2019/11/28
キャッシュレス決済
10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられた。
それにあわせて、国の政策として、買い物をしたときキャッシュレスで決済すると何パーセントか還元されるという制度が始まった。
2年前、携帯電話をauのiPhoneに乗り換えたとき、わけがわからぬまま、auWALLETとというオレンジ色のカードが送られてきた。
auの店の人は「そのカードに5000円の割引分が入っているからぜひ使ってください」という。
しかし、このカードは使い方が分からないから送られてきた封筒の中にずっと2年間入ったままだった。
10月になって、キャッシュレス還元制度が始まったのを機に、このカードをいつか使ってやろうと財布に入れてその機会を伺っていた。
家内のお遣いで2週間に一回くらい米屋さんに米を買いに行く。
毎週木曜日に腰痛のリハビリで近くの整形外科に通っているのだが、ちょうどその病院の近くに米屋さんがあるのである。リハビリのついでにと、米を頼まれるのである。
以前は米屋さんが宅配してくれていたが、配達のお兄さんがいなくなって、自分で買いに行かなければならなくなったのだという。
米くらい買い物に行ったときに自分で買って来いと言いたいのだが、一袋5kgの米はまあまあ重く、他の買い物袋を下げては米までは手が回りかねるのだろう、と察してやむなく引き受ける。
ちょうど10月の第1週の木曜日、その米屋さんにキャッシュレス決済のシステムが導入された日だった。システムの営業マンが米屋のおばさんに説明をしていたところに米を買いに行った。
米代を支払うとき、「このカード使えますか」とオレンジ色のカードを差し出すと、米屋のおばさんは首をかしげた。それを見たシステムの営業マンが「使えますよ」と、カードを取り上げて、さっと器械に通すと、瞬時に決済は終わった。auWALLET初使用の瞬間だった。
それから2週間後、また米のお遣いを頼まれた。
店にはいつもおばさんがいる。支払いのとき、「これでお願いします」とオレンジ色のカードを差し出すと、おばさんは前回のことを覚えていて「前もこれでできましたよね」と言いながら、カードを器械に通した。だが反応がない。
おばさんは「あれっ、あれっ」と何度も繰り返すがどうしても次に進まない。「ごめんなさい」と陽気に笑いながらおばさんは再度挑戦する。何度やってもダメで、おばさんはとうとう電話で娘さんを呼び出した。
娘さんがやると、一回でできた。どうやら、カードリーダーにカードを通すスピードが問題なのだ。
おばさんのスピードがゆっくり過ぎてカードの情報を読み取れなかったのである。
おかげでリハビリの時間に遅れてしまった。
さらにそれから2週間、またまた米のお遣いだ。
もうキャッシュレス決済のシステム導入から一ヶ月くらいたった。おばさんもカードの通し方をマスターしているはずだ。
そう思って安心してカードを渡すと、「あれっ、あれっ」とおばさんはまたもや明るく笑う。
またもや決済が進まない。おばさんのカードを通すスピードは格段によくなっている。しかしダメである。
一体この店にカード決済する客はほかに来ないのだろう。おばさんの様子を見ていると、そうとしか思えない。
そうしているうちに、米屋の旦那が帰って来た。旦那はカードをカードリーダーにおばさんとは逆の方向から差し込んだ。
すると、何事もなかったように決済が済んだ。
カードをカードリーダーに通す。ただこれだけのことであるが、それにはカードを通すスピードとカードを通す方向の2つの要素が正しくないといけない。こんな単純でなんでもないことが機械に不慣れな人々にとってはにっちもさっちもいかない高いハードルになっている。
こんな光景が、今、日本中の中小小売業のレジおばさんたちの間で起こっているのに違いない。
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