連続テレビ小説「虎に翼」 (第55回・2024/6/14) 感想
NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『虎に翼』
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第55回/第11週『女子と小人は養い難し?』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。
家事審判所と少年審判所の合併に関して、依然として説得を続ける寅子(伊藤沙莉)だが、うまく行かない。そこで、寅子は「東京少年少女保護連盟」のメンバーとして活動する弟・直明(三山凌輝)に賭けてみることに。少年審判所の壇(ドンペイ)と家事審判所の浦野(野添義弘)は果たして直明の言葉に耳を貸すのか。年明け1月1日の家庭裁判所発足に向けて、家庭裁判所設立準備室の面々の奮闘が続く。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
原作:なし
脚本:吉田恵里香(過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘)
演出:梛川善郎(過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのブツが、ここに) 第1,2,4,7,10,11週
橋本万葉(過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘) 第3,8週
安藤大佑(過去作/とと姉ちゃん,となりのマサラ,やさしい猫) 第5,6,9週
音楽:森優太(過去作/海の見える理髪店,あなたのブツが、ここに,忘恋剤)
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博(明治大学 法学部 専任教授)
裁判所考証:荒井史男(元名古屋高裁長官 定年退官)
風俗考証:天野隆子(過去作/ごちそうさん,花子とアン,スカーレット)
旧字考証:三浦直人(明治大学大学院 文学研究科 史学専攻 日本史学専修)
医事考証:冨田泰彦(過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康)
医事考証:冨田泰彦(過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康)
ジェンダー・セクシュアリティ考証:前川直哉(福島大学 教育推進機構 高等教育企画室 准教授)
タイトルバック制作:シシヤマザキ(公式サイト )
取材:清永聡(NHK解説委員:司法・事件・公文書管理・災害)
語り(本編):尾野真千子(過去作/カーネーション,長谷川町子物語,足尾から来た女)
語り(土曜日版):山下誠一郎(過去作/Eテレ「小雪と発酵おばあちゃん」)
副音声解説:山崎健太郎(過去作舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ)
制作統括:尾崎裕和(過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人)
※敬称略
どうして、アバンタイトルで敢えて時間軸を戻したのか?
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。
実は、「実は…」「というのも…」のような、いわゆる「今から過去に遡って説明しますよ」の手法は、今作ではあまり見かけない。
恐らく、基本的に展開が早いから、一度進んでから後戻りするなんて、やっている時間がないのだ。
とにかく前へ、前へ…が、基本だから。
でも、今回は冒頭で語りの「というのも…」を入れて、時間軸を巻き戻した。
もちろん、こんなことはやらずに、冒頭で「二日前」とやれば済むことだ。
では、どうして敢えて時間軸を戻したのか?
答えは、次のくだりを強調するためだ。
寅子「これですよ これ」
語り「直明のキラキラに
かけてみようと思い立ったのです」
ではなぜ、強調する必要があったのか?
それは、こうしないと、少なくてもアバンタイトルの主人公が寅子(伊藤沙莉)ではなく、弟・直明(三山凌輝)になってしまうからだ。
でも、この順番にすると。
●主人公の寅子がいたから、直明が「東京少年少女保護連盟」のメンバーとして活動と始めたと強調できる。
●「ご婦人や子供たちを救う」は、子供たちのこと…」は家事審判所と少年審判所の合併が目指していることが強調でき、それと「東京少年少女保護連盟」が同じなんだと、主従関係が強調できる。
この二つをやることで、今作、今週、今回の主人公が寅子であることと、「家事審判所と少年審判所の合併」がメインであることが、あらためて強調できるのだ。
全体の構成をしっかりと考えた脚本と演出
なぜ、金曜日のアバンタイトルの冒頭でやるのか?
それは、今週が花岡(岩田剛典)の死ではじまり。
‘タッキー’こと多岐川幸四郎(滝藤賢一)のクセの強さで “主人公とメイン” が薄まっているからに他ならないと思う。
そう、いうなれば、“金曜日の冒頭で引き締めに入った” ということだと思う。
この辺も、全体の構成をしっかりと考えた脚本ゆえのテクニックだ。
そして、演出も脚本の意図を汲み取って、うまい感じに映像化している。 それは。
語り「なんてキラキラした目」
直明の“キラキラした眼差し”に、女性たちはおろか、オッサン連中まで、昭和なら「ズキンドキン」、今風なら「ズキューン」なわけだ。
この演出、これらの演技によって、今週はややもすれば「タッキー劇場」「多岐川劇場」「滝藤賢一劇場」で終わるところを、これで、寅子を含めた猪爪家のホームドラマで見せて(show)魅せる(fascinate)“今作らしさ” の復活だ。
やや強引、やや早計なのは間違いない。
ただ、「花岡の壮絶死」と「タッキー劇場」から一気にまとめるとなると、これくらいの刺激性は必要だと思う。
花岡の妻・奈津子が描いた絵画で、家族や家庭の幸せは…
中盤では、前回に登場した花岡の妻・奈津子(古畑奈和)が描いた絵画が登場した。
アルバート・ホーナー(ブレイク・クロフォード)から寅子がもらい。
それを、寅子が花岡の家族に差し出したチョコレート。
それを半分にして分け合う大人と子どもの手。
花岡家に笑顔が訪れた瞬間であり。
家族や家庭の幸せは “内製化できる部分” もあるが。
人から人へのリレーとつながりによってもたらされるものもあるということ。
"花岡の死を美化しない"姿勢を明確にしたのがスゴイ!
そのことを、しっかりと伝えた上で多岐川に次のことを言わせた。
多岐川「人間 生きてこそだ。
国や法 人間が定めたもんは
あっという間に ひっくり返る…。
ひっくり返るもんのために
死んじゃあならんのだ。
法律ちゅうもんはな
縛られて死ぬためにあるんじゃない。
人が幸せになるためにあるんだよ」
もう、これで最終回でも良いくらいの説得力あるセリフだ。
でも、これで終わっては、いささか “きれいすぎる”と思う。
それに、「法は人が幸せになるためもの」 は、今作の大きなテーマの一つだから、終わってしまうのだ。
でも、でも、やはり、吉田恵里香氏は多岐川にキツイひとことを加筆した。
多岐川「幸せになることを諦めた時点で
矛盾が生じる。
彼が どんなに立派だろうが
方を司る我々は 彼の死を非難して
怒り続けなければならん。
その戒めに この絵を飾るんだ」
きっと、吉田氏は何のためらいもなかったと思う。
あったとすれば、周囲のスタッフは「ここまで言わせて世間は大丈夫?」があったかも。
でも、この追加分がなければ、普通の、並みの朝ドラであり、ヒロインになってしまう。
しかし、この “花岡の死を美化しない” 姿勢を明確にしたことで、今作らしい朝ドラになったし、「謙遜しすぎのトラちゃん」から今作らしい寅子がよみがえったと思う。
そして、いかなるドラマであっても「死は美化しちゃいけない」と思う。
これは、私が常日頃言っている「やたらと “死や余命”“病気や障がい”を盛り込むな!」にも通じる概念だ。
盛り込むなら、今回のようにネタや設定で終わらせずに、メッセージを込めるべき。
まあ、やるべきことをやっただけだが、それをやれないドラマが多いから、今作を秀逸だと評価したくなるのだ。
上野駅前のシーンを後出しにした秀逸な脚本と演出
そして、秀逸な展開は、終盤でもこれまであまりやってこなかった「実は…」を使ってきた。
汐見「朝鮮から なんとか引き揚げてきて
上野の駅に降り立った時 思ったんだって」
後付けの、後出しの、説明のための回想シーンだ。
いつもの私なら「回想シーンは、ドラマでも物語でもない!」と一喝するが。
ここは、繰り返しになるが、秀逸な展開と構成だと評価せざるを得ない。
なぜなら、この前段での、多岐川の “花岡の死を美化しない” 姿勢と、奈津子の最後の絵画を買った思いの根底に、“自分は子供たちに差し出すものがなかった” という情けなさや後悔や未練の念が根底にあることが判明したからだ。
映像的な手法としては、今回より前に仕込んでおいて、今回で再び引っ張り出して強調する作戦もできる。
でも、金曜日の結末をドラマチック(まるで劇を見るような悲喜こもごもなさま)というよりも。
センセーショナル(人の感情・感覚を強くゆすぶる性格をもつさま)やインパクトを与える意味では、後出しで一度きりのほうが断然効果的だ。
周囲の均衡を図り、公平で、強引に物事を運ばないのが寅子
偉そうにしていたって <差し出してくれるものがない大人は “大人” じゃない> と。
いいや、<差し出せるものがある大人を “大人” と認めてくれるんだ> と。
汐見「『俺が逃げずにいられるものを見つけたぞ』って。
子供たちを幸せにしたい。
そのために もう死んでも逃げない。
彼らのために
残りの人生を全てささげよう。
未来に種まく仕事をしよう」
ラストは、久し振りに“トラつば・アベンジャーズ” の再結成を見たような思いだ。
見る人によっては、多岐川が目立ちすぎに見える、見えたかもしれない。
しかし、よく考えれば分かることだが。
寅子というヒロインは、目立つ発言や行動が印象的なキャラクターだが。
基本的には、誰か指導者的な登場人物に導かれ、その人に共感したり反発したりしながら、自分の進むべき道を歩んでいくキャラクターだ。
だから、過去の朝ドラヒロインたちが、何でもかんでも「だからよー」で押し切ったり、周囲の意見を聞かずに「空を飛ぶ!」と言い出したり、特に根拠もなく「ワテがワテが」と前にも出ない。
基本的に、周囲の均衡を図り、公平で、強引に物事を運ばないのが寅子。
その設定を今週も守り切った… そういうことだと思う。
あとがき
さて、今週の「土曜日版」は楽しみですね。
どこを残して、どこを削るのか?
やり方次第で「多岐川劇場」「滝藤賢一劇場」になりますから。
きっと、うまく編集してくれると思います。
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/18941/
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