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クローズアップ2008:海上自衛隊のイージス艦衝突事故ー当直士官を書類送検して幕引きか?-

2008-06-28 01:51:03 | 国内政治
 クローズアップ2008:「あたご」当直、書類送検 航行安全、感度なし

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、第3管区海上保安本部(横浜市)は24日、衝突前の当直士官、後潟(うしろがた)桂太郎・前航海長(36)と、衝突時の当直士官、長岩友久・前水雷長(34)を、業務上過失致死容疑などで横浜地検に書類送検した。事故から約4カ月。3管は見張りが不十分で回避が遅れたと判断した。20年前の潜水艦「なだしお」事故の教訓が生かされていないとの指摘もある。防衛省は事故を機にどう変わろうとしているのか。

 ◇当直多すぎ人任せ 寒いので見張りは中で
 「当直士官2人が基本的な動静監視を怠っていた」。横須賀海上保安部の石川荘資部長は書類送検後の会見で、船乗りにとって最も重要な見張りが不十分だったとし、仮眠中の艦長から安全航行を託された2人の刑事責任を指摘した。行政処分のため事故原因を究明する横浜地方海難審判理事所の調査も総合すると、平時の安全航行に鈍感な海自の体質が背景に浮かび上がる。

 見張り不十分、判断ミス、回避措置の遅れ……。ヒューマンエラーの連鎖が事故につながった。「乗組員が多すぎて『誰かがやっているだろう』という気持ちになってしまう」。理事所関係者が連鎖の背景を語る。乗組員の任務が細分化され、責任の所在が不明確だったという意味だ。平時の安全航行に関する設備や態勢も「20~30年前の水準」と驚く。

 3管の捜査などで、他の船舶に対する乗組員の鈍感さも分かった。衝突前の見張り員は「雨が降っていて寒かった」と艦橋内に。雨がやみ、当直引き継ぎ後も艦橋内にいた。長岩前水雷長は「見張りを外に出し忘れた」と話しているという。

 後潟前航海長は「漁船は操業中で止まっている」と誤解したまま、長岩前水雷長に引き継いだ。なだしお事故で遊漁船の元船長の海事補佐人だった鈴木邦裕氏は「止まって見えたということは衝突する危険な位置関係なのに警戒しないのは相当練度が低い。伝えるという行為がシステム化されておらず、海自の訓練不足を如実に示した事故だ」とみる。

 あたごは最新型対空レーダーで100キロ以上離れた複数の対象を探知・追尾できるハイテク艦。平時は水上レーダーを使い、艦橋と戦闘指揮所(CIC)にあるモニターを通して、半径約20キロ内の船舶の動向を見張る。理事所関係者は「民間商船では漁船群などをレーダーで自動追跡させるが、あたごは人がいるので手動だった」と語り、レーダーの使い方にも疑問を示す。

 理事所は週内に、海自組織も対象に横浜地方海難審判庁へ審判開始を申し立てる。鈴木氏と同様に補佐人だった田川俊一弁護士は「2人の書類送検は艦内態勢の不備を意味する。なだしお事故から何を学んだのか。組織としての海自の責任もどこまで解明できるか注視すべきだ」と話す。【鈴木一生、池田知広、吉住遊】

 ◇海自「刷新」道半ば
 今回は最新鋭の護衛艦が引き起こした事故だけに、なだしお事故以上に防衛省・海自の衝撃は大きかった。書類送検は「一つの区切り」(石破茂防衛相)と「気分一新」を望む空気も省内にはある。だが、海難審判では組織や艦長らの管理・監督責任も問われる。組織として抜本的な改善が求められる。

 防衛省内部では、後潟前航海長の刑事責任の有無が注目されていた。防衛省は事故直後、前航海長をヘリに乗せて呼び、防衛相らが大臣室で事情聴取した。「結果的には、刑事事件でグレーゾーンにいる者から捜査機関より早く話を聞いたことになる」(内局幹部)と懸念していただけに、ショックは大きい。

 衝突事故で最も問題とされたのは、あたご乗組員の見張り態勢。海自は事故直後からすべての訓練を中止して安全航行に関する総点検を行ってきた。自動操舵(そうだ)装置についても「往来の多い海域では使用しない」などの使用基準を制定した。

 さらに、事故に加え情報流出や護衛艦火災などの不祥事が相次いだことを受け、抜本的改革委員会を設置。若い隊員らの気質分析から艦艇という特殊な勤務環境、指揮・統率のあり方にまで立ち返って検討を進めている。

 ただ、通達を出し報告書をまとめるだけで十分か。なだしお事故から20年で同じように「見張り不十分」が指摘される事故を起こしただけに、憂慮の声があがる。石破防衛相自身、24日の会見で「組織が劇的に変わったか、私は確証を持っていない。常に意識の喚起を図っていくことが必要だ」とクギを刺さざるを得なかった。

 あたごは事故後、定係港の舞鶴基地(京都府舞鶴市)に戻り、今月中旬からは年次検査でドックに入り復帰を待っている。【滝野隆浩】

 ◇当直乗組員だけで50人…海保捜査、難航の4カ月
 事故発生から書類送検まで約4カ月。なだしお事故の68日間に比べ、3管の捜査が長期化した感は否めない。

 関係者は長引いた理由を▽衝突相手の清徳丸の2人が行方不明(5月に死亡認定)▽衝突前後の当直だけでも約50人と事情聴取対象となる乗組員が多い▽乗組員の供述が二転三転し突き合わせに時間がかかった--などと漏らす。

 両船の航跡をたどる客観的証拠がなかったことも大きな要因だ。あたごは自衛艦なので、一般の船に義務付けられている航海情報記録装置(VDR)は搭載されていなかった。一方、清徳丸のGPS(全地球測位システム)装置は海水につかり解析できなかった。

 3管は鑑定で▽あたごの右舷70度付近を漁船が航行▽清徳丸は衝突直前に右舵(かじ)を切り回避措置を取った▽その左舷にあたごが減速する間もなく衝突--と突き止めた。漁船を右前方に見て航行していたあたご側に海上衝突予防法の回避義務があったことが裏付けられた。【鈴木一生】

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 ■イージス艦と漁船の衝突事故の経過

2月19日 事故発生

  27日 石破茂防衛相が衆院予算委で、事故後に交代前の当直士官だった航海長をヘリで自室に呼び寄せ事情聴取していたことを認める

   〃  舩渡健艦長が吉清さんの親族に謝罪

3月 2日 福田康夫首相が吉清さんの親族に謝罪

  21日 防衛省が事故中間報告を発表

   〃  あたご事故などの不祥事を受け、吉川栄治海上幕僚長らを更迭

  28日 舩渡艦長らあたご乗組員6人を更迭

4月16日 3管があたごを衝突海域で航行させ洋上検証を実施

5月20日 吉清さん親子を死亡認定

  29日 吉清さん親子の葬儀

6月24日 前航海長と前水雷長を3管が書類送検

 (肩書は日付当時)

(出所:毎日新聞 2008年6月25日 東京朝刊)

海自イージス艦・漁船衝突:当直2士官送検 「一つの区切り」 遺族、父子の墓に報告

 「一つの区切り。事実をきちんと解明してほしい」--。海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」(千葉県新勝浦市漁協所属)の衝突事故で、清徳丸船長、吉清(きちせい)治夫さん(当時58歳)と長男哲大(てつひろ)さん(同23歳)父子の関係者らは24日、あたごの当直士官2人の書類送検を冷静に受け止めた。

 治夫さんの妻幸子さん(52)と妹美恵子さん(52)は24日朝、勝浦市内にある父子の墓を訪れ、花を供えて書類送検を報告した。墓には、遺骨に代わり父子愛用の服を納めている。美恵子さんは「ほっとした。後はそっとしておいてください」と話した。

 父子が母港にしていた川津港。キンメダイ漁シーズンを迎え、昼ごろには漁を終えた漁船が続々と帰港した。同漁協の外記栄太郎組合長(79)は「法に基づく厳正な処分を望むが、故意ではないので、穏やかな処分で済ませてほしいという思いはある」と言葉少な。僚船「金平丸」の市原義次船長(54)は「当直士官2人は、たまたま責任者だっただけ。組織全体の責任を明らかにすることで、同様の事故をなくしてほしい」と防衛省に注文を付けた。

 漁師仲間の傷は癒えないままだ。保育園から一緒という漁師、吉清紘生さん(23)は「てっちゃんを思い出さない日はない。でも葬式もやったし、これから時間をかけて心の整理をつけたい。書類送検をきっかけに事実が解明されればいい」と話した。【袴田貴行】

(出所:毎日新聞 2008年6月25日 東京朝刊)
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生存権訴訟:老齢加算廃止、生存権侵害せず 原告12人の請求棄却--東京地裁

2008-06-28 01:43:15 | 憲法裁判
 生存権訴訟:老齢加算廃止、生存権侵害せず 原告12人の請求棄却--東京地裁

 70歳以上の生活保護受給者に上乗せ支給されていた老齢加算を廃止したのは生存権を保障した憲法に違反するとして、東京都内の高齢者12人が居住する3市7区に廃止処分の取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は26日、請求を棄却した。全国8地裁に起こされた同種訴訟で初の判決。原告側は控訴する方針。【銭場裕司、夫彰子】

 大門匡(たすく)裁判長(岩井伸晃裁判長が代読)は「生活保護費に付加して給付されている老齢加算を廃止しても、現実の生活水準を無視した著しく低い基準になるとは言えない」と述べた。食費を切り詰めたり、葬儀列席を控えている原告の生活については「不自由を感じる場面が少なくなく、廃止を問題視するのは無理からぬことだ」と理解を示しつつ「憲法25条が保障する『健康で文化的な最低限度の生活』を満たしていないとは言えない」と判断した。

 廃止の理由として厚生労働省は「低所得層の単身世帯では70歳以上の支出が60代を下回り、老齢加算に見合った『特別な需要』はない」としてきたが、判決は「合理的な根拠があり、裁量権の逸脱・乱用はない」と追認した。

 老齢加算は、高齢者には消化に良い食べ物や暖房が必要で、墓参りなど社会的費用もかかるとして1960年に創設された。対象者は約30万人。各原告は月額1万7930円を受給していたが、04年度9670円、05年度3760円と段階的に引き下げられ、06年度に全廃された。

 ◇小泉改革で決定、母子加算も全廃
 老齢加算は「小泉改革」で社会保障費の抑制論が強まる03年末、厚生労働省の生活保護に関する検討会の提言がきっかけで廃止が決まった。その流れで一人親や両親不在の世帯を対象にした母子加算も、05年度から段階的な減額が始まり、来年度には全廃される。

 両加算の撤廃は「(生活保護を受けない)低所得世帯の方が受給世帯に比べ消費支出額が少ない」との検討会の提言が根拠。今回の判決は、家計調査をもとに生活保護世帯を「低所得層より豊か」と位置付け「生活の最低基準」までも相対比較で切り下げる厚労省の方針に沿った内容になった。厚労省の江利川毅事務次官は26日の会見で「生活実態に合うよう制度設計をしてきた政府の方針が基本的に認められたと考える」と判決を評価した。

 ◇「早く死んでくれと言わんばかり」 79歳、年20万円以上カットされ--原告団長
 「予想を裏切られた。国は金のない年寄りに早く死んでくれと言わんばかりです」

 原告団長の横井邦雄さん(79)は判決後の会見で悔しさをにじませた。

 横井さんの毎月の収入は生活保護費の約7万5000円のみ。老齢加算の廃止で年20万円以上がカットされ、おかずを2、3回に分けて食費を切り詰める生活が続く。「結局は食費を削って寿命を縮めている。見舞いや葬式も不義理にしてしまい、心に痛みが残ります」と語った。

 慢性のバセドー病を患う長女(56)と2人で暮らす原告の八木明(めい)さん(82)は「自分がいなくなった後、長女の生活はどうなるのか。このままだと切り捨てられる一方になる」との思いで裁判に加わった。会見では「勝訴しか考えていなかったので、涙がぽろぽろこぼれて止まらなかった。生活が苦しい人たちを裏切っていいのか」と唇をかみしめた。

 原告代理人の新井章弁護士は「全く時代感覚に欠けた判決。高裁に適正な判断を仰ぎたい」と批判した。

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 ■解説

 ◇生活実態調査、判決も「強く要請」
 東京地裁判決は憲法が保障する生存権の侵害は否定したが、生活保護を受ける高齢者の不自由さも指摘した。財政難を理由に社会保障費を安易に削る行政の動きにお墨付きを与えたわけではなく、厚生労働省には生活保護の理念と生活実態に即したきめ細かい制度運用が求められる。

 生存権が争点になった大型訴訟は、1960年の1審判決で低すぎる生活保護基準が違法とされた「朝日訴訟」以来。2審で逆転敗訴したが、基準はその後向上した。しかし、緊縮財政が続く中で老齢加算が廃止され、再び生存権の問題が浮上した。

 全日本民主医療機関連合会によると、老齢加算の廃止後、5割超の世帯が食費を切り詰め、約4割が洋服を全く買っていない。聞き取り調査をした社会福祉士らは「付き合いを控えて孤独感が強まり、惨めな思いをしている」と口をそろえる。

 判決も「原告は余裕に乏しく、非常につましい生活を送り、あらゆる場面で節約を強いられ、不自由を感じる場面が少なくない」と認めた。生活保護に詳しい森川清弁護士は「まず緊縮財政方針ありきで、厚労省が生活実態調査に基づいて廃止を決めたかは疑問だ」と指摘している。

 生活保護を巡っては、09年度での母子加算廃止のほか、基準を更に引き下げる動きもある。判決は「本体と言える生活保護費の減額が問題とされるのであれば、生活実態にかかる調査が極めて強く要請される」と言及しており、正確な実態調査なしに安易な削減をすることは許されない。【銭場裕司】

(出所:毎日新聞 2008年6月27日 東京朝刊)

 生存権訴訟:「底辺の声」聞いて 原告・横井さん訴え 老齢加算廃止巡りあす判決

 70歳以上の生活保護受給者に上乗せ支給されていた老齢加算を廃止したのは、生存権を保障した憲法に違反するとして、東京都内の高齢者12人が、居住する3市7区に廃止処分の取り消しを求めた訴訟の判決が26日、東京地裁(大門匡裁判長)で言い渡される。全国8地裁で係争中の同種訴訟では初の判決になる。

 「生活が苦しくなると削るのは食費。肉などは2、3回に分けて食べるようになったよ」。原告団長の横井邦雄さん(79)は1人暮らしの都営住宅で苦笑いした。がんを患い、緑内障で左目の視力を失いながらも、裁判を闘い続けてきた。

 横井さんは活版印刷の元職人。バブル経済の崩壊で雇い先がなくなり、96年から生活保護を受けている。現在の収入は生活保護の月約7万5000円のみ。2年前、老齢加算制度が「特別な需要はない」との理由で完全廃止された。約1万8000円を減額され、「年間20万円以上のカットはきつすぎる」と嘆いた。

 生活はぎりぎりの状態で、香典を出せず、弔電で済ます。京都の姉の見舞いも年1回に減らし、「自宅のお風呂もやめて、区が配布した月4回の入浴券でしのいでいる」と言う。

 高齢者には消化のよい食べ物や暖房などが必要で、墓参りなど社会的費用もかかるとして、1960年に老齢加算制度ができた。裁判で横井さんらは、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」が損なわれていると強調してきた。

 「判決に期待したい。我々の裁判は年寄りだけの問題じゃなくて、底辺の声なんです」。ワーキングプアの問題にも心を痛める横井さんは力を込めて語った。【銭場裕司】

(出所:毎日新聞 2008年6月25日 東京夕刊)

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生活保護老齢加算-東京地裁判決が原告の訴えを棄却ー

2008-06-28 01:38:36 | 憲法裁判
生活保護老齢加算
「廃止は違憲」の訴え棄却
東京地裁判決 原告は控訴へ

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 七十歳以上の生活保護受給者に支給されていた「老齢加算」の廃止で、憲法二五条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」ができなくなったとして、東京都内の生活保護受給者十三人(現在は十二人)が区や市に廃止処分の取り消しを求めた訴訟の判決で二十六日、東京地裁は「廃止には合理的な根拠がある」などとして、原告の訴えを棄却しました。判決後、原告・弁護団は「貧困と格差を拡大する政府の不当な政策を是認した判決」だと批判、控訴する考えを表明しました。


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 高齢者や母子家庭の生活保護世帯に対する加算措置の廃止をめぐる同様の訴訟は、ほかに九地裁で争われており判決は初めてです。

 大門匡裁判長(岩井伸晃裁判長が代読)は、低所得者層の消費水準が七十歳以上の生活保護受給者よりも低いことなどを理由に、「老齢加算を付加しなければならない特別の需要がない」と指摘。同加算の廃止処分は「現実の生活条件を無視した著しく低い基準を設定したとまではいえない」と述べました。

 老齢加算は、加齢に伴う食事への配慮や慶弔費の増加など「特別な需要が認められる」として、生活扶助費に上乗せして、月に約一万八千円支給されていました。

 ところが、「社会保障構造改革」路線を打ち出した小泉自公政府は、老齢加算を必要とする「特別な需要は認められない」として、二〇〇六年度に全廃しました。

 訴訟で、原告は、老齢加算でかろうじて最低限度の生活を維持していたのであり、「特別な需要」を認めずに廃止したことは、憲法二五条に違反すると訴えました。

批判・抗議・新たな決意
判決報告集会に300人
 判決後、東京都内で判決報告集会が行われ、三百人がつめかけました。

 生存権裁判を支える東京連絡会の佐藤直哉代表委員は「激しい怒りと抗議の意を表明したい」と表明。判決について弁護団の田島浩弁護士は「きわめて不当だ」とのべ、「国の政策を認めるものだ」と批判しました。

 参加者からは「格差、貧困是正に逆行する判決だ」「多くの市民に実態を知らせ、人権を守るたたかいをひろげたい」などの発言が続きました。

 全労連の小田川義和事務局長は、貧困を広げた「構造改革」に迎合する判決だと批判し、「生活改善をこれ以上閉ざしてはならない。全国のたたかいと結んで、頑張りたい」とのべました。

 集会に参加した女性(53)=東京都調布市=は「原告を支えて、引き続くたたかいに立ち向かっていきたいと、思いを新たにしました」と語りました。

“生存権侵害の実態見てない”
弁護団会見
 東京生存権裁判の原告・弁護団は東京地裁での判決を受けて、声明を発表し、同地裁内で記者会見しました。

 声明は、判決について、(1)生活保護基準以下の生活を強いられている国民の貧困を解決するのではなく、この貧困状態に合わせて生活保護基準を切り下げ、格差と貧困を拡大する政府の不当な政策を是認したもの(2)老齢加算の重要な役割を何ら理解することなく、老齢加算の廃止で高齢保護受給者の生存権を侵害している実態から目を背け、行政の違憲・違法な措置を追認した不当なものだと批判しました。

 新井章弁護士は「昨今の日本社会を覆っている社会保障圧迫に対し、何らの問題意識を示すことができなかった残念な判決」だとのべました。

 年内中に地裁判決が出る予定の京都訴訟の竹下義樹弁護士は「老齢加算はおまけで、餓死や孤独死していない以上は文句をいうなという判決。原告の生きざま、生活保護が果たしている現実の姿を裁判長が直視しなかった」と指摘しました。

(出所:日本共産党HP 2008年6月27日(金)「しんぶん赤旗」)
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北朝鮮核申告-非核化めざし外交努力強めよ-

2008-06-28 01:34:40 | 国際政治
主張
北朝鮮核申告
非核化めざし外交努力強めよ

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 北朝鮮が核計画の申告を六カ国協議議長国の中国に提出しました。核兵器の材料となる核物質と核施設、核計画が含まれるとされます。これを受け米国は、テロ支援国家指定の解除と「対敵通商法」の適用中止の手続きに入りました。

 今回の北朝鮮による核計画の申告は、北朝鮮の寧辺(ニョンビョン)にある核施設の無能力化とともに、六カ国協議が合意した北朝鮮非核化の「第二段階の措置」とされるものです。近く再開される予定の六カ国協議では、「第二段階」の終了の確認とともに、北朝鮮の「すべての核兵器及び既存の核計画の放棄」(二〇〇五年九月の六カ国協議共同声明)という最終段階に向けた具体的措置が設定されることになります。

 今回の一連の動きはそうした重要なステップであり、関係国は朝鮮半島非核化の目標に向けて外交努力をつくすことが求められます。

「行動対行動」原則で
 関係国は北朝鮮の非核化プロセスでの検証を重視するとしており、今回の申告が正確かどうかについても検証作業を通じて明らかになるとの立場です。北朝鮮がすでに提供した一万八千ページを超える原子炉稼働記録がそのよりどころの一つとなると見ています。さらに北朝鮮での現地査察や核開発関係者への聞き取り調査なども行う方針です。

 非核化プロセスが新たな段階に進んだことには、直接交渉にあたった米朝双方、とりわけ米国のイニシアチブが大きかったといわれます。ライス米国務長官は十八日の講演で、北朝鮮は非核化の達成によって「人道的・開発支援、非核エネルギー支援、主権の尊重、国連憲章の諸原則の約束、朝鮮半島の永続的平和など」を確保できると指摘。「外交とは一連のインセンティブ(行動の促進要因)とディスインセンティブ(行動の阻止要因)を構築することだ」と述べ、「約束対約束、行動対行動」の原則を強調しています。

 米国が、かつては固く拒否していた北朝鮮との直接交渉を、この間強力に進めてきた背景には、イラク戦争のゆきづまりが典型的に示しているように、米国の先制攻撃にもとづく世界戦略が破たんし、国際的に孤立を深め、米国の一国覇権主義が通用しなくなったという世界の大きな変化が横たわっています。

 二〇〇五年九月の六カ国協議の共同声明は、朝鮮半島の非核化と並んで「北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力」をうたい、そのために六カ国協議は「北東アジアの平和及び安全のメカニズム」の構築をめざしています。共同声明の立場で、朝鮮半島の非核化と平和の枠組みづくりのために外交努力を重ねることが必要です。

 朝鮮半島の非核化は、日本の平和と安全にとってもきわめて切実な問題であり、日本が積極的な役割を果たすことが求められています。

日朝の懸案を包括的に
 日朝間には拉致問題という重大な懸案があります。日本共産党は、〇二年九月の日朝平壌宣言の精神にたって核・ミサイル、拉致、過去の清算という日朝間の諸懸案を包括的に解決する立場が重要だと考えます。この包括的解決の過程で一つの問題の解決が先行することは、他の問題の解決の妨げではなく、促進につながりうるものです。

 核問題で日本政府が積極的な姿勢をとることは、拉致問題に対する国際的理解と支援を高める上でも役立つでしょう。こうした立場からの日本外交が求められています。

北朝鮮が核計画申告
米はテロ指定解除へ
非核化第2段階大詰め

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 北朝鮮は二十六日、六カ国協議の議長国・中国に対し、同協議の合意に基づいて核開発計画の申告書を提出しました。それを受けてブッシュ米大統領は同日、北朝鮮のテロ支援国指定解除を議会に通告し、対敵国通商法の解除手続きに入ることを表明しました。


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6カ国協議 近く再開
 【北京=山田俊英】六カ国協議議長の武大偉・中国外務次官は同日、声明を発表し、北朝鮮の崔鎮洙・中国駐在大使が申告書を提出したことを明らかにしました。声明によれば、六カ国は申告内容を検証する機関の設置に合意しました。

 停滞していた六カ国協議は近く九カ月ぶりに再開される見通しで、北朝鮮の非核化プロセスは「第二段階」の完了に向け大詰めを迎えます。非核化「第二段階」は寧辺にある核施設の無能力化と核計画の申告、米国による制裁解除が柱です。北朝鮮は二十七日、原子炉の冷却塔を爆破します。

 協議筋によると、申告書は四十―五十ページで、抽出したプルトニウムの量、核施設の稼働記録、核開発関連施設の一覧表などが盛り込まれています。申告書は核兵器に関する情報を除外。この問題は「完全な非核化」をめざす第三段階で扱われます。

 六カ国協議発足の発端となったウラン濃縮計画は、シリアへの核技術移転問題とともに、別の非公開文書で提出されます。米国がこれらの問題を指摘し、北朝鮮は米国の懸念を理解するという内容になるといいます。

 テロ支援国の指定解除は、四十五日後に発効します。この間に米国は申告内容を検証。北朝鮮が検証に非協力的だった場合、テロ支援国家指定解除の撤回もありうるとしています。

 五カ国が申告を了承すれば、北朝鮮のすべての核兵器、核計画放棄を目指す「第三段階」に進みます。無能力化が昨年十一月から進行する一方、申告内容について米朝間の調整が難航していました。


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北朝鮮の核計画申告について
志位委員長が談話
 日本共産党の志位和夫委員長は二十六日、北朝鮮による核開発計画の申告書提出について、次の談話を発表しました。


 北朝鮮は二十六日、同国の核開発計画にかかわる申告を六カ国協議の議長国・中国に提出した。また、米国政府は、北朝鮮をテロ支援国家指定から解除する手続きに入ると発表した。わが党は、この動きを昨年十月の六カ国協議の合意にもとづいた朝鮮半島の非核化に向けた一歩として歓迎する。これが北朝鮮の核兵器の完全放棄につながることを強く期待する。

 核兵器問題が道理ある形で解決されるなら、日朝間の懸案である拉致問題の解決についても、その進展をうながす新しい条件となりうる。日朝平壌宣言にもとづいて核兵器、拉致、過去の清算を含む日朝間の諸懸案の包括的解決をめざす日朝両国政府の努力を期待する。


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 六カ国協議 北朝鮮の核問題を解決するための協議の場として、二〇〇三年に開始。北朝鮮、韓国、中国、日本、米国、ロシアの六カ国で構成。議長国は中国。〇五年九月の第四回協議で、基本原則や目標を定めた共同声明を採択。〇七年二月の第五回協議第三次会合で「初期段階」の措置、同年十月の第六回第二次会合で「第二段階」の措置に合意し、共同文書として確認しました。

 ウラン濃縮 核兵器には、プルトニウムを用いる方法とウランを用いる方法があります。プルトニウムは原子炉の副産物としてできるため、北朝鮮はこれを利用して核開発を進めてきました。ウラン方式の場合、核兵器に使われるウラン235が天然ウランには、わずか0・7%しか含まれていないため、これを90%以上に引き上げるウラン濃縮作業が必要になります。米国は二〇〇二年の米朝高官協議で北朝鮮側がウラン濃縮計画を認めたと主張。北朝鮮は否定してきました。

(出所:日本共産党HP 2008年6月27日(金)「しんぶん赤旗」)
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<NHK番組改ざん事件>知る権利に背を向けた最悪の最高裁判決 ― 醍醐 聡・東大教授

2008-06-27 02:34:36 | 憲法裁判
 <NHK番組改ざん事件>知る権利に背を向けた最悪の最高裁判決 ― 醍醐 聡・東大教授(しんぶん赤旗)

 さる十二日、最高裁判所第一小法廷(横尾和子裁判長)はNHK・ETV番組「問われる戦時性暴力」の改ざん事件に対して原告(バウネット・ジャパン)の訴えを全面的に退ける判決を言い渡しました。今回の最高裁判決はNHKの放送の自由は何のためにあるのかという根源的な問題への判断をはぐらかした最悪ともいえる内容です。

 判断をしたこと しなかったこと

 裁判では二つの点が争われました。一つはNHKによる番組改ざんに政治家の介入があったのかどうかであり、もう一つは原告がNHKに対して抱いた期待権――取材を受けた時の企画の趣旨通りに放送されるであろうと期待し信頼する権利――をNHKが侵害したのかどうかでした。しかし、最高裁判決は一つ目の争点には何の即断も示さず、二つ目の争点について要旨次のように判断しました。

 ①放送法第一条~第三条が定めた放送の自由は国民の知る壌利に奉仕するものとして表現の自由を規定した憲法二一条の保障の下にある。

 ②番組の編集に当たって放送事業者の内部で、さまざまな立場、観点から検討されるのが常であり、その結果、最終的な放送の内容が当初企画されたものとは異なるものになる可能性があるのは当然である。

 ③したがって、NHKから取材を受けた者が、取材の過程で提供した素材が放送に使用されると期待したり信頼したりしたとしても、そうした期待や信頼は原則として法的保護の対象とはならない。


 知る権利めぐる支離滅裂な判断

 放送法が定めた放送による表現の自由は最高裁判決の要点①にあるように、「国民の知る権利に奉仕するため」にあります。ところが、NHKが行った番組改ざんは、戦時性暴力の実態を伝えようとした元「従軍慰安婦」と元日本軍兵士が女性国際戦犯法廷で行った証言をカットするなどしたものでした。こうした証言は日本の歴代政府、与党政治家があいまいにしてきた日本の戦争責任を国民が判断する上で貴重な資料となるものでした。

 このような証言をNHKが切り捨てたことは放送の自由が奉仕するものとされた国民の知る権利に背く行為にほかなりません。このような番組改ざんまで「表現の自由」を持ち出して免罪した最高裁裁判官の憲法解釈の稚拙さ、自己矛盾はあきれるばかりです。

 レトリックでの政治介入の放免

 最高裁判決のもう一つの問題は、政治家の発言を忖度してなされた番組改ざんをNHK内部の自律的な検討の結果であるかのようにすり替えている点です。確かに番組改編のなかにはNHK内部の番組制作者相互の議論を経てなされた部分もないわけではありません。

 しかし、少なくとも番組放送の直前の二〇〇一年一月二十九日に行われた元「従軍慰安婦」らの証言場面の削除は、同日、安倍晋三氏(当時、官房副長官)と面会し安倍氏から本件番組を「公平公正」なものにするよう求められた松尾放送総局長や野島国会担当役員ら(いずれも当時)がNHKの制作現場に戻り、番組制作とは無縁な野島氏が主導・指示する形でなされたものでした。これも「NHK内部での」検討の結果であるかのように描いた最高裁の事実認定は番組改ざんの圧力をかけた政治家を放免する悪質なすり替えのレトリック(修辞)です。

 政治に弱い体質 監視への再出発

 以上をまとめれば、今回の最高裁判決は政治に弱いNHKを政治に弱い司法がかばい立てした判決といっても過言でありません。しかし、番組制作に関わった永田浩三、長井暁の両氏の勇気ある証言で浮かび上がった政治介入とそれを付度したNHK幹部の政治におもねる根深い体質は今後も視聴者の記憶から消えることはありません。視聴者はNHKの優れた番組には激励を送る一方で、政治に弱いNH打の体質を厳しく監視し、視聴者主権の公共放送を確立する運動を今後も粘り強く続けていくことが重要です。

 (だいご・さとし 東京大学大学院教授、NHKを監視・激励するコミュニティ共同代表)

(出所:「しんぶん赤旗」 08・6・18)
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日本共産党と第169通常国会(4)-農業問題/減反政策の撤回迫る-

2008-06-27 01:31:23 | 国内政治
論戦貫いた156日間
日本共産党と第169通常国会(4)
農業問題
減反政策の撤回迫る

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 「農業をやめようと思っていたが話を聞いて元気がでた」(栄町・六十五歳男性)、「現在、農業を続けていくには誇りが必要だ。世界的な視野にたった話に新たな誇りを持つことができた」(香取市・五十六歳男性)

 日本共産党の志位和夫委員長が報告をした千葉県香取市の農業シンポジウム(二十一日)では、党が三月七日に発表した「農業再生プラン」に対する共感の声が数多く寄せられました。

 世界的規模で食料価格の高騰が激しさを増すなか、日本の農業と農村を崩壊の危機にさらし、国民の食料に対する不安を広げてきた政府・与党を、共産党の各議員は国会でも厳しく追及しました。

「価格保障を」
 福田康夫首相は国連の食料サミット(三―五日)で、「食料自給率(現在39%)の向上を通じ、世界の食料需給安定に貢献する」と表明しました。

 これに対し、紙智子議員は、農家には減反を押し付ける一方、輸入米の在庫が百五十二万トンに達していることを指摘。自給率向上をいうのであれば減反をやめるべきだと迫りました(九日、参院決算委員会)。

 福田首相は答弁に立てず、世界に向けた公約が看板倒れだったことを露呈しました。

 紙氏は、減反政策の背景に、米の価格を市場任せにしてきた問題があることを明らかに。米の価格保障を廃止し、政府米の買い入れ価格も一貫して生産コストより低く抑えてきた結果、生産者の95%が採算割れになっている実態を突き付けました。(グラフ)

 「価格保障制度を導入すれば、無理な減反をせず安心して米づくりができる」と迫る紙氏に対し、ここでも福田首相は財政再建を理由に消極的な姿勢を示しました。

 減反に固執する政府の姿勢を象徴的に表したのが、東北農政局作製の「米の作りすぎは、もったいない!」「資源のムダづかい」というポスターです。

 「生産調整に向けた、真剣な姿勢の表れだ」と強弁する若林正俊農水相に対し、高橋千鶴子議員は「農家の誇りを踏みにじるもので、断じて許せない」と撤回を求めました(二月二十八日、衆院予算委分科会)。

 高橋氏は、こうしたキャンペーンの裏に、強引に減反達成を迫る農水省の意向があると指摘。過剰生産県に対して、「各種補助事業、融資で不利な取り扱いなどペナルティー措置を講じる」などと脅し、実行の“連判状”まで出させていたことを明らかにしました。




投機への規制
 現在、食料高騰問題の解決も待ったなしの政治課題です。

 吉井英勝議員は、高騰の一因となっている投機マネーの規制を繰り返し政府に求めました(四日、衆院内閣委員会)。

 政府は投機の影響を認める一方、具体策については「考えあぐねている」(大田弘子経財相)、「有効な手段を持っていない」(町村信孝官房長官)と答弁。吉井氏は、昨年のハイリゲンダム・サミットで、国際的な共同による投機マネー規制の呼びかけに日本が反対したことをあげ、北海道洞爺湖サミットでは議題とするよう求めました。(つづく)

(出所:日本共産党HP 2008年6月26日(木)「しんぶん赤旗」)
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首相の諮問機関・安保法制懇が派兵恒久法への危険な執念

2008-06-27 01:29:35 | 国内政治
主張
安保法制懇報告
派兵恒久法への危険な執念

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 安倍晋三首相(当時)が集団的自衛権についての政府の憲法解釈を見直すために設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)が福田康夫首相に報告書を提出しました。予想された通り、憲法九条のもとでは不可能な軍事行動を可能にする解釈改憲の提言です。

 福田首相は憲法解釈の変更には否定的ですが、懇談会がいまになって報告書を提出したのは、解釈改憲の布石を打つと同時に、自民党と公明党が進めている海外派兵恒久法づくりを後押しする狙いもあります。具体化を許さないことが重要です。

改憲派の異常な議論
 安倍前首相が当初めざしたのは、昨年秋までに懇談会の提言を受け、それをテコにして解釈改憲を強行することでした。昨年七月の参議院選挙で自民党が大敗したことで野望は崩れました。諮問した当人がいなくなった以上、懇談会の役割は終えるのが筋です。懇談会が議論を続け、報告書をだしたのは、諮問機関の報告書をテコに、なにがなんでも解釈改憲の筋道をつけるためです。

 柳井座長は、「今までの憲法解釈では、激変する安全保障環境に対応できない」とのべました。安全保障環境とは、アメリカが先制攻撃戦略と一国覇権主義にもとづき、イラクなど世界各地で軍事介入をつよめている事態のことを意味します。このアメリカの軍事戦略に参加するうえで邪魔になる憲法解釈を変えるのが、懇談会の狙いです。解釈改憲先にありきの、対米追随の異常な議論がそれを示しています。

 そもそも懇談会が議論した「四類型」は、いずれも集団的自衛権の行使が前提です。集団的自衛権とは、日本が攻撃もされていないのに、武力を行使してアメリカなど他国を助けることです。日米同盟強化を口実にして集団的自衛権の行使を認めるなど言語道断です。

 たとえば「公海における米艦の防護」では九条のもとでなぜ自衛隊が米艦を守れるのかの法理も示さず、「日米同盟の効果的機能が一層重要」だから「集団的自衛権の行使を認める必要がある」というだけです。「米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃」も、自衛隊が撃ち落とさなければ「日米同盟を根幹から揺るがすことになる」といって、集団的自衛権の行使を認めるというのではあまりにも乱暴です。

 報告書は、他国の部隊・兵員などを守る「かけつけ警護」とそのための武器使用を「憲法で禁止されていない」と言い切っています。自衛隊が米軍の補給車両や兵員などを警護すれば、米軍を狙う勢力と自衛隊が戦闘することにもつながりかねません。憲法のもとで許されるはずはありません。

 「警護」問題は、自民党と公明党が現在進めている海外派兵恒久法づくりのなかでも焦点の一つです。懇談会の報告書が恒久法づくりを後押しすることにもなっています。どこから見ても危険な報告書の具体化を認めるわけにはいきません。

九条守り生かしてこそ
 いま国際社会は、紛争を戦争ではなく平和的・外交的方法で解決するという新しい平和の流れを強めています。報告書は、「国際的安全保障環境の変化」を解釈改憲の口実にしながら、世界の平和の流れと変化を無視しています。報告書は日本を世界から孤立させるだけです。

 憲法九条は、世界の平和の流れと合流して戦争のない世界をつくる原動力です。改憲ではなく九条を守り生かすことこそ、焦眉(しょうび)の課題です。

(出所:日本共産党HP  2008年6月26日(木)「しんぶん赤旗」)
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温暖化対策 国際責任はたせ-志位委員長が党の見解発表-

2008-06-27 01:26:48 | 国内政治
温暖化対策 国際責任はたせ
3つの転換を提起
志位委員長が党の見解発表

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 日本共産党の志位和夫委員長は二十五日、国会内で記者会見し、洞爺湖サミット(七月七―九日)を前に、地球温暖化問題についての日本共産党の見解「地球温暖化の抑止に、日本はどのようにして国際的責任をはたすべきか」を発表しました。会見には小池晃政策委員長が同席しました。

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 国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は、産業革命前に比べ気温上昇を二度以内に抑えることが重要で、そのために二〇五〇年までに先進国が温室効果ガスを80%削減(一九九〇年比)、二〇二〇年までに25―40%削減するよう求めています。

 志位氏は、この全人類的課題に、地球上のすべての国・地域が全力を注ぐ必要があるとしつつ、産業革命以来の経済活動を通じて地球温暖化に大きな責任を負う先進国が「(1)自らの責任を自覚し削減の先頭に立つ(2)途上国に対して積極的な技術・資金の支援を行うという『二重の責任』を果たすことは、先進国に課せられた当然の歴史的責務だ」と強調しました。

 こうした世界の現状のもとで、日本政府は、京都議定書で6%削減(九〇年比)の目標を掲げながら、逆に6・2%も増やすなど、人類的課題をはたす責任を投げ捨ててしまっています。

 志位氏は、この政府の姿勢を批判し、国際的な責任を果たすために求められている「三つの転換」を提起しました。

 第一は、温室効果ガスを大幅に削減する中期目標を明確にすることです。志位氏は、「二〇年までに(九〇年比で)30%削減することを明確にした中期目標の確立に踏み込む」ことを求めました。

 第二は、最大の排出源=産業界の実質的な削減を実現することです。志位氏は、現在の政府の“財界まかせ”の姿勢から転換し、政府と経済界との削減協定締結などの措置に踏み出すことを提案しました。

 第三は、現在の化石燃料偏重・原発だのみから脱却し、自然エネルギー重視へとエネルギー政策を抜本的に転換することです。

 最後に志位氏は、国民の世論と行動で、持続可能な経済・社会を目指す重要性を強調したうえで、「洞爺湖サミットで、日本政府が積極的に対応するよう求めたい」と述べました。

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共産党の見解(骨子)
 地球温暖化抑止は、一刻の猶予も許されない人類的課題
 国際的責任をはたすためにも、わが国の政策の抜本的転換をもとめる

 (1)先送りにせず、ただちに温室効果ガスを大幅に削減する中期目標を明確にする

 (2)最大の排出源である産業界の実質的な削減を実現する
 ・具体的な削減目標を掲げた公的協定を経済界に義務づける
 ・実質的な削減を加速する「国内排出量取引制度」を実施する
 ・化石燃料の使用削減を促進するために環境税を導入する

 (3)エネルギー政策の重点を自然エネルギーの開発・利用へ転換する

 国民の世論と行動で、持続可能な経済・社会をめざして踏み出す

(出所:日本共産党HP 2008年6月26日(木)「しんぶん赤旗」)
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温暖化対策 国際責任はたせ-地球温暖化問題についての日本共産党の見解-

2008-06-27 01:24:52 | 国内政治
 地球温暖化抑止の国際協定である「京都議定書」が定めた温室効果ガス削減の「第一約束期間(二〇〇八年~一二年)」が、今年スタートしました。国連のもと各国政府によって、二〇一三年以降の新しい行動計画を来年末までにつくる国際的な検討作業もはじまりました。七月の洞爺湖サミットは、日本の対応が世界から問われる場となります。

 地球環境の未来と人類の生存条件にかかわるこの大問題に日本はどう立ち向かうべきか。日本共産党の基本的な見解を明らかにします。

 「地球の温暖化は疑う余地がない」、「人類が排出してきた温暖化ガスの濃度の上昇が、気候変動の原因であることはほぼ確実である」、「気候変動の速さと規模によっては、突然のあるいは非可逆的現象が引き起こされる危険がある」――国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)による「第四次評価報告書」は、世界中の科学者の知見を結集して、深刻な結論を導き出しました。

 地球規模の気候変動はすでにはじまっています。世界では、二〇〇三年に欧州を襲った熱波で三万五千人が亡くなり、大型化したハリケーンやサイクロンが世界各地で大きな犠牲と被害を引き起こしています。オーストラリアではこの二年間、記録的な干ばつで小麦の生産が激減し、世界的な穀物価格の高騰の原因の一つになっています。北極では海氷が夏季に大幅に縮小して完全に消滅しようとしており、各地の高山の氷河が解けはじめています。

 日本でも、真夏日の増加、竜巻のひん発、台風や低気圧の強力化、記録的な集中豪雨の増加、高潮の被害などが日常の生活や安全を脅かしています。九州の稲が高温障害で実入りが悪くなったり、ミカンの生育不良、沖縄周辺でサンゴが死滅し、日本海などで大型クラゲの大量発生が起きるなど、農林水産業への影響もあらわれています。

気温上昇を2度以内に抑えこむことが決定的に重要

 IPCC報告は、産業革命による工業化以前に比べて世界の平均気温が二度以上上昇すると、取り返しのつかない重大な変化が起きると予測しています。土壌からの二酸化炭素やメタンの発生が加速する一方、水温の上昇によって海の二酸化炭素の吸収量が減少し、急激で大幅な温度上昇が起き、二度と元に戻れない状況がもたらされます。

 地球の平均気温は、産業革命以後二百年余を経た現時点で〇・七六度上昇しています。それにくわえて、すでに大気中に排出されてしまった温室効果ガスの影響で、これからの二十年間に気温がさらに〇・四度上昇すると予測されています。そして、もしこのままなんの手もうたなければ、平均気温は今世紀末には最大で六・四度上昇すると予測されています。

 危機的な事態が予測されるなかで、いま、地球温暖化の抑制に真剣に取り組むこと、とりわけ、産業革命前に比べて気温上昇を二度以内に抑えこむことに全力をそそがなければ、地球環境と人類の生存を脅かす破局の到来は避けられません。

 IPCC報告書の作成にたずさわった日本の科学者たちが連名で公表した国民への緊急メッセージ(〇七年二月)は、「温暖化は、私たち市民の予想を遙かに超えるスピードで進行しつつある。……温室効果ガスの大幅な削減という大きな課題に向けて、直ちに行動を開始する必要がある」と訴えています。科学者のメッセージは明確であり、温暖化対策のタイムリミットは切迫しています。

 IPCC報告書は、気温上昇を二度以内に抑えるためにつぎの三点がカギになると強調しています。

 (1)二〇五〇年までに、世界の温室効果ガスの総排出量を一九九〇年比で半分以下に削減すること、とくに先進国は80%以上削減すること(長期削減目標)。

 (2)二〇一五年までのできるだけ早い時期に世界の総排出量を減少に転じさせること、とくに先進国は二〇二〇年までに25~40%削減すること(中期削減目標)。

 (3)以上の目標の達成によって、今世紀末までに人類が排出する二酸化炭素を一兆八千億トン以下に抑え、大気中の二酸化炭素濃度を安定させること。

 地球温暖化抑止について世界がどう取り組むかを定めた気候変動枠組み条約は、産業革命以来の地球温暖化の進行にそれぞれの国がどういう責任を負っているかに着目して、世界の国ぐにを、「過去及び現在における世界全体の温室効果ガスの排出量の最大の部分を占める……先進国」(三十五カ国)と、それ以外の「開発途上国」とに区分し、それぞれの役割・責務を明らかにしています。

 地球温暖化の抑止という全人類的課題の解決に、地球上のすべての国・地域が全力をそそぐ必要があることはいうまでもありませんが、産業革命以来の経済活動を通じて地球温暖化に大きな責任を負う「先進国」と、「途上国」の違いを考慮に入れる必要があります。

 事態の経過からいって、「先進国」は、地球温暖化の危機を生み出してきた歴史的責任を負うべき立場にあり、その点からいっても、「先進国」が地球温暖化に関する主要な責任を自覚し、それにふさわしい役割をはたすことが強くもとめられます。

 もともと、経済発展の権利は世界のどの国・地域にも平等に保障されるべきものです。現在、歴史的事情から経済的に遅れた水準にある国は、どの国の国民も、経済面での遅れを克服して先進国並みの発展水準を達成する歴史的権利をもっています。その見地から、長い展望に立てば、人口一人あたりの温室効果ガスの排出量も平等になるようにすべきです(「炭素デモクラシー」)。現在の地球の現状のもとでは、これらの「途上国」も、その経済的発展の課題を、地球環境をまもるという世界共通の課題と結びつけて成しとげること、そのために、「先進国」が過去に歩んだ道とは違った経済発展の新しい形を開拓し、実現することが、人類的見地からの要請となっています。そのことは、気候変動枠組み条約の「それぞれ(の国が)共通に有しているが差異のある責任」という表現で国際的に合意されています。

 こうした国際的な枠組みにそって、いま、世界はどのように取り組んでいるでしょうか。

 まず「先進国」です。EU(欧州連合)は、温暖化問題を、「いまだかつて見られなかった、非常に深刻で広範囲に及ぶ市場の失敗」(英国政府「スターン報告」)という共通の認識に立ち、「先進国」全体が責任をもつべき「待ったなし」の課題と位置づけて取り組んでいます。「京都議定書」によってEU(当時の加盟国十五カ国)は、「第一約束期間」までに一九九〇年比で8%削減することを義務づけられましたが、EUは、その参加国のなかでも経済発展が先行し人口も多い国が率先してより多くの割合で削減する対応策を取りました。イギリスは、12・5%の削減を目標に掲げ、二〇〇五年までにすでに目標を上回る15・7%を削減し、約束期間の終了(二〇一二年)を待たずに二〇一〇年までに23・7%削減する見通しです。イギリスは現在、二〇二〇年には30%、二〇五〇年には60~80%削減する目標を明記した法案を審議中です。またドイツは、21%を約束期間中の削減目標とし、二〇〇五年で18・7%まで削減し、二〇一〇年には25・7%まで削減する計画です。さらに、二〇二〇年には40%削減、二〇五〇年には80%削減を目標としています。

 こうした取り組みによって、EU全体を通じて二〇一〇年には目標を四割も上回って11・4%削減し、二〇二〇年までに30%削減する「中期目標」(EU以外の国が適切な削減に合意しない場合は20%)、二〇五〇年には60~80%削減する「長期目標」を掲げ、国際的な削減の枠組みでの合意をめざしています。

 一方、「途上国」はどうでしょうか。「途上国」のなかでも急速に経済発展をつづけている国では、経済成長とともに温室効果ガスの排出量が急速に増加しています。これらの国の動向は、世界全体の温室効果ガスの排出量に影響をあたえるようになっていますが、「温室効果ガス排出の抑制に努め、地球的な気候変動の緩和に貢献していく」(中国)、「エネルギー部門で二〇二五年までに17%削減する」(インドネシア)などの努力が開始されています。

 また、温暖化の影響をもっとも深刻に受けるのが、小さな島国をはじめ、地球温暖化にほとんどなんの責任もなく、現在なお貧困に苦しみ、経済的にも弱い国ぐにであることを真剣に考慮しなければなりません。

 「先進国」がみずからの責任を自覚し、削減の先頭に立つとともに、「途上国」に対して積極的な技術・資金の支援をおこなう――こうした「二重の責任」をはたすことは、「先進国」に課せられた当然の「歴史的責務」というべきです。

国際的責任をはたすためにも、わが国の政策の抜本的転換をもとめる
 こうした世界の現状のなかで、わが国の取り組みはどうでしょうか。地球温暖化問題を主要な議題とする洞爺湖サミットで、議長国を務める日本の役割がきわめて重要であるにもかかわらず、わが国の取り組みは「先進国」のなかでも決定的に立ち遅れています。京都議定書で、温室効果ガスについて一九九〇年比で6%削減する目標を掲げながら、逆に6・2%も増やしており、この人類的課題をはたす責任を投げ捨てるものとなっています。政府は、この姿勢に世界から強い批判が向けられていることに、目をふさぐべきではありません。

 日本共産党は、わが国が実効ある地球温暖化対策を早急に確立し、それをただちに軌道に乗せて国際的責任をはたすよう、以下の方向と内容で温暖化政策を抜本的に転換することを強くもとめます。

1、先送りにせず、ただちに温室効果ガスを大幅に削減する中期目標を明確にする
 政府は、京都議定書を採択して十年間も経過するのに、財界の「温室効果ガスの総量削減目標は経済統制だ」、「京都議定書は不平等条約だ」などという“恫喝(どうかつ)”ともいうべき言い分をタテにとって、温室効果ガスの増加を放置しています。

 ことし三月に政府が決定した「京都議定書目標達成計画」も、実質的な削減に本気で力をそそぐものではなく、科学的に実証されていない「森林吸収枠」(3・8%分)を目いっぱい計算に入れたり、削減枠に余裕のある外国から排出枠を買い入れて、それを自国の削減実績に組み入れるなど、“見せかけ”の上だけで「削減実績」をふくらませようというものです。肝心の実質的な削減目標は九〇年比でわずか0・6%にすぎません。

 しかも政府は、今日にいたってもなお、国としての実質削減量を明らかにする中期目標の設定を先送りしつづけています。六月九日に発表した「福田ビジョン」でも、“二〇二〇年度までに二〇〇五年度比で14%削減なら可能だ”などと、「一九九〇年を基準として削減量を割り出す」という国際的な約束ごとさえ無視し、中期目標の設定そのものを棚上げしてしまいました。これは“開き直り”としか言いようのない態度です。当面する二〇二〇年度目標を確定し、それを実行する責任を負わないものが、その先の目標だけをうんぬんしても、世界の誰からも信用されないことはあまりにも明白だからです。

 わが国に課せられた「先進国」としての国際的義務をはたすために、「二〇五〇年まで80%削減」の長期目標を出すにとどまらず、それにむけて着実に実現していくための通過点を明示して、二〇一二年までに九〇年比6%削減という、京都議定書での約束を実質的に達成するとともに、わが国として二〇二〇年までに30%削減することを明確にした中期目標の確立に踏み切ることをもとめます。

2、最大の排出源である産業界の実質的な削減を実現する
 日本の温室効果ガスの削減対策が言葉だけのものとなっているのは、総排出量の八割を占める産業界の削減について、もっぱら財界の“自主努力”まかせにしているからです。ここには、日本政府の削減対策が真剣なものであるかどうか、その成否が問われる試金石があります。この分野で思い切った転換をおこなわないかぎり、地球温暖化抑制の事業において国際的責任にこたえる有効な貢献をはたすことは絶対にできません。

 しかも、この産業界の排出は、特定の大口排出施設に極端に集中しています。製鉄所や火力発電所などわずか二百二十事業所で日本全体の排出量の50%を占めます(環境NGO「気候ネットワーク」の調べ)。これら超大口排出事業所や大口排出業界での削減をすすめることが大幅削減実現のカギです。

 実質的な削減を具体的にすすめるためには、“財界まかせ”の姿勢ときっぱり手を切り、なによりもまず、政府と経済界(または各業界・企業)のあいだで削減の期限と目標を明らかにした公的協定を結ぶことで、排出量の大部分を占める産業界の削減の見通しを明らかにすべきです。具体的には、次の諸政策の実行が急務となります。

具体的な削減目標を掲げた公的協定を経済界に義務づける

 超大口排出施設をかかえる産業や企業については、政府との間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務づける必要があります。政府が中・長期の削減目標を掲げ、この協定で個々の業界・企業の削減目標を明らかにすることによって、削減に具体的な道すじがつけられます。協定には、温室効果ガスの削減目標(温室効果ガス削減の総量、生産量あたりでの削減目標、エネルギー消費の全体量と生産量あたりの削減量)、短期・中期目標の実施期限、政府への報告義務、第三者機関によるモニタリング・検証などを盛り込むべきです。

実質的な削減を加速する「国内排出量取引制度」を実施する

 「排出量取引制度」は、排出量が一定規模を上回る事業所ごとに、政府による審査を通じて削減目標を設定し、目標以上に削減した事業所はその分を売却でき、逆に目標が達成できない事業所は、ペナルティーを避けるために、目標を達成したほかの事業所から「削減枠」を買い入れて未達成分を穴埋めできるという制度です。

 二〇〇五年以来のEUの取り組みとその教訓を踏まえ、企業の削減目標達成のための補助的手段として、日本でもこの「国内排出量取引制度」を導入すべきです。そのさい、排出量削減のうち排出量取引でまかなう割合や、海外からの買い入れの割合に上限を設けることが必要です。また、投機によって市場が振り回される事態を避けるために、排出量の需給状況に関する情報公開を徹底し、実際の排出量の裏づけのない取引は規制すべきです。

化石燃料の使用削減を促進するために環境税を導入する

 これまでは化石燃料を消費して温室効果のある二酸化炭素を大気に放出しても、なんのコスト負担もありませんでした。環境への悪影響を考慮し、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入することを検討すべきです。これによって、(1)環境負荷への「課徴金」的な負担をもとめ、産業や業務、家庭などでの省エネの推進や他のエネルギーへの代替をすすめる、(2)社会全体でエネルギーのむだをなくし、温室効果ガスの排出のより少ないシステムにあらためるなど構造全体の見直しにつなげる、(3)化石燃料と自然エネルギーの価格の差を相対的に縮める、(4)税収を温暖化対策の促進や課税の影響の緩和、その他、国民に必要な施策の財源にあてる――などの効果が期待できます。

 環境税は、石油・石炭・天然ガスなど化石燃料を燃やしたさいに生ずる二酸化炭素の量に応じて課税し、国の予算上、使い道を特定しない「一般財源」とします。主要な負担は、化石燃料の大半を使用している大企業・財界がになうのが当然です。低所得者、医療・福祉・教育施設、公共交通の燃料、中小・零細企業、食料自給にかかわる農業・漁業、寒冷地などについて適切な負担免除・軽減措置をとるべきです。

3、エネルギー政策の重点を自然エネルギーの開発・利用へ転換する
 二酸化炭素の排出量の90%がエネルギーに由来することからみても、エネルギー対策は温暖化対策の要です。ところが政府は、化石燃料偏重から自然エネルギー重視に転換する明確な目標ももたず、自然エネルギーの利用拡大のカギとなる自然エネルギー発電に関する固定価格買い取り制度の導入を拒否しています。そればかりか、「福田ビジョン」では原発の新増設を今後のエネルギー対策の優先課題としています。日本にとって自然エネルギーの普及は、原油・石炭など輸入エネルギーの需要増・高騰がすすむもとで、経済基盤の安定のためにもエネルギー自給率の引き上げがもとめられているという点からも急務です。

 化石燃料偏重・原発だのみから脱却し、自然エネルギー重視へと、エネルギー政策の抜本的転換が必要です。

自然エネルギーの割合を二〇二〇年までに15~20%とする導入目標を明らかにする

 EUが二〇二〇年までに第一次エネルギーの20%を自然エネルギーでまかなう目標を決定したのをはじめ、世界的に見ても、太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの普及が本格的な流れになっています。こうしたなかで、日本だけが自然エネルギーの普及に背をむけ、一次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)をまかなうだけにとどまっています。二〇二〇年までに一次エネルギーに占める自然エネルギーの割合を15~20%に引き上げることを明記した「自然エネルギー開発・利用計画」を策定し、自然エネルギーの開発・利用に取り組むべきです。

 自然エネルギーから得られる電気やガス、将来的には水素などを販売することで、その地域には新たな収入が生まれます。ドイツでは、自然エネルギーの普及によって年間一億トンの二酸化炭素を削減するとともに、二十一・四万人の雇用と年間三・七兆円の売り上げなど、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出し、事業の成果や副産物を地元に還元しています。自然エネルギーの普及は、地域経済対策としても大きな転換となります。

自然エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度を早急に導入する

 自然エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度の導入がカギです。固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギーの設備を導入した時点で、その設備から供給される電力の買い上げ価格を市場まかせにせず、一定期間(たとえば二十年間など)保障する方式です。EUのなかでも固定価格買い取り制度が導入されたドイツ、デンマーク、スペインでは、自然エネルギーの普及が急速にすすみ、世界をリードしています。国が廃止(〇五年)した住宅用太陽電池パネルの設置補助金を復活させるとともに、固定価格による買い取り制度を実施するための財源には、原発に偏重した電源開発促進税(〇八年度=三千四百八十億円)の見直し分や環境税の税収などをあてます。

 また、廃熱を熱供給に利用すること(コジェネレーション=電気・熱併給システム)で、エネルギーの利用率を40%程度から70%台まで引き上げることができます。小規模・分散型利用を促進する制度を整備し、コジェネレーションの導入を積極的に支援すべきです。

温暖化対策を口実にした原発推進政策は危険であり、転換をもとめる

 政府は、原発を「温暖化対策の切り札」だとして、電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています(経済産業省「長期エネルギー需給見通し」)。しかし、事故や災害、データ捏造(ねつぞう)などによって、原発の停止があいついでいるように、原発は決して安定的な電源ではありません。しかも原発事故とそれによる環境破壊の危険性は重大な問題であり、原子炉から出てくる放射性廃棄物も、その処理・処分方法が未確立なため、環境汚染の危険性を軽視できません。また原発などの地下に活断層があることも次つぎと確認や指摘がされ、政府、電力会社のこれまでの原発立地のあり方がきわめて無謀なものであったことも、実証されつつあります。さらに、こうした安易な原発依存の姿勢が、自然エネルギー開発を異常に立ち遅れさせた一因となってきたことも、忘れてはなりません。

 このような危険な原発推進政策をやめ、技術的に未確立で、十分な安全性の保証がない原発からは、計画的に撤退すべきです。

国民の世論と行動で、持続可能な経済・社会をめざして踏み出す
 いま、国民のなかで地球温暖化問題への関心が高まり、自分たちの生活を見直し、環境にやさしいライフスタイルに転換することによって、現在の地球と将来の子どもたちに対する責任をはたそうという声と取り組みが広がっています。各種の世論調査でも温暖化の被害を心配する世論は九割をこえ、照明やシャワーなどの節約、冷暖房の控えめな使用、レジ袋を減らすマイバッグの持参など、八~九割の人が何らかの形で努力しています。

「大量生産・大量消費・大量廃棄」を大もとからただす

 こうした国民一人ひとりの努力を真に実らせるためには、大企業の利潤第一主義のもとで、国民生活に「大量生産・大量消費・大量廃棄」の風潮が意図的に持ちこまれてきたことを正面からとらえ、この風潮を大もとからただす仕事に本格的に取り組む必要があります。部品がなくて修理ができず次つぎに捨てられる家電製品、約二台で通常の家庭一世帯分のエネルギーを消費する自動販売機や、家庭の十一倍の二酸化炭素を出すといわれるコンビニエンスストアの二十四時間営業、深夜の過剰なライトアップ、深夜労働や生産施設の二十四時間稼働という「労働のあり方」など、この問題はさまざまな面にあらわれています。

 生産から流通、消費、廃棄までのすべての段階について、温室効果ガスを削減して地球温暖化をくいとめ、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を社会全体の努力でつくりあげるという視点から大胆に見直すことがもとめられます。国の将来にかかわる総合的な戦略・政策のなかに地球温暖化対策をしっかり位置づけ、政府の取り組みを義務づける法律(気候保護法=仮称)を制定することも当然検討すべきです。

「人にやさしく環境を大事にする社会」をつくる視点で経済と社会を見直す

 日本や世界の各地で地球温暖化問題に取り組む先進的な経験も生まれ、その先頭にはNGO(非政府組織)が立っています。こうした経験からさまざまな教訓を学び、それを広げ生かすネットワーク=共同の輪を広げることもますます大事になっています。温暖化抑止のために何ができるのか、地域・職場・学園など草の根のレベルで話し合い、知恵と力をあつめて行動をおこすことも大きな意義をもちます。

 地球温暖化対策は、経済や社会、政治のすべてにおよぶ総合的な課題、将来の社会のあり方にもかかわる根本問題であり、それを確実に実行するには広範な社会的合意が不可欠です。EUでは、温暖化対策を経済・社会の「持続可能な発展戦略」のトップ課題に位置づけたうえ、実際の経済・社会政策も、「温暖化対策を通じた成長と雇用の促進パッケージ」というように、常に温暖化対策と関連づけてうちだしています。こうした取り組みの土台に、「利潤第一の考え方では温暖化は止められない。社会システムの根本的改革が必要だ」(ドイツ連邦議会・環境委員会副委員長の日本共産党欧州調査団への説明)という立場から取り組む考え方があることも、わが国の対策を考える上で学ぶべき大事な点です。

 地球温暖化対策を、将来の日本社会のあり方を探求する総合的な戦略・政策の重要な一環に位置づけ、エネルギー・地域振興・雇用・福祉・交通・農業・税制・日本と世界の安定など各分野の政策をそれと有機的に結びつけて確立し、国民の合意を得ながら着実にすすめてゆくべきです。

 日本共産党は、地球温暖化の進行を憂える内外のすべての人びとと力をあわせて、地球温暖化をくいとめ、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を実現するという人類的課題の推進に全力で取り組みます。

(出所:日本共産党HP 2008年6月26日(木)「しんぶん赤旗」)

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日本共産党と第169通常国会(3)ー温暖化対策/欧州調査もとに迫る-

2008-06-26 01:09:58 | 国内政治
論戦貫いた156日間
日本共産党と第169通常国会(3)
温暖化対策
欧州調査もとに迫る

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 「政府が目標を明確にし、あらゆることをやるという姿勢こそ求められている」

 国会が閉幕した二十一日、京都市で行われた温暖化防止シンポジウム。「やれることをやればいい」という自民党議員に対し、日本共産党の井上哲士参院議員は、こう強調しました。

 最大の焦点となっている二〇二〇年までの温室効果ガスの中期削減目標の明確化を迫るなど、日本共産党の論戦は、温暖化対策で日本がとるべき方向を、鮮やかに示しました。

削減目標示す
 日本共産党は三月に温暖化対策で先進的な欧州へ調査団(団長・笠井亮衆院議員)を派遣しました。

 欧州連合(EU)が二〇二〇年までに20―30%削減(一九九〇年比)という野心的な中期目標を掲げるなど、欧州が緊迫感・切迫感をもって対策に取り組んでいることをつかみました。

 調査結果をもとに示したのが、二〇二〇年までに九〇年比30%減、五〇年までに同80%減という中長期の目標です。政府提出の温暖化対策法改定案に対する日本共産党の修正案として、市田忠義書記局長が五日の参院環境委員会で提案しました。

 一方、洞爺湖サミット(七月七―九日)を前に、「世界をほんとうに説得できるのだろうか」(「日経」社説十日付)と国内外から批判を浴びているのが、福田康夫首相が示した地球温暖化対策の基本方針「福田ビジョン」(九日)です。

 「福田ビジョン」発表に先立ち首相も欧州を訪問し、ドイツ、イギリス、イタリア、フランスの各首脳と会談を重ねました。

 首相の発表会見では「地球温暖化による影響がすでに顕在化している」などといいつつ、二〇二〇年までの中期削減目標になると、「来年のしかるべき時期に発表したい」と述べ、先送りしてしまったのです。

 同じ欧州を訪れたにもかかわらず、打ち出した中身は、百八十度違いました。

限界認めさす
 政府の消極姿勢の根源にあるのは、最大の温室効果ガス排出源=産業界への気兼ねです。

 政府が、京都議定書(一九九七年)で約束した二〇一二年までの6%削減を目指す方法は、日本経団連の「自主行動計画」まかせです。

 二〇一三年以降の削減をめざす方法として提案している「セクター別アプローチ」も、産業・部門別に温室効果ガスの削減可能量を積み上げ、それを国別目標とするやり方。「自主行動計画」と同様、産業界まかせの方式です。

 市田書記局長は、参院環境委員会(五月二十七日)で、こうした方式からの転換を迫りました。

 市田氏 「自主行動計画」で、(一九九〇年比で)6%削減を達成できるのか。次期枠組みで、この方式でやっていけるのか。まさに今決断すべき政治課題だ。

 鴨下一郎環境相 (中長期目標を考えると)ご指摘のように、自主行動計画だけでは無理だ。

 政府も、産業界まかせの限界を認めざるをえなくなりました。

 日本共産党が提出した修正案には、中期削減目標を達成する具体的な手だてとして、欧州でも取り組まれている産業界との温室効果ガス削減協定の締結などの措置も盛り込んでいます。

 この修正案に対し、自民党、公明党に加え、民主党も反対しました。(つづく)

(出所:日本共産党HP 2008年6月25日(水)「しんぶん赤旗」)
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