連続テレビ小説「虎に翼」 (第85回・2024/7/26) 感想
NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『虎に翼』
公式リンク:Website、X(旧Twitter)、Instagram
第85回/第17週『女の情に蛇が住む?』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。
玉(羽瀬川なぎ)の将来を奪ったのは自分だと涼子(桜井ユキ)自身も悩んでいた。寅子(伊藤沙莉)は二人の決断を応援するため、また稲(田中真弓)自身のためにも、稲を涼子たちに引き合わせる。また、寅子は航一(岡田将生)と接するうちに、友達がいなくても強い心を持つ優未(竹澤咲子)の考えを尊重できるようになる。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
原作:なし
脚本:吉田恵里香(過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘)
演出:梛川善郎(過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのブツが、ここに) 第1,2,4,7,10,11,14,16週
橋本万葉(過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘) 第3,8,13週
安藤大佑(過去作/とと姉ちゃん,となりのマサラ,やさしい猫) 第5,6,9,12週
伊集院悠(過去作/オーディオドラマ・FMシアター「告白の対価」静岡局制作) 第15週
相澤一樹(過去作/BSプレミアム:善人長屋 第5話のみ,単発:月食の夜は) 第17週
音楽:森優太(過去作/海の見える理髪店,あなたのブツが、ここに,忘恋剤)
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博(明治大学 法学部 専任教授)
裁判所考証:荒井史男(元名古屋高裁長官 定年退官)
風俗考証:天野隆子(過去作/ごちそうさん,花子とアン,スカーレット)
旧字考証:三浦直人(明治大学大学院 文学研究科 史学専攻 日本史学専修)
医事考証:冨田泰彦(過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康)
医事考証:冨田泰彦(過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康)
ジェンダー・セクシュアリティ考証:前川直哉(福島大学 教育推進機構 高等教育企画室 准教授)
タイトルバック制作:シシヤマザキ(公式サイト )
取材:清永聡(NHK解説委員:司法・事件・公文書管理・災害)
語り(本編):尾野真千子(過去作/カーネーション,長谷川町子物語,足尾から来た女)
語り(土曜日版):山下誠一郎(過去作/Eテレ「小雪と発酵おばあちゃん」)
副音声解説:山崎健太郎(過去作舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ)
制作統括:尾崎裕和(過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人)
※敬称略
アバンで寅子の話をすぐに理解しちゃう稲を掘り下げると…
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。
室内でも熱中症の危険があるとのこと。
こまめに水分補給してくださいね。
アバンタイトル…
厳しいことを書くが。
個人的には「あの尺の回想シーン」だけで、稲(田中真弓)が玉(羽瀬川なぎ)涼子(桜井ユキ)の将来を案じた… と、視聴者に解釈せよとの演出は押し付け過ぎだと思う。
要するに、寅子(伊藤沙莉)がどこからどこまで玉と涼子との関係性を話したのか分からないのに。
演出の意図は、「皆さんと同じくらい稲さんは玉ちゃんと涼子様のことを慮っているのです…」とやっているからだ。
ただ、『ディレクターの目線blog』として、今週の演出担当である相澤一樹氏には下駄を履かせているから、好意的に見てみると、ここに注目できる。
それは、寅子の面前にある「ちゃぶ台の上の餅菓子の状態」だ。
映像では、餅菓子を食べるのは優未(竹澤咲子)だけだが。
流れとしては、次の稲のセリフの際に、優未が「3つ」のうちの「1つ」を手に取り食べる。
稲「正直 私は そのお友達が
潰れてしまわないか心配ですが」
寅子と稲の前の小皿には餅菓子がないし、皿も汚れていないから、寅子と稲は食べていない。
そこで、好意的に見ると… となる。
餅菓子の位置と大きさに注目すると…
それなりの長い時間、寅子と稲が玉と涼子の話をしており。
優未も最初は一緒に聞いていたが、<あまりに長いので、餅菓子に手を付けた… > と解釈できる(と思う)。
さらに、稲が(恐らく)お茶と茶菓子を運んできた漆器? のお盆を畳の上に置くでもなく、身体の前で抱えたままでいることから、<ついつい寅子の話に聞き入ってしまった> とも解釈できる(と思う)。
本来なら、というか分かりやすいのは、学生時代の涼子様とお付きの玉の回想を盛り込むことだが、回想を多用するのはもっとダメ。
従って、限られた放送尺の中でがんばったと思う。
餅が3つあったような印象付けをやったほうが…
以下は、決して粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくるつもりでなく。
こういう部分から、撮影現場の空気が見えるという一つの例として見ていただきたいので、敢えてキャプチャー画像を掲載してみる。
中央の皿の優未寄りのところに「二つ」残っているが、寅子と稲の前あたりの皿には餅菓子がない。
©NHK
これ、よく見ると分かるのだが、カットが変わると「餅菓子の位置(大きさも)が変わる」のだ(笑)
スリーショットの引きのカットのときは、「皿の中央にまん丸の餅菓子が2つ」で。
©NHK
でも、上の画僧のように優未ナメのツーショットのときは「皿の優未寄りのところに平たい餅が2つ」になる(分かりますか?)
※「ナメ」とは、カメラ手前に被写体の一部を入れる構図のこと。
もちろん、記録さん等のケアレスミスの可能性もある。
©NHK
でも、これまた好意的に解釈すれば、寅子と稲の会話のシーンの撮影のときに「餅の位置の違和に気づいた」と考えられる。
そう、「餅が3つあったような印象付けをやったほうが、寅子の説明が長かったように見える!」と。
こんな、ドラマの楽しみ方もある… と思っていただければうれしい。
"ポジティブな引きこもり" としての健康的な幸福感!
今回で、最も今の私の心に届いた寅子のセリフがこれだ。
寅子「でも よりどころは
友達じゃなくたっていいんだわ。
私 稲さんにも そういう場所や人を
たくさん作ってほしいなって」
これ、本当にいいセリフ、いい言葉だ。
イジメや○○ハラなどで苦しんでいる人たちに、一筋の希望の光にもなるし。
少し脱線するが。
私は、東京から千葉県に引っ越して 10数年になるが、あと5年ほどで東京に帰ることが決まっている。
これは、引っ越す前から決まっていたことだから、今の寅子の気持ちと同じ感じだ。
だから、ご近所付き合いや馴染みのお店こそあるが、友だちと呼べる人は近隣には一人もいない。
仕事柄、職場関係は済んでいる場所とは関係ないし(ここはトラちゃんと違う)。
でも、今住んでいる町の公園や図書館、月に一度しか会わない馴染みの店の店員さんたちが、私の「千葉県民としてのよりどころ」になっているのは実感中だ。
だから、転勤族である寅子と、その家族であり娘の優未が「よりどころは 友達じゃなくたっていい」は、とても “ポジティブな引きこもり” としての健康的な幸福感だと思う。
よねと轟、ヒャンちゃん、道男にとっての猪爪家と笹山にも
それと、いつもどおりに(笑)無粋なことをいえば。
「よりどころは 友達じゃなくたっていい」は…
●山田よね(土居志央梨)と轟太一(戸塚純貴)
●‘大庭’姓改め竹原梅子(平岩紙)
●‘ヒャンちゃん’こと崔香淑/汐見香子(ハ・ヨンス)ら…
“トラつば・アベンジャーズ” に重ねていると同時に。
●道男(和田庵)における花江(森田望智)ら猪爪一家や「笹寿司」の主人・笹山(田中要次)…
とも重なっているのは、言うまでもないし。
もしかすると、「自ら溝を作りにいく厄介で面倒な男」こと航一(岡田将生)にも重ねようとしている可能性もある。
これ、思っている以上に、今作の重大なテーマに隣接するキーワード、名ゼリフなのかもしれないぞ。
アバンは、脚本の力を感じる展開!
そして、今作に話を戻せば、この寅子のセリフは、次の優三(仲野太賀)の名ゼリフに並ぶ、今作の背骨に通じるとも思う。
優三「嫌なことがあったら
また こうして2人で隠れて
ちょっと 何か おいしいものを 食べましょう」
くよくよと、悲観的に物事を捉えず、自分なり、自分らしさを発揮して、自分の尺度による主観的幸福感(個人が自分自身の生活に対して感じる幸福や満足感の総称)との「幸福度研究」がある。
この主観的幸福感の概念で重要なのは、この場合の幸福感は普遍的である必要はなく、ある程度の時間的制約と状況の中での安定性があれば良いとすることなのだ。
そう、その時々の状況によって、幸福感は変わるのだ。
だから、優未も稲も、今の状況で何が “マイ幸福” なのかを考えるきっかけが、新潟への異動であり、寅子一家との再会であると。
約3分54秒間の長尺のアバンだったが、優未の母親譲りの「♪モン・パパ」で、一気に “よりどころ” の概念までけん引したことに脚本の力を感じる展開だ。
ブラウンとホワイト、グリーンとブラウンにブルーの差し色
メインタイトル映像明けは、7月22日放送の第81回の感想で書いた「茶色は白と組み合わせると、上品で優しい印象になる」が強調された映像美だ。
涼子はオフホワイトのブラウスで、稲は濃いめのブラウンの着物で肌襦袢の小衿? の薄茶色が、涼子と稲の衣装の中間色のブラウンで合わせてある。
新潟の郷土料理「かきあえなます」が盛り付けられた小鉢の薄青色と、店内のランプシェードの薄青色が「喫茶ライトハウス」と「海が近い場所」であることも表現。
稲の背後のグリーンのカーテンと、ブラウンの衣装は、いずれもアースカラーで相性が良く、自然な印象を醸し出す。
©NHK
また、ちょっぴり専門的になるが、玉のブラウスの茶色とカーテンの緑色の彩度(色のあざやかさの度合)がほぼ同じ。
赤や黄色や青色と違い、ブラウンとグリーンは彩度の低さがほぼ同じだから、馴染んで見えるのだが。
「ブラウン=暖色系」と「グリーン=寒色系」と対照的だから、そこそこインパクトもある。
店内に飾られた絵画の多くが「青緑系」なのも、ブラウンを引き立てつつ、和んだ雰囲気にしたかったからだろと思う。
だって、あの玉が涼子様と「腹心の友」になる瞬間を目撃しているわけだから、緊張感の中になごみ… の演出はやるべき演出だと思う。
興味深いのは航一が寅子の"連れ"に稲さんを指名しないこと
さて、この調子では、投稿まで初の4時間半超えになるから、コソコソっと端折ろう(笑)
興味深い展開は、航一がマージャン大会の寅子の “連れ” に稲さんを指名しないことだ。
稲さんならマージャンを知ってそうだし、何よりも立派な大人だから適任に思えるが。
でも、きっと「話を進める」によって、優未なのだろう。
少しご都合主義は感じるが…
「よりどころは 友達じゃなくたっていい」を理解している優未と、「よりどころがマージャン」の航一が、“自ら溝を作りにいく厄介で面倒な人 ” 同士の不思議な魅力を放ち、惹かれあって出会ったとするのは、今作では珍しくファンタージーだ。
語り「優未と一瞬で溝を埋める航一に
嫉妬してしまう寅子です」
これが航一と優未の「運命の出会い」であるなら、リーガルドラマであっても、ファンタージーで良いと思う。
この時代を生きた人たちは少なからずみんな傷を負っている
ファンタジーから一気にリアルに展開を遂げたのにも驚いた。
杉田太郎(高橋克実)主催のマージャン大会で優未をひと目見た杉田が、いきなり号泣したことだ。
次郎「兄は長岡の空襲で
一人娘と孫娘を亡くしてるんです。
何となく似てんですかね
佐田判事のお嬢さん。
兄の孫娘のアキコに」
このあとの展開は、今年1月に妹が急逝した私には、かなりキツイ展開…
次郎「『死を受け入れられていない』というやつらんだか?」
私が書くまでもないが、終戦が昭和20年(1945)で。
劇中の今が「昭和27年。寅子と涼子 17年ぶりの再会です」だから、終戦から7年後の世界だ。
「死を受け入れられていない」のは当然のように思う。
さらに、前述した第81回にあった涼子の二つのセリフにもつながっている。
涼子「皆様のご無事と幸せを
ずっとお祈りしておりましたの」
涼子「でも あの戦争を経て
苦労していない人間はおりませんでしょう?」
戦争を体験、経験した人たちは、少なからずみんな、傷を負っている。
しかし今作は、昨今の朝ドラでは珍しい部類として、顕著な「戦争描写」や「これ見よがしの当時の写真や映像」を盛り込まない。
直接的な戦争表現を避けて、登場人物らの経験や体験を通して客観的に描く。
だから、視聴者の “想像の翼” が広がる。
リーガルドラマの部分がリアルだから、そことのメリハリとしても良い描き分けだ。
時と場合によっては、誰かが土足で踏み込んでくることで…
ラストシーンの食事のくだりは、「溝を埋めようともがく女」こと寅子が炸裂だ。
寅子「あの お尋ねしても?
航一さんは その 戦時中に何か…」
航一「秘密です」
せっかく、溝が少しだけ埋まりそうだったのに、溝を深くした寅子。
でも、時と場合によっては、誰かが土足で踏み込んでくることで、心が解放されるというのもなくもないだろうし。
もちろん、この場で予告編には触れないが(触れないでください)
間違いないのは、「先が見たくなる連ドラ」「次回が楽しみでしょうがない朝ドラ」として盛り上がってきたことだ。
あとがき
森口(俵木藤汰)の娘・美佐江(片岡凜)の一件は、あれで終わりなんですかね(笑)
大きなお世話ですけど…
「涼子ちゃん」と呼べるようになった玉と涼子様と稲さんで始めた「シン・喫茶ライトハウス」で英語塾を開業するほうが、自然な流れだったような…
きっと、新潟地方裁判所で一時的に欠員が出ている刑事事件の裁判官としての仕事の難しさを盛り込んだのでしょうね。
できれば、“連ドラ” として少しは継続案件で描いてほしいです。
でも、「土曜日版」にどの程度残るのは、楽しみになりますね。
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/19046/
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