連続テレビ小説「虎に翼」 (第52回・2024/6/11) 感想
NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『虎に翼』
公式リンク:Website、X(旧Twitter)、Instagram
第52回/第11週『女子と小人は養い難し?』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。
GHQからの通達により、桂場(松山ケンイチ)らは家庭裁判所設立に向けて動き出す。家庭裁判所設立準備室に異動することになった寅子(伊藤沙莉)。上司の多岐川幸四郎(滝藤賢一)はとにかく変わった人物のようで、寅子は不安を覚える。寅子たちの仕事は、従来からある少年審判所と新しくできた家事審判所を合併させ、2カ月後には全国に家庭裁判所を発足させる、というものだった。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
原作:なし
脚本:吉田恵里香(過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘)
演出:梛川善郎(過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのブツが、ここに) 第1,2,4,7,10,11週
橋本万葉(過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘) 第3,8週
安藤大佑(過去作/とと姉ちゃん,となりのマサラ,やさしい猫) 第5,6,9週
音楽:森優太(過去作/海の見える理髪店,あなたのブツが、ここに,忘恋剤)
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博(明治大学 法学部 専任教授)
料理指導:赤堀博美(過去作/花咲舞が黙ってない,厨房のありす)
タイトルバック制作:シシヤマザキ(公式サイト )
取材:清永聡(NHK解説委員:司法・事件・公文書管理・災害)
語り(本編):尾野真千子(過去作/カーネーション,長谷川町子物語,足尾から来た女)
語り(土曜日版):山下誠一郎(過去作/Eテレ「小雪と発酵おばあちゃん」)
副音声解説:山崎健太郎(過去作舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ)
制作統括:尾崎裕和(過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人)
※敬称略
今回からが実質的な「新章=裁判官編」の幕開け
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。
当ブログが、一応こだわって書いているのが。
先週から「新章」はスタートしているが、あくまでも前回までが「新章のイントロダクション(導入部)」だということ。
それは、公式でもうたっているように「新章=裁判官編」だからだ。
従って、新キャラ登場含めて、今回からが実質的な「新章=裁判官編」の幕開けだ。
そうなると、たっぷりと尺を割いたアバンタイトルを作り込んでくるのが、今作流だ。
今回も、がっつりと約5分7秒間の長尺アバンで攻めてきた。
そして、詳しいことは下記の投稿を読んでいただければ分かるが。
ひと言いえるのは。
前回からサクッと1年の時間経過をやるということは、脚本家にとっても、今作自身にとっても “恋愛要素” の有無なんて、視聴者が思っているほど大したことではない… ということだ。
重要な要素なら、新事務所設立の “続き” をやるに決まっているわけだから。
朝ドラ「虎に翼」への質問に回答「轟の、花岡への感情に “恋愛要素” はあったと思いますか?」
展開が速いから、分かりやすい演出が光る!
ということで、GHQからの通達で、家庭裁判所設立の話が現実に動き出した。
最初の新キャラは、初代最高裁長官・星朋彦(平田満)だ。
公式SNSによれば “穂高重親(小林薫)とも親しく、老いてますます高い理想を語らう仲” だそうだ。
桂場(松山ケンイチ)は人事課長に、久藤(沢村一樹)は秘書課長に。
そして、寅子(伊藤沙莉)は家庭裁判所設立準備室に異動することに。
話の展開速度が速いため、演出も過ぎるくらいに分かりやすくなっている。
寅子「でしたら 家庭裁判所設立まで
こぎつけた暁には
今度こそ 私を裁判官にしてください」
この寅子のセリフなんて、桂場に交換条件を提示するあたりをふくめて “寅子らしい” が、敢えて勇ましい劇伴を載せることで、「これが覚醒後の寅子ですよ」とテロップを入れたくらいに分かりやすい。
ただ、「家族を支えていくのに不安」とのセリフもあるから、やはりここは「何事も家族のため」に生き抜いた寅子を強調する意味でも一粒で二度おいしい得策な演出だ。
そして、さり気なく『画面に“いばらの道”人気よぶ花岡判事未亡人の個展』の新聞記事。
どんな小さなサブキャラであれ、一度登場させたのなら描き続けるからこそ存在意義があるのだから、写真であっても花岡悟(岩田剛典)の元妻・奈津子(古畑奈和)を登場せるのは評価できる。
家庭裁判所設立準備室のキャラも俳優陣も、超個性的!
予告編どおりに、家庭裁判所設立準備室 室長・多岐川幸四郎(滝藤賢一)が登場だ。
語り「後に家庭裁判所の父と呼ばれる」
下記の投稿にも書いたが、まさか「家庭裁判所の父」まで、そのままとは思わなかったが、別の言い回しにしたところで史実のモデルは判明している… との判断だろう。
朝ドラ「虎に翼」多岐川幸四郎(滝藤賢一)のモデルは“家庭裁判所の父”宇田川潤四郎さん?「花子とアン」との意外なご縁も!
そして、家庭裁判所設立準備室 室長補佐・汐見圭(平埜生成)も登場。
平埜生成さんといえば、朝ドラ『カムカムエヴリバディ:ひなた編(京都編)』 で、条映映画村の社員・榊原誠 役で映画村のイベントやショーを企画していた あの人だ。
どことなく、古い建物と相性がいい。
その上、家庭裁判所設立準備室のスタジオセットに青空合成、意外に悪くないと思ったのは私だけだろうか?
言い争うよりも、"多様性" を "認め合いましょう"
メインタイトル映像明けには、小橋浩之(名村辰)と稲垣雄二(松川尚瑠輝)も合流。
今作らしい、いや、吉田恵里香氏らしい脚本は、次のやり取りだ。
寅子「花岡さんの分も頑張らないとね」
多岐川「何だ 君たち
あのバカたれ判事の同期なのか」
汐見「えっ 多岐川さん ちょっと…」
多岐川「法律を守って餓死だなんて
そんな くだらん死に方があるか?
大バカたれ野郎だね」
寅子「そんな言い方 あんまりです。
撤回してください」
多岐川「撤回なんてするか。
人間 生き残ってこそだ」
この寅子と多岐川のやり取りだけなら、街中にあるシナリオ教室の優秀な1年生なら書けるレベルだ。
しかし、その後の小橋の無粋な男女ネタ、寅子のマジの反論、一度は寅子の反論を聞き流す多岐川を描いておいて、次のセリフは簡単には書けないと思う。
多岐川「君も正しい 俺も正しい。それでいいだろ」
私も、当ブログでは、意見を言い合ったところで平行線が分かっているやり取りほど無駄な時間はないと悟っているから、絶対にやらない。
そのことを、今作が言っちゃったのだ。
もちろん、多岐川のセリフをいつもどおりに真面目に分析すれば。
相手が屈するまでとことん自己主張を続け合うほど、不毛な時間はなく。
自分の立場を主張しつつ、相手の立場も認め、互いの妥協点を見出すことの方が有用だということだ。
言い換えるならば、言い争うよりも、“多様性” を “認め合いましょう” ってことだ。
メイン監督である梛川善郎氏らしい抒情的な演出
これこそが、今作『虎に翼』が当初から描き続けている大きなテーマだ。
多様性を認め合うことで、他者の存在を理解し、自分をも理解してもらえる。
これが、多岐川の「君も正しい 俺も正しい」に、ぜ~んぶ詰まっている。
その上で、このセリフが多岐川という登場人物のあらゆる事象に対する価値基準であることも、サクッと分かる。
この辺の人間描写は、吉田氏らしい書き方だ思う。
更に加えるなら。
このシークエンスのラストで、風にきしむ扉の音に揺れるロープが実にいい。
特に、風の音やきしむ音には、一種の孤独感や寂寥感を強調する心理的効果があり。
映像では、緊張感や不安感を煽るための効果的な要素としても使用されることがある。
この場面でも、「この上司の下でやっていけるの? 裁判官になれるの?」という寅子の心情が揺れ動いたことが見てとれる。
ここは、メイン監督である梛川善郎氏らしい抒情的な演出がいきた場面だ。
寅子が強引にマッチ箱を押し込んで壊してしまう演出に注目
仕事が終わって寅子が帰宅した猪爪家には “風は吹いておらず” 平穏ないつもの風景だ。
さて、先ほどの多岐川のセリフ「君も正しい 俺も正しい。それでいいだろ」を受け取るかたち、呼応し合う寅子のセリフがこれだ。
寅子「子供や家庭の問題って 有罪 無罪って
白黒つかないことばかりでしょ。
そういった問題に寄り添って
最善策を探していく」
双方の言い分や主張は間違っていないけど、解決のためには寄り添わないと… ということだ。
その後も、寅子と、はる(石田ゆり子)と花江(森田望智)とのやり取りによって少年審判所と家事審判所が合併して家庭裁判所になる意味や議論が、分かりやすく描かれるが。
ここで、注目すべき演出がある。
それは、寅子がマッチ箱の外枠に内箱を何とか力づくで押し込もうとするが、壊れてしまうくだりだ。
脚本上の指定があったのか、演出家のアイデアかは分からないが。
力づくで合併させたら、マッチ箱のようにうまくいかない。
でも、今も家庭裁判所が存続しているということは、関係者の並々ならぬ努力や苦労の末に今の仕組みが創設されたと分かる… という仕掛けの演出になっているのだ。
今回も、見応えのある15分間だった。
あとがき
多岐川のクセが強すぎる上に面白すぎます。
多岐川に対抗するくらいに桂場と久藤を使ったら、最高に面白くなりそう。
それにしても、『NHKスペシャル』でも前後編にしないと描き切れないくらいの情報量を1週間でやり切るって本当にスゴイと思います。
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/18931/
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