら、2人を知らないと言うでしたらしょうが無いでしょう。 じゃ、差し入れだけでもしていきますからお願いします」 制服警官へ大きな紙袋を二袋見せた

「じゃ、全部見ますから、袋の中から出して下さい」 随分と多いなぁ~と、言う顔だった
「え~と、じゃ、これ、全部、検査して」 振り向いて、先ほどの女性事務員をカウンターへ呼んだ
 申し訳なさそうな顔で彼女がカウンターまで来て、俺が袋から一点、一点と、カウンターの上に置いていった。 その包みを開き、下着類と、上着類、とに手早く仕分け、袋を開けてチェックをし始めた。

「こういう首もとが広い下着類はダメなんですよ」
「え?」 聞き直した
「こうゆう風に首もとがV型とかU型になった物は差し入れ出来ないんですよ」
「ええ?全部?」
「はい。 一般的に言われる丸首型以外は全部ダメですので」
「まいったなぁ~」 マジにまいった

 取り調べの際に、女性なので胸元が少しでも見える物は取り調べ官を官能してしまい、おかしな調書を作ってしまうからだろう。w 
「これもダメですね。 下着の裾が短すぎます」 おい、パンツもかよ
「靴下も・・・長さが決まっているんですよ。ですから・・・これと、これもダメですね」 ・・・Orz
「え? じゃぁ、肌着1点、下着1点、靴下2足だけですか?」
「そうなりますね」 キッパリ
「だから、ここに書かれているサイズの物、以外はダメなんですよ」 初めて制服爺が哀れな顔をしてみせた

「え~と、ジャージですが、全てダメですね。 全部U首ですので、首元が広すぎます」 おいwまじっすかw
「え?ジャージ上下、全部ダメ?」
「ええ、ダメです」
「・・・・」 言葉が出ない

 女性用の私物が、これ程までに厳しいとは・・・流石に、俺も落ち込んだ。 結局、9割ほど、いや、もうほとんどが差し入れとして受け付けてもらえなかった。

「差し入れ出来るものは、こちらの用紙へ書いて下さい。 これと、これ、と・・・これですね」
「肌着1点、下着1点、靴下2足だけ・・・ですかぁ。 で、ジャージは全滅と・・・」
「あ!全滅とか、書かないで下さいね。 差し入れ、取り消されますよ (笑)」
「済みません、冗談でも、笑えません、今は」 うけたw
 差し入れ品リストに数点だけ記載して、彼女へ渡した。差し入れ名は俺の名前にした。

「じゃ、現金も入れますから」 カウンターの彼女へ尋ねた
「はい、ではこちらの用紙へ記入してください」 また、別の用紙を渡された
 その用紙を見て、隣の彼が財布を取り出した。 財布から万札を数枚取りだしてカウンターへ置いた。 5万円。
「いくらまで、現金での差し入れは出来ますか?」 俺が制服爺へ尋ねた
「まぁ~限度がありますから・・・多すぎても・・・・」
「ですから、幾らまでですか?」
「ここにいる間なら4~5万もあれば十分でしょうよ」 嫌な顔をした
「で、制限はあるんですか?金額の?」 今度は彼女へ尋ねた
「10万円まではお預かり出来ますが・・・」
「10万ですね、じゃ、10万でお願いします」
 彼のテーブルの上に置かれていた5万円に俺の財布から5万円を出して10万円の束にして、数えてタエちゃんの旦那へ手渡した。
「旦那さんの名前で10万円、入れて下さい。 俺の名前は、品物で書いてますから」 彼に用紙を渡した

 差し入れられた品や金額は後で、タエちゃんの部屋で品物の名前と数量、金額など告げられて、必ず拇印(人差し指)を求められるので、誰が何を、いくつ入れてくれたのかは分かるのだ。
 品物は俺の名前、現金は旦那の名前の方が良いと思っただけだ。

 旦那が用紙に記入して、現金10万円を制服に渡した。


「しらないかぁ・・・・」 ショックだったに違いない
「・・・・まぁ、タエちゃんの気持ちを酌んで、今日はこれで帰りましょう」 彼を促した
「しかたねぇ~なぁ」 最初は敬語だったが、彼本来の言葉遣いに戻っていた
「いきましょう」
「はい」 か細い声だった

「後、宜しく、お願いします」 制服と彼女へ頭を下げてエレベーターへ向かった

 俺の両手には、ほとんど差し入れが出来なかったユニクロが二袋、ぶら下がっていた。w




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まじいなぁ~  ・・・ No18
- 2017/12/22(Fri) -
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                          指名手配書
                        懐かし過ぎるわぁなぁw
                          新宿の種馬w


   引っ越しの際に、開いて無かった段ボール箱を開けると、古い革表紙の英語の聖書が出てきた。 
   その中に栞代わりに挟まれていた2枚の写真・・・。
   1枚はお袋を日光へ連れて行った時のもの。 もう1枚は山中湖へ行った帰りの1枚。
   こんな時代に、インスタやSNSがあれば、世界中からモテまくってただろうなぁ~。  マジ残念w

                        この歳になると、妄想と後悔しか浮かばない自分が悲しい・・・


*****


 S500の車内は思いもよらず、かなり快適だった。 トヨタのセルシオに似た乗り心地だ。 セルシオは日本車のリムジン1号を目標に造られた車で、車内の振動を殆ど感じさせない。 このS500はV12気筒で窓は防弾ガラス仕様になっていて、静かな乗り心地が好きだった。
 防弾ガラス仕様なので、フロントガラスに取り付けたETCがたまに誤作動をするが、V12だけのことはあって、アクセルを踏み込むとバイクの様な加速もしてくれる。 その分、リッター3Kmの燃費が痛い。 この車を会社が買い取るまで、古めのS600Lを勝手に持ち出してよく運転していたものだった。 馬力があるので、疲れしらずで九州、博多支店(中州)まで飛ばしたことも数回ある。

 但し、S600Lに故障が多すぎたので、S500の方へ力が注がれ、仕上がりの良い車になっていた。

 タエちゃんの面会に向かっている訳だが、面会と言っても、簡単ではない。 
 
 土日祭ならば、よほどの事が無い限り朝9時から午後5時までは通常に面会は出来る。 面会は1日、1回切りで、約30分から40分くらいだ。 2畳ほどの狭い部屋でカラス越しに向かい合い、TVドラマのような丸い空気穴がガラスにある。 被疑者のすぐ脇に、小さな机が横に備えられていて、留置担当官が面会内容を「こんにちは、お元気でしたか?」から書き出していく。 
 
 事件内容の事柄や、伝言、暗号等が話されるとその場で面会が打ち切られてしまうので、たわいのない挨拶程度で、面会時間が終わってしまう。 顔色をうかがう程度の時間しかないのだ。 
 その点、弁護士だと24時間、いつでも何回でも、何時間でも弁護人と2人きりで話せる。 書き留める担当官も付かない。 勿論、初対面の当番(国選)弁護士が会いに行っても、時間制限もないので、ゆっくりと弁護人の話を聞ける利便性がある。

 今、このS500が向かっているのは北区にある留置場(所)なのだが、そこに問題があった。 
 今日は平日なので、タエちゃんが留置所にいるかどうか?分からないのだ。 尋ねても、教えてくれない風習があるのだ。 
 
 通常ならば、逮捕された警察署の中で取り調べが行われ、一部屋、3畳ほどの部屋で2~3人と同居生活をしている。 
 平日の取り調べ中に家族が面会に来ると、嫌な顔をされ、取り調べ調書の切れの良いこところまで、パソコンの打ち込みが終わるまで、家族には面会を待ってもらい、その後、本人は取調室から直接に面会室へ手錠&腰紐をされて向かう。 面会後、また取調室にもどり、調書を進めていく。
 
 取り調べの最中と面会時は手錠はハズされ、ズボンの前にぶら下がっている状態だ。 ただし、腰紐は椅子に結び付けられる。

 タエちゃんの場合、担当する(逮捕した)警察署が本所警察署(錦糸町)なので、毎日、護送の形で往復をしているハズだった。
 護送と、言うよりも各警察署を回る形で担当する警察者へ1人ずつ降ろして行くの時間も不定期で、おおよその時間だ。

 このまま留置所へ付いても、タエちゃん本人が錦糸町にでもいて、取り調べを受けているなら彼女には会えない。 差し入れだけの形になってしまう。 確実な土日祭に来れば確実に会えるのだろうが、金沢から来ている彼(旦那)には容易なことではない。 



 池袋を通り過ぎ、気が付くとJR埼京線の十条駅の近くまで来ていた。 昨日、運転手へはこの辺にあるはずの拘置所のメモを渡してあった。 真っ直ぐに乗せて行ってくれる事は間違いなかった。 もう近い。
 十条駅への入り口交差点を右に見て、環状7号線をこえて、そのまま直進すると大きめのY字路にさしかかった。 運転手が左側の通りへ車を進め、ハザードランプを出しながら停車した。

 Y字路のちょうど中州にあたる場所にその茶色い建物があった。 4階建ての平べったい茶色い建物が、2m程の塀に囲まれていた。
 
「専務、付きましたが、どうしましょうか?」 ハンドルから手を離して、運転手が振り返った
「OK、有り難う。 ここで駐車している訳にはいかないんで、どこか、近場の駐車場を探して、停めて置いてくれないかな」
「畏まりました。 その辺の駐車場で待機していますので、お帰りの際は、携帯で呼び出してくださいませ」
「助かるわ。 そんなに長居するわけでもないんで、頼むよ」
「はい。 では、トランクを開けますね」 左足のノッチを引き、トランクを開いて、彼が先に車から降りた
「どうぞ」 左後部ドアを開けてくれた
「有り難う。 木下さんもこちら側からどうぞ」 珍しそうに茶色の建物を眺めていた彼を促した
「すみません、有り難うございます」 俺の後に続いて車から降りた

 トランクルームから大きなユニクロマークの袋を2つ、運転手が取りだして俺に「どうぞ」と、渡してくれた。
「あ!荷物、持ちますよ」 彼が左右の袋を取ろうとしたので、片方だけ渡した
「じゃ、行ってみましょう、タエちゃん、いるかなぁ~」
「いると助かるんですが・・・」

「専務、これはどうしますか?」 運転報告書を書く振りをして、運転手が尋ねた
「ここに来たことが会社へバレルと何か言われそうだから、適当に場所、距離、書いておいてくれ、頼むよ」
「分かりました、専務。 池袋から巣鴨あたりの事で、書いておきますから」 かるく笑った
「サンキュ~^^」
「じゃ、行ってくるから、後で携帯を鳴らすわぁ」
「畏まりました。 また、ここでお待ちしてますから」

「あ!時間つぶしに何か食っていてくれ」
 運転手へ1万円札を小さくたたんで手渡した
「え?」
「いいから、運転報告書、たのむね」
「申し訳ありません、専務」
「じゃね」

 少し先に横断用の歩道橋も、信号機もあったが、面倒なんで無視して3車線の道路を、早足で彼と2人で渡った。 

                  

       ここかぁ~




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まじいなぁ~  ・・・ No17
- 2017/12/21(Thu) -
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 イズが冷えたコーヒーを下げに来た。 入れ替われでサチがコーヒーメーカーで入れたばかりの2杯目を届けに来た。 猫舌の俺に熱めのコーヒーを入れるとは、サチの嫌がらせか? いや、いつもはイズがほど良いコーヒーを入れてくれていたので熱めに感じたのだ。
 出来れば気を利かせて2杯目はアイスコーヒーにして欲しかったのだが、言い忘れていた。 マイセンのコーヒーカップを皿に戻そうとした時に、携帯が♩~♩~歌い出した。 上野の弁護士会館からの折り返しだ。 早い。

「はい、めめですが」 相手の次の言葉に集中した
「弁護士会館ですが、先ほどお電話を戴きましためめ様ですか?」
「はい、めめです」
「めめ様、こちらで確認を取りましたところ、もう弁護士先生が付いておられますね」
「え?」 耳を疑った
「逮捕されておりますタイ人女性の・・え~と、お名前が・・・木下 ラッタナポーンさんへは、どちらかの先生が付いている様ですが」
「どちらの先生でしょうか?」 少し俺が混乱した
「いえ、こちらからは先生のお名前をお知らせ出来ませんので、ご了承くださいませ」 ぶっきらぼうな答えだった
「と、言うことは、逮捕前からでしょうか? 逮捕後からなんでしょうか?」
「申し訳御座いません、そちらの件も当方からはお伝えできかねるんですね」
「え? 逮捕された本人の旦那さんがここに居てもですか?」
「はい、こちらからお伝えできます事は、お申し出のありましたお名前の方へは、既に、どちらかの先生が付いていますと、しかお伝え出来ませんので・・・」
「ですか・・・有り難う御座いました。 どこかの先生が付いている事だけでも解って、安心しました」
「申し訳ありませんね、こちらからでは先生のお名前等、お伝え出来ないものですから」
「いえ、お手数をお掛け致しました。 有り難う御座いました」
「いいえ、それでは失礼致します」
「では」

 ポチッ

 携帯をテーブルの上に置いて、目の前の彼に伝えながら、自分でも整理し直した。

「不思議なことに・・・もう弁護士が付いているそうですよ」
「え?どう言う事でしょうかね」 流石に驚きを隠せない表情だった
「・・・・いや~・・・考えられることは一つだけですが・・・」 考えられるケースは二つあったが
「ど、どんな事ですか?」
「多分ですが・・・タエちゃんは一番最後に逮捕されているんですよ。 ですから、1番最初に逮捕された金貸しの女ボスが、自分で逮捕前に、金を貸した女が警察に行ったことを耳にして、危ないと思って事前に弁護士に相談をしてたか、逮捕後に仲間の誰かが弁護士を私撰で雇って付けた、と、言う事でしょうね」
「あまり、良く、分からないんですが・・・」

「金貸し女が乱暴をして、その、乱暴をされた女が警察へ駆け込む。 それを知って、金貸し女が事前に弁護士に相談をして、弁護を依頼する。 金貸し女が逮捕される前から依頼していたか・・・」
「もしくは、金貸し女が逮捕された後に、彼女の知り合いが金貸し女の件を弁護士に相談をして、付いてもらった、と、言うケースですね・・・多分」
「つまり、逮捕前に事前に弁護士に自分でお願いしていたか、で、なければ、逮捕後に誰かが弁護士を雇ったかの違いです」
「・・・」 理解しているのか、していないのかは表情からは読めなかった

「まぁ~逮捕前に弁護士に相談をしていたのか、逮捕後に誰かが弁護士を依頼して付けたのかは分かりませんが、今の電話でハッキリ言える事は、タエちゃんへもその弁護士が関わっていると、言う事ですね」
「・・・」

「一つの事件でも数人で関われば、関わった全員を弁護しますからね。 まぁ~かなり高額な弁護費用は確かですが」
「誰が弁護士を付けたんでしょうかねぇ・・・」
「それは、先ほど電話をもらった弁護士会の方では、パソコンのデーターで分かるハズです。 ですから、タエちゃんの名前と生年月日を俺から聞いたんですね」
「・・・」
「弁護士会のデーターに依頼者が誰からで、どこの所属弁護士会の誰なのかは分かるハズです」
「ただ、答えられないと、言う返答でしたので」
「ですか・・・」

「まぁ~解っただけでも、良かったですね」
「なんか・・・体から力が抜けました・・・」 彼の言いたい事は良くわかった

「でも、不思議ですね・・・」
「何でしょうか?」
「弁護士が付いているなら、真っ先に家族へ連絡が入るハズなんですがね」
「ん・・・何も連絡はありませんでした」
「ですよね・・・」
「ええ」
「何か事情があるんでしょうけど、家族くらいには連絡を入れて欲しいですよね」
「そうですね・・・」 やっとテーブルの上のコーヒーに彼が手を伸ばした

「不思議ですね」 彼の手元を見ながら呟いてみた
「・・・」

「あ!めめさん、色々と調べてもらって、本当、すいませんでした」 コーヒーを持ったまま彼が頭を下げた
「いえいえ、知りたい事ばかりだったんもんで、あちこち電話をしまくりましたけど」
「ありがたいです」
「まずはタエちゃんの安否ですよね、心配なのは」
「そうですね」

「普通、逮捕されると、まずは家族の事が気になるそうです。 自分はどんな事がこの先にあっても、我慢は出来ると、思うそうですよ。 でも、家族へは何も出来ない、してやれないと、言う気持ちから、逮捕された事を悔やむそうです」
「・・・」
「で、何とかして家族と連絡を取って、自分は大丈夫だと、言う事を知らせたい衝動に駆られるそうです」
「・・・」
「タエちゃんの場合は言葉の関係もあるし、看守も多分、外人だからと思ってロクな待遇をも、してくれないと思うんですよ」
「・・・」
「取り調べには通訳が付きますが、言葉のニュアンスや初めての経験ばかりで、相当、辛い思いをしてると思うんですよ、俺は」
「・・・」
「で、色々調べていくと・・・弁護士が付いていたwと・・・」
「ですね」
「だから、なんかシックリとしないんですよね」

 タエちゃんの現状を知りたいと思い、当番弁護士でも付けて探りを入れてもらおうと思ったのだが、既に弁護士が付いている(選任されている)と、予想外の展開になっていた。 不思議な事もいくつかあるし、どうも奇妙な気がした。

「まぁ、いくらここで考えていてもラチが空かないんで、行きましょうか? 取りあえずタエちゃんの所まで」
「ええ、お願いします」 
「車を準備してますから、それで行きましょう」
「え?車ですか」
「ええ、社用車をチコット使わせてもらいましょう」
「それは申し訳ないです。 内みたいな者の為にそこまで・・・」
「気にしないで下さい。 俺はタエちゃんの友達ですから^^」
「ともだち・・・と、言ってもここまで・・・」
「だから、友達の為に好きでやってるんですから、気にしないで下さい」
「有り難うございます」
「いえいえ^^」

「で、昨日から差し入れに行こうと思ってユニクロでタエちゃんの物、少し買って来てますから、このまま行きましょう」
「え? タエの差し入れまでですか?」
「差し入れに現金だけでも良いんですが、取りあえず、下着や衣類は必要かなぁ~って、女物、買って来てますから^^」
「いや~、申し訳ないです」
「タエちゃんとは会ったことがあるんで、おおよそのサイズは大丈夫だと思うんですよね」 女性の3サイズには敏感なのだw
「すんません」
「じゃ、行きましょう。 チョツト待って下さいね」

 ソファーから立ち上がり、背広を片手にドアを開いて、地下駐車場へ連絡をする様にと、サチに合図をした。 「分かったわ」と、サチが合図を返してくれた。

 部屋へ振り向き、彼に向かって「行きましょう」と手招きをした。 俺よりも長身だと思って彼が、ソファーから立つと、俺よりも小さくなっていた。 初めて彼が気の毒に見えた。 いくら紙切れ1枚の偽装結婚だと言っても、やはり、家族は家族である。 相手を心配して当然だが、ここまで傷心されると彼が小さく見えたのだった。



 地下駐車場へ一直線に向かいたいのだが、ここのフロアーからのエレベーターは、地下へは繋がっていない。 1階ロビーで乗り換えが面倒だった。

 地下駐車場へ向かうと運転手が警備室前で待っているのが見える。 運転手へ「あの荷物は?」と、両手をかるく挙げて合図をすると、「トランクの中です」と、帰って来た。 「OK!」と合図をしながら車の方へ足を速める。 メルセデスS500、今日の足だった。

「お待ちしてました。 どうぞ」 運転手が俺に挨拶をしながら、後部ドアを開いて、左手の白手袋で頭を庇(かばお)うとした
「悪い、トランクの荷物、見せてくれないか?」 運転手へ促した
「はい、今、開けます」 と、左ハンドル車のドアを開き、足元のノッチを引いて、トランクを開いた

「これ、全部、タエちゃんの差し入れに買い込んできました^^」 俺の後ろで、突っ立っている彼へ、トランクの中を見せた
「え? これ全部ですか? いや~ これは・・・」 後の言葉がでない
「全部ユニクロですけど、まぁ~、これくらいあればタエちゃんも安心かなぁ~って、昨日買って来ました^^」
「あ!すいませんでした。 支払いますので全部でお幾らですか?」 恐る恐る聞いてきた
「ユニクロは安いんで、全部で3万くらいかな」
「で、ですか。 払いますから」 財布に手をかけた
「いや、いいんです、代金は」
「え? だって3万円も」
「俺、前にタエちゃんから、飯、おごってもらってるんで、そのお返しです。 いいですから」 トランクを閉めるように合図をする
「そんなわけには・・・」
「だから、おごられたお礼ですから」
「申し訳、ないです」
「本当に気にしないで下さいよ。 わざわざ金沢から仕事を休んで来てるんですから」
「いや、事件は内の事ですから・・・」
「たまたま友達が、おかしな事件に巻き込まれただけですから、俺はタエちゃんを信じますよ!だから」 財布に軽く手を当てた
「・・・有り難うございます」

「おk~! じゃ、行こうか」
「はい」 彼が恐縮した
「じゃ~、昨日、渡してある住所まで頼むね」
「畏まりました。 では、中へどうぞ」 彼を先に車内へ入れた
「専務も、どうそ」 
 運転手へ軽くウインクをして運転席の後ろ側へ腰をおろした。

 北区、西が丘分所の留置場まで、後はメルセデスに任せた。 流石にいくら俺でも、これ程のユニクロ袋を持って電車へ乗る度胸は無かった・・・。






                       まじいなぁ~  ・・・ No18へ   








       はぁ~?

 引退覚悟で投げやりで引いたクジから 「はぁ~」 だと?
 運営に俺の卒業を見透かされてる気がしたw


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まじいなぁ~  ・・・ No16
- 2017/12/21(Thu) -
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「はい、池袋、東京弁護士会です」 ハッキリとした透き通る様な声だった

「初めてのご相談で電話をしたのですが」
「はい、どの様なご用件でしょうか?」
「実は、2~3日前、友人の女性が逮捕されまして、弁護士先生をお願いしたいのですが」
「もう逮捕されてる訳ですね」
「ええ、そうです」
「そうですか、実は、こちらの弁護士会では逮捕後の推薦や選任はやっていないんですよね」 優しかった
「では、どうしたらいいんでしょうか?」
「宜しければ、その様な場合は 当番 弁護士のいる上野、弁護士会館へご連絡をしてみては如何でしょうか」
「当番弁護士先生ですか」
「そうですね。 逮捕後ですとそちらの方が宜しいと思いますが」
「では、上野ですか?」
「はい、上野の弁護士会館がここからでしたら近いですね」
「連絡先の電話番号をお知らせ戴けませんか?」
「はい、宜しいですか?」
「どうぞ」
「03-3580-00**です」
「03の3580、00**ですね」
「そうです。 そちらへご相談下さいませ」
「有り難うございました」
「いいえ、どういたしまして」

カチャ

 受話器をフックに置いた。

 俺の知る限り、当番弁護士と言うのは定年のない弁護士業界で、爺たちが暇つぶしで、順番で事件を待っているイメージがあり、余りいい印象がない。 勿論、現役バリバリの弁護士ならどこかの事務所に所属しているのが当たり前だった。 この 当番 弁護士にお願いをして希望通りに事が進んだ事も聞いたことが無い。 肩書きだけのロートル爺の弁護士が多い。

 弁護士を依頼するタイミングは逮捕前が最適だ。 事情を話して、もし逮捕されたら弁護してもらう。 ここで言う「弁護」とは法廷ではなく、機動力を生かして、捜査中の警察署へ出向いて、現在までの捜査資料や状況を把握して、予想される逮捕後の容疑に備える事だ。
 一般的には、危なくなると、まずは知人、友人を通して紹介してもらった弁護士事務所を訪ねる。 そこで担当してもらう弁護士と相談する。 30分ほどで2万円位が相場だ。 その際に、その弁護士が引き受けてくれるとなると、おおよその総額を提示してくれる。 「ん~今回は30~50万円位かかりますよ」と教えてくれる。 
 で、次回の相談時に、着手金として10万円でも20万円でも支払う。 これで弁護してくれる事になる。 途中の経費や中間金なんてものは殆どの場合は必要としない。 残りは釈放されてから、再度、事務所を訪れてお礼と残金を支払う。 これが一般的だ。
 よって、弁護士もこの残金を取り損ねたり、分割にされるケースも多々あるのだ。 この、自分から逮捕前に、逮捕されそうなのでお願いしますと、言うのが「私撰(しせん)弁護士」と呼ばれる。 警察側が一番嫌がるパターンだ。

 もう一つ、国選(こくせん)弁護士がある。 これがいわゆる、当番弁護士=国選弁護しとなり、負担費用は無料で、国が弁護士へ支払う。 よって、最低限度の収入しか入らないので、弁護側のやる気が感じられない。 1件あたり国選は2~5万円の報酬なのだ。 だから、国選(当番)弁護士と言っても数件の事件を同時に裁いて稼ぎにしていく。 何のアドバイスや対抗もせずに、裁判の時にだけ顔を初めてだして、型取りの弁護で実刑を食らっても、1件終了で2~5万円を受け取れるからだ。 

 1番のベストは逮捕前に「なんか、逮捕されそうなんですが・・・」と紹介してもらった弁護士へ連絡を取る事で、次の2番目は・・・・無い。 国選弁護士で無事、不起訴になったり、簡易裁判で有罪だが、罰金刑で釈放された、などとは俺は聞いたことが無い。

 奥の手として、最悪、捕まってしまったら、1度、速攻でこの当番弁護士を警察での取り調べの最中に呼び込む。 相手の弁護士を見て、やる気があるか、信じてお願いできるかを見極める。 弁護士からのアドバイスで行けそうならば、その当番(国選)弁護士を「私撰」に変更するやり方もある。 当然、私撰に変更する訳なので金額は全額自分負担となるが、弁護士の動き方が多少は変わるので猶予の希望も湧いてくるのだ。

 当番(国選)と早めに面会して、ダメな爺弁護士なら、弁護を止めてもらう。 1度の話だけなら無料だし、時間も制限が無く弁護士とは相談ができる。


 今回のタエちゃんの場合は、逮捕済みである。 
 選択は、①当番弁護士に依頼して、1度切りの面談で、後の弁護はしてもらわない。
       ②当番弁護士に依頼して、国選待遇扱いから、実費覚悟での私撰待遇扱いに変更して、終始弁護を依頼する。
       ③裁判まで国選弁護士を付けないで取り調べを進める。


 俺の選択は、①だ。
 
 知り合いにも弁護士はいる。 最悪、会社の顧問弁護士のネットワークで最高の弁護士を付ける腹もあるからだ。 今、一番必要なことは「タエちゃんの置かれている状況」が知りたいのだ。 その状況が分かれば、対処は出来る。 だたし、罪名が大げさな罪名なので、本腰なら300万円~の覚悟もいる。

 まずは、タエちゃんと当番(国選)弁護士とを面会させて、タエちゃんが今、何を困っているのか?、何を心配しているのか?、罪名が適切なのか?が知りたいのだ。 逮捕後に罪名がころころ変わるケールも多々あるからだ。


 気は進まないが、取りあえず、上野にある弁護士会館へ電話してみる事にした。


「取りあえず、当番弁護士に連絡を入れて、タエちゃんの状況を見てきてもらいましょう」 彼に話しかけた
「ええ、宜しくお願いします」 もう言葉がでない

「ん~と、上野の弁護士会館は 03-3580-00** だよなっと」 メモをみながらプッシュボタンを押す

「はい、弁護士会館です」 おばちゃんの声だったw
「済みません、初めての電話で、ご相談なんですが、逮捕された友達に弁護士先生をお願いしたいのですが」
「はい、分かりました。 当番弁護士の先生がおりますので、ご連絡をこちらから取らせて戴きますね」
「はい、お願い致します」

「では、まず 逮捕された人のお名前を教えて下さいませんか」
「はい、ラッタナポーン・シープラジャン 、または、木下 ラッタナポーン と言うタイ人の女性です」
「そちら様はどなたでしょうか?」
「夫の代理人で、知人です」
「では、今、お電話をいただいています方の、お名前と、お電話番号をお知らせ下さいませ」
「はい、めめと言います。 連絡先電話番号は携帯で090-9312-9797です」
「めめ様ですね。 お電話は090-9312-9797ですね」
「はい、今、ここに逮捕されました奥さんの旦那さんもおりますが・・・」
「いえ、結構です。 タイ人の女性で いつ頃、逮捕されましたか?」
「一昨日か昨日だと思います。 昨日のTVのニュースで知りましたので」
「そうですか。 分かりました」
「どこで逮捕されたか、分かりますか?
「定かではありませんが、新宿のアパートで、錦糸町の本所警察が来たと聞いています」
「そうですか。 その女性の生年月日は分かりますか?」
「分かります。 1996年11月1日生まれで25歳です」 以前のビザ更新用紙を見ながら答えた

「繰り返しますね、ラッタナポーン・シープラジャン または、木下 ラッタナポーンさんで、1996年11月1日生、タイ人の女性。 逮捕は一昨日か昨日ですね。 新宿のアパートで錦糸町の本所警察署が逮捕したんですね」
「その様です」

「では、こちらから当番弁護士先生へご連絡をしてみてから、めめ様の携帯電話へご連絡しますので、1度、切ってこちらからの連絡をお待ち下さいませ」
「あ!言い忘れましたが、現在は錦糸町管轄の本所警察署では無く、女性拘留所の北区、西が丘分所にいる事までは分かっています」
「そうですか。 では出来るだけ早くご連絡を致しますので、少々、お待ち下さいませ」
「宜しく、お願い致します」

カチャ

 まぁ~上野と北区だとそんなに遠くも無いので、ハズレを引いての爺弁護士でも、行って帰って来る事くらいはできるだろう~と心の隅で思いながら、弁護士会館からの折り返しの連絡を待った。

 タエちゃんの旦那(木下)さんは完全に硬直状態でソファに座っていた。 イズが入れてくれたコーヒーに、一口も手をつけていないまま冷えてしまっている。
 メモ用にアメリカ製の黄色いレポートパットを取り、机からソファーへ座り直した。 ガラス越しにサチが聞き耳を立てている影が見えたので 「サチ~、コーヒーおかわり!」 と、大声で叫んでやった。 目の前の木下さんが、その声でようやく冷凍解凍された明太子の様にゆっくりと動き出した。




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まじいなぁ~  ・・・ No15
- 2017/12/18(Mon) -
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     マブ達of Hong Kong メナ     マブ達of Hong Kong ユミ                 娘^^

     どうもXmasが近づくと海外が気になってしまう・・・・                 娘、仕事選べよw おい!



 会議を終えて戻って来たイズに、会議をサボった文句を言われる前にコーヒーを頼み、金沢から上京したオヤジさんの手土産の博多通りもんが積み上がった古伊万里の皿をはさんで、話をきりだした。 
 サチが持って来たタブレットをテーブルの上に置き、ニュースで流れたタエちゃんの動画を再生する。 各TV局で報道された中で、動画は3種類。 内、あるチャンネルの報道では最後に逮捕されたタエちゃんがバッチリと映り込んでいた。 その動画を再生する。

「これ、チョット見て下さい」 テーブルの上のタブレットを、彼の方へ押し出した

 約30秒ほどのニュースだが、動画を覗き込んでいた彼の目が、驚きで大きく見開いた。

「え?え・・・うちのタエの顔まで、バッチリ映っているじゃないですか!」 確かな動揺を見せた

 車内の後部座席の真ん中で、両脇の女性警官に挟まれ、手錠の為か両腕を膝で抱え、うつむいているタエちゃんの顔が窓越しからのフラッシュで数回、照らし出された1コマが制止され、画面左上のテロップに名前と容疑が書き込まれていた。

「これ、アパートに踏み込まれて、朝7時に逮捕された時の様子なんですよ」 動揺を隠せない彼には気のどくだった
「・・・・・」
「タイ人の金融グループの女3人、日本人男1名、強盗致傷で逮捕と、報道されてますよね」
「何やってんだよ・・・あいつ・・・」 確かに困惑するしかない状況だった

テーブルのコーヒーに手を伸ばして言った。
「連絡も何も無かったんですね、警察から?」
「ええ、何も連絡はないですよ。 電話をもらって、初めて知りました」 タブレットに見入っていた
「ですかぁ・・・不思議ですね」 俺の知る範囲でも、珍しいケースだった

 ニュースを繰り返して再生しながら、彼が呟いた。
「容疑が 強盗致傷 って・・・・」
「強盗、強姦、放火には執行猶予がなくて、最低5年ですからね」
「そう聞いたことがあるけど・・・これ、ますいな」
「まぁ~容疑ですから、確定では無いんでしょうけど」
「・・・」

 いつも思うのだが、この垂れ流し報道には腹が立つ。 何、何、容疑で逮捕!と報道された後、無罪や起訴無し、猶予がなされてもその訂正ニュースなど無い。 その為に、1度でも大きな報道があるといつまでもネット上にも社会復帰時にも間違ったラベルが貼られたまま捨てられる事になる。 本人や家族にはとてつもなく社会的な制裁がなされる事になるのだった。

 タブレットのニュースに見入っていた彼(オヤジ)が姿勢を正して訪ねて着た。
「で、何を、どうしたらいいんでしょう・・・」 正した姿勢が、逆に痛々しくも見えた
 
 タエちゃんからは以前、彼とは名古屋で知り合って婚姻(偽装結婚)し、その後、金沢へ転勤し、最近までは、と、言うか、以前、ビザの更新を請け負う頃だったが、体調を崩しながらも仕事をしていると、聞いていた。 年に1度のビザの更新が煩(わずら)わしくて、東京からだと必ず名古屋を経由して金沢へ戻って行き、更新がなされるまでの間は金沢で働いていた。 ビザが更新されると東京へ出稼ぎに来ている状況だった。 数年前までの話であって、現在では東京から金沢へ一直線の新幹線が開通し、彼はそれで上京して来た。

「まずは弁護士を付けたいところだけど、心当たりは、ありますか?」
「いえ、まったく・・・」 即答だった
「ですかぁ」

「実は、昨日からタエちゃんの留置先の警察署を探していたんですよ」
「はい・・・」
「ここ、新宿から東側の街、錦糸町で捕まったとタエちゃんの友達から聞いたんですが、よくよく調べてみると、逮捕されたのは新宿のアパートで、錦糸町の警察が来て逮捕した事までは分かったんですよ」
「ですか・・・」
「で、錦糸町の管轄の警察や、あちこちの警察所へ電話を入れて探ってみると、女性専用の留置場にいるとことろまでやっと分かりました」
「済みません。 そんなにまで調べてもらったんですか・・・」
「女性だけの留置場は池袋の隣町でした」
「・・・」
「今日、これから行こうと思いますが、その前に弁護士を確保したいんですよね」
「今日、これから行けるんですか」
「ええ、大丈夫です。 場所は分かりましたので」
「ありがたいです」
「いえ、こちらとしてもタエちゃんの居場所が分からないと、何も出来ないものですから」
「有り難う御座います」 深々とテーブルに頭を下げた

「弁護士事務所も事前に調べて置きましたので、電話してみましょうか」
「是非、お願いします」
「ですよねぇ」

「池袋には 法テラス池袋 があるんでチット探ってみましょう」
「探る?」
「ええ、法テラスは弁護士が民事上の案件を指導してくれるんですけども、ワザと刑事事件を持ち込んで、池袋の周辺の弁護士を紹介してもらいましょう」
「?・・・」
「まぁ、任せてください^^」
「はい」
「ではっ」

 来客用のソファーテーブルから立ち上がり、机に座り直した。 受話器を手にして番号を押す。 法テラス池袋は東池袋の池袋センタービル6階に入っている。 簡単に言うと、池袋駅から北側、サンシャインビルからだと西側の高速道路下にあるビルだ。

「050-3383-53**っと」 受話器に神経を傾ける
「はい、法テラス 池袋ですが」 速攻で女性がでたw
「初めて電話する者なんですが、そちらでは刑事事件の相談も受け付けていますでしょうか?」
「いいえ、当方では受け付けていませんが」
「では、池袋近隣で、刑事事件を相談できる事務所を紹介して戴きたいのですが」
「刑事事件ですか?」
「はい。 逮捕された友人へ弁護士を付けたいのですが」
「当方ではそのような件に関しましては良く分かりかねますので、池袋の東京弁護士会へご相談をなさってください」
「有り難うございます。 連絡先の電話番号を知りたいのですが」
「少々、お待ち下さいませ」 ♩~♩~ 何でカーペンターズの曲なのかは謎w
「お待たせしました」
「はい」
「池袋、東京弁護士会の電話番号ですが 03-5979-28** ですので」
「済みません、メモりますので、もう1度、お願いします」
「はい、宜しいですか。 03-5979-28** です」
「有り難う御座いました。 そちらへ相談をしてみます」
「では、失礼します」
「有り難うございました」

 カチャ

 受話器を左耳に当てたまま、右指で電話機のフックを押して通話を切った。 そのまま、池袋の東京弁護士会へ電話をする。
「ん~と、03-5979-28**っと」 勢いで電話をかけるw
 ♩~♩~
「はい、池袋、東京弁護士会です」 予想しなかった可愛い声が帰って来た ♡






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まじいなぁ~  ・・・ No14
- 2017/12/17(Sun) -
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 禁煙のハズの部屋で、デュポンで火をつけたメンソールを吹かしていると、テーブルの上に置いていた携帯が歌い出した。
 ♩~
 木下さんからだった。 壁掛け時計に目をやると2時を少し前だった。

「新宿駅に着きました?」 バカラの灰皿に煙草を押しつけながら尋ねた
「ええ、今、南口に出ました」
「南口ですか・・・会社は西口なんですが、近いですからTAXIで都庁の向かい側の中央公園までと、伝えて下さい。 そこで待っていますから」 
「都庁の向かいの中央公園ですね、分かりました。 ではTAXIを拾って行きます」
「公園の入り口で立っていますから、直ぐに分かると思いますから」
「宜しくお願いします、では」
「お待ちしてます」

 多分10分もかからないだろう。 背広を着込み、部屋がタバコ臭い!と、いつもサチに言われるので、ミミに灰皿を渡して早足で部屋を出た。 1階のロビーフロアーで受け付け係を無視して外へ向かう。 出口のコンビニでタバコを一箱買い込み、火をつけて公園へ歩き出した。 目の前の赤信号を横目で、こちらへ向かうTAXIを探したみたが、見当たらない。 くわえ煙草でデニーズを通り過ぎ、ハイヤットリージェンシーと平行に公園の入り口を目指す。 陸橋の下を通り抜け、公園入り口のガードルに腰をかけてタバコを足元でもみ消した。

 ここならTAXIもUターンが出来る信号機がある。 彼が乗ったTAXIを見逃すこともないだろう。 正面にハイヤット、右手前が都庁なので、公園入り口までTAXIで来ると、ここの信号で必ず一時停止をする交差点だった。 空を眺めていると低い雲の間に数カ所の青空が見え隠れしていた。

 二本目のタバコに火をつけようと、うつむき加減で左手を右手のデュポンに被せると、いきなり大型の観光バスが目の前で停まった。 回送待ちの観光バスが停まりやがった。 このままでは彼の乗ったTAXIを探せないので、渋々と立ち上がって交差点が見渡せる場所まで移動した。 二本目のタバコを吸い終わり、公園入り口の信号機が青色に変わった時、オレンジ色のTAXIが交差点でUターンをしようとしていた。 客は男1人、彼だろうと、直感した。

 青信号でUターンをして観光バズの後ろで停まった。 TAXIの中で料金を支払い、軽い会釈をした彼が俺の方へと歩いてきた。

「めめさん・・ですか」 手土産の紙袋をぶらさげた長身で細身な彼がゆっくりと話しかけた
「ええ、めめです」
「わざわざ申し訳ありませんです」
「取りあえず、少し話しましょう。 会社が直ぐそこなんで行きましょう」
「有り難う御座います」

 長身で細身なおっさんだが、100%のカタギには見えなかった。 大工の棟梁(とうりょう)や現場監督の様な、仕切りや的な雰囲気が感じられた。 まぁ~、やんちゃなオヤジとでも言おうか、通常のサラリーマンあがりには感じられなかった。
 知り合いでもある拘留中のタエちゃんからの頼みで1度、在留ビザの書き換えの手続きをしてやったのだが、合うのは初めてだった。 勿論、彼は俺がビザの更新手続きをしてやった事など知らないだろうし、気にもとめないタイプの人間に見えた。

「今回の件は、警察から何も連絡が無かったんですか?」 歩きながら尋ねてみた
「全く、何も知らされてないんですよ」
「不思議ですね・・・。 普通なら真っ先に旦那さんの所へ連絡が入るハズなんですけどね」
「ええ、事件の事はめめさんから電話をもらうまで、全然知りませんでした」
「ですか・・・」
「ニュースでも新聞でも書かれれば、誰かからでも連絡でもあると思うんですがね・・金沢ではニュースにならなかったんですかね」
「ですね・・・。 ただ、東京のTVのニュースでは随分と流れてましたよ、昨日から」
「そうなんですか。 金沢では全く気が付きませんでした」

 5分ほど歩いて会社へ着いた。 早足なら2分で到着する距離だが、ワザとゆっくりと歩きながら会話をして、彼からの情報を聞いてみたのだった。

「会社って、ここですか?」
「ええ」
「外車屋さんですか?」 BMW(べー エム べー)のショールームを覗き込んだ
「いえ、1階は外車のショールームとファミリーレストランが入ってますが、会社は上の階です」
「へえ~」 緑色のビルをしげしげと見渡していた

「取りあえず、上に行きましょう」
「はい」 何屋だここは?と言う表情でビルをまだ見上げていた

会社のロビーへ入ると左側奥の受付嬢が2人、立ち上がって頭をさげた。 だから・・・恥ずかしいから止めろと、社長へは何度も伝えていた。 彼の細い目が丸くなって驚いた。 右手を軽くあげて「とっとと会釈は止めろ」と2人の受付嬢へ合図をした。

「ここ会社って、めめさん、社長さんじゃないですよね」 身をよじって聞いてきた
「あ~違いますよ。 たまたま受付の娘の友達なんで、挨拶してくれたんですよ」
「そ~ですか・・・」

 立って会釈をしたままの受付を無視してエレベーターホールへ向かった。 エレベーターを待つ間も彼は、ロビーを珍しそうにあちらこちら見ていた。 エレベーターが到着して4~5人ほど降りてきたが、運良く、内の会社の社員ではなかった。
 
 26階を押す。 ロビーフロアーのエレベーターは低層階用に4機、高層階用に4機、非常用に1機と数だけでもかなり多い。 エレベーターホールを中央に、左右のフロアーに分かれていて、片側のフロアーは約155坪、510㎡ほどある広さだ。 まぁ~金沢から出てきたおっさんなら、驚く広さなのかも知れないが・・・。 

 26階でエレベーターが開いた。 途中2度ほど途中階に駐まったが、挨拶をされた社員には悪いが無視をして、考え事をしているふりをしていた。 背広だらけのオフィスで、彼だけが気楽な服装で、かなり浮いていたのは確かだった。

 真っ直ぐに奥の海外事業部へ向かう。 すれ違う社員も、挨拶をしてくる社員も、全員無視して事業部へ向かった。 一番奥の海外事業部へたどり着き、ドアを開けようとしたその時、背中から大声で叫ばれた。

「専務!どこ行ってたのよ!もぉ~」 イズだった

 会議をぶん投げて、イズに丸投げをして外出していたので、イズから大声を出されるのもしょうがない事だが、俺は慣れっこでも、金沢からのオヤジは場慣れしていない事もあり、かなりビビッて硬直してしまった。 タイミングが悪すぎた。

「いやぁ~ごめんごめん、急用があったんでつい美人なイズに任せきりになってしまったかなぁ~」
「専務!ごめんじゃ済まされないんだからね!大変だったんだから、もう!」
「あ!取りあえず、コーヒー頼むわ2つ。 俺はブラックで、お客さんへは黒砂糖とミルクで」
「え?キャ~ お客様?」
「うん、こちらが金沢からのお客様なんよ」
「木下です」 ペコリと頭を下げた

「イヤ~、専務 もう~ 恥ずかしい」 イズの顔が真っ赤になった 可愛い
「じゃ、頼むわ コーヒー2個ね」
「ハ、ハイ・・・」

「どうぞ、騒がしい所ですけど」 笑
「はい 失礼します あ! これ 手土産のつもりで持って来ましたんで どうぞ」 イズへ手渡した
「わざわざご丁寧に、有り難う御座います。 直ぐにコーヒーをお持ち致しますので」 さっきとは態度が違いすぎだろ~お前w

「どぞどそ、こちらへ。 3匹ほど喧しいのがいますが・・・奥で話しましょう」
「あ・・有り難う御座います」 

 3匹の顔をしげしげと見渡しながら、長身の彼が小さくなって部屋へ入っていった。 右サイドにはサチ、左さいどはミミがいた。 運悪く、3匹とも揃っていた。

 奥の自室のソファーへ促して、ドアを閉めてから、G.アルマーニの上着をハンガーへ掛けた。
 内線でサチを呼び出し、「駐車場へ連絡して、3時には車を使う予定だから、宜しく言っておいてくれ」と指示をした。 併せて、「サチ、例のニュース見たいから、タブレットをこっちへ持って来てくれ」とも言い重ねた。

 身内の逮捕映像を見る事になるとは、相当ショックだろうが、事実は事実として受け止めなくては先に進めないし、対策も取れないと思い、サチにタブレットを届けさせたのだ。

 イズがコーヒーと彼が手土産に持って来た黄色の箱菓子、博多通りもん饅頭をテーブルへ持って来た。 実は偶然にもこの手土産の博多通りもんと信玄餅は俺の大好物なのだった^^。


「なんか・・・凄い処ですね、めめさんの会社・・・。 美人な女性ばかりで・・・」
「あ~確かに、よく言われますよ、皆さんから」 笑
「でも、あの三匹は秘書なんですよ、3匹とも」 笑
「え?秘書ってなんですか?」

「いや~俺1人だと仕事が出来ないんで、3匹に助けてもらってる訳です」
「へ~」
「かっこ悪い話です」 笑

「専務さんとか さっき 呼ばれてましたけど・・・」
「え?そ~でしたか? 自分で肩書きは良く分からないんで 気にしないで下さい」
「で・・でも、専務の次は社長か常務ですよね・・・」
「あ~社長の器じゃないんで、来年、早めに退職するつもりでいます ヨ」 
「え? 退職?」
「そです」
「・・・もったいない、と言うか、東京の事は良く分かりませんね・・・」
「人に使われるのが嫌なんで、もう、そろそろ隠居ですわぁ~」 笑
「凄いですね・・・」
「それよりも、金沢から来たのに、なんで博多饅頭を?」
「たまたま東京駅でイベントしてましたので目につきまして・・・」
「ですかぁ~。誰かに俺の好物、聞いたのかと思いましたよ」 笑

「どうぞ、イズが美味しいコーヒーを入れてくれたんで、冷めないうちにどうぞ」
「いただきます。有り難う御座います」

 相手が何者であっても今回は彼を助けるのでは無く、知人のタエちゃんを助ける気構えでいた。 目の前のおっさんを助けるのでは無く、あくまでもミッションはタエちゃんの救出なのだ。






                            まじいなぁ~  ・・・ No15へ




                                                              izuizu
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まじいなぁ~  ・・・ No13
- 2017/12/16(Sat) -
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  イズ   へたくそw   こんなヤツです   たまに美人にも変身する・・・


   


 プリンを食い終え、空のプラケースとスプーンをエレベーターホール脇のゴミ箱へ放り込む。 その足で、会社の地下駐車へ向かった。 色々と考えてみると女性拘置所のある板橋本町へは新宿から電車を乗り継いで行くよりも、車で行った方が何かと便利だと思った。 池袋まで出て、都営三田線やJR埼京線を使うよりも車が楽だ。 と、言うよりも、昨日ユニクロで買い込んだ差し入れ品が多すぎて、電車では格好が悪すぎると今頃になって気が付いたのだった。 

 エレベーターを1度、1階ロビーで降りてから、地下駐車場専用の隣のエレベーターへ乗り込み、管理室へ向かった。 会長や社長が急用で車を使う事を前提に、2名の運転手が常時スタンバッているシフトになっている。 管理室のガラス越しに一人が俺を見て、軽く会釈をして笑顔を見せた。

「昨日預けた荷物、あるかな?」
「はい、二袋、預かっています」
「有り難う。 今日これから池袋の先に行きたいんだけど、運転、頼めるかな?」
「これからですか?」
「ああ、多分3時前後になると思うんだが・・・」
「ですか・・ちょっとまってくださいね。 スケジュールを見て見ますね」
 窓越しに事務デスクの上のスケジュール表を指でなぞっていく。
「ええ、大丈夫ですね。 会長も社長も外出予定が今のところ入っていませんから」
「そか・・じゃ、俺の予約を午後3時からで入れておいてくれ」
「畏まりました。 で、 どちらまで行きますか?」
「俺ともう一人、二人で池袋の先の十条駅近くまで行きたいんだ」
「分かりました。 十条駅ですね」
「ああ、正確には警視庁の女子拘留所のある西が丘って所なんだけど、頼むわぁ」
「え?拘置所ですか?」
「うん、正確にはここに行きたいんだよ」 内ポケットから拘留所のコピーの切れ端を渡した
「・・・・・」

 メモの所在地と行き先名を見てからゆっくりと顔を上げて、俺の顔を見た。 
「分かりました。 では、調べておきますので」 怪訝そうな顔で答えた
「頼むわぁ~、じゃ、後ほど」
「はい」
「あ!預けてある荷物、一緒に持って行くから、忘れないでくれよな」
「あの二袋ですね」 机の脇の荷物袋を指さした
「そそ、その荷物、頼むよ」
「はい、承知致しました」
「で、車は? 何がある?」
「メルセデスとセンチュリーですけど・・・」
「OK,メルセデスで行こう」
「はい、では、手配しておきます」
「じゃ、また、後で」 背を向けて、片手を振ってエレベーターへ歩き出した。

海外事業部へ戻るとまだイズが戻っていなかった。 会議が長引いてる証拠だ。 今から上の会議室へ戻っても気が乗らないのでそのまま自室のドアへ向かった。 さっきまで俺の部屋でプリン女子会をしていたサチとミミは白々しくパソコンへ向かって仕事をしている振りをしながら、さっきの件で、俺から文句でも言われないかと目をキョロキョロさせていた。
 秘書達3匹には俺が不在の時は自由に部屋で休んで良いとは言っておいてある。 そのせいで、たまにコレクションをしている高級な抹茶碗や花生けが壊されていた事もあるが、別に気にもしていない。 彼女達の能力の方が、俺には高級アンティークな美術品よりも大切なのだから。

 綺麗に片づけられていたガラステーブルの上に携帯を置いた。 ソファーにもたれて拘留中のタエちゃんの旦那、木下さんからの連絡待ちだった。 連絡が入れば新宿駅からTAXIで会社へ来てもらい、少し彼と話したかった。 勿論、弁護士の件もどうするかを相談する必要がある。

 弁護士は機動力が最重要なのだ。 小まめに面会をしてもらったり、状況を伝えてもらったり、何よりも安心して任せられる弁護士が必要だ。 1番のお勧めは検事上がりの弁護士だった。 高値にはなるが、検事を経験した弁護士はやはり顔が利く。 相手の検事や裁判官とも顔見知りなので融通が利くのだ。 

 

 余り知られていないのだが、ここで裁判について少し話しておこう。 TVドラマの様な裁判などあり得ないからだ。 

 
 その前に、検事について触れておこう。 検事には正検事と副検事がある。 司法試験に合格をして正検事になるわけだが、その正検事の事務官を10年間務めて、簡単な面接と試験に合格すれば事務官から副検事として正検事と同じ仕事が出来るのである。 前提は国家一般職試験に合格する事が必要だが、TVのヒーローのキムタクの様に、中卒でも国家一般職試験に合格すれば事務官となり、10年の事務勤務で(副)検事となることが出来のである。 
 つまり、司法試験をパスしなくても、楽な国家一般職試験に合格すれば事務次官職を得て、検事になれるのだ。 

 裁判官も同様に、裁判所一般職試験に合格すれば事務職から裁判官になれる。 弁護士は副検事3年以上の経験と、検察官特別考試で特認検事となり、特認検事5年以上で弁護士になれるのである。

 何が言いたいのかというと、難解な司法試験をパスしなくても裁判官や弁護士、検事になれる裏道があると言う事なのだ。

 よって、犯罪者達は自分を担当する検事や裁判官が「正」なのか「副」なのかで取り調べ態度をガラリと変えてしまうのだw。
「副」検事にあたれば量刑を軽くしてもらえると思われ、「正」検事にあたれば実刑は免れない、と諦めるのである。


 で、裁判の話だが、法廷でTVの様な質問ややり取りは殆ど無い!事が事実なのだ。 あんな面倒くさい質疑応答をしていては時間がいくらあっても終わらない。 で、実は・・・裁判の前から裁判官、弁護士、検事が連絡を取り合っておおよその「刑の落としどころ」を事前に調整しているのである。 この三者の裏打ち合わせが、刑罰の量刑を決めているのが現実なのだ。

 だから、機動力の良い検事あがりの弁護士(弁護士には定年がない)になると、相手の検事局事務所を訪ねて、話し合ってくれる訳で、そんな時、相手が副検事なんかだと効果覿面だし、その後、裁判官へも「相手側の検事との話(落としどころ)が付いていますから、この度は猶予してください、とか、「起訴猶予予定らしいので、この度の件はチャラで」と、裁判さえも行わずに簡易で罰金や起訴猶予で釈放させてくれるのである。


「いや~、00弁護士さん、今回の事件なんですが、加害者の めめw も反省してますし、彼、前歴から10年経ってませんので、このまま起訴されてしまうと実刑が確定なんですよ。 そうすると家族や子供も悲しむし、会社へも迷惑が掛かりますので、なんとか今回は許してやってくださいませんか・・・。 私からも良く言い聞かせて、二度と悪さをさせないように改心させますから・・・・。 今回は私の顔をたてて起訴猶予か罰金でお願いしますよ」


 これが事実である。 よって、老いぼれ弁護士などが付けば、全く動かないので、実刑は免れなくなる。 一般的には覚醒剤や窃盗は1度目は執行猶予、2度目は1年半の実刑、3度目は2年の実刑なのだが、老いぼれ弁護士だと、裁判官の心証をも悪くして執行猶予が実刑に化ける事もあるのが事実である。

 だからこそ、逮捕後の21日以内に示談を取ったり、相手の検察官よりも弁護士が顔が利くと、執行猶予が強くなるのである。

 ついでに、
 起訴されすに、弁護士と検事とで話合いで罰金刑に確定したとすると、誰が払うのか? 本人? いや、本人は30万も50万も持って捕まるはずも無い。  弁護士が立て替える? あり得ない。 弁護士も結構、取りはぐれがある。 そこで、弁護士が家族に2~3日前に電話をして「罰金30万で手を打ちましたから(話をまとめましたから)、明後日の釈放の日までお金の準備をおねがいします。 払えなければ、刑務所で1日1万円程の作業で返すことになりますのが・・」と、事前に家族に話を伝えてあるから、釈放時に罰金を家族から受け取って、弁護士が納付して、身柄の釈放となる訳なのである。

(アメリカや海外では、この保釈金を貸し出しや一時立て替え会社があり、映画のように、保釈された後にトンズラ逃亡して賞金稼ぎに追われる、と言う実際の話はあるが、日本ではそんな商売はあり得ない)


 実際の裁判など、簡単なモノである。 日本のスタートしたばかりの陪審員制度など、お飾りの「ひな壇」にしかならない。 あくまでもアメリカと違って参考程度のモノで、裁判官、検察官、弁護士の3者会談ですでに答えが出ているからだ。

 
 この事柄を踏まえると、いかに有能な弁護士を付けるかが鍵になるのだ・・・・。






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